JP2004149971A - ホットメルト型接着性繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】接着時の熱処理を低温で行うことができ、多種類の他素材と併せて用いることが可能となるホットメルト型接着性繊維を提供すること、本発明のホットメルト型接着性繊維を巻姿よく巻き取ることができ、操業性よく生産することができる製造方法を提供する。
【構成】ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合であって、融点が80〜120℃であるナイロン共重合体からなることを特徴とするホットメルト型接着性繊維。
【選択図】 なし
【構成】ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合であって、融点が80〜120℃であるナイロン共重合体からなることを特徴とするホットメルト型接着性繊維。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共重合ナイロンを主成分とし、特に比較的低温での接着性に優れているので、他の繊維と組み合わせて用いる際には様々な素材の他の繊維に対応することができるホットメルト型接着性繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ホットメルト型接着剤はその接着の早さ、常温で固体であるという扱いやすさ、また、接着工程の合理化、省力化が図れることから様々な分野で使われている。特に、ポリアミド系のホットメルト接着剤は一般に耐溶剤性、耐熱性が優れており、繊維、建築物、電気電子部品などの接着に利用されている。
【0003】
一般に、ホットメルト型接着剤は求める温度で溶けること、接着力が高いことが要求される。特に布帛の接着に対して使用する際には、その布帛の構成材料の分解温度、融点よりも低い融点を有し、十分な接着性を有することが必要とされる。
【0004】
従来、ポリアミド系のホットメルト型接着剤として、ポリラウロラクタム成分を含有するホットメルト型接着剤が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このようなホットメルト型接着剤を繊維状にした場合、ホットメルト型接着剤を布帛に織り込んで使用することができるため、各種衣料用途、カーペットのようなインテリア用途等の繊維や布帛同士の接着などを簡単に行うことができるため有用である。
【0006】
このようなホットメルト型接着性繊維は、上記のように他の素材と併せて混繊糸としたり、布帛として用いることが多いので、多くの種類の他素材と組み合わせて用いることができるものが求められていた。すなわち、接着時に高温の熱処理を必要とするものでは、他素材の性能や風合いを低下させ、求める繊維や布帛等の繊維製品を得ることができないという問題があり、低温での熱処理により接着可能なものが求められていた。
【0007】
また、このような繊維とするには、低融点のポリマーからなるものとすればよいが、低融点ポリマーを繊維化すること、つまり、溶融紡糸、延伸を行い、巻き姿よく巻き取ることは各工程において様々なトラブルが生じ、操業性よく得ることは困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−157743号公報(第3−6項、実施例1−4、比較例1−5)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するものであって、接着時の熱処理を低温で行うことができ、多種類の他素材と併せて用いることが可能となるホットメルト型接着性繊維を提供すること、本発明のホットメルト型接着性繊維を巻姿よく巻き取ることができ、操業性よく生産することができる製造方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は次の(1)、(2)を要旨とするものである。
(1)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合であって、融点が80〜120℃であるナイロン共重合体からなることを特徴とするホットメルト型接着性繊維。
(2)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合を溶融紡糸後、一旦巻き取ることなく連続して、複数のローラ間で2.2倍以上延伸し、最終ローラとワインダー間の糸条の張力が1.0cN/dTex以下となるようにして巻き取ることを特徴とする(1)記載のホットメルト型接着性繊維の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の接着性繊維を構成するナイロン共重合体は、融点が80〜120℃であることが必要である。融点のさらに好ましい範囲は90〜120℃であり、融点を80〜120℃とするためには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合体、あるいは、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合体とする。そして本発明の接着性繊維は、これらの共重合体を単独あるいは併せて用いるものである。
