JP3738155B2 - 軸流送風機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和装置の室外機や換気扇などに使用される軸流送風機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、軸流送風機の翼表面において空気流が剥離して送風性能が低下し、送風騒音が増大することを防止するために、翼負圧面に沿って流れる空気の流れを乱流境界層に遷移させる構造物(突起、窪み、溝等)を設置したものが提案されている。
【0003】
例えば、特開平9−228995号公報や特開平10−82398号公報に記載の発明に係る軸流送風機では、翼負圧面の翼前縁付近に複数の突起を設置している。また、実用新案登録番号第2588746号公報記載の考案に係る軸流送風機や、特開平1−106998号公報記載の発明に係る軸流送風機では、翼負圧面の翼前縁付近に窪みや溝を形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述のような軸流送風機では、空気の流れを乱流境界層に遷移させる突起や窪み等の構造物が、翼負圧面における翼前縁付近に設置されて、翼負圧面に沿って流れる空気流の剥離を翼後縁側へ移動させるものであるため、この空気の剥離による送風性能の低下や送風騒音の増大が、必ずしも十分に回避できるものとは言えない。
【0005】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、送風性能を向上でき、且つ送風騒音を低減できる軸流送風機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、ハブ部の外周に複数枚の翼が配置されて構成された軸流送風機において、上記各翼には、翼負圧面における翼後縁付近に翼の輪郭形状の相似形に形成された突起が複数、当該突起の先端部が前記翼の先端部とほぼ同一向きにして前記翼の外縁部から前記ハブ部に向かって配設されるとともに、
前記ハブ側に配置されている前記突起の先端部は、当該突起よりも前記翼の外縁部側に配置されている前記突起の先端部よりも、前記翼の後縁側に位置するようにされていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記突起が、翼の輪郭形状の1/4〜1/2程度の縮小倍率の範囲で形成されたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記突起の翼負圧面からの高さが、0.5〜2.5mm程度の範囲に設定されたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、上記突起が翼負圧面に接する幅が、1〜3mm程度の範囲に設定されたことを特徴とするものである。
【0011】
上記発明によれば、各翼には、翼負圧面における翼後縁付近に突起が設けられたことから、送風機の回転により、翼前縁側から翼後縁側へ翼負圧面に沿って流れる空気は、翼前縁付近においては層流となって層流境界層を形成し、翼後縁付近においては突起により乱流となって乱流境界層を形成し、ともに翼負圧面からの剥離が抑制される。このように、軸流送風機の回転時に、各翼における翼負圧面からの空気流の剥離が効果的に抑制されるので、この剥離による送風騒音を低減できるとともに、各翼の仕事量が増大して送風性能を向上させることができ、併せて、軸流送風機によるエネルギー消費量を低減できる。
【0012】
この場合に翼負圧面に形成される突起が翼の輪郭形状の相似形に形成された突起が複数、当該突起の先端部が前記翼の先端部とほぼ同一向きにして前記翼の外縁部から前記ハブ部に向かって配設されるとともに、前記ハブ側に配置されている前記突起の先端部は、当該突起よりも前記翼の外縁部側に配置されている前記突起の先端部よりも、前記翼の後縁側に位置するようにされていることから、翼負圧面を流れる空気の流れ方向において、突起により空気流を乱流化する動作領域が広範囲となり、翼後縁付近を流れる空気の翼負圧面からの剥離防止を安定化できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る軸流送風機の一実施の形態であるプロペラファンが適用された空気調和装置の室外機を示す正面図である。
【0017】
空気調和装置は、室外機10と図示しない室内機とが冷媒配管(不図示)により接続され、これらの間を冷媒が循環することにより冷房運転または暖房運転がなされる。室外機10は、室外に設置されて外気と冷媒とを熱交換し、冷房運転時には冷媒を凝縮させて外気に熱を放出し、暖房運転時には冷媒を蒸発させて外気から熱を取り込むものである。
