JP2020159972A - 広帯域パルス光源装置、分光測定装置及び分光測定方法 - Google Patents

広帯域パルス光源装置、分光測定装置及び分光測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 パルス伸長を行いつつも意図しない非線形光学効果が生じないようにし、分光測定を高精度且つ高速に行えるようにする。【解決手段】 広帯域パルス光を出射するパルス光源1からの広帯域パルス光は、第一のパルス伸長器2でパルス幅が伸長され、第二のパルス伸長器3でパルス幅がさらに伸長される。第一のパルス伸長器2は、第二のパルス伸長器3に比べて非線形光学効果が生じにくい伸長器であり、広帯域パルス光は、第一のパルス伸長器2によりパルスのピーク強度が低下した状態で第二のパルス伸長器3に入射する。このため、波長間の強度不均一化や時間波長一意性が崩れるのが防止される。【選択図】 図1

Description

この出願の発明は、広帯域のパルス光を出射する光源装置に関するものであり、また光源装置を使用した分光測定の技術に関するものである。
パルス光源の典型的なものは、パルス発振のレーザ(パルスレーザ)である。近年、パルスレーザの波長を広帯域化させる研究が盛んに行われており、その典型が、非線形光学効果を利用したスーパーコンティニウム光(以下、SC光という。)の生成である。SC光は、パルスレーザ源からの光をファイバのような非線形素子に通し、自己位相変調や誘導ラマン散乱のような非線形光学効果により波長を広帯域化させることで得られる光である。
特開2013−205390号公報 米国特許第7184144号公報
上述した広帯域パルス光は、波長域としては伸長されているが、パルス幅(時間幅)としては狭いままである。しかし、ファイバのような伝送媒体における群遅延を利用するとパルス幅も伸長することができ、この際、適切な分散特性を持つ素子を選択すると、パルス内の経過時間(時刻)と波長とが1対1に対応した状態でパルス伸長することができる。このようにパルス内の経過時間と波長とが1対1に対応した状態のパルス光は、チャープパルス光又は線形チャープパルス光と呼ばれることもある。
このようにパルス伸長させた広帯域パルス光(以下、広帯域伸長パルス光という。)における経過時間と波長との対応関係は、分光測定に効果的に利用することが可能である。つまり、広帯域伸長パルス光をある検出器で受光した場合、検出器が検出した光強度の時間的変化は、各波長の光強度即ちスペクトルに対応している。したがって、検出器の出力データの時間的変化をスペクトルに換算することができ、回折格子のような特別な分散素子を用いなくても分光測定が可能になる。つまり、広帯域伸長パルス光を試料に照射してその試料からの光を検出器で受光してその時間的変化を測定することで、その試料の分光特性(例えば分光透過率)を知ることができるようになる。
このように、広帯域伸長パルス光は分光測定等の分野で特に有益と考えられる。しかしながら、発明者の研究によると、より強い光を出力させるべくパルス光源の出力を高くした場合、意図しない非線形光学効果がパルス伸長素子において生じ、波長間の強度均一性が著しく低下してしまったり、経過時間と波長との一意性(1対1の対応性)が崩れてしまったりすることが判明した。
この出願の発明は、この知見に基づくものであり、パルス伸長を行いつつも意図しない非線形光学効果が生じないようにした広帯域パルス光源装置を提供することを目的とし、またそのような広帯域パルス光源装置を使用することで分光測定を高精度且つ高速に行えるようにすることを目的としている。
上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、広帯域パルス光を出射するパルス光源と、パルス光源からの広帯域パルス光のパルス幅を伸長させる第一のパルス伸長器と、第一のパルス伸長器でパルス幅が伸長された広帯域パルス光のパルス幅をさらに伸長させる第二のパルス伸長器とを備えている。第一のパルス伸長器は、第二のパルス伸長器に対して広帯域パルス光を入射させた際に第二のパルス伸長器に非線形光学効果が生じる場合、同一の条件で広帯域パルス光を入射させた場合に非線形光学効果が生じない程度に広帯域パルス光のピーク強度を低下させるパルス伸長器である。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、第一のパルス伸長器が線形素子であるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、第一のパルス伸長器が、自由空間で波長毎に異なった遅延を生じさせることによりパルス幅を伸長させる機器であるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、第一のパルス伸長器が、広帯域パルス光を空間的に波長分散させる分散素子と、一対の平板ミラーを反射面を向かい合わせて非平行に対向させた非平行ミラー対と、集光光学系と、取り出し光学系とを備えており、集光光学系は、分散素子が波長分散させた光を、非平行ミラー対のうちの一方の平板ミラーの反射面上の点に集光させる光学系であって、波長に応じて異なる角度で当該一点に集光させる光学系であり、取り出し光学系は、非平行ミラー対を形成する一対の平板ミラーに交互に反射して戻ってきた各波長の光を取り出して前記第二のパルス伸長器に入射させる光学系であるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、集光光学系が、分散素子で波長分散させた光を平行光にするコリメータレンズと、コリメータレンズが平行光にした光を集光して前記一点に集光させる集光レンズとを含んでおり、取り出し光学系は、コリメータレンズと集光レンズとの間に配置されたビームスプリッタを含んでいるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、ビームスプリッタが偏光ビームスプリッタであり、このビームスプリッタと非平行ミラー対との間には、λ/4波長板が配置されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、第一のパルス伸長器が、広帯域パルス光を空間的に波長分散させる分散素子と、集光光学系と、マルチモードファイバとを備えており、集光光学系は、分散素子が波長分散した広帯域パルス光を波長に応じて異なった角度でマルチモードファイバに入射させる光学系であり、第二のパルス伸長器は、マルチモードファイバの出射端からの光が入射する位置に配置されているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、パルス光源が、パルスレーザ源と、パルスレーザ源からのレーザ光に非線形光学効果を生じさせてスーパーコンティニウム光とする非線形素子とを備えたスーパーコンティニウム光源であるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、第二のパルス伸長器が、シングルモードファイバであるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の広帯域パルス光源装置は、第二のパルス伸長器が、シングルモードのマルチコアファイバ又はシングルモードのバンドルファイバであるという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、この出願の分光測定装置は、上述した構成の広帯域パルス光源装置と、この広帯域パルス光源装置からの広帯域パルス光が照射された対象物からの光が入射する位置に配置された検出器と、検出器からの出力に従って対象物の分光スペクトルを算出する演算手段とを備えている。この分光測定装置において、第一第二のパルス伸長器は、広帯域パルス光を1パルス内の経過時間と波長との関係が1対1になるようにパルス幅を伸長するパルス伸長器である。
また、上記課題を解決するため、この出願の分光測定方法は、上述した構成の広帯域パルス光源装置からの広帯域パルス光を対象物に照射する照射工程と、照射工程において広帯域パルス光が照射された対象物からの光を検出器で検出する検出工程と、検出器からの出力に従って対象物の分光スペクトルを算出する演算処理工程とを備えている。この分光測定方法において、第一第二のパルス伸長器は、広帯域パルス光を1パルス内の経過時間と波長との関係が1対1になるようにパルス幅を伸長するパルス伸長器である。
以下に説明する通り、この出願の広帯域パルス光源装置によれば、第一のパルス伸長器によって予備伸長された広帯域パルス光が第二のパルス伸長器に入射してさらにパルス伸長がされる。この際、第一のパルス伸長器は第二のパルス伸長器よりも非線形光学効果が生じにくいものであるため、ハイパワーの広帯域パルス光を出力させる際にも波長間で均一な強度の光としたり時間波長一意性が保持された光としたりするのが容易となる。このため、分光測定のような光測定に好適に利用できる光源装置が提供される。
また、この出願の分光測定装置又は分光測定方法によれば、パルス光源からの広帯域パルス光のパルス幅がパルス内の経過時間と波長との関係が1対1になるように伸長された状態で当該広帯域パルス光が対象物に照射されて分光測定が行われるので、回折格子の掃引のような時間を要する動作は不要であり、高速の分光測定が行える。そして、時間波長一意性を確保したパルス伸長を行う際、第一のパルス伸長器で予備伸長をしてから第二のパルス伸長器でさらに伸長を行うので、高い照度で対象物に光を照射する場合にも時間波長一意性が崩れることがない。このため、吸収の多い対象物についての光測定のように、ハイパワーの光を照射する必要のある光測定を高精度に行うことができ、高速且つ高信頼性の分光測定装置及び分光測定方法となる。
第一の実施形態の広帯域パルス光源装置の概略図である。 広帯域パルス光のパルス伸長の原理について示した概略図である。 広帯域パルス光のパルス伸長において意図しない非線形光学効果が生じることを確認した実験の結果を示した図である。 第一の実施形態における第一のパルス伸長器の概略図である。 第二の実施形態の広帯域パルス光源装置の主要部の概略図である。 第三の実施形態の広帯域パルス光源装置の主要部の概略図である。 第四の実施形態の広帯域パルス光源装置の主要部の概略図である。 実施形態の分光測定装置の概略図である。 分光測定装置が備える測定プログラムの一例について主要部を概略的に示した図である。
次に、この出願の発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
まず、広帯域パルス光源装置の発明の実施形態について説明する。図1は、第一の実施形態の広帯域パルス光源装置の概略図である。
図1に示す広帯域パルス光源装置は、広帯域パルス光を出射するパルス光源1を備えており、パルス光源1から出射される広帯域パルス光のパルス幅を伸長させて出力する装置となっている。そして、この装置の大きな特徴点は、パルス伸長のため、第一第二の二つのパルス伸長器2,3を備えていることである。即ち、パルス光源1からの広帯域パルス光L1のパルス幅を伸長させる第一のパルス伸長器2と、第一のパルス伸長器2でパルス幅が伸長された広帯域パルス光L2のパルス幅をさらに伸長させる第二のパルス伸長器3とを備えている。
まず、パルス光源1について説明すると、この実施形態では、パルス光源1はSC光を出射するものとなっている。SC光源であるパルス光源1は、超短パルスレーザ源11と、非線形素子12とを備えている。
