JP3733994B2 - 密閉型シールド掘進機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、シールド前方に出現した支障物を撤去する装置を装備した密閉型シールド掘進機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人口集中の著しい主要都市部においては、シールド工法により地下空間に構造物を構築する場合、地上および地下構造物の輻輳によって、既設構造物やその基礎がシールド計画線上に出現し、シールド掘進の支障物となる事例が増加している。近年、シールド工事は周辺への影響等を考慮し、密閉型シールド工法が主流となっており、この密閉型シールド掘進機ではその構造上、施工中に切羽前方の状況を直接確認することは不可能である。
【0003】
そこで、密閉型シールド工法で切羽前面に支障物が出現した場合には、従来、薬液注入等により支障物周辺の地盤改良を実施したり、チャンバ内に限定圧気をかける等の切羽安定対策を施した後、作業員が切羽へ出て支障物を撤去する方法が一般的に採用されている。また、工事計画段階から支障物が存在することが明らかな場合には、支障物を撤去し易いように開放型シールドを採用したり、途中の立坑で密閉型シールドから開放型シールドへ改造するといった方法が採用されることもある。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、切羽の安定を薬液注入等の地盤改良や圧気工法等の補助工法に依存せざるを得ず、切羽の安定性に問題がある。また、このような状況下で、作業員が狭い切羽空間に出て作業を行わなければならないことから、安全性や作業性、施工性の点においても改善策が期待されている。
【0005】
シールドトンネルの計画線上に出現する支障物の種類としては、杭および土留めがあり、これらの材質としては、H形鋼、鋼管、鋼矢板等の鋼材やRC、木材等が挙げられる。この中で、木材については、シールドマシンに取り付けられる通常のカッタービットで切削が可能であり、シールド掘進上特に大きな問題とはならない。鋼材やRCについては、単独で出現した場合には特殊な対策を施していない通常のシールドマシンで切削した事例もあるが、このような場合には切削によりカッタービットが損傷し、直後にビット交換を実施する等の対策が必要となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
今後、都市の地下空間は増々輻輳化が予想され、トンネル計画線に支障物が出現する可能性も更に増大するものと考えられる。従って、密閉型シールドで作業員が切羽へ出ることなく支障物をスムーズに撤去することができるシールド掘進機の開発が要請されている。
【0007】
而して、本発明の目的は、シールド前方に出現した支障物を作業員が切羽に出ることなく撤去回収する装置を装備した密閉型シールド掘進機を提供するものであって、特に、シールド掘進機の中心位置付近に出現した支障物に対しても、カッタヘッドの所謂センターカッタ(中央部カッタ)に邪魔されることなく支障物を撤去することのできる密閉型シールド掘進機を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る密閉型シールド掘進機は、中央部カッタと、中心部から外周に至る一半径方向に開口部を有する外周環部カッタとからなるカッタヘッドを前端部に備え、かつ、シールド前方に出現した支障物を該カッタヘッド背面に位置するチャンバの後方へ撤去する装置を、前記開口部を介して切羽側とチャンバ側とに移動自在に備えた密閉型シールド掘進機であって、前記開口部内において、前記中央部カッタを前記撤去装置から離間する方向に移動自在とするとともに、該撤去装置をカッタヘッドの中心部に移動自在とすることにより、前記した課題を解決するものである。
【0009】
【作用】
前記撤去装置は、シールドの半径方向と円周方向の移動動作を組み合わせることにより、シールド断面の殆ど全ての位置に移動させることができる。
【0010】
特に、支障物がシールド掘進機の中心付近前方に出現した場合には、前記撤去装置から離間させるようにして、前記中央部カッタを半径方向外側に移動させた後、該撤去装置をカッタヘッドの中心部に移動させれば、支障物がどのような位置に出現してもこれを撤去することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、泥水式シールド掘進機による好適な実施形態について、図面を参照しながら詳述する。
【0012】
図1は、密閉型シールド掘進機10の要部を縦断して示す側面図であり、図2はその正面図である。
