JP3735093B2 - 2型糖尿病治療剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2型糖尿病治療剤に関し、より詳細にはビグアニド誘導体又はその塩を有効成分とする2型糖尿病治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
2型糖尿病は、インスリン分泌障害とインスリン抵抗性の亢進とが主な原因となって発症及び進行していく疾患であり、インスリン非依存型糖尿病とも呼ばれている。インスリン分泌障害が起こると、インスリンの量的不足が生じ、血糖値の上昇を引き起こす。一方、インスリン抵抗性が亢進すると、それを補うようにインスリン分泌が増加することが多い。しかし、インスリン分泌の増加が限界に達すると、相対的にインスリンが不足し、血糖値の上昇が起こる。2型糖尿病の発症及び進行には、インスリン分泌障害とインスリン抵抗性の両方が関与しており、これらの関与の度合いはそれぞれの患者ごとに異なっていることが知られている。
【0003】
インスリン感受性増強薬は、インスリン抵抗性を改善する効果を示し、インスリン抵抗性が病態に関与する2型糖尿病に有効な薬物である。また、健常者と2型糖尿病患者の境界型と考えられる耐糖能障害者において、インスリン抵抗性の改善は糖尿病の発症予防に有効であると考えられており、インスリン感受性増強薬は、糖尿病の発症予防に有効であることが期待される。さらに、インスリン抵抗性の亢進が心筋梗塞、脳卒中などの大血管障害に大きく関わっていることが明らかとなっており、インスリン感受性増強薬は、心筋梗塞、脳卒中などの大血管障害の予防に有効であることが期待される(最新医学Vol.57 No.8 1739-1746(2002):非特許文献1)。
【0004】
このようなインスリン感受性増強剤としては、トログリタゾン、ピオグリタゾンなどのチアゾリジン系薬剤が知られている。しかしながら、トログリタゾンは、副作用として劇症肝炎など重篤な肝障害を引き起こすことがあることから、販売中止となっている。また、ピオグリタゾンについては、現在も臨床で2型糖尿病の治療に使用されているが、浮腫、心不全などの副作用があることが認められている。
【0005】
また、ビグアニド系薬剤の一種であるメトホルミンも、インスリン感受性増強作用を有することが知られている(N.Engl.J.Med.,338,867−872(1998):非特許文献2)。しかしながら、メトホルミン等既存のビグアニド剤は乳酸アシドーシスを惹起する可能性が高いと認識されており、糖尿病患者のうち、乳酸アシドーシスの既往を伴う糖尿病患者、腎機能障害を伴う糖尿病患者、肝機能障害を伴う糖尿病患者、心血管系の障害を伴う糖尿病患者、肺機能の障害を伴う糖尿病患者、低酸素血症を伴いやすい糖尿病患者、過度のアルコール摂取者である糖尿病患者、胃腸障害を伴う糖尿病患者及び高齢者である糖尿病患者について、乳酸アシドーシスの危険性があることから使用禁忌となっている(日本医薬情報センター編、医療薬日本医薬品集 2002(第25版)、2170頁、2001年発行:非特許文献3)。また、メトホルミンには、インスリン感受性増強作用が十分ではなく、十分な効果が得られないため、投与量が多くならざるを得ないといった問題もあった。
【0006】
更に、ビグアニド誘導体としては、メトホルミン以外にも多くの化合物が知られており、例えばJ.Am.Chem.Soc.,81,3728−3736(1959)(非特許文献4)には種々のビグアニド誘導体が記載されている。しかしながら、非特許文献4には、メトホルミンを含む種々のビグアニド誘導体について、単に血糖降下作用のみが正常血糖値のモルモットを用いた皮下投与試験で検討されているに過ぎず、インスリン感受性増強作用や乳酸アシドーシス惹起能の有無やその程度については確認されておらず、何ら記載されていない。
【0007】
【非特許文献1】
最新医学vol.57 No.8 1739-1746(2002)
【非特許文献2】
N.Engl.J.Med.,338,867−872(1998)
【非特許文献3】
日本医薬情報センター編、医療薬日本医薬品集 2002(第25版)、2170頁、2001年発行
【非特許文献4】
J.Am.Chem.Soc.,81,3728−3736(1959)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分なインスリン感受性増強作用を有し、かつ、乳酸アシドーシス等の副作用を惹起する可能性が低い2型糖尿病治療剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するビグアニド誘導体又はその塩は優れたインスリン感受性増強作用を有しており、2型糖尿病治療剤として有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の2型糖尿病治療剤は、下記一般式(1):
【化4】
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は水素原子、R 3 は水素原子を示す。)
で表されるビグアニド誘導体又はその塩を有効成分として含有するものである。
【0011】
上記本発明の2型糖尿病治療剤において、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体が、フルフリルビグアニド(式中、R1、R2、R3が同時に水素原子である)であることが特に好ましい。
【0012】
また、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩は優れたインスリン感受性増強作用を有しており、本発明の2型糖尿病治療剤はインスリン感受性を増強することによる血糖値上昇抑制治療のために有効なものである。
【0013】
更に、本発明の2型糖尿病治療剤は、好ましくは血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させる作用を有するものであり、乳酸アシドーシスを誘発しない血糖値上昇抑制治療のための糖尿病治療剤として有用であり、具体的には乳酸アシドーシスの既往を伴う糖尿病、腎機能障害を伴う糖尿病、肝機能障害を伴う糖尿病、心血管系の障害を伴う糖尿病、肺機能の障害を伴う糖尿病、低酸素血症を伴いやすい糖尿病、過度のアルコール摂取者における糖尿病、胃腸障害を伴う糖尿病及び高齢者の糖尿病からなる群から選択される少なくとも1つの2型糖尿病を対象とする糖尿病治療剤であり、特に腎機能障害を伴う糖尿病を対象とする糖尿病治療剤として有用である。
【0014】
また、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩は優れたインスリン感受性増強作用を有しているため、本発明は、(i)前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩を有効成分として含有する、乳酸アシドーシスの既往を伴う糖尿病、腎機能障害を伴う糖尿病、肝機能障害を伴う糖尿病、心血管系の障害を伴う糖尿病、肺機能の障害を伴う糖尿病、低酸素血症を伴いやすい糖尿病、過度のアルコール摂取者における糖尿病、胃腸障害を伴う糖尿病及び高齢者の糖尿病からなる群から選択される2型糖尿病の予防剤にもある。
【0015】
更に、下記一般式(1):
【化5】
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基及び置換されていてもよい低級アルキルチオ基からなる群から選択されるいずれかを示す。ただし、R1、R2、R3が同時に水素原子であるフルフリルビグアニド、及び、R1がメチル基でありかつR2、R3が同時に水素原子である1−[(5−メチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドを除く。)
で表されるビグアニド誘導体は新規化合物であり、本発明は係る新規なビグアニド誘導体にもある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明の2型糖尿病治療剤は、下記一般式(1)
【化6】
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は水素原子、R 3 は水素原子を示す。)
で表されるビグアニド誘導体又はその塩を有効成分として含有する2型糖尿病治療剤である。
【0018】
先ず、本発明にかかる2型糖尿病治療剤を構成する要素について説明する。
【0019】
本発明にかかるビグアニド誘導体は、下記一般式(1)
【化7】
で表され、一般式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基及び置換されていてもよい低級アルキルチオ基からなる群から選択されるいずれかを示す。このようなビグアニド誘導体には後述する種々の化合物が包含されるが、中でも一般式(1)中のR1、R2、R3が同時に水素原子であるフルフリルビグアニド並びにR 1 がメチル基、R 2 が水素原子、R 3 が水素原子である1−(5−メチルフルフリル)ビグアニドは乳酸アシドーシス等の副作用の惹起を伴わずに十分なインスリン感受性増強作用を奏する傾向にあるため特に好ましい。
【0020】
ここで、前記低級アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基が挙げられる。また、前記低級アルキル基の中でも炭素数1〜5のものがより好ましく、炭素数1〜4のものが更により好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0021】
また、前記低級アルキルチオ基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルチオ基であることが好ましく、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、各種ペンチルチオ基、各種ヘキシルチオ基が挙げられる。また、前記低級アルキルチオ基の中でも炭素数1〜5のものがより好ましく、炭素数1〜4のものが更により好ましく、メチルチオ基が特に好ましい。
【0022】
更に、上記低級アルキル基及び低級アルキルチオ基に置換可能な置換基としては、低級アルキルチオ基、低級アルコキシル基等が挙げられ、中でも炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルチオ基が好ましく、メチルチオ基が特に好ましい。
【0023】
なお、下記一般式(1)
【化8】
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基及び置換されていてもよい低級アルキルチオ基からなる群から選択されるいずれかを示す。)
で表されるビグアニド誘導体の中で、R1、R2、R3が同時に水素原子であるフルフリルビグアニド及びR1がメチル基でありかつR2、R3が同時に水素原子である1−[(5−メチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド以外のものは新規化合物であり、すなわち本発明のビグアニド誘導体である。このような本発明の新規なビグアニド誘導体としては、具体的には、1−[(5−エチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(4−メチルチオフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド等が挙げられる。
【0024】
また、上記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体の塩としては、薬理上許容される塩であればよく、例えば無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。前記無機酸との塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。また、前記有機酸との塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。さらに、前記酸性アミノ酸との塩としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。このような一般式(1)で表されるビグアニド誘導体の塩の中でも、無機酸との塩が好ましく、塩酸との塩がより好ましい。
【0025】
ここで、前記フルフリルビグアニド、1−[(5−メチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド並びにそれらの塩は、既に公知の方法で製造することができ、具体的には、例えば、米国特許第3821406号公報、Am. Khim. Zh., 27, 1045-47 (1974), Chem. Abstr., 82, 170842m (1975)、J. Am. Chem. Soc., 81, 3728-3736 (1959)、Am. Khim. Zh., 26, 30-34 (1973); Chem. Abstr., 78, 159164p (1973)、J. Am. Chem. Soc., 81, 3725-3728 (1959)、J. Chem. Soc., 1063-1069 (1946)、J. Chem. Soc., 1017-1031(1954);Chem. Abstr., 81, 63361等に記載の方法を用いて製造すればよい。
【0026】
また、これらの化合物は、原料としてフルフリルアミンを用いて合成することができる。この中で、フルフリルアミンは市販品(東京化成、Aldlich製等)を使用することができる。また、その他の原料としてシアノグアニジンが挙げられるが、これも市販品(東京化成、関東化学、和光純薬工業、Aldlich製等)を使用することができる。
【0027】
また、上記一般式(1)で表される化合物は、原料として対応する置換フルフリルアミンを用いて合成することができる。この中で、5−メチルフルフリルアミンは市販品(東京化成、Aldlich製等)を使用することができる。また、その他の置換フルフリルアミンは、以下の反応スキームに準じて製造したものを使用することができる。なお、反応スキーム中のR1、R2、R3は、前記一般式(1)中のR1、R2、R3と同様に定義されるものである。
【0028】
【化9】
【0029】
すなわち、目的とする置換フルフリルアミンは、相当する置換フルフリルアジド体もしくは置換フラン−2−カルバルデヒドオキシム(Chem.Pharm.Bull.,39(1),181−183(1991))を還元することで得ることができる。また、目的とする置換フルフリルアミンは、置換フルフリルフタルイミドから合成することもできる。このような置換フルフリルアジド体および置換フルフリルフタルイミドは、置換フルフリルアルコールから光延反応を用いて直接合成するか、もしくはメシル基、トシル基で代表されるアルキルスルホン酸エステルもしくはクロロ基、ブロモ基等のハロゲン体を経由して合成することができる。そして、置換フルフリルアルコールは、相当する置換フラン−2−カルバルデヒドの還元により合成することができる。また、置換フラン−2−カルバルデヒドオキシムは、相当する置換フラン−2−カルバルデヒドとヒドロキシルアミンとの反応により得ることができる。
【0030】
上記一般式(1)で表される化合物は、フルフリルアミン又は置換フルフリルアミンの反応に影響を及ぼさない溶媒中又は無溶媒で、シリル化剤の存在下、シアノグアニジンと反応させることで製造することができる。ここで、前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムが挙げられ、好ましくはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン又はトルエンである。また、これらの溶媒は2種以上を混合した混合溶媒として用いてもよい。
【0031】
また、前記反応時の反応温度は、−78℃から反応混合物の沸点までの温度であれば特に制限はなく、好ましくは室温である。
【0032】
また、前記シリル化剤としては、例えば、クロロトリメチルシラン(Me3SiCl(以下Me3SiをTMSと略す))、クロロトリエチルシラン(Et3SiCl)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(TMSOSO2CF3)、メタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(TMSOSO2CH3)、(TMSO)2SO2、t−BuMe2SiOSO2CF3、(TMSO)(TMSN)CMeが挙げられ、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル、メタンスルホン酸トリメチルシリルエステルである。
【0033】
以上説明した一般式(1)で表される化合物の製造方法のスキームを以下に示す。なお、スキーム中のR1、R2、R3は、前記一般式(1)中のR1、R2、R3と同様に定義されるものである。
【0034】
【化10】
【0035】
本発明の2型糖尿病治療剤は、前記ビグアニド誘導体又はその塩を有効成分として含有するものであればよく、その具体的な処方は特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、安定化剤、滑沢剤、矯味剤、崩壊剤、コーティング剤、着色剤、緩衝剤、水性溶剤、油性溶剤、等張化剤、分散剤、保存剤、溶解補助剤、流動化剤、無痛化剤、pH調整剤、防腐剤、基剤等の添加成分と混合することにより製剤化すればよい。また、生理学的に許容されうる担体についても前記2型糖尿病治療剤の添加成分とすることができる。