超短パルスレーザ源11としては、ゲインスイッチレーザ、マイクロチップレーザ、ファイバレーザ等を用いることができる。また、非線形素子12としては、ファイバが使用される場合が多い。例えば、フォトニッククリスタルファイバやその他の非線形ファイバが非線形素子12として使用できる。ファイバのモードとしてはシングルモードの場合が多いが、マルチモードであっても十分な非線形性を示すものであれば、非線形素子12として使用できる。
この実施形態の広帯域パルス光源装置は、材料の分光分析等の光測定に利用されることを想定しており、したがって出力される広帯域パルス光は、900〜1300nmの赤外域の光となっている。また、広帯域とは、ある波長幅において連続スペクトルであることを意味するが、例えばこれは少なくとも10nm、50nm又は100nmの波長幅に亘って連続スペクトルの光ということになる。つまり、この実施形態では、パルス光源1は、900nmから1300nmの範囲において少なくとも10nm、50nm又は100nmの波長幅に亘って連続したスペクトルの光を出射する光源となっている。尚、SC光源である場合の他、パルス光源1は、SLD(Superluminescent Diode)光源のような他の広帯域パルス光源である場合もある。
次に、パルス伸長のための構成について説明する。
パルス光源1から出射される光は、波長帯域としては広がっているが、パルス幅としてはフェムト秒ないしピコ秒オーダーの超短パルスのままである。このままでは光測定用としては使用しづらいので、パルス伸長させる。この際に重要なことは、意図しない非線形光学効果が生じないようにすることである。この実施形態では広帯域パルス光はSC光であり、SC光の生成の際に非線形光学効果を生じさせている。しかしながら、生成したSC光においてさらに非線形光学効果が生じると、波長間での強度均一性が著しく低下したり、SC光において達成されていた時間波長一意性が損なわれてしまったりする問題が生じる。以下、この問題について説明する。
図2は、広帯域パルス光のパルス伸長の原理について示した概略図である。SC光のような広帯域パルス光のパルス幅を伸長させる手段としては、分散補償ファイバ(DCF)のような特定の群遅延特性を有するファイバを利用する構成が採用され得る。例えば、ある波長範囲において連続スペクトルであるSC光L1を当該波長範囲で正の分散特性を有する群遅延ファイバ9に通すと、パルス幅が効果的に伸長される。即ち、図2に示すように、SC光L1においては、超短パルスではあるものの、1パルスの初期に最も長い波長λの光が存在し、時間が経過すると徐々に短い波長の光が存在し、パルスの終期には最も短い波長λの光が存在する。この光を、正常分散の群遅延ファイバ9に通すと、正常分散の群遅延ファイバ9では、波長の短い光ほど遅れて伝搬するので、1パルス内の時間差が増長され、ファイバ9を出射する際には、短い波長の光は長い波長の光に比べてさらに遅れるようになる。この結果、出射するSC光L2は、時間対波長の一意性が確保された状態でパルス幅が伸長された光となる。即ち、図2の下側に示すように、時刻t〜tは、波長λ〜λに対してそれぞれ1対1で対応した状態でパルス伸長される。
尚、パルス伸長のための群遅延ファイバ9としては、異常分散ファイバを使用することも可能である。この場合は、SC光においてパルスの初期に存在していた長波長側の光が遅れ、後の時刻に存在していた短波長側の光が進む状態で分散するので、1パルス内での時間的関係が逆転し、1パルスの初期に短波長側の光が存在し、時間経過とともにより長波長側の光が存在する状態でパルス伸長されることになる。但し、正常分散の場合に比べると、パルス伸長のための伝搬距離をより長くすることが必要になる場合が多く、損失が大きくなり易い。したがって、この点で正常分散の方が好ましい。
このような群遅延ファイバを使用したパルス伸長において、ファイバに入射させる広帯域パルス光の強度を高くしていくと、非線形光学効果が生じる。図3は、広帯域パルス光のパルス伸長において意図しない非線形光学効果が生じることを確認した実験の結果を示した図である。図3において縦軸は対数目盛である。
図3に結果を示す実験では、中心波長1064nm、パルス幅2ナノ秒のマイクロチップレーザ光を非線形素子としてのフォトニッククリスタルファイバに入れてSC光とし、長さ5kmのシングルモードファイバを群遅延ファイバとして使用してパルス伸張させた。シングルモードファイバは、1100〜1200nmの範囲で正常分散のファイバである。この際、シングルモードファイバへの入射SC光のエネルギーを、0.009μJ、0.038μJ、0.19μJ、0.79μJと変化させた。
図3に示すように、SC光のエネルギーが0.19μJまでの場合には、1100〜1200nmの波長範囲において出射光強度の大きなばらつきはないが、0.79μJの場合、出射光強度は波長に応じて激しく変動する。このような変動は、群遅延ファイバとしてのシングルモードファイバに入射して伝搬する過程でSC光に意図しないさらなる非線形光学効果が生じたことを示すものである。このような非線形光学効果が生じると、新たな波長が別の時刻に生成されるため、波長間の強度均一性が著しく低下したり、時間波長一意性が崩れてしまったりする問題がある。時間波長一意性とは、1パルス内の経過時間(時刻)と波長との関係が1対1で対応しているということであり、経過時間を特定すると波長が特定されるということを意味する。尚、図3に結果を示す実験では、入射するSC光のパルス幅は変わっていないので、ピーク値を変化させたということになる。
発明者は、このような知見に基づき、パルス伸長の構成として、上記のように第一第二のパルス伸長器3を備える構成を想到するに至った。即ち、実施形態の装置は、パルス伸長を二段階に分け、第一のパルス伸長器2において予備的に伸長させた後、第二のパルス伸長器3において必要なパルス幅にまで伸長させるという構成を採用する。
