JP3729699B2 - マイクロカプセル及びマイクロカプセルの使用方法 - Google Patents

マイクロカプセル及びマイクロカプセルの使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内包物を有するマイクロカプセル及びこのマイクロカプセルの使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、シックハウス等の居住環境問題を解決するため、家庭用住宅や集合住宅等の建築物の建築基材として用いられるコンクリートや漆喰等に、青森ヒバ等から抽出したヒノキチオールを含有する液体と、この液体を内包するカプセル本体とからなるマイクロカプセルを複数混入させている。これらマイクロカプセルのカプセル本体は、それぞれ固有の崩壊開始時期を有し、経時変化とともに、それぞれのカプセル本体が崩壊し、ヒノキチオールを含有した液体がカプセル本体から流出していくものである。そして、この流出した液体から、揮発性を有するヒノキチオールがコンクリートから発散し、該ヒノキチオールが経年的に室内に存在することとなる。
【0003】
しかして、ヒノキチオールが、前記建築物に使用される合板等の内装材の製造工程及び施行する際に用いられる大量の合成樹脂接着剤が発散するホルムアルデヒド等の人体に有害な物質を、中和分解したり、白アリやダニなどの防虫作用やカビ等の抗菌作用を営んだりしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したマイクロカプセルは、カプセル本体の崩壊と同時に一気に内包した液体全部を流出するものであるうえ、カプセル本体が、温度変化や光により、その固有の崩壊開始時期より早期に崩壊を開始することがあり、短期間(2〜3年)で略全部のマイクロカプセルのカプセル本体が崩壊を開始してしまうことがあった。このため、建築物の寿命に合わせて、長年(10年又はそれ以上)に亘ってヒノキチオールを室内に存在させ続けることが難しく、特に、発生の絶えない白アリやダニやカビ等の発生を有効に防止できなかった。
【0005】
また、上述したように、長年に亘って、経年的にヒノキチオールを作用させにくいことは、前記マイクロカプセルの用途を拡げられないことに直結するものであり、これは、ヒノキチオールの未知な性質や、有効な使用方法の解明が進まない原因の一つとなっていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて、ヒノキチオールを内包するカプセル本体を、複数のセラミックス粒子と、経時変化により崩壊する崩壊性粒子とからなるものとすることにより、崩壊性粒子が崩壊してカプセル本体に形成される開口を、崩壊しないセラミックス粒子により、可及的に小さくし、ヒノキチオールを時間を掛けてゆっくり放出できるマイクロカプセルを提供しようとするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明のマイクロカプセルは、ヒノキチオールと、このヒノキチオールを内包する多孔質カプセル本体とを具備し、前記カプセル本体を、多孔質である複数のセラミックス粒子と、崩壊性及び徐放性を有する植物性蛋白質からなる複数の崩壊性粒子とからなるものとし、少なくとも経時変化により、これら崩壊性粒子のみが崩壊することにより、カプセル本体に内包されたヒノキチオールが放出される開口が形成され、この開口と前記セラミックス粒子が有する孔とによって前記カプセル本体を多孔質としていることを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、崩壊せずにその配置位置を保っているセラミックス粒子により、植物性蛋白質からなる崩壊性粒子が崩壊して形成される開口を可及的に小さくできるので、カプセル本体から放出されるヒノキチオールの単位時間あたりの放出量を少なくできる。この結果、ヒノキチオールはカプセル本体からゆっくりと時間をかけて放出されることとなる。すなわち、このマイクロカプセルを複数用いて使用する場合、それぞれのマイクロカプセルのカプセル本体の崩壊開始時期がまちまちであることに加えて、特に本発明のカプセル本体は上述した作用を奏するので、温度変化や光により、崩壊開始時期より早期にカプセル本体が崩壊を開始するマイクロカプセルがあっても、このマイクロカプセル群は、長年(10年又はそれ以上)に亘って経年的にヒノキチオールを放出することとなる。この結果、このマイクロカプセルの用途を拡げられるだけでなく、ヒノキチオールの未知な性質や、有効な使用方法の解明につながると考えられる。
【0009】
