JP2013133987A - 冷凍サイクル用ドライヤ及び冷凍サイクル - Google Patents
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Abstract
【課題】冷媒中に含まれる水分を吸着可能な吸着剤を備えた冷凍サイクル用ドライヤであって、吸水時における耐熱性能の低下に原因して吸着剤の劣化を伴うことのないドライヤを提供すること。
【解決手段】吸着剤を、式(I)により模式的に表されるポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマー(式中、Mは、水素原子を表すかもしくは一価又は二価の金属原子であり、ただし、Mが金属原子を表すとき、−COO・金属の占める割合は、−COOMの全量を基準として、10%以下である)から構成する。また、この吸着剤を、吸着剤を取り囲む雰囲気の相対湿度と吸着剤における水分の吸着率との関係をプロットしたとき、相対湿度の上昇と相俟って、水分の吸着率の上昇の度合いが増大するように構成する。
【選択図】なし
【解決手段】吸着剤を、式(I)により模式的に表されるポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマー(式中、Mは、水素原子を表すかもしくは一価又は二価の金属原子であり、ただし、Mが金属原子を表すとき、−COO・金属の占める割合は、−COOMの全量を基準として、10%以下である)から構成する。また、この吸着剤を、吸着剤を取り囲む雰囲気の相対湿度と吸着剤における水分の吸着率との関係をプロットしたとき、相対湿度の上昇と相俟って、水分の吸着率の上昇の度合いが増大するように構成する。
【選択図】なし
Description
本発明は、冷凍サイクル用ドライヤに関し、さらに詳しく述べると、冷媒中に含まれる水分を吸着する作用を有する吸着剤(「乾燥剤」、「脱水剤」などと呼ばれることもある)を備えた冷凍サイクル用ドライヤに関する。本発明はまた、かかるドライヤを備えた冷凍サイクルに関する。ここで、「冷凍サイクル」とは、各種の空調装置、具体的には、例えば家庭用エアコン、常務用(店舗用、ビル用、施設用)エアコン、自動車用(車両用)エアコンなどで用いられる冷凍サイクル、特に蒸気圧縮式の冷凍サイクルを意味する。また。本発明の「冷凍サイクル」は、広義にはヒートポンプサイクルも意味し、定置式の給湯器や室内暖房装置において使用してもよい。
蒸気圧縮式の冷凍サイクルでは、冷媒中に多量の水分が含まれていると、冷媒が断熱膨張して急激に冷却されることで氷結し、冷媒を減圧する減圧手段を構成する膨張弁やキャピラリーチューブが閉塞されることがある。また、冷凍サイクル中に水分が析出すると、構成部品の内部腐食が促進される。このため、従来の冷凍サイクルでは、凝縮器(コンデンサ)から流出した冷媒を気液分離して液相冷媒を溜める受液器の内部に、吸着剤を有するドライヤ(冷凍サイクル用ドライヤ)を収容することが一般的に行われている。
ドライヤは、吸着剤にて冷媒中の水分を吸着する吸着手段を構成している。吸着剤としては、冷媒中の水分濃度が低い状態においても吸着性能が高いゼオライト(モレキュラーシーブ)やシリカゲルが採用されている。ここで、ゼオライトやシリカゲルといった吸着剤は、自重に対する吸水量(吸着容量)が少ないため、冷媒中の水分の吸水量を増加させたいときには、吸着剤の充填量を増加させる必要がある。この場合、受液器内部における吸着剤充填のための空間の拡大等が必要になり、冷凍サイクルの大型化を甘受しなければならない。
空間の拡大等の問題を解決するため、ゼオライトやシリカゲルに比べて吸着容量が多い高吸水性樹脂を吸着剤として採用することが提案されている。例えば特許文献1は、冷凍サイクルに使用する脱水装置において、冷凍サイクルの、冷媒が導入されるリキッドタンクに、乾燥剤として、例えば酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体ケン化物、イソブチレン/マレイン酸共重合体架橋物、ポリエチレンオキシド系樹脂などの高吸水性樹脂を使用することを提案している。また、特許文献2は、空調脱水機において、フレオン等の冷媒から蓄積水を除去するために、カルボン酸塩系の吸水性ポリマーを包み込んだ交換可能な多孔質バッグを使用することを提案している。さらに、特許文献3は、フッ化炭化水素系冷媒及び脂肪族系合成潤滑油を作動媒体とする冷凍圧縮機を備えた冷凍装置において、作動媒体の流路に、例えばビニルアルコール/アクリル共重合体などの高吸水性樹脂からなる脱水剤を配置することを提案している。
ところで、上記したような従来の冷凍サイクル用吸着剤には多くの課題が残されている。例えば車両用の冷凍サイクルでは、車両走行中等において振動が発生するため、すべての冷媒配管を金属製の配管から構成することが困難であり、ゴムホース等の配管が使用され、さらには気密性の確保のため、Oリング等のシーリング手段が併用されている。しかしながら、このような非密閉タイプの冷凍サイクルでは、冷凍サイクルに冷媒を充填するときに水が混入してしまうといった不具合や、ゴムホースやOリングを介して透過してきた水分が冷凍サイクルに浸入してしまうといった不具合がある。
ゴムホースやOリングを介して水分が透過するとき、ゼオライト等の吸着剤の使用を避けることが望ましい。なぜなら、かかる吸着剤は、水の吸着容量が少ないことに加えて、溶媒中の水分濃度が低い場合において水分透過速度が増加することが懸念されるため、冷媒中の水分量を効率よく低下させることができないという問題を抱えているからである。ゼオライト等の吸着剤に代えて、高吸水性樹脂を使用した場合には、冷媒中の水分濃度が低い状態における吸着性能が低いため、ゼオライト等に比較して水分透過速度の増加を抑制できるというメリットがある。しかしながら、高吸水性樹脂を吸着剤として使用した場合には、新たな問題が発生してくる。すなわち、現在冷凍サイクルにおいて冷媒として常用されているフロン類、例えばR22、R134aなどは、水と反応して、冷凍サイクルにおいて冷媒の氷結を促進する包摂化合物(クラスレート)を生成してしまうので、冷媒中の水分濃度を所定濃度以下に低下させる必要がある。そのため、冷媒中の水分濃度が低い状態において低い吸着性能を示すような高吸水性樹脂を吸着剤として採用した場合、冷凍サイクルにおいて冷媒が凍結するという問題が発生するおそれがある。つまり、ドライヤの吸着剤として単に高吸水性樹脂を使用しただけでは、ゼオライト等の吸着剤を使用した場合と同様、多量の高吸水性樹脂を使用して、冷媒中の水分濃度が低い状態における吸着性能を向上させる必要がある。
本発明者らは、非密閉タイプの冷凍サイクルにおいて高吸水性樹脂を吸着剤として使用した場合の従来の問題点を解決すべく鋭意研究した結果、冷媒中に含まれる水分を吸着する吸着剤を有する冷凍サイクル用ドライヤにおいて、高吸水性樹脂からなる吸着剤と、分子式:C3HmFn(式中、m=1〜5及びn=1〜5、かつm+n=6)で示され、分子構造中に1つの二重結合を有する有機化合物からなる冷媒を組み合わせて使用することが有効であるという知見を得た。高吸水性樹脂は、周知のようにおむつ等で高分子吸収体として広く使用されており、一般的にアクリル酸、アクリル酸ナトリウム及び架橋性モノマーを共重合することにより調製されたポリアクリル酸ナトリウムからできている。ポリアクリル酸ナトリウムでは、吸湿時、図1に模式的に示されるように、分子網のカルボキシル基やカルボキシルナトリウム基が水(H2O)を引き寄せることができる。また、吸水時には、図2に模式的に示されるように、カルボキシルナトリウム基のナトリウム(Na+)が分子網のなかで水分と混ざり合い、浸透圧の原理により吸水可能となる。また、吸水の結果、その吸水の程度に応じて分子網が広がっていく。これに伴って、ポリアクリル酸ナトリウムがゲル化することとなる。
ポリアクリル酸ナトリウムを吸着剤として使用したドライヤでは、冷媒中の水分濃度が低い状態における吸着性能が低い吸着剤を使用したとしても、併用する冷媒が、水との反応による包摂化合物が生成され難い構造を有する化合物であるため、多量の高吸水性樹脂を使用することなく、冷凍サイクルにおける冷媒の凍結を防止することができる。