【0012】
融点を80〜105℃とするには、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合体とすることが好ましく、融点を105〜120℃とするには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合体とすることが好ましい。そして、これらの組成比により目的とする融点となるように調整を行う。
【0013】
融点が80〜120℃であることによって、80〜130℃程度の低温での接着性が可能となり、本発明の接着性繊維を一部に用いた複合繊維や混繊糸等の繊維糸条、織編物や不織布等の布帛の性能を低下させることなく、良好な風合いのものを得ることが可能となる。融点が80℃未満であると、より低温での熱処理が可能となるが、接着後の熱処理による接着性の耐久性が悪くなり、剥離を生じやすくなる。一方、融点が120℃を超えると、接着時に高温での熱処理が必要となり、上記したような本発明で目的とする効果を奏することができなくなる。
【0014】
なお、本発明で用いるナイロン共重合体においては、効果を損なわない範囲であれば、ブロッキング防止剤、無機充填剤、補強剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃材、艶消剤などの各種添加剤を含有していてもよい。
【0015】
そして、本発明の接着性繊維は、強度2.0cN/dtex以上、切断伸度135%以下であることが好ましく、さらには強度2.3cN/dtex以上、切断伸度120%以下であることが好ましい。このような強伸度のものとすることで実用的に使用できる範囲が広いものとなり、汎用性のある接着性繊維となる。
【0016】
本発明の接着性繊維の形状は上記したナイロン共重合体のみからなる繊維としてもよいが、芯鞘形状の複合繊維としてもよく、つまり、上記したナイロン共重合体を鞘部にのみ使用した繊維としてもよい。また、繊維の断面形状も特に限定するものではなく、丸断面のみでなく、異形、中空等の繊維としてもよい。
【0017】
本発明の熱接着性繊維は、上記のようなナイロン共重合体を用いているものであるので、低温での接着熱処理により容易に接着させることができると同時に、接着性にも優れている。したがって、接着後に染色等の後加工を施した際にも接着面の剥離が生じ難く、耐久性にも優れるものとなる。
【0018】
したがって、本発明の熱接着性繊維を用いる用途としては、例えば、複数の繊維の一部に混繊させた糸条とし、熱処理により形態固定をさせた糸条としてモップ等に用いられるブラシ毛部分やカーペット用のパイル糸とする用途や、さらには、織編物を構成する繊維の一部に使用し、熱処理(家庭用アイロン等で)を施すことにより布帛同士を接着させたり、芯材として用いる用途や、不織布用のバインダー繊維として用いることができる。
【0019】
次に、本発明の熱接着性繊維の製造方法について説明する。
ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合を溶融紡糸し、一旦巻き取ることなく連続して延伸を行い巻き取る一工程法と、紡糸後、延伸することなく一旦巻き取り、その未延伸糸を延伸工程に導き延伸を行う二工程法のいずれで製造してもよい。
【0020】
ただし、通常のナイロン繊維を製造する二工程法で製造しようとすると、糸条が吸湿により膨潤し、巻取工程において製品の巻姿が不良となったり、巻取後に繊維が吸湿により膨潤し、巻姿が乱れて繊維を製品化することが困難となりやすい。
そこで、本発明の製造方法は一工程法とするものである、溶融紡糸後、一旦巻き取ることなく連続して、複数のローラ間で2.2倍以上延伸し、最終ローラとワインダー間の糸条の張力が1.0cN/dTex以下となるようにして巻き取るものである。
【0021】
複数のローラ間で2.2倍以上、さらに好ましくは2.5倍以上の延伸倍率として延伸を行うことにより、繊維の結晶配向度を高め、糸条の膨潤を防ぐことができるので、巻姿よく巻き取ることができ、その後も膨潤が少なく、巻姿が乱れることがない。
2.2倍以上の延伸倍率は、紡糸後糸条を引き取り、巻き取るまでの複数のローラ間で延伸を行った合計とすればよく、特に延伸する位置を限定するものではない。
【0022】
さらに、この際、最終ローラとワインダー間の糸条の張力が高すぎると、製品の巻きが剛直となり、解舒性、製品収率を悪化させるため、最終ローラとワインダー間の糸条の張力を1.0cN/dtex以下、より好ましくは0.05〜0.7cN/dtexの張力として巻き取ることにより、良好な巻姿で製品として得ることが可能となる。最終ローラとワインダー間の糸条の張力が1.0cN/dtexを超えると、製品の巻きが剛直となり、解舒性が悪くなる。また、巻き取り時にも巻姿が乱れやすく、製品収率が悪化する。
【0023】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、繊維の強度、切断伸度の測定方法、接着性の評価方法は以下のように行った。
〔強度、切断伸度〕
島津製作所製のオートグラフAGS−50Dを用い、試料長15cm、引張測度25cm/minの条件で測定した。
