JP3731710B2 - パラレルリンク機構の継手構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パラレルリンク機構の継手構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
ベースプレートとトラベリングプレートとの間を接続する複数のリンクを協調させて伸縮することでベースプレートに対するトラべリングプレートの位置および姿勢を変化させるようにしたパラレルリンク機構が公知である。
この種のパラレルリンク機構は、シリアル式のリンク機構に比べて剛性が高い、トラべリングプレートの動作の高速化が容易である、動作精度が高い、駆動源となるモータの小型化や省電力化に有利である、全体構造が簡略化される、規格化された同一パーツの使用が可能であるので設計や製造およびメンテナンス等の手間が簡略化される等の面でメリットがあり、レーザー加工機を始めとする各種の工作機械やハンドリングロボット等の作業装置におけるツールの移動手段等として様々なかたちで利用されている。
【0003】
トラべリングプレートに取り付けられたツールの位置や姿勢を変化させるためには、リンクの伸縮動作に加えて各リンクの自由な姿勢変化が必要である。これを達成するための継手構造としては、特開平9-66480号において従来技術として紹介されるように、2つの回転軸をリンクと直交する平面内で垂直方向に組み合わせることによってリンクの取付け部に対する2方向の揺動自由度を確保した構造のもの、および、特開平10-29178号に示されるように、直交する2つの回転軸に換えて球面継手を使用することによって前記と同様の2方向の揺動自由度を与えるようにしたものが公知である。
しかし、2つの揺動軸を同一平面内で垂直方向に組み合わせたものは構造の複雑化や大型化の面で問題があり、また、球面継手を使用することによって構造の簡略化や小型化を図ろうとすると、継手部分の摩擦自体が大きくなって、リンクの揺動動作に支障が生じる等の点で問題が生じる場合がある。
【0004】
また、パラレルリンク機構における位置決め精度や耐久性を向上させるための継手構造として、ベースプレートやトラベリングプレートの外周の端面にその端面に垂直な軸の周りに回転する第1の回転体を設け、更に、この第1の回転体の直径方向に第2の回転体の回転軸を取り付けて、前記第1の回転体と第2の回転体とで構成されるジョイントにリンクの先端を固着することによってリンクに対する2方向の揺動自由度を与えるようにしたものが、特開平10-118966号として提案されている。
しかし、このものは、トラべリングプレートに装着されたツールやその駆動機構の重量およびツールでハンドリングされる搬送物の重量が、常に、第1の回転体の回転軸に直交する方向から作用し、しかも、その荷重が大抵の場合において鉛直方向、要するに、トラべリングプレートの法線方向に向けて作用することになるので、前述した第1の回転体の軸受に局所的な摩耗が生じやすくなるといった問題が生じる可能性がある。
また、ベースプレートやトラベリングプレートの外周の端面に突出させてジョイントを取り付けているため、ジョイントおよびその取り付け部に前述した荷重による曲げモーメントが作用し、十分な剛性を発揮できなくなるといった場合もある。
【0005】
更に、リンクの端部に取り付けられた第1,第2の回転体からなるジョイントをそれとは独立してベースプレート上に配備した別の送り手段で上下方向に移動させることによってリンクを伸縮させる構造であるため、ベースプレートとトラべリングプレートとの間の接続部のノードやスライド部の数が増え、全体としての組み立て精度や動作精度の確保が困難となる問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、前記従来技術の欠点を解消し、構造が簡単で十分な剛性および精度と耐摩耗性を備えたパラレルリンク機構の継手構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベースプレートまたはトラべリングプレートのプレートの面に対して垂直な軸の周りに回転する回転軸を有する第1の軸受と、該プレートの面に対して略平行な軸の周りに回転する回転軸を有し、前記プレートの厚み方向に重合させて前記第1の軸受の回転軸に一体で前記第 1 の軸受の回転軸の回転中心から径方向にオフセットして配備された第2の軸受の回転軸に略直交させてパラレルリンク機構のリンクを接続したことを特徴とする構成により前記課題を達成した。
