JP3735399B2 - 冷凍サイクル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイドロフルオロカーボンを含む冷媒とポリオールエステル冷凍機油を作動媒体とする冷凍圧縮機、凝縮器、膨張弁などの膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルにおいて、長期間に渡って安定に動作させるために、ポリオールエステルの加水分解とこれに付随する脂肪酸金属塩の生成を抑制する有機酸捕捉機構を配置した冷凍サイクルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より冷蔵庫、空調機、冷凍機等の冷凍空調分野においては冷媒として、フッ素原子及び塩素原子をその分子構造中に有するフロン、例えばクロロフルオロカーボン(CFC) と総称されるR-11(トリクロロモノフルオロメタン)やR-12(ジクロロジフルオロメタン)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)と総称されるR-22(モノクロロジフルオロメタン)などが使用されてきた。しかしこれらのフロン化合物は、大気中に放出されると対流圏において殆ど分解されることがなく、成層圏で紫外光と反応し、その分解過程においてオゾン層を破壊してゆくことにより地球規模における環境破壊問題として国際的に使用が規制されつつある。そのために、分子中に塩素原子を含まないハイドロフルオロカーボン(HFC)と総称されるオゾン層破壊係数ゼロの代替フロン物質の検討が広くなされている。
【0003】
しかしながら、HFCを冷媒として用いる冷凍サイクルでは、HFC冷媒との相溶性の観点から、ポリアルキレングリコール(PAG)類やエステル類など、極性を有する冷凍機油を使用する必要がある。そして、HFC冷媒自身も極性がCFC、HCFC冷媒に比べて高くなっているために冷媒と冷凍機油からなる作動流体自体が従来の系に比べて非常に吸水性が高いものとなっている。前記極性を有する冷凍機油の中でも、エステル類の方が熱安定性及び電気特性の点においてはPAG類に比べ優れている事からHFC冷媒と共に用いる冷凍機油としてエステル化合物が検討されているが、エステル化合物の特性として水が共存した場合に加水分解を起こす事から、加水分解を起こしにくいヒンダードアルコールと各種脂肪酸(有機酸)から構成されるポリオールエステルが有力視されている。
【0004】
また、冷凍機油の加水分解を抑えるにあたり、冷凍システム内の水分量を可能な限り除去するためにゼオライト等の吸着型乾燥剤を冷凍システム中に装備する工夫がなされている。
【0005】
また、例えば特開平5-66075号公報では、HFC-134a冷媒を用いたカーエアコンにおいて、HFC-134aの気、液状態での飽和水分量の差異を考慮して、水分除去装置を低圧管路に配置することにより、効率良く水分除去をする方法を開示している。特開平4-122792号公報では、冷凍機油の劣化を抑制するために冷凍機油が加水分解して生成される低級脂肪酸(有機酸)を吸着除去するためにイオン交換樹脂を装備した冷凍サイクルが提案されている。
【0006】
また冷凍機油としては、基油の安定性を確保するために色々な酸水分捕捉剤を添加する方法が提案されている(潤滑油100重量部にエポキシ含有フッ素含有ポリシロキサンを添加する特開平4-36387号公報、2又は3価のポリオールグリシジルエーテルを含むPAG系冷凍機油の特開平4-55498号公報、エポキシ含有ポリシロキサンを配合した潤滑油組成物の特開平1-193393号公報、エステル油にグリシジルエーテル型エポキシ化合物を添加した冷凍機作動流体用組成物の特開平6-1970号公報、ポリエーテルに芳香族モノ・ジカルボン酸グリシジル又はエポキシシクロアルキル基含有化合物を添加した冷凍機油の特開平6-240277号公報、基油にリモネンオキサイド、α-ピネンオキサイド、L-カルボンオキサイドからなる群より選ばれたエポキシ化合物を配合した冷凍機油の特開平6-240279号公報など)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、乾燥剤例えば、モレキュラーシーブとして知られるゼオライトのみを冷凍システム内に配置しただけでは水分吸着量が乾燥剤が置かれている雰囲気温度における平衡吸着量に支配され、システム内の水分を全て捕捉する事は不可能であり、エステル化合物の加水分解を阻止することはできない。
【0008】
また、冷凍機油に酸水分捕捉剤を添加した場合には加水分解によって生成する有機酸を捕捉することで、有機酸によるエステル化合物の加水分解反応における酸触媒効果が抑制され、加水分解反応の促進を防ぐことができるが、酸水分捕捉剤自身の重合反応に至ることが多く、結果的にこの重合物によりキャピラリー等の細管部位の閉塞を招くと行った課題が存在した。
【0009】
さらに、イオン交換樹脂を装備した冷凍サイクルでは、冷凍サイクルより除去したい有機酸金属塩の解離定数及びイオン交換樹脂の交換能によりその除去率が大きく変動し、細管部位における有機酸金属塩の析出による閉塞を充分に防ぐことができないといった課題が存在した。
【0010】
また、有機酸がイオン交換樹脂に捕捉された場合においても金属イオン成分のみが冷凍システム中に取り残される形となり、新たな反応活性因子として、大きな冷凍機油劣化の原因の一つになってしまうといった課題が存在した。
【0011】