一方、かかるマイクロカプセルに適した使用方法としては、該マイクロカプセルを複数、建築基材または土壌に混入して使用することが挙げられる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に模式的に示す建築資材10は、家庭用住宅に用いられて床面や壁面を形成するものであり、建築基材たるコンクリート11に内装材12を貼り付けてなる。前記コンクリート11は、セメント、粗骨材13、細骨材及び水等の配合比率の異なる各種のものが使用できる。内装材12は、合板等の木質系のものであり、合成樹脂製接着剤により前記コンクリート11に貼り付け、居住性の向上を図っている。
【0012】
しかして、本実施例では、複数のマイクロカプセル2を前記コンクリート11に混入して使用している。
【0013】
各マイクロカプセル2は、ヒノキチオールを含有する液体21と、この液体21を内包する多孔質カプセル本体22とを具備するものある。これらマイクロカプセル2は、前記コンクリート11を混練する際に、気泡14とともに、コンクリート11の体積の3〜5%程度混合される。そして、硬化したコンクリート11には、図1に模式的に示すように、均一に拡散した気泡14内部にそれぞれマイクロカプセル2が存在している。
【0014】
ヒノキチオールを含有する液体21は、例えば、青森ヒバや台湾ヒノキの木片、外皮、枝葉等を細かく粉砕したものに、高温高圧の蒸気をあて、その蒸気を冷却液化して得た抽出原液の油層分を使用している。
【0015】
カプセル本体22は、複数の崩壊性粒子23とセラミックス粒子24とからなる容器である。具体的には、図2に模式断面図で示すように、これらセラミックス粒子24と崩壊性粒子23とを、万遍なく配置させて形成した、2μm程度の球状容器である。
【0016】
各崩壊性粒子23は、崩壊性及び徐放性を有するものであり、例えば、大豆レシチン等の植物性蛋白質から製造している。そして、これら崩壊性粒子23は、それぞれ固有の崩壊開始時期を有している。しかして、少なくとも経時変化ととも前記崩壊性粒子23が崩壊することにより、図3に模式断面図で示すように、カプセル本体22に前記液体21を外部に流出可能な開口25が形成される。また、これら崩壊性粒子23は、温度変化や光により、前記崩壊開始時期より早期に崩壊する場合がある。
【0017】
セラミックス粒子24は、一つのカプセル本体22に、崩壊性粒子23の粒子数の1〜1.5倍の粒子数が存在し、図3に模式断面図で示すように、開口25から流出する液体21の一部を塞き止めることができるものである。
【0018】
したがって、以上に詳述した、コンクリート11に混入されたマイクロカプセル群は、温度変化や光によって、崩壊開始時期より早期に崩壊を開始するマイクロカプセル2があっても、長年(10年又はそれ以上)に亘って、経年的にヒノキチオールをコンクリート11から発散し続けることとなる。このマイクカプセル群の具体的な作用について以下に説明する。
【0019】
まず、各マイクロカプセル2のカプセル本体22を構成する崩壊性粒子23が、経時変化により、崩壊開始時期を迎えて崩壊したり、温度変化や光により、その崩壊開始時期より早期に崩壊したりすることにより、ヒノキチオールを含有した液体21を外部に流出可能な開口25が、カプセル本体22に形成される。この開口25は、崩壊せずにその配置位置を保っているセラミックス粒子24により、比較的小さく形成されるので、カプセル本体22から放出される液体21の単位時間あたりの放出量を少なくできる。この結果、液体21はカプセル本体22からゆっくりと時間をかけて放出されることとなる。そして、流出した液体21からヒノキチオールが揮発してコンクリート11から発散する。
【0020】
一方、崩壊した崩壊性粒子23がなく、カプセル本体22に開口25が形成されていないマイクロカプセル2においては、このマイクロカプセル2のカプセル本体22に内包されているヒノキチオールは、その揮発性により、溶媒から揮発することとなる。この揮発したヒノキチオールは、カプセル本体22が多孔質であるとともに崩壊性粒子23が徐放性を有するものであるので、カプセル本体22から徐々に外部に放出され、コンクリート11から発散する。
【0021】
したがって、上述した各マイクロカプセル2の作用に加えて、前記マイクロカプセル群を構成する各マイクロカプセル2のカプセル本体22は、それぞれ崩壊開始時期がまちまちであるので、温度変化や光によって、崩壊開始時期より早期に崩壊を開始するマイクロカプセル2があっても、長年に亘って、経年的にコンクリート11からヒノキチオールが発散し続けることとなる。
【0022】
