JP3739369B2 - 住宅の断熱構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅の断熱構造を改善するものであって、新規な遮熱材を用いて外部との熱伝達を遮断、抑制するものであり、家屋建築の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
〔非特許文献1〕 平成14年6月1日、財団法人建築環境・省エネルギー機構発行、「住宅の省エネルギー基準の解説」第192〜193頁(6)屋根断熱の項
〔特許文献1〕 特許第3251000号公報(特開2000−355989号)
【0003】
〔従来例1〕
非特許文献1に開示された技術は、図6に示すものであり、住宅の屋根断熱の典型例である。
即ち、小屋組の棟木、母屋、軒桁等に垂木を釘打ち固定し、合板等の屋根下張材を垂木に釘で固定しておき、図6(A)の如く、垂木上部側面に通気下地材を釘打ち固定し、図6(B)の如く、通気下地材に透湿防水シートや合板等の防風層を釘で留めて、屋根下張材と防風層との隙間で通気層を形成する。
次に、図6(C)の如く、垂木間寸法に切断した断熱材を垂木間に室内側から嵌入してずり落ちないように釘で垂木に固定し、更に断熱材の下側から塩化ビニール等の防湿層をタッカー等で垂木に固定するものである。
【0004】
〔従来例2〕
図7は、特許文献1に開示された遮熱材であり、本願出願人が特願2000−271335号として出願し、平成12年12月26日に、特開2000−355989号として公開され、特許第3251000号として特許されたものである。
即ち、図7に示す如く、該遮熱材は、それぞれ上面に輻射熱反射層を備えた各上面層、中間層及び下面層を各倒伏自在の起立片群で連結し、各層間に空気流通用の空気層空間を形成したものであり、小屋裏内部の断熱にあっては、図7(A)の如く、天井仕上材に配置した断熱材上に載置し、遮熱材上面層の端縁を構造材等に止着して遮熱材の起立状態を保持し、断熱材を遮熱材で熱的に保護している。
【0005】
また、屋根断熱にあっては、図7(B)に示す如く、遮熱材を垂木間に上方から嵌入して上面層の両側部を垂木上面にタッカー等で固定し、断熱材を遮熱材下面に当接して垂木に釘等で固定し、断熱材下面には防湿層をタッカー等で垂木に固定し、次いで、遮熱材上面に屋根下張材を配置して垂木に釘打ち固定し、屋根下張材上に防水層、及び屋根仕上材を布設している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1(図6)にあっては、屋根面からの高温加熱に対して排熱に有効な通気層が形成出来、垂木高さの選定によって所望厚の断熱材の付設も可能となるが、断熱材は屋根からの加熱によって大容量蓄熱体となり、夜間に外気温が低下しても、断熱材は依然として放熱し続けるため、室内環境を悪化し、冷却空調設備の長時間運転が必要となる。
【0007】
また、従来例2(図7)にあっては、従来例1の断熱構造を改善したものであり、断熱材を遮熱材で被覆保護するため、断熱材の蓄熱量を大幅に抑制出来るが、遮熱材は自立性を欠くため、所定位置での保持には周囲の構造材への上面層の取付施工が必要であり、図7(B)の如く、屋根断熱に適用するに際しては、垂木に遮熱材を取付けてから屋根下張材を張設する必要があり、遮熱材の付与は、室内側からの施工が不可能であって、屋根上からの複雑、困難、且つ危険な高所作業となる。
【0008】
しかも、遮熱材の付設作業は、屋根下張材及び防水層張設の前の作業であるため、雨天下での作業は出来ず、遮熱材布設中に雨に濡れれば、住宅の耐用中に、カビの発生や腐蝕等の問題を生ずる。
本発明は、これら従来例1,2の問題点を改善又は解決するものであり、新規な遮熱材によって、蓄熱の全く生じない、且つ布設が容易に施工出来る断熱構造を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段、及び作用】