シールド掘進機10は、シールド11の前面に設けられたカッタヘッド12を駆動モータMにより回転させて切羽を掘削し、かつ、隔壁14と切羽の間のチャンバ15を加圧した泥水で満たすことにより、切羽の安定を図るとともに、掘削した土砂を泥水中に取り込み、排泥水として流体輸送を行う、通常の泥水式シールドタイプのものである。なお、図1において、符号16はシールドジャッキであり、符号17はセグメント組立用のエレクタである。
【0013】
図2に示すように、カッタヘッド12は小面積の中央部カッタ12Aと大面積の外周環部カッタ12Bからなっている。本実施形態において、中央部カッタ12Aの正面形状は略円形の中間部を挟んで両端に方形部が連なった形状となっているが、このような形状に限らず、中央部カッタ12Aの前面に複数のカッタービット13、13・・を取着可能な形状であれば、格別の制限はない。
本実施形態では、カッタービット13、13・・は、前記略円形の中間部において十字状に配列され、また、方形部では対向する二辺に配列されている。
【0014】
一方、カッタヘッド12を構成する外周環部カッタ12Bの正面外郭形状は円形であって、カッタヘッド12の中心部から外周に至る一半径方向には一定幅の開口部18が設けられている。そして、この開口部18には前記中央部カッタ12Aが収容され、該中央部カッタ12Aは、外周環部カッタ12Bの裏面に取り付けられた油圧ジャッキ19の自由端に接続されており、この油圧ジャッキ19によって、カッタヘッド12の中心Cから最長L1 の距離を、後述する切断装置20から離間する方向へ移動することができるようになっている。
【0015】
外周環部カッタ12Bのスポーク部12Cには、多数のカッタービット13、13・・が放射状に配列、取着されるとともに、スポーク部12Cの長手方向端縁に沿ってスリット12Dが設けられている。従って、カッタービット13、13・・により掘削された土砂はスリット12Dよりカッタヘッド12の背面部のチャンバ15内に取り込まれる。
【0016】
続いて、本実施形態における支障物の撤去装置について、これを構成する切断装置20と回収装置50とに分けて説明する。
【0017】
図1において、切断装置20はカッタヘッド12の開口部18から切羽前方へ突出した状態であって、カッタヘッド12の中心部と外周部寄りの両方に位置する場合が図示されている。しかしながら、通常掘進時には、切断装置20は90度角度を振って、チャンバ15内に格納され、開口部18は鉄板等(図示せず。)により閉塞されており、磨耗等による損傷から保護される。
【0018】
図3は、支障物切断時における切断装置20の側面図である。切断装置20は、支障物の把持手段22と切断手段30とを備えており、本実施形態では、支障物を挟持可能な一対の鼓型ハンド24、24からなる把持手段22と、この把持手段22の両側、即ち、カッタヘッド12の外周側と内周側に、支障物を高速回転運動により切削する各一対の鼓型カッタ32o、32oおよび32i、32iからなる切断手段30とを備えている。なお、この切断装置20によれば、鼓型ハンド24、24で挟持可能な、直径または横幅が数百mm程度の鋼材またはRCであって、杭や土留め等の長尺形状のものまでが支障物の対象となる。
【0019】
次に、図3と、そのIV−IV線における切断平面図である図4およびV−V線における切断平面図である図5を参照しながら、切断装置20の構成を説明する。
【0020】
鼓型カッタ32o、32iは、図3に示すように鼓型のカッタ本体にチップ33を埋め込んだり、あるいはローラビットのような形状やヤスリ状とし、挟削ジャッキ34を作動させて、一対の鼓型カッタ32o、32oまたは32i、32iで支障物Hを挟み込み、カッタモータ36により駆動されるカッタ32o、32iを高速回転させ、図4に示すように水平揺動運動させながら支障物Hを切断することができるようになっている。
【0021】
鼓型ハンド24は、図5に示すように、把持ジャッキ26を操作して支障物Hを両側から挟み込むことができるようになっている。本実施形態においてカッタ32o、32iおよびハンド24の形状を鼓型としたのは、支障物Hを確実に挟持するためである。
【0022】
上記把持手段22と切断手段30とは、断面コ字形の主フレーム40に取着され、カッタヘッド12の開口部18に沿って設けられたガイド41に案内され、図1に示すように、半径方向移動ジャッキ42の作動によりカッタヘッド12の中心Cから最外周部までの任意の長さL2 だけ、開口部18内を半径方向に移動させることが可能である。
【0023】