第一のパルス伸長器2において予備伸張を行う際に重要なことは、ある程度高い強度の広帯域パルス光が入射した場合にも意図しない非線形光学効果が生じないようにすることであり、且つパルス伸長させた光が第二のパルス伸長器3に入射する際には、第二のパルス伸長器3において意図しない非線形光学効果が生じないピーク強度になっているということである。
つまり、第一のパルス伸長器2と第二のパルス伸長器3について、それぞれ同じ群遅延ファイバを使用して単にパルス伸長を二段階に分ける構成では、第一のパルス伸長器2に高強度の広帯域パルス光が入射した段階で意図しない非線形光学効果が生じてしまうので、意味がない。言い換えれば、第一のパルス伸長器2は、第二のパルス伸長器3に比べて非線形光学効果が生じにくいものであることを要する。即ち、第二のパルス伸長器3に対して広帯域パルス光を入射させた際に第二のパルス伸長器3において非線形光学効果が生じる場合、第一のパルス伸長器2は、同一の条件で広帯域パルス光を入射させた場合に非線形光学効果が生じないパルス伸長器であるということである。第一のパルス伸長器2は、第二のパルス伸長器3に比べて非線形光学効果が発生する際の閾値が高いという言い方も可能である。閾値とは、例えば、パルスのピーク強度を高めていくと波長間の強度が不均一化する場合、その不均一化が生じる臨界的なピーク強度ということができる。
尚、この実施形態では、第二のパルス伸長器3としては、上述したのと同様の群遅延ファイバが使用されている。したがって、従前のパルス伸長器に対して第一のパルス伸長器2を追加した(挿入した)構成となっている。即ち、第一のパルス伸長器2がなくて第二のパルス伸長器3のみである場合に発生し得る非線形光学効果が、第一のパルス伸長器2がある場合には発生しない、という点に第一のパルス伸長器2の意義がある。
このような第一のパルス伸長器2の具体的な構成について、図4を参照して説明する。図4は、第一の実施形態における第一のパルス伸長器2の概略図である。
第一の実施形態では、第一のパルス伸長器2は、分散素子と、非平行ミラー対22とを組み合わせた機器となっている。このパルス伸長器2は、光軸に対する角度が波長に応じて異なる角度になるようにする角分散モジュール21と、角分散モジュール21に対して接続された非平行ミラー対22と、非平行ミラー対22で折り返された各波長の光を取り出すビームスプリッタ23と、ビームスプリッタ23で取り出された各波長の光を第二のパルス伸長器3に入射させる入射光学系24とを備えている。
図4に示すように、角分散モジュール21は、分散素子として使用した回折光子211と、回折格子211で波長分散させた光を平行光にするコリメータレンズ212と、コリメータレンズ212で平行光にされた光を非平行ミラー対22の入射点Pに結ばせる集光レンズ213とを含んでいる。取り出し用のビームスプリッタ23は、コリメータレンズ212と集光レンズ213の間に配置されている。
回折格子211で分散した各波長の光は、集光レンズ213で集光されて非平行ミラー対22の入射点Pに結ぶ。入射点Pに達する際の角度は、波長に応じて異なる角度であり、連続的に異なる角度である。非平行ミラー対22は、僅かな角度αだけ傾けられた一対の平板ミラー221で構成されているため、図4に示すように、入射した各波長の光は、平板ミラー221に交互に反射しながら戻ってくる。この際、入射点Pに集光する際の集光角θ、傾き角α、入射点Pで見た非平行ミラー対22の離間距離Dにより、飛び飛び波長ではあるものの波長λ〜λの光は入射点Pの位置にちょうど戻ってくる。したがって、これらの光は、入射点Pで反射してビームスプリッタ23に達し、ビームスプリッタ23で一部が反射して取り出される。取り出された光は、入射光学系24により第二のパルス伸長器3に入射する。
この際、図4から解るように、波長λ〜λの光は、異なる入射角で入射点Pに入射するので、折り返して戻ってくるまでの光路長が波長に応じて異なることになる。つまり、ファイバにおける波長に応じた群遅延(群分散)と同様に、波長λ〜λの光において時間分散が生じている。したがって、入射光学系24により第二のパルス伸長器3に入射する広帯域パルス光は、パルス伸長された光となっている。
また、図4において、波長λの光は、入射点Pに対する入射角が最も小さく、波長λの光は入射角が最も大きい。このため、波長λの光は最も光路長が短く、波長λの光は最も光路長が長くなっている。したがって、回折格子211の姿勢を適宜選定し、波長λが最も長波長となり、波長λが最も短波長となるようにすれば、正常分散特性の群遅延ファイバと同様に、時間波長一意性が確保された状態でパルス伸長がされることになる。
そして、パルス伸長がされるということは、光のエネルギーが時間的に分散するということであり、パルスのピーク強度は低下する。即ち、回折格子211に入射した際に比べて、第二のパルス伸長器3に入射する際には、広帯域パルス光のピーク強度は低下している。
第二のパルス伸長器3は、前述したように群遅延ファイバが使用されている。例えば、石英系のシングルモードファイバを第二のパルス伸長器3として使用することができる。ファイバの長さは、最終的なパルス幅に応じて決められる。但し、パルス幅自体よりも、前述した時間対波長の傾き(図2に示すΔt/Δλ)として必要な値を達成するためにファイバの長さが選定される場合が多い。
次に、実施形態の広帯域パルス光源装置の動作について説明する。