プレートの厚み方向に設けられた第1の軸受と第2の軸受けの重合方向に沿ってトラべリングプレートの荷重が作用するので、軸受およびその周辺に曲げモーメントが作用することがなく、継手構造の剛性および動作精度が確保される。
また、トラべリングプレートの荷重が、円環状の支持面全体(第1の軸受けの支持面)で支えられるため、軸受における局所的な摩耗の問題が解消される。
【0008】
更に、第2の軸受の回転軸を第1の軸受の回転軸の回転中心から径方向にオフセットして配備するようにしたので、第1の軸受の回転中心とリンクとが一直線上に位置した場合であっても、リンクの姿勢変化の自由度を確実に維持することができる。
【0009】
また、リンクを伸縮させるための駆動機構を第2の軸受の回転軸に一体的に配備することによってベースプレートとトラべリングプレートとの間の接続部のノードやスライド部の数を減らして、組立て精度や動作精度の向上を図った。
【0010】
リンクを伸縮させるための駆動機構としては、第2の軸受けの回転軸上に設けられた駆動源と該駆動源の回転出力を直線運動に変換するボールネジ/ナット機構を採用することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の幾つかについて詳細に説明する。図1は、本発明の継手構造をYAGレーザーロボットのパラレルリンク機構に適用した場合の一実施形態について示す斜視図である。
【0012】
パラレルリンク機構の主要部は、図1に示すように、4本の脚1によって水平に支えられたベースプレート2と、ツールとしてのYAGレーザーを取り付けるためのトラべリングプレート3、および、ベースプレート2とトラべリングプレート3とを接続するための6本のリンク4と、ベースプレート2とトラべリングプレート3との間でリンク4を伸縮させてベースプレート2に対するトラべリングプレート3の位置および姿勢を変化させるための6つの駆動機構5、ならびに、ベースプレート2に対してリンク4の上端部を揺動自在に支持するための6つの固定側継手6(継手構造)と、トラべリングプレート3に対してリンク4の下端部を揺動自在に支持するための6つの可動側継手7(継手構造)の各々によって構成される。
ツールとなるYAGレーザーはトラべリングプレート3の下面側に取り付けられるが、YAGレーザー自体の構造に関しては本発明と直接の関係はないので、図1では記載を省略している。
無論、パラレルリンク機構を利用した作業装置のツールとしてはYAGレーザー等に限定する必要はなく、その他に、例えば、バリ取り用のルータや各種のエンドミルおよび溶接ガンやハンドリング用のマニピュレータ等であってもよい。
【0013】
また、この実施形態では6組のリンク4,駆動機構5,固定側継手6,可動側継手7を採用しているが、これらの構成要素に関しては、トラべリングプレート3の位置や姿勢を変化させるに足るだけの数、具体的には、3組以上を配備すれば十分である。
トラべリングプレート3の位置や姿勢を変化させるための各リンク4の協調動作については既に公知であるので、ここでは伸縮動作の制御等に関する詳細な説明は省略する。例えば、トラべリングプレート3を下方に移動させる場合には、6本のリンク4を完全に同期させてベースプレート2の下方に突出させればよく、また、トラべリングプレート3の姿勢を変化させる場合には、対向する2本のリンク4の状態をそのまま保持して、残る4本のリンク4のうち隣接する2本を突出させ、残る2本をそれに応じて縮退させるようにすればよい。
【0014】
次に、本実施形態の主要部を構成する固定側継手6と駆動機構5および可動側継手7の構造について説明する。
【0015】
図2は固定側継手6と駆動機構5、および、ベースプレート2とリンク4の一部を取り出して詳細に示す斜視図である。
固定側継手6は、ベースプレート2の面に対して垂直な軸の周りに回転する回転軸8を有する第1の軸受9と、ベースプレート2の面に対して平行な軸の周りに回転する回転軸10を有する第2の軸受11とによって構成され、更に、第2の軸受11の回転軸10には、この回転軸10に一体的に配備された駆動機構5を介して、該回転軸10に対して直交するかたちでリンク4の上端部が接続されている。
