JP3731257B2 - オゾン水脱臭方法及び脱臭装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオゾン水を用いた脱臭処理空間の脱臭方法及びオゾン水による脱臭装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、オゾンガス(O3 )には強力な殺菌、酸化分解力を有することから、これらの性質を利用して任意空間の消毒、脱臭を行う方法が用いられている。例えば、食品倉庫や病院等の無臭無菌状態が望まれる空間においては、その窓やドアーの部分に目張りをした後、オゾナイザー等と称されるオゾン発生装置により、これらの空間にオゾンガスを発生させてその空間内を消毒すると共に悪臭成分を脱臭するようにしている。また、生ゴミ等を一時的に貯蔵しておくゴミビット等においては、発生した悪臭ガスを吸引機等によってチャンバーに引き込み、オゾンガスと混合して脱臭した後、大気中に放出することで悪臭拡散による周辺環境の悪化を未然に防止するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなガス状のオゾンは反応性が低いため、充分な殺菌、脱臭を行うためには反応時間に長時間を要するといった欠点があった。しかも、ガス状であることから病棟などの居室を殺菌、脱臭する場合にはそのドアや窓を確実に目張りしないとその隙間からオゾンガスが洩れ出してオゾン特有の刺激臭が発生したり、周囲の人に悪影響を及ぼすおそれもあった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は脱臭効率を大幅に向上させて短時間で脱臭を行うことができる新規なオゾン水脱臭方法及び脱臭装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、オゾン水を脱臭処理空間内に霧状に噴霧し、その噴霧されたオゾン水に紫外線を照射してヒドロキシルラジカル(OHラジカル)を多量に発生させ、これらを上記空間内に所定時間滞留させて空間内を脱臭するようにしたものである。すなわち、オゾンの反応性はガスの状態よりもオゾン水の状態の方が、また、ガス状であっても湿度が高い方が反応性に優れていることから、オゾン水を霧状に噴霧することで脱臭処理空間内の悪臭に対して高い脱臭効果を得ることができる。しかも、霧状とすることにより、脱臭対象空間全体にオゾン水をムラなく拡散することができる上、ガス状オゾンに比べ目張りなどから洩れにくくなるため、周囲に悪影響を及ぼすおそれが少ない。
【0006】
また、このようにしてオゾン水を噴霧するに際しては、噴霧ノズルや超音波振動子等のオゾン噴霧手段を用いることにより、粒径が微細なオゾンの水滴が得られるため、オゾン水の水滴の滞留時間が長くなると共に、悪臭成分とオゾン水滴との接触率が向上して脱臭効果を大きく向上させることができる。
【0007】
また、このようにして噴霧した後の霧状のオゾン水に紫外線を照射して酸化分解力に優れているOHラジカルを多量に発生させることで、さらに脱臭効果を大幅に向上させることができる。すなわち、オゾン水中には、オゾンガスが水中に溶け込んだ際に、酸化分解力が非常に強力なヒドロキシルラジカル(以下OHラジカルと称す)が多少生成されるようになっているが、霧状に噴霧されたオゾン水に紫外線を照射することによってこのOHラジカルが多量に発生し、オゾン水の酸化分解力が大幅に向上される。これによって、オゾンだけでは分解することができないアルコール類や低級脂肪酸等の悪臭成分をも効果的に酸化分解して消臭することができる。
【0008】
また、このOHラジカルはオゾン水と過酸化水素水(H2 O2 )とを反応させたり、オゾン水中の水酸化物イオン濃度を高めることによっても多量に発生させることができるため、上記のように紫外線照射と同時に、あるいは単独で脱臭対象空間内に噴霧することで、効果的な脱臭を行うことができる。
【0009】
そして、これらの脱臭方法を実現するための具体的装置としては、高濃度のオゾン水を製造するオゾン水製造装置と、このオゾン水を所定の空間内に霧状に噴霧する噴霧手段と、噴霧されたオゾン水中に紫外線を照射する紫外線照射ランプとを備えてなるもの、または、これらの他にさらに過酸化水素水噴霧手段とを備えてなるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を好適実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は本発明に係るオゾン水脱臭方法及びオゾン脱臭装置の実施の一形態を示したものであり、図中1は密閉区画された脱臭処理空間、2はオゾン水を製造するオゾン水製造装置、3は脱臭処理空間の天井部付近に設けられた噴霧手段である。
