JP3739049B2 - フィルタープレス濾板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、上水汚泥や下水処理場の排水、工場廃水あるいは一般化学、食品関係のスラッジの脱水に用いるフィルタープレス装置の濾板に関し、特に濾室内のスラッジの加温を行うタイプのフィルタープレス装置の濾板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、上水汚泥等はフィルタープレスを用いて脱水処理されてきた。特に近年では、水質悪化等が原因で設備の処理能力が不足してきているため、その解決策として、フィルタープレスに供給するスラッジを加温することにより、処理能力の向上を図っていた。
【0003】
かかるフィルタープレスに関する従来技術としては、濾板本体部を金属製の中空部として形成する技術に関する特表平9−511441号公報記載のもの、濾板本体部に中空熱伝導パネルを取り付ける技術及びパネル表面に濾液溝を形成する技術に関する特開2000−334222号公報記載のもの等がある。
【特許文献1】
特開昭52−132465号公報
【特許文献2】
特開2000−334222号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる従来技術には次のような問題点があった。
(イ)特表平9−511441号公報記載の濾板では、全体が肉厚な鋳造金属材料により形成されており、重量が非常に重く、かつ製作コストも高いという問題点があった。またそのため、フィルタープレス装置の補強およびそれによる重量増、ならびにそれによる装置据付における制約等も問題であった。
【0005】
(ロ)これに対して、本出願人による特開2000−334222号公報記載のものでは、濾板本体部に対して中空熱伝導パネルを取り付ける構成を採っているため、濾板本体部を樹脂等の軽量材料により形成することができ、その分だけ軽量化を図ることはできる。しかし、中空熱伝導パネル自体は強度維持の観点から厚肉の金属材料により形成する必要があり、十分な軽量化は図れていない。
【0006】
(ハ)また、特開2000−334222号公報記載のもののように、パネル表面に濾液溝を加工形成すると、加工費が嵩むという問題点があった。
【0007】
(ニ)また、濾板を厚さ方向に貫通させて熱媒の給排管路を設けると、この管路に濾布を介在させることになり、当該管路の密閉性および濾室内の密閉性が損なわれるという問題点があった。
【0008】
(ホ)また、特開2000−334222号公報記載のもののように中空熱伝導パネルを設ける場合、パネルの熱膨張等により脱水ケーキの厚さが不均一になる結果、ケーキ含水率が不均一になるおそれがあった。
【0009】
(ヘ)さらに、特開2000−334222号公報記載の濾板では、本体部における濾室形成凹部内の底部にはパネルが配置されているものの、傾斜した周側面と対応する部位にはパネルがなく、当該部位における脱水能力が底部と対応する部分と比べて低くなり、脱水ケーキの含水率が不均一になるおそれがあった。
【0010】
したがって、本発明の主たる課題は、製造が容易である、軽量である、ローコストである等の利点を有する濾板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1項記載の発明>
対向する濾板間の濾室内に濾布を対向して設け、前記濾布間にスラッジを供給し濾過するフィルタープレス装置用の濾板であって、
本体部と、この本体部の少なくとも一方の濾室側面に設けられた中空熱伝導パネルとを備え、
前記中空熱伝導パネルは、濾布側表面をなす厚肉の表面材と、その裏面に取り付けられた薄肉の裏面材と、これら表面材と裏面材との間の空間により形成された熱媒流路とを有し、
前記裏面材に補強窪み部を形成してなる、
ことを特徴とするフィルタープレス濾板。
【0012】
(作用効果)