〔接着性〕
得られたホットメルト型接着性繊維1本と、ホットメルト型接着性でない通常のナイロン6糸(110デシテックス12フィラメント)2本とを合わせて混繊し、混繊の工程の途中でスピンドル回転によって撚りをかけることにより15個/mの撚り数の糸とした。
この撚糸を10cmに切断して両端を固定し、伸ばした状態でそれぞれローラ温度120℃、ローラスピード0.5m/min、プレス圧力0.7kg/cm2の条件で繊維軸方向に熱ローラに通すことで加熱圧着し、その後に両端をカットして長さ5cmとしてサンプルを得た。
このサンプルをガラス製の300ミリリットルビーカーを用いて70℃、80℃、85℃の熱水中で幅4cmのラグビーボール型マッグネチックスターラーチップにより200rpmの回転数で30分間攪拌し続けた後に接着した繊維が剥離を起こしているかどうかを確認した。測定はサンプル数10個について行い、熱水処理後、自然乾燥させ、乾燥後の繊維の剥離状態を目視により下記の3段階で評価した。
○…剥離なし
△…試料は部分的に剥離を起こしている
×…剥離を起こし、半数以上の試料が撚糸の形状を維持できなくなっている
【0024】
実施例1
ナイロン6:ナイロン66:ナイロン12の組成質量比が42:18:40から成る共重合ナイロン(アトフィナ製、融点118℃)チップを用い、この共重合体に対し、0.02質量%のステアリン酸マグネシウムを添加したものをエクストルーダー型溶融紡糸機を用い溶融混練した。15.0g/minの割合でノズル孔径 0.35mm、ホール数12の紡糸口金を通して紡糸温度 185℃で紡出し、第一ローラ速度を560m/min、第二ローラ速度を560m/min、続いてフリクションローラ速度を1400m/minの速度として延伸倍率2.5倍で延伸し、巻き取り、110dtexのフィラメントを得た。
このときの第二ローラとフリクションローラ間の糸条の張力をROTHSCHILD製携帯型テンションメーターMINI−TENS(R−047)で測定したところ0.7cN/dtexであった。
【0025】
実施例2
実施例1と同様の共重合ナイロンを用いて同様に溶融紡糸を行い、第一ローラ速度を650m/min、第二ローラ速度を1435m/minとして延伸倍率2.21倍で延伸し、続いてフリクションローラ速度を1400m/minの速度として巻き取り、110dtexのフィラメントを得た。
このときの第二ローラとフリクションローラ間の糸条の張力をROTHSCHILD製携帯型テンションメーターMINI−TENS(R−047)で測定したところ0.1cN/dtexであった。
【0026】
実施例3
ナイロン6、ナイロン12、ナイロン610からなる共重合ナイロン(ダイセル・デグサ製、融点103℃)チップを用い、この共重合体に対し、0.02質量%のステアリン酸マグネシウムを添加したものをエクストルーダー型溶融紡糸機を用いて溶融混練した。15.0g/minの割合でノズル孔径 0.35mm、ホール数12の紡糸口金を通して紡糸温度162℃で紡出し、第一ローラ速度を540m/min、第二ローラ速度を1396m/minとして延伸倍率2.59倍で延伸し、続いてフリクションローラ速度を1347m/minの速度として巻き取り、110dtexのフィラメントを得た。
このときの第二ローラとフリクションローラ間の糸条の張力をROTHSCHILD製携帯型テンションメーターMINI−TENS(R−047)で測定したところ0.1cN/dtexであった。
【0027】
実施例4
第一ローラ速度を520m/min、第二ローラ速度を520m/min、続いてフリクションローラ速度を1300m/minの速度として延伸倍率2.5倍で延伸した以外は実施例3と同様にして行い、110dtexのフィラメントを得た。
このときの第二ローラとフリクションローラ間の糸条の張力をROTHSCHILD製携帯型テンションメーターMINI−TENS(R−047)で測定したところ0.7cN/dtexであった。
【0028】
実施例1〜4における延伸倍率、張力、得られた繊維の強度、切断伸度、接着性の評価結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から明らかなように、実施例1〜4で得られた接着性繊維は、強度、伸度も優れており、接着性も良好で、接着後の剥離も生じることがなかった。また、巻姿よく巻き取ることができ、解舒性も良好で、かつ吸湿による巻崩れも生じなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の接着性繊維は、低い融点を有するナイロン共重合体で構成されることにより、接着時の熱処理を低温で行うことができ、多種類の他素材と併せて用いることが可能となり、風合いの良好な製品を得ることができる。さらに、接着処理時の接着性も良好で、接着後の後加工や使用において剥離も生じにくいものである。
また、本発明の接着性繊維の製造方法によれば、本発明の接着性繊維を一工程法により、巻姿よく、解舒性良好となるように巻き取ることができ、また、巻取後の巻姿の崩れも生じることがない。
【発明の属する技術分野】
