JP3736281B2 - インストルメントパネル構造およびインストルメントパネルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のインストルメントパネル構造に関するもので、特に、インストルメントパネルの裏面側(車両前方側)に設置される空調ユニットのサイドベントダクトならびにサイドデフダクトに関わる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、乗用車ではインストルメントパネル(以下、インパネという)の裏側に空調ユニットを設置している。この空調ユニットは、吸込および送風用のファンを備えているとともに空気を加熱したり冷却したりする加熱手段および冷却手段を有したユニット本体と、このユニット本体から、送風をインパネ中央部に設けられたベント吹出口に導く中央ダクト、送風をインパネ両側部に設けられたサイドベント吹出口に導くサイドベントダクト、送風をサイドウインドガラスに向けて吹き出すようにインパネ両側部上面に設けられたサイドデフ吹出口に導くサイドデフダクトなどの複数のダクトが接続され、ユニット本体で温度あるいは湿度調節された空気を車室内に設けられた各吹出口に導くよう構成されている。
【0003】
上述のような空調ユニットにおいて、サイドベントダクトならびにサイドデフダクトは、インパネの裏面を、インパネ略中央位置から左右に延在されて設置するのが一般的である。
このようなインストルメントパネルの裏面に設けられた空調ユニットの構造としては、例えば、特開平9−39610号公報に記載されているものが知られている。この公報には、インパネに複数の吹出口が設けられ、ユニット本体の上部に、サイドベントダクトとサイドデフダクトとがそれぞれ接続され、これらダクトがインパネの裏面において車幅方向に延在されてインパネに設けられたサイドベント吹出口ならびにサイドデフ吹出口にそれぞれ接続されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術にあっては、サイドベントダクトとサイドデフダクトとは、インパネとは独立して設けられ、各ダクトをそれぞれインパネの裏側に配索した構造となっている。しかしながら、インパネの裏側には、メータ機器やオーディオ機器などが設けられるものであり、これらを効率よく配設することにより省スペース化を図って室内スペースをできるだけ広くするのが好ましいのであるが、サイドベントダクトおよびサイドデフダクトがそれぞれ独立して配設した従来構造にあっては、それぞれのダクトの配設を考慮しなくてはならず、効率的な配設自由度が低下してしまうという問題があった。また、各ダクト間には必ず無駄な隙間が生じてしまうため、省スペース化が難しいという問題があった。
【0005】
また、インパネは、樹脂により形成されているが、従来構造では、サイドベントダクトやサイドデフダクトがインパネの剛性に寄与するものではなかったために、インパネの剛性を確保するには、インパネにリブを立てるなどの補強が必要で、それだけ、材料費が嵩むとともに、リブが他の部材と干渉することにより上述の省スペース化を妨げるおそれがあるという問題があった。
【0006】
さらに、サイドベントダクトがインパネ上面の近傍に配索されている場合、インパネ裏面において、サイドベントダクトの上方位置に十分に断熱材を設けないと、冷房時にインパネ上面が結露するおそれがあり、断熱材を設ける分だけコスト高となるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の従来の問題点に着目して成されたもので、サイドベントダクトおよびサイドデフダクトの配索に必要なスペースの省スペース化を達成すること、各ダクトを利用してインパネの強度向上を図ることにより、コスト低減および省スペース化を達成すること、サイドベントダクトの断熱を安価に行うことを達成することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために本発明は、樹脂製のインストルメントパネルの車幅方向端部に、空調ユニットにダクトを介して接続される吹出口が複数設けられたインストルメントパネル構造において、前記インストルメントパネルの裏面に、上下に重なって車幅方向に延在された複数のダクト用通路を有した樹脂製の一体ダクト部材が溶着され、該一体ダクト部材が、箱断面形状に形成されて、上下のダクト用通路が中間仕切り板により区画されているとともに、全長に亘りヒンジ部が形成されて、延在方向に直交する方向に折り曲げ可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明では、請求項1記載のインストルメントパネル構造において、前記中間仕切材で上下に区画された箱断面形状に形成された前記一体ダクト部材の上面ならびに車両後方を向く側面がインストルメントパネルに溶着されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、インストルメントパネルの裏面に、サイドデフダクトを上にしてサイドベントダクトとサイドデフダクトとを上下に重ねて樹脂により一体に形成された一体ダクト部材が、車幅方向に延在されて溶着され、前記一体ダクト部材が、中間仕切り板で上下に区画された箱断面形状に形成されているとともに全長に亘り折り曲げ可能なヒンジ部が形成されているインストルメントパネルの製造方法であって、まず、中間仕切り板で上下に区画された箱断面形状に形成されているとともに全長に亘り折り曲げ可能なヒンジ部が形成されている一体ダクト部材を、ヒンジ部を中心に展開させた形状の部材である樹脂製のダクト材料部材を形成し、次に、前記ダクト材料部材をヒンジ部で折り曲げて箱状に形成するとともに折り曲げ時に相互に当接する端部を溶着して、一体ダクト部材を形成し、次に、前記一体ダクト部材を、インストルメントパネルに溶着させることを特徴とする。
