JP3741369B2 - ポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、高分子量ポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法に関し、シート・フィルム材料等の成形樹脂、塗料樹脂、インキ用樹脂、医療資材用樹脂、接着剤樹脂、紙へのラミネーション用樹脂、発泡樹脂材料等に有用な、種々の成形加工が可能な、生分解性樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃棄後、光分解或いは生分解作用等により自然崩壊して地球環境に悪影響を及ぼさない崩壊性樹脂の開発が進められており、優れた生分解性を有する乳酸系ポリマーを、広く汎用ポリマーとして活用しようとする研究が盛んに行われ、製造方法に関する多くの研究がなされている。しかし従来公知の乳酸もしくはラクタイドの重合体であるポリ乳酸、もしくは乳酸と他のモノマーとの共重合体は、成形性、透明性、耐熱性において十分満足な性能を有しているとは言い難く、特殊な用途を除いては、汎用樹脂として用いるには問題点があり、これらポリ乳酸および乳酸共重合体の改良が盛んに行われている。
【0003】
直接重合法でポリ乳酸又は乳酸共重合体を合成する際、得られる樹脂の重量平均分子量(Mw)の増大には限界があった。これらの樹脂の重量平均分子量が増大しない原因として、熱によるポリ乳酸およびポリ乳酸共重合体の分解反応が進行することが挙げられる。D.H.Grant,N.Grassieらは、Polymer,1,445(1960)において、ポリ乳酸分子鎖が六員環遷移状態を経て末端が不飽和酸エステルとカルボキシル基の分子鎖の2つの分子鎖に分かれてしまい、分子量が低下してしまうことを示している。末端が不飽和酸エステルとなった分子鎖は、カルボキシル基を末端に持つ分子鎖と脱水縮合することができないため、重合反応が阻害されてしまう。
【0004】
この問題を解決するため、特開平11−35655号公報には、ポリ乳酸および乳酸共重合体の熱による分子鎖切断を抑える熱安定剤(触媒失活剤)としてリン酸エステルを添加する方法が開示されている。
しかし、この方法では反応終了後にはリン酸エステルは樹脂中に溶け込んでいるため、リン酸エステルを除去することが困難である。樹脂中にリン酸エステルが残存したままであれば、ポリ乳酸又は乳酸共重合体を医療用途、特にドラッグデリバリーシステムの基材など生体内での使用においては生体安全性に問題がある。
【0005】
【発明が解決しょうとする課題】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解決し、高分子量で耐熱性を有し、更にドラッグデリバリーシステムの基材など生体内での使用においても生体安全性に問題がない、生分解性樹脂であるポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリ乳酸又は乳酸共重合体を重合する際、反応途中の反応器内にポリビニルアルコール(以下、PVAともいう)を添加することにより、熱分解による分子量の低下を防ぐことができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
(1)ポリ乳酸又は乳酸共重合体の重合において、重合反応の途中に重合系にポリビニルアルコールを混合し、反応させることを特徴とするポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
【0008】
以下に、本発明の好ましい態様を挙げる。
(2)前記重合における触媒がリン酸、ブレンステッド酸、ルイス酸、金属酸化物であることを特徴とする前記(1)記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
(3)前記ポリビニルアルコールが、水酸基、アセチル基もしくは脂肪酸エステルを側鎖に有するものであることを特徴とする前記(1)または(2)記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
(4)前記ポリビニルアルコールの添加量が、原材料のL−乳酸に対し0.01〜1.0重量%の範囲であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
(5)前記重合反応終了後に、重合系をろ過により溶融樹脂中からPVAを除去することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
(6)前記ポリビニルアルコールのケン化度が、50〜100%であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
【0009】
