JP3737157B2 - 光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸、すなわちスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸[(2S,4S)-4-hydroxyglutamic acid]またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸[(2S,4R)-4-hydroxyglutamic acid]の製造法に関する。
【0002】
光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸は、グルタミンシンターゼ[Khim-Farm. Zh., 18, 655(1984)]やシナプス前顆粒(Plesynaptic Vesicle)のグルタミン酸取り込みを阻害する作用[Neurochem. Res., 18,79(1993)]が知られており、これらの酵素や器官の研究用試薬として有用である。また、この作用に基づく医薬品として有用である。
【0003】
【従来の技術】
従来の光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法としては、エチル−α−アセトキシ−β−クロロプロピオン酸とエチルアセトアミドシアン酸から化学合成したγ−ヒドロキシグルタミン酸の4種異性体混合物から分離する方法、DL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸とアンモニアにNADPH存在下哺乳動物の肝臓由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼを作用させ合成したスレオ/エリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の混合物から分離する方法[ バイオケミ・バイオフィズ・アクタ(Biochem. Biophis. Acta. ), 77, 133(1963)]、クサキョウチクトウ(Phlox decussata)からスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸[(2S,4S)-4-hydroxyglutamic acid]を抽出する方法[メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology), 17 partB, 277]、L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸とシステイン・スルフィン酸にトランスアミナーゼを作用させスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を合成する方法[テトラヘドロン レター(Tetrahedron Lett.), 28, 1277 (1987)] 、Δ1-pyrroline-3-hydroxy-5-carboxylate に牛肝臓由来のΔ1-pyrroline dehydrogenaseを作用させて合成する方法[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J. B. C.), 235, 3504(1960)] が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法は、(1) 原料が高価である、(2) 異性体の分離工程を要し割高になる、(3) 収量が低い、などの欠点があるため、工業的により有利な製造法の開発が求められている。本発明の目的は工業的に有利に光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、アミノ基供与体存在下、ピルビン酸とグリオキシル酸から光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成する活性を有する生体触媒(以下、生体触媒Iという。)、アミノ基供与体、ピルビン酸およびグリオキシル酸を水性媒体中に存在させることにより、水性媒体中に光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成させ、生成した光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を該水性媒体中より採取することを特徴とする光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法(以下、製造法Iという。)およびアミノ基供与体存在下、光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸に変換する活性を有する生体触媒(以下、生体触媒IIという。)、アミノ基供与体および光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を水性媒体中に存在させることにより、水性媒体中に光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成させ、生成した光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を該水性媒体中より採取することを特徴とする光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法(以下、製造法IIという。)を提供することができる。
【0006】
なお、光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸は、スレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸[(2S,4S)-4-hydroxyglutamic acid]またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸[(2S,4R)-4-hydroxyglutamic acid]のことをいい、光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸は、L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸[(S)-hydroxy-2-ketoglutaric acid] またはD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸[(R)-hydroxy-2-ketoglutaric acid] のことをいう。
【0007】
さらに詳しくは、生体触媒I、アミノ基供与体、ピルビン酸およびグリオキシル酸を水性媒体中に存在させることにより、水性媒体中にスレオ−またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成させ、生成したスレオ−またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を該水性媒体中より採取することを特徴とするスレオ−またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法、および生体触媒II、アミノ基供与体およびL−またはD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を水性媒体中に存在させることにより、水性媒体中にスレオ−またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成させ、生成したスレオ−またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を該水性媒体中より採取することを特徴とするスレオ−またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法を提供することができる。
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
製造法Iにおいて、生体触媒I、アミノ基供与体、ピルビン酸およびグリオキシル酸を水性媒体中に存在させることにより、水性媒体中にスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成させ、生成したスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を該水性媒体中より採取することを特徴とするスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法を以下、製造法I−(1) といい、生体触媒I、アミノ基供与体、ピルビン酸およびグリオキシル酸を水性媒体中に存在させることにより、水性媒体中にエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成させ、生成したエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を該水性媒体中より採取することを特徴とするエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法を以下、製造法I−(2) という。
【0009】
製造法Iで用いられる生体触媒Iとしては、微生物の培養物、菌体、菌体処理物、精製酵素または粗酵素のいずれでも用いることができる。該微生物としては、アミノ基供与体存在下、ピルビン酸とグリオキシル酸から光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成する活性を有する微生物であればいずれの微生物でも用いることができる。
【0010】