以上に詳述したように、本実施例にかかるマイクロカプセル2の使用方法によれば、上述した作用により、長年(10年又はそれ以上)に亘って経年的に、カビ等の抗菌作用、白アリやダニ等の防虫作用、及び建築資材10に使用される合成樹脂接着剤が発散するホルムアルデヒド等の有害な化学物質の中和分解を営み続ける抗菌コンクリート11を、提供することができる。したがって、人体に有害な成分が含まれるとされる防虫剤の使用を不要とできるようになる。さらには、この抗菌コンクリート11によって、現代に代表されるコンクリートの居住空間に木の温もりを与え続けることができるようになる。このように、ヒノキチオールが、アレルギー性皮膚炎や喘息等を引き起こすとされているダニ等を防虫したり、化学物質を中和分解したりし続けることは、前述したようなアレルギー性物質が人体に作用することを長年に亘って防止できることにつながると考えられる。
【0023】
また、各マイクロカプセル2が、それぞれ、気泡14内部に存在して、この気泡14を埋めているので、コンクリート11の強度を向上できる。特に、本実施例のマイクロカプセル2のカプセル本体22は、崩壊しないセラミックス粒子24を有するものであるので、半永久的にセラミックス粒子24が前記気泡14を埋めることとなり、コンクリート11の強度向上を無理なく図れる。さらに、カプセル本体22が多孔質であるため、該カプセル本体22がコンクリート11に発生する露滴を吸収し、断熱効果を奏するだけでなくコンクリート11の劣化を防止できるようになる。
【0024】
特に、本実施例のマイクロカプセルは、セラミックス粒子24と崩壊性粒子23とを、万遍なく配置させているので、崩壊する崩壊性粒子23の配置位置に関係なく、形成される開口25を無理なく小さくすることができ、ヒノキチオールを含有する液体21の流出量に安定性を与えることができる。
【0025】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施例に限られるものではない。例えば、建築基材は、漆喰や和風家屋における塗り壁でもよい。さらには、上述したマイクロカプセル群を工場跡地等の土壌に混入してもよく、この場合、土壌中の有害物質を中和分解し続けることができる。しかして、土地の改善を、自然の力を用いで解決することができる。
【0026】
また、ヒノキチオールを含有する液体としては、上記抽出原液の水層分を使用してもよい。
【0027】
さらには、セラミックス粒子の素材は、人工的に作った無機質固体材料であれば、その種は限定されるものではない。
【0028】
さらに言えば、上述した構成、作用から明らかなように、カプセル本体を形成するセラミックス粒子と崩壊性粒子との粒子数比は、形成される開口の大きさに大きく関係するので、該粒子数比を適宜変更すれば、単位時間あたりのヒノキチオールを含有する液体の流出量を調整できる。
【0029】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しな範囲で種々変更可能である。
【0030】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明にかかるマイクロカプセルは、ヒノキチオールと、このヒノキチオールを内包する多孔質カプセル本体とを具備し、前記カプセル本体を、多孔質である複数のセラミックス粒子と、崩壊性及び徐放性を有する植物性蛋白質からなる複数の崩壊性粒子とからなるものとし、少なくとも経時変化により、これら崩壊性粒子のみが崩壊することにより、カプセル本体に内包されたヒノキチオールが放出される開口が形成され、この開口と前記セラミックス粒子が有する孔とによって前記カプセル本体を多孔質としていることを特徴とする。
【0031】
したがって、崩壊せずにその配置位置を保っているセラミックス粒子により、崩壊性粒子が崩壊して形成される開口を可及的に小さくできるので、カプセル本体から放出されるヒノキチオールの単位時間あたりの放出量を少なくできる。この結果、ヒノキチオールはカプセル本体からゆっくりと時間をかけて放出されることとなる。すなわち、このマイクロカプセルを複数用いて使用する場合、それぞれのカプセル本体の崩壊開始時期がまちまちであることに加えて、特に本発明のカプセル本体は上述した作用を奏するので、温度変化や光により、崩壊開始時期より早期にカプセル本体が崩壊を開始するマイクロカプセルがあっても、このマイクロカプセル群は、長年(10年又はそれ以上)に亘って経年的にヒノキチオールを放出することとなる。
【0032】
このように、長年に亘って経年的にヒノキチオールを作用させることができるようになり、前記ヒノキチオールが、発生の絶えることのない、ダイオキシンや車等の排気ガスの有害成分たるNOXを中和分解したり、MRSAと称されて問題となっている薬剤耐性ブドウ球菌に対して抗菌したりすることが確認できた。