本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法において、上記のように、重合反応途中の反応系内にポリビニルアルコールを添加することにより、熱分解による分子量の低下を防ぐ作用機構は、ポリ乳酸の分子鎖末端が不飽和酸エステルとなった部分を下記の化学式で示すように、PVAと不飽和酸エステルのエステル交換反応により、PVAが不飽和酸を取り除いて水酸基に戻すことに起因すると考えられる。分子鎖末端の不飽和酸が取り除かれることで重合反応が再び進行し、高分子量のポリ乳酸又は乳酸共重合体を得ることができる。
【0010】
【化1】
【0011】
本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法は下記に示す特徴を持つ。
(1) 反応終了後は、PVAはポリ乳酸又は乳酸共重合体の溶融樹脂に溶けずに粒状となって残っているため、容易にろ過によりPVAのみを除去することができる。
(2) PVAを添加することで、リン酸のような活性が小である触媒で高分子量のポリ乳酸又は乳酸共重合体を合成することができる。
(3) 有機スズ触媒のような活性が大である触媒を用いる場合、PVAを添加することでポリ乳酸又は乳酸共重合体の合成に要する時間を短縮することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法は、上記のように、重合反応途中の反応系内にポリビニルアルコール(PVA)を添加することにより達成される。
具体的には、従来のポリ乳酸又は乳酸共重合体合成の工程は、図1〜2に示すように、重合組成物を減圧しながら130℃の反応温度で反応させた後、減圧しながら190℃の反応温度で更に反応させる。
このような製造工程に対して、本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体合成の工程は、図3〜4に示すように、重合組成物を減圧しながら130℃の反応温度で反応させた後、PVAを後述のように反応溶液中に添加し、その後減圧しながら190℃の反応温度で反応させる。更に上記のように反応終了後、容易にろ過によりPVAのみを除去する工程からなる。
【0013】
本発明で使用する乳酸は、L−乳酸、D−乳酸及びDL−乳酸が存在する。また、乳酸を2分子間で環状エステル化した化合物で、立体規則性を有するモノマーであるラクタイドも使用できる。ラクタイドにはL−乳酸2分子からなるL−ラクタイド、D−乳酸2分子からなるD−ラクタイド及びL−乳酸及びD−乳酸からなるmeso−ラクタイドが存在する。
【0014】
本発明のポリ乳酸の製造方法では、高い分子量を発現するため、使用する乳酸はL−乳酸を総乳酸中、75%以上含むものが好ましく、更に高い分子量を発現するためには、乳酸はL−乳酸を総乳酸中90%以上を含むものが好ましい。
使用するラクタイドはL−ラクタイドを総ラクタイド中、75%以上含むものが好ましく、更に高い分子量と熱物性を発現するためには、ラクタイドはL−ラクタイドを総ラクタイド中90%以上を含むものが好ましい。
【0015】
本発明の乳酸共重合体の製造方法では、上記乳酸またはラクタイドに加えて使用する共重合成分として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドからなるブロックコポリマー等が用いられる。特に種類を問わないが、中でも生分解性、汎用性等を考えると直鎖状ポリエチレングリコール、直鎖状ポリプロピレングリコール、直鎖状ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)グリコールが特に好ましい。
【0016】
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドからなるブロックコポリマーの分子量は、重量平均分子量で200〜200,000であることが好ましい。更に生分解性の観点から、重量平均分子量で200〜10,000程度であることがより好ましい。
【0017】
乳酸共重合体に関しては、乳酸とポリプロピレングリコールとを共重合する際の重量比は乳酸/(PPG)=50/50〜98/2であり、耐熱性、柔軟性及び強度面から60/40〜95/5であることがより好ましい。
また、ラクタイドとポリプロピレングリコールとを共重合する際の重量比はラクタイド/(PPG)=50/50〜98/2であり、耐熱性、柔軟性及び強度面から60/40〜95/5であることがより好ましい。
【0018】
本発明の乳酸またはラクタイドを重合させる場合、または乳酸またはラクタイドと、ポリエーテルポリオールを共重合させるには、重合触媒を使用することが望ましい。本発明で使用する触媒としては、特に限定されないが、一般に環状エステル類の重合触媒、エステル交換触媒としても知られる錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属、およびその誘導体が挙げられる。これらの誘導体については特に金属有機化合物、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物である。