【0012】
先ず、このオゾン水製造装置2は高濃度のオゾン水を連続的に製造できるものであれば良く、従来から用いられているものをそのまま利用することができる。例えば、従来のオゾン水製造装置の一つとしては、図2に示すように、無声放電により空気中の酸素からオゾンを生成するオゾナイザー4に、エジェクタ6を介して原料水(水道水等)を供給して原料水中にオゾンを溶解させてオゾン水を形成し、このオゾン水をオゾン水タンク7に一時的に貯留しておき、このオゾン水をポンプ8によって上記噴霧手段3側に供給するようになっている。
【0013】
そして、図1に示すように、このようなオゾン水製造装置2によって形成されたオゾン水を噴霧手段3である噴霧ノズル3によって脱臭処理空間1の天井部付近から霧状に噴霧することで、脱臭処理空間1内の全体に亘って滞留するようにオゾン水が存在することとなり、効果的な脱臭が行われる。また、このオゾン水の反応性はガス状のオゾンよりも高く、また、ガス状のオゾンであっても湿度が高い方が反応性が高いことから、オゾンガスがオゾン水から揮発した場合であっても高湿度下で反応が行われるため、従来のオゾンガスに比べて効果的な酸化分解反応が行われ脱臭処理を大幅に短縮することができる。尚、このオゾン水の噴霧手段3はできるだけ微細なオゾン水滴が得られれば、本実施の形態に限定されるものではなく、例えば、加湿器のように、上述した噴霧ノズルに代えてオゾン水受皿を設け、このオゾン水受皿内に超音波振動子を収容してオゾン水受皿内のオゾン水を霧状に拡散させるようにしても良い。また、このオゾン水の噴霧は、脱臭処理空間1内にまんべんなく行われるようにすれば、図3に示すように垂直壁面方向から噴霧したり、多数の噴霧手段3を設けて複数箇所から噴霧を行うようにしても良い。また、このオゾン水による脱臭処理時において、図1に示すように脱臭処理空間1内を若干負圧になるようにファン10で引くことで、脱臭処理空間1の目張りや隙間からのオゾン水及び揮発したオゾンガスの漏れなどを未然に防止するようにしても良い。また、この時、吸引した排気ガス中にオゾンガスが多く含まれる場合には、吸引ダクト12にオゾンキラーなどと称されるオゾン分解手段11を設けておき、排気ガス中のオゾンを分解処理してから排気するようにしておくことは勿論である。
【0014】
次に、図1に示すように、脱臭処理空間1内に設けた紫外線照射ランプ5から、この空間1内に噴霧されたオゾン水に対して紫外線を照射することで、酸化分解力が非常に強力なOHラジカルがオゾン水中に大量に生成される。これによって、脱臭能力が大幅に向上される。
【0015】
すなわち、オゾンに紫外線(hv<310nm)を照射してオゾンを紫外線分解すると、励起酸素原子(1D)が生成され(O3→O2+O(1D))、これが水と反応してOHラジカルが生成された(O(1D)+H2O→2HO・)後、生成されたOHラジカルはさらにオゾンと反応してHO2ラジカルとなり(HO・+O3→HO2 ・+O2)、このHO2ラジカルがオゾンと反応して再びOHラジカルを生成するという連鎖反応系が形成されることになる(HO2 ・+O3→HO・+O2)。そして、このOHラジカルは、オゾンだけでは分解できないアルコール類や低級脂肪酸などの難分解性有機化合物に対して優れた反応速度定数を有していることから、このOHラジカルを積極的に発生させてオゾン水と共に用いることで優れた脱臭効果を発揮することが可能となる。
【0016】
次に、図4は上述した実施の形態にさらに過酸化水素水噴霧手段を加えたものである。これは、過酸化水素水(H2 O2 )が収容されたタンク9に上述した噴霧手段3を接続したものであり、オゾン水と共に過酸化水素水を脱臭処理空間1内に噴霧することで、過酸化水素水の脱臭殺菌能力に加えて、OHラジカルの発生量を増大させて脱臭効果をさらに向上させたものである。すなわち、この脱臭方法は、以下の式に示すように、オゾンの光分解と過酸化水素とオゾンの反応の2つを組み合わせてなるものであり、過酸化水素が解離してできるHO2 - とオゾンを反応させてOHラジカルとHO2 ラジカルとを生成させ、この反応を導入としてオゾンが介在するOHラジカルとHO2 ラジカルの連鎖反応系を形成したものである。