【0036】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、D−マンニトール及びソルビット等の糖類、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース並びにその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン、デキストリン、β−シクロデキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム及びヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン並びにその誘導体、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩類、リン酸カルシウム等のリン酸塩類、炭酸カルシウム等の炭酸塩類、硫酸カルシウム等の硫酸塩類、酒石酸、酒石酸水素カリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0037】
また、前記結合剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース並びにその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン、デキストリン、β−シクロデキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム及びヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン並びにその誘導体、乳糖、白糖、ブドウ糖、D−マンニトール及びソルビット等の糖類、カンテン、ステアリルアルコール、ゼラチン、トラガント、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0038】
また、前記安定化剤としては、例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩類、エデト酸ナトリウム及びエデト酸四ナトリウム等のエデト酸塩類、硬化油、ゴマ油、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、アジピン酸、アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、アセチルトリプトファンナトリウム、アセトアニリド、アプロチニン液、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、DL−アラニン、L−アラニン、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸等が挙げられる。
【0039】
また、前記滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸類、サラシミツロウ及びカルナウバロウ等のワックス類、硫酸ナトリウム等の硫酸塩、ケイ酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸等のケイ酸類、ラウリル硫酸ナトリウム等のラウリル硫酸塩、アラビアゴム末、カカオ脂、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カロペプタイド、含水二酸化ケイ素、含水無晶形酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、グリセリン、軽質流動パラフィン、結晶セルロース、硬化油、合成ケイ酸アルミニウム、ゴマ油、コムギデンプン、タルク、マクロゴール類、リン酸等が挙げられる。
【0040】
また、前記矯味剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖及びD−マンニトール等の糖類、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アスパルテーム、アマチャ、アマチャエキス、アマチャ末、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、DL−アラニン、サッカリンナトリウム、dl−メントール、l−メントール類等が挙げられる。
【0041】
また、前記崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース並びにその誘導体、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン、デキストリン、β−シクロデキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム及びヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン並びにその誘導体カンテン、ゼラチン、トラガント、アジピン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
また、前記コーティング剤としては、例えば、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース類等のセルロース誘導体、セラック、ポリビニルピロリドン類、ポリエチレングリコール、マクロゴール類、メタアクリル酸コポリマー類、流動パラフィン、オイドラギット等が挙げられる。
【0043】
また、前記着色剤としては、例えば、インジコカルミン、カラメル、リボフラビン等が挙げられる。
【0044】
また、前記緩衝剤としては、例えば、アミノ酢酸、L−アルギニン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、希塩酸、クエン酸、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グルコン酸カルシウム、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、クレアチニン、クロロブタノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、乳酸、乳酸ナトリウム液、氷酢酸、ホウ酸、マレイン酸、無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウム、無水酢酸ナトリウム、無水炭酸ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸三ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、dl−リンゴ酸、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物等が挙げられる。
【0045】
また、前記水性溶剤としては、例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液等が挙げられる。
【0046】
また、前記油性溶剤としては、例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油及びコーン油等の植物油、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0047】
また、前記等張化剤としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、グリセリン、臭化ナトリウム、D−ソルビトール、ニコチン酸アミド、ブドウ糖、ホウ酸等が挙げられる。
【0048】
また、前記分散剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸並びにその塩類、アラビアゴム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セスキオレイン酸ソルビタン、D−ソルビトール、トラガント、メチルセルロース、モノステアリン酸アルミニウム、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、乳糖、濃グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール類、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
また、前記保存剤としては、例えば、クロロブタノール、フェネチルアルコール、プロピレングリコール及びベンジルアルコール等のアルコール類、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸エチル及びパラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥硫酸ナトリウム、クレゾール、クロロクレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノール、ホルマリン、リン酸、アンソッコウ、チメロサール、チモール、デヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
また、前記溶解補助剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、酢酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、セスキオレイン酸ソルビタン、ニコチン酸アミド、ブドウ糖、ベンジルアルコール、ポリビニルピロリドン類、アセトン、エタノール、イソプロパノール、D−ソルビトール、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳糖、尿素、白糖等が挙げられる。
【0051】
また、前記流動化剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸並びにその塩類、含水二酸化ケイ素、タルク、無水エタノール、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。
【0052】
また、前記無痛化剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン、塩酸メプリルカイン、塩酸リドカイン、リドカイン等が挙げられる。
【0053】
また、前記pH調整剤としては、例えば、塩酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、ホウ酸、マレイン酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0054】
また、前記防腐剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、チモール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。
【0055】
また、前記基剤としては、例えば、オリーブ油、ゴマ油及び小麦胚芽油等の植物油、グリセリン、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、セタノール、豚脂、白色ワセリン、パラフィン、ベントナイト、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ワセリン、ポリソルベート類、マクロゴール類、ラウリルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、リノール酸エチル、リン酸水素ナトリウム、ロジン等が挙げられる。
【0056】
本発明の2型糖尿病治療剤中に含まれる前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩の量は、その剤型によっても異なるが、2型糖尿病治療剤(医薬組成物)全量に対して0.00001〜100重量%であることが好ましい。
【0057】
また、本発明の2型糖尿病治療剤の剤形についても特に制限されないが、経口剤としては、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤及び懸濁剤等が挙げられ、非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤及び腹腔内注射剤等の注射剤、軟膏剤、クリーム剤及びローション剤等の経皮投与剤、直腸座剤及び膣座剤等の座剤、経鼻投与製剤等が挙げられる。
【0058】
更に、本発明の2型糖尿病治療剤の製造方法は、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩を使用するものであればよく、それによって2型糖尿病治療剤(好ましくはインスリン感受性を増強することによる血糖値上昇抑制治療のためのもの、より好ましくは血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させる作用を有するもの)を製造することができる。その具体的な方法は特に制限されず、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩を含有する前記の各種製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。すなわち、得ようとする2型糖尿病治療剤の剤形に応じて、所定量の前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩と前記添加成分とを適宜混合等することにより各種製剤を得ることが可能である。
【0059】
次に、本発明の2型糖尿病治療剤が有する作用である「インスリン感受性増強作用」について説明する。
【0060】
すなわち、インスリン感受性増強作用の強さは、KKAyマウスに薬物を投与した時の血糖降下率により評価することができる。KKAyマウスはインスリン抵抗性を示す糖尿病モデル動物であり(日本臨床 60巻、増刊号8、38-44、(2002))、インスリン分泌促進作用に基づく2型糖尿病治療剤であるスルホニル尿素系血糖降下剤は有効ではないことが知られている(Medical Pharmacy, Vol.24, No.3, 131-136、(1990))。KKAyマウスを用いた経口投与の血糖降下試験においては、KKAyマウスの血糖値を約45%抑制すると正常マウスの血糖値とほぼ同じになることから、血糖降下率が40〜50%であることが好ましい。
【0061】
KKAyマウスを用いた経口投与の血糖降下試験による血糖降下率の測定は公知の方法により行うことができるが、好ましい方法を以下に示す。
【0062】
すなわち、先ず、11週齢の雄性マウス(KKAy/Ta)の6匹を1群として試験に用いる。そして、コントロールとして処置前の血糖値を測定するため、尾部から採血しておく。採血後に、ビグアナイド誘導体を適切な濃度で0.5% CMC-Na(Sodium Carboxymethyl Cellulose)液に溶解し、10mL/kgの用量で経口投与する。また、対照として溶媒のみを投与したマウスを準備する。薬物投与の1時間、2時間、4時間、6時間後に、血糖値を測定するため尾部から採血する。血糖値はグルコースCII−テストワコー(和光純薬株式会社製)を用いて測定する。
【0063】
また、血糖降下率は次式により求める。
血糖降下率(%)=[(対照群の血糖値のAUC−化合物投与群の血糖値のAUC)/対照群の血糖値のAUC]×100
【0064】
ここで、血糖値のAUCとは、薬物投与後の血糖値変化を時間に対してプロットしたグラフにおいて、グルコース値0をベースラインとして薬物投与6時間後までの面積を表す。具体的には、A=薬物投与前の血糖値、B=薬物投与1時間後の血糖値、C=薬物投与2時間後の血糖値、D=薬物投与4時間後の血糖値、E=薬物投与6時間後の血糖値としたとき、血糖値のAUCは以下の式:
血糖値のAUC=1×((A+B)/2)+1×((B+C)/2)+2×((C+D)/2)+2×((D+E)/2)
から求めることができる。
【0065】
この血糖降下率が約45%である場合、正常マウスの血糖値とほぼ同じレベルに血糖値が低下する。
【0066】
また、インスリン感受性増強作用の強さは、インスリン抵抗性を示す糖尿病モデル動物であるdb/dbマウス(日本臨床 60巻、増刊号8、38-44、(2002))に薬物を投与した時の血糖降下率によって評価することもできる。db/dbマウスを用いた経口投与の糖負荷試験においては、db/dbマウスの血糖値を約50%抑制すると正常マウスの血糖上昇とほぼ同じになることから、血糖降下率が40%以上であることが好ましく、さらに50%以上であることがより好ましい。
【0067】
db/dbマウスを用いた経口投与の糖負荷試験による血糖降下率の測定は公知の方法により行うことができるが、好ましい方法を以下に示す。すなわち、先ず、11〜17週齢の雌性マウス(C57BLKS/J−m +/+ Lepr<db>(db/db))を18〜24時間絶食させる。このとき、5〜6匹を1群として試験に用いる。コントロールとして処置前の血糖値を測定するため、尾部から採血しておく。採血後に、ビグアニド誘導体を適切な濃度でリン酸バッファー生理食塩液に溶解し、5ml/kgの用量で皮下投与する。また、対照として溶媒のみを投与したマウスを準備する。更に、化合物あるいは溶媒投与の30分後に、グルコースを3g/6ml/kgの用量で経口投与し、経口糖負荷試験を実施する。グルコース投与の30分、1時間、2時間後に、血糖値を測定するため、尾部より採血する。血糖値は新ブラッド・シュガーテスト(ロシュ・ダイアグノスティクス株式会社製)、又はグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて測定する。
【0068】
そして、血糖降下率は以下の式より求める。
血糖降下率(%)=[(溶媒投与群の血糖上昇値のAUC−化合物投与群の血糖上昇値のAUC)/溶媒投与群の血糖上昇値のAUC]×100
【0069】
ここで、血糖上昇値のAUCとは、グルコース投与後の血糖値変化を時間に対してプロットしたグラフにおいて、グルコース投与前の血糖値をベースラインとしてグルコース投与2時間後までの増加部分の面積を表す。具体的には、A=グルコース投与前の血糖値、B=グルコース投与30分後の血糖値、C=グルコース投与1時間後の血糖値、D=グルコース投与2時間後の血糖値としたとき、血糖上昇値のAUCは、以下の式:
