JP3731482B2 - 強電系バッテリの電圧センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電気自動車を駆動するモータ用など強電系バッテリの電圧を測定する電圧センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車では、モータの駆動電源を複数の単位バッテリで構成した強電系バッテリから供給して走行するが、その適正な充放電と、利用可能電力の正確な把握のために、電圧管理が必要となっている。
このような強電系バッテリの電圧を測定するため、例えば、特開平11−230997号公報には、安定化電源とフォトカプラを用いた電圧センサが開示されている。
【0003】
この電圧センサは、図7に示すように、強電系バッテリを構成する単位バッテリ2の電圧を安定化する安定化電源60の出力で発光する発光ダイオード64と、発光ダイオード64からの光を受光する第1のフォトダイオード66を有し、抵抗70、71による単位バッテリ2の分圧値と第1のフォトダイオード66からの帰還電圧とを差動増幅するオペアンプ74により発光ダイオード64の発光出力を制御する。そして、発光ダイオード64からの光を受光する第2のフォトダイオード68を設け、第2のフォトダイオード68の受光出力を弱電系の電源で駆動されるオペアンプ76で積分して、その積分電圧をバッテリの検出電圧とするようにしている。
強電系バッテリの総電圧を検出するときは、各単位バッテリ2ごとに上記の構成が設けられる。
発光ダイオード64と第2のフォトダイオード68によるフォトカプラ62で、強電系と弱電系が遮断され、強電系の直流電流が弱電系へ漏れてノイズ等が発生することが防止される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の電圧センサでは、強電系と弱電系の間を絶縁するために、発光ダイオード64と第2のフォトダイオード68とからなるフォトカプラ62を用いており、このフォトカプラは経年劣化が生じるため、その劣化によって光−発生電圧の特性が変化していくので、変動予測やその抑制策が要求される。そのため、例えばとくに劣化の加速要因である周囲環境の温度低減のための冷却構造の設定や、その実験による確認など、構造複雑化および工数にかかるコストが増大するという問題がある。
したがって本発明は、上記従来の問題点に鑑み、経年劣化のおそれがなく、構成が簡単な強電系バッテリの電圧センサを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の本発明は、強電系バッテリに接続されたスイッチング手段と、該スイッチング手段に接続されたハイパスフィルタ部と、該ハイパスフィルタ部に接続された測定部とを有し、ハイパスフィルタ部はスイッチング手段の出力をコンデンサで分圧する分圧手段を備え、スイッチング手段はハイパスフィルタ部のカットオフ周波数以上の周波数で、強電系バッテリの直流電圧を断続電圧に変換し、測定部はハイパスフィルタ部で分圧された出力電圧を測定して、その測定電圧を基に強電系バッテリの電圧を演算するものとした。
【0006】
請求項2の発明は、ハイパスフィルタ部と測定部との間に、ツエナダイオードを備える保護回路を設けてあるものとした。
【0007】
請求項3の発明は、スイッチング手段を、強電系バッテリとハイパスフィルタ部の間に設けられたスイッチング部と、該スイッチング部にカットオフ周波数以上のオン/オフ制御信号を送る制御手段とから構成し、制御手段はさらに診断機能を備え、測定部から測定電圧を受けて、異常診断を行うものとした。
【0008】
請求項4の発明は、強電系バッテリはモータの駆動電源であり、制御手段は測定電圧が正常範囲より高電圧の設定値を越えたときにおいて、モータが回生中の場合は過電圧抑制指令を強電系バッテリの充放電制御を行うバッテリコントローラへ出力するものとした。
【0009】
請求項5の発明は、制御手段が、診断用信号として、スイッチング部をカットオフ周波数以上の周波数でオン/オフさせる制御信号のほか、スイッチング部をオン状態、またはオフ状態にする制御信号をスイッチング部へ出力するものとした。
【0010】
【発明の効果】
請求項1の発明は、強電系バッテリの直流電圧をスイッチング手段により断続電圧に変換して擬似AC化し、これをハイパスフィルタ部のコンデンサによる分圧手段で分圧した電圧を測定部が測定するものとしたので、フォトカプラを用いないでも、高圧直流の弱電系の測定部への印加が遮断される。同じく、分圧に抵抗を用いないので、暗電流も低減し、損失も小さくなる。
