JP3735169B2 - 脱硝装置付きディーゼル機関 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気ガス浄化の為の脱硝装置を備えたディーゼル機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル機関は、高い熱効率を有することから船舶用主機関や車両走行用の他に発電用(定置用)としても、拡く使用されている。
かかるディーゼル機関は、上記のように高い熱効率を有する一方で、燃焼温度が高いため、窒素酸化物(NOX )の排出がガソリン機関等、他の内燃機関に較べて多くなるという課題を抱えており、これに対処するため、特に発電用等の定置用ディーゼル機関においては機関の排気通路に脱硝触媒が装鎭された脱硝装置を設置して、NOX の低減を行なっている。
【0003】
図3は前記ディーゼル機関における従来の脱硝装置の設置態様を示す。
図3の(A)に示すものは、排気ターボ過給機出口の排気ガス温度が300℃程度を超えるディーゼル機関1aを使用する場合で、この場合は過給機出口の排気ガス温度が高く、高温対応の脱硝装置即ち高温脱硝装置2が作動可能であるので、該高温脱硝装置2を機関出口の排気通路6に設けている。
【0004】
図3の(B)に示すものは、排気ターボ過給機出口の排気ガス温度が300℃以下のディーゼル機関1bを使用する場合で、排気ガス温度が低いことから、低温対応の低温脱硝装置22を排気通路6に設けている。
【0005】
さらに図3の(C)に示すものは、排気ターボ過給機5の入口の排気ガス温度が300℃を超え、排気ターボ過給機5の出口の排気ガス温度が300℃以下となるもので、この場合は高温対応の高温脱硝装置2を排気ターボ過給機5の入口側の排気通路6に設けている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような、発電用(定置用)や車両用ディーゼル機関においては、近年は環境基準の強化から、機関より排出されるNOX の濃度を数十ppmレベルまで低下させることが要求されている。
然るに、排気ガス濃度を前記のレベルまで下げるには、脱硝装置の脱硝率を90%以上という高い値に保持する必要がある。
【0007】
上記のような、高い脱硝率を得るためには、脱硝触媒の量を増加するか、あるいは脱硝触媒自体の性能を上昇させる方法があるが、前者は高脱硝率達成のためにディーゼル機関本体の容積以上の大容量の脱硝装置が必要となり、設置スペース上の問題がある。一方、後者の場合、即ち脱硝触媒自体の性能を上昇させて、かつ、その設置スペースも許容できる範囲内に収めるには、雰囲気温度300℃以上で使用する高温脱硝触媒を使用することが必要となる。
【0008】
一般に舶用や大容量発電用としての低速大型ディーゼル機関の場合、排気ガスの機関出口つまり、通常は排気ターボ過給機出口の温度は300℃以下であることから、過給機出口に脱硝装置を設置するような配置では、目標とする排気ガス中のNOX 低減がなされない。このため、かかる低速大型ディーゼル機関においては、排気ガス温度が300℃以上となる各シリンダ出口と過給機5のタービン入口との間に脱硝装置を設置するような構造を採用することとなる。
【0009】
しかしながら、かかる構造の機関では、機関1から過給機5に供給される排ガスエネルギーが、脱硝装置(脱硝触媒及びその保持体)の持つ熱容量によって、該脱硝装置の温度上昇に使用されるため、排ガスエネルギーの過給機5への到達時間が長くなる。この傾向は、特に、機関の冷態時からの負荷上昇時に顕著となる。
【0010】
このため、上記現象によって、過給機5への供給エネルギーと機関負荷とに時差が生じ、これによって機関負荷の上昇速度が制限され、また、負荷変動に対する応答性も著しく損われることとなる。かかる過給機5の応答遅れは、機関への供給空気量の不足あるいは過剰も招き、安定した機関の運転が困難となる。
【0011】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、機関の始動時からの立ち上がり等の負荷の大なる運転域では機関の加速性、応答性を良好に保持し、かつ一定負荷以上の中、高負荷運転域では、高い脱硝率で以って脱硝をなし得る脱硝装置付きディーゼル機関を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる課題を解決するために、ディーゼル機関の排気出口と排気ターボ過給機との間の排気通路に脱硝触媒を備えた脱硝装置を設置してなる脱硝装置つきディーゼル機関において、前記ディーゼル機関と脱硝装置との間の排気通路から分岐され、該脱硝装置をバイパスして、脱硝装置を前記排気ターボ過給機との間の排気通路に接続されるバイパス管路を設けると共に、該バイパス管路に該管路を開閉する制御弁を設け、機関負荷、機関の排気ガス温度等の機関運転状態の検出信号が入力され、該検出信号に基づき、前記制御弁を開閉制御する弁調整装置を備えたことを特徴とする脱硝装置付きディーゼル機関を提案する。