このような微生物として、シュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属、モルガネラ属、エンテロバクター属、アースロバクター属、カウロバクター属、ミクロバクテリウム属、クロトバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、クラビバクター属またはバチルス属に属する微生物あるいはこれら微生物の突然変異体もしくは誘導体等があげられる。
【0011】
製造法I−(1) において、生体触媒Iとして用いられる微生物として好ましくは、シュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属、モルガネラ属、エンテロバクター属、アースロバクター属、カウロバクター属、ミクロバクテリウム属、クロトバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属またはクラビバクター属に属し、アミノ基供与体存在下、ピルビン酸とグリオキシル酸からスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成する能力を有する微生物をあげることができる。
【0012】
具体的には、シュウドモナス プチダ(Pseudomonas putida)ATCC795株、同ATCC4359株、シュウドモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)ATCC8062株、シュウドモナス サッカロフィラ(Pseudomonas saccharophila)ATCC15946株、シュウドモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)ATCC15452 株、シュウドモナス タエトロレンス(Pseudomonas taetorolens)ATCC17466株、パラコッカス デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)ATCC19367株、プロビデンシア ルスチギアニ(Providencia rustigianii)ATCC13159株、リゾビウム メリロティ(Rhizobium meliloti)FERM BP-4582株、モルガネラ モルガニ(Morganella morganii)ATCC25830株、エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)ATCC13048株、アースロバクター クリスタロポイエテス(Arthrobacter crystallopoietes)ATCC154821株、カウロバクター クレセンタス(Caulobacter crescentus)ATCC19089株、ミクロバクテリウム インペリアレ(Microbacterium imperiale)ATCC8365株、クロトバクテリウム シトレウム(Curtobacterium citreum)ATCC15828株、ブレビバクテリウム アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)ATCC6871株、クラビバクター ミシガネンセ(Clavibacter michiganense)ATCC10202株、クラビバクター ラチャイ(Clavibacter rathayi)ATCC13659株、クラビバクター トリティチ(Clavibacter tritici)ATCC11402 株などがあげられる。
【0013】
製造法I-(2) において、生体触媒Iとして用いられる微生物として好ましくは、バチルス属に属し、アミノ基供与体存在下、ピルビン酸とグリオキシル酸からエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成する能力を有する微生物をあげることができる。
具体的には、バチルス エスピー(Bacillus sp.)S16株(FERM BP-4647)をあげることができる。
【0014】
製造法IIで用いられる生体触媒IIとしては、微生物の培養物、菌体、菌体処理物、精製酵素または粗酵素のいずれでも用いることができる。該微生物としては、アミノ基供与体存在下、光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸に変換する活性を有する微生物であればいずれでも用いることができる。
【0015】
このような微生物として、エシェリヒア属、セラチア属、シュウドモナス属、アースロバクター属またはコリネバクテリウム属に属する微生物あるいはこれら微生物の突然変異体もしくは誘導体等があげられる。
具体的には、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)ATCC33625株、セラチア マルセセンス(Serratia marcesens) ATCC13880株、シュウドモナス クロロラフィス(Psudomonas chlororaphis) ATCC9446株、アースロバクター プロトフォルミアエ(Arthrobacter protophormiae)ATCC19271株、コリネバクテリウム グルタミクム(Corynebacterium glutamicum) ATCC13032株をあげることができる。
【0016】
より好ましくは、これら菌株の有するα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ( α-ketoglutarate dehydrogenase) 活性および光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性の少なくとも一種の活性を欠失あるいは低下させた変異株をあげることができる。
このような変異株は、親株に通常の変異誘起剤処理、たとえば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)などの変異剤処理、UV照射、γ線照射による変異処理を施した後、適当な寒天平板培地上に塗布し、生育した変異株を取得し、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性および光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性の少なくとも一種の活性が欠失または親株に比べて低下した菌株を選択することにより得ることができる。
【0017】
このような変異株を取得するための親株としては光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸に変換する活性を有する微生物であればいずれでも用いることができる。とくにEscherichia coliが好ましく、例えばEscherichia coli K-12 株の亜株Escherichia coli ATCC33625をあげることができる。
【0018】
変異株として具体的には、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損変異株Escherichia coli HKK2株(sucA, iclR, trp )、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損とL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性低下の両変異を有するEscherichia coli HKK27株をあげることができる。Escherichia coli HKK27株は、ブダペスト条約に基づいて平成6年5月31日付で工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−4681として寄託されている。
【0019】
生体触媒Iまたは生体触媒IIで用いられる微生物を親株として、該親株の有するグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(Glutamate dehydrogenase)活性よりも強化されたグルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する変異株を取得し、該変異株を用いることにより、親株よりもより効率的な光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造を行うことができる。
【0020】
このような変異株は、親株に通常の変異誘起剤処理、たとえば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)などの変異剤処理、UV照射、γ線照射による変異処理を施した後、適当な寒天平板培地上に塗布し、生育した変異株を取得し、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性が親株に比べて強化された菌株を選択することにより得ることができる。また更に、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する菌株由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含むDNA断片とベクターDNAとの組換え体DNAを用いて親株を形質転換することによっても得られる。
【0021】
例えば、このような形質転換株は、エシェリヒア属、とくにエシェリヒア コリ由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含むDNA断片とベクターDNAとの組換え体DNAを用いて大腸菌を形質転換することにより得ることができる。
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の供給源となる微生物としては、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する微生物であればいずれでも用いることができる。とくにEscherichia coliが好ましく、例えばEscherichia coli K-12株の亜株Escherichia coli ATCC33625株が好ましい。
