JP3739859B2 - 内燃機関の冷却水温度制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水クーラーとして清水クーラーを具備するような船舶用等の内燃機関で、水冷式のシリンダーブロック、シリンダーヘッド、及び排気マニホルドを具備する内燃機関における、急加速時の排気マニホルドの水温上昇を抑えるための冷却水温度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術の一列は実開昭56−41117に開示されている。
水冷式のシリンダーブロック、シリンダーヘッド、及び排気マニホルドを具備する内燃機関の冷却水系は、冷却水クーラー(船舶用内燃機関の場合、清水クーラーに当たる)より冷却水ポンプを介してシリンダーブロックやシリンダーヘッドの冷却水ジャケットに冷却水を供給し、該シリンダーブロックやシリンダーヘッド内を循環した冷却水は、感温式開閉手段、即ちサーモスタットを介して、排気マニホルドの冷却水ジャケットへの回路と、冷却水ポンプ吸入側へのバイパス回路へと供給される構造となっている。
サーモスタットは、アイドリング時等で内燃機関内(シリンダーブロックやシリンダーヘッド)が低温である場合には、低温腐蝕を防ぐべく、排気マニホルドへの冷却水回路を閉鎖し、バイパス回路を介して、冷却水をシリンダーブロック及びシリンダーヘッド内のみにて循環させて、温度上昇を図る。
そして、シリンダーブロックやシリンダーヘッド内の冷却水温度が高温になると、排気マニホルドへの冷却水回路を開き、排気マニホルドを介して冷却水クーラーに冷却水を送って、冷却水クーラーにて冷却された冷却水を、再び冷却水ポンプを介して、シリンダーブロック及びシリンダーヘッドに供給するのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように、アイドリング時等でシリンダーブロックやシリンダージャケット内が低温である場合に、サーモスタットは、排気マニホルドへの冷却水回路を閉じる。しかし、この状態から内燃機関を急加速運転した場合に、まず温度が急上昇するのが、排気マニホルドであり、シリンダーブロックやシリンダーヘッド内の冷却水ジャケットにおける冷却水温度は遅れて上昇する。更には、サーモスタットの作動自体、時間がかかるので、排気マニホルドが温度上昇するのに、排気マニホルドへの冷却水回路の開度が追いつかず、悪くすると、排気マニホルドの冷却水ジャケット内の冷却水温度が沸点以上となり、亀裂を生じるおそれもある。特にアルミ鋳物製の排気マニホルドにその傾向がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のような課題を解決すべく、次のような手段を用いるものである。
水冷式のシリンダーブロックCB、シリンダーヘッドCH、及び排気マニホルドEMを具備する内燃機関の冷却水系であって、冷却水クーラーWCより冷却水ポンプPを介してシリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCHに冷却水を供給し、シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCH冷却後の冷却水を、感温式開閉手段Tを介して、冷却水ポンプP吸入側に連通するバイパス回路3と、排気マニホルドEMの冷却水回路4とに供給し、排気マニホルドEMで冷却後の冷却水を冷却水クーラーWCに戻す冷却水系において、該バイパス回路3と該排気マニホルドEMへの冷却水回路4との間に、第二開閉手段6を具備する第二バイパス回路5を設け、該感温式開閉手段Tにて該排気マニホルドEMへの冷却水回路4が閉鎖している時に第二開閉手段6を開いて、第二バイパス回路5にて排気マニホルドEMに冷却水を供給可能とし、該第二開閉手段6を電磁弁とし、内燃機関のクラッチCLの嵌脱操作を検出する嵌脱スイッチにより、該電磁弁を開閉制御することを特徴とする内燃機関の冷却水温度制御方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、添付の図面を基に説明する。
図1は水冷式(舶用)内燃機関の側面図、図2は本発明の冷却水系構造、図3は同じくブロック図である。
【0006】
図4は内燃機関の急加速運転時における各部冷却水温度の変化を示す図、図5は排気マニホルドEMにおける冷却水温度の検出に基づく第二開閉手段6の開閉制御フローチャート図である。
【0007】
図6は排気マニホルドEMにおける冷却水圧力の検出に基づく第二開閉手段6の開閉制御フローチャート図、図7は内燃機関のクラッチ嵌脱操作の検出に基づく第二開閉手段6の開閉制御フローチャート図である。
【0008】
本発明に係る内燃機関の冷却水系構造を図1乃至図3より説明する。