また、強電系バッテリの電圧の処理はスイッチング手段で断続するだけであるから、高耐圧化が容易であるとともに、強電系における安定化電源も不要である。さらに、測定部への入力電圧のレベル調整も断続のデューティやコンデンサの容量比変更で、容易に行うことができる。
これにより、フォトカプラを用いることによる経年劣化を生じることがなく、構成が簡単化されて小型化が容易で、コストも低減する。
【0011】
請求項2の発明は、ハイパスフィルタ部と測定部との間にツエナダイオードを備える保護回路を設けたので、ハイパスフィルタ部のコンデンサがショート故障した場合にも、測定部への印加電圧がツエナダイオードのクランプ圧に抑えられ、測定部ほかの弱電系への影響が防止される。
【0012】
請求項3の発明は、スイッチング手段をとくにスイッチング部と制御手段とから構成し、制御手段はさらに診断機能を備え、測定部の測定電圧に基づいて異常診断を行うものとしたので、異常がある場合、測定電圧の態様からその異常の部位を特定することが容易となる。
例えば、測定電圧が正常範囲から逸脱することにより、強電系バッテリが低圧異常あるいは高圧異常であることが検出される。とくに、低圧の場合において、測定電圧の波形がインパルス状となっているときは、カットオフ周波数に達していないことから、制御手段自体またはスイッチング部に異常があることがわかる。
また、測定電圧がツエナダイオードのクランプ圧に張り付くことにより、ハイパスフィルタ部のコンデンサのショート故障が検出される。
【0013】
請求項4の発明では、強電系バッテリはモータの駆動電源であり、測定電圧が正常範囲の上限を超えた場合において、さらに高電圧の設定値を測定電圧が越えたときは、モータの回生電圧が強電系バッテリへ印加されていないかを確認し、回生中の場合は過電圧抑制指令を強電系バッテリの充放電制御を行うバッテリコントローラへ出力するので、異常状態の原因を明らかにできるとともに、強電系バッテリへの印加電圧を正常範囲へ下げることができる。
【0014】
請求項5の発明は、制御手段がスイッチング部をオン状態、またはオフ状態にする診断用信号をスイッチング部へ出力可能としたので、診断用信号に対応する測定電圧の態様からさらに広く異常が検出でき、部位を特定することができる。
例えば、スイッチング部をオフ状態にする診断用信号の出力に対して、測定電圧が0になるべきであるにもかかわらず、測定電圧が所定値を越えたときには、スイッチング部または測定部に異常があることがわかる。
また、カットオフ周波数以上の周波数でスイッチング部をオン/オフさせるまえに、スイッチング部をオン状態にすることにより、この場合も測定電圧が0になるべきであるにかかわらず、測定電圧が所定値を越えたときには、ハイパスフィルタ部のコンデンサにショート故障があることが初期段階で検出できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態の構成を示すブロック図である。
複数の単位バッテリ2(2a、2b、・・・)を直列接続して組電池とした強電系バッテリ1の両端子間にスイッチング部10が接続され、スイッチング部10には順次にハイパスフィルタ部20、保護回路30、およびCPUを備えたバッテリコントローラ40の測定部42が接続されている。
バッテリコントローラ40にはまた他のCPUを備えた診断部50が接続され、診断部50はスイッチング部10へ診断用信号を出力するようになっている。
バッテリコントローラ40と診断部50は図示しない弱電系電源で作動する。また、バッテリコントローラ40は検出した強電系バッテリ1の電圧情報をモータコントローラ55へ出力し、診断部50もモータコントローラ55に接続されている。
【0016】
スイッチング部10は、強電系バッテリ1のプラス(+)側端子にエミッタを接続したトランジスタ12と、トランジスタ12のベースに抵抗14を介してコレクタを接続したトランジスタ16とからなっている。
トランジスタ12のエミッタとベースの間には抵抗13が接続され、コレクタはハイパスフィルタ部20への出力となる。
【0017】
トランジスタ16のエミッタは強電系バッテリのマイナス(−)側端子につながるグラウンドGNDに接続され、またエミッタとベースの間は抵抗17で接続されている。トランジスタ16のベースは抵抗18を介して診断部50に接続され、診断用信号を入力する。
