JP3741465B2 - デュアルビーム同調性分光計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光学分光計に関し、詳細には、デュアルビーム同調性分光計に関する。
【0002】
【従来の技術】
多様な被検体の濃度の定量には光学分光計が用いられる。光学分光計は、スペクトルのうち、紫外線、可視光線および赤外線として一般に知られる部分を利用する。一般に使用される分光計には二つのタイプがある。すなわち、反射率分光計および透過率分光計である。
【0003】
反射率分光計は、試料が試料ビームの一部を吸収し、散乱させるときの被検体の濃度を計測する。試料ビームのうち、吸収されたり透過したりしない部分が試料から反射して検出器に入り、計測される。反射した試料ビームと基準ビームとの差が試料中の被検体の濃度を定量的に示す。
【0004】
同様に、透過率分光計は、試料が試料ビームの一部を吸収するときの被検体の濃度を計測する。しかし、試料は試料ビームを検出器の中に反射しない。逆に、試料ビームが試料の中を移動するとき、試料ビームの一部が吸収される。透過した試料ビームと基準ビームとの差が試料中の被検体の濃度を定量的に示す。
【0005】
分光計は通常、広い周波数分布を有する光を発する発光源を用いる。タングステンフィラメントランプまたは重水素ランプが、紫外線(UV)、可視光線およびいくらかの赤外線(IR)を発する、一般に使用される発光源である。所望の波長がフィルタ、回折格子、プリズム、音響光学的同調性フィルタおよび他の手段を介して選択される。
【0006】
音響光学的同調性(チューナブル)フィルタ(AOTF)は、音と光の相互作用によって光を回折する。この現象は、Chieu D. Tran 教授により、本明細書に参考文献として含めるAnal. Chem., 64:20, 971-981 (1992)に記載されている。簡潔に述べるならば、AOTFは、音響波が伝播しうるところの透明な媒体(例えば、水晶、二酸化テルルTeO2 )である。透明な媒体の屈折率は、音響波が媒体中を伝播するときにその音響波によって乱される。屈折率の乱れは、移動する音響波によって起こる透明物質の圧縮および希薄から生じる。入射ビームが透明な媒体を通過するとき、伝播する音響波が、入射ビームの一部を回折する移動格子を作り出す。AOTFは、一次ブラッグ回折のみが見られるような構成であることができる。一次ブラッグ回折パターンのみが見られるとき、相対的に直交する方向の偏光をもつ二つの二次ビームが発生する。通常、音響波は、メガヘルツ領域の無線周波数(RF)信号を、結晶質の透明な媒体に取り付けられた圧電型変換器に印加することにより、透明な媒体中で変換される。広い周波数光源を所望の周波数に回折するための音響光学的同調性フィルタ(AOTF)の使用は、AOTFを正しいRF信号と同調させることにより、マイクロ秒のオーダで所望の周波数をほぼ即座に得ることができる点で有利である。
【0007】
音響光学的同調性フィルタを利用する分光計が公知である。Kemenyらの米国特許第5,039,855号明細書は、音響光学的同調性フィルタを利用するデュアルビーム透過率分光計を記載している。Kemenyは、AOTFからの二つの光ビームを単離し、一方のビームを基準ビームとして用い、第二のビームを用いて試料(試料ビーム)を解析している。Kemenyは、1個の検出器を用いて基準ビームを計測し、第二の検出器を用いて試料ビームを計測している。試料ビームと基準ビームとの差が対象の被検体を計測するため、2個の検出器を使用する分光計において正確な読取り値を得るためには、検出器どうしを適合させなければならない。1個の検出器を用いて基準ビームおよび試料ビームの両方を計測することができるデュアルビーム透過率分光計が求められている。
【0008】