【0022】
微生物からのグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の単離は、常法〔バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochim. Biophys. Acta), 72, 619(1963)、モレキュラー・クローニング:ア・ボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning, A laboratory manual), 第2版, コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)(1989)〕に準じて行うことができる。
【0023】
ベクターとしては宿主微生物中で自律複製できるものであれば、ファージ・ベクター、プラスミド・ベクターなどいずれでも用いることができる。たとえば、pBR322をあげることができる。
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含むDNA断片とベクターDNAとの組換え体DNAは、試験管内で両DNAを同一切断末端を与える制限酵素で切断した後、DNAリガーゼで連結反応をおこなうことによって得ることができる。
【0024】
宿主微生物としては、DNA取り込み能を有する微生物であれば、野生株の他に薬剤耐性、栄養要求性などを有する変異株などいかなる菌株を用いてもよい。
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含むDNA断片とベクターDNAとの組換え体DNAを用いて、宿主微生物を形質転換し、該組換え体DNAを保有する形質転換株を選択し、その株よりプラスミドを単離することにより、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含む組換え体プラスミドを取得することができる。形質転換は、マニアチスらの方法〔モレキュラー・クローニング(Molecular Clorning, A Laboratory Manual ), 250(1982)〕等に従っておこなうことができる。出現した形質転換株の培養菌体から組換え体プラスミドの単離はマニアチスらの方法〔モレキュラー・クローニング(Molecular Clorning, A Laboratory Manual ), 86(1982)〕等に従っておこなうことができる。
【0025】
得られた組換え体プラスミドを用いて、生体触媒Iまたは生体触媒IIとして用いることのできる微生物をマニアチスらの方法に従って形質転換することにより、目的のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性の強化された形質転換株を得ることができる。
具体的には、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損とL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性低下の両変異を有し、更に、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性の増強されたEscherichia coli HKK27/pHK10株をあげることができる。Escherichia coli HKK27/pHK10株は、ブダペスト条約に基づいて平成6年5月31日付で工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−4682として寄託されている。
【0026】
生体触媒Iまたは生体触媒IIとして用いられる微生物の培養は、通常の培養方法に従って行うことができる。
培養に用いられる培地は、用いる微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該微生物の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。
【0027】
炭素源としては、用いる微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース、澱粉、澱粉加水分解物、糖蜜などの糖類や、酢酸、乳酸、グルコン酸などの有機酸、あるいはエタノール、プロパノールなどのアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、用いる微生物が資化しうるかぎり、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
【0028】
無機塩としては、用いる微生物が利用しうるかぎり、リン酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガンなどを用いることができる。他に微量元素としてカルシウム、亜鉛、ほう素、銅、コバルト、モリブデンなどの塩類を加えてもよい。また必要に応じてチアミン、ビオチンのようなビタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸のようなアミノ酸、アデニン、グアニンのような核酸関連物質などを添加してもよい。
【0029】
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜37℃がよく、培養時間は10〜96時間である。
培養中pHは、5.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
生体触媒IまたはIIとして用いられる微生物の菌体処理物としては、菌体の乾燥物、凍結乾燥物、界面活性剤または有機溶剤処理物、酵素処理物、超音波処理物、機械的摩砕処理物、溶媒処理物、菌体の蛋白質分画、菌体および菌体処理物の固定化物などがあげられる。
【0030】
本発明の製造法Iおよび製造法IIにおいて、用いるアミノ基供与体としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素などの無機アンモニウム塩またはアスパラギン酸をはじめとする各種アミノ酸などをあげることができる。アミノ基供与体の濃度は0.1〜100g/l、好ましくは1〜10g/lである。
【0031】
水性媒体としては、水、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液、ならびに、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類などの有機溶媒を含有した水溶液があげられる。また必要に応じてトリトンX−100(ナカライテスク社製)やノニオンHS204(日本油脂社製)などの界面活性剤やトルエンやキシレンなどの有機溶媒を0.1〜20g/l 程度添加してもよい。
【0032】
本発明の製造法Iにおいて、用いるピルビン酸およびグリオキシル酸の濃度は1〜200g/l、好ましくは20〜200g/lである。生体触媒Iによりピルビン酸に転換され得る化合物をピルビン酸の代替として用いることもできる。このような化合物として、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース、澱粉、澱粉加水分解物、糖蜜などの糖類や、酢酸、乳酸、グルコン酸などの有機酸等をあげることができる。
【0033】
生体触媒Iの濃度は0.1〜200g/l、好ましくは5〜100g/l(微生物菌体換算)である。
水性媒体に、生体触媒I、アミノ基供与体、ピルビン酸およびグリオキシル酸を上記濃度添加し、温度15〜80℃、好ましくは25〜60℃、pH3〜11、好ましくはpH5〜9の条件下で、30分〜80時間反応させ、光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を製造することができる。
【0034】
製造法Iにおいて、生体触媒Iとして用いられる微生物の培養初発または途中に、アミノ基供与体、ピルビン酸およびグリオキシル酸を上記濃度添加し、光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を製造することもできる。
本発明の製造法IIにおいて、光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸として、精製標品、粗精製品等を用いることができる。また、微生物に由来する生体触媒反応を利用して生成された光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸および光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を含有する該反応液を利用することもできる。微生物に由来する生体触媒反応を利用した光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の製造法については後述する。用いる光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の濃度は1〜200g/l、好ましくは20〜200g/lである。
【0035】
生体触媒IIの濃度は0.1〜200g/l、好ましくは5〜100g/l(微生物菌体換算)である。
水性媒体に、生体触媒II、アミノ基供与体および光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸グリオキシル酸を上記濃度添加し、温度15〜80℃、好ましくは25〜60℃、pH3〜11、好ましくはpH5〜9の条件下で、30分〜80時間反応させ、光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を製造することができる。
【0036】