超短パルスレーザ源11から出射された超短パルス光は、非線形素子12で広帯域化されて広帯域パルス光(SC光)L1となり、第一のパルス伸長器2に入射する。この光は、回折格子211で波長分散し、集光レンズ213で集光されて非平行ミラー対22の入射点Pに波長に応じて異なる角度で入射する。各波長の光は、二枚の平板ミラー221に交互に反射しながら折り返し、入射点Pに戻る。この際、波長に応じて光路長が異なるので、入射点Pに戻る時刻は、波長により順次異なる時刻となる。即ち、パルス伸長がされた状態となる。パルス伸長された光L2は、ビームスプリッタ23に反射して取り出され、入射光学系24により第二のパルス伸長器3に入射する。
第二のパルス伸長器3は、ファイバの群遅延特性によりさらなるパルス伸長を行う。そして、所望の時間対波長の傾きに伸長された広帯域パルス光L3は、第二のパルス伸長器3から出射される。
このような実施形態の広帯域パルス光源装置によれば、第一のパルス伸長器2によって予備伸長された広帯域パルス光が第二のパルス伸長器3に入射してさらにパルス伸長がされ、この際、第一のパルス伸長器2は第二のパルス伸長器3よりも非線形光学効果が生じにくいものであるため、ハイパワーの広帯域パルス光を出力させる際にも波長間で均一な強度の光としたり時間波長一意性が保持された光としたりするのが容易となる。このため、分光測定のような光測定に好適に利用できる光源装置が提供される。
このような第一の実施形態の装置は、第一のパルス伸長器2として、線形素子ないしは線形の光学機器を採用したことによると言える。したがって、線形素子ないしは線形の光学機器であれば、他の素子ないし機器を使用しても良い。ここで、線形素子ないしは線形の光学機器とは、広帯域パルス光を入力しても非線形光学効果を生じない素子ないし光学機器をいう。
図4に示す第一のパルス伸長器2は、自由空間で波長毎に異なった遅延を生じさせることによりパルス幅を伸長させる機器ということができる。このように自由空間での伝搬において波長毎に遅延に差異を生じさせる構成は、一般に非線形光学効果を生じさせないので、第一のパルス伸長器の構成として好適である。
尚、コリメータレンズ212及び集光レンズ213は集光光学系を構成しているが、この他、ミラーによって集光する光学系が採用されることもあり得る。
次に、第二の実施形態の広帯域パルス光源装置について説明する。図5は、第二の実施形態の広帯域パルス光源装置の主要部の概略図である。第二の実施形態では、第一のパルス伸長器2の構成が異なっており、図5にはこの構成が示されている。
図5に示す例の第一のパルス伸長器2は、図4に示すものとほぼ同様であるが、偏光ビームスプリッタ25を使用して広帯域パルス光を取り出す構成となっている。即ち、コリメータレンズ212と集光レンズ213の間には、偏光ビームスプリッタ25が配置されている。
また、コリメータレンズ212と偏光ビームスプリッタ25との間には、偏光板251が配置されている。そして、偏光ビームスプリッタ25と集光レンズ213の間には、λ/4波長板252が配置されている。
偏光板251は、偏光ビームスプリッタ25の特性に従って配置される。例えば、偏光ビームスプリッタ25として、p偏光反射、s偏光透過のものが採用されている場合、偏光板251は、入射する広帯域パルス光が偏光ビームスプリッタ25のs偏光の方向の直線偏光光になる姿勢で配置される。
第二の実施形態では、回折格子211により波長分散した広帯域パルス光は、偏光板251によってp偏光になった後、偏光ビームスプリッタ25を通過する。この光は、λ/4波長板252により円偏光となり、集光レンズ213により非平行ミラー対22の入射点Pに集光する。そして、同様に一対の平板ミラー221に交互に反射しながら折り返し、入射点P、集光レンズ213を経由してλ/4波長板252に達する。円偏光であるため、この光は、λ/4波長板252により再び直線偏光光になる。この光は、p偏光の直線偏光光になるため、偏光ビームスプリッタ25に反射して取り出され、入射光学系24により第二のパルス伸長器3に入射する。
この実施形態においても、第二のパルス伸長器3に入射する広帯域パルス光は予備伸長がされているので、ピーク強度が低くなっている。そして、第一のパルス伸長器2において意図しない非線形光学効果が生じないので、波長間の強度不均一化や時間波長一意性の低下といった問題は生じない。
そして、この実施形態では、偏光ビームスプリッタ25を採用するとともに偏光制御をしているので、図4の例に比べて取り出しの際の損失が抑えられている。このため、より効率の良い広帯域パルス光源装置となる。
尚、この例において、λ/4波長板252は、広帯域パルス光の偏光制御用であるため、広帯域用のものが使用される。
また、パルス源1によっては直線偏光光を出射する場合があり得るので、その場合には偏光板251が不要な場合もあるし、λ/2波長板等により偏光ビームスプリッタ25に応じて偏光方向を変える構成が採用されることもある。これらの構成では、さらに損失が少なくなるので、好適である。
図6は、第三の実施形態の広帯域パルス光源装置の主要部の概略図である。第三の実施形態も、第一のパルス伸長器2の構成が上記各実施形態と異なっており、この部分の構成が図6に示されている。この実施形態では、第一のパルス伸長器2は、分散素子とマルチモードファイバとを組み合わせた例となっている。
図6に示すように、この実施形態では、第一のパルス伸長器2は、パルス光源1からの広帯域パルス光を波長分散させる分散素子と、分散素子が波長分散させた光を伝送するマルチモードファイバ272と、分散素子が波長分散させた光をマルチモードファイバ272の入射端に集光する集光レンズ273とを備えている。
分散素子としては、二つの回折格子271が使用されている。集光レンズ273は、マルチモードファイバ272に対して、各波長の光が互いに異なる角度で入射させるためものである。