本発明は、上記の様な従来の冷凍サイクルの課題を解決し、長期間に渡って安定に動作可能なハイドロフルオロカーボンを含む冷媒とポリオールエステル冷凍機油を作動媒体とする冷凍圧縮機、凝縮器、膨張弁等の膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、以下の様な構成とする。
(1)ハイドロフルオロカーボンを含む冷媒とポリオールエステル冷凍機油を作動流体とする冷凍圧縮機、凝縮器、膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルにおいて、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構を配置することを特徴とする冷凍サイクル。
(2)有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構が、冷凍サイクル中において前記凝縮器と蒸発器の間の流路に配置されていることを特徴とする(1)に記載の冷凍サイクル。
(3)有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構が、冷凍サイクル中において前記作動流体の流れに対して圧力損失の少ないアキュムレータ、オイルセパレーター、サクション・ストレーナ又は受液器内部に配置されていることを特徴とする(1)に記載の冷凍サイクル。
(4)有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構が、マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂、キレート樹脂及び水分吸着剤から構成されることを特徴とする(1)、(2)又は(3)に記載の冷凍サイクル。
(5)マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂、キレート樹脂及び水分吸着剤から構成される、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構は、冷凍サイクル本体内を流れる作動流体が水分吸着剤を通過後にマクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂、キレート樹脂層に流入する構造を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の冷凍サイクル。
(6)マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂がスチレン・ジビニルベンゼン共重合体を母体樹脂とすることを特徴とする(4)又は(5)に記載の冷凍サイクル。(7)キレート樹脂がイミノジ酢酸基を有し、樹脂母体がスチレン・ジビニルベンゼン共重合ポリマーあるいはポリフェノールであるキレート樹脂であることを特徴とする (4)又は(5)に記載の冷凍サイクル。
(8)水分吸着剤が合成結晶アルミノケイ酸塩で構成されるゼオライトであることを特徴とする(4)又は(5)に記載の冷凍サイクル。
(9)マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂成形体の形状がビーズ状、または繊維状もしくはその集合体であることを特徴とする(4)又は(5)に記載の冷凍サイクル。
(10)キレート樹脂成形体の形状がビーズ状、または繊維状もしくはその集合体であることを特徴とする(4)又は(5)に記載の冷凍サイクル。
【0013】
このように構成された本発明では、ハイドロフルオロカーボンを含む冷媒とポリオールエステル冷凍機油を作動流体とする冷凍圧縮機、凝縮器、膨張弁等の膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルにおいて、有機酸又は遊離金属イオンを捕捉する機構を配置すれば、ポリオールエステル冷凍機油の加水分解に伴い生成され、また前記加水分解反応を促進する要因にもなる有機酸濃度の上昇を抑制・低下させることが可能となり、さらにはこれら有機酸と反応することにより生成される、膨張弁・キャピラリー等の冷凍システム内細管部位で析出、閉塞現象を起こす原因となる脂肪酸金属塩での金属イオン成分を除去することで長期間に渡って安定に動作可能な冷凍サイクルを得ることができる。
【0014】
有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構を配置することにより、冷凍機油組成物中に、それ自身の反応重合物による閉塞現象を招く可能性のある酸水分捕捉剤を添加する必要がなくなるため、結果的に長期間に渡って安定に動作可能な冷凍サイクルを得ることができる。
【0015】
さらに、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構は、作動流体の流路に配置された場合には基本的に圧力損失の原因となるため、圧力損失が最小となるように、高圧液相状態で作動流体が流動する凝縮器と膨張機構の間の間に配置することによって、冷凍サイクルの能力低下を最小に抑えることができる。
【0016】
また膨張機構と蒸発器の間における作動流体が一部気相状態になった低圧液相状態においても液相からの有機酸および遊離金属イオンの除去および気相部からの有効な水分除去が可能となる。
【0017】
さらに、流路配管に比べて流動断面積が大きなアキュムレーター内部に有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構を配置すれば、作動流体が気相状態であっても圧力損失が小さいために冷凍サイクルの能力低下を最小に抑えることができる。
【0018】