なお、上記の抵抗13、17は、診断部50から後述するH(ハイ)信号を受けたとき、それぞれにベースにバイアスを印加するためのものである。
【0018】
ハイパスフィルタ部20は、トランジスタ12のコレクタと接続されたセラミックのコンデンサ22と該コンデンサ22とグラウンドGND間に接続された抵抗26からなるフィルタ回路21を有し、さらに、コンデンサ22と抵抗26との接続点とグラウンドGNDの間にはセラミックのコンデンサ24が接続されている。
コンデンサ22、24の各容量をC1、C2とし、抵抗26の抵抗値をR1とすると、フィルタ回路21のカットオフ周波数fcは、
fc=1/(C1・R1) (1)
となる。
また、ハイパスフィルタ部20内では、コンデンサ22とコンデンサ24により分圧回路28が形成されている。この分圧回路28は発明における分圧手段を構成している。
【0019】
保護回路30は、コンデンサ22と抵抗26の接続点に接続された抵抗32と、該抵抗32とグラウンドGNDの間に接続されたツエナダイオード34からなっている。
ツエナダイオード34のクランプ圧Vzはバッテリコントローラ40の入力耐圧に対応させて設定され、ハイパスフィルタ部20のコンデンサ22がショートした際バッテリコントローラ40を保護する。
抵抗32とツエナダイオード34の接続点は、バッテリコントローラ40の測定部42の電圧測定端子ADに接続されている。
【0020】
診断部50は、通常はカットオフ周波数fc以上の制御信号をスイッチング部10へ出力し、バッテリコントローラ40は、測定部42による電圧測定端子ADの電圧測定結果に基づいて強電系バッテリ1の電圧を演算して、その結果をモータコントローラ55へ出力するとともに、強電系バッテリ1の制御に用いる。
【0021】
診断に際しては、バッテリコントローラ40は、電圧測定端子ADへの入力波形とともにその電圧測定結果を診断部50に送出する。診断部50は電圧測定結果を診断用信号の出力状態と照合して、異常の有無を判断し、診断結果としてバッテリコントローラ40へ出力する。
バッテリコントローラ40は、正常状態での電圧測定結果を基に、強電系バッテリ1の充放電制御等を行う一方、例えば高圧異常時にはシステム保護のため制御を停止するなど、異常の内容に応じた処置を行う。
本実施の形態では、診断部50とスイッチング部10とで、発明におけるスイッチング手段を構成し、とくに診断部50は制御手段を構成している。
【0022】
以上の構成において、診断部50が診断用信号として、H(ハイ)、L(ロウ)交互のパルスをスイッチング部10へ出力すると、スイッチング部10では、診断用信号がHのときトランジスタ12、16がそれぞれON(オン)、診断用信号がLのときトランジスタ12、16がそれぞれOFF(オフ)に変化し、擬似的なAC電圧が生成される。
ハイパスフィルタ部20のフィルタ回路21によって、DC電圧の通過は阻止されるが、診断用信号がカットオフ周波数fc以上であれば、擬似的なAC電圧は保護回路30を経てバッテリコントローラ40の電圧測定端子ADに入力される。
【0023】
この間、擬似的なAC電圧はハイパスフィルタ部20の分圧回路28により、バッテリコントローラ40の測定範囲レベルに低下される。
強電系バッテリ1の総電圧をVbとし、スイッチング部10のトランジスタ12のON時間をTon、OFF時間をToffとすると、ハイパスフィルタ部20の出力電圧Voutは、次式(2)で表わされる。
Figure 0003731482
ただし、Vcはスイッチング部10の出力電圧で、正常時はVc=Vbである。
【0024】
本実施の形態では、強電系バッテリ1の総電圧をVb=400Vとし、コンデンサ22の容量はC1=0.01μF、コンデンサ24はC2=1μFに設定され、また、抵抗はR1=10KΩに設定されている。
また、保護回路30のツエナダイオード34のクランプ圧は、Vz=6.2Vとしてある。
ハイパスフィルタ部20のカットオフ周波数は、
fc=1/(0.01μF×10KΩ)=10KHz
である。
【0025】
また、スイッチング部10におけるオン/オフ制御のデューティを50%として、ハイパスフィルタ部20の出力電圧Voutは、
Figure 0003731482
となる。
図2は、10KHz、デューティ50%でオン/オフ制御したときの、正常時におけるスイッチング部10の出力(Vc)とハイパスフィルタ部20の出力(Vout)を示している。
【0026】
