JP3737442B2 - 膜厚モニタリング装置および膜厚モニタリング方法 - Google Patents

膜厚モニタリング装置および膜厚モニタリング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜厚モニタリング装置および膜厚モニタリング方法に関し、特に、光通信装置や光学デバイスおよび半導体装置等に使用される多層膜を形成する場合に使用される膜厚モニタリング装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最初に、光通信装置と光学デバイスについての状況について述べる。
【0003】
光学的な屈折率の異なる誘電体膜を交互に積み重ねて形成する多層膜は、眼鏡等のガラス上およびプラスチック上への無反射コーティング、ビデオカメラの色分解プリズム、各種光学フィルタ、発光レーザの端面コーティング等に使用されている。
【0004】
また、最近の状況として広帯域光波長多重通信(DWDM通信)に用いる合波フィルタや分波フィルタに応用されるようになってきた。多層膜の層数も数十層から数百層と非常に多くなり、膜厚や膜質の均一性もこれまで以上に高精度なものが要求されるようになってきた。このような層数の多い多層膜を作製する際には、後述理由によって、実基板とは別の膜厚モニタリング用のモニタ基板を実基板に接近させて設置し、そのモニタ基板によって膜厚制御を行い、しかも、1つの多層膜を作製するのに、モニタ基板を何回か新しいものと交換しなければならないので、多層模作製の効率が低下するという問題があり、その問題を解決するために、多層膜を堆積する実基板を、直接、膜厚モニタリングの対象として膜厚制御を行いたいという要求が高まってきている。
【0005】
上記の多層膜の基本構造は、高屈折率膜(H膜)と低屈折率膜(L膜)とを交互に重ねて一体化したものであり、設計波長と呼ばれる光の波長λ、H膜の屈折率をn、L膜の屈折率をnとしたときに、H膜の膜厚およびL膜の膜厚が、それぞれ、λ/(4n)の整数倍およびλ/(4n)の整数倍に等しい、という条件を満足するものである。多くの場合に、上記の整数は1または2である。
【0006】
図10に、代表的な多層膜フィルタの構成例を示す。物理的膜厚に光学的屈折率を乗じた光学的膜厚が設計波長λの2分の1つまりλ/2(この場合に、上記の整数は2である)となるようなキャビティ層と呼ばれる層を、光学的膜厚がλ/4の高屈折率膜と低屈折率膜に相当する膜を交互に積層して形成した多層膜で上下を挟んだ構造となっている。
【0007】
図11に、基板に屈折率が1.47の石英基板を用い、高屈折率膜として屈折率が2.14のTaを、低屈折率膜とて屈折率が1.48のSiOを、キャビティ層に屈折率が1.48のSiOを用い、下層に高屈折率膜と低屈折率膜の対を21層、上層に高屈折率膜と低屈折率膜の対を21層、その間にキャビティ層を1層堆積した場合の透過率の波長依存性を示す。この場合の設計波長λは、1550nmとした。
【0008】
図11より、1350nmから1800nmの赤外光領域と、500nmから550nmの可視光領域の波長領域において非透過領域が存在することがわかる。それぞれの非透過領域には設計波長λに対応し、半値幅が約0.1nmの非常に狭い透過領域が存在する。
【0009】
上記の複合多層膜を実用に供する場合には、この半値幅が約0.1nmの非常に狭い透過領域を光学フィルタとして用いるのであるが、このように層数の非常に多い多層膜を成膜する場合には、成膜中の多層膜を直接観察し、高屈折率膜の膜厚と低屈折率膜の膜厚とを制御する方法が、成膜効率向上のために、極めて望ましいとされている。
【0010】
よく知られている多層膜の膜厚モニタ方法としては、単色測光法や二色測光法がある。しかし、いずれの方法も、層数が少ない場合には有効であるが、層数が数十以上と非常に多い場合には、精度よく膜厚をモニタすることは難しいという問題がある。
【0011】
以下に、単色測光法と二色測光法について簡単に説明する。
【0012】
単色測光法は、誘電体多層膜を基板上に形成してゆく過程で、光学的膜厚dn(ここに、dは物理的膜厚であり、nは膜の屈折率である)が、設計波長の4分の1(λ/4)の整数倍に相当するときに、透過率または反射率の時間変化が極値をとることを利用する。たとえば、高屈折率膜と低屈折率膜を組み合わせて多層膜を形成する場合、高屈折率膜の成膜中に設計波長λの光を照射し、透過率または反射率を観察しながら、その変化率が0になったときに成膜を停止する。このときの膜厚は、(λ/4)/(高屈折率膜の屈折率)となり、高屈折率膜にとってλ/4の光学的膜厚となる。続いて、低屈折率膜の成膜に切替えて、上記と同様に設計波長λの光を照射しながら透過率または反射率を観測し、その変化率が0になったときに成膜を停止する。このときの膜厚は、(λ/4)/(低屈折率膜の屈折率)となり、低屈折率膜にとってλ/4の光学的膜厚となる。この操作を順次繰り返すことによって、各屈折率膜にとってλ/4の多層膜を形成することができる。
【0013】
図12に、基板に屈折率が1.47の石英基板を用い、高屈折率膜として屈折率が2.14のTaを用い、低屈折率膜として屈折率が1.48のSiOを用い、高屈折率膜と低屈折率膜の対を26層堆積した場合の透過率の堆積膜厚依存性の計算結果を示す。ただし、設計波長λは1550nmで、設計波長に相当する波数κ(κ=1/λ、以下これを設計波数と呼ぶ)は6451cm−1で、波長分解能は赤外分光器の一般的な値の3nmとした。光学的膜厚がλであるTaの膜厚はλ/(Taの屈折率)すなわち724nmであり、光学的膜厚がλ/4であるTaの膜厚は181nmとなり、光学的膜厚がλであるSiOの膜厚はλ/(SiOの屈折率)すなわち1047nmであり、光学的膜厚がλ/4であるSiOの膜厚は261nmとなる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