また、オイルセパレータ、サクション・ストレーナ又は受液器等の冷凍システム内において冷凍機油が滞留する部分に有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構を配置すれば、冷凍機油中の有機酸および遊離金属イオンを効率よく除去することが可能である。
【0019】
さらに有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構が、マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂、キレート樹脂及び水分吸着剤の混合層あるいは多段層から構成される構造では、ポリオールエステル冷凍機油の加水分解によって生成された有機酸及び、冷凍システム内細管部位での閉塞の原因となるシステム中に存在する摩耗粉や配管加工時等に混入する金属成分と有機酸とが反応した結果、生成する有機酸金属塩をイオン交換樹脂及びキレート樹脂によって作動媒体より吸着除去あるいは分解した後に吸着除去することが可能となる。さらに、水分吸着剤とも組み合わせることによりポリオールエステル冷凍機油の加水分解反応を抑えることが可能となり、特に水分吸着剤にゼオライトを用いることにより、その活性な表面との相互作用によって有機酸金属塩の分解が促進されることが期待される。特に圧力損失の問題が無い充填量においてはイオン交換樹脂、キレート樹脂及び水分吸着剤は併せて用いるのが有効であるが、イオン交換樹脂とキレート樹脂及び水分吸着剤は分離させて使用しても有効である。
【0020】
また、イミノジ酢酸基を有するキレート樹脂は銅イオンや鉄イオンに対する選択吸着性が良く、有機酸金属塩が分解して生成される金属イオンの吸着除去に有効である。
【0021】
さらに、マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂の中でもスチレン・ジビニルベンゼン共重合体は、交換容量も大きく、物理的強度にも優れ、長期使用において安定した性能を維持することができる。
【0022】
さらに、水分吸着剤としてゼオライトを用いることにより吸水特性にも優れ、ハイドロフルオロカーボンを含む冷媒及びポリオールエステル冷凍機油との化学的相互作用が小さく長期間に渡って安定に動作可能な冷凍サイクルを得ることができる。
【0023】
さらに、マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂及びキレート樹脂成形体がビーズ状であれば、作動媒体が流通可能である容器内部にイオン交換樹脂及びキレート樹脂成形体を充填しても作動媒体の流通が可能であると共に、有機酸及び遊離金属イオンの捕捉反応に寄与するイオン交換樹脂及びキレート樹脂成形体の重量当たりの接触表面積を大きくすることができ、捕捉効率を向上することができる。
【0024】
さらに、マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂及びキレート樹脂成形体が繊維状またはその集合体であれば、作動媒体が流通可能である容器内部にイオン交換樹脂及びキレート樹脂成形体を充填しても作動媒体の流通が可能であると共に、有機酸及び遊離金属イオンの捕捉反応に寄与するイオン交換樹脂及びキレート樹脂成形体の重量当たりの接触表面積を大きくすることができ、捕捉効率を向上することができる。
【0025】
さらに、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構の構造が水分吸着剤にイオン交換樹脂及びキレート樹脂がビーズ状あるいは繊維状の形状で挟み込まれる構造をとることにより、冷凍システムの運転条件の切り替えによって作動流体の流れ方向が変わった際にも対応が可能であり、かつ水分吸着剤としてゼオライトを用いている事により、その活性表面との接触過程で作動流体中に含まれた有機酸金属塩の一部が分解されイオン化された状態でイオン交換樹脂及びキレート樹脂に接触することで、その置換効果を向上させることが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態例について図面を参照して説明する。
【0027】
図1、2、3は、一般的な冷凍圧縮機、凝縮器、膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルの配管図である。冷凍サイクルは、図1に示すように冷凍圧縮機1、凝縮器2、膨張機構3、蒸発器4、さらにこれらを連結する配管5で構成される。図2の冷凍サイクルは四方弁6を有し、この切り替えによって作動流体の流路を変換し、凝縮器と蒸発器の機能を変更することができる。図3の冷凍サイクルはさらに、圧縮機から吐出された冷媒ガス中より冷媒と共に混ざっている冷凍機油を分離するためのオイルセパレータ22、液化冷媒が凝縮器で滞留することを防ぐための受液器23、冷媒中に混入されたゴミや金属などを除去するためのサクション・ストレーナ等を備えた冷凍サイクルの配管図である。
【0028】
本発明の冷凍サイクルでは、さらに有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構を配置することを特徴としている。すなわち、具体的には、水分吸収剤と弱塩基性イオン交換樹脂及びキレート樹脂を組み合わせてなる構造を持ち、水分吸収剤としてはゼオライト、シリカゲル、活性白土、活性アルミナ等が挙げられるが、特にゼオライトが好ましい。
【0029】
また、弱塩基性イオン交換樹脂ではマクロポーラス型の樹脂が好ましく、母体樹脂としてスチレン・アクリル系架橋剤共重合樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合樹脂、交換基として3級あるいは4級アミノ基が挙げられ、特に交換容量が大きく、有機汚染、物理的強度に優れたスチレン・ジビニルベンゼン共重合体を母体樹脂とするマクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂が好ましい。