つまり、第1の軸受9は、軸方向および径方向に作用する負荷に対する耐性を考慮して形成されたアンギュラベアリングの外輪によって構成され、ベースプレート2に穿設された孔12の内側に、前記アンギュラベアリングの外輪が第1の軸受9として一体的に組み込まれると共に、このアンギュラベアリングの内輪によって回転軸8それ自体が構成されているのである。リンク4は、アンギュラベアリングの内輪によって形成される回転軸8の中央部に位置する開口を貫通して揺動自在な状態でベースプレート2の上下方向に突出している。
また、第2の軸受11は、前述したアンギュラベアリングの厚み方向、要するに、ベースプレート2の厚み方向に重合して前記アンギュラベアリングの内輪上に一体的に突設された2つの舌片11a,11aによって構成され、前述した回転軸10は、各舌片11a,11aの中央部に穿設された孔に内嵌されたブッシュ13,13によって回転自在に軸支されている。
【0016】
なお、「ベースプレート2の厚み方向に重合して」の記載で代表される概念は、第2の軸受11が前述したアンギュラベアリングやベースプレート2の面と同一平面上に位置することを妨げるものではない。従って、加工が可能であれば、前述したアンギュラベアリングの内輪それ自体に直径方向の孔を穿設し、その2つの孔を第2の軸受として回転軸10を軸支するようにしても構わない(この場合は、舌片11a,11aは不要である)。
【0017】
ベースプレート2に平行な回転軸10は、図2に示すように、リンク4を保持するスリーブ14の外周面から径方向外側に突出するようにして一体に形成された2つの柱状突起14a,14aによって構成され、スリーブ14の上端部には、リンク4を伸縮動作させるための駆動機構5が一体的に取り付けられている。
駆動機構5は、リンク4に軸方向の送りを掛けるための減速機構部15と、この減速機構部15を作動させるためのサーボモータ16とからなる。減速機構部15の内部には、リンク4の外周に形成されたボールネジ部4aと螺合するボールナットがスリーブ14に対して回転自在かつ軸方向移動不能な状態で取り付けられており、更に、スリーブ14の内周面とボールネジ部4aとの嵌合部には、スリーブ14および減速機構部15に対するリンク4の回転を禁止するためのボス&セレーションが設けられている。
要するに、減速機構15に取り付けられたサーボモータ16で前述のボールナットを回転駆動してリンク4のボールネジ部4aに軸方向の送りを掛けて、ベースプレート2とトラべリングプレート3との間でリンク4の伸縮動作を行わせる構成である。従って、リンク4自体はスリーブ14および減速機構部15に対して軸方向に移動可能で、かつ、回転は不能である。
【0018】
図2から明らかなように、リンク4は、回転軸10に直交する平面内において揺動自在であり、しかも、回転軸10を備えた第2の軸受11を固設した回転軸8は、ベースプレート2と直交する軸の周りに回転自在とされているので、回転軸10の回転角度と回転軸8の回転角度との組み合わせにより、リンク4は、ベースプレート2の面に対して完全に自由に姿勢を変化させることができる。
【0019】
図3は、可動側継手7およびトラべリングプレート3とリンク4の一部を取り出して詳細に示す斜視図である。
可動側継手7の構造に関しては、前述した固定側継手6と概ね同様である。可動側継手7は、トラべリングプレート3の面に対して垂直な軸の周りに回転する回転軸17を有する第1の軸受18と、トラべリングプレート3の面に対して平行な軸の周りに回転する回転軸19を有する第2の軸受20とによって構成され、更に、第2の軸受20の回転軸19に一体的に固設されたスリーブ21を介して、該回転軸19に対して直交するかたちでリンク4の下端部が固着されている。
固定側継手6の場合と同様、第1の軸受18は、軸方向および径方向に作用する負荷に対する耐性を考慮して形成されたアンギュラベアリングの外輪によって構成され、トラべリングプレート3に穿設された孔22の内側に前記アンギュラベアリングの外輪が一体的に組み込まれると共に、このアンギュラベアリングの内輪によって回転軸17それ自体が構成されている。
また、第2の軸受20は、前述したアンギュラベアリングの厚み方向、要するに、トラべリングプレート3の厚み方向に重合して前記アンギュラベアリングの内輪上に一体的に突設された2つの舌片20a,20aによって形成され、各舌片20a,20aの中央部に穿設された孔に内嵌されたブッシュ23,23によって回転軸19が回転自在に軸支されている。
なお、この実施形態においてはリンク4の上端部から下端部に掛けてボールネジ部4aを全体的に刻設するようにしているが、リンク4の下端部に関しては、必ずしもボールネジ部4aを設ける必要はない。
