JP3741448B2 - 染料熱転写受容シート - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、染料熱転写受容シートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、染料熱転写プリンターに使用されたときに濃度むらのない鮮明な画像が得られる染料熱転写受容シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、熱転写方式の高画質のカラーハードコピー、特に染料熱転写型プリンターの開発が急速に進んでいる。染料熱転写型プリンターでは、3色(イエロー、マゼンタ、シアン)の昇華性染料層を、サーマルヘッドの加熱エネルギーを連続的に制御することにより加熱し、それぞれの色の染料の転写量を変化させ、濃度階調のフルカラー画像を可能にしている。
【0003】
このような染料熱転写プリンターを用いて高画質のプリントを高速で受容シート上に形成するためには、受容シートの基材として、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を主成分とし、空隙を有する二軸延伸フィルムを用いることが知られている。染料熱転写受容シート(以下、受容シートと呼ぶ)では、この基材上に、熱可塑性樹脂を主成分とする画像受容層を有している。これらの基材を用いた受容シートは、厚さが均一で、柔軟性があり、セルロース繊維からなる紙等に比べ熱伝導度が小さいなどの利点があり、従って均一で濃度の高いプリントが得られるという長所がある。
【0004】
しかし、このような二軸延伸フィルムを、画像の再現性が要求される受容シートの基材として用いた場合、延伸時の残留応力がプリント時の熱で戻り、延伸方向に熱収縮し、その結果、受容シートにカールやシワが発生し、これが、プリンター中を走行する受容シートの紙詰まりなどのトラブルの原因となっていた。
【0005】
上記カール、またはシワ発生という欠点を改善するために、比較的熱収縮性の小さい芯材や弾性率の大きい芯材の両面に延伸フィルムを積層貼合したラミネートシートを基材として用いることが知られている。
【0006】
しかし、このような基材は熱収縮率の異なるシートを積層しているため、熱などによる収縮率差が原因となるカールが発生した。表裏に積層している延伸フィルムの収縮率差を同じにしても、プリント時に熱は表方向にのみかかるので、受容シートの表面と裏面とでは温度が異なり、このため表裏に収縮率に差がでてカールを起こしていた。さらに表裏に延伸フィルムを積層しているためコストが大幅に上がってしまった。
【0007】
上記のような熱変形性のある延伸フィルムを基材として用いることなく、画像の濃度むらを解消するために、高平滑な紙の表面に高さ5〜35μm、5〜25g/m2 のポリオレフィン樹脂をラミネートした基材を用いることを提案している(特開平2−106397号、2−307786号)。ラミネート量により画像品質はある程度改善できるが、濃度むらを改善するにはいたっていない。
【0008】
また、USP4774224号にはラミネートした基材の中心線表面粗さを7.5μm以下にすることより、濃度むら、光沢むらを向上させることを提案しているが、充分ではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙上に熱可塑性樹脂を設けた基材を使用した場合の濃度むらを解消した染料熱転写受容シートを提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
セルロースパルプを主成分として含む原紙と、前記原紙の一面上に形成されかつ熱可塑性樹脂を主成分として含む樹脂被覆層と、前記樹脂被覆層上に形成されかつ熱転写画像形成染料を受容、染着する画像受容層とを有する染料熱転写受容シートにおいて、前記原紙が40kg/cm未満のウェットプレス線圧を加えて抄紙を行い、乾燥後にマシンカレンダーもしくはスーパーカレンダー処理を施すことにより製造されたものであり、前記染料熱転写受容シートが以下の条件、
(1)厚さ方向の弾性率が10kg/cm2以下、
(2) 画像受容層表面における波長1〜10mmの凹凸の平均高さが2μm以下、
を満たすことにより前記問題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明の染料熱転写受容シートの画質が優れる理由は明確でないが以下のように推定される。プリント時に受容シートはサーマルヘッドとプラテンローラーに挟まれ、圧力を受けながらプリントされる。受容シートの表面が平滑であれば、サーマルヘッドと受容シートの密着性が向上し、濃度むらのない均一な画像が得られる。しかし、受容シートの厚さ方向の弾性率が高いと、わずかな凹凸でも凸部が変形されず、凹部とサーマルヘッドの密着性が悪くなり濃度むらが生じる。
【0012】
その反面、多少の凹凸が受容シート表面に存在しても、受容シート厚さ方向の弾性率が小さければ、受容シート表面凸部が変形し、プリント時にはサーマルヘッドとの密着性が向上し、濃度むらを生じないと考えられる。
【0013】
本発明者らは鋭意研究した結果、受容シート表面の凹凸の平均高さを2μm以下にかつ受容シート厚さ方向の弾性率を10kg/cm2 以下にすれば、濃度むらが発生しないことを見出だし、本発明を完成させた。