【0018】
室外機10は、ケーシング11内に圧縮機12、アキュムレータ13、四方弁14、熱交換器15、及び軸流送風機としてのプロペラファン16を有して構成される。このプロペラファン16は、図2に示すようにファンモータ17に連結され、このファンモータ17が支持板18に支持されて熱交換器15の前方に配置される。このプロペラファン16のファンモータ17による駆動によって、空気(外気)が図2の矢印Aの如く熱交換器15の内側から外側へ送風されて、熱交換器15内の冷媒と外気とが熱交換される。
【0019】
さて、上記プロペラファン16は、図3及び図4に示すように、ハブ部19と、このハブ部19の外周に所定ピッチで配置された複数枚(例えば3枚)の同一形状の翼20とを有して構成される。これらのハブ部19及び翼20は、例えば一体に樹脂成形される。
【0020】
ハブ部19は、ファンモータ17のモータシャフト21(図2)が挿通され、ファンモータ17の駆動により各翼20を図4の矢印N方向に回転させる。また、このハブ部19は、外径がほぼ三角柱形状に構成されている。
【0021】
上記翼20は、矢印N方向の回転により、その翼前縁22側から翼後縁23側へ向かい翼負圧面24(翼裏面)に沿って空気(外気)を流動させ、この空気を全体として、プロペラファン16の裏側から表側へ図2の矢印A方向に送風する。
【0022】
各翼20には、翼負圧面24における翼後縁23付近、つまり各翼20の翼弦長Lにおけるほぼ中央位置から翼後縁23に至る領域に、1または複数(例えば2個)の突起25が一体に設けられる。この突起25は、図4に示すように、翼20の輪郭形状の相似形状であり、翼20の輪郭を1/2〜1/4程度の範囲で縮小したものである。図4において、各翼20の翼外周縁26側の突起25は翼20の輪郭の1/3の相似形であり、また、翼内周縁27側の突起25は翼20の輪郭の1/4の相似形である。
【0023】
突起25を翼20の輪郭の1/2〜1/4程度の範囲としたのは、1/2以上では、翼負圧面24における突起25の占有領域が大きすぎ、また、突起25を翼20の輪郭の1/4以下としたのでは、突起25による後述の乱流化作用が不十分となるからである。
【0024】
また、これらの突起25は、先端部25Aを翼20の先端部20Aとほぼ同一向きにして配設される。
【0025】
更に、突起25は、図5に示すように、翼負圧面24からの高さHが0.5〜2.5mm程度の範囲に設定され、また、翼負圧面24に接する底面幅Wが1〜3mm程度の範囲に設定される。
【0026】
突起25の高さHを上記範囲に設定した理由は、突起25の底面幅Wを2mmとし、定格風量を送風するようにプロペラファン16を回転させたとき、図7(A)に示すように、後述の送風騒音を低減するためには、突起25の高さHが0.5〜2.5mmの範囲にあることが望ましく、また、図7(B)に示すように、ファンモータ17の消費電力を低減するためには、突起25の高さHが2.5mm以下であることが望ましいからである。
【0027】
また、突起25の底面幅Wを上記範囲に設定した理由は、この突起25の高さHを1mmとし、定格風量を送風するようにプロペラファン16を回転させたとき、図8(A)に示すように、送風騒音を低減するためには、突起25の底面幅Wが1〜3mmの範囲にあることが望ましく、また、図8(B)に示すように、ファンモータ17の消費電力を低減するためには、突起25の底面幅Wが3mm以下であることが望ましいからである。
【0028】
この突起25は、翼20の翼負圧面24に沿って空気が流れたときに、図5(A)に示すように、それらの先端部25Aが空気の流れを乱流化し始め、その後全長に亘りその乱流化を促進することから、突起25が形成された翼負圧面24上に乱流境界層29(図6(A))を形成し、この領域の翼負圧面24からの空気の剥離を抑制する。
【0029】
従って、翼20の翼負圧面24に上述のような突起25が存在しない場合には、プロペラファン16の回転時に、図6(B)に示すように、翼20の翼前縁22側から翼後縁23側へ翼負圧面24に沿って流れる空気は、翼20の翼前縁22から翼弦長Lにおけるほぼ中央位置に至る領域では層流境界層28を形成するものの、翼20の翼弦長Lにおけるほぼ中央位置から翼後縁23側の領域においては、層流境界層28が翼負圧面24から剥離し、送風騒音の増大や送風性能の低下を来す。
【0030】
これに対し、翼20の翼負圧面24に上述の突起25が設けられた場合には、プロペラファン16の回転時に、図6(A)に示すように、翼20の翼前縁22側から翼後縁23側へ翼負圧面24に沿って流れる空気は、翼20の翼前縁22から翼弦長Lにおけるほぼ中央位置に至る領域では、図6(B)と同様に層流境界層28を形成し、翼20の翼弦長Lにおけるほぼ中央位置からほぼ翼後縁23に至る領域では突起25による乱流化作用で、層流境界層28よりも剥離しにくい乱流境界層29を形成するので、翼負圧面24から剥離せずに翼負圧面24に沿って流れる。このため、上記空気流の剥離に伴う送風騒音の発生や、送風性能の低下が抑制される。