このように厚肉表面材の裏面に、補強窪み部を設けた薄肉の裏面材を取り付けて、表面材の裏面と裏面材とにより囲まれる空間を熱媒流路とすると、裏面材を薄肉材として軽量化を図りつつも補強窪み部により強度を十分に確保できるとともに、容易にかつローコストで製造できるようになる。
【0013】
<請求項2項記載の発明>
前記パネルの濾布側表面に、当該パネルとは別体のスペーサーを取り付け、このスペーサーにより当該パネル表面と濾布との間に濾液通路が形成されるように構成した、請求項1記載のフィルタープレス濾板。
【0014】
(作用効果)
このようにパネル表面から濾布を離間させるために、パネルとは別体のスペーサーを取り付けるようにすると、パネル表面に濾液溝を彫るのと比べて、パネルを著しく容易かつ安価に製造できるようになる。
【0015】
<請求項3項記載の発明>
前記パネルの裏面に、パネル内に連通する熱媒の供給口及び排出口を有するとともに、
一端が前記供給口に接続され、他端側が前記本体部内を通り本体部の外周面から濾板外部へ導出された熱媒の供給管路と、
一端が前記排出口に接続され、他端側が前記本体部内を通り本体部の外周面から濾板外部へ導出された熱媒の排出管路とを有する、請求項1または2記載のフィルタープレス濾板。
【0016】
(作用効果)
このように濾板本体部の外周面から熱媒の給排管路を導出する構成を採ることによって、これらの管路に濾布が介在しなくなり、管路の密閉性および濾室内の密閉性が損なわれ難くなる。
【0017】
<請求項4項記載の発明>
前記本体部は前記供給管路が通される配管孔を有し、この配管孔と前記供給管路との隙間がシールされている、請求項3記載のフィルタープレス濾板。
【0018】
(作用効果)
熱媒の給排管路は本体部内に形成された配管孔内を通じて外部に導出されるが、この配管孔内面と給排管路外面との隙間は濾室内に通じているため、この隙間の存在により濾室内の密閉性が損なわれやすい。この点は、当該濾布特に濾室内を真空吸引する場合に問題となる。しかるに本請求項4記載のように当該隙間にシールを施すと濾室内の密閉性を担保できる。
【0019】
<請求項5項記載の発明>
前記本体部は、前記パネルを収容する凹部を有し、
前記パネルは少なくとも熱膨張分の遊びをもって前記凹部内に収容されるとともに、その周縁部が前記本体部側に押え付けられることによって本体部に対して取り付けられた、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルタープレス濾板。
【0020】
(作用効果)
このようにパネルを本体部に取り付けることで、パネルの熱膨張による変形が抑制され、脱水ケーキの厚さが不均一になりにくく、ケーキ含水率が不均一になりにくい。
【0021】
<請求項6項記載の発明>
前記空間が前記パネルの平面方向において蛇行する熱媒流路を形成するように、前記補強窪み部が前記表面材側に突出され且つ前記表面材の裏面に液密に接続されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタープレス濾板。
【0022】
(作用効果)
かかるパネルにおいては熱媒流路を蛇行配置とすることにより熱効率を高めることができるが、鋳造等によりパネルを形成する場合には、かかる蛇行流路を形成するのは非常に困難かつ高価となる。しかるに本発明のように補強窪み部を利用して熱媒流路を形成する場合、補強窪み部の形状・配置を適宜設定するだけで熱媒流路の蛇行配置を達成することができる。
【0023】
<請求項7記載の発明>
前記表面材と前記裏面材との間に仕切り板が設けられ、この仕切り板によって、前記空間が、前記パネルの平面方向において蛇行する熱媒流路に仕切られている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタープレス濾板。
【0024】
(作用効果)
本発明のような補強窪み部は、例えば散点状に形成することもでき、この場合には、請求項6記載の発明のように補強窪み部を仕切りとして利用できない。よって、かかる場合には、本請求項7記載のように、表面材と裏面材との間の空間に別途仕切り板を設けることにより、蛇行熱媒流路を形成することができる。