本発明は、共重合ナイロンを主成分とし、特に比較的低温での接着性に優れているので、他の繊維と組み合わせて用いる際には様々な素材の他の繊維に対応することができるホットメルト型接着性繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ホットメルト型接着剤はその接着の早さ、常温で固体であるという扱いやすさ、また、接着工程の合理化、省力化が図れることから様々な分野で使われている。特に、ポリアミド系のホットメルト接着剤は一般に耐溶剤性、耐熱性が優れており、繊維、建築物、電気電子部品などの接着に利用されている。
【0003】
一般に、ホットメルト型接着剤は求める温度で溶けること、接着力が高いことが要求される。特に布帛の接着に対して使用する際には、その布帛の構成材料の分解温度、融点よりも低い融点を有し、十分な接着性を有することが必要とされる。
【0004】
従来、ポリアミド系のホットメルト型接着剤として、ポリラウロラクタム成分を含有するホットメルト型接着剤が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このようなホットメルト型接着剤を繊維状にした場合、ホットメルト型接着剤を布帛に織り込んで使用することができるため、各種衣料用途、カーペットのようなインテリア用途等の繊維や布帛同士の接着などを簡単に行うことができるため有用である。
【0006】
このようなホットメルト型接着性繊維は、上記のように他の素材と併せて混繊糸としたり、布帛として用いることが多いので、多くの種類の他素材と組み合わせて用いることができるものが求められていた。すなわち、接着時に高温の熱処理を必要とするものでは、他素材の性能や風合いを低下させ、求める繊維や布帛等の繊維製品を得ることができないという問題があり、低温での熱処理により接着可能なものが求められていた。
【0007】
また、このような繊維とするには、低融点のポリマーからなるものとすればよいが、低融点ポリマーを繊維化すること、つまり、溶融紡糸、延伸を行い、巻き姿よく巻き取ることは各工程において様々なトラブルが生じ、操業性よく得ることは困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−157743号公報(第3−6項、実施例1−4、比較例1−5)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するものであって、接着時の熱処理を低温で行うことができ、多種類の他素材と併せて用いることが可能となるホットメルト型接着性繊維を提供すること、本発明のホットメルト型接着性繊維を巻姿よく巻き取ることができ、操業性よく生産することができる製造方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は次の(1)、(2)を要旨とするものである。
(1)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合であって、融点が80〜120℃であるナイロン共重合体からなることを特徴とするホットメルト型接着性繊維。
(2)ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合を溶融紡糸後、一旦巻き取ることなく連続して、複数のローラ間で2.2倍以上延伸し、最終ローラとワインダー間の糸条の張力が1.0cN/dTex以下となるようにして巻き取ることを特徴とする(1)記載のホットメルト型接着性繊維の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の接着性繊維を構成するナイロン共重合体は、融点が80〜120℃であることが必要である。融点のさらに好ましい範囲は90〜120℃であり、融点を80〜120℃とするためには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合体、あるいは、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合体とする。そして本発明の接着性繊維は、これらの共重合体を単独あるいは併せて用いるものである。
【0012】
融点を80〜105℃とするには、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合体とすることが好ましく、融点を105〜120℃とするには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合体とすることが好ましい。そして、これらの組成比により目的とする融点となるように調整を行う。
【0013】
融点が80〜120℃であることによって、80〜130℃程度の低温での接着性が可能となり、本発明の接着性繊維を一部に用いた複合繊維や混繊糸等の繊維糸条、織編物や不織布等の布帛の性能を低下させることなく、良好な風合いのものを得ることが可能となる。融点が80℃未満であると、より低温での熱処理が可能となるが、接着後の熱処理による接着性の耐久性が悪くなり、剥離を生じやすくなる。一方、融点が120℃を超えると、接着時に高温での熱処理が必要となり、上記したような本発明で目的とする効果を奏することができなくなる。
【0014】
