JP3738789B2 - 光散乱によるアマドリ化合物の測定方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は糖化アルブミン、糖化ヘモグロビン、糖化グロブリンなどのアマドリ化合物の定量測定を行なう方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アマドリ化合物は、タンパク質、ペプチド又はアミノ酸のようなアミノ基を有する物質(以下、タンパク質等という)と、アルドースのような還元性の糖が共存する場合、一部のアミノ基とアルデヒド基が非酵素的に、かつ非可逆的に結合し、アマドリ転移することにより生成される。アマドリ化合物の生成速度は、反応性物質の濃度、接触時間、温度などの関数で表わされる。したがって、その生成量からそれらの反応性物質を含有する物質に関する様々な情報を得ることができると考えられている。アマドリ化合物を含有する物質としては、醤油などの食品や、血液などの体液がある。
【0003】
例えば、生体ではグルコースとアミノ酸が結合し、アマドリ化合物であるフルクトシルアミン誘導体が生成している。血液中のヘモグロビンが糖化されたフルクトシルアミン誘導体はグリコヘモグロビン、アルブミンが糖化されたフルクトシルアミン誘導体はグリコアルブミン、血液中のタンパク質が糖化されたフルクトシルアミン誘導体はフルクトサミンと呼ばれる。これらのフルクトシルアミン誘導体の血中濃度は、過去の一定期間の平均血糖値を反映しており、その測定値は糖尿病の病状の診断及び病状の管理の重要な指標となりうるため、アマドリ化合物の測定手段の確率は、臨床上、きわめて有用である。また、食品中のアマドリ化合物を定量することにより、その食品の製造後の保存状況や期間を知ることができ、品質管理に役立つと考えられる。
このように、アマドリ化合物の定量分析は、医学及び食品を含む広範な分野で有用である。
【0004】
従来、アマドリ化合物の定量法としては、高速液体クロマトグラフィーを利用する方法(Chromatogr. Sci., 10, 659 (1979)参照)、ホウ酸を結合させた固体をつめたカラムを用いる方法(Clin. Chem., 28, 2088 (1982)参照)、電気泳動(Clin. Chem., 26, 1598 (1980)参照)、抗原−抗体反応を利用する方法(JJCLA, 18, 620 (1993),機器・試薬, 16, 33-37 (1993)参照)、フルクトサミンの測定法(Clin. Chem. Acta, 127, 87-95 (1982)参照)、チオバルビツール酸を用いて酸化後に比色定量する方法(Clin. Chem. Acta, 112, 179-204 (1981)参照)、ラジオイムノアッセイ(RIA)法などが知られている。
【0005】
電気泳動法やクロマトグラフィー法は測定に時間がかかり、操作が煩雑であるうえ、タンパク質の絶対量の測定値が混在物質の中の親和力の大きさの近い物質の影響を受け、正確に定量測定するのが難しい。
RIA法は感度、特異性及び再現性に優れているが、標識する過程が複雑で煩雑である。
フルクトサミン測定法はフルクトサミンのアルカリ溶液中での還元力を利用する方法であるが、他の還元物質の影響を受け、測定誤差を生じやすい欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
光を物質に照射してその光散乱スペクトルを用いて糖化タンパクなどのアマドリ化合物を定量できれば、簡便で有効であるが、そのような光散乱スペクトルを利用してアマドリ化合物を測定した例は報告されていない。
そこで、本発明は光散乱を利用した簡便な光学的方法により、アマドリ化合物を定量測定する方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、アマドリ化合物を含む試料に単一波長の励起光を照射してその試料からの散乱光を受光し分光して光散乱スペクトルを得、その光散乱スペクトルのうち、励起波長に対するシフト波数にして820〜840cm-1、1655〜1660cm-1、2000〜2020cm-1、2080〜2100cm-1、2460〜2470cm-1又は2530〜2600cm-1に存在する光散乱ピークを用いてアマドリ化合物の定量測定を行なう。
【0008】
アマドリ化合物を含む試料に単一波長の励起光を照射して得られる光散乱スペクトルは、光散乱ピークと蛍光スペクトルとが重なったものとなる。その蛍光スペクトル部分を除去する演算操作を施すと、光散乱ピークのいずれかのピークのピーク強度又は積分値を求めるのが容易になる。このようにして求めた光散乱ピークのピーク強度又は積分値に基づいてアマドリ化合物を定量測定することができる。