本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法においては、前記重合における触媒がリン酸、ブレンステッド酸、ルイス酸、金属酸化物が好ましく適している。
【0019】
重合触媒の使用量は、溶媒を除く重合成分の合計に対して0.005〜0.2重量%が好ましく、重合速度が十分に速く、かつ得られた乳酸共重合体の着色を少なくするためには、特に0.01〜0.1重量%が好ましい。
【0020】
本発明で得られるポリ乳酸または乳酸共重合体の重量平均分子量は30,000〜10,000,000である。高い分子量を有する樹脂の方が強度が高いため、特に、フィルム、シート、射出成形品等の成形樹脂として使用する為には十分な物理強度が求められるため、該重量平均分子量は100,000〜8,000,000であることが好ましい。重量平均分子量が30,000未満では強度が低く不適である。
【0021】
本発明のポリ乳酸または乳酸共重合体には、残留乳酸またはラクタイドもしくは残留モノマーやオリゴマーが出来るだけ少ないことが好ましい。残留乳酸またはラクタイドもしくは残留モノマーやオリゴマーが少ない乳酸系ポリエーテル共重合体を得るには、共重合の乳酸系ポリエーテル共重合体を減圧下で脱揮して、残留乳酸またはラクタイドを除去することが望ましい。
【0022】
次ぎに、本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法に用いられるポリビニルアルコール(PVA)としては、特に限定されず、部分ケン化又は親水性基の導入により水溶性ないし水分散性を有するようにされたポリビニルアルコール系樹脂が挙げられ、かかるポリビニルアルコール系樹脂は、通常、公知の方法で製造され、該樹脂は、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物のみならず、ビニルエステルと共重合しうる単量体、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、オキシアルキレン類等の共重合体ケン化物が挙げられ、また、かかる樹脂をグラフト変性、又はブロック共重合した樹脂も含まれ、これらに限定されるものではない。
本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法においては、前記ポリビニルアルコールが、水酸基、アセチル基もしくは脂肪酸エステルを側鎖に有するものが好ましく、より好ましくは側鎖が水酸基(完全けん化型)のものである。
【0023】
一般の未変性ポリビニルアルコール系樹脂においては、ケン化度が50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%のものが更に好ましい。
該ケン化度が50モル%未満ではポリビニルアルコール側鎖のアセチル基がエステル交換反応によりポリ乳酸分子鎖の水酸基とエステル結合して重合反応を阻害し、得られるポリ乳酸および乳酸共重合体の分子量が30,000以下となり不適である。
【0024】
本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法に用いられるポリビニルアルコールの添加量は原材料のL−乳酸に対し0.01〜1.0重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.1〜0.9重量%の範囲である。
ポリビニルアルコールの添加量が0.01重量%未満では得られるポリ乳酸および乳酸共重合体の分子量が30,000以下となり、1.0重量%を超えて多くなっても、得られるポリ乳酸又は乳酸共重合体の分子量が30,000以下となり、共に樹脂の強度は不十分である。
【0025】
上記ポリビニルアルコールは粉体もしくは粒状のままで添加される。反応後のろ過に用いる金網のメッシュは、基本的にポリビニルアルコールの粒径よりも小さいものを使用することが必要である。ポリビニルアルコールの粒子径に合わせて使用する金網は300〜20メッシュの範囲のものが用いられる。
【0026】
本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法における重合反応系中には、上記以外に、架橋剤として、分子内に二つ以上のカルボキシル基または水酸基を有するもの、または分子内に一つの不飽和結合およびカルボキシル基または水酸基を持つものを添加することができる。例えば、クエン酸、トリカルボン酸、酒石酸、デンプン等の糖類または単糖類、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、ケイ皮酸等が用いられる。