【0025】
<請求項8項記載の発明>
前記本体部は濾室を形成するための凹部を有し、前記パネルはこの凹部内の底面および周側面を覆うように設けられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルタープレス濾板。
【0026】
(作用効果)
このように凹部内全体を覆うようにパネルを設けることによって、濾室内全体の脱水能力が均一化し、脱水ケーキの含水率が不均一になりにくくなる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1は、フィルタープレス装置1例の正面図を示している。本装置1は、濾板が水平方向に積層配列されており、濾板の配列形態からは水平型に属するものであり、隣り合う濾板3,3間には、1対の濾布4,4・がそれぞれ吊り下げられている。
【0028】
濾板3,3・は隣り合う濾板に対して連結部材109,109を介して連結されるとともに、水平方向に伸縮するシリンダー5により相互間隔が調節されるように構成されている。また濾板3,3間の上にはサポートバー108が配設されており、濾布4,4はこのサポートバー108により吊下げ状態で支持されるようになっている。そして、濾布4,4を吊下げるサポートバー108を上限まで引き上げた後、シリンダー5の伸長により隣り合う濾板3,3を接触させ締め付けることによって、後述の図2に示すように、隣り合う濾板3,3間において1対の濾布4,4により取り囲まれた濾室6が形成される。
【0029】
本発明の濾板は、例えばこのようなフィルタープレス装置1に使用可能なものである。図2〜図4に本発明に係る濾板例3の詳細が示されている。この濾板3は、隣の濾板3と対向する面(すなわち端部濾板は一方の面であり、中間部の濾板は両面である)に、額縁部およびこれに取り囲まれた凹部21がそれぞれ形成された本体部20と、この凹部21の底部に配設された中空熱伝導パネル30とを備えている。本体部20は、例えばポリプロピレン等の樹脂により形成するのが望ましく、中空熱伝導パネル30は熱伝導性の良好な金属により形成するのが望ましい。
【0030】
本発明では、かかる中空熱伝導パネル30が、図5にも示すように、濾布側表面をなす厚肉の表面材31と、その裏面側に張り合わされ固定された裏面材32とから構成されている。そして図6にも示すように、裏面材32には、表面材31側に窪むように形成された凹溝状の補強窪み部hがパネルの幅方向に沿って複数本形成されており、表面材31と裏面材32との間の空間が熱媒流路33として形成されている。かかる窪み部hは、裏面材32を補強するリブとなるため、裏面材32を薄肉にしても十分な強度を維持することができる。よって、従来よりも著しく軽量な中空パネル30を得ることができる。また、かかるパネル30は表面材31の裏面に、予め窪み部hを加工してある裏面材32を取り付けるだけで製造できるため、鋳造等と比べて非常に容易にかつローコストで製造できる利点ももたらされる。
【0031】
より望ましい形態では、図6に示すように、窪み部hの先端を表面材31の裏面に液密に接続し、窪み部hを利用して、表面材31と裏面材32との間の空間をパネル平面方向において蛇行する熱媒流路33に仕切るように構成される。特に上記のような水平型フィルタープレス装置1では、図示例のように、パネル30の幅方向に沿う窪み部hをパネル30の上下方向に複数並設し、その内部の熱媒流路33がパネルの下部の一方側からパネル幅方向に往復しながらパネル上部まで順次流通されるように構成されているのが望ましい。このように、本発明の窪み部hは補強機能のほか、熱媒流路33を形成する役割も持たせることができ、この場合、窪み部hの配置を適宜設定するだけで、任意形態の熱媒流路33を容易に形成することができるようになる。
【0032】