【0031】
以上のことから、上記実施の形態によれば、次の効果▲1▼及び▲2▼を奏する。
【0032】
▲1▼プロペラファン16の各翼20には、翼負圧面24における翼中央から翼後縁付近に突起25が設けられたことから、プロペラファン16の回転により、翼前縁22側から翼後縁23側へ翼負圧面24に沿って流れる空気は、翼前縁22付近においては層流となって層流境界層28を形成し、翼後縁23付近においては突起25により乱流となって乱流境界層29を形成し、ともに翼負圧面24からの剥離が抑制される。このようにプロペラファン16の回転時に、各翼20における翼負圧面24からの空気流の剥離が効果的に抑制されるので、この剥離による送風騒音を低減できるとともに、各翼20の仕事量が増大して送風性能を向上させることができ、併せて、プロペラファン16によるエネルギー消費量を低減できる。
【0033】
▲2▼プロペラファン16の各翼20における翼負圧面24に形成された突起25が翼20の輪郭形状の相似形に形成され、この突起25が翼20とほぼ同一向きであることから、翼負圧面24を流れる空気の流れ方向において、突起25により空気流を乱流化する作用領域が広範囲となり、翼後縁23付近を流れる空気の翼負圧面24からの剥離防止を安定化できる。
【0034】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、プロペラファン16が室外機10のケーシング11に配設されたものを述べたが、換気扇や冷蔵庫などに適用されるものでも良い。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る軸流送風機によれば、ハブの外周に複数枚配置された各翼には、翼負圧面における翼後縁付近に突起が設けられたことから、送風性能を向上でき、且つ送風騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る軸流送風機の一実施の形態であるプロペラファンが適用された空気調和装置の室外機を示す正面図である。
【図2】図1の室外機における主要部を示す縦断面図である。
【図3】図1及び図2のプロペラファンを示す斜視図である。
【図4】図3のIV矢視図である。
【図5】(A)は、図4の突起による空気の乱流化作用を示す斜視図であり、(B)は、図5(A)のV−V線に沿う断面図である。
【図6】(A)は、図4における翼の外周付近のVI−VI線に沿って切断した断面図に、翼負圧面を流れる空気の流れ状態を付加した図であり、(B)は、図4の突起がない翼の翼負圧面を流れる空気の流れ状態を示す図6(A)に対応する断面図である。
【図7】図4の突起の底面幅を一定とし、突起の高さを変更したときの送風騒音値と消費電力値を示すグラフである。
【図8】図4の突起の高さを一定とし、突起の底面幅を変更したときの送風騒音値と消費電力値を示すグラフである。
【符号の説明】
16 プロペラファン(軸流送風機)
19 ハブ部
20 翼
22 翼前縁
23 翼後縁
24 翼負圧面
25 突起
H 高さ
W 底面幅
Claims (4)
- ハブ部の外周に複数枚の翼が配置されて構成された軸流送風機において、
上記各翼には、翼負圧面における翼後縁付近に翼の輪郭形状の相似形に形成された突起が複数、当該突起の先端部が前記翼の先端部とほぼ同一向きにして前記翼の外縁部から前記ハブ部に向かって配設されるとともに、
前記ハブ側に配置されている前記突起の先端部は、当該突起よりも前記翼の外縁部側に配置されている前記突起の先端部よりも、前記翼の後縁側に位置するようにされていることを特徴とする軸流送風機。 - 上記突起が、翼の輪郭形状の1/4〜1/2程度の縮小倍率の範囲で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の軸流送風機。
- 上記突起の翼負圧面からの高さが、0.5〜2.5mm程度の範囲に設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の軸流送風機。
- 上記突起が翼負圧面に接する幅が、1〜3mm程度の範囲に設定されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の軸流送風機。
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