図6に示すように、マルチモードファイバ272では、断面積の大きなコア中で各波長の光が反射しながら伝搬する。この際、大きな入射角で入射した波長λの光はコア中での反射回数が少なく、入射角が小さくなるにつれて反射回数が多くなる。最も小さな入射角で入射する波長λの光は、最も反射回数が多くなる。反射回数の数が多くなるについて光路長も長くなるから、波長λの光は最も光路長が短く、波長λの光は最も光路長が長くなる。
このため、マルチモードファイバ272の出射端から出射する各波長λ〜λの光は、波長λが最も遅れの少ない光であり、波長λの光が最も遅れの多い光となる。即ち、パルス伸長が達成された状態となる。
尚、この実施形態でも、第二のパルス伸長器3としてはシングルモードファイバが使用されるが、シングルモードファイバはマルチモードファイバに比べてコア径が小さいので、間にレンズ274が配置される。レンズ274は、マルチモードファイバ272の出射端から出射した広帯域パルス光を再度集光して第二のパルス伸長器3としてのシングルモードファイバのコアに入射させる。
この例では、第一のパルス伸長器2はファイバを含んでいるが、非線形光学効果が生じにくいマルチモードファイバ272を採用しているので、波長間の均一性低下を抑制したり時間波長一意性が崩れるのを防止したりしながらパルス伸長をするのが容易である。
尚、マルチモードファイバの場合、モード間遅延時間差が存在しており、同一の波長での光であってもモード間の遅延時間差によって1パルス内の存在時刻がばらついてくる可能性がある。この問題は、ファイバが長くなってくると顕在化するので、マルチモードファイバ272の長さは、モード間遅延時間差が時間波長一意性に影響を与えない長さとすることが望ましい。例えば、マルチモードファイバ272の長さは100m以下とすることが好ましい。
上記以外にも、第一のパルス伸長器2として使用できる構成は考えられる。例えば、複数の回折格子を使用して波長分散をする際、波長に応じて光路差ができるようにし、それによってパルス伸長をする構成が考えられる。また、複数のプリズムを並べてそれらを通過させながら光を折り返す光学系において、波長に応じて光路差ができるようにした構成も考えられる。このような光学系も、線形な光学機器であるといえるので、同様に第一のパルス伸長器2として使用できる。
次に、第四の実施形態の広帯域パルス光源装置について説明する。図7は、第四の実施形態の広帯域パルス光源装置の主要部の概略図である。第四の実施形態では、第二のパルス伸長器3として、シングルモードのマルチコアファイバが使用されている。第一のパルス伸長器2は、図5に示す第二の実施形態のものと同様のものが使用されている。
図7に示すように、第一のパルス伸長器2とマルチコアファイバである第二のパルス伸長器3とを接続する接続素子31が設けられている。接続素子31としては、この実施形態ではアレイ導波路が使用されている。アレイ導波路は、基板上に導波路を形成した構造のものである。アレイ導波路は、各導波路の入射端が第一のパルス伸長器2における入射光学系24の各波長λ〜λの光の集光位置に位置するよう配置される。アレイ導波路の出射端は立体化され、マルチコアファイバの各コアに接続されている。したがって、このアレイ導波路は、導波路型のファンインデバイスということができる。
この実施形態では、第二のパルス伸長器3がマルチコアファイバであるので、意図しない非線形光学効果の発生がさらに抑制される。即ち、マルチコアファイバを使用すると、各波長λ〜λの光が各コアに分かれて伝送されるので、1コアあたりのパワーが小さくなる。このため、意図しない非線形光学効果の発生がさらに抑制される。
尚、マルチコアファイバの群分散特性は使用波長範囲において正常分散であることが好ましいが、異常分散であっても実施可能である。また、マルチコアファイバは、シングルモードのマルチコアファイバであることが好ましい。これは、前述したモード間遅延時間差の問題を避けるためである。
また、第一のパルス伸長器2とマルチコアファイバとの接続については、レンズを使用した空間型のデバイスを使用することもできる。例えば、マルチコアファイバのコアの位置に対応して各アレイレンズが配置されたアレイレンズユニットを使用して各コアに各波長λ〜λの光を入射させる構成が考えられる。
尚、マルチコアファイバのコア数は、数個から十数個程度であることが多いので、λ〜λの波長の数よりもコア数の方が少ない場合がある。この場合は、連続する複数の波長の光を1個のコアに入射させてまとめて伝送する構成が採用される。
また、第二のパルス伸長器3として、バンドルファイバを使用することもできる。バンドルファイバとしては、シングルモードファイバをバンドルしたものであることが好ましい。同様に、モード間遅延時間差の問題を避けるためである。
次に、分光測定装置及び分光測定方法の実施形態について説明する。図8は、実施形態の分光測定装置の概略図である。図8に示す分光測定装置は、広帯域パルス光源装置10と、広帯域パルス光源装置10から出射された広帯域パルス光を対象物Sに照射する照射光学系4と、光照射された対象物Sからの光が入射する位置に配置された検出器5と、検出器5からの出力に従って対象物Sの分光スペクトルを算出する演算手段6とを備えている。
広帯域パルス光源装置(以下、単に光源装置という。)10としては、上記いずれかの実施形態のものが採用されている。照射光学系4は、この実施形態では、ビームエキスパンダ41を含んでいる。光源装置10からの光は、時間伸長された広帯域パルス光ではあるものの、超短パルスレーザ源11からの光であり、ビーム径が小さいことを考慮したものである。この他、ガルバノミラーのようなスキャン機構を設け、ビームスキャンにより広い照射領域をカバーする場合もある。