血糖上昇値のAUC=0.5×((A+B)/2−A)+0.5×((B+C)/2−A)+1×((C+D)/2−A)
から求めることができる。
【0070】
次に、本発明の2型糖尿病治療剤の好適な作用である「血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させる」という作用について、説明する。
【0071】
本発明において、血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させるとは、経口糖負荷試験による血糖降下率及び血中乳酸値の測定を行った場合に、上記糖尿病治療剤を投与した際に血糖降下率が40〜60%を示す投与量において、血中乳酸値上昇率が好ましくは15%以下であることを意味する。すなわち、例えば、上記経口糖負荷試験による血糖降下率及び血中乳酸値の測定を行った場合に、投与前の血中乳酸値が4〜33mg/dLを示している一般的な糖尿病患者に血糖降下率が40〜60%を示すような用量で前記糖尿病治療剤を投与した場合であっても、血中乳酸値が38mg/dL以下に抑えられる場合が挙げられる。また、上記2型糖尿病治療剤を投与した際に血糖降下率が60〜80%を示す投与量においては、血中乳酸値上昇率がより好ましくは35%以下、更により好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。すなわち、例えば、上記経口糖負荷試験による血糖降下率及び血中乳酸値の測定を行った場合に、投与前の血中乳酸値が4〜33mg/dLを示している一般的な糖尿病患者に血糖降下率が60〜80%を示すような用量で前記2型糖尿病治療剤を投与した場合であっても、血中乳酸値が45mg/dL以下に抑えられることがより好ましい。
【0072】
なお、上記の経口糖負荷試験による血糖降下率及び血中乳酸値の測定は公知の方法により行うことができ、前者の測定は前述の方法により行うことができる。また、後者の測定は以下の方法により好適に行うことができる。すなわち、まず、11〜17週齢の雌性マウス(C57BLKS/J−m +/+ Lepr<db>(db/db))を18〜24時間絶食させる。このとき、5〜6匹を1群として試験に用いる。コントロールとして処置前の血中乳酸値を測定するため、尾部から採血しておく。採血後に、ビグアニド誘導体を適切な濃度でリン酸バッファー生理食塩液に溶解し、5ml/kgの用量で皮下投与する。また、対照として溶媒のみを投与したマウスを準備する。更に、化合物あるいは溶媒投与の30分後に、グルコースを3g/6ml/kgの用量で経口投与し、経口糖負荷試験を実施する。グルコース投与の30分、1時間、2時間後に、血中乳酸値を測定するため、尾部より採血する。血中乳酸値は、「アスカ・シグマ」(シグマ・ダイアグノスティクス株式会社製)を用いて測定する。
【0073】
そして、血中乳酸値上昇率は、以下の式:
血中乳酸値上昇率(%)=[(化合物投与群の血中乳酸値のAUC−溶媒投与群の血中乳酸値のAUC)/溶媒投与群の血中乳酸値のAUC]×100
から求められる。
【0074】
ここで、血中乳酸値のAUCとは、グルコース投与後の血中乳酸値変化を時間に対してプロットしたグラフにおいて、グルコース投与2時間後までの面積を表す。具体的には、E=グルコース投与前の血中乳酸値、F=グルコース投与30分後の血中乳酸値、G=グルコース投与1時間後の血中乳酸値、H=グルコース投与2時間後の血中乳酸値としたとき、血中乳酸値のAUCは、以下の式:
血中乳酸値のAUC=0.5×(E+F)/2+0.5×(F+G)/2+1×(G+H)/2
から求めることができる。
【0075】
次に、本発明の2型糖尿病治療剤の好適な投与対象について説明する。本発明の2型糖尿病治療剤は上述のように優れたインスリン感受性増強作用を有し、好ましくは血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させるものであるため、乳酸アシドーシスを誘発しない血糖値上昇抑制治療のために有用であり、糖尿病患者の中でも特に乳酸アシドーシスを起こしやすい傾向にある糖尿病患者に対して投与するのに有効である。このような乳酸アシドーシスを起こしやすい糖尿病患者とは、例えば、乳酸アシドーシスの既往を伴う糖尿病患者、腎機能障害を伴う糖尿病患者、肝機能障害を伴う糖尿病患者、心血管系の障害を伴う糖尿病患者、肺機能に障害を伴う糖尿病患者、低酸素血症を伴いやすい糖尿病患者、過度のアルコール摂取者における糖尿病患者、胃腸障害を伴う糖尿病患者及び高齢者である糖尿病患者等を意味する。
【0076】
本発明の2型糖尿病治療剤は、上述のように特に乳酸アシドーシスを起こしやすい傾向にある糖尿病患者に対して有効であり、中でも腎機能障害を伴う糖尿病患者に対して投与するのに適している。ここで、腎機能障害とは、具体的には、例えば、慢性腎不全、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、免疫複合体腎炎、急性腎不全、間質性腎炎、腎硬化症、腎梗塞、尿細管機能異常、薬物による腎障害、農薬による腎障害、尿毒症が挙げられる。
【0077】
なお、本発明の2型糖尿病治療剤の投与方法は特に制限されないが、例えば、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその薬理上許容される塩と前述の添加成分を用いて医薬組成物(製剤)とし、経口的又は非経口的に投与することができる。
【0078】
また、本発明の2型糖尿病治療剤の投与量は、投与対象(人をはじめとする温血動物等)の種類、症状の軽重、年齢、投与方法、医師の診断結果等に応じて適宜決定することができるが、例えば経口投与の場合には、成人に対して一般式(1)で表されるビグアニド誘導体の投与量が一日あたり0.1〜2000mg/kgであることが好ましく、非経口投与の場合には、一日あたり0.1〜1000mg/kgであることが好ましい。なお、上記の投与量は投与対象の単位重量(体重1kg)あたりの値である。また、本発明においては、症状の軽重、医師の判断等に応じて、上記投与量を1〜7日間のうちに1回にまとめて投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。
【0079】
このようにして有効量の前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩を投与することにより、前述の通り、優れたインスリン感受性増強作用により血糖値の上昇が十分に抑制され、更には血糖値が十分に低減され、しかも好適にはその際における血中乳酸値の上昇が十分に抑制される。
【0080】
また、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩は前述の通り優れたインスリン感受性増強作用を有することから、インスリン抵抗性の改善による糖尿病の発症予防に有効な2型糖尿病予防剤の有効成分として有用である。更に、インスリン抵抗性の亢進は心筋梗塞、脳卒中などの大血管障害に大きく関わっていることから、インスリン感受性増強作用を有する前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩は大血管障害予防剤の有効成分としても有用である。
【0081】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
合成例1(フルフリルビグアニドの合成)
フルフリルアミン(5.0g)のジクロロメタン溶液(50ml)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(11.2ml)を加え、室温にて30分攪拌した。次に、この溶液にシアノグアニジン(4.33g)を加え終夜攪拌した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=10:100)に付し、油状の目的物(5.85g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :4.33(2H,s),6.32(1H,d,J=2.97Hz),6.40(1H,s),6.85(6H,m),7.59(1H,s)
Fab−MS: 182(M+H+)
HPLC RT:6.5分
【0083】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0084】
【化11】
【0085】
なお、前記アミン処理シリカゲルクロマトグラフィーは、富士シリシア化学株式会社製シリカゲルChromatorex NH DM1020(粒径100mm)を用いた。また、HPLC装置は日立製作所L−6200、HPLC用カラムは野村化学Develosil ODS HG−5 4.6x150mmを使用し、HPLCによる保持時間(RT:min.)の測定は以下の方法によって行った。すなわち、移動相として10%メタノール・0.1M酢酸アンモニウム水溶液を用い、流速:1ml/min.、検知:240nmの条件で行った。
【0086】
合成例2(1―(5−メチルフルフリル)ビグアニドの合成)
5−メチルフルフリルアミン(3.0g)の1,2−ジクロロエタン溶液(19ml)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(5.37ml)を加え、室温にて1時間攪拌した。次に、この溶液にシアノグアニジン(2.27g)を加えて室温にて終夜攪拌した後、1.5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却した後、アミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=10:100)に付し、白色粉末の目的物(4.50g)を得た。得られた白色粉末物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :2.24(3H,s),4.25(2H,s),6.00(1H,s),6.18(1H,m),6.40−8.40(6H,m)
Fab−MS: 196(M+H+)
HPLC RT:21.7分
【0087】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0088】
【化12】
【0089】
なお、前記アミン処理シリカゲルクロマトグラフィーは、富士シリシア化学株式会社製シリカゲルChromatorex NH DM1020(粒径100mm)を用いた。また、HPLC装置は日立製作所L−6200、HPLC用カラムは野村化学Develosil ODS HG−5 4.6x150mmを使用し、HPLCによる保持時間(RT:min.)の測定は以下の方法によって行った。すなわち、移動相として10%メタノール・0.1M酢酸アンモニウム水溶液を用い、流速:1ml/min.、検知:240nmの条件で行った。更に、Fab−MSはVG analytical社製の70−SEQを用いて測定した。
【0090】
合成例3(1−[(5−エチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
(5−エチルフラン−2−イル)メチルアミン(5.61g)の1,2−ジクロロエタン溶液(32mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(9.72mL)を加え、室温にて30分攪拌した後、シアノグアニジン(3.77g)を加え室温にて終夜攪拌した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、溶媒を減圧留去し、油状の目的物(1.48g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :1.16(3H,t,J=7.42Hz),2.58(2H,q,J=7.42Hz),4.26(2H,s),6.00(1H,brs),6.19(1H,d,J=2.47Hz),6.54−8.29(6H,m)
MS(ESI+):210[M+1]+
HPLC RT:11.7分(移動相:メタノール30%)
【0091】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0092】
【化13】
【0093】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィーの諸条件は合成例2と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。更に、LCMSはThermo Finigan社製のLCQを用いイオン化法(ESI+)で測定した。
【0094】
合成例4(1−[(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) (5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチルアルコール(18.3g)のTHF溶液(240mL)にトリフェニルホスフィン(31.2g)とフタルイミド(17.5g)を加え、氷冷下ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD、18.7mL)を滴下し、2時間攪拌した。反応液を減圧下溶媒を除去し、ジエチルエーテルを加え析出した不溶物を濾別した。濾液を減圧下溶媒を除去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)に付し、溶媒を減圧留去し、粉末状の目的物、N−[(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチル]フタルイミド(15.6g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :1.22(9H,s),4.81(2H,s),5.85(1H,d,J=3.13Hz),6.19(1H,d,J=3.13Hz),7.67−7.87(4H,m)
【0095】
2) 1)で得られたN−[(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチル]フタルイミド(15.6g)のメタノール−ジクロロメタン混合液(1:2、105mL)にメチルアミンの40%メタノール溶液(70mL)を加え、室温下終夜攪拌した。反応液を減圧留去し、得られた残渣にジエチルエーテルを加え析出した不溶物を濾別し、濾液を減圧留去し、油状の目的物、(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチルアミン(7.91g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :1.27(9H,s),3.77(2H,s),5.85(1H,d,J=2.96Hz),5.98(1H,d,J=2.96Hz)
【0096】
3) 2)で得られた(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチルアミン(3.50g)の1,2−ジクロロエタン溶液(16mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(4.54mL)を加え、室温にて30分攪拌した後、シアノグアニジン(1.92g)を加え1時間加熱還流下した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、白色粉末の目的物(1.23g)を得た。得られた白色粉末の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :1.23(9H,s),4.27(2H,s),5.97(1H,d,J=2.96Hz),6.16(1H,d,J=2.96Hz),6.70−8.30(6H,m)
MS(ESI+):238[M+1]+
HPLC RT:7.6分(移動相:メタノール50%)
【0097】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0098】
【化14】
【0099】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例3と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0100】
合成例5(1−[(4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) (4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチルアルコール(16.9g)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(260mL)にアジ化ナトリウム(11.3g)およびトリフェニルホスフィン(45.6g)を加え、氷冷下四臭化炭素(57.7g)を加え室温にて1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、および飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)に付し、油状の目的物、2−アジドメチル−4,5−ジメチルフラン(11.5g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :1.92(3H,s),2.20(3H,s),4.19(2H,s),6.11(1H,s)
【0101】
2) 1)で得られた2−アジドメチル−4,5−ジメチルフラン(5.01g)のジエチルエーテル溶液(66mL)に氷冷下水素化リチウムアルミニウム(1.26g)を少しずつ加え、30分間攪拌した。反応液を氷水にあけ、得られた懸濁液をセライト濾過した。濾液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチルアミン(2.66g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :1.90(3H,s),2.18(3H,s),3.71(2H,s),5.89(1H,s)
