JP3731063B2 - 1,1,1,2−テトラフルオロエタンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒などに用いられる代替フロンとして有用である1,1,1,2−テトラフルオロエタン(以下、HFC−134aとも称する。)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
HFC−134aの製造方法として、クロムを主成分とする触媒などの存在下において、1,1,1−トリフルオロ−2−クロロエタンまたは1,1,2−トリクロロエチレンを気相でフッ化水素(以下、HFとも称する。)によりフッ素化することによって製造する方法が知られている。
【0003】
このようなHFC−134aを得る反応において、反応生成物中にはHFC−134aに加えて未反応のHFが残留するので、生成物からHFを除去して、HFC−134aを分離回収する必要がある。その場合、経済性などの観点から、同時にHFを回収して反応系に戻し、再利用することも求められる。しかし、HFC−134aとHFとは、共沸混合物を形成し、その組成は圧力によって変動して、例えば5気圧の条件下ではHFを12〜13mol%含む共沸混合物を形成するため、単純な蒸留により実質的にHFを含まないHFC−134aを得ることは困難である。
【0004】
有機物とHFを分離する方法としては、これらの混合物自体を分液させ蒸留して分離する方法(特開平2−167803号公報)、硫酸によりHFを反応吸収して分離する方法(米国特許第3,873,629号明細書)などが知られている。
また、それ以外に、特開平5−279277号公報に記載されているように、HFC−134aとHFとの混合物をHF水溶液(フッ化水素酸水溶液)で洗浄する方法、または、特開平5−178768号公報に記載のように、圧力の異なる2本の蒸留塔で連続的に精留する方法などが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平2−167803号公報に記載されているような混合物自体を分液させて蒸留する方法においては、混合物自体が分液する必要があるので、どのような混合物にでも適用できるものではない。硫酸による洗浄法は、硫酸の回収時に高温に加熱する必要があるので、その腐食性に問題がある。
特開平5−279277号公報に記載されているようなHF水溶液により洗浄する方法では、フッ化水素酸が腐食性を有することが大きな問題である。例えば、装置や配管などの保守および点検を頻繁に行わなければならず、従って、人的コストが高くなり、更に、設備などに耐腐食性を考慮した材料を用いる必要があるため設備コストも増大するという問題がある。
また、特開平5−178768号公報に記載されているような蒸留による方法は、圧力によってHFC−134a/HFの共沸混合物中のHFの割合が8〜17mol%と変化することを利用するものであるが、その変化の程度が小さく、効率が悪いという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、少なくとも1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびフッ化水素を含んで成る混合物から、1,1,1,2−テトラフルオロエタンを効率よく分離して、1,1,1,2−テトラフルオロエタンを得る方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定の範囲の溶解度パラメーター値を有しており、少なくとも1個のフッ素原子を含有する有機化合物が、HFC−134aに対しては大きな相互溶解度を有し、他方、HFに対しては小さな相互溶解度を有するという性質を利用して、HFC−134aとHFを含んで成る混合物からHFC−134aを効率的に分離することを主たる特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明は、
(a)一般式I:
CxFyHz (I)
[式中、xは3以上の整数であり、yは2以上の整数であり、zは0もしくは1以上の整数である。]
で示されるフッ化炭化水素化合物、
(b)一般式II:
R1R2R3N (II)
[式中、R1、R2およびR3はそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であって、R1、R2およびR3の中の少なくとも1つはフッ素原子を少なくとも1つ含む。]
で示されるアミン化合物、および
(c)一般式III:
R4OR5 (III)
[式中、R4およびR5はそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R4およびR5の中の少なくとも1つはフッ素原子を少なくとも1つ含む。]
で示されるエーテル化合物