本発明は、例えば図1に示す如く、少なくとも、保形上面シート12を含む上面層1Aと、両側に延出部15L,15Rを備えた下面シート15から成る底面層1Cとを含む複数層1A,1B,1Cを備え、各層間は起立片16,17群で連結して、長手方向に空気流通可能に開口した空気層空間S1,S2を備え、各層1A,1B,1Cの上面が輻射熱反射層Reを備え、且つ、保形上面シート12が折曲部12Sでの復元性を有する折曲脚部12L,12Rを両側に備えた遮熱材1を、住宅の木材3,30間に嵌入し、下面シート両側の延出部15L,15Rを木材3,30の底面3B,30Bに当接固定し、折曲脚部12L,12Rを、折曲部12Sを起点とする復元力F0によって、木材側面3F,30Fへ突っ張り状に当接して、遮熱材1を位置保持した住宅の断熱構造である。
【0010】
尚、複数層は、上面層1Aと底面層1Cの2層でも、図1の如く、上面層1A、中間層1B、底面層1Cの3層でも、或いは、複数の中間層を備えた4層以上でも良い。
また、各層1A,1B,1C間に形成する空気層空間S1,S2は、空気の自然対流を生起させれば良く、10〜20mmの層間隔Shを付与すれば良い。
また、保形上面シート12は、耐用中に、上面層1Aの平坦を維持し、且つ、折曲部12Sを介した両側の折曲脚部12L,12Rが、遮熱材の側方部材に当接して遮熱材の変形、倒伏を阻止するための強度、及び復元性を有するシートであれば良く、プラスチックシート、厚手のクラフト紙等でも良いが、典型的には3mm厚の段ボール(corrugated paper)である。
【0011】
また、下面シート15や、必要に応じて配置する中間層用シート、及び起立片16,17等は、耐用中に平坦形態の保持出来るシート材で構成出来、典型的にはクラフト紙である。
また、輻射熱反射層Reは、熱反射性に優れた金属蒸着膜、金属箔が好ましく、典型的にはアルミ箔貼着層である。
また、「復元性」は、折曲状態から平坦状態に戻ろうとする性質を意味し、復元性が有れば、図2の如く折曲脚部12L,12Rが折曲部12Sを起点とする復元応力F0を発揮して側方の木材側面3F,30Fに当接し、遮熱材1の形態を保形する。
【0012】
また、折曲脚部12L,12Rは、遮熱材1の耐用時に、遮熱材1が変形、倒伏しないように、復元力F0によって突っ張り支持作用を奏すれば良く、その長さは必要に応じて選定すれば良い。
また、底面シート15の幅は、図1の如く、両側の延出部15L,15Rが木材底面3Bの幅3Wを覆う寸法が取付作業上好ましいが、底面シート延出部15L,15Rが木材底面に取付けられる寸法であれば良い。
また、ここで言う、「木材3,30」は、屋根垂木3や壁縦枠30等、遮熱材1を介挿するための両側の部材であり、軽量鉄骨材等をも含むものである。
【0013】
従って、本発明断熱構造は、保形上面シート12の両側に折曲部12Sを介して配置した折曲脚部12L,12Rが、保形強度及び復元性によって遮熱材1を保持するため、例えば図2の如く、遮熱材1を屋根垂木3間に嵌入適用した場合は、保形強度を備えた折曲脚部12L,12Rが、両側の木材、即ち構造部材としての垂木3の側面3Fに、折曲部12Sを起点とする復元力F0により突っ張り状に当接し、図5の如く、外壁縦枠30間に嵌入適用した場合は、折曲脚部12L,12Rが、両側の木材、即ち構造部材としての縦枠30の側面30Fに、復元力F0によって突っ張り状に当接し、折曲脚部12L,12Rは、断熱構造内での遮熱材1の変形や倒伏を阻止すると共に、上面層1Aの空気(空気層空間S0の空気)の遮熱材側面の空気層空間S3への流入を阻止し、上面層1A、中間層1B、底面層1Cの輻射熱反射作用、及び各層間の空気層空間S1,S2、上面層1A上の空気層空間S0、起立片外方の空気層空間S3での空気流通を完全に保証する。
【0014】
そして、屋外側からの加熱で高温化する屋根下張材4や外壁下張材40から遮熱材1上に負荷される熱は、上面層1Aでの輻射熱反射作用で遮熱材内部への伝達が阻止され、上面層1Aから内部に透過する少量の熱も中間層1B、及び/又は、底面層1Cでの輻射熱反射作用により、それぞれ空気層空間S0,S1,S2から穏やかな空気流によって排熱され、上面層1Aの上部(外部)の熱の底面層1C下部(内部)への伝達が阻止出来る。