製造法IIにおいて、生体触媒IIとして用いられる微生物の培養初発または途中に、アミノ基供与体および光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を上記濃度添加し、光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を製造することもできる。
製造法Iまたは製造法IIにより製造された光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸は、通常用いられるアミノ酸の精製法を用いて単離することができる。例えば、遠心分離により固形物を除いた反応液上清から、イオン交換樹脂や膜処理法などの操作を組み合わせて、光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を単離することができる。
【0037】
〔微生物に由来する生体触媒反応を利用した光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の製造〕
グリオキシル酸とピルビン酸から光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を生成する活性を有する生体触媒(以下、生体触媒IIIという。)、ピルビン酸およびグリオキシル酸を水性媒体中に存在させることにより、グリオキシル酸を光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸に変換することにより光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を製造することができる。
【0038】
該製造で用いられる生体触媒IIIとしては、微生物の培養物、菌体、菌体処理物、精製酵素または粗酵素のいずれでも用いることができる。該微生物としては、グリオキシル酸とピルビン酸から光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を生成する活性を有する微生物であればいずれの微生物でも用いることができる。
【0039】
具体的にはセルビブリオ属、バチルス属、シュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属またはモルガネラ属に属する微生物があげられる。
D−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を製造する場合にはとくにセルビブリオ属またはバチルス属に属する微生物が好ましい。
【0040】
具体的にはセルビブリオ ギルバス(Cellvibrio gilvus)ATCC13127株、バチルス エスピー(Bacillus sp.)OC187株、バチルス エスピー(Bacillus sp.)S16 株などがあげられる。ATCC13127株およびOC187株は60〜90℃、15分〜2時間の熱処理を施すことにより、L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の生成能を失活させることができる。また、L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の生成能を失活した株は、セルビブリオ属またはバチルス属に属し、かつピルビン酸または該微生物によってピルビン酸に転換され得る化合物とグリオキシル酸からD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を生成する能力を有する微生物を通常の変異処理手段、たとえば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)による通常の変異処理により変異させ、L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の生成能が失活した変異株を選択することによっても得ることができる。S16株はOC187株より変異誘導され、L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の生成能を失活した変異株である。
【0041】
バチルス エスピー(Bacillus sp.)OC187株は、本発明者らによって町田市の土壌より新たに分離された菌株であって、その菌学的性質を第1表〜第6表に詳述する。
(A) 形態
【0042】
【表1】
【0043】
(B) 培養学的性質
【0044】
【表2】
【0045】
(C) 生理学的性質
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
(D) その他の諸性質
【0049】
【表5】
【0050】
(E) 化学分類学的性質
【0051】
【表6】
【0052】
以上の菌学的性質を有する菌について、バージェイのマニュアル(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology) Vol.2(1986年)の記載と照合した結果、該菌株をバチルス属に属する細菌と同定し、OC187株をバチルス エスピー(Bacillus sp.)OC187 と命名した。
バチルス エスピー OC187株およびS16株は、ブダペスト条約に基づいて平成6年4月19日付で工業技術院生命工学工業技術研究所に各々FERM BP−4646、FERM BP−4647として寄託されている。
【0053】
L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を製造する場合にはとくにシュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属またはモルガネラ属に属する微生物が好ましい。さらに詳しくはシュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属またはモルガネラ属に属し、ピルビン酸または該微生物によってピルビン酸に転換され得る化合物とグリオキシル酸からL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を生成する能力を有する微生物であればよい。D−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を実質的に生成しない微生物であればより好ましい。
【0054】
具体的にはシュウドモナス プチダ(Pseudomonas putida)ATCC 795株、シュウドモナス プチダ(Pseudomonas putida)ATCC 4359株、シュウドモナス サッカロフィラ(Pseudomonas saccharophila)ATCC 9114株〔=ATCC 15946株;IAM Catalogue of Strains (1993) 〕、シュウドモナス ボレオポリス(Pseudomonas boreopolis)ATCC 15452株、シュウドモナス タエトロレンス(Pseudomonas taetrolens)ATCC 17466株、シュウドモナス オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)ATCC 8062株、パラコッカス デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)ATCC 19367株、プロビデンシア ルスチギアニ(Providencia rustigianii)ATCC 13159株、リゾビウム メリロッティ(Rhizobium meliloti)RCR 2001株(FERM BP-4582)、モルガネラ モルガニ(Morganella morganii)ATCC 25830株などがあげられる。
【0055】
リゾビウム メリロッティ(Rhizobium meliloti)RCR 2001株は、ブダペスト条約に基づいて平成6年2月24日付で工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−4582として寄託されている。
生体触媒III として用いられる微生物の培養は、通常の培養方法に従って行われる。
【0056】
培養に用いられる培地は、用いる微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該微生物の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。
炭素源としては、用いる微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース、澱粉、澱粉加水分解物、糖蜜などの糖類や、酢酸、乳酸、グルコン酸などの有機酸、あるいはエタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。セルビブリオ属またはバチルス属細菌を用いてD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を製造する場合にはD−ガラクトン酸が好ましい。
【0057】
窒素源としては、用いる微生物が資化しうるかぎり、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を使用することができる。
【0058】
無機塩としては、用いる微生物が利用しうるかぎり、リン酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガンなどを使用できる。他に微量元素としてカルシウム、亜鉛、ほう素、銅、コバルト、モリブデンなどの塩類を加えてもよい。また必要に応じてチアミン、ビオチンのようなビタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸のようなアミノ酸、アデニン、グアニンのような核酸関連物質などを添加してもよい。
【0059】
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜37℃がよく、培養時間は10〜96時間である。
培養中pHは、5.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
