JP3734230B2 - Frp製構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、FRP製構造体本体とFRP製補助部材とが一体化したFRP製構造体を製造するのに好適なFRP製構造体の製造方法に関し、例えば、切頭円錐筒状体よりなるFRP製構造体本体の母線方向に溝型形状をなすFRP製補助部材を補強部材として一体で設けたFRP製構造体に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、図3に示すような多段式ロケットの接手部材として使用されるFRP製構造体31は、図4にも示すように、切頭円錐筒状体よりなるFRP製構造体本体32の母線方向に、四箇所のL字型形状部33Lによって溝型形状に形成されたFRP製補助部材33を補強部材として二箇所のL字型形状部33Lの二辺で固着して一体で設けた構造をなしており、その他種々の構造をなすものが多段式ロケットの接手部材として使用されている。
【0003】
このようなFRP製構造体31を製造するに際しては、例えば、図5に示すように、繊維に樹脂(溶剤を用いて液状としたもの)を含浸させたプリプレグを所要の長さに切断し、次いで所要の長さに切断したプリプレグを適宜の層数で積層して切頭円錐筒状体型の形状を有する未硬化の構造体本体を形成すると共に、他方では、繊維に樹脂(溶剤を用いて液状としたもの)を含浸させたプリプレグを所要の長さに切断し、次いで所要の長さに切断したプリプレグを適宜の層数で積層して四箇所のL字型形状部を有する溝型形状をなす未硬化の補助部材を形成する。
【0004】
次いで、図6にも示すように、未硬化の構造体本体32Aと未硬化の補助部材33Aのうち二箇所のL字型形状部33Lの各々外側に向いている辺とを当接させた状態としてこれらを組み合わせ、この際、未硬化の構造体本体32Aと未硬化の補助部材33Aとの間に形成される空間部分にコア部材34を介在させた状態とする。
【0005】
そして、未硬化の構造体本体32Aおよび未硬化の補助部材33Aの外側に、通気性バッギング材(例えば、厚さ15μm程度の穴あきテフロンフィルム)35と、コーティングクロス(例えば、ガラスクロスに離型材をコーティングしたもの)36と、気密性バッギング材(例えば、気密性のナイロンフィルム)37とを被覆した状態とし、気密性バッギング材37の内部を減圧吸引したあと、前記樹脂が硬化する温度でキュア処理を行って、図7に示すように、FRP製構造体本体32とFRP製補助部材33とがFRP製補助部材33のL字型形状部33Lの外向き辺を介して一体化したFRP製構造体31とし、治具等の分解・除去および製品の検査を行って完成品とするようにしていた。
【0006】
しかしながら、このような従来のFRP製構造体の製造方法では、図7およびこの図7のうちL字型形状部を拡大した図8に示すように、FRP製補助部材33のうちFRP製構造体本体32に一体化する側のL字型形状部33LのL字型曲げ部分において窪み33Rが形成されることがあり、このような窪み33Rが形成された場合にはFRP製補助部材33の補強部材としての機能が減殺されてしまい、FRP製構造体本体32の軸方向(母線方向)の補強を十分になすことができなくなることから、このようなFRP製補助部材33のL字型形状部33LにおけるL字曲げ部分での窪み33Rの発生がないようにすることが課題としてあった。
【0007】
したがって、本発明は、FRP製構造体とL字型形状部を有するFRP製補助部材とが前記L字型形状部の辺を介して一体化したFRP製構造体を通気性バッギング材および気密性バッギング材を用いたバッギングならびにキュア処理によって製造する場合に、FRP製補助部材のうちFRP製構造体本体側のL字型形状部のL字型曲げ部分において窪みが形成されないようにし、FRP製補助部材によるFRP製構造体本体に対する補強等の機能をより一層向上させることができるようにすることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わるFRP製構造体の製造方法は、請求項1に記載しているように、繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層して形成した未硬化の構造体本体と、繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層してL字型形状部を含む形状に形成した未硬化の補助部材とを用い、前記未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材のL字型形状部の辺とを当接させた状態にして前記未硬化の補助部材に少なくとも通気性バッギング材および気密性バッギング材によりバッギングし、前記樹脂の硬化温度で加熱するキュア処理を行って、FRP製構造体本体とFRP製補助部材とが一体化したFRP製構造体を製造するに際し、前記通気性バッギング材として、前記補助部材の前記構造体本体側に位置するL字型形状部におけるL字型曲げ部分に対するバッギングを避ける曲げ部分回避部を有するものを用いてバッギングするようにしたことを特徴としている。