【0014】
本発明に使用されるセルロースパルプは特に限定はされないが、例えば、広葉樹や針葉樹の化学パルプや機械パルプ等の木材パルプ、古紙パルプ、麻や綿等の非木材天然パルプ、ポリエチレンやポリプロピレン等を原料とした合成パルプ等を挙げることができ、これらを組み合わせて使用する。特に、広葉樹の化学パルプが好ましい。
【0015】
上記のパルプの他に、アクリル繊維やレーヨン繊維、フェノール繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維、ガラス繊維や炭素繊維、アルミナ繊維等の無機繊維等、各種の繊維を混抄してもよい。抄紙性の観点より、パルプを50重量%以上配合したシートの方が好ましい。
【0016】
パルプを抄紙する工程で、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは、両性の歩留り向上剤、紙力増強剤、サイズ剤が適宜選択して使用される。
【0017】
本発明の樹脂被覆層に用いられる熱可塑性樹脂としては低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のホモポリマーまたはエチレン・ポリプロピレン共重合体等のオレフィンの2つ以上からなる共重合体あるいはエチレンとαオレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンおよびこれらの混合物であり、各種の密度およびメルトインデックスのものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。本発明の樹脂被覆には、受容シートの白色度を向上させるために白色顔料を添加するのが好ましい。白色顔料としては酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等が使用できる。
【0018】
さらに本発明における樹脂被覆層中にはステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛等の樹脂金属塩、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤、コバルトブルー、群青等の顔料や染料を添加してもよい。
【0019】
本発明の樹脂被覆層の塗布量は10〜40g/m2 が好ましい。10g/m2 よりも少ない場合は濃度むらが発生しやすく、40g/m2 以上ではプリント濃度が低下することがある。
【0020】
本発明の受容層に使用することのできる受容層樹脂としては、熱可塑性飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体などの塩ビ系樹脂が好ましいが、その他ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、活性エネルギー線硬化樹脂などを用いてもよい。
【0021】
本発明の画像受容層には、置換フェノール、テルペンなどの低分子有機化合物を、酸化防止、紫外線吸収、増感等の目的でブレンドすることが可能である。また、画像受容層の弾性率を下げるために可塑剤を配合しても良い。一般に塗料の白色度、不透明度の向上に用いられる白色顔料、画像受容層の色調を調節する蛍光染料や、ブルー、バイオレットなどの染料も必要に応じて添加可能である。白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等が使用できる。
【0022】
上記の白色顔料、紫外線吸収剤、架橋剤などの添加剤は画像受容層の主成分である画像受容層樹脂と混合して塗工するのが便利であるが、紫外線吸収剤を別の画像受容層樹脂として染着層の上、又は下に塗工しても良い。
【0023】
更に、熱によるインクシートと、画像受容層との印画時の耐熱融着を高めるために離型剤を使用することが出来る。このような離型剤としてパラフィン、ポリエチレンワックスなどのワックス類、金属石鹸、シリコーンオイル、シリコーン系樹脂、フッ素系界面活性剤、フッ素系樹脂などを添加することが可能であり、添加量は15重量%以下が好ましい。
【0024】
樹脂被覆層と画像受容層間の接着性を改善するためにその間に中間層を設けてもよい。中間層形成のために各種の親水性樹脂、疎水性樹脂が使用可能であり、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマーおよびその誘導体、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸またはその塩、ポリアクリル酸エステル等のアクリル基を含むポリマー、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル等のメタクリル基を含むポリマー、澱粉、アルギン酸ソーダ、アラビアゴム、カゼイン、カルボキシメチルセルロースなどの天然ポリマーまたは誘導体などが挙げられる。
【0025】
受容シートのプリンター内での走行時に静電気が発生し、走行トラブルとなることを防ぐために、シートの少なくともいずれかの面に帯電防止剤を、画像受容層内に添加、又はバックコートなどの方法で含有できる。帯電防止剤としてはカチオン系親水性高分子がよく用いられる。