上記例の窪み部hは、パネルの平面方向に線状に連続する凹溝状に形成しているが、本発明では、例えば図7及び8に示すように、円錐状等の局所的な窪み部(ディンプル)dを散点状に設けることもできる。この場合、窪み部dを利用して熱媒流路の仕切りを形成するのは困難なため、図示のように、表面材31と裏面材32との間の空間に、別途、仕切り板pを設けて蛇行熱媒流路33を形成することができる。
【0033】
他方、本発明では、パネル30内に対する熱媒の給排管の配管は基本的に任意であるが、従来のように、濾板3を厚さ方向に貫通させて給排管路を設けると、この管路に濾布を介在させることになり、当該管路の密閉性および濾室6内の密閉性が損なわれてしまう。よって図3及び図5等に示すように、パネル30の裏面に、パネル30内に連通する熱媒の供給口35及び排出口36をそれぞれ設けるとともに、これら供給口35および排出口36から、本体部20内を通り本体部20の外周面21から濾板外部へ導き出すようにして、熱媒供給管40および排出管41をそれぞれ配管するのが望ましい。これにより、熱媒給排路に濾布4が介在することによる、熱媒給排路および濾室6内の密閉性の低下を防ぐことができる。
【0034】
ただしこの場合、熱媒供給管40及び排出管41の外周面とこれを本体部20内に通すための配管孔21,21の内面との隙間s,sは濾室6内に通じているため、この隙間sの存在により濾室6内の密閉性が損なわれやすい。この点は、濾室6内を真空吸引するようなフィルタープレス装置において特に問題となる。そこで、図9に示すように、本体部20内を通る配管孔21と管41(図9は排出管41部分のみ示しているが、供給管40についても同様の構成を採る)との隙間sをシールするのが望ましい。これにより濾室6内の密閉性を担保できる。ただし本体部20内の隙間にシールを行うのは非常に困難であるので、図示のように、管41における本体部外周面からの突出部分を取り囲むように、リング状支持部50を設け、この支持部50内周面に管外面との間の隙間sをシールするシールリング51を設ける等、本体部20の外部からシールを行う構成を採用するのがより望ましい。
【0035】
フィルタープレス装置1においては、濾液の濾布4外への排出を促進するために濾布との接触面に濾液流通用の溝を設けることが行われており、本発明の中空熱伝導パネル30の濾室側表面にも濾液溝を形成することはできる。しかし、パネル30の表面にかかる溝を形成するのはコストが嵩み好ましくない。そこで、パネル30の濾布側表面に、当該パネル30とは別体のスペーサー60を取り付け、このスペーサー60により当該パネル表面から濾布4を離間させて濾液排出流路を形成するようにするのが好ましい。かかるスペーサー60の形状は適宜定めることができるが、図4及び図5に示すように棒材61,61・を井桁状に組み上げてスペーサー60を形成し、これをパネル表面に溶接やボルト止め等により取り付けるのが簡素・安価で好ましい。かくして、パネル30の表面に濾液溝を彫るのと比べて、パネル30を著しく容易かつ安価に製造できるようになる。
【0036】
かかる本発明のパネル30を本体部に取り付けるに当たっては、パネル30の熱膨張を考慮することが望まれる。すなわち、本体部20のパネル収容凹部21は、少なくともパネル30の熱膨張分の遊びをもってパネル30を収容しうる形状・サイズに形成するとともに、パネル30の周縁部30eを本体部側に押え付けることによってパネル30を本体部20に対して取り付けるのが望ましい。より詳細には、パネル30と本体部20との間に2〜5mm程度の隙間(図示略)を設けるとともに、図3、図4及び図9に示すように、本体部20の凹部21の周囲から中央側に伸びる固定爪22を、パネルの周方向に略等間隔で多数設け、これらの固定爪22によりパネル30を本体部20側に押え付ける構成を推奨する。この固定爪22を周方向に連続させた固定枠とすることもできる。この固定爪22や固定枠はボルト止め等の適宜の固定手段により本体部20に対して固定することができる。かくして、パネル30の周縁部30eは周方向に均等に本体部20側に押え付けられるとともに、その本体部20側に熱膨張分の遊びが設けられていると、パネル30の熱膨張は本体部20側にのみ発生し、しかもその膨張が許容されるため、パネル30の濾布側表面が膨出して脱水ケーキの厚さが不均一になるといった事態を招き難くなる。