反射率分光計は公知であり、市販されている。通常、反射率分光計においては、試料に対してある角度で照射を加え、試料に対して第二の角度で反射率を検出する。この構造は、検出器に達するノイズの量を最小限にし、分光計の感度を高めるために、試料からの正反射および表面反射を拒絶するように設計されていることが好ましい。今日利用しうる反射率分光計は、試料に対して90°の角度で試料に照射を加え、かつ、試料に対して同じ90°の角度で試料からの反射率を検出することはできない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、試料に対して同じ角度(90°)で、試料に照射を加え、かつ試料からの反射率を検出することができ、同時に、検出器に達する正反射および表面反射の量を最小限にすることができる反射率分光計が求められる。加えて、AOTFからの直交方向に偏光した一次ビームの一方または両方を利用する反射率分光計が求められる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
ある特定の実施態様において、本発明は、発光源と、生成手段と、検出器と、シャッタ構造とを含むデュアルビーム同調性分光計を提供する。発光源が入射光ビームを発する。音響光学的同調性フィルタを含む生成手段が入射光ビームを受け、それから基準ビームおよび試料ビームを生成する。検出器が基準ビームの少なくとも一部を検出し、試料が試料ビームによって照射されたのち試料から発される試料ビームの少なくとも一部を検出する。シャッタ構造は、基準ビームの一部を選択的に中に通過させる第一のシャッタと、試料ビームの一部を選択的に中に通過させる第二のシャッタとを含む。シャッタ構造は、第一のシャッタを開き、第二のシャッタを閉じて、検出器に基準ビームの一部のみを検出させる。同様に、シャッタ構造は、第一のシャッタを閉じ、第二のシャッタを開いて、検出器に試料ビームの一部のみを検出させる。
【0011】
本発明は多様な変形および代替形態を受けることができるが、その具体的な実施態様を図面の実施例によって示し、本明細書に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を開示された特定の形態に限定するためのものではなく、それどころか、冒頭の請求の範囲によって定義される本発明の真髄および範囲に該当するすべての変形、同等物および代替を包含する意図を有することを理解すべきである。
【0012】
【実施例】
ここで図面を参照すると、図1は、試料を透過する光の計測または試料から反射する光の計測のいずれかを実施することができるデュアルビーム同調性分光計10を示す。この分光計10は、人工発光源12と、音響光学的同調性フィルタ(AOTF)14と、一対の機械的または電気光学的シャッタ16、18を有するシャッタ系と、一対のビームスプリッタキューブ20、22と、検出器24とを含む。分光計10の前記要素は、分光計10の作動の説明とともに以下に詳述する。
【0013】
人工発光源12は、広いスペクトル出力を有する制御された光を発することが好ましい。これらの規準を満たす人工発光源の例には、重水素放電管、白熱電灯(例えばタングステンフィラメント)、ハロゲン灯、蛍光灯およびレーザがある。発光源12から発された光を平行化するために、コリメータレンズ26または他の適当な平行化装置が発光源12に隣接して取り付けられている。もっとも効果的に発光源12からの光を平行ビームに集束するために、発光源12は、コリメータレンズ26の主焦点(焦点)の近くに配設されている。コリメータレンズ26は、カリフォルニア州アーヴァインのMelles Griot社から部品番号01 LPX 017として市販されている。
【0014】
無線周波数(RF)供給源28からのRF同調信号に応答して、AOTF14は、入射する平行化した光ビームを光スペクトルの所望の波長に回折する。制御ユニット30がRF供給源28から発されたRF信号の周波数を制御する。AOTF14からの光学出力は、零次ビームおよび一対の直交方向に偏光した一次ビームを含む。これらの一次ビームの波長はRF同調信号の波長に反比例する。したがって、RF同調信号の波長が長いほど、一次ビームの波長は短くなる。一次ビームが紫外線、可視光線または赤外線のスペクトルの範囲に該当する波長を有するよう、RF同調信号を変化させることができる。AOTF14は、メリーランド州ボルチモアのBrimrose社から部品番号TEAF-.08-1.65 として市販されている。
【0015】