内燃機関はシリンダーブロックCB上にシリンダーヘッドCHを搭載してなり、シリンダーブロックCBの側方に冷却水クーラーWCを配設している。本実施例の内燃機関は舶用内燃機関であり、該冷却水クーラーWCは清水クーラーであって、清水の冷却水と海水との間で熱交換して冷却水を冷却する構成となっている。該冷却水クーラーWCにて冷却された冷却水は冷却水管1、そしてポンプ吸入路1aを介して図1及び図3図示の冷却水ポンプPに吸入され、シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCH内の冷却水ジャケットへと吐出される。
【0009】
該シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCH内の冷却水ジャケットを循環した冷却水は、排水路2を通って、サーモスタット(感温式開閉手段)Tに到る。感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットからは、排気マニホルドEMへの冷却水回路4と、ポンプ吸入路1aに連通するバイパス回路3とに冷却水回路が分岐しており、該感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットの感温作動によって、各回路3・4が開閉制御される。該感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットは、排水路2から流入する冷却水温度が高いほど、冷却水回路4を開きバイパス回路3を閉じる側に作動し、逆に低いほど、冷却水回路4を閉じバイパス回路3を開く側に作動する。アイドリング状態等で、シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCH内が非常に低温であれば、冷却水回路4は完全に閉じ、バイパス回路3のみに排水路2からの冷却水を流通させて、シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCH内の温度上昇を図り、低温腐蝕を回避するのである。また、シリンダーブロックCBやシリンダーヘッドCH内が高温化して排水路2より排水される冷却水温度が高くなると、感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットは、冷却水回路4を開く側に作動する一方、バイパス回路3は狭くなり、最終的には閉じる。高温冷却水は冷却水回路4を介して排気マニホルドEMの冷却水ジャケットに送り込まれ、排気マニホルドEMを冷却した後の冷却水が、冷却水クーラーWCに戻され、再び冷却され、冷却水管1より供給されるのである。
【0010】
しかし、アイドリング時等、内燃機関内が低温状態で、排気マニホルドEMへの冷却水回路4が完全に閉じている時に、内燃機関を急加速運転すると、まず排気マニホルドEMの温度が急上昇する。シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCHの冷却水ジャケット内の温度上昇はそれよりも遅いので、排水路2からの冷却水温度も急には上昇せず、その上、感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットの作動自体も遅いので、排気マニホルドEMの温度が上昇しているにもかかわらず、冷却水回路4の開度が足らず、十分な冷却水が冷却水回路4を流れない状態が発生する。
【0011】
このことを、図4の中のグラフA及びBより説明する。図4の横軸は時間(s)を、縦軸は温度(℃)を表し、Aは、内燃機関の急加速時におけるシリンダーヘッドCB及びシリンダーブロックCB内の冷却水温度、即ち排水路2における冷却水温度の変化を示し、Bは、同じく内燃機関の急加速時における排気マニホルドEMの冷却水ジャケット内の冷却水温度変化(後記の第二バイパス回路5を設けない場合)を示す。グラフAの如く、内燃機関の急加速に伴い、排水路2における冷却水温度が上昇し、それに連れて感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットも作動して、ある一定温度t1 になると冷却水回路4は完全に開き、その後は冷却水回路4を流れる冷却水流量も一定化するので、冷却水クーラーWCの効果により、一定温度t1 を保持する。しかしグラフBで判るように、排気マニホルドEMにおける冷却水温度の上昇度は、シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCHにおけるそれに比して高く、また、感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットの作動による冷却水回路4の開放効果も遅れるので、シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCHの冷却水の温度上昇が終息する時刻T1 に比してタイムラグがあり、それよりも遅い時刻T2 になってようやく温度上昇が終息する。そのため、排気マニホルドEMの冷却水温度の最高到達点t2 はかなり高くなり、悪くすると沸点以上となって、排気マニホルドEMの亀裂等に繋がるおそれもある。