【0009】
そして、本発明に係わるFRP製構造体の製造方法の実施態様においては、請求項2に記載しているように、補助部材は、四箇所のL字型形状部を有し且つ構造体本体に当接する二辺が互いに外方向に向く溝型形状をなすものであるようになすことができる。
【0010】
同じく、本発明に係わるFRP製構造体の製造方法の実施態様においては、請求項3に記載しているように、未硬化の構造体本体とL字型形状部を含む形状の未硬化の補助部材とを当接した状態とした際に前記未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材との間で形成される空間部分にコア部材を介在させるようになすことができる。
【0011】
同じく、本発明に係わるFRP製構造体の製造方法の実施態様においては、請求項4に記載しているように、通気性バッギング材と気密性バッギング材との間に、補助部材を被覆する形状にあらかじめ形成された成形バッギング材を介在させるようになすことができる。
【0012】
同じく、本発明に係わるFRP製構造体の製造方法の実施態様においては、請求項5に記載しているように、FRP製構造体は一端側の開口径と他端側の開口径とが適宜に設定された筒状体形状をなすものであり且つ補助部材は前記筒状体の母線方向に延びる補強部材であるようになすことができる。
【0014】
【発明の作用】
本発明に係わるFRP製構造体の製造方法では、請求項1に主として記載しているように、炭素繊維,ガラス繊維,高強度・高弾性樹脂繊維等の繊維にフェノール樹脂,エポキシ樹脂等の樹脂を含浸させたプリプレグを適宜の層数で積層して形成した未硬化の構造体本体と、炭素繊維,ガラス繊維,高強度・高弾性樹脂繊維等の繊維にフェノール樹脂,エポキシ樹脂等の樹脂を含浸させたプリプレグを適宜の層数で積層してL字型形状部を含む形状に形成した未硬化の補助部材とを用い、前記未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材のL字型形状部の例えば自由側の辺とを当接させた状態にして前記未硬化の補助部材および構造体本体の一部ないしは全部に少なくとも通気性バッギング材および気密性バッギング材によりバッギングし、前記樹脂の硬化温度で加熱するキュア処理を行って、FRP製構造体本体とFRP製補助部材とが前記L字型形状部の辺を介して一体化したFRP製構造体を製造するに際し、前記通気性バッギング材として、前記補助部材の前記構造体本体側に位置するL字型形状部におけるL字型曲げ部分に対するバッギングを避ける曲げ部分回避部を有するものを用いてバッギングするようにしたから、通気性バッギング材に曲げ部分回避部があることによって、L字型曲げ部分が強くバッギングされないようになると共に樹脂の流出が防止されるようになって、FRP製補助部材のFRP製構造体本体側のL字型形状部のL字型曲げ部分において窪みが形成されないようになり、FRP製補助部材によるFRP製構造体本体に対する補強等の機能がより一層向上したものとなる。
【0015】
また、請求項2に記載しているように、補助部材は、四箇所のL字型形状部を有し且つ構造体本体に当接する二辺が互いに外方向に向く溝型形状をなすものであるようにすることによって、補助部材は構造体本体の一部と共に閉断面の補強構造を形成することとなって構造体本体の補強機能がより一層十分なものとなる。
【0016】
さらに、請求項3に主として記載しているように、未硬化の構造体本体とL字型形状部を含む形状の未硬化の補助部材とを前記L字型形状部の辺を介して当接した状態とした際に前記未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材との間で形成される空間部分にコア部材を介在させるようになすことによって、未硬化の補助部材の変形防止がより確実になされることとなり、補助部材の形状精度がより一層向上したものとなる。
【0017】
さらにまた、請求項4に主として記載しているように、通気性バッギング材と気密性バッギング材との間に、補助部材を被覆する形状にあらかじめ形成されたゴム等の弾性材料などからなる成形バッギング材を介在させるようになすことによって、補助部材はその肉厚がより一層均一なものとなり、補助部材による補強等の作用が単一の補助部材の間でそしてまた複数の補助部材の間でより一層均質なものとなる。
【0018】
さらにまた、請求項5に記載しているように、FRP製構造体は一端側の開口径と他端側の開口径とが適宜に設定された筒状体形状をなすものであり且つ補助部材は前記筒状体の母線方向に延びる溝型形状をなす補強部材であるものとすることによって、例えば、開口径が異なる切頭円錐筒状体形状をなすものとした場合に、多段式ロケットにおいてより大径の下段ロケットの上端とそれより小径の上段ロケットの下端との継手部材として良好なものとなる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明に係わるFRP製構造体の製造方法の実施例について、図3および図4に示したものと同じ構造を有するFRP製構造体を例にとり、図5に示した製造工程により製造する場合を説明するが、本発明はこのような実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0021】