【0102】
3) (4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチルアミン(2.66g)の1,2−ジクロロエタン溶液(22mL)に、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(4.61mL)を加え、室温にて45分攪拌した後、シアノグアニジン(1.79g)を加え室温にて終夜攪拌した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、油状の目的物(3.00g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :1.87(3H、s),2.15(3H、s),4.20(2H,s),6.08(1H,s),6.50−8.30(6H,m)
MS(ESI+):210[M+1]+
HPLC RT:8.9分(移動相:メタノール30%)
【0103】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0104】
【化15】
【0105】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例2と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0106】
合成例6(1−[(4−メチルチオフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) 2−ジエトキシメチル−4−メチルチオフラン(10.23g)のジエチルエーテル−メタノール混合液(5:1、120mL)に2規定塩酸(20mL)を加え、室温下1時間攪拌した。反応液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水、および蒸留水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧留去し、油状の粗目的物、4−メチルチオフルフラールを得た。ここで得られた4−メチルチオフルフラールのメタノール溶液(70mL)に氷冷下水素化ホウ素ナトリウム(1.26g)を少しずつ加え、30分間攪拌した。反応液を減圧留去し、得られた残渣に蒸留水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)に付し、油状の目的物、(4−メチルチオフラン−2−イル)メタノール(4.40g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.35(3H、s),4.58(2H,d,J=6.10Hz),6.33(1H,s),7.32(1H,s)
【0107】
2) 1)で得られた(4−メチルチオフラン−2−イル)メタノール(4.40g)のDMF溶液(60mL)にアジ化ナトリウム(2.98g)およびトリフェニルホスフィン(12.0g)を加え、氷冷下四臭化炭素(15.2g)を加え室温にて1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)に付し、油状の目的物、2−アジドメチル−4−メチルチオフラン(3.51g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.36(3H、s),4.26(2H,s),6.37(1H,s),7.34(1H,s)
【0108】
3) 2)で得られた2−アジドメチル−4−メチルチオフラン(1.52g)のジエチルエーテル溶液(18mL)に氷冷下水素化リチウムアルミニウム(0.34g)を少しずつ加え、1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、得られた懸濁液をセライト濾過した。濾液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を2規定塩酸で抽出し、抽出液を2規定水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(4−メチルチオフラン−2−イル)メチルアミン(0.96g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.34(3H、s),3.79(2H,s),6.18(1H,s),7.26(1H,s)
【0109】
4) (4−メチルチオフラン−2−イル)メチルアミン(1.60g)の1,2−ジクロロエタン溶液(8mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(2.22mL)を加え、室温にて1時間攪拌した後、シアノグアニジン(940mg)を加え2時間加熱還流した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、油状の目的物(1.10g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :2.33(3H,s),4.28(2H,s),6.39(1H,s),6.40−8.31(6H,m),7.56(1H,s)
MS(ESI+):228[M+1]+
HPLC RT:4.8分(移動相:メタノール50%)
【0110】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0111】
【化16】
【0112】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例3と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0113】
合成例7(1−[(5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) (5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メタノール(12.89g)のDMF溶液(240mL)にアジ化ナトリウム(7.94g)およびトリフェニルホスフィン(32.0g)を加え、氷冷下四臭化炭素(40.5g)を加え室温にて1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した不溶物を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)に付し、油状の目的物、2−アジドメチル−5−メチルチオメチルフラン(6.01g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.10(3H,s),3.67(2H,s),4.27(2H,s),6.16(1H,d,J=3.13Hz),6.28(1H,d,J=2.97Hz)
【0114】
3) 2)で得られた2−アジドメチル−5−メチルチオメチルフラン(6.01g)のジエチルエーテル溶液(65mL)に氷冷下水素化リチウムアルミニウム(1.24g)を少しずつ加え、1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、得られた懸濁液をセライト濾過した。濾液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を2規定塩酸で抽出し、抽出液を2規定水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチルアミン(3.24g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.09(3H,s),3.66(2H,s),3.80(2H,s),6.05(1H,d,J=3.13Hz),6.09(1H,d,J=2.97Hz)
【0115】
4) (5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチルアミン(3.24g)の1,2−ジクロロエタン溶液(23mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(4.50mL)を加え、室温にて30分攪拌した後、シアノグアニジン(1.90g)を加え2時間加熱還流した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、油状の目的物(3.80g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :2.03(3H,s),3.69(2H,s),4.29(2H,s),6.20(1H,d,J=2.80Hz),6.23(1H,d,J=2.80Hz),6.40−8.30(6H,m)
MS(ESI+):242[M+1]+
HPLC RT:8.0分(移動相:メタノール30%)
【0116】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0117】
【化17】
【0118】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例3と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0119】
合成例8(1−[(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) 3−メチルチオメチルフラン(8.07g)のDMF溶液(80mL)に氷冷下、DMF(6.8mL)およびオキシ塩化リン(8.2mL)より調整したVilsmeier試薬を滴下し、室温で1時間45分攪拌した後、45度の油浴にて1時間15分攪拌した。反応液を室温に冷却した後、反応液を2規定水酸化ナトリウム水溶液にあけ、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、3−メチルチオメチルフルフラールを得た。ここで得られた3−メチルチオメチルフルフラールのメタノール溶液(120mL)に氷冷下水素化ホウ素ナトリウム(2.38g)を少しずつ加え、1時間攪拌した。反応液を減圧留去し、得られた残渣に蒸留水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メタノール(6.40g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.05(3H,s),3.56(2H,s),4.61(2H,d,J=5.93Hz),6.37(1H,d,J=1.32Hz),7.33(1H,d,J=1.48Hz)
【0120】
2) 1)で得られた(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メタノール(9.00g)のDMF溶液(150mL)にアジ化ナトリウム(5.55g)およびトリフェニルホスフィン(22.4g)を加え、氷冷下四臭化炭素(28.3g)を加え室温にて1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した不溶物を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)に付し、油状の目的物、2−アジドメチル−3−メチルチオメチルフラン(9.03g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.04(3H,s),3.52(2H,s),4.32(2H,s),6.41(1H,d,J=1.65Hz),7.38(1H,d,J=1.82Hz)
【0121】
3) 2)で得られた2−アジドメチル−3−メチルチオメチルフラン(10.5g)のジエチルエーテル溶液(290mL)に氷冷下水素化リチウムアルミニウム(2.20g)を少しずつ加え、1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、得られた懸濁液をセライト濾過した。濾液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を2規定塩酸で抽出し、抽出液を2規定水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチルアミン(2.20g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.03(3H,s),3.51(2H,s),3.79(2H,s),6.33(1H,d,J=1.49Hz),7.29(1H,d,J=1.65Hz)
【0122】
4) (3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチルアミン(2.20g)の1,2−ジクロロエタン溶液(10mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(2.78mL)を加え、室温にて40分攪拌した後、シアノグアニジン(1.18g)を加え1時間加熱還流した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、油状の目的物(1.62g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :1.97(3H,s),3.56(2H,s),4.32(2H,s),6.41(1H,d,J=1.65Hz),7.56(1H,d,J=1.83Hz),6.40−8.30(6H,m)
MS(ESI+):242[M+1]+
HPLC RT:5.7分(移動相:メタノール30%)
【0123】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0124】
【化18】
【0125】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例3と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0126】
実施例1〜5及び比較例1〜5(KKAyマウスを用いた経口投与の血糖降下試験)
11週齢の雄性マウス(KKAy/Ta)の6匹を1群として試験に用いた。コントロールとして処置前の血糖値を測定するため、尾部から採血した。採血後に、フルフリルビグアニドを適切な濃度で0.5% CMC-Na(Sodium Carboxymethyl Cellulose)液に溶解し、その投与量が表1に示す量となるように、10mL/kgの用量で経口投与した(実施例1〜5)。また、比較のため、表1に示す投与量のメトホルミンを同様にマウスに経口投与した(比較例1〜5)。更に、対照として、上記溶媒のみを同様にマウスに経口投与した。そして、薬物投与の1時間、2時間、4時間、6時間後に、血糖値を測定するため尾部から採血し、血糖降下率を前述の式により求めた。なお、血糖値はグルコースCII−テストワコー(和光純薬株式会社製)を用いて測定した。得られた試験結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例6〜13及び比較例6〜27(経口糖負荷試験)
11〜17週齢の雌性(C57BLKS/J−m +/+ Lepr<db>(db/db))マウスを18〜24時間絶食し、6匹を1群として試験に用いた。処置前の血糖値及び血中乳酸値を測定するため、尾部から採血した。採血後に、表2〜表4に示す化合物(実施例6〜13、比較例19〜27)を投与量が表2〜表4に示す量となるようにリン酸バッファー生理食塩液に溶解し、5ml/kgの用量でマウスに皮下投与した。また、比較のため、表2に示す投与量のメトホルミン(比較例6〜18)を同様にマウスに皮下投与した。更に、対照として、上記溶媒のみを同様にマウスに皮下投与した。
【0129】
更に、前記化合物又は溶媒投与の30分後に、グルコースを3g/6ml/kgの用量で経口投与し、経口糖負荷試験を実施した。グルコース投与の30分、1時間、2時間後に、血糖値及び血中乳酸値測定用の血液を尾部より採取し、血糖降下率及び血中乳酸値上昇率を前述の式により求めた。なお、血糖値は新ブラッド・シュガーテスト(ロシュ・ダイアグノスティクス株式会社製)、又はグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて測定した。また、血中乳酸値は、「アスカ・シグマ」(シグマ・ダイアグノスティクス株式会社製)を用いて測定した。得られた試験結果を表2〜表4に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
表1に示した結果から明らかなように、前記一般式(1)で表される本発明にかかるビグアニド誘導体又はその塩を投与した場合に、顕著なインスリン感受性増強作用により血糖値の上昇が十分に抑制されていることが確認された。また、表2〜表4に示した結果から明らかなように、前記一般式(1)で表される本発明にかかるビグアニド誘導体又はその塩を投与した場合に、顕著な血糖降下率を示しながらも血中乳酸値の上昇率は非常に低く抑えられていることが確認された。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インスリン感受性の増強により血糖値の上昇を十分に抑制し、更には血糖値を十分に降下させ、しかも好適にはその際における血中乳酸値の上昇を十分に抑制する作用を有する2型糖尿病治療剤を提供することが可能となる。従って、本発明によって、十分なインスリン感受性増強作用を有し、かつ、乳酸アシドーシス等の副作用を惹起する可能性が低い2型糖尿病治療剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、フルフリルビグアニド又はメトホルミンの投与による、経口糖負荷試験における血糖降下率と血中乳酸値上昇率との関係を示したグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、2型糖尿病治療剤に関し、より詳細にはビグアニド誘導体又はその塩を有効成分とする2型糖尿病治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