従って、図2や図5の如く、遮熱材1を木材3,30間に嵌入した断熱構造は、蓄熱機能の存在しない断熱構造を提供する。
【0015】
また、本発明に適用する遮熱材1は、例えば図1の如く、両端部の起立片16の外側面16F、及び下面シート15の上下両面が輻射熱反射層Reを備え、且つ、中間層1Bを構成する中間シート14及び下面シート15の全面に透湿用のピンホールhoを散在配置するのが好ましい。
【0016】
この場合、ピンホールhoの形成は、アルミ箔等の輻射熱反射層Reを付与したシート材にニードリング処理すれば良い。
そして、透湿用ピンホールhoの存在により、遮熱材1内の空気層空間S1,S2は連通透湿性となり、遮熱材内部の結露やカビの発生が抑制出来て輻射熱反射層Reの耐用中の汚染が抑制出来、反射機能の耐久性が向上する。
【0017】
また、端部起立片16外面16Fの反射層Reにより、図2の如く、折曲脚部12L,12Rと端部起立片16間に形成される空気層空間S3内の輻射熱も空間S3内の通気によって好適に排熱出来る。
また、下面シート底面15Bの輻射熱反射層Reは、冬季等、室内温度が室外温度より高い場合に、室内熱の外部への損失を抑制出来、室内の暖房エネルギー低減に有利である。
【0018】
また、遮熱材1の上面層1Aが、上面シート13と、上面シート13上に層着した保形上面シート12から成り、起立片16,17群を下面シート15と上面シート13とに倒伏自在に連結止着するのが好ましい。
尚、上面シート13は、起立片16,17群を接着等で止着保持出来、且つ、保形上面シート12の下面に接着等で層着出来れば良いので、上面シートの幅13W(W2)は、両端部の起立片16が止着出来、且つ、折曲脚部12L,12Rの折曲と干渉しない寸法であれば良い。
【0019】
この場合は、遮熱材1は、図3の如く、薄手の上面シート13と下面シート15とを倒伏自在の起立片16,17群で連結した遮熱材本体10を予め作成し、必要に応じて遮熱材本体10の上面シート13上に、強度及び復元性を有する厚手の保形上面シート12を層着することにより製作出来るため、また、遮熱材本体10の作成時に所望の中間シート14を、図3の如く、各起立片16,17間に配置出来るため、遮熱材1の製作、保管が容易となる。
【0020】
また、遮熱材1は、上面シート13の両端縁13Eが、図3の如く、保形上面シート12の折曲脚部12L,12Rの折曲部12Sを規定しているのが好ましい。
この場合、保形上面シート12の両側折曲部12S間の平坦面幅W1は、上面シート13の層着によって補強されるため、保形上面シート12の材料選択の自由度が増す。
しかも、上面シート13の両端縁13Eが折曲部12Sを規定するため、保形上面シート12への折曲部12Sの付与、及び折曲脚部12L,12Rの折曲作業が容易となる。
【0021】
また、遮熱材1は、図5の如く、上面層1Aが、保形上面シート12であり、起立片16,17群を下面シート15と保形上面シート12との間に倒伏自在に止着するのが好ましい。
この場合、保形上面シート12の材質を適切に選択すれば、必要な曲げ強度、及び復元性を有する厚手の保形上面シート12と、薄手の下面シート15及び薄手の起立片16,17との接着製作が可能であり、上面シート13を省略したために、構造が単純化し、遮熱材1のコスト低減が出来る。
【0022】
また、本発明に適用する遮熱材1は、図1の如く、保形上面シート12が、両側の折曲部12S間で上面層1Aの平坦面幅W1を規定し、折曲部12Sから下面シート15までの高さh1に略同寸の折曲脚部12L,12Rを備えているのが好ましい。
この場合、折曲脚部12L,12Rは、遮熱材1の木材3,30間への嵌入押込み時には、起立片16,17の補強材の機能を奏して遮熱材1の押込み作業が容易となり、遮熱材嵌入時の起立片16,17の変形による遮熱材1の変形を最少限に抑制し、遮熱材1の取付施工が容易となる。
【0023】
また、遮熱材1は、保形上面シート12が段ボール紙であり、他のシート13,14,15及び起立片16,17がクラフト紙であり、且つ、輻射熱反射層Reがアルミ箔貼着層であるのが好ましい。