AOTF14から発された一次ビームの一方が収束レンズ32によってビームスプリッタキューブ20上に集束される。零次ビームおよび他方の一次ビームは、それぞれの吸光器またはビームストッパ(図示せず)によって吸収される。図1から見ると、スプリッタキューブ20の斜めの面がAOTF一次ビームの第一の部分(「基準部」)を上向きに反射してシャッタ16に送り、AOTF一次ビームの第二の部分(「試料部」)を試料に送る。基準部がAOTF一次ビームの約5〜10%を構成し、試料部がその残りを構成することが好ましい。あるいはまた、基準部がAOTF一次ビームの50%までを構成し、試料部がその残りを構成するようにビームスプリッタキューブ20を構成することもできる。シャッタ16、18の一方だけが所与の期間、開くようにこれらのシャッタを制御することにより、検出器24が基準計測と試料計測とを別々に実施する。シャッタ16、18はいずれもニューヨーク州ロチェスタのVincent Associates社から部品番号VS14SITOK として市販されている。
【0016】
基準計測を実施するためには、シャッタ系がシャッタ16を開き、シャッタ18を閉じる。ビームスプリッタキューブ20から反射した基準部は、収束レンズ34により、第二のビームスプリッタキューブ22上に集束される。レンズ34がレンズ34の中心を通過する水平面(図1から見て)に関して対称であるならば、レンズ34は、スプリッタキューブ20とスプリッタキューブ22とのほぼ中間に位置する。シャッタ16が開いており、シャッタ18が閉じているため、スプリッタキューブ22に衝突する光のみがAOTF一次ビームの基準部である。スプリッタキューブ22の斜めの面が基準部の約5〜10%を検出器24に向けて反射し、基準部の残りを吸光器(図示せず)に送る。スプリッタキューブ22ならびにスプリッタキューブ20は、ニューメキシコ州アルバカーキのCVI Laser 社から市販されている。
【0017】
検出器24は、基準部の反射した部分を検出する。好ましい実施態様においては、検出器24は、赤外線スペクトルに集束し、ノイズ干渉を最小限にするための内蔵増幅器を有するInGaAs(インジウム−ガリウム−ヒ素)検出器である。このような検出器は、カリフォルニア州カマリロのAdvanced Photonics社から部品番号SD 6085 として市販されている。他の適当な検出器には、光電子増倍管、電荷結合素子、ダイオードアレイ検出器およびゲルマニウム検出器がある。検出器24に連絡的に結合された制御ユニット30は、検出器24によって検出された光の量を計測する。通常の基準読取りの場合、数秒またはそれ未満の間、シャッタ16が開いたままになり、シャッタ18が閉じたままになる。
【0018】
試料計測を実施するためには、シャッタ系はシャッタ16の閉鎖とシャッタ18の解放とを同時に行う。この場合、閉鎖されたシャッタ16が、AOTF一次ビームの基準部が検出器24に達することを防ぐ。AOTF一次ビームの試料部(すなわち、AOTF一次ビームのうち、ビームスプリッタキューブ20の中をまっすぐ透過した部分)が、収束レンズ36により、光ファイバ38の中に集束される。光ファイバ38が受ける試料部の光の量を最大限にするため、光ファイバ38の入力端は、レンズ36の焦点またはその近くに位置することが好ましい。レンズ36がレンズ36の中心を通過する垂直面(図1から見て)に関して対称であるならば、レンズ36は、スプリッタキューブ20と光ファイバ38の入力端とのほぼ中間に位置する。
【0019】
光ファイバ38がAOTF一次ビームの試料部を試料に向けて送り、第二の光ファイバ40が試料から光を受ける。光ファイバ38、40は、それらに支持を提供するためのそれぞれのハウジング(図示せず)の中に取り付けられている。光ファイバ40が試料から光を受ける仕方は、分光計10が反射計測または透過計測のいずれに合わせて構成されているかに依存する。透過率読取りの場合、光ファイバ38の出力端と光ファイバ40の入力端との間に試料を配置する。光ファイバ38がAOTF一次ビームの試料部を試料に向けて送り、光ファイバ40が、試料の反対側で、光ビームのうち、試料を透過して光ファイバ40の入力端に達した部分を受ける。
【0020】