ところで、本発明者らの最近の研究から、ハイドロフルオロオレフィン系冷媒とポリアクリル酸ナトリウム(高吸水性樹脂)からなる吸着剤の上記のような組合せでも、車両用冷凍サイクル等においてドライヤとして使用したときに、依然として解決されるべき課題の存在することが明らかになった。以下に図3及び図4を参照して説明するように、高吸水性樹脂は、吸水時にゲル化してしまうこともあり、吸水時の耐熱性能が非常に低いということがわかる。そのため、従来のおむつ等で使用されている高吸水性樹脂をそのまま吸着剤として車両用冷凍サイクルのためのドライヤとして使用すると、通常吸湿目的のみで使用している分には問題はないけれども、何らかのイレギュラーで、例えばゴムホースやOリングを介して冷凍サイクル内に水分が浸入してしまった場合、ゲル化した高吸水性樹脂が劣化し、エアコンサイクル内に流出し、最悪のとき、高吸水性樹脂が熱交換器内に詰まってしまったり、コンプレッサ内で不具合を起こし、コンプレッサロックが発生してしまったりするおそれがある。
ここで、吸水時における高吸水性樹脂のゲル化と耐熱性能の低下を図3及び図4を参照して説明する。高吸水性樹脂(SAP)の耐熱性能を試験するため、図3に示した試験条件を採用した。SAPを水と混合して供試サンプルを調製した。サンプル(a)は、吸湿状態を想定したもので、混合した水の分量をSAPの0.5倍とした。一方、サンプル(b)は、吸水状態を想定したもので、混合した水の分量をSAPの1.5倍とし、それぞれのサンプルを所定の時間(0〜800時間)にわたって90℃に保たれた恒温槽で保持した。本試験では、耐熱性能の低下を耐熱強度の劣化から判断するため、耐熱強度の劣化の度合いと相関関係のある吸水倍率を測定した。吸水倍率の測定に当たっては、それぞれのサンプルをナイロン(ポリアミド)製のメッシュ袋に収容し、初期重さを測定した。次いで、サンプルを袋ごと約1時間にわたってイオン交換水中に浸漬し、吸水させた。その後、袋を水から取り出し、約15分間にわたって吊り下げることでサンプルを水切りし、水切り後の重さを測定した。吸水倍率(%)は、式:(水切り後の重さ)÷(初期重さ)×100で求めた。
図4は、上記のような試験で得られた結果をプロットしたグラフである。初期水分量が0.5倍のとき(図1の(a)に対応)の試験結果は実線(a)で示されている。この試験のとき、試験時間が600時間を上回る領域Aにおいて、吸水倍率の低下は少なく、分子網の架橋が壊れていないことがわかった。ところが、初期水分量が1.5倍のとき(図1の(b)に対応)のとき、満足しうる結果を得ることができなかった。この場合の試験結果は実線(b)で示されているけれども、試験時間が600時間を上回る領域Bにおいて、分子網の架橋が壊れて液状化し、吸水倍率を測定不可能な状態となった。耐熱性能の低下の度合いは吸水倍率から判断することができるので、このような試験結果から、従来の高吸水性樹脂(SAP)は、吸水時の耐熱強度が低いことを確証できる。
したがって、本発明の目的は、高吸水性樹脂を吸着剤として車両用冷凍サイクル等におけるドライヤにおいて使用したときでも、高吸水性樹脂において、吸水時、高吸水性樹脂のゲル化に起因した耐熱性能の低下の問題が発生せず、したがって、高められた温度での使用条件下でも長期にわたって吸湿性等の性能の劣化を伴うことのない、特に冷凍サイクル用ドライヤ及び冷凍サイクルにおいて有用な吸着剤を提供することにある。本発明のその他の目的は、以下の説明から明らかとなろう。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、分子網に結合した官能基の主成分がもっぱらカルボキシル基(−COOH)で構造された高吸水性樹脂であれば、それを車両用空調装置(エアコン)において吸着剤として使用したときに所期の目的を達成できるということを発見し、本発明を完成した。もっぱらカルボキシル基から官能基が構成されている高吸水性樹脂は、高吸水性樹脂に特有の高吸水性をそのまま維持する一方で、吸水時においても、耐熱性能の低下を生じない、換言すると、耐熱性が問題とならない程度に良好である。なお、「高吸水性樹脂」は、この技術分野で一般的に用いられているように、「高吸水性ポリマー」とも呼ばれ、また、英文表記「Superabsorbent Polymer」の頭文字から“SAP”と呼ばれることもある。
本発明は、1つの面において、冷媒中に含まれる水分を吸着可能な吸着剤を備えた冷凍サイクル用ドライヤであって、前記吸着剤は、次式(I)により模式的に表されるポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマー:
(式中、Mは、水素原子を表すかもしくは一価又は二価の金属原子であり、ただし、Mが金属原子を表すとき、−COO・金属の占める割合は、−COOMの全量を基準として、10%以下である)であり、該吸着剤を取り囲む雰囲気の相対湿度と該吸着剤における水分の吸着率との関係をプロットしたとき、相対湿度の上昇と相俟って、前記水分の吸着率の上昇の度合いが増大することを特徴とする冷凍サイクル用ドライヤにある。
また、本発明は、もう1つの面において、上記のような冷凍サイクル用ドライヤを備えていることを特徴とする蒸気圧縮式の冷凍サイクルにある。
本発明は、いろいろな形態で有利に実施することができる。好適な形態のいくつかを以下で説明するこれども、本発明の形態は、これらの形態に限定されるものではない。
本発明の冷凍サイクル用ドライヤは、冷媒中に含まれる水分を吸着可能な吸着剤を一構成員として含有する。本発明で使用する吸着剤は、高吸水性樹脂(SAP)、好ましくはポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマーであり、上式(I)により模式的に表すことができる。式(I)で示されるように、このポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマーでは、分子構造に含まれる官能基の実質的に全部がヒドロキシル基(−COOH)で占められており、任意に、本発明の作用効果に悪影響を及ぼさない範囲で、カルボキシル基の水素原子が他の金属原子で置換された別の官能基:−COOMを有することができる。ここで、Mは、一価又は二価の金属原子である。一価の金属原子のとき、Mは、周期律表の1A族に属する金属元素であり、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びフランシウムからなる群から選ばれる。価格や入手の容易性などの面から、一価金属は、典型的にはナトリウムである。また、二価の金属原子のとき、Mは、周期律表の2A族に属する金属元素であり、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムからなる群から選ばれる。価格や入手の容易性などの面から、二価金属は、典型的にはマグネシウムやカルシウムであり、とりわけカルシウムである。一価金属及び二価金属は、それぞれ、通常は単独で存在しうるけれども、必要に応じて、2種以上で存在することも可能である。
本発明者らの知見によると、分子構造の官能基に−COOM(Mは金属原子を表す)が含まれるとき、そのような官能基は、従来のSAPのように多量に存在してはならない。例えば、通常おむつ用途などで使用されているSAPの場合、分子構造に含まれる官能基は、−COONaが約7割で、残り約3割が−COOHとなっている。このように、SAPに結合している官能基:−COOM(Mは金属原子を表す)の割合が大きいと、水との親和性が良好であることに起因して、材料の吸湿性能、吸水時の耐久性が大きく低下するため、そのSAPを車両用空調装置の乾燥剤として満足のいく形で使用することができない。−COONaを含めて、−COO・M(金属)の占める割合は、SAPの分子構造に含まれる官能基:−COOM(水素又は金属)の全量を基準として、10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5%以下である。換言すると、SAPの分子構造に含まれる官能基:−COOHは、官能基の全量の少なくとも90%超であることが好ましく、95%超であることがさらに好ましい。本発明の実施において、次式(II)により示されるように、官能基の全量が−COOHで占有されていることが最も好ましい。
本発明によれば、このように官能基の実質的に全量が−COOHで占有されているSAPを使用することで、水との親和性の低下に由来して、空気中において吸湿しにくいとともに、保管・取扱い性が良好な吸着剤を提供することができ、さらには、車両用エアコン等の高温使用環境に耐えうる冷凍サイクル用ドライヤ、そして冷凍サイクルを提供することができる。
次いで、分子構造内の−COOHの量が官能基の全量の90%超であることが好ましい理由を、SAP中の官能基の−COONaの割合とSAPの劣化率の関係をプロットしたグラフである図5を参照して説明する。