この場合、段ボールは、典型的には表裏クラフト紙を波型中芯に層着した3mm厚のものである。
そして、遮熱材1の各構成部材がクラフト紙であるため、相互接着性が良くて紙製の遮熱材1の接着製造が容易である。
また、アルミ箔貼着層は、平滑反射面を備え、高性能な輻射熱反射層Reの低コストでの提供を可能とする。
【0024】
また、本発明の断熱構造は、図2の如く、保形上面シート12の平坦面幅W1が木材間寸法L3,L30より若干小であり、下面シート15の両側の各延出部15L,15Rが、木材底面3B,30Bの略全面を覆って固定するのが好ましい。
この場合は、図2の如く、折曲脚部12L,12Rの傾斜突出幅W0は僅少となり、木材間隔L3,L30を遮熱材上面層1Aが有効に遮熱する。
そして、折曲脚部12L,12Rの長さが下面シートまでの高さh1と略同寸であれば、起立片16,17の変形を生ずることなく遮熱材を木材3,30間に押込める。
【0025】
また、下面シート延出部15L,15Rのそれぞれが、木材底面3B,30B全幅に亘るため、遮熱材1の取付代としての延出部15L,15Rの寸法が手作業処理に十分な寸法となり、手作業としての延出部15L,15Rの木材底面3B,30Bへのタッカーや接着による取付作業が容易、且つ確実に施工出来る。
勿論、延出部15L,15Rの取付形態は、図2の如く、相隣接する遮熱材1の各延出部15L,15Rの重なった取付けとなるが、遮熱材1の断熱機能発現には支障が無い。
【0026】
【発明の実施の形態】
〔遮熱材1の製作〕
〔例1.上面層1Aが保形上面シート12と上面シート13から成るタイプ(図1、図4)〕
図1に示す遮熱材1は、図3に示す如く、上面シート13、中間シート14及び下面シート15から成り、且つ、下面シート15が両側に延出部15L,15Rを備えた3層形態の遮熱材本体10を形成し、該本体10の上面シート13の上面に、保形上面シート12のカバー体10´を層着一体化したものである。
【0027】
構成材料は、中間の起立片17及び上面シート13は、165g/mのクラフト紙(紙1)であり、下面シート15は、165g/mのクラフト紙の表裏両面に、6.3μmのアルミ箔を備えたポリエチレンフィルムを層着したもの(紙2)であり、中間シート14は、70.8g/mのクラフト紙の片面に、6.3μmのアルミ箔を備えたポリエチレンフィルムを層着したもの(紙3)である。
【0028】
また、両端の起立片16は、165g/mのクラフト紙の片面に6.3μmのアルミ箔を備えたポリエチレンフィルムを層着したもの(紙4)であり、保形上面シート12は、3mm厚の段ボール(表裏紙:180g/m、中芯紙:120g/m)の表面に、6.3μmのアルミ箔を備えたポリエチレンフィルムを層着したもの(紙5)である。
そして、中間シート14及び下面シート15には、ニードリング処理でピンホール(微細孔)hoを散在配置する。
【0029】
遮熱材1の寸法は、長さ寸法は長尺物として製作しておき、使用時に適用位置に応じて適寸に裁断して用いる。
また、幅寸法は、適用位置に応じて決定するものであり、屋根断熱用の遮熱材1としては、図1に示す如く、垂木幅3Wが38mmで、垂木高さ3Hが89mm、垂木芯間寸法3Mが500mmであれば、両側の垂木間隔L3が462mmとなり、遮熱材上面層1Aの両側と各垂木側面3F間の間隔G1が7.5mm前後に形成出来るように、遮熱材1の上面層1Aの平坦幅W1を447mmに設定し、上面シート13の幅W2は、両側縁13Eが保形上面シート12の折曲部12Sでの直角折曲すら保証するように、W2を440mm前後に設定し、下面シート15の幅は、上面シート13の幅W2から両側に43mm前後の延出部15L,15Rを備えた寸法とする。
また、高さh1は、遮熱材本体10の実効高さ35mm+保形上面シート(段ボール)厚3mmで38mmとなる。
【0030】