図12からわかるように、設計波長λ、すなわち、設計波数κ=1/λにおける透過率は、堆積膜厚が増加するに従って、高屈折率膜の堆積で減少し、低屈折率膜の堆積で増加するという周期的変化を示すが、層数が増加するにつれて透過率は減少してゆき、10層以上で変化する割合が非常に小さくなる。赤外分光器の測定分解能の限界、および、赤外光領域における熱ノイズ(雑音)の影響により、極値を観測することできるのは最大値の1%程度であり、通常は、数%程度で信号/雑音比(S/N比)が取れなくなってしまう。そのため層数15以上の多層膜において、透過率が赤外分光器の安定測定範囲(図12に示す)の限界に近づき、λ/4の光学的膜厚を判定することが困難となる。このことは、1枚のモニタ基板で精度よくモニタリングできるのは、15層程度が限度であり、それ以上の多層膜を堆積するためには、膜厚モニタリング用基板を新しいものと交換する必要があることを示している。
【0015】
二色測光法においても、上記の単色測光法と同様に、層数の多い多層膜(たとえば、8層以上の多層膜)を堆積するためには、膜厚モニタリング用基板を新しいものと交換する必要がある。
【0016】
二色測光法においては、波長の逆数である波数に対して透過率または反射率の変化を示した場合、上記光学的膜厚がλ/4の整数倍のときに、分光スペクトルが、設計波数κを中心に対称となることを利用する。設計波数κを中心として、等間隔離れた任意の波数の対(たとえば、これらをκとκとし、これらに対応する波長をλとλとする)について観測すると、光学的膜厚がλ/4になるごとにλ、λの透過率または反射率は等しくなる。従って、観測している波長λとλの透過率または反射率が等しくなるたびに、堆積する膜種を切替えて・高屈折率膜と低屈折率膜を堆積することで、各屈折率膜にとってλ/4の多層膜を形成することができる。
【0017】
二色測光法において、基板を屈折率が1.47の石英とし、高屈折率膜として屈折率が2.15のTaを、低屈折率膜として屈折率が1.48のSiOを用いた場合のある波長の対の透過率差の膜厚依存性を図13に示す。ただし、設計波長λは1550nmで、設計波数κは6451cm−1で、波長分解能は3nmとした。ここでは波長の対を、図中に示すように、λ:2188nm(κ:4570cm−1)、λ:1200nm(κ:8333cm−1)とした。1層目から7層目までは、λ/4のときに透過率差((λの透過率)−(λの透過率))は周期的に変化し、透過率差が0となるのを観測することで膜厚を制御しながら多層膜を堆積することができる。しかしながら、7層目と8層目の堆積時に急激に透過率差が小さくなると同時に透過率差が0にならず、膜厚をモニタリングできなくなる。このことは、8層以上の多層膜を形成するためには、モニタ基板交換しながら層を堆積する必要があることを示している。
【0018】
通信用では、設計波長λは、光ファイバの伝送損失の関係で、主に1550nmを中心とした1260nmから1675nmの赤外光領域で設計されたデバイスを用いる。そのため単色測光法と二色測光法ともに赤外領域の測光で行われる。しかし、赤外分光器は、一般的に熱ノイズの影響が大きく1nm以下の波長分解能を得ることが困難である。より高い分解能が得られるグレーティングを用いた測光方法は、測定速度が遅く、かつ、駆動部を有するために長時間となる多層膜の堆積の間、安定して測光することは難しい。また、CCDを用いた測光方法では、測定速度は高速だが、波長分解能がCCDの素子分解能に支配されてしまい、1nm以下の波長分解能を実現することは難しい。あえて高精度でリアルタイムに測光できるシステムを作ったとしても、かなり高価なものになっしまう。さらに、単色光であるレーザ光を用いて、基板を透過または反射した光強度を用いた単色測光法や二色測光法を行っている例もある。しかし、単色測光法では、原理的に多層膜が多くなればなるほど信号強度は落ちてゆくので、多層膜が25層程度を越えるとモニタ基板を定期的に交換する必要がある。二色測光法でも、図13の様に定期的に信号が急激に小さくなり、多層膜の総数が増えるとさらに高い測定分解能を要求される。さらに、レーザ光を用いた場合、JIS C 6802(日本工業規格、レーザ製品の安全基準)やIEC 60820(レーザ製品の国際基準)に準拠する安全対策をする必要がある。
【0019】
設計波長λが赤外光波長領域にある多層膜を作製する際の、従来の単色測光法による膜厚モニタリングにおいて、上記のように、層数が増加するにつれて透過率は減少して行き、層数15以上の多層膜において、透過率が赤外分光器の安定測定範囲(図12に示す)の限界に近づき、λ/4の光学的膜厚を判定することが困難となる。このことは、1枚のモニタ基板で精度よくモニタリングできるのは、15層程度が限界であり、それ以上の多層膜を堆積するためには、膜厚モニタリング用モニタ基板を新しいものと交換する必要があることを意味する。この様なモニタ基板の交換は、多層膜作製効率の低下を招くので、多層膜作成上の問題となり、この解決が重要な課題となっている。
【0020】