また、符号44は、俯仰ジャッキであり、ピン45を中心として切断装置20を90度回転させることができる。符号46は、装置回転モータであり、切断装置20本体を360度回転させることができる。
【0024】
次に、回収装置50は回収手段55とコンベア60とから構成され、両者は隔壁14の後方機内中央に設置された搬出ロック51内に設けられる。搬出ロック51には、チャンバ15と流通可能な切羽側ゲート52と、機内と流通可能な機内側ゲート53が設けられている。回収手段55はテレスコピックアーム56の俯仰動作と前後・上下移動動作を組み合わせることにより、テレスコピックアーム56に連結されたハンド58にて支障物Hの切断片を掴み、コンベア60に受け渡すことができるようになっている。
【0025】
続いて、上記シールド掘進機10による支障物Hの撤去方法を説明する。
【0026】
(1)シールド前方にH形鋼等の支障物Hが出現したら、その位置を前方探査またはボーリング等により把握し、支障物Hの直前位置までシールド掘進機10で前進し、シールド断面内の支障物Hの位置を再確認する。
【0027】
(2)切断装置20を支障物Hの切断位置まで移動する。切断装置20は次の3動作を適宜組み合わせることにより、シールド断面の殆ど全ての位置に移動させることができる。従って、支障物Hがシールド掘進機10の中心位置を除くいずれの位置に出現しても、切断装置20を支障物Hに対向させることができる。
【0028】
▲1▼装置回転モータ46による、切断装置20本体の360度回転動作。
▲2▼ジャッキ42による、切断装置20のシールド半径方向の移動動作。
▲3▼カッタヘッド12の回転による、切断装置20のシールド円周方向の移動動作。
【0029】
(3)図1に示すように、切断装置20をカッタヘッド12の開口部18から切羽前方に突き出した姿勢とする。次いで、鼓型ハンド24、24で支障物Hを把持し、鼓型カッタ32o、32oおよび/または32i、32iで支障物Hを挟み込みながら切断する。
【0030】
(4)鼓型ハンド24、24で支障物Hの切断片を把持した状態で、カッタヘッド12をいずれかの方向に若干回転させ、支障物Hから切断片を完全に切り離す。なお、この支障物Hからの切断片の分離動作は、前記▲1▼切断装置20本体の360度回転動作や、▲2▼切断装置20のシールド半径方向の移動動作と組み合わせてもよい。
【0031】
(5)俯仰ジャッキ44を作動して切断装置20を90度逆回転し、チャンバ15内に引き込める。このようにして、切断片はチャンバ15内に取り込まれる。
【0032】
(6)カッタヘッド12を回転させ(▲3▼動作)、また、切断装置20を半径方向に移動することにより(▲2▼動作)、切断装置20の鼓型カッタ32i、32iを搬出ロック51の切羽側ゲート52と対向する位置に合わせる。
搬出ロック51の切羽側ゲート52を開放した後、切断片を挟持している把持ハンド24、24を若干緩め、かつ、鼓型カッタ32o、32oおよび/または32i、32iを低速で回転させることにより、切断片を搬出ロック51側へ後退させる。
【0033】
(7)後退した切断片を切羽側ゲート52付近で回収手段55のハンド58により掴んだ後、切断片を搬出ロック51内のコンベア60上に載置する。
切羽側ゲート52を閉め、搬出ロック51内の泥水を抜いた後、機内側ゲート53を開けてコンベア60により切断片を機内へ搬出する。
最後に、機内側ゲート53を閉め、搬出ロック51内を泥水で加圧し、ロック内圧を切羽圧と一致させる。以下、上記一連の切断作業を繰り返すことによりシールド断面内の支障物Hを完全に撤去することができる。
【0034】
上記切断作業において、カッタヘッド12の中央部カッタ12Aは、掘進時における定常位置であるカッタヘッド12の中心Cに位置しているが、支障物Hが中心C付近に出現した場合には、この中央部カッタ12Aが切断作業の妨げになる。そこで、図2に示すように、切断装置20から離間させるように中央部カッタ12Aを半径方向外側に距離L1 だけ移動させる。その後、切断装置20をカッタヘッド12の中心Cに移動させれば、支障物Hがどのような位置に出現してもこれを撤去することができる。
【0035】
以上、鼓型のカッタを採用した支障物の切断撤去装置における実施形態を説明したが、本発明は、これ以外にも、鋼管の前端部にダイヤモンドチップを固着してなるコアカッタあるいはウォータージェットを利用したカッタ、その他、あらゆる種類の切断装置に適用することができる。
また、切断片の回収装置50についても、図1で説明した以外の公知の態様を採用することができる。
【0036】
更に、本発明は密閉型のシールド掘進機であればいずれの形式であっても適用可能であり、土圧シールドあるいは泥土圧シールド掘進機のいずれにも適用可能である。