遮熱材本体10は、図3に示す如く、両端起立片16及び中間起立片17が上下端の幅10mmの折曲片16´,17´により上面シート13及び下面シート15と接着固定し、遮熱材本体10の実効高さh2(標準:35mm)を保持し、中間シート14は、両端の幅10mmの折曲片14´で各起立片16,17に接着一体化し、各シート13,14,15間に空気の自然対流可能な空気層空間S1,S2を形成したものであり、ロール群装置(図示せず)により、中間シート14及び起立片16,17の各折曲片14´,16´,17´の折曲→接着剤付与→押圧接着の工程の走行処理を経て、積層形態で製造する。
勿論、必要に応じて手作業で製作しても良い。
【0031】
次いで、薄手のクラフト紙(紙1、紙2、紙3、紙4)で製造した遮熱材本体10の上面シート13上に、カバー体10´としての厚手の段ボール(紙5)から成る保形上面シート12を、アルミ箔面を上面に、且つ、中芯紙の波状の山の方向を幅方向として載置し、両側の折曲部12S間の平坦面で接着する。
この場合、保形上面シート12の幅は、幅方向の両側で、折曲部12Sから下面シート15までの高さh1(標準:38mm)の長さの折曲脚部12L,12R用延長部を形成して接着し、折曲脚部12L,12Rを直角に折曲した際には、折曲脚部12L,12Rが遮熱材本体10の側面を覆う形態とする。
【0032】
〔例2.上面層1Aが保形上面シート12のみのタイプ(図5)〕
図5に示す遮熱材1は、図1(例1)の遮熱材1に於いて上面シート13を除去した構成のものである。
そして、製作時には、中間シート14、下面シート15及び起立片16,17を折曲→接着剤付与→押圧接着した後、折曲脚部12L,12Rを折曲してない平坦状態の保形上面シート(段ボール)12を起立片の折曲片16´,17´に接着処理すれば良い。
【0033】
〔遮熱材の使用〕
〔屋根への適用〕
〔例1の遮熱材の使用(図2)〕
例1の遮熱材は、図2の如く、屋根垂木3上に屋根下張材4を張設し、下張材4上に慣用の防水層5を布設して雨水の屋根下張材下方への浸入を防止し、屋根仕上材の施工後、又は屋根仕上材施工と同時並行して、上面層1A(保形上面シート)に折曲部12Sの折目で折曲脚部12L,12Rを折曲形成した遮熱材1を、室内側から垂木3間に嵌入して下面シート延出部15L,15Rが垂木底面3Bに当接するまで押込み、1本の垂木底面3Bに、両側の遮熱材1の各延出部15L,15Rを重ねる形態で、慣用のタッカー、釘、接着剤等で当接固定すれば、遮熱材1のみによる屋根断熱構造が形成出来る。
【0034】
この場合、折曲脚部12L,12Rは、折曲部12Sの折目での復元性により、先端12Tが垂木側面3Fに当接して摺動嵌入する。
そして、折曲脚部12L,12Rの長さが折曲部12Sから下面シート15までの高さh1と略同一であるため、遮熱材1の嵌入配置は、折曲脚部12L,12Rが押込み応力を負担し、空気層空間S1,S2に作用上支障の無い状態で実施出来る。
尚、延出部15L,15Rの寸法は、垂木底面3Bの半幅以下としても取付け可能であるが、例1のタイプの如く、垂木底面3Bの幅3Wと同じか若干小さい幅とすれば、垂木底面3Bへの積層形態での取付けとなり、延出部15L,15Rが手作業に十分な取付代を提供するため、取付作業が容易となる。
【0035】
得られた屋根断熱構造(図2)にあっては、遮熱材1は、折曲脚部12L,12Rの復元力F0による垂木側面3Fへの突っ張り作用により、遮熱材上面層1Aと屋根下張材4の底面4Bとの間には空気層空間S0を、上面層1Aと中間層1Bとの間には空気層空間S1を、中間層1Bと底面層1Cとの間には空気層空間S2を、折曲脚部12L,12Rと外側起立片16との間には空気層空間S3を、それぞれ安定確保するため、断熱構造内の各層の輻射熱反射層Reによって各層間の輻射熱は各空間S0,S1,S2,S3からの穏やかな空気流により排熱出来る。
従って、屋根下張材4から空気層空間S0に伝達される高温熱負荷は下面シート15の下方(内方)への伝達が抑制出来、遮熱材1は、垂木3間に嵌入して下面シート15を垂木底面3Bに固定するだけで蓄熱を生じない断熱構造を提供する。
【0036】
しかも、折曲脚部12L,12Rも表面(外面)に輻射熱反射層Reを備え、且つ、脚部先端12Tが復元力F0によって垂木側面3Fに当接しているため、高温になる空気層空間S0内の空気の起立片16側面の空間S3内への流入を抑制し、遮熱材の下面シート15から下方(内方)への熱伝達を抑制する。