生体触媒IIIとして用いられる微生物の菌体処理物としては、菌体の乾燥物、凍結乾燥物、界面活性剤または有機溶剤処理物、酵素処理物、超音波処理物、機械的摩砕処理物、溶媒処理物、菌体の蛋白質分画、菌体および菌体処理物の固定化物などがあげられる。
【0060】
水性媒体としては、水、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液、ならびに、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類などの有機溶媒を含有した水溶液があげられる。また必要に応じてトリトンX−100(ナカライテスク社製)やノニオンHS204(日本油脂社製)などの界面活性剤やトルエンやキシレンなどの有機溶媒を0.1〜20g/l 程度添加してもよい。
【0061】
用いるピルビン酸およびグリオキシル酸の濃度は1〜200g/l、好ましくは20〜200g/lである。生体触媒IIIによりピルビン酸に転換され得る化合物をピルビン酸の代替として用いることもできる。このような化合物として、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース、澱粉、澱粉加水分解物、糖蜜などの糖類や、酢酸、乳酸、グルコン酸などの有機酸等をあげることができる。
【0062】
生体触媒IIIの濃度は0.1〜200g/l、このましくは5〜100g/l(微生物菌体換算)である。
水性媒体に、生体触媒III、ピルビン酸およびグリオキシル酸を上記濃度添加し、温度15〜60℃、好ましくは25〜45℃、pH3〜11、好ましくはpH5〜9の条件下で、30分〜80時間反応させ、光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を製造することができる。
【0063】
生体触媒IIIとして用いられる微生物の培養初発または途中に、ピルビン酸およびグリオキシル酸を上記濃度添加し、光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を製造することもできる。
光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸は、通常用いられるアミノ酸の精製法を用いて単離することができる。例えば、遠心分離により固形物を除いた反応液上清から、イオン交換樹脂や膜処理法などの操作を組み合わせて、光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を単離することができる。
【0064】
以下に本発明の実施例を示す。
【実施例】
【0065】
実施例1
バクトトリプトン10g/l 、酵母エキス5g/l および塩化ナトリウム5g/lを含みNaOHにてpH7に調整した培地(L培地)3mlを試験管に分注し、滅菌後、第7表に示した微生物を各々接種し、30℃で16時間振とう培養した。各菌株についてこの培養液1mlずつを下記のGMS培地10mlを入れ滅菌した試験管に接種し30℃で20時間振とう培養した。
GMS培地組成(1lあたり):
KH2PO4 2 g
(NH4)2SO4 2 g
FeSO4・7H2O 5 mg
MnSO4・7H2O 2 mg
MgSO4・7H2O 0.5 g
CaCl2 10 mg
酵母エキス 1 g
ペプトン 1 g
グルコース 20 g
pH 7.0
培養終了後、遠心分離操作にて菌体を集め、各菌株について、滅菌した1mlの反応液(a) 〔KH2PO4 3g 、NaH2PO4 6g、NH4Cl 1g、MgSO4 ・7H2O 0.16g、NaCl 5g 、CaCl2 11mg、ピルビン酸ナトリウム100mmol およびグリオキシル酸100mmol を純水1lに含みNaOHにてpH7. 0に調整した反応液〕の反応液に懸濁し、ファルコン社製2059チューブ中にて30℃で振とうし5時間反応させた。反応終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸をODSカラム(メルク社製)を用いたHPLCにより定量した。定量値を第7表に示す。なお、スレオおよびエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の標準化合物は[ ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエテイ(J.A.C.S.), 79, 6192(1957)] に記載の方法によって調製した。
【0066】
【表7】
【0067】
実施例2
第8表に示した微生物を、実施例1と同様に培養し、実施例1で用いた反応液(a) に5g/lのアスパラギン酸を含む反応液を用いる以外は実施例1と同様に反応を行った。反応終了後の反応液上清中のスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸量を第8表に示す。
【0068】
【表8】
【0069】
実施例3
E. coli(大腸菌) K-12株亜株のATCC33625株およびα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損変異株HKK2株(sucA、iclR、trp )を3mlのL培地を含む試験管で37℃にて一晩培養した。この培養液2mlを、グルコース0.4%、コハク酸0.05% 、硫酸アンモニウム0.2%、L−トリプトファン100mg/l 、酵母エキス0.1%およびペプトン0.1%を加えたM9培地〔Na2HPO4 6g、KH2PO4 3g 、NaCl 0.5g およびNH4Cl 1gを1lに含みpH7.4に調整した後、別途滅菌した1M MgSO4 2mlおよび1M CaCl2 0.1mlを加えた培地〕50mlを含む300ml容三角フラスコに添加し、37℃にて8時間培養した。こうして得た培養液から遠心分離によって上清を除去し、菌体を100g湿菌体/lとなるように滅菌水に懸濁した。
【0070】
一方、実施例1と同様にシュウドモナス サッカロフィラATCC15946株をGMS培地10mlを入れた試験管3本にて30℃で20時間培養した。遠心分離操作によってこれら試験管3本分の菌体を一つに集菌後3mlの反応液に懸濁し、30℃で5時間反応を行った。この反応液を遠心分離して得た上清をSUMICHIRAL OA-5000カラム(住友化学社製)を用いたHPLCにより分析したところ60.5mMのL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸が生成していた。D−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸は認められなかった。なお、DおよびL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の標準化合物は[ メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology ), 17, partB, 275] に記載の方法によって調製した。
【0071】
この反応上清をファルコン社製2059チューブ2本に0.4mlづつ分注し、先に調製した大腸菌菌体懸濁液を80μlづつ加えさらに各チューブに20%硫酸アンモニウム溶液40μl、50%グルコース溶液48μlおよびM9C溶液(Na2HPO4 60g 、KH2PO4 30g、NaCl 5g およびNH4Cl 10g を1lに含みpH7.4に調整)80μlを添加し、滅菌水で総量を0.8mlに合わせ、37℃で振とうし3時間反応させた。反応終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を実施例1と同様にHPLCにより定量した。定量値を第9表に示す。
【0072】
【表9】
【0073】
実施例4
大腸菌K−12株由来のα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損変異株HKK2株(sucA、iclR、trp )からL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性の低下した変異株の誘導を行った。L培地中で対数増殖期まで培養したHKK2株の菌体を集め、0.05Mトリスーマレイン酸緩衝液(pH6.0)で洗浄後、菌体濃度が約109 細胞/mlになるように同緩衝液に懸濁した。これにNTGを終濃度が600mg/lになるように加え、室温で20分間保持して変異処理を行った。この変異処理菌体をL寒天培地(L培地に寒天2%を加えたもの)に塗布した。生じたコロニー約3000株についてL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性を測定した。即ち、各株を3mlのL培地で37℃、16時間培養し、遠心分離によって菌体を集め、50mM KH2PO4(pH7)緩衝液0.5mlに懸濁した。これに実施例3と同様にシュウドモナス サッカロフィラATCC15946株を用いて調製したL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸含有ブロス0.5mlを加え、37℃で8時間インキュベートした。インキュベート前と後の4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸濃度を実施例3と同様に測定し、減少量の少ない株をL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性の低下した株として選択した。このようにしてα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損とL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性低下の両変異を合わせもつHKK27 株を取得した。
【0074】