図3に示した多段式ロケットの継手部材として使用されるFRP製構造体1は、図4にも示したように、切頭円錐筒状体よりなるFRP製構造体本体2の母線方向に、四箇所のL字型形状部3Lによって溝型形状に形成されたFRP製補助部材3を補強部材として一体で設けた構造をなしている。
【0022】
このようなFRP製構造体1を製造するに際しては、例えば、図5に示したように、カーボン繊維にエポキシ樹脂(溶剤を用いて適宜粘度の液状としたもの)を含浸させたプリプレグを所要の長さに切断し、次いで所要の長さに切断したプリプレグを適宜の層数で積層して切頭円錐筒状体型の形状を有する未硬化の構造体本体を形成すると共に、他方では、カーボン繊維にエポキシ樹脂(溶剤を用いて適宜粘度の液状としたもの)を含浸させたプリプレグを所要の長さに切断し、次いで所要の長さに切断したプリプレグを適宜の層数で積層して四箇所のL字型形状部を有する溝型形状をなす未硬化の補助部材を形成する。
【0023】
次いで、図1に示すように、未硬化の構造体本体2Aと未硬化の補助部材3Aのうち二箇所のL字型形状部3Lの各々外側に向いている辺とを当接させた状態としてこれらを組み合わせ、この際、未硬化の構造体本体2Aと未硬化の補助部材3Aとの間に形成される空間部分にコア部材4を介在させた状態とする。
【0024】
そして、未硬化の構造体本体2Aおよび未硬化の補助部材3Aの外側に、通気性バッギング材(例えば、厚さ15μm程度の穴あきテフロン(PTFE)フィルム)5と、未硬化の補助部材3Aのほぼ外形状にあらかじめ成形されたゴムや軟質樹脂等の弾性体材料からなる成形バッギング材(例えば、ゴムを素材としてあらかじめ厚さ2〜5mmの成形体に成形したもの)6と、気密性バッギング材(例えば、気密性のナイロン(PA)フィルム)7とを被覆した状態とし、気密性バッギング材7の内部を減圧吸引したあと、前記樹脂が硬化する温度(例えば、樹脂がエポキシ樹脂である場合に135℃)でキュア処理を行って、図2に示すように、FRP製構造体本体2とFRP製補助部材3とがFRP製補助部材3のL字型形状部3Lの外向き辺を介して一体化したFRP製構造体1とし、治具等の分解および製品の検査を行って完成品とする。
【0025】
さらに、場合によっては、このようにして製造したFRP製構造体1に対して、温度500〜2500℃での炭化処理ないしは黒鉛化処理、そしてこの間における必要なピッチ含浸処理などを行うことによって、C/C製構造体を製造することにより、耐熱性および耐食性にさらに優れた構造体とする。
【0026】
【発明の効果】
本発明に係わるFRP製構造体の製造方法では、請求項1に記載しているように、繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層して形成した未硬化の構造体本体と、繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層してL字型形状部を含む形状に形成した未硬化の補助部材とを用い、前記未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材のL字型形状部の辺とを当接させた状態にして前記未硬化の補助部材に少なくとも通気性バッギング材および気密性バッギング材によりバッギングし、前記樹脂の硬化温度で加熱するキュア処理を行って、FRP製構造体本体とFRP製補助部材とが一体化したFRP製構造体を製造するに際し、前記通気性バッギング材として、前記補助部材の前記構造体本体側に位置するL字型形状部におけるL字型曲げ部分に対するバッギングを避ける曲げ部分回避部を有するものを用いてバッギングするようにしたから、通気性バッギング材に曲げ部分回避部があることによって、FRP製補助部材のFRP製構造体本体側のL字型形状部のL字型曲げ部分において窪みが形成されないようにすることが可能となり、FRP製補助部材によるFRP製構造体本体に対する補強等の機能をより一層向上したものにすることが可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0027】
また、請求項2に記載しているように、補助部材は、四箇所のL字型形状部を有し且つ構造体本体に当接する二辺が互いに外方向に向く溝型形状をなすものとすることによって、補助部材は構造体本体の一部と共に閉断面の補強構造を形成することが可能となり、構造体本体の補強機能をより一層十分なものにすることが可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0028】
