JP3732531B2 - 液晶デイスプレー用基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、製膜性に優れたポリカーボネート(共)重合体からなる光学用フイルムまたはシートからなる液晶ディスプレー用基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年液晶ディスプレーの進歩が著しい。その中で、STN型液晶ディスプレーの進歩は、特に著しい。このディスプレー素子において画像の視認性を向上させるために液晶層と偏光板との間に位相差フイルムが積層されている。この位相差フイルムは、液晶層を透過した楕円偏光を直線偏光に変換する役割を担っている。そして、その材質は主としてビスフェノール―Aからなるポリカーボネートの一軸延伸フイルムが用いられ、実用化されている。その理由は、(1)透明性が高い、(2)高い屈折率異方性を示す、(3)耐熱性が比較的高いなど位相差板に要求される性質が優れているからである。
【0003】
しかし、ビスフェノール―Aからなるポリカーボネートフイルムにも欠点がある。このフイルムは一般にはビスフェノール―Aからなるポリカーボネートのジクロロメタン溶液からキャストされるが、位相差板用や液晶基板用フイルムは厚膜であるため高濃度ドープからキャストする必要がある。しかしながら、このポリマーのジクロロメタン中での溶解度は高々、20重量%程度であり、溶解度は十分に高いとは言えない。しかも、ドープではポリマーは安定せず、結晶化に伴う白濁化やゲル化が生じる。また、製膜過程でも結晶化(白濁)が生じる場合が多い。
【0004】
一方、ビスフェノール―Aから得られるポリカーボネート以外にも、例えば特開昭56―130703号公報、同63―189804号公報、特開平1―201608号公報、同4―84106号公報、同4―84107号公報などには4,4′―ジオキシジアリールアルカンから得られるポリカーボネートまたは共重合体が提案されている。さらに、特開平2―12205号公報、同2―59702号公報などには4,4′―ジヒドロキシジフェニルアルカンまたはこれらのハロゲン置換体から得られるポリカーボネートが提案されている。これらの4,4′―ジオキシジアリールアルカンあるいは4,4′―ジヒドロキシジフェニルアルカンから得られるポリカーボネートの一部は溶解性や非晶性の面ではビスフェノール―Aから得られるポリカーボネートより優れているが、ガラス転移温度(以下Tgと略記)が低いために総合的に見るとビスフェノール―Aより優れているとは言えない。
【0005】
一方、液晶ディスプレーに用いる基板用フイルムまたはシートでは透明性、光学等方性以外に高い耐熱性が要求される。これは、基板に透明電極用導電性薄膜を蒸着やスパッタリング法により設けなければならず、また、通常ポリイミドからなる液晶配向膜を形成しなければならないためである。従って、従来提案されているビスフェノール―Aから得られるポリカーボネートフイルムまたはシートでも耐熱性が十分とは言えない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性に優れ、かつ、透明性、光学特性に優れた光学用フイルムまたはシートからなる液晶デイスプレー用基板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる従来技術の欠点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、下記式[I]
【0008】
【化4】
Figure 0003732531
[式中、R1,R2,R3およびR4は水素原子を表し、Xは炭素数5〜10のシクロアルキレン基である。]
で示される繰り返し単位を30モル%を越える割合で含有し、濃度0.5g/dlのジクロロメタン溶液中20℃での粘度測定から求めたときの平均分子量が8,000以上100,000以下であるポリカーボネート(共)重合体からなり、膜厚が80〜300μmであり、かつリタデーション(Re)が10nm以下であり、ガラス転移温度が150℃以上であり、かつ該ポリカーボネート共重合体の濃度が15重量%以上である溶液からキャスティング法により製膜された光学用フイルムまたはシートからなる液晶デイスプレー用基板によって達成されることにより、かかる課題を一挙に解決することを見いだした。
【0009】
本発明において用いられるポリカーボネート(共)重合体は、前記式[I]で示される繰り返し単位を必須成分とするものである。式中R1〜R4は水素原子である。式中Xは、炭素数5〜10のシクロアルキレン基である。