【0030】
また、キレート樹脂としてはスチレン系、アクリル系、フェノール系の高分子基体にイミノジ酢酸基、ポリアミン基、チオール基、ジチオカルバミド酸基等の官能基を付与させたものが挙げられるが、特に弱酸キレート構造のイミノジ酢酸基を有するキレート樹脂が好ましい。
【0031】
冷凍サイクルにおける作動媒体が流通可能な、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する事が可能な物質を配置した、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構の構造としては、例えば図4〜図7の様な例を挙げることができるが、これらに限定される事はない。
【0032】
図4は、ビーズ状の水分吸収剤7、ビーズ状のイオン交換樹脂8及びビーズ状のキレート樹脂9をメッシュ10で挟んで、作動流体が流通可能な容器11に収納した、有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構12の例である。ここで、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉するイオン交換樹脂及びキレート樹脂と水分吸収剤を分離して別々の容器に収納しても構わない。図5は、図4の構成で固定用スプリング13を組み入れた構成を示した物である。
【0033】
図6は、繊維状のイオン交換繊維8及び繊維状のキレート繊維9をフィルタ14で挟み、その外側にビーズ状の水分吸収剤7をメッシュ10で挟んだ構造をとる、作動流体が流通可能な容器11に収納した、有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構12の例である。フィルターとしては、フォームやガラスフィルター、ガラスウール、スチールウール等を用いる事ができる。
【0034】
図7は、水分吸収剤とイオン交換樹脂及びキレート樹脂を分離させて冷凍システム内にて使用する際の一例であるが、繊維状のイオン交換繊維で構成されたフィルター部17と、繊維状のキレート繊維で構成されたフィルター部16を筒状に内外に配置して構成される構造を有するもので、上記に示した捕捉機構同様に逆止弁15によって、作動流体の流れ方向が変化した場合にも対応可能な構造を有している。
【0035】
上記に実施の形態例として示した有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構では、循環する作動媒体全てが流通するために冷凍サイクル内での流動抵抗が発生する。そのために、上記捕捉機構の設置場所としては、流動抵抗が小さくなる、液相状態で作動媒体が流動する部分、すなわち凝縮器と蒸発器の間の流路に設置することが、冷凍サイクルの能力低下を小さくすることができるため好ましい。より具体的には、高圧液相状態で常に作動流体が流れる凝縮器と膨張機構との間の流路に設置することが望ましい。
【0036】
図8は、本発明の冷凍圧縮機1、凝縮器2、膨張機構3、蒸発器4ならびに凝縮器2と蒸発器4の間の流路に、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構12を備えた冷凍サイクルの全体構成を示した配管図である。有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構を具備したことを除き、冷凍サイクルの構成は従来公知のものとほぼ同一であるため、冷凍サイクルの詳細な説明は省略する。
【0037】
その他の設置場所としては、流動断面積の大きな部分あるいは冷凍システム内において冷凍機油が滞留する部分、たとえばアキュムレーター20、サクション・ストレーナ21、オイルセパレータ22、受液器12、冷凍圧縮機1のシェル内部に流動断面積全てを占めることなく、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構を設置することが有効である。但し、冷凍圧縮機のシェル内部は温度が高くなるため、用いるイオン交換樹脂及びキレート樹脂の劣化が促進される場合もあり必ずしも好ましくはない。
【0038】
この様な位置に設置する場合の有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構の構造例を図9に示した。図9では、作動媒体が流通可能な袋18に、イオン交換樹脂8及びキレート樹脂9を充填したものである。この様な有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構19を アキュムレーター、サクション・ストレーナ、オイルセパレータあるいは、受液器内部に入れておけば良い。ここで、袋18中に水分吸収剤を充填しておいても問題は無い。また、上記捕捉機構19にフロート等をつけてアキュムレーター、サクション・ストレーナ、オイルセパレータあるいは、受液器内部に吊り下げる方式にしても構わない。
【0039】
【実施例】
以下、さらに具体的な実施例を挙げて説明する。
(実施例1)
銅製容器内にキレート樹脂であるダイヤイオンCR11(三菱化学(株)社製)10gを中心として、弱塩基性イオン交換樹脂であるIONAC AFP-329 (SYBRON CHEMICALS社製)5gづつを同キレート樹脂の両側にメッシュを介して充填し、さらにそれらの外側にメッシュを介してゼオライトを30gづつ配した構成からなる有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を作製し、ルームエアコンの凝縮器とキャピラリの間に設置した。ここで、ゼオライトの両側もメッシュで挟むことによって同構造を強度的に維持している。
