JP3730424B2 - 微分スペクトル画像処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長可変干渉フィルタにより透過特性を切り替えて得た2つの画像の差分により微分スペクトル画像を生成してカラー表示する微分スペクトル画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、波長可変干渉フィルタを使用したスペクトル画像分析装置にあっては、波長可変干渉フィルタの基板間隔を変化させることにより、透過特性を切り替えて得た2つの画像の差を演算して微分スペクトル画像のカラー表示を行っている(特開平8−285688号)。
【0003】
即ち、このスペクトル分析装置は、1画素に対応してR,G,Bの各カラーフィルタを備えた3つの受光セルを配置したCCD等のカラー撮像手段を使用し、波長可変干渉フィルタ及び撮影レンズ系により結像された物体像につき、波長可変干渉フィルタの透過特性を2段階に変化させて得たR,G,B画像データをメモリに記憶し、2つの画像の差を演算してR,G,Bの微分スペクトル画像を生成し、カラー表示している。
【0004】
このような微分スペクトル画像を生成する装置によれば、生成された微分スペクトル画像を解析することで、物体のもつ波長スペクトルのどこに特徴的なスペクトル変化があるのかを求めることができる。更に微分スペクトル画像のカラー表示によれば、スペクトルのどの帯域に特徴があるのかを容易に読み取ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、微分スペクトル画像を生成して特徴的なスペクトル変化を求める物体の測定は、必ずしも可視光領域には限られず、更に波長の短い紫外領域或いは更に波長が長い赤外領域での微分スペクトル画像の測定を必要とする場合もある。
【0006】
このように微分スペクトル画像の波長スペクトル帯域が可視光領域を外れた場合には、微分スペクトル画像のカラー表示はできず、モノクロ画像による信号の強弱が表された微分スペクトル画像が得られるのみであり、どのスペクトル帯域に特徴があるのかを画像そのもので表わすことができないという問題があった。
【0007】
また可視光領域であっても、例えば600nm〜650nmといった赤色の波長帯域に制限して微分スペクトル画像を観察する場合もあり、この場合には、全体に赤味のかかったモノトーンに近い微分スペクトル画像となり、カラー表示によってスペクトル帯域の特徴を画像そのもので表わすことができないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、可視光域外や可視光領域内の特定色の帯域についても、カラー表示によってスペクトルのどの帯域に特徴があるのかを容易に判断できるようにした微分スペクトル画像処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、次のように構成する。本発明の微分スペクトル画像処理装置は、撮像素子、帯域選択部、波長可変干渉フィルタ、撮影画像読込み部、微分画像生成部及び表示処理部で構成される。
【0010】
撮像素子は、光学系により結像された対象物の画像を撮影する。帯域選択部は、測定対象スペクトル帯域を少なくとも2以上の複数帯域に分割し、撮像素子に入射する光線の波長帯域を分割帯域毎に選択する。波長可変干渉フィルタは、撮像素子に入射する光線の透過特性(複数の透過ピークスペクトルの分布)を変化させる。
【0011】
撮影画像読込み部は、分割帯域の各々に対して波長可変干渉フィルタを第1の透過特性、第1の透過特性とは異なる第2の透過特性に設定し、透過特性を第1の透過特性第2の透過特性に設定する毎に撮像素子でスペクトル画像を撮影し、当該画像を分割帯域毎に画像メモリに記憶する。
【0012】