【0027】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
500mlのセパラブルフラスコに90%L−乳酸2.0mol(200g)、そして触媒としてリン酸0.2重量%(0.26ml)を入れ、外部攪拌装置と空気冷却管を取り付けた後、アスピレーターで減圧しながら100℃の反応温度で2時間攪拌し、混合溶液中から水を除去した。その後真空ポンプに切り替え、減圧しながら130℃の反応温度で10時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(和光純薬、1級PVA、重合度:500、けん化度98%)0.1重量%(200mg)を反応溶液中に添加した。その後真空ポンプで減圧しながら190℃の反応温度で20時間攪拌した。
反応終了後、セパラブルフラスコ内の溶融状態の樹脂を金網上に移してPVAを除去し、ポリ乳酸共重合体を得た。
得られたポリ乳酸のMwは、表1に示すように、70,000であった。
【0028】
〔比較例1〕
実施例1と同じ操作を行った。但し、真空ポンプに切り替え、減圧しながら130℃の反応温度で10時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(和光純薬、1級PVA、重合度:500、けん化度98%)0.1重量%(200mg)を反応溶液中に添加しなかった。
得られたポリ乳酸のMwは、表1に示すように、38,000であった。
【0029】
<重量平均分子量、Mwの測定評価>
得られたポリ乳酸および乳酸共重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。流出溶媒は試薬特級のクロロホルムを使用した。カラムの温度は40℃で、流出溶媒の流量は1.0ml/minである。装置は日本ミリポアリミテッド(株)製高圧ポンプ(高速液体クロマトグラフ用510型)と昭和電工(株)製示差屈折率検出器(Shoudex RI-71)および昭和電工(株)製カラム(GPCK802.5およびGPCK806M)である。なお、Mwはポリスチレンを標準試料として換算した値である。
【0030】
【表1】
【0031】
〔実施例2〕
500mlのセパラブルフラスコに90%L−乳酸2.0mol(200g)、架橋剤としてクエン酸2.0重量%(4.0g)、分子量2,000のポリプロピレングリコール(PPG)31.2重量%(62.5g)、そして触媒としてリン酸0.2重量%(0.26ml)を入れ、外部攪拌装置と空気冷却管を取り付けた後、アスピレーターで減圧しながら100℃の反応温度で2時間攪拌し、混合溶液中から水を除去した。その後真空ポンプに切り替え、減圧しながら130℃の反応温度で10時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(和光純薬、1級PVA、重合度:500、けん化度98%)0.1重量%(200mg)を反応溶液中に添加した。その後真空ポンプで減圧しながら190℃の反応温度で30時間攪拌した。
反応終了後、セパラブルフラスコ内の溶融状態の樹脂を金網上に移して粒状のPVAを除去し、乳酸共重合体を得た。
得られた乳酸共重合体のMwは、表2に示すように、1,320,000であった。
【0032】
〔比較例2〕
実施例2と同じ操作を行った。但し、真空ポンプに切り替え、減圧しながら130℃の反応温度で10時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(和光純薬、1級PVA、重合度:500、けん化度98%)0.1重量%(200mg)を反応溶液中に添加しなかった。
得られた乳酸共重合体のMwは、表2に示すように、63,000であった。
【0033】
【表2】
【0034】
〔実施例3〕
500mlのセパラブルフラスコに90%L−乳酸2.0mol(200g)、そして触媒としてモノブチルスズオキサイド0.05重量%(100mg)を入れ、外部攪拌装置と空気冷却管を取り付けた後、アスピレーターで減圧しながら100℃の反応温度で2時間攪拌し、混合溶液中から水を除去した。その後真空ポンプに切り替え、減圧しながら130℃の反応温度で10時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(和光純薬、1級PVA、重合度:500、けん化度98%)0.1重量%(200mg)を反応溶液中に添加した。その後真空ポンプで減圧しながら190℃の反応温度で10時間攪拌した。
反応終了後、セパラブルフラスコ内の溶融状態の樹脂を金網上に移して粒状のPVAを除去し、ポリ乳酸を得た。
得られたポリ乳酸のMwは、表3に示すように、71,000であった。
【0035】
〔比較例3〕