【0012】
そこで、このような冷却水回路4の閉鎖時における内燃機関の急加速時に、直ぐさまバイパス回路3(冷却水回路4の閉鎖時には、バイパス回路3は開いている。)より、排気マニホルドEMの異常高温化を回避する少なくとも最低限の冷却水を送り込めるように、図2及び図3の如く、該バイパス回路3と該冷却水回路4との間に第二バイパス回路5を設ける。該第二バイパス回路5には第二開閉手段6が介設されており、該第二開閉手段6は、内燃機関の急加速運転に即応して、第二バイパス回路5を開く構成となっているのである。
【0013】
前記第二開閉手段6に用いるものとしては、電磁弁等の開閉弁が考えられる。電磁弁は、排気マニホルドの温度上昇や内燃機関の急加速運転等を検出する検出手段に基づいて即応させ、第二バイパス回路5の良好な開閉反応に資する。
【0014】
電磁弁等の開閉弁である第二開閉手段6の制御用検出手段として、まず、排気マニホルドEMにおける冷却水変化の検出手段7(図1乃至図3参照)が考えられる。検出要素としては、排気マニホルドEMの冷却水ジャケット内の温度と圧力(冷却水温度が上昇し、沸騰状態近くになると、排気マニホルドEMの冷却水ジャケットの容量が限られているので、圧力は上昇する。)が考えられる。図5は、温度検出に基づいての第二開閉手段6の制御フローチャートを表しており、該冷却水ジャケット内の温度WTが設定温度t0 以上の時に第二開閉手段6(電磁弁)を作動し、第二バイパス回路5を開くようにしている。図6は、圧力検出に基づいての第二開閉手段6の制御フローチャートを表しており、該冷却水ジャケット内の圧力WPが設定圧力p0 以上の時に第二開閉手段6(電磁弁)を作動し、第二バイパス回路5を開くようにしている。
【0015】
図5図示の制御フローチャートに係る排気マニホルドEMの冷却水ジャケット内の検出手段7としては、設定温度t0 にてONする温度スイッチ(温度センサ)を、図6図示の制御フローチャートに係る検出手段7としては、設定圧力p0 にてONする圧力スイッチ(圧力センサ)を用いるものである。
【0016】
なお、感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットの作動により冷却水回路4が開き、冷却水が排気マニホルドEMに流れ始めると、排気マニホルドEMにおける冷却水温度は低温化して、温度スイッチはOFFする。(圧力スイッチを用いた場合にも、低温化により圧力が低圧化するので、圧力スイッチはOFFする)つまり、第二バイパス回路5は、排気マニホルドEMの冷却水温度が一定以上になった時のみ開くものであり、その他の時には常時閉じている。従って、アイドリング等の低温時には、感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットの作動にて冷却水回路4には冷却水は流れず、バイパス回路3に冷却水が流れて、高温冷却水をシリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCHに循環させ、低温腐蝕が回避される。
このように構成することで、アイドリング状態の時には温度センサや圧力センサがOFFして開閉弁が閉じ、排気マニホルドに冷却水が流れず、従って、冷却水クーラーに冷却水が流れないで、バイパス回路を介してシリンダーブロック及びシリンダーヘッドを冷却水が循環し、低温腐蝕を回避する。
【0017】
第二開閉手段6の制御用検出手段として、もう一つは、急加速運転操作そのものを検出する手段であって、例えば、クラッチ嵌脱操作を検出するものである。即ち、クラッチ操作用のレバーの基端に、クラッチ嵌脱操作によって切り換わるクラッチ検出スイッチ(従来装備されているクラッチ嵌脱スイッチをそのまま使用できる。)を設ける等して、クラッチCLが嵌合した時に、アイドリング状態から加速状態に移行するものと想定して、第二開閉手段6(電磁弁)を作動し、第二バイパス回路5を開くのである。図7はこの検出に基づく第二開閉手段6の制御フローチャートである。
【0018】
このような検出手段により、第二開閉手段6を開閉制御する構成としているので、該第二開閉手段6は、アイドリング状態の時には第二バイパス回路6を閉じたままであり(例えば排気マニホルドEMの冷却水温度も上昇せず、或いはクラッチも離脱したままである。)、急加速運転時のみ、第二バイパス回路5を開くよう作動するものとなっている。