微分画像生成部は、分割帯域毎に、画像メモリに記憶された透過特性の異なる2種のスペクトル画像の差を画素単位に演算して微分スペトル画像を生成する。表示処理部は、分割帯域の各々に対して所定のカラー空間を構成する複数のカラー成分を各々に対応させ、複数のカラー成分毎に微分スペトル画像をカラー表示する。
【0013】
ここで、測定波長スペクトル帯域を3分割し、カラー空間をRGBカラー空間とし、3つの分割帯域の各々にRGBカラー空間のR成分、G成分及びB成分の各々を対応させ、R成分、G成分及びB成分のそれぞれについて生成した微分スペクトル画像を合成してカラー表示する。
【0014】
このような本発明の微分スペクトル画像処理装置によれば、測定対象スペクトル帯域が可視光域外にあっても、測定対象スペクトル帯域を3分割して各分割帯域毎に例えばR、G、Bのカラー成分を擬似的に対応させてカラー成分毎の微分スペクトル画像を生成し、これを合成して擬似カラー表示することで、画面上で特徴あるスペクトル帯域とその強弱をカラー表示できる。
【0015】
また表示処理部は、カラー成分の微分スペクトル画像を合成して出力表示すると同時に、各カラー成分の微分スペクトル画像を単独で同時表示又は切替表示してもよい。
【0016】
即ち、3分割した帯域の各々につき生成したR,G,Bの各カラー成分の微分スペクトル画像を合成してカラー表示した場合、同じ発色であっても、波長可変干渉フィルタの複数の透過ピークスペクトルの分布の内の1つの透過ピークスペクトルの色成分による発色なのか、2つの透過ピークスペクトルの色成分の合成による発色なのか見分けることが難しく、スペクトルの特徴を確定するまでには至らない。
【0017】
このような場合には、各測定帯域について生成したR,G,B成分の単色表示の微分スペクトル画像を同時表示又は切替表示することで区別することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の微分スペクトル画像処理装置の一例である。図1において本発明の微分スペクトル画像処理装置は、フィルタ切替装置1、CCDカメラ2、及びパーソナルコンピュータ等を用いた信号処理装置3で構成される。
【0019】
フィルタ切替装置1は、ロータリ型のフィルタ切替機構を持ち、回転円板の例えば3箇所に帯域の異なる3つの帯域フィルタ1a,1b,1cを装着しており、CCDカメラ2の前に設置され、モータ駆動によりCCDカメラ2の光軸2aに対し帯域フィルタ1a〜1cのいずれか1つを位置決めできるようにしている。
【0020】
フィルタ切替装置1に設けた3つの帯域フィルタ1a〜1cは、CCDカメラ2で撮影する測定対象物の測定スペクトル帯域を3分割した各分割帯域ごとの通過帯域特性が設定されている。このため、CCDカメラ2はフィルタ切替装置1による帯域フィルタ1a〜1cの順次切替えで得られた分割帯域ごとの画像を撮像し、信号処理装置3に転送する。
【0021】
更にCCDカメラ2には波長可変干渉フィルタが内蔵されており、この波長可変干渉フィルタは一対の基板間隔Xで決まる複数の透過ピークスペクトルが波長軸上に離散的に分布する透過特性をもち、帯域フィルタ1a〜1cのいずれかの分割帯域で受光した光線について、更に波長可変干渉フィルタに透過ピークスペクトル分布で制限した帯域特性の画像を撮像する。
【0022】
図2は図1の装置における内部構成の詳細である。図2において、帯域フィルタ1a〜1cを備えたフィルタ切替装置1に続いて配置されたCCDカメラ2には、波長可変干渉フィルタ5、光学レンズ6、撮像素子7が内蔵されている。波長可変干渉フィルタ5は図3の構造を備える。
【0023】
図3において、波長可変干渉フィルタ5はファブリ・ペロー型干渉フィルタとして知られており、例えば200〜300オングストローム程度の厚みを有するAu等の反射膜となる透光性の金属膜26a,26bを対向する面に蒸着した一対のガラス基板25a,25bを有し、このガラス基板25a,25bを間に圧電素子27を介して対向配置し、その間に微小間隔Xを設定している。圧電素子27は駆動電圧源24による直流電圧の印加を受けて基板間隔Xを変化させることができる。
【0024】