【0033】
本願請求項1にかかるマイクロカプセルに適した使用方法としては、該マイクロカプセルを複数、建築基材または土壌に混入して使用することが挙げられる。
【0034】
しかして、前記マイクロカプセルを複数、建築基材に混入した場合、上述した作用により、このマイクロカプセル群から長年に亘って経年的に放出され、建築基材から発散するヒノキチオールが、カビ等の抗菌作用、白アリやダニ等の防虫作用、及び建築物に使用される合成樹脂接着剤が発散するホルムアルデヒド等の有害な化学物質の中和分解を営み続けることになる。したがって、人体に有害な成分が含まれるとされる防虫剤の使用を不要とできるようになる。このように、ヒノキチオールが、アレルギー性皮膚炎や喘息等を引き起こすとされているダニ等を防虫したり、化学物質を中和分解したりし続けることは、前述したようなアレルギー性物質が人体に作用することを長年に亘って防止できることにつながると考えられる。
【0035】
また、前記建築基材が病院等の医療関係の建築物を構成するものであれば、上述した作用により、この建築基材から長年に亘って経年的に発散し続けるヒノキチオールが、 MRSAと称されて問題となっている薬剤耐性ブドウ球菌に対して抗菌作用を営み続けることとなる。このように、病院内にヒノキチオールという天然の物質を漂わすことは、上述した効果を奏するだけでなく病院内の患者にリラックス感を与えることができると考えられる。
【0036】
さらに言えば、前記建築基材が、車庫等を構成するものであれば、上述した作用により、この建築基材から長年に亘って経年的に発散し続けるヒノキチオールが、車等の排気ガスの有害成分たるNOXに対して中和分解を営み続けることとなる。この場合、建築基材によって密閉された通気性の悪い地下駐車場等に、マイクロカプセルを混入した建築基材を用いることは、複雑な通気ダクトを不要とできるようになる。
【0037】
特に、前記建築基材がコンクリートであれば、現代に代表されるコンクリートの居住空間に木の温もりを与え続けることができるようになる。
【0038】
このように、コンクリート等の建築基材に本発明のマイクロカプセルを混入させる使用方法は、セラミックスにより建築基材の強度を増すことができるとともに、カプセル本体が多孔質であるため、該カプセル本体がコンクリートに発生する露滴を吸収し、断熱効果を奏するだけでなくコンクリートの劣化を防止できるようになる。
【0039】
一方、前記マイクロカプセルを複数、工場跡地等の土壌に混入した場合、上述した作用により、このマイクロカプセル群から長年に亘って経年的に放出されたヒノキチオールが、ダイオキシンや工場跡地での有害物質を、中和分解し続けることとなる。したがって、土壌の改善や環境問題をヒノキチオールという自然の力を用いて解決することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における一実施例の建築資材を示す模式断面図。
【図2】同実施例のマイクロカプセルを示す模式断面図。
【図3】同実施例のヒノキチオールを含有する液体が、外部に流出する状態を示す模式断面図。
【符号の説明】
2・・・マイクロカプセル
11・・・建築基材(コンクリート)
21・・・ヒノキチオール(ヒノキチオールを含有する液体)
22・・・カプセル本体
24・・・セラミックス粒子
23・・・崩壊性粒子
25・・・開口

Claims (2)

  1. ヒノキチオールと、このヒノキチオールを内包する多孔質カプセル本体とを具備し、前記カプセル本体を、多孔質である複数のセラミックス粒子と、崩壊性及び徐放性を有する植物性蛋白質からなる複数の崩壊性粒子とからなるものとし、少なくとも経時変化により、これら崩壊性粒子のみが崩壊することにより、カプセル本体に内包されたヒノキチオールが放出される開口が形成され、この開口と前記セラミックス粒子が有する孔とによって前記カプセル本体を多孔質としていることを特徴とするマイクロカプセル。
  2. ヒノキチオールと、このヒノキチオールを内包する多孔質カプセル本体とを具備し、前記カプセル本体を、多孔質である複数のセラミックス粒子と、崩壊性及び徐放性を有する植物性蛋白質からなる複数の崩壊性粒子とからなるものとし、少なくとも経時変化により、これら崩壊性粒子のみが崩壊することにより、カプセル本体に内包されたヒノキチオールが放出される開口が形成され、この開口と前記セラミックス粒子が有する孔とによって前記カプセル本体を多孔質としていることを特徴とするマイクロカプセルを複数、建築基材または土壌に混入して使用することを特徴とするマイクロカプセルの使用方法。
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