なお、ハイパスフィルタ部20への入力がカットオフ周波数fcより低い場合には、図3に示すように、ハイパスフィルタ部20の出力(Vout)としてパルスの立ち上がりおよび立下り時にのみインパルス状の電圧が発生し、そのピーク電圧は、Vc・(C1/C2)となる。なお、図3はオン/オフ制御の周波数がカットオフ周波数より低い1Hzの場合を示している。
【0027】
以下、本実施の形態における制御の流れを図4、図5のフローチャートにより説明する。
この制御は電気自動車の図示しないイグニションスイッチがONされることにより開始される。
まず、ステップ101において、診断部50は、変数の初期値を設定したあと、ステップ102で、診断用信号としてL信号をスイッチング部10へ出力し、トランジスタ12、16をOFFさせる。すなわちスイッチング部10をOFFとする。
【0028】
ステップ103で、バッテリコントローラ40はその電圧測定端子ADに入力された電圧VADを測定して、測定結果を診断部50へ出力する。
スイッチング部10からハイパスフィルタ部20を経て測定部42までの系統が正常であれば、測定電圧(測定結果)VsはVADに等しく、また電圧VADは上記のVoutに等しい。
【0029】
診断部50は、ステップ104で、測定電圧Vsが所定値V1以下であるかどうかをチェックする。トランジスタ12がOFF、すなわちスイッチング部10がOFFであれば強電系バッテリ1からの電源は遮断され、Vs=0となる。ここでは、ノイズ等を考慮して、所定値は例えばV1=0.5Vに設定される。
測定電圧VsがV1以下であるときはステップ105へ進む。
【0030】
ステップ105では、診断用信号としてH信号をスイッチング部10へ出力し、トランジスタ12をONさせ、続いてステップ106において、バッテリコントローラ40はその電圧測定端子ADの入力電圧を測定して、測定電圧Vsを診断部50へ出力する。
ステップ107では、診断部50において、測定電圧Vsが所定値V1以下であるかどうかをチェックする。
スイッチング部10がONのままであるときも、ハイパスフィルタ部20によって強電系バッテリ1からの直流は遮断されるから、Vs=0となる。したがってここでも所定値V1=0.5Vを基準値として用いている。
測定電圧VsがV1以下であるときはステップ108へ進む。
【0031】
ステップ108では、診断部50は診断用信号として周波数10KHz、デューティ50%の制御パルスを出力開始する。
そして、つぎのステップ109で、測定部42は電圧測定端子ADの入力電圧の10msec分を取り込み、その平均値として測定電圧Vsを求める。なお、この10msecは擬似的なAC入力が確保される範囲で増減できる。
ステップ110において、診断部50は、この測定電圧Vsが所定値V2=1V以上であるかどうかをチェックする。
上記のV2=1VはVc=200Vに相当し、これより低いときには強電系バッテリの電圧が異常に低いことになる。
測定電圧VsがV2以上であるときはステップ111へ進む。
【0032】
ステップ111では、測定電圧Vsが所定値V3=2.1V以下であるかどうかをチェックする。このV3=2.1VはVc=420Vに相当し、これより高いときには強電系バッテリの電圧が異常に高いことになる。
測定電圧VsがV3以下であるときは、ステップ112において正常である旨の診断結果をバッテリコントローラ40へ送出する。そして、ステップ113では、バッテリコントローラ40が上記測定電圧Vsを基に、前述の式(2)からVcを逆算して、このVcを強電系バッテリ1の総電圧Vbの測定結果とする。この測定結果は、要求に応じてモータコントローラ55へ出力される。
以上が正常時の流れである。
【0033】
つぎに、ステップ104のチェックで測定電圧VsがV1を越えているときは、診断部50では、ステップ114へ進んでmの値を1だけインクリメントし、ステップ115でmが3以下であるかをチェックする。mが3以下の間はステップ103へ戻る。これは3回のチェックを行って同じ状態が続いていることを確認するためである。
ステップ103、104、114、115が繰り返されてmが3を越えたときには、スイッチング部10の故障か、あるいは測定部42の故障と判断できるので、ステップ116へ進んで、バッテリコントローラ40へ第1種異常としてスイッチング部10または測定部42が異常である旨の診断結果を送出する。
【0034】
また、ステップ107のチェックで測定電圧VsがV1を越えているときは、診断部50では、ステップ117へ進んでnの値を1だけインクリメントし、ステップ118でnが3以下であるかをチェックする。nが3以下の間はステップ106へ戻る。