この波長可変干渉フィルタ5はガラス基板25b側からの入射光に対し、透光性をもつ金属膜26b,26a間での多重反射によって生ずる干渉作用に起因して複数の透過スペクトルピークが分布して光を透過する。このような波長可変干渉フィルタとしては、例えば特開平8−285688号のものが使用できる。
【0025】
再び図2を参照するに、例えば帯域フィルタ1aで帯域制限され且つ波長可変干渉フィルタ5により波長軸での複数の透過スペクトルピークの分布で制限された対象物からの光線は、光学レンズ6により撮像素子7の撮像面に結像される。撮像素子7としては例えばCCD等を使用しており、CCDセル単位に受光強度に応じた画素信号を生成し、これをXY走査による画面単位に読み出して信号処理装置3に供給する。
【0026】
駆動部13は図3の駆動電圧源24に相当し、信号処理装置3からの制御信号により、波長可変干渉フィルタ5の圧電素子27に対する直流電圧を可変して基板間隔Xを、本発明にあっては帯域フィルタ1a〜1cのいずれか1つを選択した状態で基板間隔X1と基板間隔X2の2段階に制御する。それぞれの基板間隔X1,X2、即ち第1,第2の透過特性で得られた撮像素子7の測定画像は読み出されて信号処理装置3に供給される。また駆動部14はフィルタ切替装置1の円板を回転し、CCDカメラ2の前に帯域フィルタ1a〜1cを順番に配置する。
【0027】
信号処理装置3は、CPU8、AD変換器9、画像メモリ10、出力IF11,12,13を備える。AD変換器9はCCDカメラ2の撮像素子7で撮像された画像をデジタルデータに変換して画像メモリ10に記憶する。ここで撮像素子7からの画素信号は、帯域フィルタ1a〜1cのいずれかの選択フィルタと波長可変干渉フィルタ5の基板間隔による波長特性で得られた画像の輝度(光量)に応じた画素信号であり、信号そのものに色情報は持っていない。
【0028】
画像メモリ10は、フィルタ切替装置1の3つの帯域フィルタ1a〜1cに対応して3つのメモリ領域10a,10b,10cを割り当てており、メモリ領域10a,10b,10cのそれぞれの格納画像の画素データにつき、所定のカラー空間、具体的にはRGBカラー空間のR成分、G成分及びB成分のそれぞれを予め割り当てている。
【0029】
例えばAD変換器9から得られる画素信号が8ビットデータであったとすると、メモリ領域10aに格納された8ビット画素データは8ビットRデータとなり、またメモリ領域10bに格納された8ビット画素データは8ビットGデータとなり、更にメモリ領域10cに格納された8ビット画素データは8ビットBデータとして扱われる。したがって、メモリ領域10a,10b,10cはそれぞれRメモリ領域10a、Gメモリ領域10b、及びBメモリ領域10cということができる。
【0030】
画像メモリ10のRメモリ領域10aには、図示のように、フィルタ切替装置1の帯域フィルタ1aをCCDカメラ2の前にセットした状態で波長可変干渉フィルタ5の透過特性を第1の透過特性に設定したとき、即ち基板間隔をX=X1に制御したときに撮像素子7で得られた画像がR成分スペクトル画像RD1として記憶される。次に波長可変干渉フィルタ5の透過特性を第2の透過特性に設定したとき、即ち基板間隔をX=X2に制御したときに撮像素子7で撮像された画像データをR成分スペクトル画像RD2として別に記憶する。
【0031】
残りのGメモリ領域10b、Bメモリ領域10cについても、それぞれ帯域フィルタ1b,1cをセットした状態で波長可変干渉フィルタ5の基板間隔をX1,X2の2段階に切り替えて、それぞれ撮像素子7で画像読取りを行うことで、Gメモリ領域10bにはG成分スペクトル画像GD1,GD2が記憶され、Bメモリ領域10cにはB成分スペクトル画像BD1,BD2が記憶される。
【0032】