【0013】
そして、好ましくは上記手段に加えて、前記脱硝装置下流の排気通路の前記バイパス管路の合流点よりも上流側の部位に、該排気通路を開閉する第2の制御弁を設ける。
【0014】
かかる発明によれば、ディーゼル機関の始動から一定負荷までの立ち上がり時には、弁調整装置は第1の制御弁を開度を大きくし、あるいは全開としてバイパス管路を開くとともに、第2の制御弁の開度を小さくする。
かかる弁操作により、機関よりの排気ガスはその大部分がバイパス管路を通って直接排気ターボ過給機に送られてこれを駆動する。
【0015】
従って、上記始動から一定負荷までの立ち上がり運転域では、排気ガスが脱硝触媒をバイパスして直接過給機に送られることとなり、脱硝装置を通流することによる時間遅れの発生がなく、高い応答性で以って過給機が作動し、機関の迅速な加速が得られる。
【0016】
また、かかる立ち上がり時には、排気ガスは脱硝装置まで到達しているので、脱硝装置のウォームアップは充分になされ、排気ガス量の増大に対応可能な状態とすることができる。
【0017】
機関の負荷が増大し、一定負荷に達すると前記弁調整装置は第1の制御弁を閉じ、第2の制御弁を全開として、排気ガスの全量を脱硝触媒に通流させる。これによって上記のようにして充分にウォームアップされた脱硝装置中の触媒は高温の排気ガスと反応し、高い脱硝率で以ってNOX を除去する排気ガス浄化作用を行なう。
【0018】
上記のようにして、弁調整装置は、機関の運転状態を検出しながら第1、第2の制御弁の開度を調整することにより、脱硝装置を流れる排気ガスの温度を、触媒が有効に作動する温度に保持せしめることができる。
【0019】
かかる動作により、機関の始動時以後の立ち上がり時には、機関出力の迅速な増大及び応当性の良好な運転がなされるとともに、脱硝触媒の充分なウォームアップもなすことができる。
【0020】
また、脱硝触媒の本格的な作動を必要とする負荷運転時には、前記弁調整装置で2つの制御弁の開度を調整することにより、脱硝触媒を通る排気ガス温度を過昇となることなく触媒が活性化される一定の温度に保持することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。
但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る脱硝装置付きディーゼル機関の系統図、図2は制御線図をそれぞれ示す。
図1において1はディーゼル機関(この例では低速大型ディーゼル機関とする)、6は該ディーゼル機関1からの排気ガスが通流する排気通路、5は前記排気ガスにより駆動される排気ターボ過給機(以下過給機と略称する)、2は高温脱硝装置である。7は前記過給機5からの過給空気を機関1に送給するための給気通路である。
【0023】
前記高温脱硝装置2にはほぼ300℃以上の排気ガス温度にて使用される高温脱硝触媒が装鎭され、前記過給機5のタービン入口の上流側の排気通路6(つまりディーゼル機関1と過給機5の間の排気通路)に設けられている。
【0024】
3は排気ガスのバイパス管であり、前記高温脱硝装置2の上流側の排気通路6から分岐されて、該脱硝装置2をバイパスし、該脱硝装置2の出口と過給機5の入口との間の排気通路6に合流されている。
【0025】
該バイパス管3には該管路3を開閉してその通路面積を調整する制御弁(A)10が設けられ、また、前記高温脱硝装置2と前記バイパス管3の合流点13との間の排気通路6には該通路の流路面積を調整する制御弁(B)11が設けられている。
【0026】
4は弁調整装置であり、機関負荷L機関出口の排気ガス温度T1 脱硝装置2出口の排気ガス温度T2 等の機関運転状態及び脱硝装置の運転状態を示す、運転状態の検出信号が入力され、かかる運転状態の検出信号に基づき、前記2つ制御弁(A)10、(B)11の開度を算出して、該制御弁(A)10、(B)11を開閉制御する。
【0027】
かかる構成による脱硝装置付きディーゼル機関の動作を図1、図2を参照して説明する。
機関1から排出された300℃以上の高温の排気ガスは排気通路6を通って高温脱硝装置2に入り、ここで脱硝触媒との反応によってNOX が除去されて浄化され、制御弁(B)11を有する排気通路6を通って、過給機5に送られ、該過給機5を駆動した後、外部に排出される。
前記過給機5にて加圧された給気は給気通路7を通って機関1に供給される。
【0028】
前記ディーゼル機関1の始動から負荷上昇時のような大きな負荷変化の運転時(図2の負荷増加域)には前記弁調整装置4は、前記負荷L、排気ガス温度T1 、T2 等の運転状態の検出信号に基づき、図2の(2)に示すように、制御弁(A)10の開度を始動から一定の負荷Y1 までは全開とし、制御弁(B)11の開度を始動から立ち上がりの一定負荷Y2 まで全閉とし、ここから負荷の増加に応じて開度を大きくするように制御する。