α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損およびL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性低下の両変異をあわせもつ菌株は、上記の方法に準じてHKK2株からD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性の低下した変異株を誘導することによっても得ることができる。
【0075】
実施例5
大腸菌K-12株亜株ATCC33625株より常法[ バイオキミカ・エ・バイオフィジカ・アクタ(Biochim. Biophys. Acta), 72, 619(1963)]によりグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を単離した。ベクターとして使用したpBR322は宝酒造社製の市販品を用いた。pBR322プラスミドDNA 1μgおよびATCC33625 株染色体DNA 3μgを含む制限酵素反応液(宝酒造社製Hバッファー)100μlに各々16単位のPstIとClaI(いずれも宝酒造社製)を添加し、37℃で2時間反応後、65℃で40分間加温して反応を停止させた。該反応物に、10倍濃度のT4リガーゼ緩衝液(660mM トリス、66mM MgCl2、100mM ジチオスレイトール、pH7.6 )12μl、100mM ATP3μlおよびT4リガーゼ(宝酒造社製)350単位を加え、15℃で16時間反応させた。このリガーゼ反応物をグルタミン酸デヒドロゲナーゼおよびグルタミン酸シンターゼ両遺伝子の欠損変異を有するPA340株〔J. Bacteriol., 133, 139 (1978)〕の形質転換に供した[マニアチスら;モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning, A Laboratory Manual), 250(1982)]。選択培地には、L−スレオニン25mg/l、L−ロイシン25mg/l、L−ヒスチジン25mg/l、L−アルギニン25mg/l、チアミン100μg/l、テトラサイクリン10mg/lおよびグルコース0.4%を含むM9最少寒天培地[マニアチスら;モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning, A Laboratory Manual), 68(1982)] を用いた。出現した形質転換株の培養菌体から[ マニアチスら;モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning, A Laboratory Manual), 86(1982)] に記載の方法によって、プラスミドDNAを単離した。
【0076】
形質転換株の1株から得られpHK10と命名されたプラスミドは、各種制限酵素での消化とアガロースゲル電気泳動による解析の結果、pBR322のPstIサイトとClaIサイトの間に、マックファーソンらの報告したグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子[ ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acid Res. ), 11, 5257(1983)] と同一構造を有する約4.2キロベースのPstI、ClaI DNA断片が挿入された構造であることが示された。pHK10を用いてPA340株を再形質転換した。選択培地には、テトラサイクリン10mg/lを含むL−寒天培地を用いた。得られたテトラサイクリン耐性形質転換コロニーを任意に50個選び、L−スレオニン25mg/l、L−ロイシン25mg/l、L−ヒスチジン25mg/l、L−アルギニン25mg/l、チアミン100μg/l、テトラサイクリン10mg/lおよびグルコース0.4%を含むM9最少寒天培地にレプリカしたところ、すべて生育した。さらにこの再形質転換株と宿主に用いたPA340株について、サカモトらにより記述された方法[ ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J. Bacteriol. ), 124, 775 (1975)] に従ってグルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性を測定した結果、PA340株には該酵素活性が認められなかったのに対し、pHK10を保有するPA340株には明瞭な該酵素活性が認められた。これらのことから大腸菌K-12亜株ATCC33625株のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子がクローニングされたことが確認された。
【0077】
実施例6
実施例5で作成したグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子含有プラスミドpHK10をHKK2株および実施例4で作成したHKK27株に常法〔マニアチスら;モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning, A Laboratory Manual), 68(1982)〕に従って形質転換し、各々HKK2/pHK10株、HKK27/pHK10株を得た。これらの形質転換株を実施例3と同様に培養した。なおこれら形質転換体の培養は、試験管、三角フラスコいずれにおいても10mg/lのテトラサイクリンを添加して実施した。このようにして得られた培養液から遠心分離によって上清を除去し、菌体を100g湿菌体/lとなるように滅菌水に懸濁した。一方、実施例3と同様にシュウドモナス サッカロフィラATCC15946株を用いて調製したL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸含有ブロス上清(59.9mMのL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を含む)をファルコン社製2059チューブ2本に0.4mlづつ分注し、先に調製した大腸菌菌体懸濁液を80μlづつ加えさらに各チューブに20%硫酸アンモニウム溶液40μl、50%グルコース溶液48μlおよびM9C溶液80μlを添加し、滅菌水で総量を0.8mlに合わせ、37℃で振とうし3時間反応させた。反応終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を実施例1と同様にHPLCにより定量した。定量値を第9表(実施例3参照)に示す。
【0078】
実施例7
第10表に示した各微生物を実施例1と同様に培養し反応液1mlに懸濁して30℃で5時間反応を行った。反応液中に生成した4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸(表中KHGと略記)量を実施例3と同様に測定し、第10表に示した。さらにこの反応液を遠心分離して得た上清0.4mlに実施例6と同様にHKK27/pHK10株の菌体懸濁液、グルコース、硫酸アンモニウムおよびM9C溶液を加え、滅菌水で総量を0.8mlに合わせ37℃で3時間振とうし反応させた。反応終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸(表中HGと略記)をHPLCにより定量した。定量値を第10表に示す。
【0079】
【表10】
【0080】
実施例8
実施例1と同様にシュウドモナス サッカロフィラATCC15946株をGMS培地10mlを入れた試験管10本にて30℃で20時間培養した。遠心分離操作によってこれら試験管10本分の菌体を一つに集菌後10mlの反応液に懸濁し、30℃で5時間反応を行った。この反応液を遠心分離して得た上清をSUMICHIRAL OA-5000カラム(住友化学社製)を用いたHPLCにより分析したところ68.8mMのL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸が生成していた。D−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸は認められなかった。
【0081】
この反応上清を滅菌した太型試験管4本に2.5mlづつ分注し、各試験管に滅菌した下記の組成のMSC培地0.5ml、50%グルコース溶液0.5ml、10%塩化アンモニウム溶液1mlを添加した。さらにこの試験管の1本には、3mlのL培地を含む試験管で30℃にて一晩培養したアースロバクター プロトフォルミアエATCC19271株の培養液0.5mlを、1本には同様に培養したシュウドモナス クロロラフィスATCC9446株の培養液0.5mlを、1本には同様に培養したセラチア マルセセンスATCC13880株の培養液0.5mlを、残りの1本には同様に培養したコリネバクテリウム グルタミクムATCC13032株の培養液0.5mlを加え、30℃にて48時間培養した。培養終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を実施例1と同様にHPLCにより定量した。定量値を第11表に示す。
【0082】
MSC培地(1lあたり):
KH2PO4 20 g
(NH4)2SO4 20 g
FeSO4・7H2O 50 mg
MnSO4・7H2O 20 mg
MgSO4・7H2O 5 g
CaCl2 100 mg
酵母エキス 10 g
ペプトン 10 g
pH 7.0
【0083】
【表11】
【0084】
実施例9
シュウドモナス サッカロフィラATCC15946株をL培地9mlに接種し30℃で16時間振とう培養した。この培養液全量を300mlのGMS培地に接種し2l容の三角フラスコにて30℃、20時間振とう培養した。得られた培養液から菌体を遠心分離し、実施例1で用いた反応液60mlに懸濁し、300ml容ビーカー中で撹拌しつつ反応を行った。反応開始6時間後にピルビン酸ナトリウム2M溶液3mlとグリオキシル酸ナトリウム2M溶液3mlを添加した。反応開始後24時間目に遠心分離によって反応液から菌体を除き、1次反応液上清を得た。
【0085】