ステップ106、107、117、118が繰り返されてnが3を越えたときには、ハイパスフィルタ部20のコンデンサ22のショート故障と判断できる。この場合、ステップ119へ進んで、バッテリコントローラ40へ第2種異常として、コンデンサ22がショートの旨の診断結果を送出する。
【0035】
なお、コンデンサ22がショートすると、スイッチング部10が繰り返しのオン/オフ制御をしたときには、測定電圧Vsは、図6に示すVoutのように、ツエナダイオード34のクランプ圧Vz(=6.2V)に張り付く。したがってこの現象からもコンデンサ22のショート故障が検知できる。
図6は、10KHz、デューティ50%でオン/オフ制御したときのスイッチング部10の出力(Vc)とハイパスフィルタ部20の出力(Vout)を示す。
【0036】
ステップ110のチェックでVsがV2より低いときは、診断部50では、ステップ120へ進んでpの値を1だけインクリメントし、ステップ121でpが3以下であるかをチェックする。pが3以下の間はステップ109へ戻る。
ステップ109、110、120、121が繰り返されてpが3を越えたときには、ステップ122へ進み、電圧測定端子ADへの入力波形がインパルス状でないかどうかをチェックする。
入力波形が図3に示すVoutのようなインパルス状である場合は、ステップ123へ進み、第3種異常として診断部50またはスイッチング部10の異常の旨の診断結果をバッテリコントローラ40へ送出する。
【0037】
ステップ122のチェックで入力波形がインパルス状でない場合は、スイッチング部10の機能に問題はないことになる。このときは、ステップ124へ進み、第4種異常として強電系バッテリ1が低圧である電圧異常または接続不良の旨の診断結果をバッテリコントローラ40へ送出する。
【0038】
ステップ111のチェックで測定電圧Vsが所定値V3を越えているときは、ステップ125へ進んで、rの値を1だけインクリメントし、ステップ126でrが3以下であるかをチェックする。rが3以下の間はステップ109へ戻る。ステップ109、111、125、126が繰り返されてrが3を越えたときには、ステップ127へ進み、測定電圧Vsが所定値V4以上であるかどうかをチェックする。所定値V4は、モータからの回生発電による電圧がかかっているかどうかの可能性を確認するため、例えばV4=3.5Vに設定される。この値はVc=700Vに相当する。
【0039】
測定電圧VsがV4以上である場合は、ステップ128でモータが回生中であるかどうかをチェックする。
モータが回生中であれば、ステップ129に進み、過電圧抑制指令をバッテリコントローラ40へ送出したあと、ステップ109へ戻る。
他方、ステップ127のチェックで測定電圧VsがV4より低い場合、あるいはステップ128のチェックでモータが回生中ではなかった場合には、ステップ130へ進み、第5種異常として強電系バッテリ1が高圧である電圧異常の旨の診断結果をバッテリコントローラ40へ送出する。
バッテリコントローラ40では、診断部50から上記の第1種異常から第5種異常の診断結果を受けると、一旦本制御フローを終了して、それぞれの異常状態に対応した処置を実行し、状況に応じて再開する。
【0040】
本実施の形態は以上のように構成され、強電系バッテリ1の電圧をスイッチング部10で擬似的なAC電圧に変換し、コンデンサによる分圧回路を備えるハイパスフィルタ部20で低電圧に分圧したものに基づいて測定部42で測定するものとしたので、簡単な構成で弱電系の測定部を直流高電圧から遮断でき、暗電流も低減する。
【0041】
また、フォトカプラやオペアンプも要しないので、各構成部品の高耐圧化も容易である。そして従来のような直流高圧を大型の抵抗を用いてフォトカプラやオペアンプの差動電圧まで降圧することによる電力損失からも解放され、小型化とコスト低減が図れる。
さらに、電圧変動の大きい強電系バッテリに対して高精度の動作電圧を要するフォトカプラのための安定化電源などコストのかかる回路も要しない。
【0042】
さらに、ハイパスフィルタ部20では、コンデンサ12、16の容量の比で分圧するとともに、ハイパスフィルタ部20の出力電圧はデューティによって決定されるので、測定電圧の設定変更をコンデンサの容量比やスイッチング部10のデューティを変化させることにより、容易に行うことができる。