この場合、各空気層空間S0,S1,S2,S3には外気の穏やかな流入を生ずるため、各層の輻射熱反射層Reによって外方へ排熱出来、各層での下方への熱伝達が抑制出来る。
【0037】
〔外壁への適用〕
〔例2の遮熱材の使用(図5)〕
図5は外壁断熱に例2(上面層1Aが保形上面シート12のみのタイプ)の遮熱材1を適用した例図である。
即ち、図5は、遮熱材1を外壁縦枠30間に適用した外壁断熱構造の図であって、保形上面シート12の上面幅W1(図1)を外壁の壁下張材40を張設する各縦枠30間の寸法L30より若干(10〜20mm)小とした遮熱材1の保形上面シート12には、予め折曲部12Sで折曲脚部12L,12Rに折目を付けておき、該遮熱材1を縦枠30間に室内側から嵌入して、下面シート延出部15L,15Rが縦枠底面30Bに当接するまで折曲脚部の端部12Tを縦枠側面30Fに摺接しながら押込み、縦枠底面30Bに下面シート延出部15L,15Rを当接してタッカー又は接着剤等で固定する。
【0038】
遮熱材1は、壁下張材40と上面層1Aとの間に空気層空間S0を形成し、折曲脚部12L,12Rは、先端12Tが縦枠30側面に段ボールの折曲部12Sでの復元力F0によって突っ張り状に当接して端部起立片16との間に空気層空間S3を形成し、両側の折曲脚部12L,12Rによって、遮熱材1を適正姿勢に保持して各層間の空気層空間S1,S2を保持すると共に、空気層空間S0と空気層空間S3との連通を阻止する断熱構造となる。
【0039】
従って、遮熱材1を縦枠30間に嵌入して下面シート延出部15L,15Rを縦枠底面30Bに固定するだけで、壁下張材40から室内側への熱伝達を抑制した、しかも、蓄熱を生じない外壁断熱構造となる。
勿論、例1(図1)の遮熱材1も、例2(図5)の遮熱材1と同様に、外壁断熱への適用が可能である。
【0040】
〔効果〕
本発明の実施の態様の遮熱材1にあっては、構成シート材が全て紙(紙1、紙2、紙3、紙4、紙5)であって、折目付与性、接着性が良好であるため、製作上手間のかかる中間シート14の起立片16,17への取付け、及び起立片16,17の下面シート15、及び上面シート13、又は保形上面シート12への取付けがローラー群装置による走行工程によって、正確に、且つ、容易に製作出来る。
しかも、起立片16,17の倒伏形態(積層形態)での保管が可能であり、製品の保管及び搬送が容易である。
【0041】
遮熱材1は、構成シート材が全て紙であるため軽量であり、住宅の断熱構造への施工使用に際しては、嵩の低い積層形態物を必要長さに裁断し、平坦状態の保形上面シート12の両側に折曲部12Sの折目を付与し、且つ、起立片16,17を起立するだけで使用可能となるため、施工現場への搬入、使用準備、及び施工が容易である。
【0042】
屋根垂木3間に適用する屋根断熱施工では、屋根下張材を張設した後の施工であり、縦枠30間に適用する外壁断熱施工では、室内側からの施工となり、遮熱材は雨天でも施工出来、断熱施工の期間も短縮出来る。
しかも、室内側での脚立を用いた施工となるため、従来の図6や図7(B)の如き屋根上からの危険な高所作業でなく、断熱施工作業が安全となり、作業性も良い。
【0043】
遮熱材1は軽量物であり、折曲脚部12L,12Rは、保形性の大な段ボールに折曲部12Sで折目を付け、折目での復元性によって側方への突っ張り力を発現して、遮熱材1を木材3,30間に位置保持するため、遮熱材1は、垂木3間や、縦枠30間に嵌入するだけで位置の仮保持が出来、遮熱材1の取付作業が容易である。
【0044】
遮熱材1は、上面層1Aの輻射熱反射層Reが外部からの輻射熱を反射して空気層空間S0で排出し、中間層1B及び底面層1Cでも空気層空間S1,S2で透過輻射熱を反射放出し、両端部の起立片16と折曲脚部12L,12R間の空気層空間S3でも輻射熱を反射放出するため、該遮熱材で木材3,30間を閉止した断熱構造にあっては、熱の室内側への伝達は抑制するが蓄熱しない。
【0045】