【0012】
【発明の作用および効果】
本発明のインストルメントパネル構造にあっては、インパネの一体ダクト部材の各ダクト用通路を空調ユニットに接続するとともに、各吹出口に接続させて使用する。このように閉断面の2つのダクト用通路が形成されている一体ダクト部材が、インパネの裏面に溶着されているため、空調ユニットに接続するダクトの配索に必要なスペースが小さくなって、省スペース化を図ることができるという効果が得られる。加えて、閉断面の一体ダクト部材が溶着されることで、インパネの剛性が高まる。したがって、補強用リブなどを省略することができ、その分だけ、材料費を低減して製造コストを低減することができるという効果が得られるとともに、補強用リブが他の部材と干渉することがなくなり、省スペース化の向上を図ることができるという効果が得られる。
さらに、一体ダクト部材が、箱断面形状に形成されているとともに、全長に亘ってヒンジ部が形成されているため、ヒンジ部で展開した状態で形成した後、ヒンジ部で折り曲げて一体ダクト部材を形成することができる。したがって、押出成形による場合のように、一定断面形状に形成する必要が無く、高い設計自由度が得られるとともに、省スペース化を図ることが可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明では、中間仕切材で上下に区画された箱断面形状に形成された一体ダクト部材の上面ならびに車両後方を向く側面がインストルメントパネルに溶着されている。このように、上下に区画された箱断面形状の部材がインパネの裏面に設けられることで、より高い補強効果が得られる。また、一体ダクト部材の上面と側面の2面でインストルメントパネルに溶着されていることで、溶着面積を広く、かつコーナ状に補強をすることができ、これによっても高い補強効果を得ることができる。
【0015】
請求項3に記載のインストルメントパネルの製造方法にあっては、インストルメントパネルの裏面に溶着する一体ダクト部材を形成する際に、まず、一体ダクト部材を、ヒンジ部を中心に展開させた形状のダクト材料部材を形成し、このダクト材料部材をヒンジ部で折り曲げて箱状に形成するとともに折り曲げ時に相互に当接する端部を溶着して一体ダクト部材を形成するようにしたため、一体ダクト部材の断面形状を、押出成形で形成するように一定断面形状に形成する必要が無くなり、設計自由度が向上して省スペース化が容易となるとともに、射出成形などにより安価に製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図3は、本発明実施の形態の構造を適用したインストルメントパネルの裏面側に搭載される空調ユニットの概略を示す斜視図である。
図において、1はユニット本体を示しており、図示を省略するが内部にブロワモータ、ヒータコア、エバポレータ、エアミックスドアなどを備え、吸気を任意に温度および湿度調節した後、送風できる周知の構成となっている。
【0017】
前記ユニット本体1の上部にダクト構造体2が接続される。このダクト構造体2は、樹脂を素材として形成され、中央部にダクト基部21が設けられ、このダクト基部21に、センタデフダクト4と、2本のセンタベントダクト22と、左サイドベントダクト23と、左サイドデフダクト24と、右サイドダクト2aとが接続されている。
【0018】
前記センタデフダクト4は、本実施の形態のインストルメントパネル3(以下、インパネという)の中央上面に設けられているセンタデフ開口部36と、ダクト基部21とを接続し、センタデフ吹出口37からフロントウインドガラスに送風を吹き付け可能に構成されている。なお、前記インパネ3は、樹脂を素材として形成されている。
【0019】
前記センタベントダクト22は、インパネの正面中央に開口されたセンタベント吹出口31と、ダクト基部21とを接続し、センタベント吹出口31から車室に向けて送風可能に構成されている。
【0020】
前記左サイドベントダクト23は、インパネ3の正面左端部に開口された左サイドベント吹出口32と、ダクト基部21とを接続し、左サイドベント吹出口32から車室に向けて送風可能に構成されている。
【0021】
前記左サイドデフダクト24は、インパネ3の上面左端部に開口された左サイドデフ吹出口33と、センタデフダクト4の分岐ダクト41とを接続し、左サイドデフ吹出口33から図外のフロントドアガラスに向けて送風可能に構成されている。
【0022】
前記右サイドダクト2aは、インパネ3の正面右端部に開口された右サイドベント吹出口35とダクト基部21とを接続するとともに、インパネ3の上面右端部に開口された右サイドデフ吹出口34とセンタデフダクト4の分岐ダクト42とを接続するものである。なお、前記ダクト構造部2において、各ダクト23,24および右サイドダクト2aの縁部(図において斜線で示す部分)が、前記インパネ3の背面に溶着されている。
【0023】
次に、図4に基づき右サイドダクト2aの構成について説明する。
この右サイドダクト2aは、中間ダクト25と吹出口ダクト28,29とを接続して形成されている。なお、吹出口ダクト28は、中間ダクト25と一体に形成されている。前記中間ダクト25は、ベントダクト部27とデフダクト部26とを備えている。このベントダクト部27とデフダクト部26とは、図1の断面図に示すように、中間ダクト25の内部を中間仕切り板25cにより上下2段に区画して形成されており、上面ならびに後面下部がインパネ3に溶着されている。また、右サイドダクト2aの後面下端のコーナ部には、PPヒンジ25dが設けられている。