反射率読取りの場合、光ファイバ38の出力端および光ファイバ40の入力端が試料の同じ側に位置する。好ましい実施態様においては、光ファイバ38が試料に対して90°の角度で光ビームを発し、光ファイバ40が、試料に対して45°の散乱角で試料から反射した光を受ける。このような反射率読取りの構造は、Dosmann らへの米国特許第4,890,926号に説明されている。散乱角は、光ファイバ38から入射する光の移動方向を表す線と、試料から反射して光ファイバ40に達する光の移動方向を表す線との間で計測される。他の散乱角を用いてもよいが、45°の散乱角がもっとも効率的であることが当該技術において周知である。
【0021】
透過率および反射率の両方の構造の場合、光ファイバ40が試料から受けた光は、光ファイバ40からビームスプリッタキューブ22に向けて発される。発された光は発散する傾向にあるため、光をビームスプリッタ22に透過させて検出器24上に集束させるために、収束レンズ42がスプリッタキューブ22と光ファイバ40との間に配設されている。先に述べたように、シャッタ18が開いて光を通過させる。スプリッタキューブ22と、光ファイバ40の出力端とは、レンズ42をはさんで互いに反対側に、一直線に並んで配設されている。そのうえ、レンズ42は、レンズ42の中心を通過する垂直面(図1から見て)に関して対称であるため、レンズ42は、検出器24と光ファイバ40の出力端とのほぼ中間に位置する。
【0022】
スプリッタキューブ22が試料からの光の約90〜95%を検出器24に向けて透過させ、その残りを上向きに反射して吸光器(図示せず)に送る。検出された光の量は、検出された試料からの光を先に計測した基準値と比較して試料中の標的被検体の濃度を定量する制御ユニット30によって計測される。AOTF一次ビームの波長は試料中の標的被検体によって決まる。特に、RF供給源28からのRF同調信号は、AOTF14に入射する光ビームを、標的被検体の吸収波長を包含する波長に回折するように選択される。
【0023】
前記の説明から、分光計10は、AOTF14からの一方の一次ビームのみを用いて透過率および反射率の両計測を実施することができる。ビームスプリッタキューブ20がこの一次ビームを基準ビームと試料ビームとに分割する。さらに、分光計10は、基準ビームおよび試料ビームの両方を検出するのに単一の検出器24を用いる。シャッタ16、18は、いかなる所与の時点でもこれらの二つのビームの一方のみが検出器24に達するように制御される。
【0024】
図2は、反射率読取りを実施することができる、本発明による代替の分光計100を示す。この反射率分光計100は、人工発光源102と、音響光学的同調性フィルタ(AOTF)104と、一対の機械的または電気光学的シャッタ106、108を有するシャッタ系と、偏光ビームスプリッタキューブ110と、検出器112とを含む。分光計100の前記要素は、分光計100の作動の説明とともに以下に詳述する。
【0025】
発光源102は、広い周波数分布を有する制御された光をAPTF104に向けて発する。適当な発光源の例には、重水素放電管、白熱電灯(例えばタングステンフィラメント)、ハロゲン灯、蛍光灯およびレーザがある。光がAOTF104に達する前に光を平行化するために、コリメータレンズ114または他の適当な平行化装置が発光源102とAOTF104との間に位置している。もっとも効果的に発光源102からの光を平行ビームに集束するために、発光源102はコリメータレンズ114の主焦点(焦点)の近くに配設されている。図1のコリメータレンズ26と同様、コリメータレンズ114は、カリフォルニア州アーヴァインのMelles Griot社から部品番号01 LPX 017として市販されている。
【0026】
平行化した光ビームがAOTF104を透過すると、AOTF104は、その光ビームを処理して零次ビームおよび一対の直交方向に偏光した一次ビームにする。RF供給源116からのRF同調信号が一次ビームの波長を制御し、RF同調信号の波長は逆に制御ユニット118によって制御される。RF同調信号は、AOTF104からの一対の一次ビームが紫外線、可視光線または赤外線のスペクトルの範囲に該当する波長を有するように変化させることができる。RF信号は、AOTF104からの一次ビームが試料中の標的被検体の吸収波長を包含する波長を有するように選択する。図1のAOTF14と同様、AOTF104は、メリーランド州ボルチモアのBrimrose社から部品番号TEAF-.80-1.65 として市販されている。