からなる群から選ばれ、かつ、1,1,1,2−テトラフルオロエタンの溶解度パラメーター値よりも小さな溶解度パラメーター値を有する少なくとも1種の有機化合物を含んで成る抽出剤と、少なくとも1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびフッ化水素を含んで成る混合物とを接触させて、得られる混合液を分液させた後、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよび抽出剤を主成分とする抽出剤相を得、その抽出剤相から1,1,1,2−テトラフルオロエタンを分離回収することを特徴とする1,1,1,2−テトラフルオロエタンの製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明において使用する抽出剤は、(a)、(b)および(c)からなる群から選ばれる1種の化合物であってもよいし、またはこの群から選ばれる2種以上の化合物を組み合わせたものであってもよい。更に、本発明の分離回収法に悪影響を与えない限り、別の化合物を含んでもよい。
【0010】
本発明において「溶解度パラメーター(solubility parameter)」とは、例えば、「化学大辞典(株式会社東京化学同人から1989年10月20日発行)」において、「正則溶液理論における凝集エネルギー密度の平方根」であると定義されている周知の物性であり、一般に、記号δで表される。即ち、式:
【数1】
δ=(ΔE/V)1/2
[式中、ΔEはモル蒸発熱、Vはモル体積である。]
で示される。
【0011】
各溶媒についての溶解度パラメーターについては、「溶液と溶解度(篠田耕三著、丸善株式会社から昭和41年9月発行)」の第99〜104頁に記載されている数値および種々の測定方法を用いることができる。本発明においては、例えば、「溶液と溶解度」第100頁に記載されている、蒸発熱から溶解度パラメーターを求める方法によって溶解度パラメーターの値を求めた。
【0012】
その方法は、液体の各温度における分子容あるいは密度の値はたいていの場合わかっており、蒸発エネルギー(−ΔEV)がわかれば、液体の飽和蒸気圧がそれほど大きくない場合に気体を理想気体として扱って、
【数2】
ΔHV−RT=ΔEV
の関係を用い、
【数3】
に従って、蒸発熱(ΔHV)から溶解度パラメーターδを求めることができるというものである。
【0013】
更に、沸点における蒸発熱が判っているが、溶解度を知りたい温度における蒸発熱が判っていない場合には、クラペイロン-クラウジウス(Clapeyron-Clausius)の式:
【数4】
を用いて、蒸気圧の温度変化より蒸発熱を求めることができる。
【0014】
従って、上記方法により、温度20℃において、液密度、分子量、蒸発エンタルピーの値から1,1,1,2−テトラフルオロエタンの溶解度パラメーターの値は、6.7であることが判った。
【0015】
本発明において「混合物」とは、少なくともHFC−134aおよびHFを含んでなり、液体および/または気体で存在する物質のことである。場合により、HClや他のフッ化炭化水素化合物、例えば、CF3CH2Cl(HCFC−133a)、CF3CHFCl(HCFC−124)、HCF2CF2H(HFC−134)などを含んでもよい。
本発明において「分離回収」とは、原料としてのHFおよびHFC−134aを含んで成る混合物から、その混合物中におけるHFC−134aのHFに対する相対的な割合よりも高いHFC−134aのHFに対する割合のHFC−134aおよびHFを含んで成る混合物を得ることを意味する。好ましい態様では、HFを実質的に含まないHFC−134aを得ることを意味する。
【0016】
本発明において「抽出剤」とは、混合物がガスであるか、ガスを含む液体である場合は、混合物と接触することにより混合物を液化させてHFおよびHFC−134aを含んで成る混合液とし、その混合液からHFC−134aを選択的に溶解して抽出すると共に、HFをできる限り溶解しない(従って、HFを別の液相として分液させる)作用を有する物質を意味する。場合により、この液化の際に混合物の一部分をガスとして系外に抜き出してもよい。この抽出剤は、混合物中のHFC−134aを選択的に吸収した後に液化する(従って、HFは抽出剤に抽出されないで別の液相となる)作用を上記作用と同時に、または、それに代って有するものであってもよい。従って、本発明の「抽出剤」とは、混合物と接触することにより、混合物中の多くのHFC−134aおよび実質的に全てのHFならびに抽出剤から、含有するHFの割合が大きい液相(以下、HF相とも称する。)、ならびに含有するHFの割合が小さい液相(即ち、HFC−134aおよび抽出剤を主成分とする液相であり、以下、抽出剤相とも称する。)を生成(分液)できるような物質を意味する。混合物中に含まれることがあるHClは、少なくとも一部分を分液せずにガスの状態で除去することができる。
【0017】
本発明において、HFおよびHFC−134aを含んで成る混合物と抽出剤とを接触させた後、HF相および抽出剤相を生成(分液)した状態においては、抽出剤相内でのHFに対するHFC−134aの相対的割合は、原料である混合物内での割合よりも大きくなっている。従って、この場合、最終的に抽出剤相からHFC−134aを分離するまでもなく、上述のような本発明における「分離回収」は実質的に達成されているということができる。