このように画像メモリ10にRGB各成分の帯域特性の異なる2種のスペクトル画像が記憶できたならば、CPU8はR,G,B成分毎に2つのスペクトル画像の差を画素単位に演算して微分画像を求め、これをそれぞれのメモリ領域10a,10b,10cにR,G,B成分微分スペクトル画像ΔR,ΔG,ΔBとして記憶する。最終的にCPU8は、出力インタフェース13を介して3つの微分スペクトル画像ΔR,ΔG,ΔBを読み出し、モニタ4上に合成してカラー表示する。
【0033】
図4は図2の信号処理装置3に設けたCPU8による微分スペクトル画像処理の機能ブロック図である。 図4において、微分スペクトル画像処理のための機能ブロックは、撮影画像読込み部15、微分画像生成部16及び表示処理部17で構成される。撮影画像読込み部15は、駆動部14の制御によりフィルタ切替装置1を動作して帯域フィルタ1a,1b,1cの各々を順次選択するごとに、駆動部13を制御することによって波長可変干渉フィルタ5を異なる2つの基板間隔X1,X2に可変制御し、各基板間隔X1,X2ごと、即ち第1,第2の透過特性ごとに撮像素子7で撮影された画像をR成分画像、G成分画像、B成分画像として画像メモリ10のRメモリ領域10aに画像データRD1,RD2、Gメモリ領域10bに画像データGD1,GD2、更にBメモリ領域10cに画像データBD1,BD2としてそれぞれ記憶する。
【0034】
微分画像生成部16は、画像メモリ10に記憶されたRGBの各メモリ領域10a,10b,10cにおける2つの画像データRD1とRD2、GD1とGD2、及びBD1とBD2の差を画素単位に演算し、R,G,Bの微分スペクトル画像データΔR,ΔG,ΔBを生成して各メモリ領域10a,10b,10cに記憶する。
【0035】
表示処理部17は画像メモリ10に記憶されたR成分、G成分、B成分の微分スペクトル画像データΔR,ΔG,ΔBを読み出し、モニタ4上に合成してカラー表示する。
【0036】
図5は図2の実施形態における帯域フィルタ1a〜1cと波長可変干渉フィルタ5の波長特性をRGB色空間における比感度と共に示している。
【0037】
図5(A)は、RGB空間におけるRGBデータを一定値とした場合の人間の目に感ずる強さを表わした比感度であり、R,G,Bで示す各色成分における比感度が得られる。
【0038】
図5(B)は、図2の実施形態における帯域フィルタ1a〜1cの帯域特性18a,18b,18cであり、この場合には図5(A)のRGBの比感度に対応して、例えば380nm〜780nmの可視光域を観察スペクトル帯域として図示のように3分割して各フィルタの帯域特性18a,18b,18cで設定している。
【0039】
ここでフィルタ帯域18aについてはR成分が割り当てられ、フィルタ帯域18bについてはG成分が割り当てられ、更にフィルタ帯域18cについてはB成分が割り当てられる。この図5(B)の測定スペクトル帯域の分割とフィルタ特性の設定は、通常のRGBカラー表示に対応している。
【0040】
このような3分割したフィルタ帯域18a〜18cに対し波長可変干渉フィルタ5の波長特性は、基板間隔をX=X1に制御し第1の透過特性とした場合には実線の透過スペクトルピークが複数分布する特性となり、これに対し基板間隔をX=X2に制御し第2の透過特性にすると波長軸方向にシフトした破線の透過スペクトルピークが複数分布する特性となる。
【0041】
このため、例えばフィルタ帯域18aを選択した場合には、フィルタ帯域18aに含まれる基板間隔X1による波長可変干渉フィルタ5で得られた実線の2つの透過スペクトルピークで得られた画像と、基板間隔X2による破線のスペクトルピークで得られた画像となる。この点は残りのフィルタ帯域18b,18cについても同様である。
【0042】
そして、各フィルタ帯域18a〜18cのそれぞれの透過帯域における波長可変干渉フィルタの実線の透過スペクトルピークと破線の透過スペクトルピークのそれぞれで得られたスペクトル画像の差分をとることで、R成分、G成分、B成分が割り当てられた3種類の微分スペクトル画像を生成することができる。
【0043】
図5(C)は、図2の帯域フィルタ1a〜1cの他の帯域特性であり、例えば測定スペクトル帯域を500nmから650nmの赤色を中心とした帯域に制限し、その中を3分割してフィルタ帯域19a,19b,19cを設定している。
