JP3741238B2 - 弾性糸巻糸体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は弾性糸巻糸体に関するものであり、詳しくは、特定の油剤を弾性糸に付与させることにより、接着性が改善され、特に紙おむつに伸縮性を与えるために好適に利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙おむつの需要が増加し、それに対する品質要求も増加しつつあり、なかでも紙おむつのフィット性を上げるため、紙おむつに弾性糸を複合させ伸縮性を付与することが行われている。
一般にポリウレタンウレアから得られる弾性糸は膠着性が大きいため、その使用に際しチーズ等の巻糸体からの解舒が問題となっている。これを解決するため比較的多量の油剤を弾性糸に付与しボビンに巻取ることが行われてきた。
一方、紙おむつに弾性糸を複合させるため一般的に弾性糸を接着させる方法が用いられており、このとき弾性糸に油剤が多く付与されていると接着力が低下し紙おむつに品質上の不具合が発生することがある。そのため、接着性を得る方法として、弾性糸に付与する油剤を糸重量の2%以下とすることが知られており、例えば特公平5−50429号公報には油剤の付着量が2重量%を超えると、油分が接着する際の障害となり、さらに弾性糸が剥離し易くなるため、油剤付着量は2%以下とする必要があることが記載されている。しかし、油剤の付着量の低減は弾性糸の膠着性の問題を顕在化させることとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は紙おむつ等に複合化されるときの接着性をそこなわず、かつ弾性糸の膠着を抑制し得る弾性糸巻糸体を提供することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するため、鋭意、研究、検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、(1)弾性糸に表面張力25〜30ダイン/cmの油剤を2重量%を超え5重量%以下付与させて、巻取られて得られる弾性糸巻糸体 (2)巻き重量が、1.1Kg以上である前記弾性糸巻糸体、(3)きとられた弾性糸の繊度が210デニールから2240デニールである前記弾性糸巻糸体および(4)紙おむつ用である前記弾性糸巻糸体である。
【0005】
本発明における弾性糸とは、ポリエステル系あるいはポリエーテル系ポリウレタン弾性糸、ポリウレタンウレア弾性糸、ポリエステル弾性糸、ポリアミド弾性糸あるいはこれ等を主体とした他の有機合成樹脂との複合もしくは混合による弾性糸等である。
【0006】
本発明において、例えば前記ポリウレタンウレア弾性糸を形成するポリウレタンウレアは通常の溶液重合法により得ることができ、このポリマー溶液を乾式紡糸して油剤を付与しボビンに巻取って巻糸体を得ることができるが、このとき付与する油剤の表面張力を適切に設定することにより、弾性糸の膠着を抑制し、紙おむつとの接着力低下を小さくすることが可能となる。通常、ポリウレタンウレア弾性糸に付与する油剤はその表面張力が小さいものが選ばれ、それによって弾性糸の膠着を抑制し巻糸体からの解舒を容易にする。しかしながら、表面張力の小さい油剤を付与すると接着剤等による接着が阻害され、紙おむつに複合化する際に充分な接着力が得られない。また、表面張力が大きくても弾性糸の膠着の問題が解決できずその使用に際し巻糸体からの解舒が問題になる。本発明は、かかる問題を解決したものであり、弾性糸に表面張力25〜30ダイン/cmの油剤を2〜5%付与させることにより弾性糸のチーズからの解舒性を維持しつつ接着力を低下させないことを可能にしたものである。
【0007】
一般的に弾性糸に使用される油剤はシリコーンオイルを主体にしたものであるがその代表的なものであるジメチルポリシロキサンは表面張力が約20ダイン/cmであり、このものを弾性糸に付与すると紙おむつに使用したとき接着性が低く弾性糸が分離することがみられる。また、表面張力の大きい油剤を付与すると弾性糸の膠着性が改善できず工程通過性の劣るものとなる。かかる観点から使用される油剤の表面張力は25〜30ダイン/cmのものが好ましい。この範囲の油剤を使用することで、紙おむつとの接着性および弾性糸チーズの膠着抑制の双方を使用可能な範囲にすることが可能である。