【0037】
【発明の効果】
本発明に係る密閉型シールド掘進機によれば、作業員が切羽へ出ることなく支障物をスムーズに切断、撤去することができ、特に、シールド掘進機の中心位置付近に出現した支障物に対しても、カッタヘッドのセンターカッタ(中央部カッタ)に妨げられることなく支障物を撤去することができるという優れた効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】密閉型シールド掘進機の要部を縦断して示す側面図である。
【図2】図1に示す密閉型シールド掘進機の正面図である。
【図3】支障物切断時における切断装置20の側面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線切断平面図である。
【図5】図3におけるV−V線切断平面図である。
【符号の説明】
10 シールド掘進機
12 カッタヘッド
12A 中央部カッタ
12B 外周環部カッタ
15 チャンバ
18 開口部
19 油圧ジャッキ
20 切断装置
42 移動ジャッキ
50 回収装置
C カッタヘッドの中心
H 支障物
【発明の属する技術分野】
この発明は、シールド前方に出現した支障物を撤去する装置を装備した密閉型シールド掘進機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人口集中の著しい主要都市部においては、シールド工法により地下空間に構造物を構築する場合、地上および地下構造物の輻輳によって、既設構造物やその基礎がシールド計画線上に出現し、シールド掘進の支障物となる事例が増加している。近年、シールド工事は周辺への影響等を考慮し、密閉型シールド工法が主流となっており、この密閉型シールド掘進機ではその構造上、施工中に切羽前方の状況を直接確認することは不可能である。
【0003】
そこで、密閉型シールド工法で切羽前面に支障物が出現した場合には、従来、薬液注入等により支障物周辺の地盤改良を実施したり、チャンバ内に限定圧気をかける等の切羽安定対策を施した後、作業員が切羽へ出て支障物を撤去する方法が一般的に採用されている。また、工事計画段階から支障物が存在することが明らかな場合には、支障物を撤去し易いように開放型シールドを採用したり、途中の立坑で密閉型シールドから開放型シールドへ改造するといった方法が採用されることもある。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、切羽の安定を薬液注入等の地盤改良や圧気工法等の補助工法に依存せざるを得ず、切羽の安定性に問題がある。また、このような状況下で、作業員が狭い切羽空間に出て作業を行わなければならないことから、安全性や作業性、施工性の点においても改善策が期待されている。
【0005】
シールドトンネルの計画線上に出現する支障物の種類としては、杭および土留めがあり、これらの材質としては、H形鋼、鋼管、鋼矢板等の鋼材やRC、木材等が挙げられる。この中で、木材については、シールドマシンに取り付けられる通常のカッタービットで切削が可能であり、シールド掘進上特に大きな問題とはならない。鋼材やRCについては、単独で出現した場合には特殊な対策を施していない通常のシールドマシンで切削した事例もあるが、このような場合には切削によりカッタービットが損傷し、直後にビット交換を実施する等の対策が必要となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
今後、都市の地下空間は増々輻輳化が予想され、トンネル計画線に支障物が出現する可能性も更に増大するものと考えられる。従って、密閉型シールドで作業員が切羽へ出ることなく支障物をスムーズに撤去することができるシールド掘進機の開発が要請されている。
【0007】
而して、本発明の目的は、シールド前方に出現した支障物を作業員が切羽に出ることなく撤去回収する装置を装備した密閉型シールド掘進機を提供するものであって、特に、シールド掘進機の中心位置付近に出現した支障物に対しても、カッタヘッドの所謂センターカッタ(中央部カッタ)に邪魔されることなく支障物を撤去することのできる密閉型シールド掘進機を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る密閉型シールド掘進機は、中央部カッタと、中心部から外周に至る一半径方向に開口部を有する外周環部カッタとからなるカッタヘッドを前端部に備え、かつ、シールド前方に出現した支障物を該カッタヘッド背面に位置するチャンバの後方へ撤去する装置を、前記開口部を介して切羽側とチャンバ側とに移動自在に備えた密閉型シールド掘進機であって、前記開口部内において、前記中央部カッタを前記撤去装置から離間する方向に移動自在とするとともに、該撤去装置をカッタヘッドの中心部に移動自在とすることにより、前記した課題を解決するものである。