【0044】
このフィルタ帯域19aの帯域制限を受けて得られたスペクトル画像についてはR成分が割り当てられ、次のフィルタ帯域19bの帯域制限を受けて得られたスペクトル画像についてはG成分が割り当てられ、更にフィルタ帯域19cの帯域制限を受けて得られたスペクトル画像についてはB成分が割り当てられる。
【0045】
その結果、実際の測定対象の色は、図5(A)の500〜650nmのように主に赤を中心とした色であるのに対し、図5(C)のフィルタ帯域19a〜19cの設定によって、測定帯域を3分割したRGB各成分の合成による微分スペクトル画像をカラー表示することができる。
【0046】
また図5(B)にあっては、フィルタ帯域18aについてR成分、フィルタ帯域18bについてG成分、フィルタ帯域18cについてB成分を割り当てているが、このRGBのカラー成分の割り当ては必要に応じて適宜に選択することができる。
例えばフィルタ帯域18aについて実際とは異なるG成分を割り当て、フィルタ帯域18bについても実際とは異なるR成分を割り当て、更にフィルタ帯域18cについて実際と同じB成分を割り当て、これによって実際の監察対象とR及びG成分を反転させた微分スペクトル画像のカラー表示ができる。
【0047】
更に図5(B)(C)は、380〜780nmの可視光域を測定スペクトル帯域としているが、図2の撮像素子7として780nmを越える赤外域に感度を有するものを使用すれば、この可視光域を外れた赤外域を測定スペクトル帯域として、同様にして3つの帯域フィルタ1a〜1cによる3つの分割帯域の設定でそれぞれ微分スペクトル画像を生成してRGB成分を割り当て、これを合成することによって、従来モノクロ表示しかできなかった赤外域において微分スペクトル画像のカラー表示が実現できる。
【0048】
また図2の撮像素子7として380nm以下の紫外域に感度を有するものを使用すれば、紫外域を測定スペクトル帯域とすることができる。この場合にも、紫外域の測定スペクトル帯域について、帯域フィルタ1a〜1cによって帯域を3分割してそれぞれ微分スペクトル画像を生成し、これにRGB成分のそれぞれを割り当てて合成カラー表示することで、従来モノクロ画像しか得られなかった紫外域についてもRGBカラー表示による微分スペクトル画像の表示が実現できる。
【0049】
もちろん、紫外域から可視光域、あるいは可視光域から赤外域について、同様にして測定スペクトル帯域を設定して3分割することにより、微分スペクトル画像のRGBカラー表示を行うようにしてもよい。
【0050】
図6は図4の機能ブロックによる画像処理の手順を表している。図6において、観察画像30は帯域制限を行わずに実際に見た画像であり、一例として○、□、△の3つの物体40,41,42があり、それぞれ赤R、緑G、青Bであったとする。
【0051】
このような観察画像30につき、まず帯域制限処理18aにより例えば図5(B)のフィルタ帯域18aを持つ帯域フィルタを選択し、且つ波長可変干渉フィルタ5の基板間隔をX1とした図5(B)のフィルタ帯域18aの中の実線の透過スペクトルピークによる透過特性のR成分スペクトル画像31aを得る。このR成分スペクトル画像31aには赤Rの物体40aのみが存在する。
【0052】
続いて波長可変干渉フィルタ5の基板間隔をX2に制御し、同様にして撮像すると、図5(B)のフィルタ帯域18aの中の破線の透過スペクトルピークによるR成分スペクトル画像32aが得られる。
【0053】
同様にして測定画像30について、フィルタ特性18b、フィルタ特性18cを設定して、この状態で波長可変干渉フィルタ5の基板間隔をX1とX2に切替え、G成分スペクトル画像31b,32b、及びB成分スペクトル画像31c,32cを得る。このG成分スペクトル画像31b,32bには、測定画像30の緑Gの物体41bが存在する。またB成分スペクトル画像31c,32cには、測定画像30の中の青Bの物体42bが存在する。