【0027】
平凸レンズ119が零次ビームを、零次ビームを吸収するビームストッパ120に向けて送る。さらに、レンズ119が一次ビームの一方(「基準ビーム」)をシャッタ106に向けて送り、もう一方の一次ビーム(「試料ビーム」)をシャッタ108に向けて送る。シャッタ106、108の一方だけが所与の期間、開くようにこれらのシャッタを制御することにより、検出器112が基準計測と試料計測とを別々に実施する。レンズ119は、カリフォルニア州アーヴァインのMelles Griot社から部品番号LPX 084 として市販され、シャッタ106、108はいずれもニューヨーク州ロチェスタのVincent Associates社から部品番号VS143SITOKとして市販されている。
【0028】
基準計測を実施するためには、シャッタ系がシャッタ106を開き、シャッタ108を閉じる。開いたシャッタ106が基準ビームを中に通し、閉じたシャッタ108が試料ビームが中に通過することを防ぐ。基準ビームは、収束レンズ122により、従来のミラー124および偏光ビームスプリッタキューブ110を介して検出器112上に集束される。ミラー124がレンズ122の方向から基準ビームを受けると、ミラー124は、基準ビームを偏光ビームスプリッタキューブ110の方向に反射する。図3を参照すると、基準ビームの偏光はスプリッタキューブ110の入射面に対して平行である。入射面とは、ビーム分割面126に当たる基準ビームの伝播方向と、ビーム分割面126に対して垂直方向の線とを含む面と定義する。ビーム分割面126によって画定されるように、この偏光は一般に「P」偏光と呼ばれる。図2で見るならば、入射面は紙面上の面であり、基準ビームの「P」偏光は紙面の面に対して平行である。
【0029】
偏光ビームスプリッタ110の斜め面126が入射する基準ビームの約5〜10%を上向き(図2で見るならば)に反射して検出器112に送り、その残り(90〜95%)を透過させる。検出器112は、基準ビームの反射された部分を検出する。ある実施態様においては、検出器112は、赤外線スペクトルに集束し、ノイズ干渉を最小限にするための内蔵増幅器を有するInGaAs検出器である。そのような検出器は、カリフォルニア州カマリロのAdvanced Photonics社から部品番号SD 6085 として市販されている。代替態様においては、検出器112は内蔵増幅器を含まなくともよい。代わりに、検出される光は比較的弱いものであるため(一次基準ビームの1%未満しかない)、検出器112に結合されたロックイン増幅器128を使用して、ノイズ干渉を受けずに、検出された光を計測する。従来どおり、増幅器128は、外部基準信号、例えばRF供給源116からのRF同調信号との何らかの形態の自動同期化を利用する。
【0030】
ロックイン増幅器128に連絡的に結合された制御ユニット118は、検出器112によって検出された光の量を計測する。通常の基準読取りの場合、数秒またはそれ未満の間、シャッタ106が開いたままになり、シャッタ18が閉じたままになる。
【0031】
試料計測を実施するためには、シャッタ系はシャッタ106の閉鎖とシャッタ108の解放とを同時に行う。この場合、閉鎖されたシャッタ106が「P」偏光を加えられた一次基準ビームが検出器112に達することを防ぐ。一次試料ビームは、収束レンズ130により、従来のミラー132およびビームスプリッタキューブ110を介して試料上に集束される。収束レンズ130ならびに収束レンズ122はいずれもカリフォルニア州アーヴァインのMelles Griot社から部品番号LDX 069 として市販されている。ミラー132が試料ビームを偏光ビームスプリッタキューブ110の方向に反射する。図3を参照すると、試料ビームの偏光は基準ビームの「P」偏光に対して直交する。また、試料ビームの偏光は、試料ビームの入射面に対して直交する。入射面とは、ビーム分割面126に当たる試料ビームの伝播方向と、ビーム分割面126に対して垂直方向の線とを含む面と定義する。ビーム分割面126によって画定されるように、この偏光は一般に「S」偏光と呼ばれる。図2で見るならば、入射面は紙面の面であり、試料ビームの「S」偏光は紙面の面に対して垂直である。
