JP3729647B2 - 溶融炉の炉床部の耐火構造 - Google Patents

溶融炉の炉床部の耐火構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、灰溶融炉等の炉床部の耐火構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、焼却灰を溶融する灰溶融炉としては例えば図5に示すような溶融炉40がある。この溶融炉40の炉床部41の表面には耐火材42が設けられており、この耐火材42は、熱伝導率の高い耐火用キャスタブル43と熱伝導率の低い断熱用キャスタブル44との二層で構成されている。このうち上記耐火用キャスタブル43は、断熱用キャスタブル44の内側に設けられて炉内面を形成している。また、上記炉床部41の上方には、炉内45に供給された灰46を加熱して溶融させる溶融バーナ47が設けられている。
【0003】
これによると、炉内45に供給された灰46は溶融バーナ47によって加熱溶融されるが、この際、炉内45は非常に高温となるため、耐火用キャスタブル43は炉床部41を熱損傷から保護する役割を果たしている。さらに、断熱用キャスタブル44は炉内45の熱が溶融炉40の外部へ過剰に放散することを防止する役割を果たし、これにより、炉内45を高温に維持することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の従来形式では、断熱用キャスタブル44の熱伝導率が耐火用キャスタブル43の熱伝導率よりも低いため、耐火用キャスタブル43から断熱用キャスタブル44への熱の移動が少なくなり、その結果、耐火材42からの抜熱効果が低下する。これにより、耐火用キャスタブル43が高温となって、耐火用キャスタブル43の熱溶損が激しくなり、耐火材42の寿命が短くなるといった問題がある。
【0005】
上記のような問題に対して、実開平2−92447号公報に示されるように、耐火材の外側に冷却空気流路を形成し、この冷却空気流路に冷却空気を流して耐火材を強制的に冷却する構成が挙げられるが、冷却空気に奪われる熱が増大するため、炉内の温度が下がって溶融熱効率が低下してしまうといった問題や、一旦休止した溶融炉の立ち上げに長時間を要するといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、炉内を高温に維持して熱効率の低下を防止し、炉の立ち上げに要する時間を短縮し、さらに、耐火材からの抜熱効果を向上させることができる溶融炉の炉床部の耐火構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本第1発明における溶融炉の炉床部の耐火構造は、断熱用キャスタブルと耐火用キャスタブルとの二層で構成された耐火材が炉床部の表面に設けられ、上記断熱用キャスタブルは、耐火用キャスタブルよりも熱伝導率の低いものが用いられ、耐火用キャスタブルの内側に設けられて炉内面を形成し、上記耐火用キャスタブルの外側に、上記耐火材を冷却する冷却用流体が流れる冷却用流路が設けられ、上記冷却用流路側から耐火用キャスタブル内へ突入して上記耐火材の熱を冷却用流路側へ伝える突起部材が複数設けられているものである。
【0008】
これによると、耐火材の熱は、突起部材を介して冷却用流路側へ伝えられ、冷却用流路内を流れる冷却用流体によって奪われる。これにより、耐火材からの抜熱効果が向上する。
【0009】
また、耐火用キャスタブルよりも熱伝導率の低い断熱用キャスタブルが上記耐火用キャスタブルの内側に設けられて炉内面を形成しているため、炉内を高温に維持することができ、これにより、溶融熱効率の低下を防止することができ、さらに、一旦休止した溶融炉の立ち上げに要する時間を短縮することができる。
【0010】
本第2発明における溶融炉の炉床部の耐火構造は、断熱用キャスタブルは酸化アルミニウムと酸化ケイ素の化合物から成り、耐火用キャスタブルは酸化アルミニウムと炭化ケイ素の化合物から成るものである。
【0011】
本第3発明における溶融炉の炉床部の耐火構造は、冷却用流路は耐火用キャスタブルに沿って配設された冷却用配管内に形成され、
棒状の突起部材が上記冷却用配管に取付けられているものである。
【0012】