【0054】
続いてR,G,Bのそれぞれについて微分スペクトル画像の生成処理33a,33b,33cを行って、RGBの各微分スペクトル画像34a,34b,34cを得る。この微分スペクトル画像には、それぞれについて基板間隔X1とX2で得られた物体画像の画素の差分による物体40d,41d,42dが存在している。
【0055】
最終的に表示処理部により、RGBの各微分スペクトル画像34a,34b,34cを読み出して合成することで合成微分スペクトル画像35が得られ、微分スペクトル画像の生成処理を受けた物体40d,41d,42dがカラー表示される。
【0056】
勿論、実際の測定画像30にあってはRGBの合成による様々な発色となり、最終的に得られる合成微分スペクトル画像35は明度(輝度)によってスペクトル変化の強さが分かり、またその部分の色によってどのスペクトル帯域に特徴があるかを読み取ることができる。
【0057】
図7は、図2の信号処理装置3に設けたCPU8による微分スペクトル画像表示処理のフローチャートである。まずステップS1で、波長可変干渉フィルタ5の基板間隔XをX1にセットした状態でフィルタ切替装置1を駆動し、ステップS2で、まずR帯域フィルタ1aをCCDカメラ2の前にセットする。この状態でステップS3に進み、R画像を撮像して画像メモリ10にR成分スペクトル画像RD1として記憶する。 続いてステップS4でG帯域フィルタ1bに切り替え、ステップS5でG成分スペクトル画像を撮像して画像メモリ10にG成分スペクトル画像GD1として記憶する。更にステップS6でB帯域フィルタ1cに切り替え、ステップS7でB成分スペクトル画像を撮像して画像メモリ10にB成分スペクトル画像BD1として記憶する。
【0058】
次にステップS8で2回目の撮像終了か否かチェックし、1回目であることからステップS9に進み、波長可変干渉フィルタ5の基板間隔XをX=X2にセットし、ステップS2〜S7の処理を繰り返す。これによって画像メモリ10には、基板間隔X2の状態で撮像されたR成分スペクトル画像RD2、G成分スペクトル画像GD2、及びB成分スペクトル画像BD2が記憶される。
【0059】
ステップS8で2回目の撮像終了を判別すると、ステップS10に進み、R成分の微分スペクトル画像を演算してΔRとして画像メモリ10に記憶する。次にステップS11でG成分の微分スペクトル画像ΔGを演算して画像メモリ10に記憶し、更にステップS12でB成分の微分スペクトル画像ΔBを演算して画像メモリ10に記憶する。
【0060】
最終的にステップS13で、画像メモリ10に記憶されているRGBの各微分スペクトル画像ΔR,ΔG,ΔBを読み出してモニタ4上に合成してカラー表示を行う表示処理を実行する。
【0061】
図8は、図9のステップS13の微分スペクトル画像表示処理の詳細である。この表示処理は、RGB微分スペクトル画像を合成表示するノーマル表示モードと、合成表示に加えてRGBの各微分スペクトル画像を単独で同時表示または切替表示する複合表示モードを持っている。
【0062】
まずステップS1で表示モードとしてノーマル表示モードまたは複合表示モードを選択する。ステップS2でノーマル表示モードの選択が判別されると、ステップS3に進み、RGB微分スペクトル画像を読み出してモニタ上に合成画像としてカラー表示する。
【0063】
ステップS4で複合表示モードの選択が判別された場合には、ステップS5でRGBの微分スペクトル画像の合成によるカラー表示に加え、R,G,Bの各微分スペクトル画像を単独で同一画面に表示(画面分割表示)または画面切替えで表示する。このような処理をステップS6で表示終了まで繰り返す。
【0064】
図9は図8のステップ5の複合表示モードにおける表示機能の説明図である。図9(A)(B)のRGB合成微分スペクトル画像50,60は、それぞれ円状の物体であり、同じ緑色で表示されている。ところが緑色に表示されるRGB合成微分スペクトル画像50,60は例えば次のような2つの場合が考えられる。