【0037】
また本発明のパネル30は、図10及び図11に示すように、本体部20の凹部21内全体、すなわち凹部21の底面21dのみならず、周側面(図示例では濾板厚さ方向に対して傾斜した傾斜面となっているが、底面に対して直交していても良い)21sまでを覆うように延在させるのも望ましい。なお図中にはこの延在部分に符号30Eを付している。このように凹部21内全体を覆うようにパネル30を設けることによって、濾室6内全体の脱水能力が均一化し、脱水ケーキの含水率が不均一になりにくくなる。
【0038】
他方、図示のフィルタープレス装置1は、いわゆるセンターフィード型に属するものである。特徴的には、濾板3の略中央部に、厚さ方向に貫通するスラッジ供給孔3Fがそれぞれ形成されるとともに、濾布4の対応する部分にも供給口4Fが形成されており、この濾布供給口4Fと濾板供給口3Fとを合わせて連通させた状態で、濾布4の周縁部を固定リングRを介して濾板3に対してボルト止め等により固定している。また、本実施形態のフィルタープレス装置1は、濾液排出を促進するべく、装置外部に設けられた図示しない真空吸引ポンプと、一端がこの真空吸引ポンプに接続され他端が本体部20の濾室側面、図示例では本体部の凹部21内上部および下部に連通する真空吸引路3xとを備えたものとなっている。
【0039】
かくして構成された装置1では、例えば次のようにしてスラッジの脱水乾燥を行うことができる。
先ずシリンダー5(図1のみ図示)の伸張により濾板3,3・を締め付けて閉枠し、図2に示すように濾室6を形成する。しかる後、図示しないスラッジ供給装置を作動させ、スラッジを、濾板中央のスラッジ供給孔3Fを介して濾室6内の濾布4,4間に加圧供給する。濾室6内に供給されたスラッジは、順次送られてくるスラッジの供給圧力によって濾液のみが濾布4,4を通り、脱水が進行する。
【0040】
他方、スラリー供給終了後、あるいはスラリー供給途中もしくは供給初期に、図示しない熱媒供給装置を作動させて熱媒を加熱パネル30内を介して循環させる。これにより、加熱パネル30内を通る熱媒の熱が濾布4,4間のスラッジに対して伝わり、当該スラッジが加温されることによって脱水が促進される。
【0041】
またかかる脱水に際して、本実施形態の装置1では図示しない真空吸引装置により濾液排出路3Xを介して濾室6内が真空状態(負圧状態)とされる。これにより、スラッジ中の水分が蒸発し脱水乾燥が促進される。この真空吸引は、スラッジ脱水時に常に行うこともできるし、任意の期間だけ行うこともできる。
【0042】
脱水乾燥が終了し、脱水乾燥ケーキが濾室6内に形成されたならば、次いでその排出工程に入る。排出工程ではまず、図1に示すように、シリンダー5の収縮によりルーズヘッド101を開放し、また互いに連結された濾板3,3・を順次牽引して、各濾板間3,3が一定間隔となるように開枠する。この際、サポートバー108は、濾板3,3間の略中央上に移動する。その結果、濾布4,4はスラッジ供給口3F位置のみ濾板3,3に拘束されるため、濾板3,3のスラッジ供給孔3F位置よりも下側の部分が、当該濾板3,3の移動に伴って、サポートバー108による吊り下げ位置に対して離間方向に移動され、ケーキは自重により排出される。
【0043】
<その他>
(A)上記実施形態では、中空熱伝導パネルを有する加温濾板のみを用いたフィルタープレス装置を示したが、加温濾板と、膨縮可能なダイアフラムを有し、その膨張により濾布を介してスラッジを圧搾する機能を有する圧搾濾板とを交互に配置する場合にも本発明を適用できる。
【0044】
かかる圧搾濾板を用いたフィルタープレス装置の要部が図12に示されている。すなわち、前述の中空熱伝導パネルを有する加温濾板3と、ダイアフラム2E,2Eを有する圧搾濾板2とが交互に配置され、これら加温濾板3と圧搾濾板2との間に一対の濾布4,4が吊り下げられ、濾室が形成されるようになっている。
【0045】