ここでの定量測定は、試料中のアマドリ化合物の量を測定する場合も、試料中のタンパク質等の糖化率を測定する場合も含んでいる。糖化率は
(アマドリ化合物)/(アマドリ化合物+タンパク質等)
と定義される。いずれの測定値も検量線を用いて求めることができる。
【0009】
得られた光散乱スペクトルのうち、蛍光スペクトルは(アマドリ化合物+タンパク質等)の総和を反映したものである。そこで、タンパク質等の糖化率を測定する好ましい方法では、光散乱スペクトルの光散乱ピークのいずれかのピークのピーク強度又は積分値Iと、光散乱スペクトルのうち、励起波長に対するシフト波数にして820〜840cm-1、1655〜1660cm-1、2000〜2020cm-1、2080〜2100cm-1、2460〜2470cm-1及び2530〜2600cm-1を除いて任意に定めた波数領域の積分値Sとの比I/Sを用いることにより正確に測定することができる。
【0010】
図1に示す光散乱スペクトルは、濃度が10mg/dlのヒト血清アルブミン水溶液にHe−Neレーザ装置(日本科学エンジニアリング株式会社の製品、出力7mW)のレーザ光(波長632.8nm)を照射して励起して得たものである。(A)は糖化率が24.1%、(B)は糖化率が58.2%のヒト血清アルブミン水溶液である。横軸はHe−Neレーザ光の波長からの光散乱シフトを波数で表わしたもの、縦軸は散乱光強度である。
【0011】
(A)と(B)の両光散乱スペクトルで、同じ光散乱シフトの位置に鋭いピークが現われており、それらのピーク強度は糖化率が大きいものほど大きくなっている。また、図1の試料と同程度の濃度のグルコース水溶液の光散乱スペクトルを測定したが、ピークらしいものは観測されなかった。グルコース水溶液の濃度を10000mg/dlという高濃度にしてその光散乱スペクトルを測定すると、図2に示されるスペクトルが得られ、そこにはいくつかのピークが現われているが、図1に示された鋭いピークとは位置が異なっている。その結果、図1の鋭い光散乱ピークは、グルコースによる光散乱ピークではなく、糖化アルブミンによる光散乱ピークであることがわかる。
図1のスペクトルで、山形の大きくてなだらかなピークはアルブミンと糖化アルブミンからの螢光であり、糖化アルブミンによる光散乱ピークはその大きな蛍光ピークと重なって蛍光ピークから突出して現れている。
【0012】
糖化アルブミンによる光散乱ピークはHe−Neレーザ光の波長からのシフト波数にして、830cm-1、1658cm-1、2009cm-1、2082cm-1、2463cm-1及び2544cm-1の付近に存在している。
図1の光散乱スペクトルから螢光スペクトル部分をバックグラウンド信号として除去したものを図3に示す。(A),(B)はそれぞれ図1の(A),(B)に対応したものである。このように、螢光スペクトル部分を除去することにより、光散乱ピークのピーク強度やピーク積分値(面積)を求めるのが容易になる。
【0013】
図4は、糖化率の異なるヒト血清アルブミン水溶液の標準試料について、糖化率と、図3のように螢光スペクトル部分を除去した後のピーク高さとの関係を示したものである。測定を行ったピークは、He−Neレーザ光の波長からのシフト波数にして1658cm-1付近のピークである。標準試料のヒト血清アルブミン水溶液は、糖化率が24.1%のものと58.2%のものが市販品として入手できる。その他の糖化率の標準試料は、それらの市販の標準試料を調合することにより調製したものである。図4に示されている標準試料の糖化率は、24.1%、31.3%、38.7%、45.5%、51.9%及び58.2%である。これらの標準試料の糖化率の数値は、全自動グリコアルブミン分画定量装置GAA−2000(株式会社京都第一科学の製品)で測定した値である。
【0014】
図4によれば、糖化率と光散乱ピークのピーク強度との間には直線関係があるので、この結果を糖化率の検量線として用いることができる。また、この検量線用のデータを測定した標準試料の(糖化アルブミン+アルブミン)濃度は一定であるので、この検量線を糖化アルブミン濃度と光散乱ピークのピーク強度との関係を表わす検量線に転用することもできる。したがって、この検量線を用いると、未知試料について光散乱スペクトルのピーク強度を測定して糖化率又は糖化アルブミン濃度を求めることができる。
【0015】