図示の測定結果を得るため、−COONaの含有割合(換言すると、−COOHの含有割合)を異にする合計で6種類のSAPをサンプルとして用意し、耐熱試験により劣化率(%)を測定した。本耐熱試験では、−COONaを含有しない、−COOHの含有割合が100%であるSAP(未中和;ポリアクリル酸そのもの)と、ポリアクリル酸に濃度の異なる中和剤を併用することで調製した、中和レベルの異なる、すなわち、−COONaをいろいろな割合で含有するSAP(中和;ポリアクリル酸ナトリウム)とをサンプルとして使用した。官能基:−COONaの割合を変えた中和のSAPは、中和剤の濃度を変えることにより反応の進み方が変わるので、慣用の手法により容易に調製することができた。
(耐熱試験と劣化率の評価)
本試験は、耐熱性能の低下を耐熱強度の劣化を示す劣化率(%)から判断することに基いており、耐熱強度の劣化の度合いと相関関係のある吸水倍率を測定することで劣化率を評価するものである。なぜなら、SAPは、熱劣化が発生したとき、SAPの分子構造に含まれる架橋部分が切断されてしまうので、架橋切断により吸水倍率が変化するからである。したがって、耐熱試験の前後において、重量の変化から吸水倍率を測定することで、耐熱性能の低下を評価することができる。
本試験は、耐熱性能の低下を耐熱強度の劣化を示す劣化率(%)から判断することに基いており、耐熱強度の劣化の度合いと相関関係のある吸水倍率を測定することで劣化率を評価するものである。なぜなら、SAPは、熱劣化が発生したとき、SAPの分子構造に含まれる架橋部分が切断されてしまうので、架橋切断により吸水倍率が変化するからである。したがって、耐熱試験の前後において、重量の変化から吸水倍率を測定することで、耐熱性能の低下を評価することができる。
それぞれのSAPを水と混合して供試サンプルを調製した。それぞれのサンプルにおいて、混合した水の分量をSAPの1.5倍とし、それぞれのサンプルを容器に入れた状態で、所定の時間(336時間)にわたって110℃に保たれた恒温槽で保持した。この保持温度は、140℃×168時間の10℃半減則に基いている。
吸水倍率の測定に当たって、それぞれのサンプルをナイロン(ポリアミド)製のメッシュ袋に収容し、初期重さを測定した。次いで、サンプルを袋ごと約1時間にわたってイオン交換水中に浸漬し、吸水させた。その後、袋を水から取り出し、約15分間にわたって吊り下げることでサンプルを水切りし、水切り後の重さを測定した。吸水倍率(%)は、式:(水切り後の重さ)÷(初期重さ)×100で求めた。
次いで、それぞれの供試サンプルの吸水倍率を比較した。比較に当たっては、−COOHの含有割合が100%である未中和のSAPからなるサンプル(本発明品)の吸水倍率を基準値とし、この基準値をその他のサンプル(比較品)の吸水倍率の低下率(%)と比較した。吸水倍率の低下率(%)は、式:−(比較品の吸収倍率)÷(本発明品の吸収倍率)×100で求めた。強度劣化の割合と吸水倍率との間には相関関係があるので、上記のようにして求めた吸水倍率の低下率を劣化率(%)とみなし、図5にプロットした。
再び図5を参照すると、出願人の社内基準に従うと、劣化率(%)は、図において点線で示すように、−30%が基準となっている。よって、本耐熱試験を行うに当たって、劣化率が−30%以下のものを「許容可能」と設定した。図示のように、SAP中の−COONaの割合が増加すればするほど、SAPの耐熱性が低下し、劣化率が増大した。かかる結果から、本発明の場合、SAPの官能基がすべて−COOHであることが耐熱性、耐久性あるいは劣化率に関して最も好ましいけれども、必要に応じて、−COOHの一部が−COONaで置換されていてもよく、そのような置換ケースの場合には、−COONa(必要に応じて、他の−COOMでも可)で表される官能基が10%までの量で導入されていても許容可能である。
引き続いて、未中和SAP(−COOHの含有割合が100%であるSAP)が空気中で吸湿しにくいことの理由を、SAPの、相対湿度(%)と吸湿率(%)の関係をプロットした吸着等温線のグラフである図6を参照して説明する。
図示の吸着等温線を得るため、下記の4種類のSAP:
サンプル1A:
官能基COONa/COOH=70%/30%のSAP(三洋化成社より商品名「サンフレッシュST−500D」として入手可能);測定温度、25℃
サンプル1B:
官能基COONa/COOH=70%/30%のSAP(三洋化成社より商品名「サンフレッシュST−500D」として入手可能);測定温度、45℃
サンプル2A:
官能基COOH=100%のSAP(未中和品);測定温度、25℃
サンプル2B:
官能基COOH=100%のSAP(未中和品);測定温度、45℃
を用意した。上記したように、測定温度は、未中和品(本発明品)及び市販品(サンフレッシュST−500D)について、25℃及び45℃を適用した。それぞれのサンプル量は、1gであった。
サンプル1A:
官能基COONa/COOH=70%/30%のSAP(三洋化成社より商品名「サンフレッシュST−500D」として入手可能);測定温度、25℃
サンプル1B:
官能基COONa/COOH=70%/30%のSAP(三洋化成社より商品名「サンフレッシュST−500D」として入手可能);測定温度、45℃
サンプル2A:
官能基COOH=100%のSAP(未中和品);測定温度、25℃
サンプル2B:
官能基COOH=100%のSAP(未中和品);測定温度、45℃
を用意した。上記したように、測定温度は、未中和品(本発明品)及び市販品(サンフレッシュST−500D)について、25℃及び45℃を適用した。それぞれのサンプル量は、1gであった。
(吸着性能の評価)
それぞれのサンプルをナイロン(ポリアミド)製のメッシュ袋に収容し、初期重さを測定した。次いで、サンプルを袋ごと、異なる相対湿度(20%、30%、40%、60%又は80%)及び温度(25℃又は45℃)で保持した恒温槽に収容し、48時間にわたって載置した。このようにしてサンプルに吸湿処理を施した後、吸湿後のサンプルの重量を測定した。
それぞれのサンプルをナイロン(ポリアミド)製のメッシュ袋に収容し、初期重さを測定した。次いで、サンプルを袋ごと、異なる相対湿度(20%、30%、40%、60%又は80%)及び温度(25℃又は45℃)で保持した恒温槽に収容し、48時間にわたって載置した。このようにしてサンプルに吸湿処理を施した後、吸湿後のサンプルの重量を測定した。
次いで、それぞれのサンプルの吸湿率を計算した。吸湿率を計算するに当たって、上記のようにして測定した吸湿前後のサンプルの重量差をもとに、次式にしたがって計算を行った。
SAPの吸湿量(g)=SAPの吸湿後の重量(g2)−SAPの初期重さ(g1)
吸湿率(%)=(SAPの吸湿量g)÷(SAPの初期重さg1)×100
吸湿率(%)=(SAPの吸湿量g)÷(SAPの初期重さg1)×100
下記の第1表は、得られた計算結果をまとめたものであり、また、図6は、第1表に記載の計算結果をグラフにプロットしたものである。なお、第1表に記載のデータについて付言すると、相対湿度が比較的に低い場合、SAPの吸湿率は、適用した温度に左右されることがなく、自重の10%程度以下となる。
図6にプロットしたグラフより、相対湿度が等しい場合、未中和品(本発明品)は市販品(サンフレッシュST−500D)に比較して吸湿性能が適度に低いので、空気中に長時間放置した場合、本発明品は、望ましいことに吸湿しにくいことがわかる。また、吸湿しにくいため、本発明品は、取扱い性に優れ、保管もしやすい。一例を挙げると、例えば工場内においてSAPを吸着剤として冷凍サイクルに取り付けるとき、吸着剤が一時的に空気に触れるという問題があるけれども、本発明品は、そのような場合であっても、取り付けの前あるいはその間にほとんど吸湿しないというメリットがある。
加えて、本発明の吸着剤では、その吸着剤を取り囲む雰囲気の相対湿度と吸着剤における水分の吸収率との関係をプロットしたとき、相対湿度の上昇と相俟って、水分の吸着率の上昇度合いが増大することが必要である。但し、この場合の水分の吸着率の上昇度合い(吸着等温線の増大の傾き)は、上記したように、本発明のSAPは、未中和であるかもしくはほとんど未中和であることに起因して、空気中において吸湿しにくい材料であるため、従来の中和されたSAPに比較してゆるい傾きで吸着等温線の増大を示すことができる。このような特定の吸着特性をもったポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマーを吸着剤として採用しているので、本発明では、ゼオライト等の従来の吸着剤に比べて水分透過速度の増加を抑制でき、また、従来の吸着剤に比べて冷媒中の水分量を効率よく低下させることができる。