なお、本発明で用いるナイロン共重合体においては、効果を損なわない範囲であれば、ブロッキング防止剤、無機充填剤、補強剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃材、艶消剤などの各種添加剤を含有していてもよい。
【0015】
そして、本発明の接着性繊維は、強度2.0cN/dtex以上、切断伸度135%以下であることが好ましく、さらには強度2.3cN/dtex以上、切断伸度120%以下であることが好ましい。このような強伸度のものとすることで実用的に使用できる範囲が広いものとなり、汎用性のある接着性繊維となる。
【0016】
本発明の接着性繊維の形状は上記したナイロン共重合体のみからなる繊維としてもよいが、芯鞘形状の複合繊維としてもよく、つまり、上記したナイロン共重合体を鞘部にのみ使用した繊維としてもよい。また、繊維の断面形状も特に限定するものではなく、丸断面のみでなく、異形、中空等の繊維としてもよい。
【0017】
本発明の熱接着性繊維は、上記のようなナイロン共重合体を用いているものであるので、低温での接着熱処理により容易に接着させることができると同時に、接着性にも優れている。したがって、接着後に染色等の後加工を施した際にも接着面の剥離が生じ難く、耐久性にも優れるものとなる。
【0018】
したがって、本発明の熱接着性繊維を用いる用途としては、例えば、複数の繊維の一部に混繊させた糸条とし、熱処理により形態固定をさせた糸条としてモップ等に用いられるブラシ毛部分やカーペット用のパイル糸とする用途や、さらには、織編物を構成する繊維の一部に使用し、熱処理(家庭用アイロン等で)を施すことにより布帛同士を接着させたり、芯材として用いる用途や、不織布用のバインダー繊維として用いることができる。
【0019】
次に、本発明の熱接着性繊維の製造方法について説明する。
ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合を溶融紡糸し、一旦巻き取ることなく連続して延伸を行い巻き取る一工程法と、紡糸後、延伸することなく一旦巻き取り、その未延伸糸を延伸工程に導き延伸を行う二工程法のいずれで製造してもよい。
【0020】
ただし、通常のナイロン繊維を製造する二工程法で製造しようとすると、糸条が吸湿により膨潤し、巻取工程において製品の巻姿が不良となったり、巻取後に繊維が吸湿により膨潤し、巻姿が乱れて繊維を製品化することが困難となりやすい。
そこで、本発明の製造方法は一工程法とするものである、溶融紡糸後、一旦巻き取ることなく連続して、複数のローラ間で2.2倍以上延伸し、最終ローラとワインダー間の糸条の張力が1.0cN/dTex以下となるようにして巻き取るものである。
【0021】
複数のローラ間で2.2倍以上、さらに好ましくは2.5倍以上の延伸倍率として延伸を行うことにより、繊維の結晶配向度を高め、糸条の膨潤を防ぐことができるので、巻姿よく巻き取ることができ、その後も膨潤が少なく、巻姿が乱れることがない。
2.2倍以上の延伸倍率は、紡糸後糸条を引き取り、巻き取るまでの複数のローラ間で延伸を行った合計とすればよく、特に延伸する位置を限定するものではない。
【0022】
さらに、この際、最終ローラとワインダー間の糸条の張力が高すぎると、製品の巻きが剛直となり、解舒性、製品収率を悪化させるため、最終ローラとワインダー間の糸条の張力を1.0cN/dtex以下、より好ましくは0.05〜0.7cN/dtexの張力として巻き取ることにより、良好な巻姿で製品として得ることが可能となる。最終ローラとワインダー間の糸条の張力が1.0cN/dtexを超えると、製品の巻きが剛直となり、解舒性が悪くなる。また、巻き取り時にも巻姿が乱れやすく、製品収率が悪化する。
【0023】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、繊維の強度、切断伸度の測定方法、接着性の評価方法は以下のように行った。
〔強度、切断伸度〕
島津製作所製のオートグラフAGS−50Dを用い、試料長15cm、引張測度25cm/minの条件で測定した。
〔接着性〕
得られたホットメルト型接着性繊維1本と、ホットメルト型接着性でない通常のナイロン6糸(110デシテックス12フィラメント)2本とを合わせて混繊し、混繊の工程の途中でスピンドル回転によって撚りをかけることにより15個/mの撚り数の糸とした。
この撚糸を10cmに切断して両端を固定し、伸ばした状態でそれぞれローラ温度120℃、ローラスピード0.5m/min、プレス圧力0.7kg/cm2の条件で繊維軸方向に熱ローラに通すことで加熱圧着し、その後に両端をカットして長さ5cmとしてサンプルを得た。
このサンプルをガラス製の300ミリリットルビーカーを用いて70℃、80℃、85℃の熱水中で幅4cmのラグビーボール型マッグネチックスターラーチップにより200rpmの回転数で30分間攪拌し続けた後に接着した繊維が剥離を起こしているかどうかを確認した。測定はサンプル数10個について行い、熱水処理後、自然乾燥させ、乾燥後の繊維の剥離状態を目視により下記の3段階で評価した。
○…剥離なし
△…試料は部分的に剥離を起こしている
×…剥離を起こし、半数以上の試料が撚糸の形状を維持できなくなっている