【0010】
一般に従来提案されている4,4′―ジオキシジアリールアルカンや4,4′―ジヒドロキシジフェニルアルカンから得られるポリカーボネートは、その具体例に見るようにTgはビスフェノール―Aから得られるポリカーボネートのTg(149℃)より低い。例えば、ビス(4―オキシフェニル)メタン(147℃)、1,1―ビス(4―オキシフェニル)エタン(130℃)、1,1―ビス(4―オキシフェニル)ブタン(123℃)、2,2―ビス(4―オキシフェニル)ブタン(134℃)から得られるポリカーボネートのTg(括弧内の数値)からも明らかである。
【0011】
それに対して、本発明において用いられるシクロアルキレン基を有するビスフェノールから得られるポリカーボネートは環構造に由来する剛直性のために高Tgが得られる。しかも、そのシクロアルカン構造に起因する非対照性のために溶解性や非晶性はビスフェノール―Aからのポリカーボネートのそれより著しく高い。
【0012】
本発明において用いられるXの具体例はシクロアルキレン基として1,1―シクロペンチレン、1,1―シクロヘキシレン、1,1―(3,3,5―トリメチル)シクロヘキシレン、ノルボルナン―2,2―ジイル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン―8,8′―ジイル、特に原料の入手のし易さから1,1―シクロヘキシレン、1,1―(3,3,5―トリメチル)シクロヘキシレンが好適に用いられる。また、アラアルキレン基としては、フェニルメチレン、ジフェニルメチレン、1,1―(1―フェニル)エチレン、9,9―フルオレニレンが挙げられる。これらは一種でもよいし二種以上でもよい。
【0013】
本発明において用いられる前記式[I]で示される構成単位以外の構成単位(共重合成分)としては、下記式[II]
【0014】
【化5】
Figure 0003732531
[式中、Ra,Rb,RcおよびRdは同一もしくは異なり水素原子またはメチル基であり、Yは炭素数1〜6のアルキレン基である。]
で示される繰り返し単位が用いられる。Ra,Rb,RcおよびRdは同一もしくは異なり、水素原子またはメチル基である。Yは、炭素数1〜6のアルキレン基である。炭素数がそれを越えると溶解性や非晶性の上では有利にはたらくが、耐熱性の上では不利になり好ましくない。好適な具体例として、メチレン、1,1―エチレン、2,2―プロピレン、2,2―ブチレン、2,2―(4―メチル)ペンチレンが挙げられる。
【0015】
本発明においては、ポリカーボネートの総繰り返し単位中にこれらの構成単位[I]が少なくとも30モル%を越える割合で含有する、好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上含まれる。共重合比は、フイルム物性(Tg)、製膜性を勘案して選択すればよいが、必須構成単位[I]の割合が30モル%以下ではフイルム物性や製膜性が低下するために好ましくない。一般式(II)で表わされる繰り返し単位は70モル%未満、好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下である。
【0016】
本発明において用いられるポリカーボネート(共)重合体の分子量は、濃度0.5g/dlのジクロロメタン溶液中20℃での粘度測定から求めた平均分子量で8,000以上100,000以下、好ましくは10,000以上70,000以下の範囲が用いられる。それ未満では力学的強度が十分でなく好ましくない。またそれを越えると高粘度になりすぎて製膜性が著しく損なわれるので好ましくない。
【0017】
本発明において用いられるポリカーボネート(共)重合体の製造法は特に限定はないが、通常用いられているホスゲンと対応するビスフェノールとの界面重合法、ジフェニルカーボネートとビスフェノールとの溶融重合法が好適に用いられる。
【0018】