また、本発明で吸着剤として用いられるポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマーは、ポリアクリル酸塩系ポリマーの製造において一般的に使用されている手法で、あるいはその手法を変更して、製造することができる。例えば、官能基としてCOOHのみを有するポリアクリル酸(未中和のSAP)は、通常、水溶液重合法又は逆相懸濁重合法によって製造することができる。例えば、水溶液重合法は、アクリル酸及びそのナトリウム塩の混合物を、断熱式重合又はベルト式重合で、レドックス系、過硫酸塩系、アゾ系などの重合触媒及び溶媒(水)の存在下において重合させることで開始することができる。得られるポリマーは、通常粉末状である。また、逆相懸濁重合法は、アクリル酸及びそのナトリウム塩の混合物を、バッチ式重合で、レドックス系、過硫酸塩系、アゾ系などの重合触媒及び溶媒(ヘキサン、トルエン、水)の存在下において重合させることで開始することができる。得られるポリマーは、通常小球状である。
官能基としての−COOHのごく一部が−COONaなどにより置換されているポリアクリル酸塩系ポリマーも、上記の手法に準じて製造することができる。但し、この場合には、アクリル酸CH2=CH(−COOH)を例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の中和剤を用いて中和する。ここで、併用する中和剤の種類や濃度を変えることにより、−COOHと置換されるべき官能基(−COONa、−COOK等)を選択し、かつそのような置換官能基の占有量を任意に調整することができる。中和剤を存在させると、反応の進み方が変わり、官能基の割合を変更することができるからである。
本発明の冷凍サイクル用ドライヤにおいて、高吸水性樹脂(SAP)からなる吸着剤は、通常、粉末状、小球状、ペレット状、繊維状など、製造方法等に依存して任意の形態をとることができる。また、これらの吸着剤は、ドライヤに組み込むとき、そのままの形態で受液器などに収容して使用するのではなくて、袋体などに入れた後に収容するのが好ましい。なぜなら、SAPは、水分を吸着することでゲル状になるため、そのまま冷凍サイクルに導入した場合には冷凍サイクルの作動に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。例えば、単にSAPを冷凍サイクル内に設けると、水分の吸着によりゲル状に変化したSAPが、冷凍サイクル内を循環し、狭い配管やフィルタなどの目詰まりを引き起こすおそれがある。
吸着剤は、通常、水分透過性の材料から形成された袋体に入れた状態で使用されるのが好ましい。ここで、「水分透過性」とは、材料そのものが水分透過性を有していてもよく、さもなければ、水分透過を可能とする工夫(例えば、気孔、貫通孔、開口など)が袋体に付与されていてもよい。また、効率面や、製造の容易性、取扱い性などの面から通常は袋体の形態であることが望ましいけれども、必要に応じてその他の形態を採用してもよい。袋体は、通常、多孔性もしくは有孔のフィルム、ネット(網状体)などであることができる。細孔の口径やネットの口径は、袋体に収容するSAPのサイズに応じて任意に変更することができる。袋体の材料は、特別のものである必要はなく、袋体に要求される水分透過性、耐久性、機械的強度などが得られる限りにおいて、天然もしくは合成の材料、例えばプラスチック材料、セラミック材料などから任意に選択することができる。例えば、ナイロンメッシュを使用してネット状の袋体を製造することができる。また、受液器以外の構成要素、例えば冷媒配管などに吸着剤を配置する場合、例えば配管の途中に吸着剤充填カラムなどを介在させてもよい。カラムの冷媒流入端及び/又は冷媒流出端には、冷媒の移動を可能とするとともに、吸着剤の流出を防止するため、例えば多孔性、有孔あるいはネット状のプレート(円板)やその他の手段を配置することが好ましい。本発明では、吸着剤を袋体に収容した後で冷凍サイクルの所定の位置に配置しているので、高吸水性樹脂が冷凍サイクル内を循環してしまうのを抑制することができる。
本発明の実施において使用する冷媒は、冷凍サイクルにおいて冷媒として常用されているフロン類、例えばR22、R134aなどではない。本発明では、これらの冷媒の代替として、各種のハイドロフルオロオレフィン(HFO)を冷媒として使用する。ハイドロフルオロオレフィンは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の実施に好適なハイドロフルオロオレフィンは、次式:
C3HmFn
(式中、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、但し、m+n=6である)によって表すことができる。また、このハイドロフルオロオレフィンは、その分子構造中に1つの二重結合を有している。
C3HmFn
(式中、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、但し、m+n=6である)によって表すことができる。また、このハイドロフルオロオレフィンは、その分子構造中に1つの二重結合を有している。
本発明の実施において、冷媒として好適に使用されるハイドロフルオロオレフィンは、好ましくは、毒性が低く、熱的安定性がよく、GWP(地球温暖化係数)が低くかつ大気寿命が短くて、カーエアコン用として最近注目されているHFO−1234yf(CF3CF=CH2)である。必要に応じて、HFO−1234yfに類する性能を備えたハイドロフルオロオレフィン、例えばHFO−1234zeなどを使用してもよい。ハイドロフルオロオレフィンは、通常単独で使用されるけれども、必要に応じて、2種以上のハイドロフルオロオレフィンを組み合わせて使用してもよい。
本発明では、上記のような特定の冷媒が流れる冷凍サイクルにおいて、相対湿度と水分の吸着率との関係が、相対湿度の上昇とともに水分の吸収率の上昇の度合いが増大する吸着特性を有するポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマーを吸着剤として採用しているので、吸着剤の充填量の増加を抑制しつつ、冷媒の氷結の発生を抑制することができ、かつ、冷凍サイクルを構成する要素(部品等)の内部腐食を抑制することができる。また、ゼオライト等を使用した場合に比べて水分透過速度の増加が抑制されるので、ゼオライト等に比べて冷媒中の水分量を効率よく低下させることができる。
本発明はまた、上記したような本発明の冷凍サイクル用ドライヤを備えている冷凍サイクルにある。この冷凍サイクルは、基本的に、構成要素としてゴムホース、Oリングなどを使用しているもの(密閉タイプではない冷凍システム)である。したがって、望ましくは、冷凍サイクル内の構成要素がすべて、ロウ付け、金属シール等で密封されているもの(密閉タイプの冷凍システム)は本発明の範囲から除外される。本発明の冷凍サイクルは、好ましくは、蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。本発明のドライヤを装備する蒸気圧縮式の冷凍サイクルは、その構成が特定のものに限定されるものではなく、冷凍サイクルの分野において一般的に使用されている構成要素(装置、部品等)を使用して、任意の組み合わせで構成することができる。
好ましい一例を示すと、本発明の冷凍サイクルは、冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した冷媒を気液分離して、液相冷媒を導出する受液器と、本発明のドライヤと、これらの構成要素どうしを連通して冷媒を流通させる冷媒配管とを含んでなるように構成される。
本発明の冷凍サイクルにおいて、ドライヤは、冷凍サイクル内の任意の個所、すなわち、任意の構成要素を利用して配置することができる。構成要素は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。適当な構成要素として、例えば、受液器(内部もしくは外部)、冷媒配管などを挙げることができる。