また、設計波長が赤外光領域にある多層膜を作製する際の、従来の二色測光法による膜厚モニタリングにおいては、たとえば図13に示したように、層数が増加するにつれて減衰域の両端付近での透過率の変化はほとんどなくなり、8層以上の層数では、この方式で膜厚を制御することは難しく、これ以上の多層膜を形成するためには、モニタ基板を交換しながら、層を堆積する必要があることがわかり、単色測光法の場合と同様に、多層膜作製効率の低下を招くので、多層膜作成上の問題となる。
【0021】
本発明は、これら従来技術におけるモニタ基板交換の問題点や膜厚の均一性の高精度化の課題を解決し、λを設計波長とする多層膜の光学的膜厚をλ/4の整数倍に高精度で制御することを可能とする膜厚モニタリング装置および膜厚モニタリング方法を実現することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明においては、請求項1に記載のように、
基板上に形成された波長λを設計波長とする多層膜の上に重ねて形成された誘電体膜の膜厚をモニタリングする膜厚モニタリング装置であって、光源と、前記光源からの光を前記基板と前記多層膜と前記誘電体膜との合体物に照射する光照射部と、前記照射によって生じる前記合体物からの透過光または反射光を入力とし前記合体物の分光スペクトルを出力する光測定部と、前記光測定部の出力である前記分光スペクトルのデータから、前記設計波長λに対応する設計波数κを中心として対称の関係にある低波数側波数領域と高波数側波数領域とにおける前記分光スペクトルの値をそれぞれの前記波数領域において積分して得る2つの積分値の差を特徴量差として求め、前記特徴量差を用いて、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判別する演算処理手段とを有することを特徴とする膜厚モニタリング装置を構成する。
【0023】
また、本発明においては、請求項2に記載のように、
基板上に形成された波長λを設計波長とする多層膜の上に重ねて形成された誘電体膜の膜厚をモニタリングする膜厚モニタリング方法であって、前記基板と前記多層膜と前記誘電体膜との合体物の分光スペクトルを測定し、前記設計波長λに対応する設計波数κを中心として対称の関係にある低波数側波数領域と高波数側波数領域とにおける前記分光スペクトルの値をそれぞれの前記波数領域において積分して得る2つの積分値の差を特徴量差として求め、前記特徴量差を用いて、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判別することを特徴とする膜厚モニタリング方法を構成する。
【0024】
また、本発明においては、請求項3に記載のように、
波数κにおける前記合体物の透過率をT(κ)とし、前記設計波数κよりも波数差xだけ大なる波数κ+xにおける透過率T(κ+x)と、前記設計波数κよりも波数差xだけ小なる波数κ−xにおける透過率T(κ−x)との差を△T(x)とし、δκおよびΔκを0≦δκ<Δκを満足する定数とし、△T(x)を、区間 δκ≦x≦Δκ内で、xに関して積分して得る積分値Fを前記特徴量差とし、Fが測定と計算に起因する誤差の範囲内において0に等しいか否かによって、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判断することを特徴とする請求項2に記載の膜厚モニタリング方法を構成する。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、モニタ基板交換の問題点や膜厚や膜質の均一性の高精度化の課題を解決し、λを設計波長とする多層膜の光学的膜厚をλ/4の整数倍に制御することを可能とする膜厚モニタリング装置および膜厚モニタリング方法を実現することができる。
【0026】
本発明に係わる膜厚モニタリング装置および方法が、従来の単色測光法と二色測光法と大きく異なる点は、膜厚モニタリングに用いる光の波長と演算である。
すなわち、従来の単色測光法においては設計波長λを用いているのに対し、本発明においては、設計波長λに対応する設計波数κを中心に適度な波数だけ離れた対称となる波数領域における透過光または反射光の分光スペクトルの、低波数側のスペクトルと高波数側のスペクトルの特徴の差を表す特徴量差Fを算出し、この特徴量差を膜厚モニタリングに用いる。
【0027】
また、従来の二色測光法においては設計波長を挟んだ固定された2つの波長対を用いているのに対し、本発明においては、設計波長λに対応する設計波数κを中心に適度な波数だけ離れた対称となる波数領域における透過光または反射光の分光スペクトルの、低波数側のスペクトルと高波数側のスペクトルの特徴の差を表す特徴量差Fを算出し、この特徴量差を膜厚モニタリングに用いる。
【0028】
本発明においては、基板上に形成された波長λを設計波長とする多層膜の上に重ねて形成された誘電体膜の膜厚をモニタリングする膜厚モニタリング装置であって、光源と、前記光源からの、光を前記基板と前記多層膜と前記誘電体膜との合体物に照射する光照射部と、前記照射によって生じる前記合体物からの、透過光または反射光の分光スペクトルを測定する光測定部と、前記分光スペクトルのデータから、前記設計波長λに対応する設計波数κを中心に、適度な波数だけ離れた対称となる波数領域における低波数側のスペクトルと高波数側のスペクトルの透過率または反射率の積分値の差を用いて、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判別する演算処理手段とを有することを特徴とする膜厚モニタリング装置を構成する。ここで、「誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否か」は、その誘電体膜の光学的膜厚(屈折率×膜厚)がλ/4の整数倍に、測定と計算に起因する誤算の範囲内で、等しいか否かを意味する。