固定側継手6の場合と同様、リンク4は、回転軸19に直交する平面内において揺動自在であり、しかも、回転軸19を備えた第2の軸受20を固設した回転軸17は、トラべリングプレート3と直交する軸の周りに回転自在とされているので、回転軸19の回転角度と回転軸17の回転角度との組み合わせにより、トラべリングプレート3の面に対するリンク4の姿勢は完全に自由である。
【0020】
従って、リンク4毎に設けられた駆動機構5のサーボモータ16を駆動制御することにより各リンク4を協調させて伸縮させれば、ベースプレート2に対するトラべリングプレート3の位置や姿勢を自由に変化させることができる。
この際、トラべリングプレート3の位置や姿勢の変化に追従して各々のリンク4が様々な姿勢を取らなければならないが、回転軸10の回転角度と回転軸8の回転角度との組み合わせ、および、回転軸19の回転角度と回転軸17の回転角度との組み合わせの各々がトラべリングプレート3の位置や姿勢の変化に追従して受動的に変化し、ベースプレート2やトラべリングプレート3に対する各リンク4の姿勢が自動的に最適位置に調整されるので、後述する極めて特殊な場合を除き、リンク4に無理な曲げモーメントが作用することはない。
【0021】
トラべリングプレート3にはYAGレーザーやバリ取り用のルータまたは各種のエンドミルおよび溶接ガン等の重量物が取り付けられ、また、ハンドリング用のマニピュレータ等を取り付けて物品の移送や取り回し作業を行うような場合もある。これらの荷重は、リンク4の軸に沿って固定側継手6における第1の軸受9と回転軸8の係合面、および、可動側継手7における第1の軸受18と回転軸17との係合面に作用するが、前述した通り、いずれの係合面もアンギュラベアリングで構成されており、その軸方向に沿って荷重が作用することになるので、軸受に局所的な摩耗が生じることはなく、また、荷重に対する十分な強度と剛性が確保される。
また、固定側継手6側の第1の軸受9と第2の軸受11、および、可動側継手7側の第1の軸受18と第2の軸受20は、その夫々がプレート2,3の厚み方向に重合して配備されており、その重合方向とリンク4の軸心の方向、即ち、力の作用線とが略一致するので、各軸受やその取り付け部に曲げモーメントによる捩り力が作用することはなく、継手構造の剛性が確保される。
しかも、各リンク4を伸縮させるための駆動機構5は、固定継手6側の第2の軸受11の回転軸10に一体に取り付けられているので、駆動機構を独立させてベースプレート上に配備してジョイント部自体を上下に移動させることでリンクを伸縮させるような構造(例えば特開平10-118966号等のもの)に比べ、ベースプレート2とトラべリングプレート3との間に介在させるノードやスライド部の数を少なくすることができ、全体としての接続部のがたつきが減少するので、組立て精度やトラべリングプレート3の動作精度も向上する。
【0022】
但し、前述した実施形態の場合、図2において符号Fで示す方向、つまり、リンク4がベースプレート2に対して直交した姿勢にある状態で第2の軸受11の回転軸10に平行な力がリンク4に作用すると、リンク4は回転軸10に対して揺動することができず、また、第2の軸受11を取り付けた回転軸8も、第1の軸受9に対して回転することができなくなる。従って、このような場合に限り、ベースプレート2に対するトラべリングプレート3の位置および姿勢の変化に伴ってリンク4に要求される姿勢変化をリンク4自体の受動的な姿勢変化によって自動的に達成することができなくなる。
このような問題を解消するためには、図4に示すように、第1の軸受9の回転軸8の中心から径方向にオフセットして第2の軸受11の取り付け位置を配備するようにすればよい。
図4に示すような構成の下で、第2の軸受11の回転軸10に平行な力Fがリンク4に作用すると、この力Fは回転軸8の回転中心の周りの回転モーメントTに置き換えられ、この回転モーメントTによって回転軸8自体が受動的に回転するので、回転軸8に取り付けられた回転軸10の方向と前述した力Fの方向とが自動的に斜交するかたちとなり、回転軸10を中心とするリンク4の揺動動作が他の場合と同様にして許容されるので、リンク4は、ベースプレート2に対するトラべリングプレート3の位置および姿勢の変化に応じて自らに要求される姿勢変化を受け入れるべく、その姿勢を受動的に変化させられるようになる。