2型糖尿病は、インスリン分泌障害とインスリン抵抗性の亢進とが主な原因となって発症及び進行していく疾患であり、インスリン非依存型糖尿病とも呼ばれている。インスリン分泌障害が起こると、インスリンの量的不足が生じ、血糖値の上昇を引き起こす。一方、インスリン抵抗性が亢進すると、それを補うようにインスリン分泌が増加することが多い。しかし、インスリン分泌の増加が限界に達すると、相対的にインスリンが不足し、血糖値の上昇が起こる。2型糖尿病の発症及び進行には、インスリン分泌障害とインスリン抵抗性の両方が関与しており、これらの関与の度合いはそれぞれの患者ごとに異なっていることが知られている。
【0003】
インスリン感受性増強薬は、インスリン抵抗性を改善する効果を示し、インスリン抵抗性が病態に関与する2型糖尿病に有効な薬物である。また、健常者と2型糖尿病患者の境界型と考えられる耐糖能障害者において、インスリン抵抗性の改善は糖尿病の発症予防に有効であると考えられており、インスリン感受性増強薬は、糖尿病の発症予防に有効であることが期待される。さらに、インスリン抵抗性の亢進が心筋梗塞、脳卒中などの大血管障害に大きく関わっていることが明らかとなっており、インスリン感受性増強薬は、心筋梗塞、脳卒中などの大血管障害の予防に有効であることが期待される(最新医学Vol.57 No.8 1739-1746(2002):非特許文献1)。
【0004】
このようなインスリン感受性増強剤としては、トログリタゾン、ピオグリタゾンなどのチアゾリジン系薬剤が知られている。しかしながら、トログリタゾンは、副作用として劇症肝炎など重篤な肝障害を引き起こすことがあることから、販売中止となっている。また、ピオグリタゾンについては、現在も臨床で2型糖尿病の治療に使用されているが、浮腫、心不全などの副作用があることが認められている。
【0005】
また、ビグアニド系薬剤の一種であるメトホルミンも、インスリン感受性増強作用を有することが知られている(N.Engl.J.Med.,338,867−872(1998):非特許文献2)。しかしながら、メトホルミン等既存のビグアニド剤は乳酸アシドーシスを惹起する可能性が高いと認識されており、糖尿病患者のうち、乳酸アシドーシスの既往を伴う糖尿病患者、腎機能障害を伴う糖尿病患者、肝機能障害を伴う糖尿病患者、心血管系の障害を伴う糖尿病患者、肺機能の障害を伴う糖尿病患者、低酸素血症を伴いやすい糖尿病患者、過度のアルコール摂取者である糖尿病患者、胃腸障害を伴う糖尿病患者及び高齢者である糖尿病患者について、乳酸アシドーシスの危険性があることから使用禁忌となっている(日本医薬情報センター編、医療薬日本医薬品集 2002(第25版)、2170頁、2001年発行:非特許文献3)。また、メトホルミンには、インスリン感受性増強作用が十分ではなく、十分な効果が得られないため、投与量が多くならざるを得ないといった問題もあった。
【0006】
更に、ビグアニド誘導体としては、メトホルミン以外にも多くの化合物が知られており、例えばJ.Am.Chem.Soc.,81,3728−3736(1959)(非特許文献4)には種々のビグアニド誘導体が記載されている。しかしながら、非特許文献4には、メトホルミンを含む種々のビグアニド誘導体について、単に血糖降下作用のみが正常血糖値のモルモットを用いた皮下投与試験で検討されているに過ぎず、インスリン感受性増強作用や乳酸アシドーシス惹起能の有無やその程度については確認されておらず、何ら記載されていない。
【0007】
【非特許文献1】
最新医学vol.57 No.8 1739-1746(2002)
【非特許文献2】
N.Engl.J.Med.,338,867−872(1998)
【非特許文献3】
日本医薬情報センター編、医療薬日本医薬品集 2002(第25版)、2170頁、2001年発行
【非特許文献4】
J.Am.Chem.Soc.,81,3728−3736(1959)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分なインスリン感受性増強作用を有し、かつ、乳酸アシドーシス等の副作用を惹起する可能性が低い2型糖尿病治療剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するビグアニド誘導体又はその塩は優れたインスリン感受性増強作用を有しており、2型糖尿病治療剤として有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の2型糖尿病治療剤は、下記一般式(1):
【化4】
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は水素原子、R 3 は水素原子を示す。)
で表されるビグアニド誘導体又はその塩を有効成分として含有するものである。
【0011】
上記本発明の2型糖尿病治療剤において、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体が、フルフリルビグアニド(式中、R1、R2、R3が同時に水素原子である)であることが特に好ましい。
【0012】
また、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩は優れたインスリン感受性増強作用を有しており、本発明の2型糖尿病治療剤はインスリン感受性を増強することによる血糖値上昇抑制治療のために有効なものである。
【0013】
更に、本発明の2型糖尿病治療剤は、好ましくは血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させる作用を有するものであり、乳酸アシドーシスを誘発しない血糖値上昇抑制治療のための糖尿病治療剤として有用であり、具体的には乳酸アシドーシスの既往を伴う糖尿病、腎機能障害を伴う糖尿病、肝機能障害を伴う糖尿病、心血管系の障害を伴う糖尿病、肺機能の障害を伴う糖尿病、低酸素血症を伴いやすい糖尿病、過度のアルコール摂取者における糖尿病、胃腸障害を伴う糖尿病及び高齢者の糖尿病からなる群から選択される少なくとも1つの2型糖尿病を対象とする糖尿病治療剤であり、特に腎機能障害を伴う糖尿病を対象とする糖尿病治療剤として有用である。
【0014】
また、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩は優れたインスリン感受性増強作用を有しているため、本発明は、(i)前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩を有効成分として含有する、乳酸アシドーシスの既往を伴う糖尿病、腎機能障害を伴う糖尿病、肝機能障害を伴う糖尿病、心血管系の障害を伴う糖尿病、肺機能の障害を伴う糖尿病、低酸素血症を伴いやすい糖尿病、過度のアルコール摂取者における糖尿病、胃腸障害を伴う糖尿病及び高齢者の糖尿病からなる群から選択される2型糖尿病の予防剤にもある。
【0015】
更に、下記一般式(1):
【化5】
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基及び置換されていてもよい低級アルキルチオ基からなる群から選択されるいずれかを示す。ただし、R1、R2、R3が同時に水素原子であるフルフリルビグアニド、及び、R1がメチル基でありかつR2、R3が同時に水素原子である1−[(5−メチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドを除く。)
で表されるビグアニド誘導体は新規化合物であり、本発明は係る新規なビグアニド誘導体にもある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明の2型糖尿病治療剤は、下記一般式(1)
【化6】
(式中、R 1 は水素原子またはメチル基、R 2 は水素原子、R 3 は水素原子を示す。)
で表されるビグアニド誘導体又はその塩を有効成分として含有する2型糖尿病治療剤である。
【0018】
先ず、本発明にかかる2型糖尿病治療剤を構成する要素について説明する。
【0019】
本発明にかかるビグアニド誘導体は、下記一般式(1)
【化7】
で表され、一般式(1)中、R1、R2、R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基及び置換されていてもよい低級アルキルチオ基からなる群から選択されるいずれかを示す。このようなビグアニド誘導体には後述する種々の化合物が包含されるが、中でも一般式(1)中のR1、R2、R3が同時に水素原子であるフルフリルビグアニド並びにR 1 がメチル基、R 2 が水素原子、R 3 が水素原子である1−(5−メチルフルフリル)ビグアニドは乳酸アシドーシス等の副作用の惹起を伴わずに十分なインスリン感受性増強作用を奏する傾向にあるため特に好ましい。
【0020】
ここで、前記低級アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基が挙げられる。また、前記低級アルキル基の中でも炭素数1〜5のものがより好ましく、炭素数1〜4のものが更により好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0021】
また、前記低級アルキルチオ基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルチオ基であることが好ましく、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、各種ペンチルチオ基、各種ヘキシルチオ基が挙げられる。また、前記低級アルキルチオ基の中でも炭素数1〜5のものがより好ましく、炭素数1〜4のものが更により好ましく、メチルチオ基が特に好ましい。
【0022】
更に、上記低級アルキル基及び低級アルキルチオ基に置換可能な置換基としては、低級アルキルチオ基、低級アルコキシル基等が挙げられ、中でも炭素数1〜6(より好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルチオ基が好ましく、メチルチオ基が特に好ましい。
【0023】
なお、下記一般式(1)
【化8】
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基及び置換されていてもよい低級アルキルチオ基からなる群から選択されるいずれかを示す。)
で表されるビグアニド誘導体の中で、R1、R2、R3が同時に水素原子であるフルフリルビグアニド及びR1がメチル基でありかつR2、R3が同時に水素原子である1−[(5−メチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド以外のものは新規化合物であり、すなわち本発明のビグアニド誘導体である。このような本発明の新規なビグアニド誘導体としては、具体的には、1−[(5−エチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(4−メチルチオフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド、1−[(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド等が挙げられる。
【0024】
また、上記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体の塩としては、薬理上許容される塩であればよく、例えば無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。前記無機酸との塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。また、前記有機酸との塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。さらに、前記酸性アミノ酸との塩としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。このような一般式(1)で表されるビグアニド誘導体の塩の中でも、無機酸との塩が好ましく、塩酸との塩がより好ましい。
【0025】
ここで、前記フルフリルビグアニド、1−[(5−メチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニド並びにそれらの塩は、既に公知の方法で製造することができ、具体的には、例えば、米国特許第3821406号公報、Am. Khim. Zh., 27, 1045-47 (1974), Chem. Abstr., 82, 170842m (1975)、J. Am. Chem. Soc., 81, 3728-3736 (1959)、Am. Khim. Zh., 26, 30-34 (1973); Chem. Abstr., 78, 159164p (1973)、J. Am. Chem. Soc., 81, 3725-3728 (1959)、J. Chem. Soc., 1063-1069 (1946)、J. Chem. Soc., 1017-1031(1954);Chem. Abstr., 81, 63361等に記載の方法を用いて製造すればよい。
【0026】
また、これらの化合物は、原料としてフルフリルアミンを用いて合成することができる。この中で、フルフリルアミンは市販品(東京化成、Aldlich製等)を使用することができる。また、その他の原料としてシアノグアニジンが挙げられるが、これも市販品(東京化成、関東化学、和光純薬工業、Aldlich製等)を使用することができる。
【0027】
また、上記一般式(1)で表される化合物は、原料として対応する置換フルフリルアミンを用いて合成することができる。この中で、5−メチルフルフリルアミンは市販品(東京化成、Aldlich製等)を使用することができる。また、その他の置換フルフリルアミンは、以下の反応スキームに準じて製造したものを使用することができる。なお、反応スキーム中のR1、R2、R3は、前記一般式(1)中のR1、R2、R3と同様に定義されるものである。
【0028】
【化9】
【0029】
すなわち、目的とする置換フルフリルアミンは、相当する置換フルフリルアジド体もしくは置換フラン−2−カルバルデヒドオキシム(Chem.Pharm.Bull.,39(1),181−183(1991))を還元することで得ることができる。また、目的とする置換フルフリルアミンは、置換フルフリルフタルイミドから合成することもできる。このような置換フルフリルアジド体および置換フルフリルフタルイミドは、置換フルフリルアルコールから光延反応を用いて直接合成するか、もしくはメシル基、トシル基で代表されるアルキルスルホン酸エステルもしくはクロロ基、ブロモ基等のハロゲン体を経由して合成することができる。そして、置換フルフリルアルコールは、相当する置換フラン−2−カルバルデヒドの還元により合成することができる。また、置換フラン−2−カルバルデヒドオキシムは、相当する置換フラン−2−カルバルデヒドとヒドロキシルアミンとの反応により得ることができる。
【0030】
上記一般式(1)で表される化合物は、フルフリルアミン又は置換フルフリルアミンの反応に影響を及ぼさない溶媒中又は無溶媒で、シリル化剤の存在下、シアノグアニジンと反応させることで製造することができる。ここで、前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムが挙げられ、好ましくはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン又はトルエンである。また、これらの溶媒は2種以上を混合した混合溶媒として用いてもよい。
【0031】
また、前記反応時の反応温度は、−78℃から反応混合物の沸点までの温度であれば特に制限はなく、好ましくは室温である。
【0032】
また、前記シリル化剤としては、例えば、クロロトリメチルシラン(Me3SiCl(以下Me3SiをTMSと略す))、クロロトリエチルシラン(Et3SiCl)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(TMSOSO2CF3)、メタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(TMSOSO2CH3)、(TMSO)2SO2、t−BuMe2SiOSO2CF3、(TMSO)(TMSN)CMeが挙げられ、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル、メタンスルホン酸トリメチルシリルエステルである。
【0033】
以上説明した一般式(1)で表される化合物の製造方法のスキームを以下に示す。なお、スキーム中のR1、R2、R3は、前記一般式(1)中のR1、R2、R3と同様に定義されるものである。
【0034】
【化10】
【0035】
本発明の2型糖尿病治療剤は、前記ビグアニド誘導体又はその塩を有効成分として含有するものであればよく、その具体的な処方は特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、安定化剤、滑沢剤、矯味剤、崩壊剤、コーティング剤、着色剤、緩衝剤、水性溶剤、油性溶剤、等張化剤、分散剤、保存剤、溶解補助剤、流動化剤、無痛化剤、pH調整剤、防腐剤、基剤等の添加成分と混合することにより製剤化すればよい。また、生理学的に許容されうる担体についても前記2型糖尿病治療剤の添加成分とすることができる。
【0036】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、D−マンニトール及びソルビット等の糖類、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース並びにその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン、デキストリン、β−シクロデキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム及びヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン並びにその誘導体、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩類、リン酸カルシウム等のリン酸塩類、炭酸カルシウム等の炭酸塩類、硫酸カルシウム等の硫酸塩類、酒石酸、酒石酸水素カリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0037】