この実施形態では、対象物Sの吸収スペクトルを測定することを想定しており、したがって検出器5は、対象物Sからの透過光が入射する位置に設けられている。対象物Sを配置する透明な受け板8が設けられている。照射光学系4は上側から光照射するようになっており、検出器5は受け板8の下方に配置されている。
演算手段6としては、この実施形態では汎用PCが使用されている。検出器5と演算手段6の間にはAD変換器7が設けられており、検出器5の出力はAD変換器7を介して演算手段6に入力される。
演算手段6は、プロセッサ61や記憶部(ハードディスク、メモリ等)62を備えている。記憶部62には、検出器5からの出力データを処理して吸収スペクトルを算出する測定プログラム63やその他の必要なプログラムがインストールされている。
この実施形態においては、時間波長一意性を確保した伸長パルス光を照射する光源装置10を使用しているので、測定プログラム63もそれに応じて最適化されている。図9は、分光測定装置が備える測定プログラム63の一例について主要部を概略的に示した図である。
図9の例は、測定プログラム63が吸収スペクトル(分光吸収率)を測定するプログラムの例となっている。吸収スペクトルの算出に際しては、基準スペクトルデータが使用される。基準スペクトルデータは、吸収スペクトルを算出するための基準となる波長毎の値である。基準スペクトルデータは、光源装置10からの光を対象物Sを経ない状態で検出器5に入射させることで取得する。即ち、対象物Sを経ないで光を検出器5に直接入射させ、検出器5の出力をAD変換器7経由で演算手段6に入力させ、時間分解能Δtごとの値を取得する。各値は、Δtごとの各時刻t,t,t,・・・の基準強度として記憶される(V,V,V,・・・)。時間分解能Δtとは、検出器5の応答速度(信号払い出し周期)によって決まる量であり、信号を出力する時間間隔を意味する。
各時刻t,t,t,・・・での基準強度V,V,V,・・・は、対応する各波長λ,λ,λ,・・・の強度(スペクトル)である。1パルス内の時刻t,t,t,・・・と波長との関係が予め調べられており、各時刻の値V,V,V,・・・が各λ,λ,λ,・・・の値であると取り扱われる。
そして、対象物Sを経た光を検出器5に入射させた際、検出器5からの出力はAD変換器7を経て同様に各時刻t,t,t,・・・の値(測定値)としてメモリに記憶される(v,v,v,・・・)。各測定値は、基準スペクトルデータと比較される(v/V,v/V,v/V,・・・)。そして、必要に応じて各逆数の対数を取り、吸収スペクトルの算出結果とする。上記のような演算処理をするよう、測定プログラム63はプログラミングされている。
次に、上記分光測定装置の動作について説明する。以下の説明は、分光測定方法の実施形態の説明でもある。実施形態の分光測定装置を使用して分光測定する場合、対象物Sを配置しない状態で光源装置10を動作させる。
前述したように、超短パルスレーザ源11からの超短パルス光は、非線形素子12により広帯域パルス光となり、第一のパルス伸長器2に入射してパルス伸長がされる。そして、この光は第二のパルス伸長器3に入射してさらにパルス伸長がされ、所望の時間対波長の傾きに伸長される。第二のパルス伸長器3から出射した広帯域パルス光は、検出器5に直接入射する。検出器5からの出力データはAD変換器7を経由して演算手段6に入力され、演算手段6は上述の演算処理をして予め基準スペクトルデータを取得する。
次に、対象物Sを受け板8に配置して光源装置10を再び動作させる。同様に第一第二のパルス伸長素子2,3によりパルス伸長された広帯域パルス光は、対象物Sに照射される。そして、対象物Sからの光(本実施例においては対象物Sの透過光)は検出器5に入射し、検出器5からの出力データがAD変換器7を介して演算手段6に入力される。演算手段6は入力されたデータに基づき、上述の測定プログラム63により分光スペクトル(本実施例においては対象物Sの吸収スペクトル)を算出する。
上記の例では対象物Sからの透過光を利用する吸収スペクトルの測定であったが、対象物Sからの反射光を検出器5に入射させて反射スペクトル(分光反射率)を測定する場合もある。さらには、対象物Sのレイリー散乱やラマン散乱などの散乱スペクトルについて分光特性を測定する場合もある。したがって、対象物Sからの光は、光照射された対象物Sからの透過光、反射光、散乱光などであり得る。
尚、光源装置10の測定や検出器5の感度特性が経時的に変化する場合、基準スペクトルを取得する測定(対象物Sを配置しない状態での測定)を行い、基準スペクトルを更新する校正作業が定期的に行われる。
このような実施形態の分光測定装置及び分光測定方法によれば、パルス光源1からの広帯域パルス光のパルス幅を1パルス内の経過時間と波長との関係が1対1になるように伸長して対象物Sに照射して分光測定するので、回折格子の掃引のような時間を要する動作は不要であり、高速の分光測定が行える。そして、時間波長一意性を確保したパルス伸長を行う際、第一のパルス伸長器2で予備伸長をしてから第二のパルス伸長器3で伸長を行うので、高い照度で対象物Sに光を照射する場合にも時間波長一意性が崩れることがない。また、波長間の強度が不均一になることもないので、ダイナミンクレンジの関係で測定可能な波長範囲が制限されてしまう問題も生じない。このため、吸収の多い対象物Sについての光測定のようにハイパワーの光を照射する必要のある光測定を必要な波長範囲において高精度に行うことができ、高速且つ高信頼性の分光測定装置及び分光測定方法となる。
尚、上記構成の他、光源装置10からの光を測定用と参照用とにビームスプリッタ等で分割し、対象物Sを経た光を検出器5で検出するとともに対象物Sを経ないでそのまま光が入射する参照用の検出器を設けた構成が採用されることもある。この構成では、基準スペクトルデータがリアルタイムで取得されるので、別途の校正作業が不要であり、測定の効率が高くなるという長所がある。