【0008】
本発明に使用される油剤として具体的には、メチルフェニル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、流動パラフィン、またはそれらの混合物、あるいは前記オイル、流動パラフィンとジメチルポリシロキサンとの混合物等が挙げられる。
【0009】
本発明における巻糸体は通常、チーズ、ドラム、ボビンと称される形態のものが含まれ、弾性糸巻糸体の評価は下記に示すように、弾性糸のポリプロピレン不織布からの剥離応力、弾性糸巻糸体からの解舒性測定によってなされる。
【0010】
剥離応力の測定:得られた巻糸体から弾性糸を無作為に5cmずつ3本とり、それらの糸を紙おむつ用表面材等に使用されるポリプロピレン不織布に接着したのち、室温で60分放置したものを張力測定器の一端に弾性糸、もう一方にポリプロピレン不織布をはさんで1000%/分の速度で引っ張り、弾性糸がポリプロピレン不織布より剥離する時の応力を測定する。なお紙おむつに使用されるポリプロピレン不織布は市販の紙おむつから切り取って供した。本発明においては、この剥離応力が糸のデニールあたり0.35g以上あるのが好ましい。0.35g未満では弾性糸が紙おむつの製造工程で強く接着されていないため、製品中での弾性糸の長さが不揃いとなり機能が阻害されることがあるので好ましくない。
【0011】
解舒性測定:弾性糸巻糸体の表面の弾性糸を除去し内層部200gを紙管に残す。その巻糸体をローラー上にセットし弾性糸を送りだし、毎分50mで送り出された弾性糸を一方の捲取り用紙管に捲取る。そのとき、送り出された弾性糸が巻糸体の回転方向にひきあげられない最低の速度に巻取り用ローラーを調整する。その最低のローラーの表面速度を測定し、解舒性を次のようにあらわす。
解舒性(%)=(S−S0 )/S0 ×100
ここで、S0 は弾性糸の送り出し速度(50m/分)
Sは弾性糸の最低の巻取り速度
すなわち解舒性が0%であるということは、弾性糸の巻糸体からの解舒が無張力でできることを示している。巻糸体内層の解舒性が0%であるということは巻糸体の形状を保持することが困難であることを示しており、通常0%以上の値を示す。紙おむつ用としては、80%以下、好ましくは60%以下が要求される。
【0012】
次に本発明における処理剤の付着率は次の様な方法で測定されるものである。
(1)弾性糸約5gを巻糸体から採取し、105℃で1.5時間乾燥した後、乾燥デシケーター中で放冷し、その糸の重量(Ag)を0.001gまで正確に測定する。
(2)次で当該糸をソックスレー抽出器に入れ、石油エーテルで2時間抽出する。
(3)抽出後の糸を風乾し、石油エーテルを蒸発させた後、105℃で1.5時間乾燥し、乾燥デシケーター中で放冷した後、その糸の重量(Bg)を0.001gまで正確に測定する。
(4)前記操作を同じドープから紡糸させ、油剤を付着させないで巻き取った糸をサンプリングして行う。このときの抽出前の重量(Cg)、抽出後の重量(Dg)を正確に測定する。
(5)次で次式にて油剤付着率(E%)を算出する。
E(%)={(A−B×C/D)/(B×C/D)}×100
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施に形態として、ボビンに巻き取られる綾角度は10から18度の範囲が好ましく、巻き巾と巻き厚さとの比は、解舒性の観点から見ると小さい方が好ましいが、本発明によれば0.5以上でも解舒性に支障のないものである。また巻き重量は、1.1Kg以上、好ましくは2.0Kg以上、特に紙おむつの製造上の利便性からは2.5Kg以上が望ましい。
巻取られた弾性糸の繊度は210デニールから2240デニール、好ましくは420デニールから2240デニールである。
なお本発明弾性糸巻糸体の好適な用途は紙おむつである。
【0014】
【実施例】
本発明を以下の実施例を用いて具体的に説明する。なお、これら実施例は本発明を例示するものであって、なんらこれらに限定されるものではない。また実施例中の部は全て重量部を示す。
実施例1
