JP3731734B2 - 帯電部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真式複写機及びプリンタ、またはトナージェット式複写機及びプリンタなどの画像形成装置の感光体等に一様な帯電を付与するために用いられる帯電部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真式複写機及びプリンタ、またはトナージェット式複写機及びプリンタなどの画像形成装置の帯電ロール・現像ロール、トナー規制、さらには中間転写ロール、ベルト等には、感光体等への非汚染性の他、所定の導電性、摩擦係数等が要求される。そこで、従来、ポリウレタン、シリコーンゴム製のものが用いられていたが、感光体等への汚染性、帯電性等の理由から、ポリウレタン、シリコーンゴムに代わって各種弾性層表面に各種コーティング層、被覆チューブを設けたものが提案されている。
【0003】
例えば、特開平5−204234号公報には、導電性スポンジ体層上にポリアミド樹脂チューブからなる導電性最外層を設けた現像ロールが提案されている。また、特開平7−134467号公報には、ワックス等の滑剤を含む表面層を具備する帯電部材が開示されている。また、特開平8−160701号公報には、フッ化炭素を含有する導電性重合体からなる塗布層またはシームレスチューブからなる表面層を有する帯電部材が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塗布等により設けられた表面層は必ずしも基材との接着が良好な訳ではなく、耐久性に劣り、長期信頼性に欠けるという問題がある。また、シームレスチューブからなる表面層は作業性に劣りコスト高であると共に弾性層と別体となるので、帯電特性等の問題で十分ではないという問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は、形成が容易であり且つ弾性層と一体的になって耐久性に優れたものとして、表面をイソシアネート化合物で処理して表面処理層を設けた現像ロールを先に開発した(特開平5−173409号公報)。しかしながら、イソシアネート処理層を設けたものは、回転トルクが高過ぎて、ジッタ、フィルミング、トナー搬送性の増大等の虞がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、低コストで、良好な特性を長期間に亘って維持することができる帯電部材を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、エピクロルヒドリン系ゴム基材からなる弾性層を有する帯電部材であって、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一種のポリマーと、導電性付与剤と、イソシアネート成分とを含有する表面処理液を前記弾性層に含浸させることにより表面から内部に向かって漸次疎になるように当該弾性層と一体的に形成された表面処理層を有することを特徴とする帯電部材にある。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記弾性層が、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体、及びエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む材料からなることを特徴とする帯電部材にある。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記弾性層のゴム硬度がJIS Aで30°〜70°であることを特徴とする帯電部材にある。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記導電付与剤が、金属酸化物の微粉末及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも一種の電子導電性付与剤であることを特徴とする帯電部材にある。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記導電付与剤が、金属酸化物の微粉末及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも一種の電子導電付与剤とイオン導電付与剤とからなることを特徴とする帯電部材にある。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記表面処理液中の導電付与剤は、イソシアネート成分に対して10〜40重量%であることを特徴とする帯電部材にある。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記表面処理液中のポリマーは、イソシアネート成分に対して2〜30重量%であることを特徴とする帯電部材にある。
【0014】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記表面処理層が、前記エピクロルヒドリン系ゴム基材の表面に前記表面処理液を含浸し、加熱処理することにより形成されることを特徴とする帯電部材にある。
【0015】
本発明によると、帯電部材表面に一体的に設けられた表面処理層にはアクリルフッ素系ポリマー又はアクリルシリコーン系ポリマー及びカーボンブラックが一体的に含有される。すなわち、このように形成される表面処理層は、ゴム部材表面に表面処理液を含浸させることにより形成されるので、表面処理層は表面から内部に向かって漸次疎になるように一体的に形成される。従って、有機感光体に接触しても汚染することはなく、電気特性の環境依存性が小さく、トナー成分の耐フィルミング性に優れた帯電部材を提供することができる。
【0016】
本発明で用いる表面処理液は、イソシアネート化合物にアクリルフッ素系ポリマー又はアクリルシリコーン系ポリマーと、導電性付与剤とを配合したものである。
【0017】
ここで、イソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)などを挙げることができる。
【0018】
また、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、所定の溶剤に可溶でイソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものである。
【0019】
アクリルフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基、アルキル基、又はカルボキシル基を有する溶剤可溶性のフッ素系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
【0020】