より詳細には、圧搾濾板2は額縁部およびこれに取り囲まれた凹部2Hがそれぞれ形成された本体部2Bと、その表裏面の略全体を覆おうように配設されたダイアフラム2Eとを備えている。本体部2Bはポリプレピレン等の硬質樹脂により形成することができ、またダイアフラム2Eはゴム材等のように膨縮変形可能な軟質樹脂により形成することができる。ダイアフラム2Eの表面には、濾液溝を彫っても良いが、加温濾板の場合と同様に、を井桁状に組み上げる等して形成したスペーサー60を表面に設けることもできる。ダイアフラム2Eと本体部2Bとの間には流体室2Dがそれぞれ形成される。各流体室2D内には、加温濾板3における熱媒供給管40および排出管41と同様の配管形態で設けられた、内部流体供給路2Fおよび排出路2Xがそれぞれ連通され、流体室2D内への圧水等の流体の給排が可能となっている。また、ダイアフラム2E表面とこれに対面する濾布4外面との隙間には、額縁部(図示例では上下の各額縁部)において内部濾液排出路2Y,2Yがそれぞれ通じている。
【0046】
かくして構成されたフィルタープレス装置で脱水を行う場合、前述の加温濾板のみの場合における脱水に、圧搾濾板2のダイアフラム2Eによる圧搾脱水を組み合わせることになる。具体的には、スラッジ供給から所定時間経過後にスラッジ供給を行いながら、またはスラッジ供給終了後に、流体室2D内に、圧水等の流体(好ましくは加温パネルへ供給するものと同様の加温された流体)を供給し、濾室内6の圧力に抗してダイアフラム2Eを濾室6側に膨出させる。これにより、濾室6内の被脱水スラッジが濾布4,4を介して挟まれ圧搾される。
【0047】
この際、加温パネル30に加温流体を流通させておかなくても良いが、流通させておくと、流体室2D内に加温流体を供給すると、これらによって濾布4,4間のスラッジが効果的に加温され、脱水が促進される。
【0048】
さらに所定時間が経過したならば、流体室2Dへの加温流体の供給を停止し、流体室2D内の流体を排出し、ダイアフラム2Eによる圧搾を開放する。必要に応じて、再び圧搾操作を行う。かかる圧搾・開放操作を数回交互に繰り返すことにより、スラッジが揉み解され、圧搾による濾過作用の促進を図ることができる。圧搾を終える場合には、流体室2D内の流体を排出するとともに、前述の加温濾板のみの場合と同様にケーキ排出を行う。
【0049】
(B)上記実施形態では、加温濾板3の本体部20の両面に中空熱伝導パネル30をそれぞれ設けた例を示したが、本発明では濾板本体部20の一方の面にのみ中空熱伝導パネル30を設けることもできる。後者の場合において、他方の面には必要に応じて上述のダイアフラム2Eを設けることができる。
【0050】
(C)図8に示すように、局所的な窪み部dと仕切り板pとを設ける場合、仕切り板pも補強効果を果たすこと、および窪みdを設けた部分には仕切り板pを設け難いことから、窪み部dの間隔を広く取ることができる。これに対して、図6に示すように、仕切り板pを設けずに、溝状の窪み部hを利用して熱媒流路の仕切りを形成する場合、窪み部hのみにより強度を維持する必要があり、また窪み部hの配置に制限もないため、溝状窪み部hの間隔をより短く(例えば局所的窪み部dの相互間隔の半分程度)構成することが望ましい。すなわち、上記図6と図8とを対比すると、局所的窪み部d相互の間隔と、溝状窪み部h相互の間隔が等しくなっているが、現実的には溝状窪み部hの間隔をより短く構成するのが望ましい。
【0051】
(D)上記実施形態では、濾布吊り下げ型への適用例を示したが、本発明は、ケーキ排出に際して濾布が濾板下側で巻き取られつつ下降して濾布間が開かれる濾布走行型のものや、濾布を濾板に取り付けるタイプのフィルタープレス装置にも適用可能である。
【0052】
(E)上記実施形態では、濾室6,6…が全室一度に開枠されるタイプのフィルタープレス装置への適用例を示したが、一室または複数室ずつ順番に開枠されるタイプのフィルタープレス装置への適用も可能である。
【0053】