【0065】
▲1▼波長520nmの緑色単色の画像
▲2▼波長570nmのRおよびG成分と波長480nmのBおよびG成分との合成画像
このため、RGB合成の微分スペクトル画像50,60は、同じ緑色で表わされ、わずかにその明度が異なるのみとなり、前記▲1▼▲2▼のスペクトルの相違が区別がつきにくい。そこで図8の表示処理において複合表示モードを選択すると、図9(A)または図9(B)のような画像表示が行われる。例えば図9(A)の表示にあっては、RGB合成の微分スペクトル画像50が緑色であるのに対し、G成分の微分スペクトル画像50bに緑色の物体が表示される。したがって、この場合には前記▲1▼のような緑色単色画像の微分スペクトル表示であることがわかる。
【0066】
これに対し図9(B)にあっては、同じ緑色のRGB合成の微分スペクトル画像60であっても、R成分の微分スペクトル画像60aには赤色の物体が表示され、G成分の微分スペクトル画像60bには緑色の物体が表示され、B成分の微分スペクトル画像60cには青色の物体が表示される。これによって、この場合には前記▲2▼のような複数波長成分の合成画像の微分スペクトル表示であることがわかる。
【0067】
図10は図9(A)(B)の特徴を持つ画像の受光パワーを波長可変干渉フィルタの波長特性と共に表している。
【0068】
図10(A)は、波長可変干渉フィルタ5の特性であり、図9(A)の微分スペクトル画像は、図10(B)のようにλ2=520nmのみに物体のスペクトルピークがある場合を示す。このような物体によるR,G,B成分毎の受光パワーは、図10(C)のようなG画像に受光パワーをもつ画像として得られる。即ち、この場合の観察画像は波長λ2=520nmの緑色について受光パワーが得られている。
【0069】
これに対し図9(B)の微分スペクトル画像は、図10(D)のようにλ1=480nm及びλ3=570nmの2つに物体スペクトルピークがある場合を示す。この物体によるR,G,B成分毎の受光パワーは、図10(E)のように示される。このような図10(C)(E)におけるスペクトルの波長スペクトルの特徴は、図9(A)(B)のような合成表示モードによって明確に特徴のある波長が認識できる。
【0070】
尚、上記の実施形態はRGBカラー空間を例にとるものであったが、これ以外に適宜のカラー空間を適用してもよい。また上記の実施形態は測定スペクトル帯域を3分割してRGBカラー成分を割り当てているが、測定スペクトル帯域を2分割あるいは4分割以上として、それぞれに対応した種類のカラー成分を割り当てるようにしてもよい。
【0071】
また図2の実施形態にあっては、帯域フィルタに続いて波長可変干渉フィルタ5を設けているが、これを入れ替え、波長可変干渉フィルタ5に続いて帯域フィルタを設けるようにしてもよい。
【0072】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、測定対象スペクトル帯域が可視光域外であっても、測定対象スペクトル帯域を3分割して各分割帯域ごとに例えばRGBの疑似カラー成分を対応させ、疑似カラー成分ごとの微分スペクトル画像を生成して合成することにより疑似カラー表示することで、画面上で特徴のあるスペクトル帯域とその強弱をカラー表示できる。
【0073】
また可視光域の中の特定の帯域に制限して測定対象スペクトル帯域を設定し、同様に測定対象スペクトル帯域を3分割してRGBの疑似カラー成分を割り当てて微分スペクトル画像を疑似カラーで合成表示することで、例えば可視光域の赤色を中心とした帯域についても疑似カラー表示によってフルカラーによるスペクトル帯域の特徴を表示できる。
【0074】
またRGBカラー成分の微分スペクトル画像の合成によるカラー表示に加え、RGBカラー成分単独の微分スペクトル画像を併せて表示することで、単一のスペクトルピークを持つ色成分による発色なのか2以上のスペクトルピークを持つ色成分の合成による発色なのかを見分けることができ、カラー表示によるスペクトル帯域の特徴の判断をより正確に行うことができる。