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール1200部に4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート300部を加え、70℃で80分間加熱反応させた。次いでジメチルフォルムアミド2000部を加えて反応混合物を溶解させた後、1,2プロピレンジアミン35部をジメチルフォルムアミド500部に溶解させた溶液を徐々に添加し溶液粘度が上昇したのちジエチルアミン10部をジメチルフォルムアミド20部に溶解させた溶液を添加しポリマー溶液に残存するイソシアネート基を中和し、ポリマー溶液を得た。さらに、ポリマー濃度が34重量%になるようにジメチルフォルムアミドを加え、酸化チタンの30重量%のジメチルフォルムアミド分散液205部、1,3,5−トリス(4−tブチル3−ヒドロキシ2,6−ベンジル)イソシアヌル酸15部を加えて紡糸用原液を得た。
【0015】
このようにして得られた紡糸用原液を紡糸口金から熱風中に押し出して乾式紡糸し、仮撚りを付与したのち、オイリングローラーに接触させた。油剤を付与された弾性糸は毎分400mの速度で紙管に巻き取り、2.5Kgの弾性糸を紙管に綾角度15°±55’で巻き取り、420デニール弾性糸チーズ(巻糸体)を得た。オイリングローラーへは、メチルフェニル変性シリコーンオイルを供給し、糸条に対して4重量%の油剤を付着させたチーズを得た。供給したメチルフェニル変性シリコーンオイルの表面張力は26ダイン/cmであった。
得られたチーズより弾性糸を無作為に5cmずつ3本とり、それらの糸を紙おむつ用表面材等に使用されるポリプロピレン不織布に接着したのち、室温で60分放置したものを張力測定器の一端に弾性糸、もう一方にポリプロピレン不織布をはさんで引っ張り、弾性糸がポリプロピレン不織布より剥離する時の応力を測定した結果162g(デニールあたりの応力は0.38g)であった。また解舒性評価は40%であった。
【0016】
比較例1
実施例1と同様に紡糸した弾性糸に10cst.のシリコーンオイルを4%付着させ、同じく剥離応力、解舒性を測定した。その結果、剥離応力54g(デニールあたりの応力は0.13g)、解舒性32%であった。10cst.のシリコーンオイルの表面張力は19ダイン/cmであった。また解舒性は良好であったが、剥離応力が低く紙おむつ用としては実用に使用できないものであった。
【0017】
実施例2〜4
実施例1において、油剤を表1に示す油剤をそれぞれ付着させた以外は全て実施例1と同様にして、剥離応力、解舒性を測定した。その結果を表1に示す。
【0018】
比較例2
実施例2において、油剤の付着量を6重量%とした以外は全て実施例2と同様に実施した。その結果を表1に示す。
【0019】
比較例3、4
実施例1と同様に紡糸した弾性糸にメチルフェニル変性シリコーンオイルを各々4、6重量%付着させ、3Kgの弾性糸を紙管に巻き取った。巻上がったチーズの形状を比較した結果を表1に示すが、油剤を4重量%付着させた弾性糸のチーズには若干の綾落ちが確認された。一方、油剤を6重量%付着させた弾性糸のチーズには綾落ちがみられなかった。これは油剤を多く付着させる事によって弾性糸の抵抗が低くなり、そのために巻取り時にチーズから弾性糸がすべり落ちたためである。
【0020】
【表1】
Figure 0003741238
【0021】
【発明の効果】
以上かかる構成よりなる本発明弾性糸巻糸体は、表1からも明らかなとおり、デニールあたりの剥離応力0.35g以上、解舒性80%以下であり、接着性が強く、また解舒性にも優れた、良い形状の弾性糸巻糸体であることが判る。特に紙おむつ用として生産効率を向上させることができるので、産業界に寄与すること大である。

Claims (4)

  1. 弾性糸に表面張力25〜30ダイン/cmの油剤を2重量%を超え5重量%以下付与させて、巻きとられて得られる弾性糸巻糸体。
  2. 巻きとられた弾性糸巻糸体の巻き重量が、1.1Kg以上である請求項1記載の弾性糸巻糸体。
  3. きとられた弾性糸の繊度が210デニールから2240デニールである請求項1又は2記載の弾性糸巻糸体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の弾性糸巻糸体が紙おむつ用である弾性糸巻糸体。
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