また、アクリルシリコーン系ポリマーは、溶剤可溶性のシリコーン系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸シロキサンエステルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
【0021】
本発明では、これらのポリマーを一種又は二種以上混合して用いる。表面処理液中のポリマーは、イソシアネート成分に対して2〜30重量%とするのが好ましい。少ないとカーボンブラックを表面処理層中に保持する効果が小さくなり、多すぎると相対的にイソシアネート成分が少なくなって有効な表面処理層が形成できない。
【0022】
本発明で表面処理層中に含有される導電性付与剤としては、錫、亜鉛、アンチモンなどの酸化物である金属酸化物の微粉末及びカーボンブラックなどの導電性カーボンからなる群から選択される少なくとも一種の電子導電性付与剤を挙げることができ、これにさらに、イオン導電性付与剤を加えて用いてもよい。イオン導電性付与剤としては、Li、Na、K、Ca、Mgなどの金属のアンモニア錯塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、カルボン酸塩、スルフォン酸塩、硫酸塩、酢酸塩などを挙げることができ、過塩素酸リチウムなどが好適に使用できる。
【0023】
特に、本発明では、導電性付与剤としてカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックの種類は特に限定されず、例えば、ケッチェンブラック(ライオン社製)、トーカブラック#5500(東海カーボン社製)などが挙げられる。
【0024】
表面処理液中のカーボンブラックなどの導電性付与剤は、イソシアネート成分に対して10〜40重量%であるのが好ましい。これより少ないと有効な帯電特性が発揮できず、多すぎると脱落等の問題が生じ好ましくないからである。
【0025】
さらに、表面処理液は、これらアクリルフッ素系ポリマー又はアクリルシリコーン系ポリマー及びイソシアネート化合物を溶解する溶剤を含有する。溶剤としては特に限定されないが、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の有機溶剤を用いればよい。
【0026】
一方、帯電部材の弾性層の材料としては、エピクロルヒドリン系ゴム材料、例えば、エピクロルヒドリンゴム、又はエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体、及びエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体などを主体とするものが用いられる。このエピクロルヒドリン系ゴムのゴム硬度はJIS Aで30〜70°のものを用いるのが好ましい。
【0027】
本発明の弾性層には、導電性付与剤が添加されていてもよい。導電性付与剤としては、上述した電子導電性付与剤、イオン導電付与剤、又はこれらの両者を混合して用いることができる。
【0028】
このように導電性付与剤により導電性を付与された弾性層の導電性は1×105〜1×1010Ω・cm程度とするのが好ましい。
【0029】
このゴム部材の表面に上述した表面処理液を含浸させて表面処理層を形成することにより、良好な特性を長期間に亘って有する帯電部材を低コストで形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
【0031】
図1は、一実施形態に係る帯電ロールの斜視図及び断面図である。図1に示すように、芯金1上にはエピクロルヒドリンゴムを基材とする導電性弾性層2が設けられ、また、導電性弾性層2上には表面処理層3が一体的に形成されている。
【0032】
また、図2は、他の実施形態に係る帯電ブレードの断面図である。図2に示すように、ホルダー11上には導電性弾性層12が設けられ、導電性弾性層12上には表面処理層13が一体的に形成されている。
【0033】
以下に帯電ロールを例として製造例を示す。
【0034】
(実施例1)
(ロールの製造)
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG−102;ダイソー社製)100重量部に対して導電材としてトリフルオロ酢酸ナトリウム0.3重量部、酸化亜鉛(ZnO)5重量部、加硫剤としての2−メルカプトイミダゾリン(アクセル−22)2重量部をロールミキサーで混練りし、直径6mmの金属製シャフトの表面にプレス成形し、直径12mmに研磨加工してシャフト表面にゴム弾性部材が形成されたロールを得た。
【0035】
(表面処理液の調製)
酢酸エチル100重量部、イソシアネート化合物(MD1;大日本インキ社製)20重量部、アセチレンブラック(電気化学社製)4重量部、アクリルシリコーンポリマー(モデイバーFS700;日本油脂社製)2重量部をボールミルで3時間分散混合した。
【0036】
(ロールの表面処理)
前記溶液を23℃に保ったまま、前記ロールを10秒間浸漬後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱し、帯電ロールを得た。
【0037】
(実施例2)
(ロールの製造)
実施例1の(ロールの製造)と同じ方法によりロールを得た。
【0038】
(表面処理液の調製)
酢酸エチル100重量部、イソシアネート化合物(MD1;大日本インキ社製)20重量部、アセチレンブラック(電気化学社製)4重量部、アクリルフッ素ポリマー(ノバフッソ;大日本色材製)2重量部をボールミルで3時間分散混合した。
【0039】
(ロールの表面処理)
前記溶液を23℃に保ったまま、前記ロールを10秒間浸漬後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱し、帯電ロールを得た。
【0040】
(比較例1)
(ロールの製造)
実施例1の(ロールの製造)と同じ方法によりロールを得た。
【0041】
(表面処理液の調製)
酢酸エチルに対して10重量%のイソシアネート化合物(MD1;大日本インキ社製)が配合された酢酸エチル溶液とした。
【0042】
(ロールの表面処理)
前記溶液を23℃に保ったまま、前記ロールを10秒間浸漬後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱し、帯電ロールを得た。
【0043】
(比較例2)
(ロールの製造)
実施例1の(ロールの製造)と同じ方法によりロールを得た。
【0044】
(表面処理液の調製)
酢酸エチル100重量部、イソシアネート化合物(MD1;大日本インキ社製)20重量部、アクリルフッ素ポリマー(ノバフッソ;大日本色材製)2重量部をボールミルで3時間分散混合した。
【0045】
(ロールの表面処理)
