JP3741083B2 - 生ごみ処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微生物方式の生ごみ処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在実用化されている生ごみ処理装置は、主として乾燥方式と微生物方式の二つに大別することができる。
【0003】
乾燥方式は、加熱など物理的処理で生ごみ中の水分を除去させることによって、ごみの減量を行なう処理方式であり、高速で安定的に処理を行なうことができる。しかし乾燥方式には、水分除去に必要なエネルギーが大きくなることや、ごみの減量率が低いという短所がある。
【0004】
一方、微生物方式は、微生物の有機物分解能力を利用して生ごみを分解するようにしたものであり、生ごみの量が変化することによる負荷変動への対応性や、処理時間の点で乾燥方式よりも劣る。しかし、微生物の有機物分解作用を利用するので省エネルギーであり、しかも生ごみ中の有機物を最終的には炭酸ガスにまで分解することができ、ごみの減量率が高いという長所を有するので、微生物方式の生ごみ処理装置は広く普及しつつある。
【0005】
特に、微生物方式の生ごみ処理装置において主流となっているのは、木材チップなど有機基材と生ごみとを好気性条件下で混合させ、基材に担持させた好気性菌によって生ごみを好気性分解するようにした方式のものである。そしてpHを7.0〜9.5のアルカリ性領域に保持することによって、好気性菌による好気性分解の効率化を図り、ごみの大幅減量を可能なものにしている。しかし、このような好気性菌の好気性分解を利用した生ごみ処理装置では、生ごみの有機物の分解が活発であるほど、分解に伴なって多くのガスが発生するが、好気性分解は上記のように一般にアルカリ性領域で行なわれるので、タンパク質の分解によって多量のアンモニアが放出され、アンモニアガスによって悪臭が発生し易いという問題がある。
【0006】
一方、このようなアルカリ性領域で行なう微生物分解方式に対して、酸性領域で生ごみを微生物分解する酸性分解方式がある。酸性分解方式では、酸性状態を維持するために代謝産物として乳酸などの有機酸を産出する乳酸菌を主として利用して生ごみの分解を行なうものであり、従って酸性分解方式では生ごみの分解でアンモニアが生じても、有機酸と中和されてアンモニアガスの発生が抑制されるので、生ごみが分解されて発生する臭いはマイルドなものとなるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のように微生物として乳酸菌を主に用いて酸性分解で生ごみの分解処理を行なうにあたって、投入される生ごみの質や量が大幅に変動したり、温度などの周囲環境が急激に変化した場合、分解処理槽内の微生物のバランスが崩れ、腐敗菌などの生ごみ分解には好ましくない雑菌が増殖し、生ごみの分解処理能力が低下したり、悪臭が発生したりするおそれがあるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、投入される生ごみの質や量が大幅に変動したり、温度などの周囲環境が急激に変化したりしても、生ごみを安定して不快臭の発生少なく分解処理することができる生ごみ処理方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る生ごみ処理方法は、分解処理槽に供給された生ごみを微生物によって分解するようにした生ごみ処理方法において、分解処理槽に界面活性剤を添加すると共に、バクテリオシンを生産する乳酸菌を主体とする微生物で生ごみの分解を行なうようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
また請求項2の発明は、請求項1において、乳酸菌として、ラクトコックス属の菌を用いることを特徴とするものである。
【0011】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、分解処理槽にキレート剤を添加するようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は生ごみ分解処理装置の実施の形態の一例を示すものであり、ケーシング1内に分解処理槽2が配置してあり、分解処理槽2内には攪拌装置3が設けてある。攪拌装置3は水平に配置される回転軸4と回転軸4の外周に突出して設けられる攪拌羽根5とから形成されるものであり、回転軸4の端部は分解処理槽2の槽壁から突出させてある。ケーシング1の底部内には攪拌用モータ6が設けてあり、回転軸4の突出端部に取着したプーリ7と攪拌用モータ6の出力軸8に取着したプーリ9の間にベルト10を懸架することによって、攪拌用モータ6の作動で攪拌装置3を回転駆動することができるようにしてある。また、分解処理槽2の上部には吸気口11と排気口12が設けてあり、吸気口11はケーシング1の空気取り入れ口13を介して、排気口12はケーシング1の空気排出口14を介して外部に連通させてある。そして排気口12には排気ファン15が設けてあり、吸気口11からa矢印のように吸気した空気を排気口12からb矢印のように排気することによって、分解処理槽2に空気を通過させて通風させるようにしてある。