【0009】
【作用】
前記撤去装置は、シールドの半径方向と円周方向の移動動作を組み合わせることにより、シールド断面の殆ど全ての位置に移動させることができる。
【0010】
特に、支障物がシールド掘進機の中心付近前方に出現した場合には、前記撤去装置から離間させるようにして、前記中央部カッタを半径方向外側に移動させた後、該撤去装置をカッタヘッドの中心部に移動させれば、支障物がどのような位置に出現してもこれを撤去することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、泥水式シールド掘進機による好適な実施形態について、図面を参照しながら詳述する。
【0012】
図1は、密閉型シールド掘進機10の要部を縦断して示す側面図であり、図2はその正面図である。
シールド掘進機10は、シールド11の前面に設けられたカッタヘッド12を駆動モータMにより回転させて切羽を掘削し、かつ、隔壁14と切羽の間のチャンバ15を加圧した泥水で満たすことにより、切羽の安定を図るとともに、掘削した土砂を泥水中に取り込み、排泥水として流体輸送を行う、通常の泥水式シールドタイプのものである。なお、図1において、符号16はシールドジャッキであり、符号17はセグメント組立用のエレクタである。
【0013】
図2に示すように、カッタヘッド12は小面積の中央部カッタ12Aと大面積の外周環部カッタ12Bからなっている。本実施形態において、中央部カッタ12Aの正面形状は略円形の中間部を挟んで両端に方形部が連なった形状となっているが、このような形状に限らず、中央部カッタ12Aの前面に複数のカッタービット13、13・・を取着可能な形状であれば、格別の制限はない。
本実施形態では、カッタービット13、13・・は、前記略円形の中間部において十字状に配列され、また、方形部では対向する二辺に配列されている。
【0014】
一方、カッタヘッド12を構成する外周環部カッタ12Bの正面外郭形状は円形であって、カッタヘッド12の中心部から外周に至る一半径方向には一定幅の開口部18が設けられている。そして、この開口部18には前記中央部カッタ12Aが収容され、該中央部カッタ12Aは、外周環部カッタ12Bの裏面に取り付けられた油圧ジャッキ19の自由端に接続されており、この油圧ジャッキ19によって、カッタヘッド12の中心Cから最長L1 の距離を、後述する切断装置20から離間する方向へ移動することができるようになっている。
【0015】
外周環部カッタ12Bのスポーク部12Cには、多数のカッタービット13、13・・が放射状に配列、取着されるとともに、スポーク部12Cの長手方向端縁に沿ってスリット12Dが設けられている。従って、カッタービット13、13・・により掘削された土砂はスリット12Dよりカッタヘッド12の背面部のチャンバ15内に取り込まれる。
【0016】
続いて、本実施形態における支障物の撤去装置について、これを構成する切断装置20と回収装置50とに分けて説明する。
【0017】
図1において、切断装置20はカッタヘッド12の開口部18から切羽前方へ突出した状態であって、カッタヘッド12の中心部と外周部寄りの両方に位置する場合が図示されている。しかしながら、通常掘進時には、切断装置20は90度角度を振って、チャンバ15内に格納され、開口部18は鉄板等(図示せず。)により閉塞されており、磨耗等による損傷から保護される。
【0018】
図3は、支障物切断時における切断装置20の側面図である。切断装置20は、支障物の把持手段22と切断手段30とを備えており、本実施形態では、支障物を挟持可能な一対の鼓型ハンド24、24からなる把持手段22と、この把持手段22の両側、即ち、カッタヘッド12の外周側と内周側に、支障物を高速回転運動により切削する各一対の鼓型カッタ32o、32oおよび32i、32iからなる切断手段30とを備えている。なお、この切断装置20によれば、鼓型ハンド24、24で挟持可能な、直径または横幅が数百mm程度の鋼材またはRCであって、杭や土留め等の長尺形状のものまでが支障物の対象となる。
【0019】
次に、図3と、そのIV−IV線における切断平面図である図4およびV−V線における切断平面図である図5を参照しながら、切断装置20の構成を説明する。
【0020】