本発明の実施において、それぞれの構成要素も、任意に構成することができる。例えば受液器は、上下方向に延びる筒状のタンクにより構成するとともに、そのタンクの底部に開口を配備し、さらにその開口をタンクキャップ(蓋体)により閉塞することができる。すなわち、筒状のタンクの底部がタンクキャップ(蓋体)により閉塞された構成を採用することができる。また、筒状のタンクの側壁には、冷媒の導入口と、その導入口の下方に位置する冷媒の導出口とを備えることが必要である。このように構成することによって、導入口から受液器に導入された冷媒を、受液器の内部にあって導入口と導出口の間の位置に、タンクを横断方向に閉塞し、タンクを上部空間及び下部空間に二分するように配置された本発明のドライヤを通過させた後、導出口からタンク外に導出することができる。また、本発明によれば、受液器のタンク内の下端側に本発明のドライヤを配置することで、受液器の内部に存在する液相冷媒に含まれる水分を効率よく吸着することができる。
また、上記のようなタンクの構成において、本発明のドライヤは、タンクキャップと一体に構成されていることが好ましい。一体化に当たっては、例えば雄ネジ/雌ネジ等の嵌合手段を有利に使用することができる。このように一体化構成を採用することによって、タンクの気密性、取扱い性などを向上させることができる。
さらに、冷凍サイクル内において構成要素どうしを連通し、内部を冷媒が流通する冷媒配管は、少なくともその一部が、水分透過性を有する材料から構成されている場合において効果を発揮することができる。例えば冷媒配管がゴムホース等の水分透過性を有する材料から構成されているとき、車両の振動を吸収できる等のメリットがあるので、そのような冷媒配管を使用した冷凍サイクルを車両用冷凍システムとして有利に使用することができる。また、水分透過性を有している冷媒配管の管壁から水分が浸入したとしても、本発明のドライヤで、配管内を流通する冷媒から水分を効果的かつ選択的に吸着除去することができる。
引き続いて、本発明の実施形態を図7〜図14を参照して説明する。なお、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の範囲内において任意に変更あるいは改良を施すことが可能である。
本実施形態の蒸気圧縮式の冷凍サイクルは、車両用空調装置に適用されている。車両用空調装置に適用される冷凍サイクルは、周知の通り、いろいろな構成を有することができ、本発明の冷凍サイクルも同様に、本発明の実施に悪影響を及ぼさない限り、周知の多種多様な構成を有することができる。
冷凍サイクルは、通常、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮器から流出した冷媒を減圧する温度式膨張弁(減圧手段)、温度式膨張弁にて減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器等を冷媒配管により順次接続した閉回路により構成されている。なお、本実施形態の冷媒配管は、その一部が車両における振動を吸収するために、水分透過性を有するゴムホースにて構成されている。
本実施形態の冷凍サイクルでは、分子式:C3HmFn(式中、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、但し、m+n=6である)で示されるとともに分子構造中に1つの二重結合を有する冷媒を採用している。C3HmFnで示される冷媒は、一般に冷凍サイクルにて使用されるR22やR134aに比べて、水との反応により包摂化合物が生成され難い構造を有している。なお、包摂化合物は、冷媒の氷結を促進する物質であり、包摂化合物が生成することで、温度式膨張弁等において冷媒の氷結が生じ易くなる傾向がある。
冷凍サイクルの冷媒をR22やR134aとする場合には、冷媒の氷結を避けるために、冷媒中の水分濃度をできるだけ低下させて包摂化合物が生成されないようにすることが重要となる。これに対して、冷凍サイクルの冷媒をC3HmFnで示される冷媒とする場合には、冷媒中の水分濃度が高くとも、包摂化合物が生成され難いため、HFC−22やHFC−134aに比べて、冷媒の氷結が生じ難くなる。具体的には、本実施形態では、C3HmFnで示される冷媒として温暖化係数(GWP)が低いHFO−1234yf(C3H2F4;CF3CF=CH2)を採用している。
次いで、図7及び図8を参照して本実施形態の冷凍サイクルを説明する。ここで、図7は、本発明の冷凍サイクルで用いられている受液器一体型凝縮器の要部を示す部分断面正面図、そして図8は、図7に示した受液器のタンクの、ドライヤが一体化されたタンクキャップの正面図である。
冷凍サイクルにおける凝縮器1は、車両のエンジンルーム内のうち、走行風を受けやすい場所(通常は、エンジン冷却水を冷却するラジエータの前方側)に位置するように取付け部材(図示せず)にて車体に取り付けられている。本実施形態の凝縮器1は、凝縮器1から流出した冷媒の気液分離を行い、分離された液相冷媒を温度式膨張弁へと導出する受液器2が一体化されており、所謂、受液器一体型凝縮器で構成されている。
また、本実施形態の凝縮器1は、圧縮機から吐出された高温高圧のガス冷媒を熱交換部10にて室外空気と熱交換させることで、凝縮、および過冷却させるサブクールコンデンサであり、熱交換部10における冷媒流れの上流側を構成する凝縮部11と、冷媒流れの下流側を構成する過冷却部12とが一体に構成されている。
より具体的には、本実施形態の凝縮器1は、熱交換部10における上方側に凝縮部11が配置され、下方側に過冷却部12が配置されている。凝縮部11および過冷却部12は、それぞれ、水平方向に延びる複数本のチューブ101とコルゲートフィン102からなり、それぞれろう付けにより接合されている。
複数のチューブ101は、アルミニウム等の金属材料を押し出し加工することで断面形状が扁平な長円形状に形成されており、その内部に冷媒が流通する冷媒流路が形成されている。
熱交換部10におけるチューブ101の長手方向の一端部(図中、左側の端部)には、円筒状の第1ヘッダタンク13が接続されている。この第1ヘッダタンク13は、上下方向に延びるとともに、チューブ101における一端部が挿嵌されている。なお、図示しないが、チューブ101の長手方向の他端部には、円筒状の第2ヘッダタンクが接続されており、この第2ヘッダタンクは、上下方向に延びるとともに、チューブ101における他端側の端部が挿嵌されている。
第1ヘッダタンク13は、その内部に仕切り板131が配置されており、当該仕切り板131により第1ヘッダタンク13の内部空間が上下方向に仕切られている。熱交換部10における凝縮部11は、仕切り板131よりも上方側に位置するように配置され、過冷却部12は、仕切り板131よりも下方側に位置するように配置されている。
同様に、図示しない第2ヘッダタンクにも、その内部に仕切り板が配置されており、第2ヘッダタンク内の仕切り板は、上下方向において、第1ヘッダタンク13内の仕切り板131と同様の位置に配置されている。
第1ヘッダタンク13は、仕切り板131の直ぐ上方の部位に、第1連通穴132が形成されており、この第1連通穴132によって、凝縮部11のチューブ101が、第1ヘッダタンク13を介して後述する受液器2の内部と連通する。なお、図7中の矢印Aで示すように、冷媒は、凝縮部11から第1連通穴132を通って受液器2の内部に導入される。
また、第1ヘッダタンク13は、仕切り板131の直ぐ下方の部位に、第2連通穴133が形成されており、この第2連通穴133によって、過冷却部12のチューブ101が、第1ヘッダタンク13を介して後述する受液器2の内部と連通する。なお、本実施形態では、第1連通穴132が受液器2に冷媒を導入する冷媒導入口を構成し、第2連通穴133が受液器2から冷媒を導出する冷媒導出口を構成している。
受液器2は、内部に導入された冷媒を気相冷媒(ガス冷媒)と液相冷媒とに分離して、液相冷媒を過冷却部12側に導出する気液分離手段とし機能する。
本実施形態の受液器2は、上下方向に延びるとともに、下端側に開口部21aが形成された有底筒状のタンク21、およびタンク21の開口21aを閉鎖するタンクキャップ(蓋部)22を有して構成されている。
タンク21には、その上端側から下端側へと冷媒が流れるように第1連通穴132(冷媒の導入口)が第2連通穴133(冷媒の導出口)よりも上端側に形成されている。また、タンク21の開口21aには、後述するタンクキャップ22の外周に形成された雄ネジ部221と螺合する雌ネジ部が形成されている。タンク21は、開口21aにタンクキャップ22が接合されることで、その内部が密閉される。