また、コンデンサ12、16をセラミックコンデンサとすることにより、経年劣化がとくに少なく、周囲環境の温度によって寿命が変化し難いので、冷却構造を簡略し、実験確認の工数を低減することができる。
【0043】
また診断機能として、測定電圧から強電系バッテリの高圧または低圧に過ぎる電圧異常を検出するほか、コンデンサを備えるハイパスフィルタ部20の特性を利用して、イグニションスイッチ投入当初に、スイッチング部10の動作をOFF状態あるいはON状態に切り替えて測定電圧をチェックすることにより、ハイパスフィルタ部あるいは測定部の異常を他と識別して事前に検出することができる。
同じくハイパスフィルタ部20のカットオフ周波数に基づいて、スイッチング部10やこれを制御する診断部50の異常も検出できる。
したがって、点検・保守作業も簡単となる。
【0044】
なお、実施の形態では強電系バッテリ1の総電圧を検出する例について説明したが、強電系バッテリ1を構成する各単位バッテリの電圧を検出する場合についても、その検出電圧が異なるだけで、本発明をそのまま適用することができる。また、測定部42をバッテリコントローラ40内に構成したものとしたが、これに限定されず、測定部42をバッテリコントローラから独立したものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】正常時におけるスイッチング部とハイパスフィルタ部の出力を示す波形図である。
【図3】カットオフ周波数fcより低いときのスイッチング部とハイパスフィルタ部の出力を示す波形図である。
【図4】診断制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】診断制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】ハイパスフィルタ部のコンデンサがショートしたときのスイッチング部とハイパスフィルタ部の出力を示す波形図である。
【図7】従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 強電系バッテリ
2a、2b 単位バッテリ
10 スイッチング部
12、16 トランジスタ
13、14、17、18 抵抗
20 ハイパスフィルタ部
21 フィルタ回路
22、24 コンデンサ
26 抵抗
28 分圧回路(分圧手段)
30 保護回路
32 抵抗
34 ツエナダイオード
40 バッテリコントローラ
42 測定部
50 診断部(制御手段)
55 モータコントローラ

Claims (5)

  1. 強電系バッテリに接続されたスイッチング手段と、
    該スイッチング手段に接続されたハイパスフィルタ部と、
    該ハイパスフィルタ部に接続された測定部とを有し、
    前記ハイパスフィルタ部はスイッチング手段の出力をコンデンサで分圧する分圧手段を備え、
    前記スイッチング手段は前記ハイパスフィルタ部のカットオフ周波数以上の周波数で、前記強電系バッテリの直流電圧を断続電圧に変換し、
    前記測定部は前記ハイパスフィルタ部で分圧された出力電圧を測定して、その測定電圧を基に前記強電系バッテリの電圧を演算することを特徴とする強電系バッテリの電圧センサ。
  2. 前記ハイパスフィルタ部と測定部との間に、ツエナダイオードを備える保護回路を設けてあることを特徴とする請求項1記載の強電系バッテリの電圧センサ。
  3. 前記スイッチング手段は、前記強電系バッテリとハイパスフィルタ部の間に設けられたスイッチング部と、該スイッチング部に前記カットオフ周波数以上のオン/オフ制御信号を送る制御手段とからなり、
    該制御手段は診断機能を備え、前記測定部から測定電圧を受けて、異常診断を行うことを特徴とする請求項1または2記載の強電系バッテリの電圧センサ。
  4. 前記強電系バッテリはモータの駆動電源であり、
    前記制御手段は前記測定電圧が正常範囲より高電圧の設定値を越えたときにおいて、前記モータが回生中の場合は過電圧抑制指令を前記強電系バッテリの充放電制御を行うバッテリコントローラへ出力することを特徴とする請求項3記載の強電系バッテリの電圧センサ。
  5. 前記制御手段は、診断用信号として、前記スイッチング部を前記カットオフ周波数以上の周波数でオン/オフさせる制御信号のほか、スイッチング部をオン状態、またはオフ状態にする制御信号をスイッチング部へ出力することを特徴とする請求項3または4記載の強電系バッテリの電圧センサ。
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