実施例3と同じ操作を行った。但し、真空ポンプに切り替え、減圧しながら130℃の反応温度で10時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(和光純薬、1級PVA、重合度:500、けん化度98%)0.1重量%(200mg)を反応溶液中に添加しなかった。また、その後真空ポンプで減圧しながら190℃の反応温度で14時間攪拌した。
得られたポリ乳酸のMwは、表3に示すように、66,000であった。
【0036】
【表3】
【0037】
〔実施例4〕
500mlのセパラブルフラスコに90%L−乳酸2.0mol(200g)、架橋剤としてクエン酸2.0重量%(4.0g)、分子量2,000のPPGを31.2重量%(62.5g)、そして触媒としてモノブチルスズオキサイド0.05重量%(100mg)を入れ、外部攪拌装置と空気冷却管を取り付けた後、アスピレーターで減圧しながら100℃の反応温度で2時間攪拌し、混合溶液中から水を除去した。その後真空ポンプに切り替え、減圧しながら130℃の反応温度で10時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(和光純薬、1級PVA、重合度:500、けん化度98%)0.1重量%(200mg)を反応溶液中に添加した。その後真空ポンプで減圧しながら190℃の反応温度で10時間攪拌した。
反応終了後、セパラブルフラスコ内の溶融状態の樹脂を金網上に移して粒状のPVAを除去し、乳酸共重合体を得た。
得られた乳酸共重合体のMwは、表4に示すように、2,100,000であった。
【0038】
〔比較例4〕
実施例4と同じ操作を行った。但し、真空ポンプに切り替え、減圧しながら130℃の反応温度で10時間攪拌した後、ポリビニルアルコール(和光純薬、1級PVA、重合度:500、けん化度98%)0.1重量%(200mg)を反応溶液中に添加しなかった。また、その後真空ポンプで減圧しながら190℃の反応温度で14時間攪拌した。
得られた乳酸共重合体のMwは、表4に示すように、1,920,000であった。
【0039】
【表4】
【0040】
表1、2から明らかなように、本発明に係わる各実施例のポリ乳酸または乳酸共重合体は、それぞれ満足すべき高分子量を得たが、各比較例のポリ乳酸または乳酸共重合体は、同一の重合条件の実施例結果と比較して低分子量であり不満足なものであった。
また、表3、4から明らかなように、本発明に係わる各実施例のポリ乳酸または乳酸共重合体は、それぞれ満足すべき高分子量を短い反応時間で得ることができたが、各比較例のポリ乳酸または乳酸共重合体は、同一の重合条件の実施例結果と比較して、同程度の高分子量を得るためには長い反応時間が必要であった。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法は、重合反応途中の反応系内にポリビニルアルコールを添加することにより、熱分解による分子量の低下を防ぎ、高分子量のポリ乳酸又は乳酸共重合体を得ることができる。更に反応終了後、ポリビニルアルコールは容易にろ過により除去することができるため、生体内での使用においても生体安全性に問題がないポリ乳酸又は乳酸共重合体を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のポリ乳酸合成の工程を示す説明図である。
【図2】従来の乳酸共重合体合成の工程を示す説明図である。
【図3】本発明のポリ乳酸合成の工程を示す説明図である。
【図4】本発明の乳酸共重合体合成の工程を示す説明図である。
Claims (6)
- ポリ乳酸又は乳酸共重合体の重合において、重合反応の途中に重合系にポリビニルアルコールを混合し、反応させることを特徴とするポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
- 前記重合における触媒がリン酸、ブレンステッド酸、ルイス酸、金属酸化物であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコールが、水酸基、アセチル基もしくは脂肪酸エステルを側鎖に有するものであることを特徴とする請求項1または2記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコールの添加量が、原材料のL−乳酸に対し0.01〜1.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
- 前記重合反応終了後に、重合系をろ過により溶融樹脂中からPVAを除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコールのケン化度が、50〜100%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸又は乳酸共重合体の製造方法。
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