これと同じ問題は、図3に示すように、可動側継手7側の第2の軸受20の回転軸19とリンク4との間にも生じるが、前記と同様、図5に示すように、第1の軸受18の回転軸17の中心から径方向にオフセットして第2の軸受20の取り付け位置を配備することによって解消される。
【0023】
図6は、本発明の継手構造を溶接ロボットのパラレルリンク機構に適用した場合の一実施形態について示す斜視図である。
【0024】
この実施形態においてはベースプレート2によりリンク4を介してトラべリングプレート3を支え、トラべリングプレート3を作業テーブルとして使用して溶接対象となるワーク、例えば、車のドア等を載置し、トラべリングプレート3の位置や姿勢を変化させながら溶接作業を行うことになるので、図1で示した実施形態とは逆にベースプレート2が床面側に位置する。
パラレルリンク機構の主要部は、図6に示すように、床面に載置されたベースプレート2と、作業テーブルとなるトラべリングプレート3、および、ベースプレート2とトラべリングプレート3とを接続するための6本のリンク4、および、その各々に嵌合する長尺スリーブ24、ならびに、ベースプレート2とトラべリングプレート3との間でリンク4を伸縮させてベースプレート2に対するトラべリングプレート3の位置および姿勢を変化させるための6つの駆動機構5、および、ベースプレート2に対してリンク4の下端部を揺動自在に支持するための6つの固定側継手6(継手構造)と、トラべリングプレート3に対して長尺スリーブ24の上端部を揺動自在に支持するための6つの可動側継手7(継手構造)の各々によって構成される。
図1で示した実施形態の場合と同様、リンク4,長尺スリーブ24,駆動機構5,固定側継手6,可動側継手7の数は、トラべリングプレート3の位置や姿勢を変化させるに足るだけの数、即ち、最低で3組以上を配備すれば十分である。
【0025】
図6に示される固定側継手6の構造は、図2もしくは図4で述べた固定側継手6と同様であり、また、図6に示される可動側継手7の構造は、図3もしくは図5で述べた可動側軸受7と同様である。
但し、図6の実施形態においては、可動側軸受7の回転軸19に図3もしくは図5のスリーブ21に代え、実質的にリンク構造の一部となる長尺スリーブ24が揺動自在に取り付けられ、長尺スリーブ24の内周面には、リンク4のボールネジ部4aに螺合するボールナット部が設けられている。駆動機構5は、リンク4を回転させるための減速機構部15と、この減速機構部15を作動させるためのサーボモータ16とからなり、減速機構15に取り付けられたサーボモータ16でリンク4それ自体を回転させることにより、長尺スリーブ24とリンク4との螺合位置を軸方向に変化させて長尺スリーブ24とリンク4の実質的な全長を変え、ベースプレート2に対するトラべリングプレート3の位置および姿勢を変化させるようになっている。なお、リンク4自体は減速機構部15に対して回転可能かつ軸方向に移動不能である。
図6に示される実施形態の場合、リンク4を回転させることにより、長尺スリーブ24とリンク4との間の摩擦抵抗によって長尺スリーブ24およびリンク4の双方に反動トルクが発生するが、リンク4または長尺スリーブ24がベースプレート2またはトラべリングプレート3に対して垂直な状態とならない限り、ベースプレート2に対するリンク4の揺動角度やトラべリングプレート3に対する長尺スリーブ24の揺動角度に拘束されて固定側継手6における第1の軸受の回転軸8の回転、および、可動側継手7における第1の軸受の回転軸17の回転が禁止されるので、駆動機構5や長尺スリーブ24がその場で定地旋回して不用意な空回りが生じるといった問題は発生しない。
従って、図6に示されるような構成、つまり、減速機構15に対してリンク4が回転し、かつ、減速機構15および長尺スリーブ24がベースプレート2およびトラべリングプレート3に対して回転自在であって、しかも、長尺スリーブ24に対してリンク4を回転させることによってリンク4の実質的な長さを変化させる構成にあっては、基本的には、リンク4がベースプレート2に対して垂直になったり、または、長尺スリーブ24がトラべリングプレート3に対して垂直になったりしないような環境下で使用されるべきである。
なお、図6の実施形態の場合、6つの可動側継手7を配設した仮想円の直径に比べて6つの固定側継手6を配設した仮想円の直径の方が十分に大きく形成されているので、実際にリンク4がベースプレート2に対して垂直になったり、または、長尺スリーブ24がトラべリングプレート3に対して垂直になったりするような事態は発生しない。