【0029】
また、本発明においては、基板上に形成された波長λを設計波長とする多層膜の上に重ねて形成された誘電体膜の膜厚をモニタリングする膜厚モニタリング方法であって、前記基板と前記多層膜と前記誘電体膜との合体物の分光スペクトルを測定し、前記設計波長λに対応する設計波数κを中心として対称の関係にある低波数側波数領域と高波数側波数領域とにおける前記分光スペクトルの値をそれぞれの前記波数領域において積分して得る2つの積分値の差を特徴量差として求め、前記特徴量差を用いて、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判別することを特徴とする膜厚モニタリング方法を構成する。この、本発明に係る膜厚モニタリング方法は、上記の、本発明に係る膜厚モニタリング装置によって実行することができる。
【0030】
上記の光源としては、キセノンランプやタングステンランプ等が用いられる。
上記の、光源からの光を上記合体物に照射する光照射部としては、光ファイバを用いることができる。光ファイバは、上記合体物からの透過光または反射光を上記の光測定部に導く手段としても用いられる。
【0031】
上記の光測定部の主体は赤外分光器である。この分光器は、上記合体物の赤外光における分光スペクトル(分光器への入力が透過光である場合には分光透過スペクトル、入力が反射光である場合には分光反射スペクトル)を測定する。
【0032】
上記の演算処理手段としては、汎用のパーソナルコンピュータ等の演算器を用いることができる。この演算処理手段によって、上記の光測定部の出力である、分光スペクトルのデータは、あらかじめ取得し記憶されている参照データで規格化されて、透過率または反射率の分光スペクトルデータに変換される。ただし、前記の分光器が透過率または反射率の分光スペクトルを出力する場合には、この変換は不要である。
【0033】
本発明によれば、従来技術のように固定波長の観測による膜厚モニタリングではなく、分光スペクトルの特徴量差を用いて、単層膜および多層膜の膜厚モニタリングを行うことができる。この場合、層数の多い多層膜だけでなく、単層膜を含む層数が少ない多層膜の膜厚モニタリングを高精度で行うことができる。
【0034】
【実施例】
本発明に係わる膜厚モニタリング装置は、単層膜や多層膜の成膜装置内に組み込まれて使用された場合に、その効果を発揮する。
【0035】
この場合に、成膜装置内において、基板上に波長λを設計波長とする多層膜が形成される成膜工程中、上記の誘電体膜に該当する最上層の高屈折率膜(H層)または低屈折率膜(L層)およびキャビティ層(C層)の膜厚が膜厚モニタリング装置によってモニタリングされ、その膜厚が適当であると判断された時点で、その膜の成膜は停止され、他の膜種の成膜が開始されるか、または、多層膜成膜工程が終了する。
【0036】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、実施例は一つの例示であって、本発明の精神を逸脱しない範囲で主旨の変更あるいは改良を行い得ることは言及するまでもない。
【0037】
[実施例1]
図1に、本発明の第一の実施例を示す。本実施例において、本発明に係る膜厚モニタリング装置は成膜装置1と組み合わせて設置される。成膜装置1は、基板3上に膜物質をスパッタするECRスパッタ源4を有し、これによって、基板3上に多層膜の成膜を行う。本発明に係る膜厚モニタリング装置は、光源5と、光源5が発する光を成膜装置1に導く光ファイバ6と、光ファイバ6が出射する光を成膜室内に導入し、基板3に照射するための真空封止窓7と、基板3およびその上の多層膜を透過した光を分光器10に導くための真空封止窓8および光ファイバ9と、基板3およびその上の多層膜を透過した光を入力とし基板3およびその上の多層膜の合体物の分光透過スペクトルを出力する分光器10と、前記多層膜の設計波長λに対応する設計波数κを対称の中心として位置する低波数側波数領域と高波数側波数領域との間の分光スペクトル値の各波数領域内での積分値の差である特徴量差を算出し、前記特徴量差を用いて、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判別する演算処理手段である演算器11とを構成要素とする。光ファイバ6と真空射止窓7とが請求項1に記載の「光照射部」を構成し、基板3およびその上の多層膜の合体物が請求項1に記載の「合体物」に該当し、分光器10が請求項1に記載の「光測定部」に該当する。
【0038】
成膜手段としては、電子サイクロトロン共鳴スパッタ(ECRスパッタ)装置4を図に示しているが、言及するまでもなく、他の成膜装置、例えば、高周波バイアススパッタ装置(RFバイアススパッタ装置)、マグネトロンスパッタ装置、抵抗加熱蒸着装置、プラズマ化学気相堆積装置(プラズマCVD装置)、分子線ビーム成長装置(MBE装置)、原子層成長装置(ALE装置およびALD装置)、有機金属熱分解堆積装置(MOCVD装置)等を用いても良い。
【0039】
本実施例では、多層膜を堆積する基板3での透過スペクトルを測定できるように、基板3に対して斜めにECRスパッタ源4を配置してある。基板3上での膜の均一性を向上するために基板3を成膜中に回転できる構造とした。
【0040】