【0075】
更に本発明にあっては、撮像素子として従来の1画素ごとにRGB分の3画素を設けたカラー撮像素子を必要とせず、モノクロ用の撮像素子でよいことから、微分スペクトル画像の生成に使用するCCDカメラとして簡単で安価なものを使用でき、実験室的な分析装置としてはもちろんのこと、装置構成が簡単でコストが安価で済むことから、微分イメージセンサとしての利用が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の説明図
【図2】図1の装置構成のブロック図
【図3】本発明で使用する波長可変干渉フィルタの構造説明図
【図4】本発明による微分スペクトル画像処理の機能ブロック図
【図5】図2における帯域フィルタと波長可変干渉フィルタの波長特性をRGB比感度と共に示した説明図
【図6】図3による画像処理機能の処理手順の説明図
【図7】図3による画像処理動作のフローチャート
【図8】図7の画像表示処理の詳細フローチャート
【図9】緑色の微分スペクトル画像が合成されるR,G,B成分画像の説明図
【図10】図9のR,G,B成分画像を生成する際の波長可変干渉フィルタによる受光パワーを示した説明図
【符号の説明】
1:フィルタ切替装置
1a,1b,1c:帯域フィルタ
2:CCDカメラ
2a:光軸
3:信号処理装置
4:モニタ
5:波長可変干渉フィルタ
6:光学レンズ
7:撮像素子
8:CPU
9:AD変換器
10:画像メモリ
11,12,13:出力IF
13,14:駆動部
15:撮影画像読込み部
16:微分画像生成部
17:表示処理部
18a〜18c,19a〜19c:フィルタ帯域特性
24:駆動電圧源
25a,25b:ガラス基板
26a,26b:金属膜
27:圧電素子
30:撮影画像
31a〜31b:RGBスペクトル画像
34a〜34b,50a〜50c,60a〜60c:RGB微分スペクトル画像
35,50,60:合成微分スペクトル画像

Claims (3)

  1. 光学系により結像された対象物の画像を撮影する撮像素子と、
    可視光域外、もしくは可視光領域内の特定色の測定対象スペクトル帯域を少なくとも2以上の複数帯域に分割し、前記撮像素子に入射する光線のスペクトル帯域を前記分割帯域毎に選択する帯域選択部と、
    前記撮像素子に入射する光線の透過特性を変化可能な波長可変干渉フィルタと、
    前記分割帯域の各々に対して前記波長可変干渉フィルタを第1の透過特性、該第1の透過特性とは異なる第2の透過特性に設定し、当該透過特性を前記第1の透過特性と前記第2の透過特性に設定する毎に前記撮像素子でスペクトル画像を撮影し、当該画像を前記分割帯域毎に画像メモリに記憶する撮影画像読込み部と、
    前記分割帯域毎に、前記画像メモリに記憶された透過特性の異なる2種のスペクトル画像の差を画素単位に演算して微分スペトル画像を生成する微分画像生成部と、
    前記分割帯域の各々に対して所定のカラー空間を構成する複数のカラー成分を各々に対応させ、前記複数のカラー成分毎に前記微分スペトル画像をカラー表示する表示処理部と、を備えたことを特徴とする微分スペクトル画像処理装置。
  2. 請求項1記載の微分スペクトル画像処理装置に於いて、前記測定対象スペクトル帯域を3分割し、前記カラー空間をRGBカラー空間とし、前記3つの分割帯域の各々に前記RGBカラー空間のR成分、G成分及びB成分の各々を対応させ、前記R成分、G成分及びB成分のそれぞれについて生成した微分スペクトル画像を合成してカラー表示することを特徴とする微分スペクトル画像処理装置。
  3. 請求項1又は2記載の微分スペクトル画像処理装置に於いて、前記表示処理部は、前記カラー成分の微分スペクトル画像を合成して出力表示すると同時に、各記カラー成分の微分スペクトル画像を単独で同時表示又は切替表示することを特徴とする微分スペクトル画像処理装置。
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