一方、HKK27/pHK10株をテトラサイクリン10mg/lを加えた10mlのL培地で37℃にて一晩培養した。この培養液全量を、グルコース0.4%、コハク酸0.05%、硫酸アンモニウム0.2%、L−トリプトファン100mg/l、酵母エキス0.1%、ペプトン0.1%およびテトラサイクリン10mg/lを加えたM9培地750mlを含む2l容三角フラスコに添加し、37℃にて8時間培養した。こうして得た培養液から遠心分離によって上清を除去し、菌体を100g湿菌体/lとなるように滅菌水に懸濁した。
【0086】
上記のごとくして得たHKK27/pHK10懸濁液8ml、50%グルコース溶液4.8ml、20%硫酸アンモニウム溶液4ml、M9C溶液8ml、滅菌水5.2mlを先に調製した1次反応液50mlに添加し、300ml容ビーカー中で撹拌しつつ2次反応を行った。2次反応中は7%アンモニア水にてpHを7に維持した。12時間反応後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸をODSカラム(メルク社製)を用いたHPLCにより定量した結果、10.3g/lのスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸が検出された。
【0087】
実施例10
実施例9で得た2次反応上清75mlを強酸性陽イオン交換樹脂[ダウエックス50 x 8(Na型)、ダウケミカル社製] のカラムに通塔し、アンモニアでスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を溶出分離し、濃縮、晶出することにより、0.6gのスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の結晶を得た。
【0088】
実施例11
バクトトリプトン10g/l、酵母エキス5g/lおよび塩化ナトリウム5g/lを含みNaOHにてpH7に調整した培地(L培地)3mlを試験管に分注し、滅菌後、バチルス エスピー S16株(FERM BP-4647)を接種し、30℃で16時間振とう培養した。この培養液1mlずつを下記のGMSG培地10mlを入れ滅菌した試験管2本に接種し30℃で20時間振とう培養した。
【0089】
GMSG培地組成(1lあたり):
KH2PO4 2 g
(NH4)2SO4 2 g
FeSO4・7H2O 5 mg
MnSO4・7H2O 2 mg
MgSO4・7H2O 0.5 g
CaCl2 10 mg
酵母エキス 1 g
ペプトン 1 g
D−ガラクトン酸カルシウム 20 g
pH 7.0
培養終了後、遠心分離操作にて各々菌体を集め、滅菌した1mlの反応液(a) に5g/lになるようにアスパラギン酸を添加した反応液1mlに懸濁し、ファルコン社製2059チューブ中にて30℃で振とうし5時間反応させた。反応終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を実施例1と同様に定量した。定量値を第12表に示す。
【0090】
【表12】
【0091】
実施例12
大腸菌K-12株由来のATCC33625株およびα−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ欠損変異株HKK2株(sucA、iclR、trp )を3mlのL培地を含む試験管で37℃にて一晩培養した。この培養液2mlを、グルコース0.4%、コハク酸0.05%、硫酸アンモニウム0.2%、L−トリプトファン100mg/l、酵母エキス0.1%およびペプトン0.1%を加えたM9培地50mlを含む300ml容三角フラスコに添加し、37℃にて8時間培養した。こうして得た培養液から遠心分離によって上清を除去し、菌体を100g湿菌体/lとなるように滅菌水に懸濁した。
【0092】
一方、実施例11と同様にバチルス エスピー S16株(FERM BP-4647)をGMSG培地10mlを入れた試験管3本にて30℃で20時間培養した。遠心分離操作によってこれら試験管3本分の菌体を一つに集菌後3mlの反応液(a) に懸濁し、30℃で5時間反応を行った。この反応液を遠心分離して得た上清をSUMICHIRAL OA-5000カラム(住友化学社製)を用いたHPLCにより分析したところ39.0mMのD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸が生成していた。L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸は認められなかった。なお、DおよびL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の標準化合物は[メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology ), 17, partB, 275] に記載の方法によって調製した。
【0093】
この反応上清をファルコン社製2059チューブ2本に0.4mlづつ分注し、先に調製した大腸菌菌体懸濁液を80μlづつ加えさらに各チューブに20%硫酸アンモニウム溶液40μl、50%グルコース溶液48μlおよびM9C溶液80μlを添加し、滅菌水で総量を0.8mlに合わせ、37℃で振とうし3時間反応させた。反応終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を実施例1と同様にHPLCにより定量した。定量値を第13表に示す。
【0094】
【表13】
【0095】
実施例13
HKK2/pHK10株、HKK27/pHK10株を実施例12と同様に培養した。なおこれら形質転換体の培養は、試験管、三角フラスコいずれにおいても10mg/lのテトラサイクリンを添加して実施した。こうして得た培養液から遠心分離によって上清を除去し、菌体を100g湿菌体/lとなるように滅菌水に懸濁した。
【0096】
一方、実施例12と同様にバチルス エスピー S16株(FERM BP-4647)を用いて調製したD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸含有ブロス上清(38.8mMのD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を含む)をファルコン社製2059チューブ2本に0.4mlづつ分注し、先に調製した大腸菌菌体懸濁液を80μlづつ加えさらに各チューブに20%硫酸アンモニウム溶液40μl、50%グルコース溶液48μlおよびM9C溶液80μlを添加し、滅菌水で総量を0.8mlに合わせ、37℃で振とうし3時間反応させた。反応終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を実施例1と同様にHPLCにより定量した。定量値を第13表(実施例12参照)に示す。
【0097】
実施例14
バチルス エスピー OC187株(FERM BP-4646)を実施例11と同様に培養した。培養終了後、1本の試験管には80℃で1時間加熱する処理を施し、もう一本は30℃に保った。ついで遠心分離操作で各々菌体を集め、反応液(a) 1mlに懸濁して30℃で5時間反応を行った。反応液中に生成した4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸(表中KHGと略記)量を実施例12と同様に測定し、第14表に示した。さらにこの反応液を遠心分離して得た上清0.4mlに実施例13と同様にHKK27/pHK10株の菌体懸濁液、グルコース、硫酸アンモニウム、M9C溶液を加え、滅菌水で総量を0.8mlに合わせ37℃で3時間振とうし反応させた。反応終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸(表中HGと略記)をHPLCにより定量した。定量値を第14表に示す。
【0098】
【表14】
【0099】
実施例15
実施例11と同様にバチルス エスピー S16株(FERM BP-4647)をGMSG培地10mlを入れた試験管10本にて30℃で20時間培養した。遠心分離操作によってこれら試験管10本分の菌体を一つに集菌後10mlの反応液(a) に懸濁し、30℃で5時間反応を行った。この反応液を遠心分離して得た上清をSUMICHIRAL OA-5000カラム(住友化学社製)を用いたHPLCにより分析したところ40.6mMのD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸が生成していた。L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸は認められなかった。
【0100】
この反応上清を滅菌した太型試験管4本に2.5mlづつ分注し、さらに各試験管に滅菌した下記の組成のMSC培地0.5ml、50%グルコース溶液0.5mlおよび10%塩化アンモニウム溶液1mlを添加した。さらにこの試験管の1本には、3mlのL培地を含む試験管で30℃にて一晩培養したアースロバクター プロトフォルミアエATCC19271株の培養液0.5mlを、1本には同様に培養したシュウドモナス クロロラフィスATCC9446株の培養液0.5mlを、1本には同様に培養したセラチア マルセセンスATCC13880 株の培養液0.5mlを、残りの1本には同様に培養したコリネバクテリウム グルタミクムATCC13032株の培養液0.5mlを加え、30℃にて48時間培養した。培養終了後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を実施例1と同様にHPLCにより定量した。定量値を第15表に示す。
【0101】
MSC培地(1lあたり):
KH2PO4 20 g
(NH4)2SO4 20 g
FeSO4・7H2O 50 mg
MnSO4・7H2O 20 mg
MgSO4・7H2O 5 g
CaCl2 100 mg
酵母エキス 10 g
ペプトン 10 g
pH 7.0
【0102】
【表15】
【0103】
実施例16