成膜工程中、成膜装置1の成膜室2内において、基板3上にECRスパッタ源4からのスパッタによって誘電体膜(H膜、L膜)が形成され、光源5からの光は、光ファイバ6を通り、成膜装置1の真空封止窓7を通って、基板3に垂直に入射し、基板3を透過した光は真空封止窓8を通り、光ファイバ9を通って、分光器10に入り、分光器10によって透過光の各波長における強度が計測され、その測定値から上記合体物の分光スペクトル(この場合には分光透過スペクトル)が求められ、出力される。分光器10の出力である透過スペクトルのデータが演算器11に入力される。この場合に、成膜中のH層またはL層が請求項1および2に記載の「誘電体膜」に該当する。
【0041】
光源5としては、本実施例においては、ハロゲンランプを用いているが、赤外領域に対する発光強度の安定性がある程度得られ、安価に光源を得ることができる。また、ハロゲンランプよりも高い発光強度が得られるキセノンランプなども使用できる。
【0042】
本実施例では、光源5からの光を照射するために、また、透過光を分光器10に導くために、光ファイバ6、9を用いているが、反射ミラーやハーフミラー等を用いた光学系を用いてもよい。
【0043】
分光器10からの透過スペクトルのデータは、ANSI標準のI/Oバスである小規模コンピュータシステムインターフェイス(SCSI)を使用して演算器11にデータ転送を行った。演算器11としては、汎用のパーソナルコンピュータを用いているが、専用の演算回路を有する装置を作製して使用しても良い。また、インターフェイスもSCSIに限定するものではなく、シリアル、USB、IEEE1394、光ファイバーリンク等の方法でも良い。転送されたデータは、演算器11上で成膜前に取得した参照データで規格化され、これによって、前記合体物の透過率のスペクトルが得られる。ただし、分光器10が透過率スペクトルを算出する機能を有する場合には、このような規格化は必要ない。
【0044】
演算器11は、さらに、その透過率スペクトルを用いて、差分法や積分法などの数値処理を行うことにより、成膜中の膜の膜厚が、多層膜の構成要素である膜の膜厚として適当であるか否かを判別し、その判別結果によって膜厚制御(成膜を続けるか、膜種を切替えるか、等)を行うための信号を出力する。
【0045】
本実施例における膜厚モニタリングの動作の一例を以下に説明する。
【0046】
図5に、基板3を屈折率が1.47の石英とし、高屈折率膜として屈折率が2.14のTa、低屈折率膜として屈折率が1.48のSiOを用い、下層に高屈折率膜と低屈折率膜の対を21層、上層に高屈折率膜と低屈折率膜の対を21層、その間にキャビティ層1層堆積した場合の設計波長λに当たる波数付近の透過率の波長依存性を示す。ただし、設計波長λは1550nm(設計波数κは6451cm−1)である。測定に使用した光の波長範囲は、設計波長λを含む1100nmから2500nmの範囲であり、波長分解能は3nmとした。図の横軸は波数で示した。本実施例では、高屈折率膜としてTa、低屈折率膜としてSiOを用いているが、他の膜種の組み合わせても同様の効果が得られる。
【0047】
光学的膜厚λのTaの膜厚は、724nmであり、光学的膜厚λ/4に相当する膜厚は181nmとなり、光学的膜厚λのSiOの膜厚は、1047nmであり、光学的膜厚λ/4に相当する膜厚は261nmとなる。
【0048】
図5より、多層膜を成膜してゆくと、1100nmから2500nmの赤外光領域の波長に対応する波数において設計波数を含んだ非透過領域(ただし、この非透過領域内の設計波数に対応する波長が光フィルタとして用いる透過領域となる)が存在し、その両側に対称的にサブピークが形成されていることがわかる。薄膜の光学膜厚がλ/4の整数倍をなすときにみられる設計波長κを中心とする対称性は、次の光の原理式より導かれる。
【0049】
図6に示す模式図のように、屈折率nの基板上に、透明な屈折率nの光学媒質膜をdの膜厚で形成した場合を考える。この光学媒質膜に光が入射したときの境界面での反射を考慮すると、下記(式1)のような行列の等式で特性マトリックス(M)を定義することができる。ただし、入射する光の波長はλとし、入射角は入射面の法線に対しθであり、r=(n)・cos(θ)、iは虚数単位を示すものである。
【0050】
【数1】
Figure 0003737442
ここに、βは
β=2π(n)(d)・cos(θ)/λ (式2)
であり、(n)(d)が光学的膜厚に相当する。
【0051】
この特性マトリックス(M)を用いれば、反射率係数および透過率係数を求めることができる。
【0052】
さらに、(式2)より、βは入射する波長λの逆数、つまり、波数κの関数であることがわかる。今、波長λの光が、膜面に対して垂直に入射し入射角θが0のときを考える。(n)・(d)の積が、光の波長λの1/4の整数倍(λ/4やλ/2など)の場合に、βはπ/2の整数倍となり、cos(β)やsin(β)の絶対値が0または1となり、結果的に大きな反射率や大きな透過率が得られる条件となる。この条件下で、(n)・(d)=λ/4となるλを設計波長λとし、λに相当する波数を設計波数κとすることができる。(式2)より、βは、波長λの逆数つまり波数κの関数であるため、(n)・(d)/λが1となる設計波長λ(設計波数κ)を中心とした、透過率または反射率の対称性がみられることになる。
【0053】
いま、図7の様に、設計波数κを中心に定数△κだけ離れた対称となる2波数までの領域を考える。これらの2波数のうち低波数側をκとし、高波数側をκとすると、κとκ、κには、次のような関係がある。
【0054】
κ−κ = κ−κ = △κ (式3)
△κの値として、任意の正の値を用いてよいが、κからκまでの波数領域における誘電体膜の屈折率が一定であると見なせるような値であることが好ましい。また、△κの値は、1つの誘電体膜の膜厚をモニタリングする過程においては定数でなければならないが、すでに形成されている多層膜の層数に応じて、適宜選択されたものであってもよい。