【0018】
本発明の方法において用いる抽出剤は、1,1,1,2−テトラフルオロエタンよりも小さい溶解度パラメーターを有するものである。溶解度パラメーターは温度によって変動するので、本発明における溶解度パラメーターの大小の比較は同じ温度条件にて行う。例えば、温度20℃において、HFC−134aの溶解度パラメーターの値は6.7であるので、抽出剤としては6.7よりも小さな溶解度パラメーター値を有するならば特に限定されるものではないが、好ましくは5.0〜6.69の範囲、最も好ましくは5.7〜6.5の範囲の溶解度パラメーターを有するものを用いる。
【0019】
好ましい態様では、本発明の抽出剤は、6.7より小さい溶解度パラメーターの値を有する化合物であって、
(a)一般式Iにおいて、xが3〜10の整数、より好ましくは5〜9であり、yが3〜33の整数、より好ましくは12〜17であり、zが0〜6の整数、より好ましくは0〜3であるフッ化炭化水素化合物、
(b)一般式IIにおいて、R1、R2およびR3がそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であって、R1、R2およびR3の中の少なくとも1つはフッ素原子を少なくとも1つ含むアミン化合物、
(c)一般式IIIにおいて、R4およびR5はそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R4およびR5の中の少なくとも1つはフッ素原子を少なくとも1つ含むエーテル化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物である。
【0020】
従って、本発明において使用することができる抽出剤には、以下の化合物が含まれる。
(a)フッ化炭化水素化合物としては、パーフルオロ−2−メチルペンタン(sec-C6F14)(δ=5.9)、パーフルオロ−n−ヘキサン(n−C6F14)(δ=5.7)、43−10mee(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン)(=5.7)、1H−パーフルオロ−2−ペンテン、パーフルオロ−2−メチル−2−ペンテン(δ=5.6)、パーフルオロ−4−メチル−2−ペンテン(δ=5.6)、C8F17H(1H−パーフルオロオクタン(ω−H パーフルオロオクタン))(δ=6.3)、C6F13H(ω−H パーフルオロヘキサン)(δ=6.3)を例示することができる。更に、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、ペンタデカフルオロヘプタン、パーフルオロデカリン等を挙げることもでき、これらのδ値は5.7程度である。
【0021】
(b)アミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(δ=5.9)、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロ−N−メチル−モルホリンなどを挙げることができる。
(c)エーテル化合物としては、メチル−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテル、エチル−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテルおよびプロピル−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテルなどを挙げることができる。尚、ここに記載する溶解度パラメーター値δは、温度20℃にて求めたものである。
【0022】
抽出剤と混合物とを接触させる際、操作条件下、特に−30℃以上の温度において、抽出剤中に溶解し得るHFC−134aより、実際に接触するHFC−134aの量が下回っており、抽出剤相とHF相とが容易に分液するような抽出剤と混合物の量比であればよい。具体的には、接触させる混合物中のHFC−134aに対して、使用する抽出剤の割合は、モル比で、0.4倍以上となるような割合、好ましくは0.4〜30倍の範囲の割合、最も好ましくは1〜5倍の範囲の割合である。この場合、分液装置内においては、通常、抽出剤相が下側相となり、HF相が上側相となる場合が多い。
【0023】
分液の後、抽出剤相は、少量の成分としてHFを溶解度分だけ含んでいる。このHFは、その後の工程において抽出剤相を、必要に応じて、通常行われる適当な後処理、例えばアルカリ洗浄や蒸留などに付することによって除去することができ、実質的にHFC−134aと抽出剤とから成る混合物を得ることができる。更に、この混合物を通常行われる分離処理、例えば蒸留などに付することにより、抽出剤を実質的に含まない状態で目的物質であるHFC−134aを得ることができる。上述のような後処理を省略して、直接蒸留処理して、場合により、複数の蒸留操作を組み合わせて、操作条件を適当に選択することによりHFC−134aを得ることもできる。このような蒸留による分離は常套のものである。
【0024】