【0026】
その他、図6に示した実施形態の作用効果の点については図1等で述べた実施形態の場合と同様であり、従来の装置と比べ、軸受に局所的な摩耗が生じることなくトラべリングプレート3の荷重に対して十分な強度と剛性が確保される、各軸受およびその取り付け部に曲げモーメントが作用せず継手構造の剛性が確保される、ベースプレート2とトラべリングプレート3との間に介在させるノードやスライド部の数を少なくすることができ、全体としての接続部のがたつきが減少して組立て精度やトラべリングプレート3の動作精度が向上する等のメリットがある。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、パラレルリンク機構の継手構造を形成する第1の軸受と第2の軸受けとの重合方向に沿ってトラべリングプレートの荷重が作用するので、継手を形成する軸受およびその周辺に曲げモーメントが作用することがなく、継手構造の剛性および動作精度が確保される。しかも、トラべリングプレートの荷重が、軸受の係合面によって形成される環状の支持面全体で支えられるため、軸受における局所的な摩耗が防止される。
【0028】
また、第2の軸受の回転軸を第1の軸受の回転軸の回転中心から径方向にオフセットして配備するようにしているので、第1の軸受の回転中心とリンクとが一直線上に位置した場合であっても、リンク自体の受動的な姿勢変化の自由度を確実に維持することができる。
【0029】
更に、リンクを伸縮させるための駆動機構を第2の軸受の回転軸に一体的に配備することによってベースプレートとトラべリングプレートとの間の接続部のノードやスライド部の数を減らすようにしているので、構造上のがたつきがなくなり、パラレルリンク機構全体の組立て精度や動作精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の継手構造をYAGレーザーロボットのパラレルリンク機構に適用した場合の一実施形態について示す斜視図である。
【図2】同実施形態における固定側継手(継手構造)と駆動機構の要部を取り出して詳細に示す斜視図である。
【図3】同実施形態における可動側継手(継手構造)を取り出して詳細に示す斜視図である。
【図4】他の実施形態における固定側継手(継手構造)を示す斜視図である。
【図5】他の実施形態における可動側継手(継手構造)を示す斜視図である。
【図6】本発明の継手構造を溶接ロボットのパラレルリンク機構に適用した場合の一実施形態について示す斜視図である。
【符号の説明】
1 脚
2 ベースプレート
3 トラべリングプレート
4 リンク
4a ボールネジ部
5 駆動機構
6 固定側継手(継手構造)
7 可動側継手(継手構造)
8 回転軸(第1の軸受の回転軸)
9 第1の軸受
10 回転軸(第2の軸受の回転軸)
11 第2の軸受
11a 舌片
12 孔
13 ブッシュ
14 スリーブ
14a 円柱突起
15 減速機構部
16 サーボモータ
17 回転軸(第1の軸受の回転軸)
18 第1の軸受
19 回転軸(第2の軸受の回転軸)
20 第2の軸受
20a 舌片
21 スリーブ
22 孔
23 ブッシュ
24 長尺スリーブ
Claims (3)
- ベースプレートとトラベリングプレートとの間を接続する複数のリンクを協調させて伸縮することによってベースプレートに対するトラべリングプレートの位置および姿勢を変化させるようにしたパラレルリンク機構に用いられる継手構造であって、前記ベースプレートまたは前記トラべリングプレートのプレートの面に対して垂直な軸の周りに回転する回転軸を有する第1の軸受と、該プレートの面に対して略平行な軸の周りに回転する回転軸を有し、前記プレートの厚み方向に重合させて前記第1の軸受の回転軸に一体で前記第 1 の軸受の回転軸の回転中心から径方向にオフセットして配備された第2の軸受の回転軸に略直交させてパラレルリンク機構のリンクを接続したことを特徴とするパラレルリンク機構の継手構造。
- 前記第2の軸受の回転軸に、前記リンクを伸縮させるための駆動機構を一体的に配備したことを特徴とする請求項1記載のパラレルリンク機構の継手構造。
- 前記駆動機構は、第2の軸受けの回転軸上に設けられた駆動源と該駆動源の回転出力を直線運動に変換するボールネジ/ナット機構によって構成されていることを特徴とする請求項2記載のパラレルリンク機構の継手構造。
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