タンクキャップ22は、図8に示すように、雄ネジ部221の上方側に、側面にフィルタ222を保持する枠を備えたフィルタ保持部223が形成されている。なお、フィルタ222は、冷媒中に含まれる塵等の異物を除去するものである。なお、図7中の矢印Bに示すように、受液器2の内部の液相冷媒は、フィルタ222を介して、第2連通穴133から過冷却部12へと導出される。
また、受液器2には、その内部に冷媒中の水分を吸着する吸着剤31を有するドライヤ(冷凍サイクル用ドライヤ)3が配置されている。このドライヤ3は、前述の吸着剤31と、吸着剤31を収容する収容袋32にて構成されている。
ドライヤ3は、冷媒中の水分を効率よく吸着するために、受液器2における液相冷媒が流れる部位、すなわち受液器2の下端側に配置されている。また、ドライヤ3は、受液器2に液相冷媒が多量に存在する場合に、液相冷媒の液面に浮いてしまうおそれがある。このため、ドライヤ3は、タンクキャップ22におけるフィルタ保持部223の上部に一体に構成されている。
ところで、上述のように、本実施形態の冷凍サイクルは、冷媒配管の一部にゴムホースを使用しているため、当該ゴムホースを介して外部から水分が透過することがある(図9参照)。なお、図9は、冷媒配管の内部への水分透過を説明する説明図である。
冷凍サイクルへの透過する水分の透過速度WHは、以下の数式(1)によって示すように、冷媒中の水蒸気分圧Pwinと大気の水蒸気分圧Pwoutとの分圧差(Pwout−Pwin)に比例する傾向がある。
WH=kH×L×(Pwout−Pwin)・・・(1)
但し、kHは水分透過係数、Lは水分が透過する配管の長さである。
但し、kHは水分透過係数、Lは水分が透過する配管の長さである。
冷媒中の水蒸気分圧Pwinは、冷媒中の水分濃度Xと比例関係(X∝Pwin)があり、冷媒中の水分濃度Xが低いと冷媒中の水蒸気分圧Pwinと大気の水蒸気分圧Pwoutとの分圧差が増加する。これにより、水分透過速度WHが増加して外部から透過する水分量が増大を招くこととなる。
本発明者らは、上述の水分透過速度の変化に着眼し、ドライヤ3の吸着剤として、相対湿度の低下に伴って水分の吸収率の低下度合いが増大する吸着特性(換言すれば、相対湿度と冷媒中の水分の吸収率との関係が相対湿度の上昇に伴って、水分の吸着率の上昇度合い傾きが増大する吸着特性)を有する上述のポリアクリル酸塩系ポリマーからなる吸着剤が好適であることを発見した。
そこで、本実施形態では、ドライヤ3の吸着剤31として、図10に示すような吸着特性を有する高吸水性樹脂を採用している。なお、図10は、高吸水性樹脂の吸着特性を示す特性図であるけれども、実線で示す高吸水性樹脂の吸着特性に加えて、一点鎖線で示すゼオライト(モレキュラシーブ)の吸着特性及び二点鎖線で示すシリカゲルの吸着特性も示している。
図10に示すように、ゼオライトやシリカゲルは、冷媒中の水分濃度が低い場合において高い吸着性能を有するのに対して、高吸水性樹脂は、冷媒中の水分濃度が低い状態において吸着性能が低い。したがって、高吸水性樹脂を吸着剤として採用することで、ゼオライトやシリカゲルを採用する場合に比べて、水分透過速度WHの増加が抑制され、外部から透過する水分量の増大を抑制することが可能となる。
また、高吸水性樹脂は、高湿度での吸着容量がゼオライトやシリカゲルに比べて大きくなるため、ドライヤ3への充填量を増大させることなく、冷媒中の水分を吸着することが可能となる。なお、具体的には、本発明の実施において、高吸水性樹脂としては、上式(I)により模式的に表されるポリアクリル酸あるいはポリアクリル酸塩系ポリマーを採用する。
ドライヤ3の収容袋32は、例えば、プラスチック材料、例えばポリアミド合成繊維からなり、冷媒中の水分を透過可能にメッシュ状とされている。この収容袋32は、吸着剤31を収容するための開口がヒートシール等にて閉塞されている。
次に、本実施形態の作動について、再び図7及び図8を参照しながら説明する。車両用空調装置の運転が開始されると、冷媒が圧縮機(図示せず)から吐出される。圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器1の第2ヘッダタンク(図示せず)を介して熱交換部10における凝縮部11に流入する。凝縮部11に流入した冷媒は、車室外空気と熱交換して冷却されて凝縮し、気相冷媒を一部に含む飽和液冷媒となる。この飽和液冷媒は、第1ヘッダタンク13から第1連通穴132を介して受液器2の内部に導入され、受液器2にて気液が分離されるとともに、ドライヤ3の吸着剤31により冷媒中の水分が吸着される。
その後、受液器2の内部で分離された液冷媒は、フィルタ222にて異物が除去された後、第2連通穴133を介して第1ヘッダタンク13から過冷却部12へ導出されて、再び冷却(過冷却)される。そして、凝縮器1の過冷却部12にて過冷却された冷媒は、温度式膨張弁にて減圧された後、蒸発器(図示せず)に流入する。蒸発器に流入した冷媒は、車室内に吹き出す空気から吸熱して蒸発し、蒸発した冷媒が再び圧縮機に吸入されて圧縮される。
ここで、ドライヤ3の吸着剤31として、高吸水性樹脂を用いた場合の効果について、従来まで吸着剤として用いられてきたゼオライトと比較して実施した試験について説明する。なお、本試験では、吸着容量が自重の1倍程度の高吸水性樹脂10g(最大吸着容量:10g)を吸着剤として使用したときと、吸着容量が自重の0.2倍となるゼオライト40g(最大吸着容量:8g)を吸着剤として使用したときとを比較する。
図11は、吸着剤としてゼオライトを使用した場合の吸湿性能面での効果を示す説明図であり、図11(a)が冷媒中の水蒸気分圧の経年変化を示し、図11(b)が水分浸入量の経年変化を示している。また、図12は、吸着剤として高吸水性樹脂を使用した本実施形態の冷凍サイクルにおける吸湿性能面での効果を示す説明図であり、図12(a)が冷媒中の水蒸気分圧の経年変化を示し、図12(b)が水分浸入量の経年変化を示している。
図11に示すように、吸着剤としてゼオライトを用いた場合、水分浸入量が最大吸着容量(8g)を上回る前は、ゼオライトにて冷凍サイクル内の水分が吸着されるので、初期段階でのサイクル内の水蒸気分圧が低くなる。この結果、冷凍サイクル内に浸入する水分の水分浸入速度が速くなり、水分浸入量が増大する。また、水分浸入量が最大吸着容量(8g)を上回ると、ゼオライトにてサイクル内の水分が吸着されず、サイクル内の水蒸気分圧が高くなる。この結果、サイクル内の水蒸気分圧が高くなって水分浸入速度が遅くなる。そして、水分浸入量がゼオライトの吸着容量(8g)を上回ると、冷凍サイクル内に溶解していた水分が析出されて、析出された水分が冷凍サイクル内に残存して、冷凍サイクル内における冷媒の氷結が生じ易くなる。
これに対して、図12に示すように、吸湿容量が自重の1倍程度となる高吸水性樹脂10g(最大吸湿容量:10g)を吸着剤として採用していて、高吸水性樹脂にてサイクル内に溶解した水分(水蒸気)を吸湿のみで吸着する場合、サイクル内に溶解した水分量(溶解水分量)が少なくなるので、冷凍サイクル内に溶解していた水分が析出され難くなる。これにより、冷凍サイクル内における溶媒の氷結の発生を抑制し、かつ、冷凍サイクル中に水分が析出することによる構成部品の内部腐食を抑制することができる。
さらに、吸着剤として高吸水性樹脂を用いた場合、ゼオライトに比べて、受液器の内部において占める容積を小さくすることができるので、受液器における体格の増大を抑制しつつ、サイクル内の水分を吸着することができる。
引続いて、吸着剤として高吸水性樹脂を用いた場合の、吸湿性能及び耐熱性能の確認試験について説明する。本試験では、SAP中の官能基成分の構成比を変更した、下記の3種類の供試サンプルを用意した。
サンプルA:
官能基COOH=100%のSAP(未中和の本発明品)
サンプルB:
官能基COONa/COOH=35%/65%のSAP(部分中和の比較品)
サンプルC:
官能基COONa/COOH=70%/30%のSAP(三洋化成社より商品名「サンフレッシュST−500D」として入手可能な比較品)
サンプルA:
官能基COOH=100%のSAP(未中和の本発明品)
サンプルB:
官能基COONa/COOH=35%/65%のSAP(部分中和の比較品)
サンプルC:
官能基COONa/COOH=70%/30%のSAP(三洋化成社より商品名「サンフレッシュST−500D」として入手可能な比較品)
〔吸湿性能の評価〕
吸湿性能の確認試験では、空気中での吸湿性能及び冷媒中での吸湿性能について試験を実施した。
吸湿性能の確認試験では、空気中での吸湿性能及び冷媒中での吸湿性能について試験を実施した。