【0040】
上記のルームエアコンのシステムと有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備していないルームエアコンのシステムに、ポリオールエステル冷凍機油250g、冷媒としてR407C 700g、水0.5gを充填して2000時間の連続運転を行った。運転終了後に冷凍機油の全酸価を測定すると、前記有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備したルームエアコンのシステムにおいては、0.03mgKOH/gであったが、装備していないルームエアコンのシステムにおいては0.2mgKOH/gであった。
【0041】
また、解体してキャピラリ部分を分析すると、有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備していないルームエアコンのシステムにおいては脂肪酸鉄塩が付着しているのが観測されたが装備していたシステムにおいては何も検出されなかった。
(実施例2)
銅製容器内にポリスチレン系キレート繊維IDA-Na(東レ(株)社製)10gとイオン交換繊維IONEX(東レ(株)社製)10gをグラスウールフィルターで挟み、その外側にゼオライトを30gづつ配した構成からなる有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を作製し、ルームエアコンの凝縮器とキャピラリの間に設置した。
【0042】
ここで、ゼオライトの両側もメッシュで挟むことによって同構造を強度的に維持している。上記のルームエアコンのシステムと有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備していないルームエアコンのシステムに、ポリオールエステル冷凍機油250g、冷媒としてR407C 700g、水0.5gを充填して2000時間の連続運転を行った。運転終了後に冷凍機油の全酸価を測定すると、前記有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備したルームエアコンのシステムにおいては、0.02mgKOH/gであったが、装備していないルームエアコンのシステムにおいては0.2mgKOH/gであった。 また、解体してキャピラリ部分を分析すると、有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備していないルームエアコンのシステムにおいては脂肪酸鉄塩が付着しているのが観測されたが装備していたシステムにおいては何も検出されなかった。
(実施例3)
作動媒体が流通可能な袋中にイミノジ酢酸基を官能基とするキレート樹脂アンバーライト(IRC-718)(Rohm and Haas社製) 10gと弱塩基性イオン交換樹脂であるダイヤイオンWA11(三菱化学(株)社製)10gを入れ、さらにゼオライトを30g入れて袋から充填物が流出しないように封止し、有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を作製した。
【0043】
封止した袋に、ポリオールエステル冷凍機油及びハイドロフルオロカーボンを含む冷媒に対し化学的に安定な素材から成る浮きを取り付け、ルームエアコンの冷凍サイクル中にあるアキュムレーター内に入れておいた。上記のルームエアコンのシステムと有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備していないルームエアコンのシステムに、ポリオールエステル冷凍機油250g、冷媒としてR407C 700g、水0.5gを充填して2000時間の連続運転を行った。
【0044】
運転終了後に冷凍機油の全酸価を測定すると、前記有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備したルームエアコンのシステムにおいては、0.03mgKOH/gであったが、装備していないルームエアコンのシステムにおいては0.2mgKOH/gであった。 また、解体してキャピラリ部分を分析すると、有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を装備していないルームエアコンのシステムにおいては脂肪酸鉄塩が付着しているのが観測されたが装備していたシステムにおいては何も検出されなかった。
【0045】
以上の様に、本発明の有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を配置したハイドロフルオロカーボンを含む冷媒とポリオールエステル冷凍機油を作動媒体とする冷凍圧縮機、凝縮器、膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルでは、長期間に渡って安定な動作が可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたところから明らかなように、本発明によれば、長期間に渡って安定に動作可能なハイドロフルオロカーボンを含む冷媒とポリオールエステル冷凍機油を作動媒体とする冷凍圧縮機、凝縮器、膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷凍圧縮機、凝縮器、膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルを示す全体構成図である。