【0055】
図5の様に、ある層の薄膜の光学膜厚がλ/4の整数倍をなすときには、分光透過スペクトルは、設計波数κに対して対称になる。しかし、多層膜のある層を成膜している途中では、膜厚がλ/4の整数倍にならないために、図7の様に、上記スペクトルは非対称になってしまう。この波数に対する透過率の関係は、波数に対するある特徴の関係とみることができる。
【0056】
図7に示すように、低波数側の波形をκで折り返し、高波数側の波形と重ねると、それぞれの波数において低波数側の波形と高波数側の波形の差を求めることができる。T(κ)を波数κにおける透過率とし、低波数側の特徴量をF、高波数側の特徴量をF、さらにFとFとの差をFとすると、F、F及びFは波数領域 κ≦x≦κ 内のxの微小変位dxを用いて、それぞれ次式で表すことができる。
【0057】
【数2】
Figure 0003737442
(式4)で示すFは、設計波数κを中心に△κだけ離れた対称となる領域において低波数側の特徴と高波数側の特徴の差を表しているとも言える。そのため、Fをxに対する特徴量差と呼ぶことにする。
【0058】
特徴量差Fを求めるには、様々な方法がある。その一例として、次式のように透過率差△T(κ)を求めて積分する方法がある。すなわち、
△T(x)= T(κ+x)− T(κ−x) (式5)
で表される△T(x)をxに対して、波数領域 0≦x≦△κ内で積分することによって、
【0059】
【数3】
Figure 0003737442
として、特徴量差Fを求めることができる。ただし、(式6)においては、積分値を、実際には、有限複数個の微小長さ△xの区間についての総和として求める意味において、積分記号の代りに総和記号(Σ)を用いている。(式6)は(式4)から容易に導くことができる。
【0060】
この特徴量差Fは、次式のように、図7に示した領域F1’、F2’、F3’、F4’、F5’、F6’、F7’の面積(それぞれ、領域と同じ記号で表す)の和としても表現できる。すなわち、
F = F1'+F2'+F3'+F4'+F5'+F6'+F7' (式7)
ただし、領域F1’、F3’、F4’、F6’は、△T(x)が正である領域であり、これらの領域の面積は正であるとし、領域F2’、F5’、F7’は、△T(x)が負となる領域であり、これらの領域の面積は負であるとする。このような特徴量差Fの計算法は、(式6)において、積分(実際には総和)の下限を、0ではなく、0<δκ<△κを満足する、或る定数δκで置き換えて計算すること、すなわち、積分区間をδκ≦x≦△κとして積分計算を行うことに相当する。
【0061】
上記の定数δκは、波数差範囲 0≦x≦δκ内で△T(x)=0であるように選ばれているので、(式7)で計算されるFの値は、(式6)で計算されるFの値に等しくなる。
【0062】
しかしながら、本発明において有効に用いられる特徴量差Fは、このようにして計算されるものに限らず、単に0<δκ<△κを満足する定数δκを総和の下限として、(式6)によって計算されるものであってもよい。
【0063】
さらに、特徴量差Fを(式6)によって算出するための積分区間は複数個であってもよい。たとえば、上記の領域F2’、F5’、F7’に対応する波数差xの区間を、それぞれ、δκ≦x≦△κ、δκ≦x≦△κ、δκ≦x≦△κとし、Fの値として、△T(x)をこれらの区間において積分して得る値の総和を用いてもよい。このように、複数の積分区間を適当に選ぶことによって、分光スペクトルの非対称性がFに強く現われるようにし、膜厚モニタリングの精度を高めることができる。このような、複数の積分区間を用いて(式6)によってFの値を算出する方法は、請求項1および2において、低波数側波数領域と高波数側波数領域とが、それぞれ、複数の積分区間からなる場合の特徴量差の算出方法に相当する。
【0064】
上記の積分区間の上限および下限(δκ、△κなど)は、1つの誘電体膜の膜厚をモニタリングする過程においては定数でなければならないが、すでに形成されている多層膜の層数に応じて、適宜選択されたものであってもよい。
【0065】
特徴量差Fは、図5の様に、ある層の光学的膜厚がλ/4の整数倍をなすときには、0となる。すなわち、
F = 0 (式8)
が成り立つ。
【0066】
多層膜のある層を成膜している途中で、その層の光学的膜厚がλ/4の整数倍をなしていないときには、0に等しくない。すなわち、
F ≠ 0 (式9)
が成り立つ。
【0067】
したがって、成膜を行いながら、特徴量差Fを常に計算し、(式8)のように、特徴量差Fが、測定と計算に起因する誤差の範囲内において0に等しくなったときに成膜を停止すれば、膜厚をλ/4の整数倍、すなわち、多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当な値に制御することが可能となる。
【0068】
このようにして、本発明に係わる膜厚モニタリング装置および方法を用いて、各層の膜厚を正確に制御しながら、多層膜を作製することができる。この特徴量差Fは、誘電体膜の膜厚により大きく変化するために、S/N比よく膜厚を制御することができる。
【0069】