尚、上面層1A、中間層1B、底面層1Cが共に表面に輻射熱反射層Reを備えた例1(図1)の遮熱材(3層形態、且つh1が40mm)単体の熱貫流抵抗、熱貫流率、熱抵抗を財団法人建材試験センターで測定したところ、遮熱材1と同厚のグラスウールマットと略同等の熱貫流抵抗(0.92m・k/w)を有することを確認した。
即ち、遮熱材1は日射の無い条件でも遮熱機能を発揮する。
【0046】
遮熱材1は、下面シート15が上下両面に輻射熱反射層Reを備えているため、得られる住宅の断熱構造にあっては、夏季等の室外温度が室内温度より高い場合には、下面シート表面が輻射熱を反射して空気層空間S2より排熱して室内への熱負荷を軽減する。
また、冬季等の室内温度を外気温度より高く維持する場合には、室内熱の外部への透過放出が抑制出来、室内暖房の省エネルギー効果がある。
【0047】
また、遮熱材1を用いた断熱構造にあっては、中間シート14及び下面シート15が多数のピンホールhoを有するため、透湿性となって遮熱材内部での結露が防止出来て輻射熱反射層Reの結露、カビ発生による汚染が抑制出来、遮熱機能の耐久性が向上する。
【0048】
〔その他〕
遮熱材1の嵌入施工は、木材の垂木3や縦枠30のみならず、鉄骨造の薄板軽量型鋼等の部材間にも適用出来、下面シート15の鋼材への取付けは、両面粘着テープや、ドリリングタッピングネジ等で可能である。
また、保形上面シート12としては、折曲部12Sの折目で必要復元応力F0さえ発揮出来れば、秤量の大な厚紙でも、プラスチックシートでも良く、プラスチックシートの場合は、ピンホールを穿孔して透湿性とするのが好ましい。
【0049】
【発明の効果】
本発明の住宅の断熱構造施工にあっては、遮熱材1が適用装着する垂木、縦枠等の木材間に、上面層1A側から嵌入出来るため、室内側からの脚立等による安全、且つ、容易な施工となる。
従って、屋根下張材4や壁下張材40の施工後の雨に濡れない状態での施工となり、雨天での作業も可能となって工期が短縮化出来ると共に、雨に濡れない状態で取付けた遮熱材1は、耐用中のカビや吸水腐蝕の生じない耐久性のある断熱構造を提供する。
【0050】
しかも、復元性を有する折曲脚部12L,12Rによる垂木3等の木材側面への突っ張り状態での位置保持固定となるため、遮熱材1の木材間への嵌入状態で遮熱材1が仮固定状態となって、遮熱材1の垂木3等の木材への取付作業が容易となり、遮熱材1は、取付施工後の耐用中も、折曲脚部12L,12Rによって適正姿勢で適正位置に保持出来、設計値どおりの遮熱機能を発揮する。
また、断熱構造が、遮熱材1のみの取付けで得られるため、取付作業が容易であって蓄熱の生じない断熱構造を提供する。
【0051】
更に、屋根垂木3や壁縦枠30等の木材間に遮熱材1を適用した断熱構造は、輻射熱反射層Reを表面(外面)に有する折曲脚部12L,12Rが木材側面3F(30F)に復元力F0で当接して遮熱材1を適正位置に保持するため、折曲脚部12L,12Rが上面層1A上の高温空気の遮熱材側面(空気層空間S3)への侵入を阻止し、遮熱材各層1A,1B,1Cの上面、及び起立片16の外側面が輻射熱反射層Reを有することと相俟って、遮熱材1は、室外側の熱の室内側への伝達を好適に抑制出来る。
【0052】
また、遮熱材1の中間シート14及び下面シート15にピンホールhoを散在配置することにより、遮熱材内部での結露が防止出来、結露やカビの発生による輻射熱反射層Reの汚染が防止出来て、遮熱材の輻射熱反射機能低下が抑制出来る。
更に、遮熱材1の下面シート15の両面に輻射熱反射層Reを設けることによって、遮熱材1は、夏季の室外側からの高温熱の室内側への伝達を抑制して、室内の冷房エネルギーの低減を果すのみならず、冬季では、室内暖房の熱の遮熱材から室外への伝達損失を抑制して、室内の暖房エネルギーの低減化をも果し、省エネルギー住宅の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様例1の遮熱材の正面図である。
【図2】図1の遮熱材を用いた、断熱構造の正面図である。
【図3】図1の遮熱材の分解説明図である。