さらに、請求項3に記載しているように、未硬化の構造体本体とL字型形状部を含む形状の未硬化の補助部材とを当接した状態とした際に前記未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材との間で形成される空間部分にコア部材を介在させるようになすことによって、補助部材の変形防止をより確実になしうることとなり、補助部材の形状精度をより一層向上したものにすることが可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0029】
さらにまた、請求項4に記載しているように、通気性バッギング材と気密性バッギング材との間に、補助部材を被覆する形状にあらかじめ形成された成形バッギング材を介在させるようになすことによって、補助部材はその肉厚がより一層均一なものにすることが可能となり、補助部材による補強等の作用を一層均質なものにすることが可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0030】
さらにまた、請求項5に記載しているように、FRP製構造体は一端側の開口径と他端側の開口径とが適宜に設定された筒状体形状をなすものであり且つ補助部材は前記筒状体の母線方向に延びる補強部材であるものとすることによって、例えば、開口径が異なる切頭円錐筒状体形状をなすものとした場合に、多段式ロケットにおいてより大径の下段ロケットとそれより小径の上段ロケットの継手部材として好適なものにすることが可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材とを組み合わせて通気性バッギング材,成形バッギング材,気密性バッギング材でバッギングした状態を示す断面説明図である。
【図2】本発明の実施例において製造されたFRP製構造体のうちFRP製補助部材の固定部分を示す断面説明図である。
【図3】多段式ロケットのロケット間に使用される接手部材として使用されるFRP製構造体の斜面説明図である。
【図4】図3のIV−IV線断面説明図である。
【図5】FRP製構造体の製造工程例を示す説明図である。
【図6】従来例において未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材とを組み合わせて通気性バッギング材,コーティングクロス材,気密性バッギング材でバッギングした状態を示す断面説明図である。
【図7】従来例において製造されたFRP製構造体のうちFRP製補助部材の固定部分を示す断面説明図である。
【図8】図7のFRP製補助部材のうちL字型曲げ部分を拡大して示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 FRP製構造体
2 FRP製構造体本体
2A 未硬化の構造体本体
3 FRP製補助部材
3A 未硬化の補助部材
3L 補助部材のL字型形状部
4 コア部材
5 通気性バッギング材
5H 通気性バッギング材の曲げ部分回避部
6 成形バッギング材
7 気密性バッギング材
Claims (5)
- 繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層して形成した未硬化の構造体本体と、繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを積層してL字型形状部を含む形状に形成した未硬化の補助部材とを用い、前記未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材のL字型形状部の辺とを当接させた状態にして前記未硬化の補助部材に少なくとも通気性バッギング材および気密性バッギング材によりバッギングし、前記樹脂の硬化温度で加熱するキュア処理を行って、FRP製構造体本体とFRP製補助部材とが一体化したFRP製構造体を製造するに際し、前記通気性バッギング材として、前記補助部材の前記構造体本体側に位置するL字型形状部におけるL字型曲げ部分に対するバッギングを避ける曲げ部分回避部を有するものを用いてバッギングすることを特徴とするFRP製構造体の製造方法。
- 補助部材は、四箇所のL字型形状部を有し且つ構造体本体に当接する二辺が互いに外方向に向く溝型形状をなすものであることを特徴とする請求項1に記載のFRP製構造体の製造方法。
- 未硬化の構造体本体とL字型形状部を含む形状の未硬化の補助部材とを当接した状態とした際に前記未硬化の構造体本体と未硬化の補助部材との間で形成される空間部分にコア部材を介在させることを特徴とする請求項1または2に記載のFRP製構造体の製造方法。
- 通気性バッギング材と気密性バッギング材との間に、補助部材を被覆する形状にあらかじめ形成された成形バッギング材を介在させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のFRP製構造体の製造方法。
- FRP製構造体は一端側の開口径と他端側の開口径とが適宜に設定された筒状体形状をなすものであり且つ補助部材は前記筒状体の母線方向に延びる補強部材であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のFRP製構造体の製造方法。
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