図8に、基板3を屈折率が1.47の石英とし、高屈折率膜として屈折率が2.14のTa、低屈折率膜として屈折率が1.48のSiOを用い、下層に高屈折率膜と低屈折率膜の対を21層、低屈折率膜のキャビティ層を1層、上層に高屈折率膜と低屈折率膜の対を20層成膜し、その上に1層を堆積するときの(式7)から求めた特徴量差Fと成膜堆積度(光学的膜厚がλ/4のときに1とする)との関係を示す。ただし、設計波長λは1550nm(設計波数κは6451cm−1)である。特徴量差Fを求めた波数領域は、0≦設計波数κと波数との差の絶対値≦1800cm−1であり、波長分解能は3nmとした。図より、はじめ0であった特徴量差Fは、膜厚が増加するに従って増加し、半分程度膜厚が堆積するころから減少し、λ/4で0となる。このように、特徴量差F=0で成膜を停止することで、膜厚をλ/4の整数倍にできることがわかる。
【0070】
本実施例では、屈折率に波長依存性が無いものとして示したが、実際には、誘電体の屈折率には波長依存性が存在し、その程度によっては、設計波長λからはずれた多層膜が形成される場合がある。このような場合には、あらかじめ誘電体の屈折率の波長依存性を分光エリプソメータ等で測定し、その数値を基に、シミュレーションによる事前比較を実施して、その結果を実際の成膜停止時点の決定に反映することで、設計波長λの多層膜を得ることができる。
【0071】
分光スペクトルの形状は、多層膜を積んでゆくにしたがい不規則に変化してゆく。そのため、通常の二色測光法のように波長が固定されている場合は、信号の変化が非常に小さくなる層が存在し、赤外分光器の波長分解能と測定感度が大きくないために、全層にわたって精度良く測定することはできない。これに対して、本発明のように、特徴量差Fを用いれば、そのような困難無しに、精度の高い膜厚制御か可能となる。
【0072】
また、本実施例に示した方法は、設計波数κを中心とする低波数側と高波数側の特徴の差をみることから、多層成膜の初期堆積段階からでも精度のよい膜厚モニタリングが可能となる。
【0073】
本実施例では、特徴量差Fの算出において、高波数側の波形から低波数側の波形を引くような形式をとっていたが、低波数側の波形から高波数側の波数を引くようにしても、特徴量差Fの符号が変わるだけで、効果は変化しない。
【0074】
図2に、透過光の分光スペクトルを規格化して透過率スペクトルに変換するための参照光を成膜途中で定期的に取得できるように、光源からの光を2分岐光ファイバ12と切替器13により直接分光器に取り込める構成を示す。この構成を用いることで長時間の成膜を行う場合でも、光源の出力を定期的に測定して、その変動の影響を除去する構成とすることができるため、より正確な分光透過率の測定が可能となる。
【0075】
[実施例2]
図3に、反射光を用いる、本発明の実施例を示す。本実施例は、基板3上に成膜を行うECRスパッタ源4を構成要素とする成膜装置1、基板3に光を投光するための光源5、光投光用光ファイバ6と光を成膜室1内に導入するための真空封止用窓7を含む投光部、多層膜を堆積する基体となり適当な反射率を示す基板3と、基板3で反射した光を分光器10に導くためのハーフミラー14と光ファイバ9を含む受光部と、受光部で受けた光を分光反射率スペクトルとして測光する光測定部である分光器10と、分光反射率スペクトルから特徴量差Fを計算する演算処理をする演算処理手段である演算器11とからなる。
【0076】
本実施例では、反射測定系のため、不透明基板3上への成膜でも膜厚モニタリングが可能となる。
【0077】
基板3としてシリコン基板を用い、そのシリコン基板上に、高屈折率膜として屈折率が2.14のTa、低屈折率膜として屈折率が1.48のSiOを用い、下層に高屈折率膜と低屈折率膜の対を21層、上層に高屈折率膜と低屈折率膜の対を21層、その間にキャビティ層を1層堆積した場合を例にして、本発明の膜厚モニタリング動作を説明する。
【0078】
本実施例では、高屈折率膜としてTa、低屈折率膜としてSiOを用いているが、他の膜種の組み合わせでも同様の効果が得られる。
【0079】
一般に、ある波数κにおける反射率R(κ)は、透過率T(κ)と次のような関係がある。
【0080】
T(κ)=1−R(κ) (式10)
反射率R(κ)は基板3とその上の多層膜との合体物からの反射光から求められる。(式10)で求められるT(κ)について波数κにおける透過率の波長依存性を示すと図5になる(ただし、図の横軸は波数とする)。透過率T(κ)が求められれば、(式4)より特徴量差Fを求めて、実施例1と同様な手順で膜厚の制御が可能となる。
【0081】
なお、T(κ)をR(κ)で置き換えて特徴量差Fを算出しても、Fの符号が変わるだけであるから、本発明の目的は上記と同様に達成される。
【0082】
分光スペクトルの形状は、多層膜を積んでゆくにしたがい不規則に変化してゆく。そのため、通常の二色測光法のように波長が固定されている場合は、信号の変化が非常に小さくなる層が存在し、赤外分光器の波長分解能と測定感度が大きくないために、全層にわたって精度良く測定することはできない。これに対して、本発明のように、特徴量差Fを用いれば、そのような困難無しに、精度の高い膜厚制御か可能となる。
【0083】
また、本実施例に示した方法は、設計波数κを中心とする低波数側と高波数側の特徴の差をみることから、多層成膜の初期堆積段階からでも精度のよい膜厚モニタリングが可能となる。
【0084】
図4に、分光スペクトルを規格化して反射率分光スペクトルに変換するための参照光を成膜途中で定期的に取得できるように、光源からの光を2分岐光ファイバ12と切替器13により直接分光器に取り込める構成を示す。この構成を用いることで長時間の成膜を行う場合でも、光源の出力を定期的に測定して、その変動の影響を除去する構成とすることができるため、より正確な測定が可能となる。
【0085】
[実施例3]