【0032】
偏光ビームスプリッタキューブ110の斜めの面126が入射する試料ビームの大部分を下向き(図2で見るならば)に反射して、試料に対して90°の角度で試料に送る。試料が試料ビームの入射部分を上向き(図2で見るならば)に正反射かつ拡散反射して、試料に対して同じ90°の角度で偏光ビームスプリッタキューブ110に戻す。偏光ビームスプリッタキューブ110は、検出器112が正反射を受光することを防ぐ。特に、試料からの正反射は定義により「S」偏光を保持するため、スプリッタキューブ110はこれらの正反射を反射して、試料ビームがキューブ110に入射した光路に沿ってキューブ110の外に戻す。他方、ランダムに偏光した拡散反射は、試料中の標的被検体によって沈殿される。これらの拡散反射を完全に捨てる代わりに、ランダムに偏光した拡散反射の約50%がキューブ110を透過して検出器112に送られる。検出器112は、キューブ110を透過したこれらの反射を検出し、制御ユニット118が検出器112によって検出された光の量を計測する。制御ユニット118は、試料からの検出された光を先に計測した基準値と比較して、試料中の標的被検体の濃度を定量する。
【0033】
前記の説明から、反射率分光計100がAOTF104からの直交方向に偏光した一次ビームの両方を用いることが明らかであろう。これらの一次ビームの一方が基準ビームとして利用され、他方が試料ビームとして利用される。分光計100は、基準ビームおよび試料ビームの両部分を検出するのに単一の検出器112を使用する。さらに、偏光ビームスプリッタキューブ110を使用することにより、分光計100は、試料に対して90°の角度で試料に照射を加え、試料に対して90°の角度で試料から反射したランダムに偏光した拡散反射を検出することができる。偏光ビームスプリッタキューブ110はまた、分光計100が、検出器112に達する正反射および表面反射の量を最小限にすることを可能にする。
【0034】
1種またはそれ以上の具体的な実施態様を参照しながら本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の真髄および範囲を逸脱することなく、本発明に多くの変更を加えうることを理解するであろう。例えば、図1のシャッタ18をスプリッタキューブ20と光ファイバ38との間の領域に配置し直してもよい。さらに、図1のビームスプリッタ20および22ならびに図2の偏光ビームスプリッタ110は立方形に示されているが、非立方形のビームスプリッタを用いてもよい。これらの実施態様およびその明白な変形態様はいずれも、冒頭の請求の範囲に定めた本発明の真髄および範囲に該当するものとみなされよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】透過または反射計測のいずれかを実施することができる、本発明によるデュアルビーム同調性分光計を示す略図である。
【図2】反射計測を実施することができる、本発明による代替態様のデュアルビーム同調性分光計を示す略図である。
【図3】図2の分光計に用いられる偏光ビームスプリッタキューブを示す斜視図である。
【符号の説明】
10、100 分光計
12、102 人工発光源
14、104 音響光学的同調性フィルタ(AOTF)
16、18、106、108 シャッタ
20、22、110 ビームスプリッタキューブ
24、112 検出器
Claims (9)
- 入射光ビームを発する発光源と、
該入射光ビームを受け、それから基準ビームおよび試料ビームを生成するための、音響光学的同調性フィルタを含む生成手段と、
該基準ビームの少なくとも一部を検出し、試料に試料ビームが照射されたのち該試料から発される該試料ビームの少なくとも一部を検出するための検出器と、
該試料と該検出器との間に配設された偏光ビームスプリッタと、
該基準ビームおよび該試料ビームをそれぞれ該偏光ビームスプリッタの反対側の面に入射させるための搬送手段と、