同じ標準試料による光散乱スペクトルの同じピークの積分値を用いて、糖化率と光散乱ピーク積分値の関係を測定した結果を図5に示す。この場合も糖化率とピーク積分値の間に直線関係が得られ、この関係も検量線として利用することができる。そのため、未知試料について光散乱スペクトルのピークのピーク強度の測定に代えてピーク積分値を測定しても、糖化率又は糖化アルブミン濃度を求めることができる。
【0016】
図4及び図5の直線関係は、図3に示された他の光散乱ピークについても同様に成立している。
図4又は図5に示された糖化率に対するピーク強度又はピーク積分値の関係の検量線から未知試料の糖化率を求めるには、未知試料の(糖化アルブミン+アルブミン)濃度を標準試料の(糖化アルブミン+アルブミン)濃度と同一になるように未知試料の濃度を調製するか、又は(糖化アルブミン+アルブミン)濃度が同一になるように測定値を換算しなければならない。一方、図1の光散乱スペクトルでは、光散乱ピークの他に螢光スペクトルも同時に検出されている。図6は、この螢光スペクトルのうち、He−Neレーザ光の波長からのシフト波数にして416.508〜1434.74cm-1の領域の積分値(縦軸の強度)を(糖化アルブミン+アルブミン)濃度の異なる標準試料について測定した結果を表わしたものである。(糖化アルブミン+アルブミン)濃度と螢光スペクトルの積分値との間には直線関係が得られているので、螢光スペクトルの積分値に基づいて(糖化アルブミン+アルブミン)濃度を求めることによって、糖化アルブミンの光散乱ピークのピーク強度やピーク積分値から得られた糖化率を補正することができる。螢光スペクトルの積分を行なう波数領域は、螢光スペクトルが現われている領域であれば任意に選ぶことができ、上記の一例に限定されるものではない。
【0017】
また、光散乱ピークのいずれかのピークのピーク強度又は積分値Iと、光散乱スペクトルの蛍光スペクトル部分の任意に定めた波数領域の積分値Sとの比I/Sをパラメータとし、糖化率の異なる複数の標準試料について糖化率とI/S値との関係を示す検量線を求めておき、未知試料について検量線作成時に使用した光散乱ピークのI/S値を測定し、その検量線に当てはめると、アルブミン濃度による補正のなされた糖化率を求めることができる。
【0018】
以上の例は糖化タンパクのうちの糖化アルブミンについて測定を行ったものであるが、これらの光散乱ピークは、他の糖化タンパクを初め、糖化ペプチドや糖化アミノ酸などのアマドリ化合物で共通して観測される。アマドリ化合物の中で臨床的に重要なものは、糖化タンパクの糖化アルブミン、糖化ヘモグロビン及びフルクトサミンであるが、本発明は他のアマドリ化合物にも同様に適用することができる。
【0019】
例として、ヒト血中ヘモグロビン水溶液(糖化率は不明)にHe−Neレーザ光を照射して光散乱スペクトルを得、蛍光スペクトル部分をバックグラウンドとして除去したものを図12(A)に示す。図3(A),(B)と同じラマンシフトの位置に鋭いピークが見られる。ヘモグロビンについても、図6と同様にして、蛍光スペクトルの適当な領域の積分値(縦軸の強度)をヘモグロビン濃度の異なる標準試料について測定した結果を図12(B)に示す。ここでも、蛍光スペクトルの積分値とヘモグロビン濃度の間に直線関係が見られる。
【0020】
図1の6個の光散乱ピークがアマドリ化合物に特有のピークであることを示す例として、グルコースとアミノ酸の結合部位(フルクトース構造)に特異的に反応する酵素フルクトシルアミノ酸オキシダーゼなどを用いてアマドリ化合物である糖化アミノ酸を分解し、それらのピークの変化を調べた結果を図7(A)と(B)に示す。図7(A)はそのような酵素を反応させる前の糖化アミノ酸であるNε-Fructosyl-Nα-Z-lysine(FZL)水溶液のHe−Neレーザ励起による光散乱スペクトルである。その試料溶液に糖化アミノ酸分解酵素を反応させた後の光散乱スペクトルは(B)に示されるものであり、(A)のスペクトルと比べるとアマドリ化合物に特有のピークのピーク強度が減少している。FZLが糖化アミノ酸分解酵素により分解して生成するアミノ酸であるNα-Z-lysine(αZL)の標準試料にHe−Neレーザ光を照射し励起して得た光散乱スペクトルは、図8に示されるものであり、図7に現れている特異的な光散乱ピークは観測されない。
【0021】
図7において、糖化アミノ酸分解酵素を添加してからの時間に対し、He−Neレーザ波長からのシフト波数1658cm-1のピークのピーク強度の変化を測定した結果が図9である。時間の経過にともなって分解酵素による糖化アミノ酸の分解が起こり、ピーク強度が減少している。このことによって、これらの特徴的な光散乱ピークは、糖とアミノ酸との結合によるピークであることがわかる。