バチルス エスピー S16株(FERM BP-4647)をL培地9mlに接種し30℃で16時間振とう培養した。この培養液全量を300mlのGMSG培地に接種し2l容の三角フラスコにて30℃、20時間振とう培養した。得られた培養液から菌体を遠心分離し、反応液(a) 60mlに懸濁し、300ml容ビーカー中で撹拌しつつ反応を行った。反応開始6時間後にピルビン酸ナトリウム2M溶液3mlとグリオキシル酸ナトリウム2M溶液3mlを添加した。反応開始後24時間目に遠心分離によって反応液から菌体を除き、1次反応液上清を得た。
【0104】
一方、HKK27/pHK10株をテトラサイクリン10mg/lを加えた10mlのL培地で37℃にて一晩培養した。この培養液全量を、グルコース0.4%、コハク酸0.05%、硫酸アンモニウム0.2%、L−トリプトファン100mg/l、酵母エキス0.1%、ペプトン0.1%、テトラサイクリン10mg/lを加えたM9培地750mlを含む2l容三角フラスコに添加し、37℃にて8時間培養した。こうして得た培養液から遠心分離によって上清を除去し、菌体を100g湿菌体/lとなるように滅菌水に懸濁した。
【0105】
上記のごとくして得たHKK27/pHK10懸濁液8ml、50%グルコース溶液4.8ml、20%硫酸アンモニウム溶液4ml、M9C溶液8ml、滅菌水5.2mlを先に調製した1次反応液50mlに添加し、300ml容ビーカー中で撹拌しつつ2次反応を行った。2次反応中は7%アンモニア水にてpHを7に維持した。12時間反応後、遠心分離操作によって菌体を除き、上清のγ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸をODSカラム(メルク社製)を用いたHPLCにより定量した結果、8.6g/lのエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸が検出された。
【0106】
実施例17
実施例14で得た2次反応上清75mlを強酸性陽イオン交換樹脂〔ダウエックス50 x 8(Na型)、ダウケミカル社製〕のカラムに通塔し、アンモニアでエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を溶出分離し、濃縮、晶出することにより、0.5gのエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の結晶を得た。
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、グルタミンシンターゼやプレシナプス前顆粒のグルタミン酸取り込みを阻害する作用が知られ、これら酵素や器官の研究用試薬およびこれら作用に基づく医薬品として有用である光学活性−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を工業的に有利に提供することができる。
Claims (14)
- アミノ基供与体存在下、ピルビン酸とグリオキシル酸から光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成する活性を有するシュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属、モルガネラ属、エンテロバクター属、アースロバクター属、カウロバクター属、ミクロバクテリウム属、クロトバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、クラビバクター属またはバチルス属に属する微生物の培養物、菌体またはそれらの処理物、アミノ基供与体、ピルビン酸およびグリオキシル酸を水性媒体中に存在させることにより、水性媒体中に光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成させ、生成した光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を該水性媒体中より採取することを特徴とする光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法。
- アミノ基供与体存在下、光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸に変換する活性を有するエシェリヒア属、セラチア属、シュウドモナス属、アースロバクター属またはコリネバクテリウム属に属する微生物の培養物、菌体またはそれらの処理物、アミノ基供与体および光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を水性媒体中に存在させることにより、水性媒体中に光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を生成させ、生成した光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸を該水性媒体中より採取することを特徴とする光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸の製造法。
- 光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸がスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸[(2S,4S)-4-hydroxyglutamic acid]またはエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸[(2S,4R)-4-hydroxyglutamic acid]である請求項1または2記載の製造法。
- ピルビン酸の代わりに、該微生物の培養物、菌体またはそれらの処理物によりピルビン酸に転換され得る化合物を用いる請求項1記載の製造法。
- 該微生物の培養物、菌体またはそれらの処理物によりピルビン酸に転換され得る化合物がグルコース、フラクトース、マルトース、グリセロール、乳酸または乳酸アンモニウムである請求項4記載の製造法。
- 光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸がスレオ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸であり、微生物が、シュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属、モルガネラ属、エンテロバクター属、アースロバクター属、カウロバクター属、ミクロバクテリウム属、クロトバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属またはクラビバクター属に属する微生物である請求項1記載の製造法。
- 光学活性γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸がエリスロ−γ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸であり、微生物がバチルス属に属する微生物である請求項1記載の製造法。
- 光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸が、L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸[(S)-4-hydroxy-2-ketoglutaric acid] またはD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸[(R)-4-hydroxy-2-ketoglutaric acid] である請求項2記載の製造法。
- 微生物が、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(α-ketoglutarate dehydrogenase)活性および光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸分解活性の少なくとも一種の活性が低下または欠失した菌株である請求項2または8記載の製造法。
- 微生物が、グルタミン酸デヒドロゲナーゼを増強された菌株である請求項1〜9のいずれか 1 項に記載の製造法。
- 光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸が、ピルビン酸とグリオキシル酸から光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を生成する活性を有するバチルス属、シュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属またはモルガネラ属に属する微生物の培養物、菌体またはそれらの処理物、ピルビン酸およびグリオキシル酸を水性媒体中に存在させることにより、生成した光学活性4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸である、請求項2、8、9または10記載の製造法。
- ピルビン酸の代わりに、該微生物の培養物、菌体またはそれらの処理物によりピルビン酸に転換され得る化合物を用いる請求項11記載の製造法。
- 微生物がバチルス属に属し、かつピルビン酸およびグリオキシル酸からD−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を生成する能力を有する微生物である請求項12記載の製造法。
- 微生物が、シュウドモナス属、パラコッカス属、プロビデンシア属、リゾビウム属またはモルガネラ属に属し、かつピルビン酸およびグリオキシル酸からL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を生成する能力を有する微生物である請求項12記載の製造法。
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