【0029】
かかる制御により、機関からの排気ガスは脱硝装置2を通流せず、これによる時間遅れを生ずることなく、バイパス管3を通って過給機5に送られ、該過給機5は迅速に作動し、機関1には負荷に応じた量の空気が過給機5から送り込まれる。これにより、機関1は加速性が向上すると共に、高い応当性で以って運転される。
【0030】
一方、制御弁(B)11が閉じていても、高温脱硝装置2までは高温の排気ガスが送り込まれているので、該脱硝装置2内の触媒が短時間でウォームアップされる。
【0031】
そして、前記弁調整装置4は機関負荷の上昇に従い、制御弁(B)11の開度を増加し、(負荷Y4 で全開)高温脱硝装置2に流れる高温の排気ガス量を増加させる。これにより、前記のようにしてウォームアップされた脱硝装置2は300℃以上の排気ガスと反応してこれのNOX を効果的に除去する。
【0032】
機関1の負荷が増大して、一定負荷Y1 になり、排気ガス量が増加し、温度が上昇すると、弁調整装置4は制御弁(A)10を閉じ始め、負荷Y3 にて全閉とする。
【0033】
これにより、Y3 以上の負荷では制御弁(B)11が全開、制御弁(A)10が全閉となり、高温の排気ガスの全量が高温脱硝装置2を通り、NOX の除去がなされる。
【0034】
ここで前記弁調整装置4は前記負荷L、機関出口(脱硝装置入口)の排気温度T1 及び脱硝装置2出口の排気温度T2 等の運転状態の検出信号に基づき、脱硝装置2を通る排気ガス温度が過昇となると制御弁(A)10の開度を増、制御弁(B)11の開度を減として、機関の運転状態に応じて脱硝装置2を通る排気ガス温度の過昇を防止しながら負荷の増大をなさしめる。
【0035】
即ち、弁調整装置4は2つの制御弁(A)10及び(B)11の開度を、機関の運転状態を検出しながら調整して、脱硝装置を流れる排気ガスの温度を過大となることなく、かつ高温触媒が充分に作動する排気ガス温度を保持することができる。
【0036】
なお、前記機関の運転状態の検出要因としては、機関回転数か掃気圧力を用いることもできる。
【0037】
なお、前記制御弁(B)11を省略してバイパス管路3を、制御弁(A)10により開閉するようにすることも可能である。この場合は、始動時及びそれ以後の立ち上がり時に制御弁(A)を全開とすれば、排気ガスがバイパス管3及び高温脱硝装置2の双方を流れて過給機5に入るが、バイパス管3を流れる排気ガスが時間遅れを生ずることなく、過給機5に送られる。
【0038】
【発明の効果】
以上の記載のごとく、本発明によれば、機関の始動時及びそれ以後の立ち上がり時のように負荷変動の大きい運転時には制御弁を開き、排気ガスをバイパス管路を通して直接過給機に導くことにより、迅速な加速と応答性の良好な運転がなされるとともに、脱硝触媒のウォームアップも充分になすことができる。
【0039】
また一定負荷以上の高負荷運転時においては高温の排気ガスのほぼ全量を充分にウォームアップされた脱硝触媒を通すことにより、高い脱硝率で以って排気ガス中のNOX の低減をなすことができるとともに、2つの制御弁の開度を調整して脱硝触媒を流れる排気ガスの温度を適温に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る脱硝装置付きディーゼル機関の系統図である。
【図2】上記実施形態における機関の性能曲線である。
【図3】従来の脱硝装置付きディーゼル機関の3つの例を示す系統図である。
【符号の説明】
1 ディーゼル機関
2 高温脱硝装置
3 バイパス管
4 弁調整装置
5 排気ターボ過給機
6 排気通路
7 給気通路
10 制御弁(A)
11 制御弁(B)

Claims (2)

  1. ディーゼル機関の排気出口と排気ターボ過給機との間の排気通路に脱硝触媒を備えた脱硝装置を設置してなる脱硝装置付きディーゼル機関において、
    前記ディーゼル機関と脱硝装置との間の排気通路から分岐され、該脱硝装置をバイパスして、脱硝装置と前記排気ターボ過給機との間の排気通路に接続されるバイパス管路を設けるとともに、該バイパス管路に該管路を開閉する制御弁を設け、機関負荷、機関の排気ガス温度等の機関運転状態の検出信号が入力され、該検出信号に基づき、前記制御弁を開閉制御する弁調整装置を備えたことを特徴とする脱硝装置付きディーゼル機関。
  2. 前記脱硝装置下流の排気通路の前記バイパス管路の合流点よりも上流側の部位に、該排気通路を開閉する第2の制御弁を設けてなる請求項1記載の脱硝装置付きディーゼル機関。
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