鼓型カッタ32o、32iは、図3に示すように鼓型のカッタ本体にチップ33を埋め込んだり、あるいはローラビットのような形状やヤスリ状とし、挟削ジャッキ34を作動させて、一対の鼓型カッタ32o、32oまたは32i、32iで支障物Hを挟み込み、カッタモータ36により駆動されるカッタ32o、32iを高速回転させ、図4に示すように水平揺動運動させながら支障物Hを切断することができるようになっている。
【0021】
鼓型ハンド24は、図5に示すように、把持ジャッキ26を操作して支障物Hを両側から挟み込むことができるようになっている。本実施形態においてカッタ32o、32iおよびハンド24の形状を鼓型としたのは、支障物Hを確実に挟持するためである。
【0022】
上記把持手段22と切断手段30とは、断面コ字形の主フレーム40に取着され、カッタヘッド12の開口部18に沿って設けられたガイド41に案内され、図1に示すように、半径方向移動ジャッキ42の作動によりカッタヘッド12の中心Cから最外周部までの任意の長さL2 だけ、開口部18内を半径方向に移動させることが可能である。
【0023】
また、符号44は、俯仰ジャッキであり、ピン45を中心として切断装置20を90度回転させることができる。符号46は、装置回転モータであり、切断装置20本体を360度回転させることができる。
【0024】
次に、回収装置50は回収手段55とコンベア60とから構成され、両者は隔壁14の後方機内中央に設置された搬出ロック51内に設けられる。搬出ロック51には、チャンバ15と流通可能な切羽側ゲート52と、機内と流通可能な機内側ゲート53が設けられている。回収手段55はテレスコピックアーム56の俯仰動作と前後・上下移動動作を組み合わせることにより、テレスコピックアーム56に連結されたハンド58にて支障物Hの切断片を掴み、コンベア60に受け渡すことができるようになっている。
【0025】
続いて、上記シールド掘進機10による支障物Hの撤去方法を説明する。
【0026】
(1)シールド前方にH形鋼等の支障物Hが出現したら、その位置を前方探査またはボーリング等により把握し、支障物Hの直前位置までシールド掘進機10で前進し、シールド断面内の支障物Hの位置を再確認する。
【0027】
(2)切断装置20を支障物Hの切断位置まで移動する。切断装置20は次の3動作を適宜組み合わせることにより、シールド断面の殆ど全ての位置に移動させることができる。従って、支障物Hがシールド掘進機10の中心位置を除くいずれの位置に出現しても、切断装置20を支障物Hに対向させることができる。
【0028】
▲1▼装置回転モータ46による、切断装置20本体の360度回転動作。
▲2▼ジャッキ42による、切断装置20のシールド半径方向の移動動作。
▲3▼カッタヘッド12の回転による、切断装置20のシールド円周方向の移動動作。
【0029】
(3)図1に示すように、切断装置20をカッタヘッド12の開口部18から切羽前方に突き出した姿勢とする。次いで、鼓型ハンド24、24で支障物Hを把持し、鼓型カッタ32o、32oおよび/または32i、32iで支障物Hを挟み込みながら切断する。
【0030】
(4)鼓型ハンド24、24で支障物Hの切断片を把持した状態で、カッタヘッド12をいずれかの方向に若干回転させ、支障物Hから切断片を完全に切り離す。なお、この支障物Hからの切断片の分離動作は、前記▲1▼切断装置20本体の360度回転動作や、▲2▼切断装置20のシールド半径方向の移動動作と組み合わせてもよい。
【0031】
(5)俯仰ジャッキ44を作動して切断装置20を90度逆回転し、チャンバ15内に引き込める。このようにして、切断片はチャンバ15内に取り込まれる。
【0032】
(6)カッタヘッド12を回転させ(▲3▼動作)、また、切断装置20を半径方向に移動することにより(▲2▼動作)、切断装置20の鼓型カッタ32i、32iを搬出ロック51の切羽側ゲート52と対向する位置に合わせる。
搬出ロック51の切羽側ゲート52を開放した後、切断片を挟持している把持ハンド24、24を若干緩め、かつ、鼓型カッタ32o、32oおよび/または32i、32iを低速で回転させることにより、切断片を搬出ロック51側へ後退させる。
【0033】
(7)後退した切断片を切羽側ゲート52付近で回収手段55のハンド58により掴んだ後、切断片を搬出ロック51内のコンベア60上に載置する。
切羽側ゲート52を閉め、搬出ロック51内の泥水を抜いた後、機内側ゲート53を開けてコンベア60により切断片を機内へ搬出する。
最後に、機内側ゲート53を閉め、搬出ロック51内を泥水で加圧し、ロック内圧を切羽圧と一致させる。以下、上記一連の切断作業を繰り返すことによりシールド断面内の支障物Hを完全に撤去することができる。
【0034】