接触の際の温度、圧力などの条件は、混合物が液化して、HFC−134aが主として抽出剤相に取り込まれ、HFは主としてHF相に取り込まれるか、混合物が抽出剤相および/またはHF相に取り込まれた後に操作条件下における液液平衡関係に基づいて抽出剤相およびHF相に分配されるか、あるいはこれらの双方の状態が同時に生じるのであればどのような条件であってもよい。
【0025】
抽出剤と混合物とを分液させる際の条件は、抽出剤相とHF相とが分液するような条件であれば、特に限定されない。従って、通常、上記の接触と同じ条件であってよい。
より実際的な条件としては、接触時および分液時の双方において、温度は、−30℃〜35℃の範囲、好ましくは−27℃〜10℃の範囲に保たれる。圧力(絶対圧力)は、大気圧(1気圧)以上、好ましくは1気圧〜8.5気圧の範囲、最も好ましくは1気圧〜4.5気圧の範囲に保たれる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の方法を実施するために用いる方法のフローシートを模式的に示したものである。
【0027】
1,1,1,2−テトラフルオロエタンは、反応装置1において、例えば、1,1,1−トリフルオロクロロエタンまたはトリクロロエチレンなどの化合物を、触媒存在下、気相でフッ化水素によりフッ素化することにより生成する。この反応生成物である、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびフッ化水素を主として含有し、その他に、HClおよび他のフッ化炭化水素化合物、例えば、CF3CH2Cl(HCFC−133a)および/もしくはCF3CFHCl(HCFC−124)などを含んで成る混合物は、凝縮器および蒸留装置(共に図示せず)を通過後、導管9を経由して、抽出装置10に、通常その下側部分へ導入される。この時本発明の混合物は実質的にHFC−134aおよびHF、場合によりHClを含む。また、抽出剤は、導管11を経由して抽出装置10へ導入される。
【0028】
抽出装置10としては、ガス吸収操作または液の抽出操作に通常用いられる装置、例えば、充填塔、スプレー塔、スクラバー類、段塔、気泡塔、撹拌槽などの装置を使用することができる。微分型の吸収装置を用いる場合には、抽出剤と混合物を向流で接触させるのが特に好ましい。
【0029】
抽出剤は、抽出装置10において、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびフッ化水素を含んで成る混合物に接触し、実質的に全てのHFC−134aおよびHFが液化し、少なくとも一部分は既に分液を開始して、導管19を経由して分液装置20へ送られる。混合物中に場合により含まれているHClなどは、大部分の場合、気体の状態のままで抽出装置10から抜き出すことができる。
【0030】
抽出装置10および分液装置20内は、設備コストおよび運転コスト等のバランスの点から、実用的な条件として、例えば、温度を−27℃〜10℃の範囲、圧力を1気圧〜4.5気圧の範囲に保持することが特に好ましい。
分液には、通常の分液装置、例えば、比重差を利用して分液操作を行うことができる装置などを使用してよい。
【0031】
導管19を経由して導入された既に分液を始めている混合物の液化した各成分および抽出剤は、例えば重力式の分液装置(デカンター)20内において、HFを主成分とする相(HF相)が上側相に合流し、主としてHFC−134aおよび抽出剤からなる相(抽出剤相)が下側相に合流して分液する。
【0032】
分液装置20内で下側相を形成する抽出剤相は、導管21を経由して分離装置、例えば蒸留装置30へ送られる。ここで、導管21を通過する相の成分は、後記の実施例の表1からも判るように、抽出剤およびHFC−134aが大部分であるが、その他に、少量のHFを含む。蒸留装置30において、HFを、HFC−134a/HFの共沸混合物の状態で、例えば導管31を介して分離することもできる。この混合物は抽出装置10にリサイクルされるのが好ましい。別法ではこのHF成分を除去するために、導管21の途中に、アルカリ洗浄工程など(図示せず)を設けることもできる。この場合は、蒸留装置30において水を除去するか、アルカリ洗浄工程の後で吸着塔により水を除去する。
【0033】
蒸留装置30からは、HFC−134aと抽出剤の混合物が分離され、導管32を経由して、例えば蒸留装置50へ送られ、HFC−134aと抽出剤とに分離される。分離されたHFC−134aは例えば導管52を経由して取り出され、適当な貯留装置または必要な後処理装置へ送られる。他方、HFC−134aから分離された抽出剤は、例えば導管51を経由して、必要に応じて適当な処理に付された後、導管11を経由して抽出装置10に戻され、再び抽出剤として使用できる。
【0034】
分液装置20内で上側相を形成するHF相は、導管22を経由して分離装置、例えば蒸留装置40へ送られる。このHF相には、後記の実施例の表1からも判るように、少量の抽出剤およびHFC−134aなどが含まれており、蒸留装置40内で蒸留することによって、134a/HFの共沸混合物を例えば導管41から取り出し、抽出剤および大部分のHFを例えば導管42から取り出すことができる。この際、例えば導管41から取り出されるHFC−134a/HF共沸混合物も抽出装置10にリサイクルされるのが好ましい。抽出剤および大部分のHFは、例えば蒸留装置60に送られて蒸留され、抽出剤または抽出剤/HFの共沸混合物が例えば導管61から取り出され、HFが例えば導管62から取り出される。