また、前記結合剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース並びにその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン、デキストリン、β−シクロデキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム及びヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン並びにその誘導体、乳糖、白糖、ブドウ糖、D−マンニトール及びソルビット等の糖類、カンテン、ステアリルアルコール、ゼラチン、トラガント、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0038】
また、前記安定化剤としては、例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩類、エデト酸ナトリウム及びエデト酸四ナトリウム等のエデト酸塩類、硬化油、ゴマ油、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、アジピン酸、アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、アセチルトリプトファンナトリウム、アセトアニリド、アプロチニン液、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、DL−アラニン、L−アラニン、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸等が挙げられる。
【0039】
また、前記滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸類、サラシミツロウ及びカルナウバロウ等のワックス類、硫酸ナトリウム等の硫酸塩、ケイ酸マグネシウム及び軽質無水ケイ酸等のケイ酸類、ラウリル硫酸ナトリウム等のラウリル硫酸塩、アラビアゴム末、カカオ脂、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カロペプタイド、含水二酸化ケイ素、含水無晶形酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、グリセリン、軽質流動パラフィン、結晶セルロース、硬化油、合成ケイ酸アルミニウム、ゴマ油、コムギデンプン、タルク、マクロゴール類、リン酸等が挙げられる。
【0040】
また、前記矯味剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖及びD−マンニトール等の糖類、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アスパルテーム、アマチャ、アマチャエキス、アマチャ末、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、DL−アラニン、サッカリンナトリウム、dl−メントール、l−メントール類等が挙げられる。
【0041】
また、前記崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース並びにその誘導体、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン、デキストリン、β−シクロデキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム及びヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン並びにその誘導体カンテン、ゼラチン、トラガント、アジピン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
また、前記コーティング剤としては、例えば、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース類等のセルロース誘導体、セラック、ポリビニルピロリドン類、ポリエチレングリコール、マクロゴール類、メタアクリル酸コポリマー類、流動パラフィン、オイドラギット等が挙げられる。
【0043】
また、前記着色剤としては、例えば、インジコカルミン、カラメル、リボフラビン等が挙げられる。
【0044】
また、前記緩衝剤としては、例えば、アミノ酢酸、L−アルギニン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、希塩酸、クエン酸、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グルコン酸カルシウム、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、クレアチニン、クロロブタノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、乳酸、乳酸ナトリウム液、氷酢酸、ホウ酸、マレイン酸、無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウム、無水酢酸ナトリウム、無水炭酸ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸三ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、dl−リンゴ酸、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物等が挙げられる。
【0045】
また、前記水性溶剤としては、例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液等が挙げられる。
【0046】
また、前記油性溶剤としては、例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油及びコーン油等の植物油、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0047】
また、前記等張化剤としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、グリセリン、臭化ナトリウム、D−ソルビトール、ニコチン酸アミド、ブドウ糖、ホウ酸等が挙げられる。
【0048】
また、前記分散剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸並びにその塩類、アラビアゴム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セスキオレイン酸ソルビタン、D−ソルビトール、トラガント、メチルセルロース、モノステアリン酸アルミニウム、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、乳糖、濃グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール類、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
また、前記保存剤としては、例えば、クロロブタノール、フェネチルアルコール、プロピレングリコール及びベンジルアルコール等のアルコール類、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸エチル及びパラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥硫酸ナトリウム、クレゾール、クロロクレゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノール、ホルマリン、リン酸、アンソッコウ、チメロサール、チモール、デヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
また、前記溶解補助剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、酢酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、セスキオレイン酸ソルビタン、ニコチン酸アミド、ブドウ糖、ベンジルアルコール、ポリビニルピロリドン類、アセトン、エタノール、イソプロパノール、D−ソルビトール、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳糖、尿素、白糖等が挙げられる。
【0051】
また、前記流動化剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸並びにその塩類、含水二酸化ケイ素、タルク、無水エタノール、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。
【0052】
また、前記無痛化剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン、塩酸メプリルカイン、塩酸リドカイン、リドカイン等が挙げられる。
【0053】
また、前記pH調整剤としては、例えば、塩酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、ホウ酸、マレイン酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0054】
また、前記防腐剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、チモール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。
【0055】
また、前記基剤としては、例えば、オリーブ油、ゴマ油及び小麦胚芽油等の植物油、グリセリン、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、セタノール、豚脂、白色ワセリン、パラフィン、ベントナイト、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ワセリン、ポリソルベート類、マクロゴール類、ラウリルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、リノール酸エチル、リン酸水素ナトリウム、ロジン等が挙げられる。
【0056】
本発明の2型糖尿病治療剤中に含まれる前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩の量は、その剤型によっても異なるが、2型糖尿病治療剤(医薬組成物)全量に対して0.00001〜100重量%であることが好ましい。
【0057】
また、本発明の2型糖尿病治療剤の剤形についても特に制限されないが、経口剤としては、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤及び懸濁剤等が挙げられ、非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤及び腹腔内注射剤等の注射剤、軟膏剤、クリーム剤及びローション剤等の経皮投与剤、直腸座剤及び膣座剤等の座剤、経鼻投与製剤等が挙げられる。
【0058】
更に、本発明の2型糖尿病治療剤の製造方法は、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩を使用するものであればよく、それによって2型糖尿病治療剤(好ましくはインスリン感受性を増強することによる血糖値上昇抑制治療のためのもの、より好ましくは血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させる作用を有するもの)を製造することができる。その具体的な方法は特に制限されず、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩を含有する前記の各種製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。すなわち、得ようとする2型糖尿病治療剤の剤形に応じて、所定量の前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩と前記添加成分とを適宜混合等することにより各種製剤を得ることが可能である。
【0059】
次に、本発明の2型糖尿病治療剤が有する作用である「インスリン感受性増強作用」について説明する。
【0060】
すなわち、インスリン感受性増強作用の強さは、KKAyマウスに薬物を投与した時の血糖降下率により評価することができる。KKAyマウスはインスリン抵抗性を示す糖尿病モデル動物であり(日本臨床 60巻、増刊号8、38-44、(2002))、インスリン分泌促進作用に基づく2型糖尿病治療剤であるスルホニル尿素系血糖降下剤は有効ではないことが知られている(Medical Pharmacy, Vol.24, No.3, 131-136、(1990))。KKAyマウスを用いた経口投与の血糖降下試験においては、KKAyマウスの血糖値を約45%抑制すると正常マウスの血糖値とほぼ同じになることから、血糖降下率が40〜50%であることが好ましい。
【0061】
KKAyマウスを用いた経口投与の血糖降下試験による血糖降下率の測定は公知の方法により行うことができるが、好ましい方法を以下に示す。
【0062】
すなわち、先ず、11週齢の雄性マウス(KKAy/Ta)の6匹を1群として試験に用いる。そして、コントロールとして処置前の血糖値を測定するため、尾部から採血しておく。採血後に、ビグアナイド誘導体を適切な濃度で0.5% CMC-Na(Sodium Carboxymethyl Cellulose)液に溶解し、10mL/kgの用量で経口投与する。また、対照として溶媒のみを投与したマウスを準備する。薬物投与の1時間、2時間、4時間、6時間後に、血糖値を測定するため尾部から採血する。血糖値はグルコースCII−テストワコー(和光純薬株式会社製)を用いて測定する。
【0063】
また、血糖降下率は次式により求める。
血糖降下率(%)=[(対照群の血糖値のAUC−化合物投与群の血糖値のAUC)/対照群の血糖値のAUC]×100
【0064】
ここで、血糖値のAUCとは、薬物投与後の血糖値変化を時間に対してプロットしたグラフにおいて、グルコース値0をベースラインとして薬物投与6時間後までの面積を表す。具体的には、A=薬物投与前の血糖値、B=薬物投与1時間後の血糖値、C=薬物投与2時間後の血糖値、D=薬物投与4時間後の血糖値、E=薬物投与6時間後の血糖値としたとき、血糖値のAUCは以下の式:
血糖値のAUC=1×((A+B)/2)+1×((B+C)/2)+2×((C+D)/2)+2×((D+E)/2)
から求めることができる。
【0065】
この血糖降下率が約45%である場合、正常マウスの血糖値とほぼ同じレベルに血糖値が低下する。
【0066】
また、インスリン感受性増強作用の強さは、インスリン抵抗性を示す糖尿病モデル動物であるdb/dbマウス(日本臨床 60巻、増刊号8、38-44、(2002))に薬物を投与した時の血糖降下率によって評価することもできる。db/dbマウスを用いた経口投与の糖負荷試験においては、db/dbマウスの血糖値を約50%抑制すると正常マウスの血糖上昇とほぼ同じになることから、血糖降下率が40%以上であることが好ましく、さらに50%以上であることがより好ましい。
【0067】
db/dbマウスを用いた経口投与の糖負荷試験による血糖降下率の測定は公知の方法により行うことができるが、好ましい方法を以下に示す。すなわち、先ず、11〜17週齢の雌性マウス(C57BLKS/J−m +/+ Lepr<db>(db/db))を18〜24時間絶食させる。このとき、5〜6匹を1群として試験に用いる。コントロールとして処置前の血糖値を測定するため、尾部から採血しておく。採血後に、ビグアニド誘導体を適切な濃度でリン酸バッファー生理食塩液に溶解し、5ml/kgの用量で皮下投与する。また、対照として溶媒のみを投与したマウスを準備する。更に、化合物あるいは溶媒投与の30分後に、グルコースを3g/6ml/kgの用量で経口投与し、経口糖負荷試験を実施する。グルコース投与の30分、1時間、2時間後に、血糖値を測定するため、尾部より採血する。血糖値は新ブラッド・シュガーテスト(ロシュ・ダイアグノスティクス株式会社製)、又はグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて測定する。
【0068】
そして、血糖降下率は以下の式より求める。
血糖降下率(%)=[(溶媒投与群の血糖上昇値のAUC−化合物投与群の血糖上昇値のAUC)/溶媒投与群の血糖上昇値のAUC]×100
【0069】
ここで、血糖上昇値のAUCとは、グルコース投与後の血糖値変化を時間に対してプロットしたグラフにおいて、グルコース投与前の血糖値をベースラインとしてグルコース投与2時間後までの増加部分の面積を表す。具体的には、A=グルコース投与前の血糖値、B=グルコース投与30分後の血糖値、C=グルコース投与1時間後の血糖値、D=グルコース投与2時間後の血糖値としたとき、血糖上昇値のAUCは、以下の式:
血糖上昇値のAUC=0.5×((A+B)/2−A)+0.5×((B+C)/2−A)+1×((C+D)/2−A)
から求めることができる。
【0070】