【0022】
他のアミノ酸としてのバリンと、その糖化アミノ酸としての糖化バリンの光散乱スペクトルをそれぞれ図13A,図13Bに示す。糖化バリンのスペクトルもアマドリ化合物に特有のピークを備えている。
【0023】
【実施例】
図10に本発明で光散乱スペクトルを測定する装置の一例を説明する。1は励起光源であり、例えばレーザ装置が用いられる。レーザ装置としては、連続発振をするArイオンレーザ、Krイオンレーザ、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Nd:YAGレーザ、又はパルスレーザを用いることができ、近紫外域から近赤外域に渡る広い波長範囲のレーザから選択して利用することができる。レーザ装置以外の光源としてハロゲンランプなどを用いることもできる。ここでは光源1としてHe−Neレーザを用いるものとする。2は光源1の出力を制御する電源装置である。
【0024】
4はバンドパスフィルタで、光源1から発生するレーザ光12からそのサイドバンドをカットするためのものである。レーザ光12はハーフミラー5によって試料側の励起光12sと対照側の対照光12rに分離され、励起光12sはハーフミラー5により発生する波長光をカットするためのバンドパスフィルタ7を経てレンズ9でセル3に集光して入射させられる。
【0025】
セル3は石英製の角筒状の散乱光セルであり、反応溶液が収容され、一定温度、例えば25℃に保たれている。セル3の反応溶液から発生する散乱光を増強するために、励起光12sの入射方向にはミラー11aが配置されており、励起光12sがセル3を透過した後、ミラー11aで反射されて再びセル3に入射することにより光散乱が増強される。また、励起光12sの入射方向と90°方向で、分光器22側に反射する方向にミラー11bが配置されており、セル3から発生する散乱光はミラー11bで反射されたものも含めて励起光及びレイリ散乱光とともに集光レンズ16,20で集光され、フィルタ21を経て分光器22に集光される。フィルタ21は励起光及びレイリ散乱光の成分をカットして励起波長から波長シフトした散乱光や蛍光成分のみを分光器22に入射させるためのものである。分光器22と検出器23としては、分光器22の分散方向に沿って複数の検出素子を配置したポリクロメータによるマルチチャネル検出方式のものを用いる。24はマルチチャネル検出器23から波長ごとに出力を取り出すための検出器制御部である。
【0026】
分光器22としては走査型分光器を用い、検出器23として単一の検出素子を備えた検出器とすることもできる。その際、分光器22を波長走査するために、分光器制御部25が必要になる。
一方、ハーフミラー5で励起光12sと分割された対照光12rはミラー6で検出器30方向に折り曲げられ、ミラー6で発生する波長光をカットするためのバンドパスフィルタ8を経て検出器30に入射し、光源強度が検出される。
【0027】
データ処理演算・出力部31は分光器22と検出器23による光散乱光検出値を光源強度を示す対照光側の検出器30の検出値で補正して光散乱スペクトルを得る。定量測定を行なうときは、データ処理演算・出力部31は予め測定して作成された検量線データを保持しており、未知試料を測定して得られたピーク強度もしくはピーク面積、又はそれらを蛍光スペクトルの面積値で補正した値から、検量線に基づいて糖化物濃度又は糖化率を算出して出力する。分光器22が波長走査を行なう場合にはデータ処理演算・出力部31は分光器制御部25を介して波長走査を行なう。
【0028】
励起光による光散乱の増強をさらに効果的に行なうためのセルの例を図11(A),(B)に示す。
(A)では、セル3aはガラス、石英又はポリエチレンテトラフタレートなどの透明な材料により作られた丸底フラスコ状のセルであり、試料溶液が入れられる。そのセル3aは積分球状のセルホルダ10aに嵌め込まれている。セルホルダ10aはその内面が反射面となっているとともに、励起光12sを入射させ、その入射方向と180°の方向に散乱光を取り出すための窓が開けられている。励起光12sはミラー14で折り曲げられてセルホルダ10aの窓からセル3aに入射する。16はセルホルダ10aの窓から出射した散乱光を励起光とともに集光させる集光レンズである。セル3a内の試料溶液に照射された励起光は、セルホルダ10aの内面で反射を繰り返し、光散乱を伴ってセルホルダ10aの窓から取り出され、分光器方向へ導かれる。