【0035】
これらの分離された抽出剤、抽出剤/HF共沸混合物およびHFは、必要に応じて処理された後、例えば系内にリサイクルすることもできるし、系外に取り出すこともできる。例えば、系内にリサイクルする場合、抽出剤および抽出剤/HF混合物は導管11に送られ、HFは反応装置1などのフッ素化工程に送られる。別法では、HF相をそのまま、あるいはHFC−134aを実質的に除去して反応系に戻してもよい。
蒸留装置30および40には、精留を行うことができる通常の蒸留装置、例えば充填塔、段塔などを用いることができる。
【0036】
混合物がHFおよびHFC−134aから成る場合を例にして先に本発明を説明したが、混合物は、HFC−134aおよびHFに加えて、他の成分を含んでもよい。HF相および抽出剤相に溶解度の低い(操作条件下で)物質、例えばHClなどはガスのままで抽出装置10から系外に出るので、本発明はそのような場合であっても同様に実施することができる。また、溶解しうる他の成分は、その物性に応じて、抽出剤相側またはHF相側に分配されるだけであり、HFC−134aのHFに対する相対的割合が、本発明の方法によって元の混合物中における割合より大きくなることには変わりがない。従って、混合物が他の成分を含む場合も本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
【実施例】
実施例1
抽出剤として、パーフルオロ−2−メチルペンタン(sec-C6F14)を用い、本発明の方法に従って、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびフッ化水素から成る混合物から1,1,1,2−テトラフルオロエタンを分離した。
【0038】
図1のフローシートに従って、抽出装置10としてSUS316製泡鐘塔(直径50mm×高さ30mm、10段)を、分液装置20として外部冷却器付SUS316製1000cc容器を用い、操作条件としては、HFを12.5mol%の濃度で含むHFC−134a(流量:16.3g/min)を0℃に冷却したC6F14(流量:56.3g/min)と向流接触させHFC−134aおよびHFを全て液化凝縮させた。即ち、HFC−134a/抽出剤モル比=1.0を採用した。
接触および分液の操作は、温度0℃、圧力2気圧で泡鐘塔上部で圧力をコントロールしたが、ガスは全く抜き出さなかった。
図1において、導管9、11、21および22を通過する相の成分をそれぞれ以下の表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例2
実施例1と同じ装置を用い、抽出剤としてHFC−43−10mee(CF3CHFCHFCF2CF3)を使用して、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびフッ化水素から成る混合物から1,1,1,2−テトラフルオロエタンを分離した。
【0041】
HFC−43−10meeの供給速度を10mol/h(42.0g/min)、HFC−134aの供給速度を10mol/h(17.0g/min)とし、0℃、2気圧の条件で接触を行った。
各導管9、11、21および22を通過する相の成分をそれぞれ以下の表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
比較例1
実施例1と同じ装置を用い、抽出剤として1,1,1−トリフルオロペンタン(δ=6.9)を使用して、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびフッ化水素から成る混合物からの1,1,1,2−テトラフルオロエタンの分離を行った。
【0044】
1,1,1−トリフルオロペンタンの供給速度を23.7mol/h(49.8g/min)とし、−30℃、大気圧の条件で接触を行った。
各導管9、11、21および22を通過する相の成分をそれぞれ以下の表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表1から判るように、実施例1において、導管21内の抽出剤相中におけるHFC−134aのHFに対する相対的割合(9.72/0.1=97.2)は、導管9内の混合物中におけるその割合(10.0/1.43=6.99)の約14倍(97.2/6.99=13.9)と遥かに高くなっていることが判る。
表2から判るように、実施例2において、導管21内の抽出剤相中におけるHFC−134aのHFに対する相対的割合(9.61/0.1=96.1)も、導管9内の混合物中におけるその割合(10.0/1.43=6.99)の約14倍(96.1/6.99=13.8)と遥かに高くなっていることが判る。
【0047】