前記溶液を23℃に保ったまま、前記ロールを10秒間浸漬後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱し、帯電ロールを得た。
【0046】
(比較例3)
(ロールの製造)
実施例1の(ロールの製造)と同じ方法によりロールを得た。
【0047】
(表面処理液の調製)
酢酸エチル100重量部、イソシアネート化合物(MD1;大日本インキ社製)20重量部、アセチレンブラック(電気化学社製)4重量部をボールミルで3時間分散混合した。
【0048】
(ロールの表面処理)
前記溶液を23℃に保ったまま、前記ロールを10秒間浸漬後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱し、帯電ロールを得た。
【0049】
(試験例1):電気抵抗値
上記各実施例および比較例の帯電ロールについて、LL:10℃、30%RH;NN:25℃、55%RH;HH:40℃、80%RHの各環境下に保持したときのロールの電気抵抗値を測定した。なお、帯電ロールの抵抗値は図3に示すような方法で測定した。すなわち、帯電ロールをSUS304板からなる電極部材21上に載置し、芯金1の両端に500g重の荷重をかけた状態で、芯金1と電極部材21との間の抵抗値をULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。なお、このときの印加電圧は500Vであった。この結果は表1に示す。
【0050】
(試験例2):画像評価
市販のレーザープリンターの帯電部分に、上記各実施例及び比較例の帯電ロールを取り付けた。このプリンターを起動し、試験例1のLLおよびHHの各環境下で画像を出力した。この結果も表1に示す。
【0051】
(試験例3):連続印刷
市販のレーザープリンターに上記実施例及び比較例の帯電ロールを取り付け、10000枚連続印刷後のロール表面の顕微鏡観察及び画像の比較を行った。この結果も表1に示す。
【0052】
(試験例4):ロール表面ダメージ
市販のレーザープリンターのトナーカートリッジに上記実施例及び比較例の帯電ロールを組付けて、カートリッジごと50℃、90%RHの環境に14日間保持した後、カートリッジ及び帯電ロールをプリンターに組付けて画像を出力した。このときの画像の比較及び帯電ロールの表面を顕微鏡観察した。この結果も表1に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0003731734
【0054】
表1に示すように、試験例1では、電気抵抗値の環境依存性(LL〜HH)が実施例1及び2の帯電ロールでは小さく良好なのに対し、比較例1〜3の帯電ロールでは大きいことが分かる。
【0055】
また、試験例2では、実施例1、2及び比較例1の帯電ロールでは画像の環境依存性(LL〜HH)が良好でムラ及び劣化が見られないのに対し、比較例2及び3の帯電ロールでは、画像のムラ及び劣化が見られた。
【0056】
また、試験例3では、実施例1、2及び比較例2の耐電ロールではロール表面にフィルミングが少なく画像の劣化が見られないのに対し、比較例1及び3の帯電ロールではロール表面が真白にフィルミングして画像にもムラが見られた。
【0057】
さらに、試験例4では、実施例1、2及び比較例2の帯電ロールでは画像、ロール表面に保持前と比べ変化がないのに対し、比較例1及び3の帯電ロールではロール表面にブリードが見られ、画像にも劣化が見られた。
【0058】
このような結果から、実施例1及び2の帯電ロールは、優れたロール特性を示した。
【0059】
また、実施例1及び2の帯電ロールは表面処理液を導電性弾性層の表面に含浸させるだけで表面処理層を形成すると共に優れたロール特性を付与できるため、低コストで量産することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の帯電部材は、容易に形成できると共に耐久性を向上することができ、製造コストを低減することができる。また、これを用いた現像ロールはロールの特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る帯電ロールの斜視図及び断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る帯電ブレードの断面図である。
【図3】帯電ロールの抵抗値の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
1 芯金
2 導電性弾性層
3 表面処理層
11 ホルダー
12 導電性弾性層
13 表面処理層

Claims (8)

  1. エピクロルヒドリン系ゴム基材からなる弾性層を有する帯電部材であって、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一種のポリマーと、導電性付与剤と、イソシアネート成分とを含有する表面処理液を前記弾性層に含浸させることにより表面から内部に向かって漸次疎になるように当該弾性層と一体的に形成された表面処理層を有することを特徴とする帯電部材。
  2. 請求項1において、前記弾性層が、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体、及びエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む材料からなることを特徴とする帯電部材。
  3. 請求項1又は2において、前記弾性層のゴム硬度がJIS Aで30°〜70°であることを特徴とする帯電部材。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記導電性付与剤が、金属酸化物の微粉末及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも一種の電子導電性付与剤であることを特徴とする帯電部材。
  5. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記導電性付与剤が、金属酸化物の微粉末及びカーボンブラックからなる群から選択される少なくとも一種の電子導電性付与剤とイオン導電性付与剤とからなることを特徴とする帯電部材。
  6. 請求項1〜5の何れかにおいて、前記表面処理液中の導電付与剤は、イソシアネート成分に対して10〜40重量%であることを特徴とする帯電部材。
  7. 請求項1〜6の何れかにおいて、前記表面処理液中のポリマーは、イソシアネート成分に対して2〜30重量%であることを特徴とする帯電部材。
  8. 請求項1〜7の何れかにおいて、前記表面処理層が、前記エピクロルヒドリン系ゴム基材の表面に前記表面処理液を含浸し、加熱処理することにより形成されることを特徴とする帯電部材。
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