(空気中での吸湿量の測定)
先に説明した測定法に準じて、それぞれのサンプルをナイロン(ポリアミド)製のメッシュ袋に収容し、初期重さを測定した。次いで、サンプルを袋ごと、相対湿度95%及び温度45℃で保持した恒温槽に収容し、48時間にわたって載置した。このようにしてサンプルに吸湿処理を施した後、吸湿後のサンプルの重量を測定した。
先に説明した測定法に準じて、それぞれのサンプルをナイロン(ポリアミド)製のメッシュ袋に収容し、初期重さを測定した。次いで、サンプルを袋ごと、相対湿度95%及び温度45℃で保持した恒温槽に収容し、48時間にわたって載置した。このようにしてサンプルに吸湿処理を施した後、吸湿後のサンプルの重量を測定した。
(冷媒中での吸湿量の測定)
HFO−1234yf(C3H2F4;CF3CF=CH2)を冷媒として使用した。それぞれのサンプルを試料ビンに入れて初期重さを測定した。次いで、用意しておいた耐圧容器に、サンプル入りの試料ビン、冷媒(HFO−1234yf)及び水を封入した後、耐圧容器を温度45℃で保持した恒温槽に収容し、一週間にわたって載置した。このようにしてサンプルに吸湿処理を施した後、吸湿後のサンプルの重量を測定した。
HFO−1234yf(C3H2F4;CF3CF=CH2)を冷媒として使用した。それぞれのサンプルを試料ビンに入れて初期重さを測定した。次いで、用意しておいた耐圧容器に、サンプル入りの試料ビン、冷媒(HFO−1234yf)及び水を封入した後、耐圧容器を温度45℃で保持した恒温槽に収容し、一週間にわたって載置した。このようにしてサンプルに吸湿処理を施した後、吸湿後のサンプルの重量を測定した。
(吸湿性能の評価)
次いで、同じく先に説明した計算法に準じて、それぞれのサンプルの吸湿率を計算した。すなわち、式:吸湿率(%)=(SAPの吸湿量g)÷(SAPの初期重さg1)×100にしたがって吸湿率を計算した。得られた計算結果をプロットしたものが図13のグラフである。図中、棒(I)は空気中での吸湿率、棒(II)は冷媒中での吸湿率を表す。図から、サンプルA(本発明品)で、冷媒中の吸湿率は、SAPの自重程度の吸湿となることが理解される。また、サンプルB及びC(比較品)では、空気中及び冷媒中の両方において、本発明品に比較して吸湿性能が大きすぎることがわかる。
次いで、同じく先に説明した計算法に準じて、それぞれのサンプルの吸湿率を計算した。すなわち、式:吸湿率(%)=(SAPの吸湿量g)÷(SAPの初期重さg1)×100にしたがって吸湿率を計算した。得られた計算結果をプロットしたものが図13のグラフである。図中、棒(I)は空気中での吸湿率、棒(II)は冷媒中での吸湿率を表す。図から、サンプルA(本発明品)で、冷媒中の吸湿率は、SAPの自重程度の吸湿となることが理解される。また、サンプルB及びC(比較品)では、空気中及び冷媒中の両方において、本発明品に比較して吸湿性能が大きすぎることがわかる。
〔耐熱性能の評価〕
耐熱性能の確認試験は、先に説明した手法に準じて、次のように実施した。すなわち、本試験は、耐熱性能の低下を、耐熱強度の劣化を示す劣化率(%)から判断することに基いており、耐熱試験の前後において、重量の変化から吸水倍率を測定することで、耐熱性能の低下を評価した。
耐熱性能の確認試験は、先に説明した手法に準じて、次のように実施した。すなわち、本試験は、耐熱性能の低下を、耐熱強度の劣化を示す劣化率(%)から判断することに基いており、耐熱試験の前後において、重量の変化から吸水倍率を測定することで、耐熱性能の低下を評価した。
先に説明した測定法に準じて、SAPを水と混合(SAP:水=1:1.5)してサンプルA、B及びCを調製した。それぞれのサンプルを容器に入れた状態で、110℃に保たれた恒温槽で336時間にわたって保持した。次いで、それぞれのサンプルについて、初期重さと、吸水し、水切りした後の重さとを測定した。吸水倍率(%)は、式:(水切り後の重さ)÷(初期重さ)×100で求めた。
次いで、それぞれのサンプルの吸水倍率を先に説明した手法に準じて比較した。吸水倍率の低下率(%)は、式:−(比較品の吸収倍率)÷(本発明品の吸収倍率)×100で求めた。強度劣化の割合と吸水倍率との間には相関関係があるので、上記のようにして求めた吸水倍率の低下率を劣化率(%)とみなし、図14にプロットした。
(耐熱性能の評価)
図14に示した劣化率のグラフから、サンプルA(本発明品)では劣化率がごく僅かであるのに反して、サンプルB及びC(比較品)では、約75〜85%と、劣化率が顕著に増大していることがわかる。このことから、本発明による吸着剤であるサンプルAは、耐熱劣化性に顕著に優れていることが明らかとなる。
図14に示した劣化率のグラフから、サンプルA(本発明品)では劣化率がごく僅かであるのに反して、サンプルB及びC(比較品)では、約75〜85%と、劣化率が顕著に増大していることがわかる。このことから、本発明による吸着剤であるサンプルAは、耐熱劣化性に顕著に優れていることが明らかとなる。
〔総合評価〕
吸湿性能及び耐熱性能について得られた評価結果を総合的にまとめたものが、下記の第2表である。
吸湿性能及び耐熱性能について得られた評価結果を総合的にまとめたものが、下記の第2表である。
上記第2表から理解されるように、最適材料と判断できるのは、サンプルA(本発明品)のみである。サンプルB及びCは、吸湿性能においては許容することができるけれども、耐熱性能に劣り、劣化率が顕著であるので、サンプルAのように満足する形で使用することができない。また、上記の試験に関連して、官能基である−COOHの割合が多くなると、空気中におけるよりも冷媒中における場合のほうが、吸湿性能が増大する結果、吸湿率が高くなる傾向が大きいことも確認できた。
以上で説明した本実施形態によれば、冷媒としてHFO−1234yf(CF3CF=CH2)が流れる冷凍サイクルにおいて、ドライヤの吸着剤として、相対湿度と水分の吸収率との関係が相対湿度の上昇とともに水分の吸着率の上昇度合いが増大する吸着特性を有する特定の高吸水性樹脂を適用することで、ドライヤへの吸着剤の充填量の増加を抑制しつつ、冷媒の氷結の発生を抑制することができる。また、ゼオライト等に比べて水分透過速度の増加が抑制されるので、ゼオライト等に比べて冷媒中の水分量を効率よく低下させることができる。
ここで、高吸水性樹脂は、水分を吸着することでゲル状になることが知られている。このため、単に高吸水性樹脂を冷凍サイクル内に設けると、水分の吸着によりゲル状となった高吸水性樹脂が、冷凍サイクル内を循環して冷凍サイクルの作動に悪影響を及ぼすおそれがある。
これに対して、本実施形態のドライヤは、高吸水性樹脂をメッシュ状の収容袋に収容する構成としているので、高吸水性樹脂が水分を吸収してゲル状となったとしても、ゲル化した高吸水性樹脂が、冷凍サイクル内を循環してしまうことを抑制することができる。なお、本発明の実施において、高吸水性樹脂を収容する手段は、メッシュ状の収容袋のみに限定されるものではない。ゲル化した高吸水性樹脂が循環するのを防止し得る限り、その他の手段を使用してもよい。例えば、メッシュ状の袋体に代えて、多孔性フィルムあるいは有孔フィルムの形態をもった天然もしくは合成の材料、例えばプラスチック材料からなる袋体を使用してもよい。また、袋体は、1袋で使用してもよく、必要に応じて2袋以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
別法によれば、高吸水性樹脂を収容する収容袋を、水蒸気を透過するフィルム状とし、高吸水性樹脂の吸湿作用を利用して、液相冷媒中の水蒸気のみを吸着する構成としてもよい。このように構成すると、高吸水性樹脂を、水蒸気が透過可能に構成されたフィルム状の収容袋に収容しているので、高吸水性樹脂には水蒸気のみが吸着され、吸湿作用のみが働くこととなり、水分を吸着してゲル状となることを抑制することができる。
また、本実施形態では、受液器のタンク部の下端側(タンクキャップにおけるフィルタ保持部の上部)に高吸水性樹脂を配置する構成としているので、受液器の内部に存する液相冷媒に含まれる水分を効率よく吸着することができる。
また、本実施形態のように、高吸水性樹脂を吸着剤として用いるドライヤは、冷媒が流通する冷媒配管の一部が水分透過性を有する材料(例えば、ゴムホース)で構成される車両用空調装置に適用することが極めて有効である。すなわち、冷媒配管の一部が水分透過性を有する材料で構成される場合、冷凍サイクルの内部に透過する水分量(水分透過量)が多く、水分透過量を考慮して吸着剤の選定を行う必要があるからである。