実施例1と2で示した方法では、分光器で測定した透過率や反射率に様々なノイズが載っており、このノイズが膜厚モニタリングの精度を落とす可能性がある。そのために、測定した信号光に対して、平滑化をかけてノイズの影響を低減することによって膜厚モニタリングの精度を向上させる方法が知られている。この平滑化の方法によっては、得られた信号の特徴量差Fをノイズに比べて顕著にし、モニタリング精度を向上させることが可能である。これは、平滑化によって信号を抽象化して特徴を顕著化させることができるからである。
【0086】
図9は、図7で示した信号に、加重平均の平滑化を実施したものである。図に見られるように、平滑化をかけることで、測定時のノイズを除去することができた。
【0087】
以上、説明したように、本発明は、設計波数κを中心に、適度な波数だけ離れて対称となる2つの波数領域において低波数側の特徴と高波数側の特徴の差を表す特徴量差Fを算出し、この特徴量差Fが0となる時を検知して、成膜を停止することで、膜厚をλ/4の整数倍に制御でき、非常に簡便に、層数が少ない多層膜から層数が多い多層膜までも、膜厚を正確にモニタリングすることができる。また、直接、成膜基板を測定対象とすることができるため、モニタ基板の交換が不要で、迅速に精度よく多層膜を形成することができる。
【0088】
【発明の効果】
本発明の実施により、λを設計波長とする多層膜の光学的膜厚をλ/4の整数倍に高精度で制御することを可能とするモニタリング装置および方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の構成を示す図である。
【図2】実施例1において、参照光を取得できるように、2分岐光ファイバと切換器を用いた構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例2の構成を示す図である。
【図4】実施例2において、参照光を取得できるように、2分岐光ファイバと切換器を用いた構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例1で、膜厚がλ/4となる場合の波数の透過率の波数依存性を示す図である。
【図6】多層膜フィルタ設計の原理を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例1で、膜厚がλ/4とならない場合の波数の透過率の波数依存性を示す図である。
【図8】本発明での設計波数を中心とした特徴量差Fの膜厚依存性を示す図である。
【図9】本発明の実施例3で、膜厚がλ/4とならない場合の波数の透過率の波数依存性を示す図である。
【図10】波長多重通信用の多層膜フィルタの構成例を示す図である。
【図11】波長多重通信用の多層膜フィルタの透過スペクトルを示す図である。
【図12】既存の単色測光法での透過率の膜厚依存性を示す図である。
【図13】既存の二色測光法での透過率の膜厚依存性を示す図である。
【符号の説明】
1…成膜装置、2…成膜室、3…基板、4…ECRスパッタ源、5…光源、6…光ファイバ、7、8…真空封止窓、9…光ファイバ、10…分光器、11…演算器、12…2分岐光ファイバ、13…切替器、14…ハーフミラー。

Claims (3)

  1. 基板上に形成された波長λを設計波長とする多層膜の上に重ねて形成された誘電体膜の膜厚をモニタリングする膜厚モニタリング装置であって、光源と、前記光源からの光を前記基板と前記多層膜と前記誘電体膜との合体物に照射する光照射部と、前記照射によって生じる前記合体物からの透過光または反射光を入力とし前記合体物の分光スペクトルを出力する光測定部と、前記光測定部の出力である前記分光スペクトルのデータから、前記設計波長λに対応する設計波数κを中心として対称の関係にある低波数側波数領域と高波数側波数領域とにおける前記分光スペクトルの値をそれぞれの前記波数領域において積分して得る2つの積分値の差を特徴量差として求め、前記特徴量差を用いて、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判別する演算処理手段とを有することを特徴とする膜厚モニタリング装置。
  2. 基板上に形成された波長λを設計波長とする多層膜の上に重ねて形成された誘電体膜の膜厚をモニタリングする膜厚モニタリング方法であって、前記基板と前記多層膜と前記誘電体膜との合体物の分光スペクトルを測定し、前記設計波長λに対応する設計波数κを中心として対称の関係にある低波数側波数領域と高波数側波数領域とにおける前記分光スペクトルの値をそれぞれの前記波数領域において積分して得る2つの積分値の差を特徴量差として求め、前記特徴量差を用いて、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判別することを特徴とする膜厚モニタリング方法。
  3. 波数κにおける前記合体物の透過率をT(κ)とし、前記設計波数κよりも波数差xだけ大なる波数κ+xにおける透過率T(κ+x)と、前記設計波数κよりも波数差xだけ小なる波数κ−xにおける透過率T(κ−x)との差を△T(x)とし、δκおよびΔκを0≦δκ<Δκを満足する定数とし、△T(x)を、区間 δκ≦x≦Δκ内で、xに関して積分して得る積分値Fを前記特徴量差とし、Fが測定と計算に起因する誤差の範囲内において0に等しいか否かによって、前記誘電体膜の膜厚が、波長λを設計波長とする多層膜の構成要素である誘電体膜の膜厚として適当であるか否かを判断することを特徴とする請求項2に記載の膜厚モニタリング方法。
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