【0014】
上記の分解処理槽2には木材チップや多孔質セルロース発泡体など、多孔質の有機質粒体からなる基材16が充填してあり、分解処理槽2内に投入される生ごみと基材16が攪拌装置3によって攪拌されるようにしてある。また分解処理槽2の下部には加熱ヒーターなどで形成される加熱装置17が設けてあり、基材16と生ごみとの混合物を加熱することができるようにしてある。さらに分解処理槽2にはさらに水分センサ18が設けてあり、基材16と生ごみとの混合物の水分を検知するようにしてある。
【0015】
上記のように形成される生ごみ処理装置において本発明では、排気ファン15の運転によって分解処理槽2内に常時通風して通気しながら、加熱装置17によって基材16と生ごみとの混合物の温度を40〜60℃の範囲に加熱調整し、そして基材16と生ごみとの混合物のpHを3以上、7未満(より好ましくは5以上、7未満)の酸性領域に維持して、生ごみを酸性分解するようにしてある。また、酸性分解に適する水分は15〜50質量%(より好ましくは20〜40質量%)であり、上記の温度範囲で加熱装置17を制御して分解処理槽2内の水分量がこの範囲内に維持するようにしてある。
【0016】
ここで、このように分解処理槽2内の基材16と生ごみとの混合物の温度範囲を40〜60℃に調整することによって、分解処理槽2内に増殖できる微生物を至適温度の高い高温菌に限ることができ、雑菌の繁殖を抑制することができる。また分解処理槽2内に常時通風して好気的雰囲気に維持することによって、分解処理槽2内に増殖できる微生物を、酸素を要求する好気性菌と、酸素存在下でも増殖可能な通性嫌気性菌に限ることができ、偏性嫌気性菌の繁殖を防ぐことができる。さらに基材16と生ごみとの混合物のpHを3以上、7未満の酸性領域に維持することによって、好気性分解処理で優位を占める好気性菌の至適pHは7〜10のアルカリ領域にあるので、その活性を失わせることができ、好気性菌が優先化されないようにすることができる。従って、分解処理槽2内を好気性雰囲気に保ちながら温度とpHを上記の範囲に維持することによって、雑菌の繁殖を防ぎ、高温性かつ、好酸性もしくは耐酸性の、通性嫌気性菌を優先種として、生ごみを酸性分解処理することができるものである。
【0017】
そして好酸性または耐酸性の通性嫌気性菌の代表的なものとして、乳酸菌を挙げることができ、上記のような条件で生ごみ処理装置を運転することによって、乳酸菌を主体とする微生物で生ごみの分解処理を行なうことが可能になるが、運転開始の前に分解処理槽2内に乳酸菌を添加することによって、より安定的に乳酸菌を優先種として生ごみの分解処理を行なうことができるものである。
【0018】
ここで、本発明では、乳酸菌のなかでもバクテリオシンの生産が盛んな菌を主体として生ごみの分解処理を行なうようにしてある。このようなバクテリオシンの生産が盛んな乳酸菌としては、ラクトコックス(Lactococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、カルノバクテリウム(Carnobacterium)属、ルーコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコックス(Pediococcus)属などから選ばれる、一種あるいは複数種の菌を用いることができる。バクテリオシンは抗菌性タンパク質であり、生ごみを酸性分解する乳酸菌にバクテリオシンを生産させることによって、その抗菌作用で腐敗菌など生ごみ処理に好ましくない雑菌の繁殖を抑制することができるものである。従って、分解処理槽2に投入される生ごみの質や量が大幅に変動したり、温度などの周囲環境が急激に変化しても、腐敗菌などの雑菌が増殖することを抑制して微生物相を安定化することができるので、生ごみの分解処理能力が低下することを防止することができると共に、腐敗菌によって産出される酪酸や硫化水素などの腐敗臭の発生がなくなり、悪臭の発生を防止することができるものである。
【0019】
また、上記の乳酸菌はルーコノストック属を除けばいずれもホモ型発酵の菌である。すなわち乳酸菌には、糖から主として乳酸を生成するホモ発酵型の菌と、乳酸と同時に酢酸などを生成するヘテロ発酵型の菌とがあるが、ホモ発酵型の乳酸菌はこのように、生ごみを分解しても刺激の弱い乳酸が生成されるだけであり、刺激のある酢酸などの生成はごく僅かであるので、生ごみの分解によって生じる分解臭は刺激のないマイルドなものになるものである。
【0020】
そして乳酸菌による酸性分解ではアンモニアの発生を抑制することができるために、窒素成分がアンモニアガスとして放出されることを低減することができ、生ごみを分解処理することによって得られる残渣の堆肥としての有効性を高めることができるものである。また、乳酸菌による乳酸発酵によって乳酸が生成されるので、乳酸でpHを酸性状態に安定して維持することができ、生ごみの酸性分解を安定して行なわせることができると共に、乳酸によって腐敗菌の繁殖を防止することもできるものである。
【0021】