【図2】冷凍圧縮機、凝縮器、四方弁、蒸発器ならびにアキュムレータを備えた冷凍サイクルを示す全体構成図である。
【図3】冷凍圧縮機、凝縮器、四方弁、膨張機構、蒸発器、アキュムレータ、サクション・ストレーナ、オイルセパレータならびに受液器を備えた冷凍サイクルを示す全体構成図である。
【図4】本発明の冷凍サイクルに用いる有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構の一構成例を示す図である。
【図5】本発明の冷凍サイクルに用いる有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構のその他の構成例を示す図である。
【図6】本発明の冷凍サイクルに用いる有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構のその他の構成例を示す図である。
【図7】本発明の冷凍サイクルに用いる有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構のその他の構成例を示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態例である冷凍圧縮機、凝縮器、四方弁、膨張機構ならびに蒸発器、ならびに有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構を備えた冷凍サイクルの全体構成図である。
【図9】本発明の冷凍サイクルに用いる有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構のその他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 冷凍圧縮機
2 凝縮器
3 膨張機構
4 蒸発器
5 配管
6 四方弁
7 水分吸着剤
8 弱塩基性イオン交換樹脂
9 キレート樹脂
10 メッシュ
11 作動媒体が流通可能な容器
12 有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構
13 スプリング
14 フィルター
15 逆止弁
16 弱塩基性イオン交換樹脂から成るフィルター
17 キレート樹脂から成るフィルター
18 袋
19 有機酸及び遊離金属イオン捕捉機構
20 アキュムレータ
21 サクション・ストレーナ
22 オイルセパレータ
23 受液器
Claims (8)
- ハイドロフルオロカーボンを含む冷媒とポリオールエステル冷凍機油を作動流体とする冷凍圧縮機、凝縮器、膨張機構ならびに蒸発器を備えた冷凍サイクルにおいて、
マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂、キレート樹脂及び水分吸着剤から構成される、有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構を更に備え、
前記有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構は、前記冷凍サイクル本体内を流れる前記作動流体が前記水分吸着剤を通過後に前記マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂、前記キレート樹脂に流入する構造を有することを特徴とする冷凍サイクル。 - 前記有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構が、前記冷凍サイクル中において前記凝縮器と前記蒸発器の間の流路に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル。
- 前記有機酸及び遊離金属イオンを捕捉する機構が、前記冷凍サイクル中において前記作動流体の流れに対して圧力損失の少ないアキュムレータ、オイルセパレーター、サクション・ストレーナ又は受液器内部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル。
- 前記マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂がスチレン・ジビニルベンゼン共重合体を母体樹脂とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷凍サイクル。
- 前記キレート樹脂がイミノジ酢酸基を有し、樹脂母体がスチレン・ジビニルベンゼン共重合ポリマーあるいはポリフェノールであるキレート樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷凍サイクル。
- 前記水分吸着剤が合成結晶アルミノケイ酸塩で構成されるゼオライトであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の冷凍サイクル。
- 前記マクロポーラス型の弱塩基性イオン交換樹脂成形体の形状が、ビーズ状、又は繊維状もしくはその集合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の冷凍サイクル。
- 前記キレート樹脂成形体の形状がビーズ状、又は繊維状もしくはその集合体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の冷凍サイクル。
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