【0019】
以上のような第二開閉手段6を具備する第二バイパス回路5の構成により、感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットの作動遅れ等で冷却水回路4の開度が間に合わず、排気マニホルド冷却水温度が最高到達点t2 に達するまでに、第二開閉手段6が開作動して、バイパス回路3内の冷却水を、第二バイパス回路5を介して排気マニホルドEMの冷却水ジャケットに補填し、その冷却水温度上昇を抑止する。図4のグラフCは、第二開閉手段6を作動し、第二バイパス回路5を開いた場合の排気マニホルドEMの冷却水ジャケットにおける冷却水温度変化を示すもので、該温度の最高到達点はt3 (<t2 )に抑止され、(沸点に到達せず、)排気マニホルドEMの冷却水ジャケットの保護がなされる効果を奏していることが判る。
【0020】
【発明の効果】
本発明は以上のような内燃機関の冷却水温度制御方法とすることで、次のような効果を奏する。
第1に、内燃機関のアイドリング運転時等で、シリンダーブロックやシリンダージャケット内が低温である場合には、感温式開閉手段Tを構成するサーモスタットは、排気マニホルドへの冷却水回路を閉じる。
しかし、この状態から内燃機関を急加速運転した場合に、まず温度が急上昇するのが、排気マニホルドであり、シリンダーブロックやシリンダーヘッド内の冷却水ジャケットにおける冷却水温度は遅れて上昇する。更には、サーモスタットの作動自体、時間がかかるので、排気マニホルドが温度上昇するのに、排気マニホルドへの冷却水回路の開度が追いつかず、悪くすると、排気マニホルドの冷却水ジャケット内の冷却水温度が沸点以上となり、亀裂を生じるおそれもある。特にアルミ鋳物製の排気マニホルドにその傾向がある。
このような内燃機関の急加速運転時は、、内燃機関のクラッチCLが嵌合する場合であるので、該クラッチCLの嵌脱をスイッチで検出して、第二開閉手段6の電磁弁が開くので、排気マニホルドの急な水温上昇を抑えることができ、特にアルミ鋳物製の排気マニホルドの亀裂等の不具合を解消することができる。
【0022】
第2に、アイドリング状態時には第二開閉手段6の電磁弁が閉じ、排気マニホルドに冷却水が流れず、従って、冷却水クーラーWCには、冷却水が流れないで、バイパス回路を介してシリンダーブロック及びシリンダーヘッドを冷却水が循環して、低温腐蝕を回避することができる。
また、開閉弁の制御用検出手段として、従来装備されているクラッチ嵌脱スイッチを使用できるので、コスト抑制に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水冷式(舶用)内燃機関の側面図である。
【図2】 本発明の冷却水系構造である。
【図3】 同じくブロック図である。
【図4】 内燃機関の急加速運転時における各部冷却水温度の変化を示す図である。
【図5】 排気マニホルドEMにおける冷却水温度の検出に基づく第二開閉手段6の開閉制御フローチャート図である。
【図6】 排気マニホルドEMにおける冷却水圧力の検出に基づく第二開閉手段6の開閉制御フローチャート図である。
【図7】 内燃機関のクラッチ嵌脱操作の検出に基づく第二開閉手段6の開閉制御フローチャート図である。
【符号の説明】
CB シリンダーブロック
CH シリンダーヘッド
WC 冷却水クーラー
P 冷却水ポンプ
T 感温式開閉手段
EM 排気マニホルド
1 冷却水管
2 排水路
3 バイパス回路
4 冷却水回路
5 第二バイパス回路
6 第二開閉手段
7 検出手段
Claims (1)
- 水冷式のシリンダーブロックCB、シリンダーヘッドCH、及び排気マニホルドEMを具備する内燃機関の冷却水系であって、冷却水クーラーWCより冷却水ポンプPを介してシリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCHに冷却水を供給し、シリンダーブロックCB及びシリンダーヘッドCH冷却後の冷却水を、感温式開閉手段Tを介して、冷却水ポンプP吸入側に連通するバイパス回路3と、排気マニホルドEMの冷却水回路4とに供給し、排気マニホルドEMで冷却後の冷却水を冷却水クーラーWCに戻す冷却水系において、
該バイパス回路3と該排気マニホルドEMへの冷却水回路4との間に、第二開閉手段6を具備する第二バイパス回路5を設け、該感温式開閉手段Tにて該排気マニホルドEMへの冷却水回路4が閉鎖している時に第二開閉手段6を開いて、第二バイパス回路5にて排気マニホルドEMに冷却水を供給可能とし、
該第二開閉手段6を電磁弁とし、内燃機関のクラッチCLの嵌脱操作を検出する嵌脱スイッチにより、該電磁弁を開閉制御することを特徴とする内燃機関の冷却水温度制御方法。
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