すなわち、前記中間ダクト25は、成形時には、PP樹脂により図2に示すようなダクト材(特許請求の範囲に記載の一体ダクト部材に相当)5として射出成形される。このダクト材5を、PPヒンジ25dにおいて折り曲げて両端に形成されたフランジ部A,Aを溶着させるとともに、中間仕切り板25cの先端縁Bをダクト材5の中間部に溶着させて、図1のような箱断面形状に形成するものである。このように形成した中間ダクト25を、吹出ダクト29に接続して右サイドダクト2aを形成する。
【0024】
以上のように、本実施の形態では、ダクト材5を射出成形により形成した後、PPヒンジ25dで折り曲げて中間ダクト25を形成するように構成しているため、ベントダクト部27とデフダクト部26とが、一定断面形状でなくても容易に形成することができる。例えば、本実施の形態にあっては、図4に示すようにデフダクト部26は吹出ダクト28に近づくに連れて断面積が狭まる形状に形成しているもので、押出成形ではこのような断面形状に形成することはできない。したがって、図示を省略したメータなどインパネの裏側に設ける構成との干渉を防止するように形成するのが容易であり、省スペース化を図ることが容易となるという効果が得られる。
【0025】
また、本実施の形態にあっては、右サイドダクト2aにおいて、中間ダクト25を、図1に示すように、ベントダクト部27とデフダクト部26とを一体とした構成としたため、ベント用のダクトと、デフ用のダクトとを別々に配索する場合に比べて、必要なスペースを小さくして省スペース化を図ることができる。
加えて、中間ダクト25は、中間仕切り板25cで仕切られた閉断面形状として、これをインパネ3に対して車幅方向に延在させて溶着しているため、インパネ3が中間ダクト25により補強される。したがって、インパネ3に補強用リブなどを設けるのを省略することができ、コスト低減ならびに重量軽減を図ることができる。
【0026】
また、冷房時にあっては、ベントダクト部27を冷気が送風されるが、このベントダクト部27とインパネ3の下面との間には、デフダクト部26が設けられており、すなわち、ベントダクト部27とインパネ3の下面との間には、空気層が設けられていることになる。したがって、別途断熱材を設けなくても、インパネ3の上面が結露するのを防止することができる。したがって、安価にインパネ3の上面の結露を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態のインストルメントパネルに取り付けられた右サイドダクト構造の要部の断面図である。
【図2】実施の形態の射出成形された中間ダクトの断面図である。
【図3】実施の形態の空調ユニット全体の構成を表す図である。
【図4】実施の形態の右サイドダクトの構成を表す図である。
【符号の説明】
1 ユニット本体
2 ダクト構造体
2a 右サイドダクト
3 インストルメントパネル
4 センタデフダクト
5 ダクト部材
21 ダクト基部
22 センタベントダクト
23 左サイドベントダクト
24 左サイドデフダクト
25d ヒンジ
25 中間ダクト
25c 中間仕切り板
26 デフダクト部
27 ベントダクト部
28,29 吹出口ダクト
31 センタデフ吹出口
32 左サイドベント吹出口
33 左サイドデフ吹出口
34 右サイドデフ吹出口
35 右サイドベント吹出口
37 センタベント吹出口
A フランジ部
B 先端縁
Claims (3)
- 樹脂製のインストルメントパネルの車幅方向端部に、空調ユニットにダクトを介して接続される吹出口が複数設けられたインストルメントパネル構造において、
前記インストルメントパネルの裏面に、上下に重なって車幅方向に延在された複数のダクト用通路を有した樹脂製の一体ダクト部材が溶着され、
該一体ダクト部材が、箱断面形状に形成されて、上下のダクト用通路が中間仕切り板により区画されているとともに、全長に亘りヒンジ部が形成されて、延在方向に直交する方向に折り曲げ可能に構成されていることを特徴とするインストルメントパネル構造。 - 前記中間仕切材で上下に区画された箱断面形状に形成された前記一体ダクト部材の上面ならびに車両後方を向く側面がインストルメントパネルに溶着されていることを特徴とする請求項1記載のインストルメントパネル構造。
- インストルメントパネルの裏面に、サイドデフダクトを上にしてサイドベントダクトとサイドデフダクトとを上下に重ねて樹脂により一体に形成された一体ダクト部材が、車幅方向に延在されて溶着され、前記一体ダクト部材が、中間仕切り板で上下に区画された箱断面形状に形成されているとともに全長に亘り折り曲げ可能なヒンジ部が形成されているインストルメントパネルの製造方法であって、まず、中間仕切り板で上下に区画された箱断面形状に形成されているとともに全長に亘り折り曲げ可能なヒンジ部が形成されている一体ダクト部材を、ヒンジ部を中心に展開させた形状の部材である樹脂製のダクト材料部材を形成し、次に、前記ダクト材料部材をヒンジ部で折り曲げて箱状に形成するとともに折り曲げ時に相互に当接する端部を溶着して、一体ダクト部材を形成し、次に、前記一体ダクト部材を、インストルメントパネルに溶着させることを特徴とするインストルメントパネルの製造方法。
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