【0029】
(B)は励起光の入射方向に対し90°方向に散乱光を取り出すようにセルホルダ10bに窓を開けた例である。セル3aは内面が反射面となった積分球状のセルホルダ10bに嵌め込まれ、セルホルダ10bにはy方向から励起光12sを入射させる窓と、その入射方向と90°をなすx方向に散乱光18を取り出す窓が開けられている。
【0030】
【発明の効果】
本発明ではアマドリ化合物を含む試料に単一波長の励起光を照射してその試料からの散乱光を受光し分光して光散乱スペクトルを得、その光散乱スペクトルのうち、励起波長に対するシフト波数にして820〜840cm-1、1655〜1660cm-1、2000〜2020cm-1、2080〜2100cm-1、2460〜2470cm-1又は2530〜2600cm-1に存在する光散乱ピークを用いることによって、簡便な光学的測定方法によりアマドリ化合物を定量測定することができる。
アマドリ化合物の糖化率の測定には光散乱ピークのピーク強度やピーク積分値を用いることができるが、螢光スペクトルの適当な波数領域の積分値を基準としてアマドリ化合物とタンパク質等との和による補正を行なうことによって、糖化率をより正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒト血清アルブミンの光散乱スペクトルを示す図であり、(A)は糖化率24.1%、(B)は糖化率58.2%のものである。
【図2】高濃度のグルコース水溶液の光散乱スペクトルを示す図である。
【図3】図1(A),(B)のスペクトルから螢光スペクトルを除去する演算操作を行なった後のそれぞれの光散乱スペクトルを示す図である。
【図4】光散乱スペクトルの1つのピークのピーク強度と糖化率の関係を示す検量線である。
【図5】光散乱スペクトルの1つのピークのピーク積分値と糖化率の関係を示す検量線である。
【図6】アルブミン濃度と螢光スペクトルの積分値との関係を示す図である。
【図7】アマドリ化合物分解酵素によるアマドリ化合物の光散乱ピークの変化を示す光散乱スペクトルの図であり、(A)は分解酵素添加前、(B)は分解酵素添加後の状態を示したものである。
【図8】 Nα-Z-lysineの光散乱スペクトルを示す図である。
【図9】図7の測定における光散乱ピークの時間による変化を示す図である。
【図10】本発明を実施する測定装置の一例を示すブロック図である。
【図11】同測定装置における他のセル部分の例を示す断面図であり、(A)は180°増強散乱を取り出す例、(B)は90°増強散乱を取り出す例である。
【図12】(A)は蛍光スペクトルを除いた後のヒト血中ヘモグロビンの光散乱スペクトルを示す図、(B)はヘモグロビン濃度と蛍光スペクトルの積分値との関係を示す図である。
【図13】(A),(B)はそれぞれバリン、糖化バリンの光散乱スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
1 励起光源
3 石英製散乱光セル
12s 励起光
18 励起光及び光散乱光
22 分光器
23 検出器
Claims (4)
- アマドリ化合物を含む試料に単一波長の励起光を照射してその試料からの散乱光を受光し分光して光散乱スペクトルを得、その光散乱スペクトルのうち、励起波長に対するシフト波数にして820〜840cm-1、1655〜1660cm-1、2000〜2020cm-1、2080〜2100cm-1、2460〜2470cm-1又は2530〜2600cm-1に存在する光散乱ピークを用いてアマドリ化合物の定量測定を行なうことを特徴とするアマドリ化合物の測定方法。
- 前記光散乱スペクトルから蛍光スペクトル部分を除去する演算操作を施した後、前記光散乱ピークのいずれかのピークのピーク強度又は積分値に基づいてアマドリ化合物の定量測定を行なう請求項1に記載のアマドリ化合物の測定方法。
- 前記光散乱ピークのいずれかのピークのピーク強度又は積分値Iと、前記光散乱スペクトルのうち、励起波長に対するシフト波数にして820〜840cm-1、1655〜1660cm-1、2000〜2020cm-1、2080〜2100cm-1、2460〜2470cm-1及び2530〜2600cm-1を除いて任意に定めた波数領域の積分値Sとの比I/Sに基づいてアマドリ化合物の定量測定を行なう請求項1に記載のアマドリ化合物の測定方法。
- 励起光源としてHe−Neレーザを使用する請求項1,2又は3に記載のアマドリ化合物の測定方法。
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