一方、比較例1においては、表3に示すように、導管21内の抽出剤相中におけるHFC−134aのHFに対する相対的割合は(2.58/0.09=28.7)であって、導管9内の混合物中におけるその割合(10.0/1.43=6.99)の約4倍(28.7/6.99=4.1)に過ぎないことが判る。
従って、実施例1および2においては、効率の良いHFC−134aとHFとの分離が達成されていることが明らかに判る。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、1,1,1,2−テトラフルオロエタンをフッ化水素から効率よく分離することによって、1,1,1,2−テトラフルオロエタンの製造をも効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法を実施するために用いるプロセスのフローシートである。
【符号の説明】
10…抽出装置、20…分液装置、30,40,50,60…蒸留装置。
Claims (8)
- (a)一般式I:
CxFyHz (I)
[式中、xは3以上の整数であり、yは2以上の整数であり、zは0もしくは1以上の整数である。]
で示されるフッ化炭化水素化合物、
(b)一般式II:
R1R2R3N (II)
[式中、R1、R2およびR3はそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であって、R1、R2およびR3の中の少なくとも1つはフッ素原子を少なくとも1つ含む。]
で示されるアミン化合物、および
(c)一般式III:
R4OR5 (III)
[式中、R4およびR5はそれぞれ1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R4およびR5の中の少なくとも1つはフッ素原子を少なくとも1つ含む。]
で示されるエーテル化合物
からなる群から選ばれ、かつ、1,1,1,2−テトラフルオロエタンの溶解度パラメーター値よりも小さな溶解度パラメーター値を有する少なくとも1種の有機化合物を含んで成る抽出剤と、少なくとも1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびフッ化水素を含んで成る混合物とを接触させて、得られる混合液を分液させた後、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよび抽出剤を主成分とする抽出剤相を得、その抽出剤相から1,1,1,2−テトラフルオロエタンを分離回収することを特徴とする1,1,1,2−テトラフルオロエタンの製造方法。 - 一般式Iにおいて、xが3〜10の整数であり、yが3〜33の整数であり、zが0〜6の整数であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 抽出剤として、
(a)パーフルオロ−2−メチルペンタン、パーフルオロ−n−ヘキサン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、パーフルオロ−2−メチル−2−ペンテン、パーフルオロ−4−メチル−2−ペンテン、ω−H パーフルオロオクタンおよびω−H パーフルオロヘキサン、
(b)パーフルオロトリブチルアミンおよびパーフルオロトリペンチルアミン
ならびに
(c)メチル−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテル、エチル−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテルおよびプロピル−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテル、
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることを特徴とする請求項1または2記載の方法。 - 接触の際における抽出剤の使用量が、1,1,1,2−テトラフルオロエタンに対して、モル比で、0.4〜30倍の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 分液を、−30℃〜35℃の温度および1気圧〜8.5気圧(絶対圧)の圧力で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 混合物が、他のフッ化炭化水素化合物ならびにHClを含んで成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 抽出剤に接触させる混合物が、1,1,1−トリフルオロ−2−クロロエタンまたは1,1,2−トリクロロエチレンを気相でHFによりフッ素化して得られる反応生成物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 抽出剤相を蒸留することによって抽出剤を分離し、この抽出剤を接触工程に戻すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
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