広帯域パルス光源装置の用途として、上述した分光測定以外にも、各種の光測定が挙げられる。例えば、顕微鏡のように対象物に光照射して観察する用途も光測定の一種であるといえるし、光照射して距離を計測するような場合も光測定の一種であるといえる。本願発明の光測定用光源装置は、このような各種の光測定に利用することができる。
1 パルス光源
10 光源装置
11 超短パルスレーザ
12 非線形素子
2 第一のパルス伸長器
21 角分散モジュール
211 回折格子
212 コリメータレンズ
213 集光レンズ
22 非平行ミラー対
221 平板ミラー
23 ビームスプリッタ
24 入射光学系
3 第二のパルス伸長器
4 照射光学系
5 検出器
6 演算手段
7 AD変換器
S 対象物

Claims (12)

  1. 広帯域パルス光を出射するパルス光源と、
    パルス光源からの広帯域パルス光のパルス幅を伸長させる第一のパルス伸長器と、
    第一のパルス伸長器でパルス幅が伸長された広帯域パルス光のパルス幅をさらに伸長させる第二のパルス伸長器とを備えており、
    第一のパルス伸長器は、第二のパルス伸長器に対して広帯域パルス光を入射させた際に第二のパルス伸長器に非線形光学効果が生じる場合、同一の条件で広帯域パルス光を入射させた場合に非線形光学効果が生じない程度に広帯域パルス光のピーク強度を低下させるパルス伸長器であることを特徴とする広帯域パルス光源装置。
  2. 前記第一のパルス伸長器は、線形素子であることを特徴とする請求項1記載の広帯域パルス光源装置。
  3. 前記第一のパルス伸長器は、自由空間で波長毎に異なった遅延を生じさせることによりパルス幅を伸長させる機器であることを特徴とする請求項2記載の広帯域パルス光源装置。
  4. 前記第一のパルス伸長器は、前記広帯域パルス光を空間的に波長分散させる分散素子と、一対の平板ミラーを反射面を向かい合わせて非平行に対向させた非平行ミラー対と、集光光学系と、取り出し光学系とを備えており、
    集光光学系は、分散素子が波長分散させた光を、非平行ミラー対のうちの一方の平板ミラーの反射面上の点に集光させる光学系であって、波長に応じて異なる角度で当該一点に集光させる光学系であり、
    取り出し光学系は、非平行ミラー対を形成する一対の平板ミラーに交互に反射して戻ってきた各波長の光を取り出して前記第二のパルス伸長器に入射させる光学系であることを特徴とする請求項3記載の広帯域パルス光源装置。
  5. 前記集光光学系は、前記分散素子で波長分散させた光を平行光にするコリメータレンズと、コリメータレンズが平行光にした光を集光して前記一点に集光させる集光レンズとを含んでおり、
    前記取り出し光学系は、コリメータレンズと集光レンズとの間に配置されたビームスプリッタを含んでいることを特徴とする請求項4に記載の広帯域パルス光源装置。
  6. 前記ビームスプリッタは偏光ビームスプリッタであり、前記ビームスプリッタと前記非平行ミラー対との間には、λ/4波長板が配置されていることを特徴とする請求項5記載の広帯域パルス光源装置。
  7. 前記第一のパルス伸長器は、前記広帯域パルス光を空間的に波長分散させる分散素子と、集光光学系と、マルチモードファイバとを備えており、
    集光光学系は、分散素子が波長分散した前記広帯域パルス光を波長に応じて異なった角度でマルチモードファイバに入射させる光学系であり、
    前記第二のパルス伸長器は、マルチモードファイバの出射端からの光が入射する位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の広帯域パルス光源装置。
  8. 前記パルス光源は、パルスレーザ源と、パルスレーザ源からのレーザ光に非線形光学効果を生じさせてスーパーコンティニウム光とする非線形素子とを備えたスーパーコンティニウム光源であることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の広帯域パルス光源装置。
  9. 第二のパルス伸長器は、シングルモードファイバであることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の広帯域パルス光源装置。
  10. 前記第二のパルス伸長器は、シングルモードのマルチコアファイバ又はシングルモードのバンドルファイバであることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の広帯域パルス光源装置。
  11. 前記請求項1乃至10いずれかに記載の広帯域パルス光源装置と、
    この広帯域パルス光源装置からの広帯域パルス光が照射された対象物からの光が入射する位置に配置された検出器と、
    検出器からの出力に従って対象物の分光スペクトルを算出する演算手段と
    を備えており、
    前記第一第二のパルス伸長器は、前記広帯域パルス光を1パルス内の経過時間と波長との関係が1対1になるようにパルス幅を伸長するパルス伸長器であることを特徴とする分光測定装置。
  12. 前記請求項1乃至10いずれかに記載の広帯域パルス光源装置からの広帯域パルス光を対象物に照射する照射工程と、
    照射工程において広帯域パルス光が照射された対象物からの光を検出器で検出する検出工程と、
    検出器からの出力に従って対象物の分光スペクトルを算出する演算処理工程と
    を備えており、
    前記第一第二のパルス伸長器は、前記広帯域パルス光を1パルス内の経過時間と波長との関係が1対1になるようにパルス幅を伸長するパルス伸長器であることを特徴とする分光測定方法。
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