得られたポリカーボネートは、溶液からのキャスティング法によりフイルムあるいはシート化される。光学用途は高度な均一性を要求されるためである。用いられる溶媒としては、特に限定はないが、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタンなどのハロアルカン類;テトラヒドロフラン、1,3―ジオキソラン、1,4―ジオキサンなどの環状エーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、クロロベンゼンなどの芳香族溶媒が用いられる。この内、ジクロロメタン、1,2―ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,3―ジオキソラン、1,4―ジオキサン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン等が溶解性とドープ安定性の上から特に好ましい。これらは一種でもよいし二種以上の混合溶媒でもよい。本発明の意図する液晶デイスプレー用フイルムは厚膜にするために、15重量%以上、好適には20重量%以上の高濃度が用いられる。
【0019】
キャスティング法は、一般にはダイから溶液を押し出すキャスティング法、ドクターナイフ法などが好ましく用いられる
【0020】
膜厚は用途に応じて選択すればよいが、80〜300μmの範囲が用いられる。それ未満では、位相差板の場合では屈折率異方性に基づく十分なリタデーション(複屈折Δnと膜厚dとの積)が得られないし、また液晶ディスプレー用基板では十分に腰のある(剛直な)フイルムが得られない。またそれを越えると製膜が困難になり好ましくない。それと共に位相差板用フイルムの場合は厚膜になると僅かな延伸でリタデーションが目的地を越えてしまうために、延伸精度が追いつかなくなり好ましくない。
【0021】
本発明のフイルムまたはシートはTgが150℃以上である。Tgが150℃より低い場合には熱変形、熱収縮が大きく、剥離や像の歪、耐久性の低下などの問題が発生する可能性がある。
【0022】
本発明の液晶ディスプレー用基板は光学等方性が要求されために未延伸のまま用いられる。しかし光学等方性さえ満足されれば二軸延伸してもよい。延伸温度は、使用するフイルムのTgに依存し、一般にはTg−50℃以上Tg+20℃以下、好ましくはTg−30℃以上Tg+10℃以下が用いられる。それ未満では、ポリマー分子の運動が凍結されているために均一配向が困難になり好ましくない。また、それを越えるとポリマーの分子運動が激しくなるために、延伸による配向の緩和が起こり、予期した配向度が得られないばかりか配向抑制が困難になるために好ましくない。また、延伸倍率は、目的とするフイルムのリターデーションの大きさに応じて適宜選択すればよい。この値は、延伸温度、膜厚にも依存する。一般に厚膜では、延伸倍率は小さくともよく、薄膜では大きくとる必要がある。
【0023】
かくして得られた未延伸フイルムあるいはシートは液晶ディスプレー用基板として用いられる。その際、その上に酸化スズ・インジウムなどの透明電極層を積層し、その透明電極層上に例えばポリイミド液晶配向薄膜をコーティングして使用される。液晶素子はこの配向膜をラビング処理した後、二枚の積層基板を配向膜を内側にして液晶層をサンドイッチすることにより液晶素子が完成する。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、結晶化などによる濁りのない、耐熱性の高い液晶ディスプレー用基板などの光学フイルムやシートが提供される。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を詳述する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
実施例において測定した物性は、下記の方法により測定した。
1) フイルムの機械特性:JIS K7113に準拠して行った。
2) 粘度平均分子量:塩化メチレン溶液で測定した固有粘度をMark―Houwink―桜田の式に代入、算出した。
3) 複屈折:神崎製紙(株)製自動複屈折計(KOBRA−21AD)を使用し、590nmの可視光における複屈折値を測定した。
4) Tg:DuPont社製(Differential ScanningCarorimeter 910 )を
使用し昇温速度20℃/minで測定した。
5) 光透過率:島津製作所(株)分光光度計(UV−240)を使用した。
【0027】
[実施例1]