該基準ビームの該一部を選択的に通過させる第一のシャッタと、該試料ビームの該一部を選択的に通過させる第二のシャッタとを含むシャッタ構造であって、該第一のシャッタを開き且つ該第二のシャッタを閉じて、該検出器に該基準ビームの該一部のみを検出させ、また、該第一のシャッタを閉じ且つ該第二のシャッタを開いて、該検出器に該試料ビームの該一部のみを検出させるシャッタ構造とを含むことを特徴とするデュアルビーム同調性分光計。 - 該音響光学的同調性フィルタが該入射光ビームを処理して零次ビーム、第一の偏光された一次ビームおよび第二の偏光された一次ビームを生成し、該第一の一次ビームが該第二の一次ビームに対して直交方向に偏光しているようにした請求項1記載の分光計。
- 該第一の一次ビームが該基準ビームであり、該第二の一次ビームが該試料ビームである請求項2記載の分光計。
- 該第一のシャッタが開いているときに該基準ビームの該一部を該検出器に運び、該第二のシャッタが開いているときに該試料ビームの実質部分を試料上に運ぶために、該偏光ビームスプリッタが該基準および試料ビームの偏光に対して向けられており、該偏光ビームスプリッタが、該第二のシャッタが開いているときに該試料から反射した光を受け、該光のランダムに偏光した拡散反射した部分を該検出器に運ぶ請求項3記載の分光計。
- 該基準ビームの偏光が該偏光ビームスプリッタに対する入射面に対して平行であり、該試料ビームの偏光が該偏光ビームスプリッタに対するその入射面に対して直交する請求項4記載の分光計。
- 該搬送手段が収束レンズおよびミラーを含む請求項1から5の何れか1項記載の分光計。
- 該音響光学的同調性フィルタに結合された無線周波数供給源をさらに含み、該無線周波数供給源が該音響光学的同調性フィルタに無線周波数同調信号を供給して、該基準ビームおよび該試料ビームの周波数を制御する請求項1から6の何れか1項記載の分光計。
- 入射光ビームを発する発光源と、
該入射光ビームを受け、それから第一および第二の直交方向に偏光した一次ビームを生成する音響光学的同調性フィルタと、
該第一の一次ビームの少なくとも一部を検出器に向けて運び、該第二の一次ビームの少なくとも一部を試料に対して90°の入射角で試料に向けて送るために配設された偏光ビームスプリッタであって、さらに、試料に対して90°の反射角で試料から反射した光を受け、反射した光のランダムに偏光した拡散反射した部分を該検出器に運ぶために配設された偏光ビームスプリッタと、
該音響光学的同調性フィルタからの該第一の一次ビームを該偏光ビームスプリッタの片側に向けるための第一の搬送手段と、該音響光学的同調性フィルタからの該第二の一次ビームを該偏光ビームスプリッタの反対側に向けるための第二の搬送手段と、
該第一および第二の搬送手段それぞれに沿って配設された、該第一および第二の一次ビームそれぞれを選択的に中に通過させるための第一および第二のシャッタであって、該第一および第二の一次ビームの一方のみを所与の期間、該偏光ビームスプリッタに到達させるように作動する第一および第二のシャッタとを含むことを特徴とするデュアルビーム同調性反射率分光計。 - 試料中の被検体の濃度を計測する方法であって、
発光源によって入射光ビームを発する段階と、
光ビームを音響光学的同調性フィルタに運ぶ段階と、
音響光学的同調性フィルタによって、基準ビームに相当する第一の直交方向に偏光した一次ビームおよび試料ビームに相当する第二の直交方向に偏光した一次ビームを生成する段階と、
基準ビームを音響光学的同調性フィルタから偏光ビームスプリッタに運ぶ段階と、
偏光ビームスプリッタを用いて基準ビームの一部を検出器に運ぶ段階と、
シャッタを用いて偏光ビームスプリッタへの基準ビームの搬送を遮断する段階と、
試料ビームを音響光学的同調性フィルタから偏光ビームスプリッタに運ぶ段階と、
試料ビームの少なくとも一部を試料に対して90°の角度で試料に向けて運ぶ段階と、
試料ビームのランダムに偏光した拡散反射した部分を偏光ビームスプリッタを介して検出器に運ぶ段階とを含むことを特徴とする方法。
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