次に、本発明の2型糖尿病治療剤の好適な作用である「血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させる」という作用について、説明する。
【0071】
本発明において、血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させるとは、経口糖負荷試験による血糖降下率及び血中乳酸値の測定を行った場合に、上記糖尿病治療剤を投与した際に血糖降下率が40〜60%を示す投与量において、血中乳酸値上昇率が好ましくは15%以下であることを意味する。すなわち、例えば、上記経口糖負荷試験による血糖降下率及び血中乳酸値の測定を行った場合に、投与前の血中乳酸値が4〜33mg/dLを示している一般的な糖尿病患者に血糖降下率が40〜60%を示すような用量で前記糖尿病治療剤を投与した場合であっても、血中乳酸値が38mg/dL以下に抑えられる場合が挙げられる。また、上記2型糖尿病治療剤を投与した際に血糖降下率が60〜80%を示す投与量においては、血中乳酸値上昇率がより好ましくは35%以下、更により好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。すなわち、例えば、上記経口糖負荷試験による血糖降下率及び血中乳酸値の測定を行った場合に、投与前の血中乳酸値が4〜33mg/dLを示している一般的な糖尿病患者に血糖降下率が60〜80%を示すような用量で前記2型糖尿病治療剤を投与した場合であっても、血中乳酸値が45mg/dL以下に抑えられることがより好ましい。
【0072】
なお、上記の経口糖負荷試験による血糖降下率及び血中乳酸値の測定は公知の方法により行うことができ、前者の測定は前述の方法により行うことができる。また、後者の測定は以下の方法により好適に行うことができる。すなわち、まず、11〜17週齢の雌性マウス(C57BLKS/J−m +/+ Lepr<db>(db/db))を18〜24時間絶食させる。このとき、5〜6匹を1群として試験に用いる。コントロールとして処置前の血中乳酸値を測定するため、尾部から採血しておく。採血後に、ビグアニド誘導体を適切な濃度でリン酸バッファー生理食塩液に溶解し、5ml/kgの用量で皮下投与する。また、対照として溶媒のみを投与したマウスを準備する。更に、化合物あるいは溶媒投与の30分後に、グルコースを3g/6ml/kgの用量で経口投与し、経口糖負荷試験を実施する。グルコース投与の30分、1時間、2時間後に、血中乳酸値を測定するため、尾部より採血する。血中乳酸値は、「アスカ・シグマ」(シグマ・ダイアグノスティクス株式会社製)を用いて測定する。
【0073】
そして、血中乳酸値上昇率は、以下の式:
血中乳酸値上昇率(%)=[(化合物投与群の血中乳酸値のAUC−溶媒投与群の血中乳酸値のAUC)/溶媒投与群の血中乳酸値のAUC]×100
から求められる。
【0074】
ここで、血中乳酸値のAUCとは、グルコース投与後の血中乳酸値変化を時間に対してプロットしたグラフにおいて、グルコース投与2時間後までの面積を表す。具体的には、E=グルコース投与前の血中乳酸値、F=グルコース投与30分後の血中乳酸値、G=グルコース投与1時間後の血中乳酸値、H=グルコース投与2時間後の血中乳酸値としたとき、血中乳酸値のAUCは、以下の式:
血中乳酸値のAUC=0.5×(E+F)/2+0.5×(F+G)/2+1×(G+H)/2
から求めることができる。
【0075】
次に、本発明の2型糖尿病治療剤の好適な投与対象について説明する。本発明の2型糖尿病治療剤は上述のように優れたインスリン感受性増強作用を有し、好ましくは血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させるものであるため、乳酸アシドーシスを誘発しない血糖値上昇抑制治療のために有用であり、糖尿病患者の中でも特に乳酸アシドーシスを起こしやすい傾向にある糖尿病患者に対して投与するのに有効である。このような乳酸アシドーシスを起こしやすい糖尿病患者とは、例えば、乳酸アシドーシスの既往を伴う糖尿病患者、腎機能障害を伴う糖尿病患者、肝機能障害を伴う糖尿病患者、心血管系の障害を伴う糖尿病患者、肺機能に障害を伴う糖尿病患者、低酸素血症を伴いやすい糖尿病患者、過度のアルコール摂取者における糖尿病患者、胃腸障害を伴う糖尿病患者及び高齢者である糖尿病患者等を意味する。
【0076】
本発明の2型糖尿病治療剤は、上述のように特に乳酸アシドーシスを起こしやすい傾向にある糖尿病患者に対して有効であり、中でも腎機能障害を伴う糖尿病患者に対して投与するのに適している。ここで、腎機能障害とは、具体的には、例えば、慢性腎不全、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、免疫複合体腎炎、急性腎不全、間質性腎炎、腎硬化症、腎梗塞、尿細管機能異常、薬物による腎障害、農薬による腎障害、尿毒症が挙げられる。
【0077】
なお、本発明の2型糖尿病治療剤の投与方法は特に制限されないが、例えば、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその薬理上許容される塩と前述の添加成分を用いて医薬組成物(製剤)とし、経口的又は非経口的に投与することができる。
【0078】
また、本発明の2型糖尿病治療剤の投与量は、投与対象(人をはじめとする温血動物等)の種類、症状の軽重、年齢、投与方法、医師の診断結果等に応じて適宜決定することができるが、例えば経口投与の場合には、成人に対して一般式(1)で表されるビグアニド誘導体の投与量が一日あたり0.1〜2000mg/kgであることが好ましく、非経口投与の場合には、一日あたり0.1〜1000mg/kgであることが好ましい。なお、上記の投与量は投与対象の単位重量(体重1kg)あたりの値である。また、本発明においては、症状の軽重、医師の判断等に応じて、上記投与量を1〜7日間のうちに1回にまとめて投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。
【0079】
このようにして有効量の前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩を投与することにより、前述の通り、優れたインスリン感受性増強作用により血糖値の上昇が十分に抑制され、更には血糖値が十分に低減され、しかも好適にはその際における血中乳酸値の上昇が十分に抑制される。
【0080】
また、前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩は前述の通り優れたインスリン感受性増強作用を有することから、インスリン抵抗性の改善による糖尿病の発症予防に有効な2型糖尿病予防剤の有効成分として有用である。更に、インスリン抵抗性の亢進は心筋梗塞、脳卒中などの大血管障害に大きく関わっていることから、インスリン感受性増強作用を有する前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体又はその塩は大血管障害予防剤の有効成分としても有用である。
【0081】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
合成例1(フルフリルビグアニドの合成)
フルフリルアミン(5.0g)のジクロロメタン溶液(50ml)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(11.2ml)を加え、室温にて30分攪拌した。次に、この溶液にシアノグアニジン(4.33g)を加え終夜攪拌した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=10:100)に付し、油状の目的物(5.85g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :4.33(2H,s),6.32(1H,d,J=2.97Hz),6.40(1H,s),6.85(6H,m),7.59(1H,s)
Fab−MS: 182(M+H+)
HPLC RT:6.5分
【0083】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0084】
【化11】
【0085】
なお、前記アミン処理シリカゲルクロマトグラフィーは、富士シリシア化学株式会社製シリカゲルChromatorex NH DM1020(粒径100mm)を用いた。また、HPLC装置は日立製作所L−6200、HPLC用カラムは野村化学Develosil ODS HG−5 4.6x150mmを使用し、HPLCによる保持時間(RT:min.)の測定は以下の方法によって行った。すなわち、移動相として10%メタノール・0.1M酢酸アンモニウム水溶液を用い、流速:1ml/min.、検知:240nmの条件で行った。
【0086】
合成例2(1―(5−メチルフルフリル)ビグアニドの合成)
5−メチルフルフリルアミン(3.0g)の1,2−ジクロロエタン溶液(19ml)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(5.37ml)を加え、室温にて1時間攪拌した。次に、この溶液にシアノグアニジン(2.27g)を加えて室温にて終夜攪拌した後、1.5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却した後、アミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=10:100)に付し、白色粉末の目的物(4.50g)を得た。得られた白色粉末物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :2.24(3H,s),4.25(2H,s),6.00(1H,s),6.18(1H,m),6.40−8.40(6H,m)
Fab−MS: 196(M+H+)
HPLC RT:21.7分
【0087】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0088】
【化12】
【0089】
なお、前記アミン処理シリカゲルクロマトグラフィーは、富士シリシア化学株式会社製シリカゲルChromatorex NH DM1020(粒径100mm)を用いた。また、HPLC装置は日立製作所L−6200、HPLC用カラムは野村化学Develosil ODS HG−5 4.6x150mmを使用し、HPLCによる保持時間(RT:min.)の測定は以下の方法によって行った。すなわち、移動相として10%メタノール・0.1M酢酸アンモニウム水溶液を用い、流速:1ml/min.、検知:240nmの条件で行った。更に、Fab−MSはVG analytical社製の70−SEQを用いて測定した。
【0090】
合成例3(1−[(5−エチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
(5−エチルフラン−2−イル)メチルアミン(5.61g)の1,2−ジクロロエタン溶液(32mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(9.72mL)を加え、室温にて30分攪拌した後、シアノグアニジン(3.77g)を加え室温にて終夜攪拌した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、溶媒を減圧留去し、油状の目的物(1.48g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :1.16(3H,t,J=7.42Hz),2.58(2H,q,J=7.42Hz),4.26(2H,s),6.00(1H,brs),6.19(1H,d,J=2.47Hz),6.54−8.29(6H,m)
MS(ESI+):210[M+1]+
HPLC RT:11.7分(移動相:メタノール30%)
【0091】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0092】
【化13】
【0093】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィーの諸条件は合成例2と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。更に、LCMSはThermo Finigan社製のLCQを用いイオン化法(ESI+)で測定した。
【0094】
合成例4(1−[(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) (5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチルアルコール(18.3g)のTHF溶液(240mL)にトリフェニルホスフィン(31.2g)とフタルイミド(17.5g)を加え、氷冷下ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD、18.7mL)を滴下し、2時間攪拌した。反応液を減圧下溶媒を除去し、ジエチルエーテルを加え析出した不溶物を濾別した。濾液を減圧下溶媒を除去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)に付し、溶媒を減圧留去し、粉末状の目的物、N−[(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチル]フタルイミド(15.6g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :1.22(9H,s),4.81(2H,s),5.85(1H,d,J=3.13Hz),6.19(1H,d,J=3.13Hz),7.67−7.87(4H,m)
【0095】
2) 1)で得られたN−[(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチル]フタルイミド(15.6g)のメタノール−ジクロロメタン混合液(1:2、105mL)にメチルアミンの40%メタノール溶液(70mL)を加え、室温下終夜攪拌した。反応液を減圧留去し、得られた残渣にジエチルエーテルを加え析出した不溶物を濾別し、濾液を減圧留去し、油状の目的物、(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチルアミン(7.91g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :1.27(9H,s),3.77(2H,s),5.85(1H,d,J=2.96Hz),5.98(1H,d,J=2.96Hz)
【0096】
3) 2)で得られた(5−tert−ブチルフラン−2−イル)メチルアミン(3.50g)の1,2−ジクロロエタン溶液(16mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(4.54mL)を加え、室温にて30分攪拌した後、シアノグアニジン(1.92g)を加え1時間加熱還流下した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、白色粉末の目的物(1.23g)を得た。得られた白色粉末の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :1.23(9H,s),4.27(2H,s),5.97(1H,d,J=2.96Hz),6.16(1H,d,J=2.96Hz),6.70−8.30(6H,m)
MS(ESI+):238[M+1]+
HPLC RT:7.6分(移動相:メタノール50%)
【0097】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0098】
【化14】
【0099】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例3と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0100】
合成例5(1−[(4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) (4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチルアルコール(16.9g)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(260mL)にアジ化ナトリウム(11.3g)およびトリフェニルホスフィン(45.6g)を加え、氷冷下四臭化炭素(57.7g)を加え室温にて1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、および飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)に付し、油状の目的物、2−アジドメチル−4,5−ジメチルフラン(11.5g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :1.92(3H,s),2.20(3H,s),4.19(2H,s),6.11(1H,s)
【0101】
2) 1)で得られた2−アジドメチル−4,5−ジメチルフラン(5.01g)のジエチルエーテル溶液(66mL)に氷冷下水素化リチウムアルミニウム(1.26g)を少しずつ加え、30分間攪拌した。反応液を氷水にあけ、得られた懸濁液をセライト濾過した。濾液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチルアミン(2.66g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :1.90(3H,s),2.18(3H,s),3.71(2H,s),5.89(1H,s)
【0102】