ここで、図1に示す生ごみ処理装置を用い、分解処理槽2に生ごみを毎日0.7kg投入して、従来の好気・アルカリ性分解処理をしたとき(比較例)と、本発明の好気・酸性分解処理をしたとき(実施例)の、3ヶ月経過後の分解処理槽2内の状態を比較する試験を行ない、結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003741083
【0023】
表1にみられるように、従来の好気・アルカリ性分解ではバチルス属を中心に多種にわたる細菌が確認され、アンモニアガス濃度も高いのに対して、本発明の好気・酸性分解では、バクテリオシンを生産する乳酸菌が細菌数の大多数を占め、他の細菌の割合が低く、雑菌の繁殖が抑制されていることが見られ、またpHは酸性領域で安定しており、アンモニアガスの発生も低減されていた。
【0024】
また本発明において、バクテリオシンを生産する乳酸菌のなかでも、ラクトコックス属の菌を主体するものが特に好ましい。ラクトコックス属の菌としては例えばラクトコックスラクティス(Lactococcus lactis)を用いることができるものであり、ラクトコックス属の乳酸菌はナイシンと呼ばれるバクテリオシンを生産することができる。
【0025】
ナイシンは抗菌性タンパク質として利用されているものであり、▲1▼グラム陽性菌全般に対する抗菌性を有する、▲2▼バチルス(Bacillus)やクロストリディウム(Clostridium)の芽胞発芽を阻止する、▲3▼酸性領域では耐熱性を有する、▲4▼タンパク質分解酵素α−キモトリプシンにより分解される、という特徴を有する。そして▲1▼と▲2▼の性質により、ナイシンは他の乳酸菌が産出するバクテリオシンよりも高い抗菌性を有し、腐敗菌などの増殖抑制効果が高く、微生物相をより安定化することができるものである。また本発明では乳酸菌を主体として用いた酸性分解であるので、▲3▼の性質は好適であり、高温で運転する生ごみ処理装置では特に高い効果を期待することができるものであり、さらに▲4▼の性質にみられるようにナイシンは生分解され、高い安全性を有するものである。
【0026】
また、分解処理槽2内にキレート剤や界面活性剤を添加することができる。キレート剤としては、例えばヘミンを用いることができる。また界面活性剤としては、例えば塩化ベンザルコニウム等の第4アンモニウム塩などを用いることができる。キレート剤と界面活性剤は一方を単独で用いるようにしても、両者を併用するようにしてもいずれでもよく、添加量は基材16に対して0.01〜0.2質量%(併用の場合は合計で)の範囲が好ましい。このようにキレート剤や界面活性剤を添加することによって、ナイシンなどのバクテリオシンに、グラム陽性菌に対する抗菌性の他に、大腸菌などのグラム陰性菌に対する抗菌性も付与することができるものであり、これにより乳酸菌の一層の安定化を期待することができるものである。
【0027】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る生ごみ処理方法は、分解処理槽に供給された生ごみを微生物によって分解するようにした生ごみ処理方法において、バクテリオシンを生産する乳酸菌を主体とする微生物で生ごみの分解を行なうようにしたので、乳酸菌によって生産されるバクテリオシンの抗菌作用で腐敗菌など雑菌の繁殖を抑制することができるものであり、分解処理槽に投入される生ごみの質や量が大幅に変動したり、温度などの周囲環境が急激に変化しても、分解処理内の微生物相を安定化することができ、生ごみの分解処理能力の低下を防止できると共に悪臭の発生を防止することができるものである。また分解処理槽に界面活性剤を添加するようにしたので、乳酸菌によって生産されるバクテリオシンの抗菌作用を高めることができ、生ごみの分解処理能力の低下と悪臭発生の防止の効果を高く得ることができるものである。
【0028】
また請求項2の発明は、請求項1において、乳酸菌として、ラクトコックス属の菌を用いるようにしたので、ナイシンと呼ばれるバクテリオシンを生産することができ、ナイシンの高い抗菌作用で、生ごみの分解処理能力の低下と悪臭発生の防止の効果を高く得ることができるものである。
【0029】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、分解処理槽にキレート剤を添加するようにしたので、乳酸菌によって生産されるバクテリオシンの抗菌作用を高めることができ、生ごみの分解処理能力の低下と悪臭発生の防止の効果を高く得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
2 分解処理槽

Claims (3)

  1. 分解処理槽に供給された生ごみを微生物によって分解するようにした生ごみ処理方法において、分解処理槽に界面活性剤を添加すると共に、バクテリオシンを生産する乳酸菌を主体とする微生物で生ごみの分解を行なうようにしたことを特徴とする生ごみ処理方法
  2. 乳酸菌として、ラクトコックス属の菌を用いることを特徴とする請求項1に記載の生ごみ処理方法
  3. 分解処理槽にキレート剤を添加するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の生ごみ処理方法
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