【0026】
受容シートの厚さ方向の弾性率を調整するには、セルロースパルプのフリーネス、柔軟剤の配合、抄紙工程のウエットプレスの圧力等による調整、ラミネート樹脂の種類、添加剤等による調整、画像受容層の種類、硬化条件、可塑剤等の添加剤により調整可能である。本発明では、セルロースパルプを主体とする原紙の抄紙工程において、40kg/cm未満のウェットプレス線圧を加えることにより、原紙の厚さ方向の弾性率をコントロールし、それによって得られる受容シートの厚さ方向の弾性率を10kg/cm2以下に調整している。また、抄紙工程後の乾燥後にマシンカレンダーもしくはスーパーカレンダー処理を施すことにより、原紙の表面の凹凸高さをコントロールし、それによって得られる受容シートの画像受容層表面における波長1〜 10mm 凹凸高さの平均を2μm以下に調整している。
【0027】
【実施例】
本発明を下記実施例によって更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって制限されるものではない。
【0028】
実施例
セルロースパルプ原料を用い、表1に示す各種ウエットプレス圧により、原紙厚さ方向の弾性率を変えた6種の原紙を手抄きにより製造した。さらに、得られた各原紙をマシンカレンダー、スーパーカレンダーにより表面の凹凸高さを変えた。ついで、上質紙の表側に二酸化チタンが13%配合されたポリエチレンを20g/m2 、裏側に二酸化チタン無配合のポリエチレンを20g/m2 になるようにラミネートした。
【0029】
最後に表側樹脂層表面をコロナ処理をした後、下記組成の画像受容層塗料組成物をワイヤーバーを用いて塗布、乾燥し、固形分塗布量が6g/m2 の受容層を設け、厚さ方向の弾性率10kg/cm2 以下かつ表面の凹凸の平均高さ2μm以下の受容シートを得た。
【0030】
画像受容層塗料組成物
ポリエステル樹脂 100重量部
(商標:バイロン200、東洋紡製)
シリコンオイル 3重量部
(商標:KF393、信越シリコン製)
イソシアネート 5重量部
(商標:タケネートD−110N、武田薬品製)
トルエン 300重量部
【0031】
得られた受容シートをカラーバー信号発生器(商標:C13A2、株式会社シバゾク製)によりステップパターンを染料熱転写プリンター(商標:AG−EP60、松下電器製)でプリントした。表1にプリント濃度むら、未転写部の官能評価結果を示す。尚、官能評価は以下のように行なった。
【0032】
2段階評価
○:濃度むら、未転写部がない
×:濃度むら、未転写部がある
尚、受容シートの厚さ方向の弾性率、波長1〜10mmの凹凸高さは以下のようにして測定する。
【0033】
1.弾性率
テンシロンにて速度2mm/分、最大加重100kgで受容シートを圧縮する。圧縮時の受容シート厚さ、単位面積当たりの圧力を測定し、応力−歪曲線を得る。厚さ変化2%以上の直線部の傾きを厚さ方向の弾性率とする。
【0034】
2.波長1〜10mmの凹凸高さ
表面粗さ計(例えば(株)小坂研究所のサーフコーダー)を用いて、受容シート面の凹凸(粗さ)を測定し、表面凹凸に対応する電圧信号を、周波数解析機(例えば小野測器(株)製、商標:CF−940)を用いてFFT(高速フーリエ変換)法により周波数解析を行ない、パワースペクトルを得る。得られたパワースペクトルのうち、指定波長範囲、すなわち1〜10mmに対応する周波数範囲パワースペクトル強度の二乗和の平方根を得る。この数値は凹凸の平均高さに対応するが、単位が電圧であるので、長さ単位に変換する。換算するには、凹凸の平均高さが既知の標準板(表面粗さ計の付属品)と、それに対応する電圧から求める。
【0035】
比較例
実施例と同じく表1に記載した条件で受容シートを作製した。ただし受容シートの厚さ方向の弾性率を10kg/cm2 以上とするか又は表面の凹凸の平均高さを2μm以上にした。実施例1と同様にして評価を行なった。評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
Figure 0003741448
【0037】
【発明の効果】
本発明の染料熱転写受容シートは、厚さ方向の弾性率を10kg/cm2 以下かつ表面の凹凸の平均高さを2μm以下にすることより、濃度むらのない鮮明な画像が得られるものである。

Claims (2)

  1. セルロースパルプを主成分として含む原紙と、前記原紙の一面上に形成されかつ熱可塑性樹脂を主成分として含む樹脂被覆層と、前記樹脂被覆層上に形成されかつ熱転写画像形成染料を受容、染着する画像受容層とを有する染料熱転写受容シートにおいて、前記原紙が40kg/cm未満のウェットプレス線圧を加えて抄紙を行い、乾燥後にマシンカレンダーもしくはスーパーカレンダー処理を施すことにより製造されたものであり、前記染料熱転写受容シートが以下の条件、
    (1)厚さ方向の弾性率が10kg/cm2以下、
    (2) 画像受容層表面における波長1〜10mmの凹凸の平均高さが2μm以下、
    を満たすことを特徴とする染料熱転写受容シート。
  2. 前記染料熱転写受容シートの厚さ方向の弾性率が6.6kg/cm2以上であることを特徴とする、請求項1に記載の染料熱転写受容シート。
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