(F)また本発明では、上述例のようにスラッジを濾板中央部から供給するセンターフィードとするほか、濾板上部からスラッジ供給を行うアッパーフィードとしたり、濾板下部からスラッジを供給するアンダーフィードとしたりすることもできる。
【0054】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、製造が容易である、軽量である、ローコストである等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルタープレス装置例の正面図である。
【図2】濾板部分の縦断面図である。
【図3】図4のIII−III断面図である。
【図4】濾板の正面図である。
【図5】中空熱伝導パネルの縦断面図である。
【図6】中空熱伝導パネルの正面図である。
【図7】他の中空熱伝導パネルの縦断面図である。
【図8】他の中空熱伝導パネルの正面図である。
【図9】濾板の要部拡大縦断面図である。
【図10】図11のX−X断面図である。
【図11】他の濾板例の正面図である。
【図12】他のフィルタープレス装置への適用例を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
1・フィルタープレス装置、3・濾板、4・濾布、30・中空熱伝導パネル、31・表面材、32・補強リブ。
Claims (8)
- 対向する濾板間の濾室内に濾布を対向して設け、前記濾布間にスラッジを供給し濾過するフィルタープレス装置用の濾板であって、
本体部と、この本体部の少なくとも一方の濾室側面に設けられた中空熱伝導パネルとを備え、
前記中空熱伝導パネルは、濾布側表面をなす厚肉の表面材と、その裏面に取り付けられた薄肉の裏面材と、これら表面材と裏面材との間の空間により形成された熱媒流路とを有し、
前記裏面材に補強窪み部を形成してなる、
ことを特徴とするフィルタープレス濾板。 - 前記パネルの濾布側表面に、当該パネルとは別体のスペーサーを取り付け、このスペーサーにより当該パネル表面と濾布との間に濾液通路が形成されるように構成した、請求項1記載のフィルタープレス濾板。
- 前記パネルの裏面に、パネル内に連通する熱媒の供給口及び排出口を有するとともに、
一端が前記供給口に接続され、他端側が前記本体部内を通り本体部の外周面から濾板外部へ導出された熱媒の供給管路と、
一端が前記排出口に接続され、他端側が前記本体部内を通り本体部の外周面から濾板外部へ導出された熱媒の排出管路とを有する、請求項1または2記載のフィルタープレス濾板。 - 前記本体部は前記供給管路が通される配管孔を有し、この配管孔と前記供給管路との隙間がシールされている、請求項3記載のフィルタープレス濾板。
- 前記本体部は、前記パネルを収容する凹部を有し、
前記パネルは少なくとも熱膨張分の遊びをもって前記凹部内に収容されるとともに、その周縁部が前記本体部側に押え付けられることによって本体部に対して取り付けられた、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルタープレス濾板。 - 前記空間が前記パネルの平面方向において蛇行する熱媒流路を形成するように、前記補強窪み部が前記表面材側に突出され且つ前記表面材の裏面に液密に接続されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタープレス濾板。
- 前記表面材と前記裏面材との間に仕切り板が設けられ、この仕切り板によって、前記空間が、前記パネルの平面方向において蛇行する熱媒流路に仕切られている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタープレス濾板。
- 前記本体部は濾室を形成するための凹部を有し、前記パネルはこの凹部内の底面および周側面を覆うように設けられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルタープレス濾板。
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