【0024】
実施例1
ナイロン6:ナイロン66:ナイロン12の組成質量比が42:18:40から成る共重合ナイロン(アトフィナ製、融点118℃)チップを用い、この共重合体に対し、0.02質量%のステアリン酸マグネシウムを添加したものをエクストルーダー型溶融紡糸機を用い溶融混練した。15.0g/minの割合でノズル孔径 0.35mm、ホール数12の紡糸口金を通して紡糸温度 185℃で紡出し、第一ローラ速度を560m/min、第二ローラ速度を560m/min、続いてフリクションローラ速度を1400m/minの速度として延伸倍率2.5倍で延伸し、巻き取り、110dtexのフィラメントを得た。
このときの第二ローラとフリクションローラ間の糸条の張力をROTHSCHILD製携帯型テンションメーターMINI−TENS(R−047)で測定したところ0.7cN/dtexであった。
【0025】
実施例2
実施例1と同様の共重合ナイロンを用いて同様に溶融紡糸を行い、第一ローラ速度を650m/min、第二ローラ速度を1435m/minとして延伸倍率2.21倍で延伸し、続いてフリクションローラ速度を1400m/minの速度として巻き取り、110dtexのフィラメントを得た。
このときの第二ローラとフリクションローラ間の糸条の張力をROTHSCHILD製携帯型テンションメーターMINI−TENS(R−047)で測定したところ0.1cN/dtexであった。
【0026】
実施例3
ナイロン6、ナイロン12、ナイロン610からなる共重合ナイロン(ダイセル・デグサ製、融点103℃)チップを用い、この共重合体に対し、0.02質量%のステアリン酸マグネシウムを添加したものをエクストルーダー型溶融紡糸機を用いて溶融混練した。15.0g/minの割合でノズル孔径 0.35mm、ホール数12の紡糸口金を通して紡糸温度162℃で紡出し、第一ローラ速度を540m/min、第二ローラ速度を1396m/minとして延伸倍率2.59倍で延伸し、続いてフリクションローラ速度を1347m/minの速度として巻き取り、110dtexのフィラメントを得た。
このときの第二ローラとフリクションローラ間の糸条の張力をROTHSCHILD製携帯型テンションメーターMINI−TENS(R−047)で測定したところ0.1cN/dtexであった。
【0027】
実施例4
第一ローラ速度を520m/min、第二ローラ速度を520m/min、続いてフリクションローラ速度を1300m/minの速度として延伸倍率2.5倍で延伸した以外は実施例3と同様にして行い、110dtexのフィラメントを得た。
このときの第二ローラとフリクションローラ間の糸条の張力をROTHSCHILD製携帯型テンションメーターMINI−TENS(R−047)で測定したところ0.7cN/dtexであった。
【0028】
実施例1〜4における延伸倍率、張力、得られた繊維の強度、切断伸度、接着性の評価結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から明らかなように、実施例1〜4で得られた接着性繊維は、強度、伸度も優れており、接着性も良好で、接着後の剥離も生じることがなかった。また、巻姿よく巻き取ることができ、解舒性も良好で、かつ吸湿による巻崩れも生じなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の接着性繊維は、低い融点を有するナイロン共重合体で構成されることにより、接着時の熱処理を低温で行うことができ、多種類の他素材と併せて用いることが可能となり、風合いの良好な製品を得ることができる。さらに、接着処理時の接着性も良好で、接着後の後加工や使用において剥離も生じにくいものである。
また、本発明の接着性繊維の製造方法によれば、本発明の接着性繊維を一工程法により、巻姿よく、解舒性良好となるように巻き取ることができ、また、巻取後の巻姿の崩れも生じることがない。
Claims (3)
- ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合であって、融点が80〜120℃であるナイロン共重合体からなることを特徴とするホットメルト型接着性繊維。
- 強度2.0cN/dtex以上、切断伸度135%以下の物性を有することを特徴とする請求項1記載のホットメルト型接着性繊維。
- ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12共重合及び/又はナイロン6、ナイロン610、ナイロン12共重合を溶融紡糸後、一旦巻き取ることなく連続して、複数のローラ間で2.2倍以上延伸し、最終ローラとワインダー間の糸条の張力が1.0cN/dTex以下となるようにして巻き取ることを特徴とする請求項1又は2記載のホットメルト型接着性繊維の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2002-10-31 JP JP2002317922A patent/JP2004149971A/ja active Pending
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