【0017】
hv<310nm
O3 →O2 +O( 1 D)
O( 1 D) +H2 O→2HO・
H2 O2 +H2 O←→H3 O+ +HO2 -
O3 +HO2 - +H+ →HO・ +HO2 ・ +O2
HO・ +O3 →HO2 ・ +O2
HO2 ・ +O3 →HO・ +O2
HO・ +H2 O2 →HO2 ・ +O2
尚、このOHラジカルは上述したように紫外線や過酸化水素水を用いる他に、オゾン水のpHを上げて水酸イオン濃度を高めることによっても、以下に示すようにラジカル連鎖反応系が形成されることから、図2に示すように、噴霧される前のオゾン水中に所定量のアルカリ剤を投入してオゾン水中の水酸イオン濃度を高めておくようにしても良い。
【0018】
OH- +O3 →O2 ・-+HO2 ・
HO・ +O3 →HO2 ・ +O2
HO2 ・ +O3 →HO・ +O2
また、このようなオゾン水あるいは過酸化水素水を噴霧するに際して、噴霧液体の粒径はできるだけ微細なほうが好ましいことから、例えば、図5に示すように二流体式の噴霧ノズル14,15を用い、コンプレッサ13によって脱臭処理空間1内の噴霧ガスと共に強制的に噴霧させるようにしても良い。さらに、オゾン水製造時に未溶解オゾンが発生した場合には、図示するように、このオゾンガスをコンプレッサ13側に引き込み、オゾン側噴霧ノズル15の噴霧ガスとして用いれば、さらに効果的な脱臭処理作業を行うことが可能となる。さらにOHラジカルを発生させるに際しては、上述したような方法を必要に応じてそれぞれ単独であるいは複合して用いるようにすることは勿論である。
【0019】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、反応性に優れたオゾン水を噴霧し、その噴霧されたオゾン水に紫外線を照射し、オゾン水中にヒドロキシラジカル(OHラジカル)を多量に発生させるようにしたことから、脱臭処理空間内の脱臭処理を短時間でかつ確実に行うことができる等といった優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示す説明図である。
【図2】本発明に用いるオゾン水製造装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の他の実施の形態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 脱臭処理空間
2 オゾン水製造装置
3 噴霧手段
5 紫外線照射ランプ
Claims (6)
- オゾン水を脱臭処理空間内に霧状に噴霧し、その噴霧されたオゾン水に紫外線を照射してヒドロキシルラジカル(OHラジカル)を多量に発生させ、これらを上記空間内に所定時間滞留させて空間内を脱臭するようにしたことを特徴とするオゾン水脱臭方法。
- オゾン水及び過酸化水素水を脱臭処理空間内に霧状に噴霧し、その噴霧されたオゾン水及び過酸化水素水に紫外線を照射してヒドロキシルラジカル(OHラジカル)を多量に発生させ、これらを上記空間内に所定時間滞留させて空間内を脱臭するようにしたことを特徴とするオゾン水脱臭方法。
- 上記オゾン水に、pHを高めるべくアルカリ剤を添加して水酸イオン濃度を高めてヒドロキシルラジカル(OHラジカル)を多量に発生させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のオゾン水脱臭方法。
- 上記オゾン水又は過酸化水素水を噴霧するに際して噴霧ノズル又は超音波振動子を用いたことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のオゾン水脱臭方法。
- 高濃度のオゾン水を製造するオゾン水製造装置と、このオゾン水を脱臭処理空間内に霧状に噴霧する噴霧手段と、噴霧されたオゾン水に紫外線を照射する紫外線照射ランプとを備えてなることを特徴とするオゾン水脱臭装置。
- 高濃度のオゾン水を製造するオゾン水製造装置と、このオゾン水を脱臭処理空間内に霧状に噴霧する噴霧手段と、過酸化水素水を上記空間に噴霧する過酸化水素水噴霧手段と、噴霧されたオゾン水及び過酸化水素水に紫外線を照射する紫外線照射ランプとを備えてなることを特徴とするオゾン水脱臭装置。
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