【図4】実施態様例1の遮熱材の説明正面図であって、(A)は積層形態からの引き起こし状態を、(B)は起立片の起立状態を示す図である。
【図5】実施態様例2の遮熱材を用いた断熱構造説明図である。
【図6】従来例1の説明正面図であって、(A)は通気下地材取付状態を、(B)は通気層形成状態を、(C)は断熱構造形成状態を示す図である。
【図7】従来例2の説明斜視図であって、(A)は天井仕上材上の断熱構造を、(B)は屋根断熱を示す図である。
【符号の説明】
1:遮熱材、 1A、上面層、
1B:中間層、 1C、底面層、
3B,4B,15B,30B:底面、
3:垂木(木材)、 3F,30F:側面、
4:屋根下張材、 5:防水層、
12:保形上面シート、 12L,12R:折曲脚部、
12S:折曲部、 12T:脚部先端(先端)、
13:上面シート、 13E:端縁、
14:中間シート、 14´,16´,17´:折曲片、
15:下面シート、 15L,15R:延出部、
16,17:起立片、 30:縦枠(木材)、
40:壁下張材、 F0:復元応力(復元力)、
N:釘(ステープル)、 O:小口開口(通気開口)、
Re:輻射熱反射層(アルミ箔層)、 Sh:層間隔、
S0,S1,S2,S3:空気層空間

Claims (8)

  1. 少なくとも、保形上面シート(12)を含む上面層(1A)と、両側に延出部(15L,15R)を備えた下面シート(15)から成る底面層(1C)とを含む複数層(1A,1B,1C)を備え、各層間は起立片(16,17)群で連結して、長手方向に空気流通可能に開口した空気層空間(S1,S2)を備え、各層(1A,1B,1C)の上面が輻射熱反射層(Re)を備え、且つ、保形上面シート(12)が折曲部(12S)での復元性を有する折曲脚部(12L,12R)を両側に備えた遮熱材(1)を、住宅の木材(3,30)間に嵌入し、下面シート両側の延出部(15L,15R)を木材(3,30)の底面(3B,30B)に当接固定し、折曲脚部(12L,12R)を、折曲部(12S)を起点とする復元力(F0)によって、木材側面(3F,30F)へ突っ張り状に当接して、遮熱材(1)を位置保持した住宅の断熱構造。
  2. 遮熱材(1)は、両端部の起立片(16)の外側面(16F)、及び下面シート(15)の上下両面が輻射熱反射層(Re)を備え、且つ、中間層(1B)を構成する中間シート(14)及び下面シート(15)の全面に透湿用のピンホール(ho)を散在配置した、請求項1の住宅の断熱構造。
  3. 遮熱材(1)の上面層(1A)が、上面シート(13)と、上面シート(13)上に層着した保形上面シート(12)から成り、起立片(16,17)群を下面シート(15)と上面シート(13)とに倒伏自在に連結止着した、請求項1又は2の住宅の断熱構造。
  4. 遮熱材(1)は、上面シート(13)の両端縁(13E)が保形上面シート(12)の折曲脚部(12L,12R)の折曲部(12S)を規定している、請求項3の住宅の断熱構造。
  5. 遮熱材(1)は、上面層(1A)が、保形上面シート(12)であり、起立片(16,17)群を下面シート(15)と保形上面シート(12)との間に倒伏自在に止着した、請求項1又は2の住宅の断熱構造。
  6. 遮熱材(1)は、保形上面シート(12)が、両側の折曲部(12S)間で上面層(1A)の平坦面幅(W1)を規定し、折曲部(12S)から下面シート(15)までの高さ(h1)に略同寸の折曲脚部(12L,12R)を備えた、請求項1乃至5のいずれか1項の住宅の断熱構造。
  7. 遮熱材(1)は、保形上面シート(12)が段ボール紙であり、他のシート(13,14,15)及び起立片(16,17)がクラフト紙であり、且つ、輻射熱反射層(Re)がアルミ箔貼着層である、請求項1乃至6のいずれか1項の住宅用遮熱材。
  8. 保形上面シート(12)の平坦面幅(W1)が木材間寸法(L3,L30)より若干小であり、下面シート(15)の両側の各延出部(15L,15R)が、木材底面(3B,30B)の略全面を覆って固定した、請求項1乃至7のいずれか1項の住宅の断熱構造。
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