以上、本発明の典型的な実施形態について説明した。しかしながら、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく本発明の範囲を逸脱しない限り、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良に適宜付加することができる。例えば、以下のように種々の変更や改良を行うことが可能である。
(1)上述の各実施形態では、ドライヤの吸着剤として高吸水性樹脂を採用した例について説明した。ここで、高吸水性樹脂の形態は、特に限定されるものではない。例えば、粉末状、顆粒状、小球(パール)状、繊維状などの形態を有することができる。また繊維状の高吸水性樹脂の1変形例として、高吸湿性繊維や高吸水性繊維といった繊維材料も、必要に応じて採用してもよい。但し、かかる繊維材料は、上記した高吸水性樹脂と同様に、相対湿度と水分の吸収率との関係が相対湿度の上昇とともに水分の吸着率の上昇度合いが増大する吸着特性を有することを前提とする。
(2)上述の各実施形態では、冷凍サイクルの冷媒としてHFO−1234yfを採用した例について説明したけれども、この例に限定されるものではない。例えば、HFO−1234yfと同様に水との反応により包摂化合物が生成され難い構造を有する他のハイドロフルオロオレフィン、例えばHFO−1234ze(C3H2F4;CF3CH=CHF)を冷凍サイクルの冷媒として使用してもよい。また、HFO−1234yfとHFO−1234zeとを混合させた混合冷媒を採用してもよい。
(3)上述の各実施形態で説明したように、ドライヤを受液器の内部に配置することが好ましいけれども、ドライヤの配置は、受液器の内部に限定されるものではない。必要に応じて、冷凍サイクルにおける冷媒が流通する任意の部位にドライヤを配置してもよい。例えば、受液器に接続された冷媒配管の任意の部位にドライヤを接続することができる。
(4)上述の各実施形態で説明したように、ドライヤは、高吸水性樹脂を収容袋に収容することが望ましいけれども、高吸水性樹脂を収容袋に収容することなく、冷媒配管の内部に配置するようにしてもよい。この場合に、高吸水性樹脂をいかに配置するかは任意であり、例えば、高吸水性樹脂からなるカラムを1個以上、配管の任意の部位に配置してもよい。
(5)また、高吸水性樹脂を収容する収容袋は、ヒートシール以外の方法により閉じる構成としてもよい。さらに、収容袋としては、例えば、冷媒流れの上流側が開口し、下流側が閉塞されているものを用いてもよい。
(6)上述の各実施形態では、本発明のドライヤを凝縮器と受液器とが一体化された受液器一体型凝縮器に適用した例を説明したけれども、凝縮器と受液器とを別体とする構成に適用してもよい。
(7)上述の各実施形態では、本発明のドライヤを熱交換部に凝縮部及び過冷却部を有するサブクールコンデンサに適用する例について説明したけれども、この例に限定されるものではない。例えば、本発明のドライヤを、熱交換部に凝縮部を有するコンデンサに適用してもよい。
(8)上述の各実施形態では、車両用空調装置の冷凍サイクルに本発明のドライヤを適用した例を説明したけれども、この例に限定されるものではない。例えば、本発明のドライヤを、車両用の暖房装置、定置式の給湯機や室内暖房装置に用いられる冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)に適用してもよい。
本発明の冷凍サイクル用ドライヤは、各種の冷凍サイクルにおいて有利に利用することができる。すなわち、本発明のドライヤは、例えば家庭用エアコン、常務用(店舗用、ビル用、施設用)エアコン、自動車用(車両用)エアコンなどの空調装置において、さらには各種のヒートポンプサイクルにおいて、例えば定置式の給湯器や室内暖房装置において有利に利用することができる。
1 凝縮器
2 受液器
3 ドライヤ
10 熱交換部
11 凝縮部
12 過冷却部
13 第1ヘッダタンク
21 タンク
21a 開口
22 タンクキャップ
31 吸着剤
32 収納袋
2 受液器
3 ドライヤ
10 熱交換部
11 凝縮部
12 過冷却部
13 第1ヘッダタンク
21 タンク
21a 開口
22 タンクキャップ
31 吸着剤
32 収納袋
Claims (12)
- 式中のMがすべて水素原子を表すことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクル用ドライヤ。
- Mで表される金属原子が、ナトリウム又はカルシウムであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の冷凍サイクル用ドライヤ。
- 前記冷媒は、次式により表されるハイドロフルオロオレフィン:
C3HmFn
(式中、mは1〜5の整数であり、nは1〜5の整数であり、但し、m+n=6である)であり、当該分子構造中に1つの二重結合を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル用ドライヤ。 - 前記冷媒はHFO−1234yf(CF3CF=CH2)であることを特徴とする、請求項4に記載の冷凍サイクル用ドライヤ。
- 前記吸着剤は、水分透過性の材料から形成された袋体に収容されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル用ドライヤ。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷凍サイクル用ドライヤを備えていることを特徴とする蒸気圧縮式の冷凍サイクル。
- 前記冷凍サイクルが、冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した冷媒を気液分離して、液相冷媒を導出する受液器と、前記ドライヤと、これらの構成要素どうしを連通して前記冷媒を流通させる冷媒配管とを含んで構成されることを特徴とする、請求項7に記載の冷凍サイクル。
- 前記ドライヤが、前記受液器の内部もしくは外部、前記冷媒配管又はそれらの両方に備わっていることを特徴とする、請求項7又は8に記載の冷凍サイクル。
- 前記受液器は、上下方向に延びるタンクにより構成されるとともに、該タンクの底部に備わった開口がタンクキャップにより閉塞されて有底筒状の形態を有しており、
前記タンクの側壁には、冷媒の導入口と、該導入口の下方に位置する冷媒の導出口とが備わっていて、前記導入口から前記受液器に導入された冷媒は、前記受液器の内部にあって前記導入口と前記導出口の間に配置された前記ドライヤを通過して、前記導出口から導出されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の冷凍サイクル。 - 前記ドライヤは、タンクキャップと一体に構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の冷凍サイクル。
- 前記冷媒配管は、少なくともその一部が水分透過性を有する材料から構成されていることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の冷凍サイクル。
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JP2011283683A JP2013133987A (ja) | 2011-12-26 | 2011-12-26 | 冷凍サイクル用ドライヤ及び冷凍サイクル |
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JP2016535234A (ja) * | 2013-08-27 | 2016-11-10 | マーレ インターナツィオナール ゲーエムベーハー | 粒状体充填物を備えた装置 |
KR20200002625A (ko) | 2018-06-29 | 2020-01-08 | 하세가와 고오료오 가부시끼가이샤 | 동식물 원료로부터의 향료 조성물의 제조 방법 및 동식물 원료로부터의 향기 회수 장치 |
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2011
- 2011-12-26 JP JP2011283683A patent/JP2013133987A/ja active Pending
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