上記切断作業において、カッタヘッド12の中央部カッタ12Aは、掘進時における定常位置であるカッタヘッド12の中心Cに位置しているが、支障物Hが中心C付近に出現した場合には、この中央部カッタ12Aが切断作業の妨げになる。そこで、図2に示すように、切断装置20から離間させるように中央部カッタ12Aを半径方向外側に距離L1 だけ移動させる。その後、切断装置20をカッタヘッド12の中心Cに移動させれば、支障物Hがどのような位置に出現してもこれを撤去することができる。
【0035】
以上、鼓型のカッタを採用した支障物の切断撤去装置における実施形態を説明したが、本発明は、これ以外にも、鋼管の前端部にダイヤモンドチップを固着してなるコアカッタあるいはウォータージェットを利用したカッタ、その他、あらゆる種類の切断装置に適用することができる。
また、切断片の回収装置50についても、図1で説明した以外の公知の態様を採用することができる。
【0036】
更に、本発明は密閉型のシールド掘進機であればいずれの形式であっても適用可能であり、土圧シールドあるいは泥土圧シールド掘進機のいずれにも適用可能である。
【0037】
【発明の効果】
本発明に係る密閉型シールド掘進機によれば、作業員が切羽へ出ることなく支障物をスムーズに切断、撤去することができ、特に、シールド掘進機の中心位置付近に出現した支障物に対しても、カッタヘッドのセンターカッタ(中央部カッタ)に妨げられることなく支障物を撤去することができるという優れた効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】密閉型シールド掘進機の要部を縦断して示す側面図である。
【図2】図1に示す密閉型シールド掘進機の正面図である。
【図3】支障物切断時における切断装置20の側面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線切断平面図である。
【図5】図3におけるV−V線切断平面図である。
【符号の説明】
10 シールド掘進機
12 カッタヘッド
12A 中央部カッタ
12B 外周環部カッタ
15 チャンバ
18 開口部
19 油圧ジャッキ
20 切断装置
42 移動ジャッキ
50 回収装置
C カッタヘッドの中心
H 支障物
Claims (1)
- 中央部カッタと、中心部から外周に至る一半径方向に開口部を有する外周環部カッタとからなるカッタヘッドを前端部に備え、かつ、シールド前方に出現した支障物を該カッタヘッド背面に位置するチャンバの後方へ撤去する装置を、前記開口部を介して切羽側とチャンバ側とに移動自在に備えた密閉型シールド掘進機であって、前記開口部内において、前記中央部カッタを前記撤去装置から離間する方向に移動自在とするとともに、該撤去装置をカッタヘッドの中心部に移動自在としてなる密閉型シールド掘進機。
Priority Applications (1)
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JP36308997A JP3733994B2 (ja) | 1997-12-15 | 1997-12-15 | 密閉型シールド掘進機 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP36308997A JP3733994B2 (ja) | 1997-12-15 | 1997-12-15 | 密閉型シールド掘進機 |
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JPH11173073A JPH11173073A (ja) | 1999-06-29 |
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Family
ID=18478479
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP36308997A Expired - Fee Related JP3733994B2 (ja) | 1997-12-15 | 1997-12-15 | 密閉型シールド掘進機 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3733994B2 (ja) |
-
1997
- 1997-12-15 JP JP36308997A patent/JP3733994B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11173073A (ja) | 1999-06-29 |
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