3) (4,5−ジメチルフラン−2−イル)メチルアミン(2.66g)の1,2−ジクロロエタン溶液(22mL)に、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(4.61mL)を加え、室温にて45分攪拌した後、シアノグアニジン(1.79g)を加え室温にて終夜攪拌した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、油状の目的物(3.00g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :1.87(3H、s),2.15(3H、s),4.20(2H,s),6.08(1H,s),6.50−8.30(6H,m)
MS(ESI+):210[M+1]+
HPLC RT:8.9分(移動相:メタノール30%)
【0103】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0104】
【化15】
【0105】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例2と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0106】
合成例6(1−[(4−メチルチオフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) 2−ジエトキシメチル−4−メチルチオフラン(10.23g)のジエチルエーテル−メタノール混合液(5:1、120mL)に2規定塩酸(20mL)を加え、室温下1時間攪拌した。反応液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水、および蒸留水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧留去し、油状の粗目的物、4−メチルチオフルフラールを得た。ここで得られた4−メチルチオフルフラールのメタノール溶液(70mL)に氷冷下水素化ホウ素ナトリウム(1.26g)を少しずつ加え、30分間攪拌した。反応液を減圧留去し、得られた残渣に蒸留水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)に付し、油状の目的物、(4−メチルチオフラン−2−イル)メタノール(4.40g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.35(3H、s),4.58(2H,d,J=6.10Hz),6.33(1H,s),7.32(1H,s)
【0107】
2) 1)で得られた(4−メチルチオフラン−2−イル)メタノール(4.40g)のDMF溶液(60mL)にアジ化ナトリウム(2.98g)およびトリフェニルホスフィン(12.0g)を加え、氷冷下四臭化炭素(15.2g)を加え室温にて1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)に付し、油状の目的物、2−アジドメチル−4−メチルチオフラン(3.51g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.36(3H、s),4.26(2H,s),6.37(1H,s),7.34(1H,s)
【0108】
3) 2)で得られた2−アジドメチル−4−メチルチオフラン(1.52g)のジエチルエーテル溶液(18mL)に氷冷下水素化リチウムアルミニウム(0.34g)を少しずつ加え、1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、得られた懸濁液をセライト濾過した。濾液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を2規定塩酸で抽出し、抽出液を2規定水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(4−メチルチオフラン−2−イル)メチルアミン(0.96g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.34(3H、s),3.79(2H,s),6.18(1H,s),7.26(1H,s)
【0109】
4) (4−メチルチオフラン−2−イル)メチルアミン(1.60g)の1,2−ジクロロエタン溶液(8mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(2.22mL)を加え、室温にて1時間攪拌した後、シアノグアニジン(940mg)を加え2時間加熱還流した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、油状の目的物(1.10g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :2.33(3H,s),4.28(2H,s),6.39(1H,s),6.40−8.31(6H,m),7.56(1H,s)
MS(ESI+):228[M+1]+
HPLC RT:4.8分(移動相:メタノール50%)
【0110】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0111】
【化16】
【0112】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例3と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0113】
合成例7(1−[(5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) (5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メタノール(12.89g)のDMF溶液(240mL)にアジ化ナトリウム(7.94g)およびトリフェニルホスフィン(32.0g)を加え、氷冷下四臭化炭素(40.5g)を加え室温にて1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した不溶物を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)に付し、油状の目的物、2−アジドメチル−5−メチルチオメチルフラン(6.01g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.10(3H,s),3.67(2H,s),4.27(2H,s),6.16(1H,d,J=3.13Hz),6.28(1H,d,J=2.97Hz)
【0114】
3) 2)で得られた2−アジドメチル−5−メチルチオメチルフラン(6.01g)のジエチルエーテル溶液(65mL)に氷冷下水素化リチウムアルミニウム(1.24g)を少しずつ加え、1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、得られた懸濁液をセライト濾過した。濾液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を2規定塩酸で抽出し、抽出液を2規定水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチルアミン(3.24g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.09(3H,s),3.66(2H,s),3.80(2H,s),6.05(1H,d,J=3.13Hz),6.09(1H,d,J=2.97Hz)
【0115】
4) (5−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチルアミン(3.24g)の1,2−ジクロロエタン溶液(23mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(4.50mL)を加え、室温にて30分攪拌した後、シアノグアニジン(1.90g)を加え2時間加熱還流した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、油状の目的物(3.80g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :2.03(3H,s),3.69(2H,s),4.29(2H,s),6.20(1H,d,J=2.80Hz),6.23(1H,d,J=2.80Hz),6.40−8.30(6H,m)
MS(ESI+):242[M+1]+
HPLC RT:8.0分(移動相:メタノール30%)
【0116】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0117】
【化17】
【0118】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例3と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0119】
合成例8(1−[(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチル]ビグアニドの合成)
1) 3−メチルチオメチルフラン(8.07g)のDMF溶液(80mL)に氷冷下、DMF(6.8mL)およびオキシ塩化リン(8.2mL)より調整したVilsmeier試薬を滴下し、室温で1時間45分攪拌した後、45度の油浴にて1時間15分攪拌した。反応液を室温に冷却した後、反応液を2規定水酸化ナトリウム水溶液にあけ、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、3−メチルチオメチルフルフラールを得た。ここで得られた3−メチルチオメチルフルフラールのメタノール溶液(120mL)に氷冷下水素化ホウ素ナトリウム(2.38g)を少しずつ加え、1時間攪拌した。反応液を減圧留去し、得られた残渣に蒸留水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メタノール(6.40g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.05(3H,s),3.56(2H,s),4.61(2H,d,J=5.93Hz),6.37(1H,d,J=1.32Hz),7.33(1H,d,J=1.48Hz)
【0120】
2) 1)で得られた(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メタノール(9.00g)のDMF溶液(150mL)にアジ化ナトリウム(5.55g)およびトリフェニルホスフィン(22.4g)を加え、氷冷下四臭化炭素(28.3g)を加え室温にて1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した不溶物を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)に付し、油状の目的物、2−アジドメチル−3−メチルチオメチルフラン(9.03g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.04(3H,s),3.52(2H,s),4.32(2H,s),6.41(1H,d,J=1.65Hz),7.38(1H,d,J=1.82Hz)
【0121】
3) 2)で得られた2−アジドメチル−3−メチルチオメチルフラン(10.5g)のジエチルエーテル溶液(290mL)に氷冷下水素化リチウムアルミニウム(2.20g)を少しずつ加え、1時間攪拌した。反応液を氷水にあけ、得られた懸濁液をセライト濾過した。濾液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を2規定塩酸で抽出し、抽出液を2規定水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、油状の目的物、(3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチルアミン(2.20g)を得た。得られた物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3) d :2.03(3H,s),3.51(2H,s),3.79(2H,s),6.33(1H,d,J=1.49Hz),7.29(1H,d,J=1.65Hz)
【0122】
4) (3−メチルチオメチルフラン−2−イル)メチルアミン(2.20g)の1,2−ジクロロエタン溶液(10mL)にトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(2.78mL)を加え、室温にて40分攪拌した後、シアノグアニジン(1.18g)を加え1時間加熱還流した。反応液をアミン処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=10:100)に付し、油状の目的物(1.62g)を得た。得られた油状物質の構造解析の結果を以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6) d :1.97(3H,s),3.56(2H,s),4.32(2H,s),6.41(1H,d,J=1.65Hz),7.56(1H,d,J=1.83Hz),6.40−8.30(6H,m)
MS(ESI+):242[M+1]+
HPLC RT:5.7分(移動相:メタノール30%)
【0123】
また、得られた化合物の構造式を以下に示す。
【0124】
【化18】
【0125】
なお、アミン処理シリカゲルクロマトグラフィー及びLCMSの諸条件は合成例3と同様であり、また、HPLCの諸条件は移動相中のメタノール濃度を上記の通りとした以外は合成例2と同様である。
【0126】
実施例1〜5及び比較例1〜5(KKAyマウスを用いた経口投与の血糖降下試験)
11週齢の雄性マウス(KKAy/Ta)の6匹を1群として試験に用いた。コントロールとして処置前の血糖値を測定するため、尾部から採血した。採血後に、フルフリルビグアニドを適切な濃度で0.5% CMC-Na(Sodium Carboxymethyl Cellulose)液に溶解し、その投与量が表1に示す量となるように、10mL/kgの用量で経口投与した(実施例1〜5)。また、比較のため、表1に示す投与量のメトホルミンを同様にマウスに経口投与した(比較例1〜5)。更に、対照として、上記溶媒のみを同様にマウスに経口投与した。そして、薬物投与の1時間、2時間、4時間、6時間後に、血糖値を測定するため尾部から採血し、血糖降下率を前述の式により求めた。なお、血糖値はグルコースCII−テストワコー(和光純薬株式会社製)を用いて測定した。得られた試験結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例6〜13及び比較例6〜27(経口糖負荷試験)
11〜17週齢の雌性(C57BLKS/J−m +/+ Lepr<db>(db/db))マウスを18〜24時間絶食し、6匹を1群として試験に用いた。処置前の血糖値及び血中乳酸値を測定するため、尾部から採血した。採血後に、表2〜表4に示す化合物(実施例6〜13、比較例19〜27)を投与量が表2〜表4に示す量となるようにリン酸バッファー生理食塩液に溶解し、5ml/kgの用量でマウスに皮下投与した。また、比較のため、表2に示す投与量のメトホルミン(比較例6〜18)を同様にマウスに皮下投与した。更に、対照として、上記溶媒のみを同様にマウスに皮下投与した。
【0129】
更に、前記化合物又は溶媒投与の30分後に、グルコースを3g/6ml/kgの用量で経口投与し、経口糖負荷試験を実施した。グルコース投与の30分、1時間、2時間後に、血糖値及び血中乳酸値測定用の血液を尾部より採取し、血糖降下率及び血中乳酸値上昇率を前述の式により求めた。なお、血糖値は新ブラッド・シュガーテスト(ロシュ・ダイアグノスティクス株式会社製)、又はグルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて測定した。また、血中乳酸値は、「アスカ・シグマ」(シグマ・ダイアグノスティクス株式会社製)を用いて測定した。得られた試験結果を表2〜表4に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
表1に示した結果から明らかなように、前記一般式(1)で表される本発明にかかるビグアニド誘導体又はその塩を投与した場合に、顕著なインスリン感受性増強作用により血糖値の上昇が十分に抑制されていることが確認された。また、表2〜表4に示した結果から明らかなように、前記一般式(1)で表される本発明にかかるビグアニド誘導体又はその塩を投与した場合に、顕著な血糖降下率を示しながらも血中乳酸値の上昇率は非常に低く抑えられていることが確認された。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インスリン感受性の増強により血糖値の上昇を十分に抑制し、更には血糖値を十分に降下させ、しかも好適にはその際における血中乳酸値の上昇を十分に抑制する作用を有する2型糖尿病治療剤を提供することが可能となる。従って、本発明によって、十分なインスリン感受性増強作用を有し、かつ、乳酸アシドーシス等の副作用を惹起する可能性が低い2型糖尿病治療剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、フルフリルビグアニド又はメトホルミンの投与による、経口糖負荷試験における血糖降下率と血中乳酸値上昇率との関係を示したグラフである。
Claims (5)
- 前記一般式(1)で表されるビグアニド誘導体がフルフリルビグアニドである、請求項1に記載の2型糖尿病治療剤。
- インスリン感受性を増強することによる血糖値上昇抑制治療のためのものである、請求項1又は2に記載の2型糖尿病治療剤。
- 血中乳酸値を実質的に上昇させずに血糖値を降下させる作用を有するものである、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の2型糖尿病治療剤。
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