1,1―シクロヘキシレンビス(4―フェノール)をビスフェノール成分とするポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量45,000)20重量部をジクロロメタン80重量部に加えて、室温で5時間攪拌することにより、透明粘ちょうな溶液を得た。この溶液は3日間密閉状態で室温放置しても変化せず、白濁現象やゲル化は認められなかった。得られた溶液をドクターナイフを用いてステンレス基板上にキャストし、風速2m/秒の乾燥器の中で30℃で10分、50℃で30分、130℃で30分加熱して膜厚93μmの透明未延伸フイルムを得た。そして得られたフイルムの透過率は500nmの可視域で89%であり極めて透明性の高いものであった。また590nmの可視光で測定したリタデーション(Re)は10nm以下であり、光学等方性が極めて高いものであった。このフイルムのDSCにより求めたTgは179℃であり高い耐熱性を示した。得られたフイルムは破断強度6.8kg/mm2、伸度90%、初期モジュラスは145kg/mm2であり極めて丈夫であった。
【0028】
[比較例1]
2,2―プロピレンビス(4―フェノール)(ビスフェノール―A)から得られたポリカーボネート樹脂(分子量43,000)を用いて、その他は実施例1と同様な方法で透明未延伸フイルムを得た。このフイルムのTgは148℃であり、実施例1で得たフイルムより低かった。
【0029】
[実施例2]
1,1―シクロヘキシレンビス(4―フェノール)/ビスフェノール―Aのモル比=50/50をビスフェノール成分とするポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量38,000)23重量部をジクロロメタン77重量部に加えて、室温で5時間攪拌することにより、透明粘ちょうな溶液を得た。この溶液は3日間密閉状態で室温放置しても変化せず、白濁現象やゲル化は認められなかった。得られた溶液をドクターナイフを用いてステンレス基板上にキャストし、風速2m/秒の乾燥器の中で30℃で10分、50℃で30分、130℃で30分加熱乾燥して膜厚105μmの透明未延伸フイルムを得た。そして得られたフイルムの透過率は500nmの可視域で89%であり極めて透明性の高いものであった。また590nmの可視光で測定したリタデーション(Re)は10nm以下であり、光学等方性が極めて高いものであった。このフイルムのDSCにより求めたTgは160℃であり高い耐熱性を示した。こうして得られた未延伸フイルムをテンター法により145℃で10%延伸して配向フイルムを得た。この延伸フイルムのReは500nmであり所望の複屈折性を示すフイルムを得た。
【0032】
[実施例
ポリカーボネートから実施例1と同様のキャストしたフイルムの諸特性を表に示す。いずれも高濃度に溶解し、しかも安定溶液を得た。また、キャストした未延伸フイルムはいずれも丈夫で透明性が高く、かつ、光学異方性が小さかった(<10nm)いずれも延伸可能であり延伸温度、延伸倍率を制御することにより所望の光学異方性を有する延伸フイルムを得た。
【0033】
【表1】
Figure 0003732531
表1中の略号と繰返し単位[I]および[II]の構造との対応は下記の通りである。
Z:式[I]中のR〜Rが水素原子、Xが1,1―シクロヘキシレンである繰り返し単位
Mv:粘度平均分子量(×10−4
T:光透過率(500nm,%)

Claims (2)

  1. 下記式[I]
    Figure 0003732531
    [式中、R,R,RおよびRは水素原子を表し、Xは炭素数5〜10のシクロアルキレン基である。]
    で示される繰り返し単位を30モル%を越える割合で含有し、濃度0.5g/dlのジクロロメタン溶液中20℃での粘度測定から求めたときの平均分子量が8,000以上100,000以下であるポリカーボネート(共)重合体からなり、膜厚が80〜300μmであり、かつリタデーション(Re)が10nm以下であり、ガラス転移温度が150℃以上であり、かつ該ポリカーボネート(共)重合体の濃度が15重量%以上である溶液からキャスティング法により製膜された光学用フイルムまたはシートからなる液晶デイスプレー用基板。
  2. 光学用フイルムまたはシートが、下記式[I]
    Figure 0003732531
    [式中、R,R,RおよびRは水素原子を表し、Xは炭素数5〜10のシクロアルキレン基である。]
    で示される繰り返し単位を30モル%を越える割合で有し、下記式[II]
    Figure 0003732531
    [式中、Ra,Rb,RcおよびRdは同一もしくは異なり水素原子またはメチル基であり、Yは炭素数1〜6のアルキレン基である。]
    で示される繰り返し単位を70モル%未満含有するポリカーボネートからなる請求項1記載の液晶デイスプレー用基板。
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