これによると、耐火材の熱は、突起部材を介して冷却用配管側へ伝えられ、冷却用配管内を流れる冷却用流体によって奪われる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
1は、ごみ焼却炉(図示せず)の後燃ストーカ(図示せず)の後に設けられた溶融炉であり、上記焼却炉から発生した灰2を加熱溶融するものである。
【0014】
上記溶融炉1の上流端部には、上記焼却炉から発生した灰2を貯留する灰貯留ホッパ3と、灰貯留ホッパ3内の灰2を炉内4へ押し出す灰押出し装置5とが設けられている。また、炉内4は、予熱室4aと、予熱室4aの下流側に隣接する溶融室4bとに別れている。上記予熱室4aの天井部には、排ガスを排出する排出通路8が設けられている。また、上記溶融室4bの天井部には、溶融室4bへ供給された灰2を加熱して溶融させる溶融バーナ6が設けられている。また、上記溶融室4bの下流端部には、溶融バーナ6で灰2を加熱溶融することによって生成されたスラグが排出されるスラグ排出口7が形成されている。尚、スラグ排出口7から排出されたスラグは、スラグ排出口7の下方に設けられた水槽(図示せず)内に落下して水砕スラグとなり、スラグコンベヤ(図示せず)で搬出される。
【0015】
また、溶融室4bの炉床部10の表面には、断熱用キャスタブル11と耐火用キャスタブル12との二層で構成された耐火材13が設けられている。上記断熱用キャスタブル11と耐火用キャスタブル12との組成および熱伝導率を下記の表1に示す。
【0016】
【表1】
Figure 0003729647
【0017】
すなわち、上記表1のA欄に示すように、上記断熱用キャスタブル11は酸化アルミニウム(Al23)と酸化ケイ素(SiO2)の化合物から成り、その重量比率はAl23が57%に対してSiO2が35%であり、熱伝導率は0.55(kcal/m・hr・℃)である。
【0018】
また、上記表1のB欄に示すように、上記耐火用キャスタブル12は酸化アルミニウム(Al23)と炭化ケイ素(SiC)の化合物から成り、その重量比率はAl23が57%に対してSiCが35%であり、熱伝導率は4(kcal/m・hr・℃)である。このように、上記断熱用キャスタブル11の熱伝導率は耐火用キャスタブル12の熱伝導率の約1/7の値となっている。
【0019】
また、上記断熱用キャスタブル11は、耐火用キャスタブル12の内側に設けられて炉内面を形成している。また、耐火用キャスタブル12の外側に沿って、複数の冷却用配管14が並設され、これら冷却用配管14の内部には、上記耐火材13を冷却する冷却水15(冷却用流体の一例)が流れる冷却用流路16が形成されている。
【0020】
上記各冷却用配管14の外面には、耐火用キャスタブル12の内部へ突入して耐火材13の熱を冷却用流路16側へ伝える棒状のスタッド17(突起部材の一例)が複数本溶接されている。尚、上記冷却用配管14とスタッド17とは金属製である。
【0021】
以下、上記構成における作用を説明する。
灰貯留ホッパ3内の灰2は、灰押出し装置5の作動によって炉内4へ押し出され、予熱室4a内で予熱された後、溶融室4b内で溶融バーナ6によって表面から加熱溶融される。この際、スラグは、炉床部10上の灰2の表面を流下してスラグ排出口7から排出され、水槽(図示せず)内に落下して水砕スラグとなり、スラグコンベヤ(図示せず)で搬出される。
【0022】
このような灰2の加熱溶融時において、炉床部10の耐火材13の熱は、スタッド17を介して冷却用流路16側へ伝えられ、冷却用配管14内を流れる冷却水15によって奪われる。これにより、耐火材13からの抜熱効果が向上する。
【0023】
また、上記表1に示すように、断熱用キャスタブル11は耐火用キャスタブル12よりも熱伝導率が低く、その断熱用キャスタブル11を耐火用キャスタブル12の内側に設けて炉内面を形成しているため、溶融室4bを高温に維持することができ、これにより、溶融熱効率の低下を防止することができ、さらに、一旦休止した溶融炉1の立ち上げに要する時間を短縮することができる。
【0024】
また、上記断熱用キャスタブル11の溶融室4b内に面した表面が高温により溶損して断熱用キャスタブル11が減肉し、このような断熱用キャスタブル11の初期溶損がある程度進行すると、断熱用キャスタブル11の表面には上記初期溶損によって生成された溶融物のセルフコーティング層が形成され、熱的に平衡な状態となる。このような状態では、初期溶損後における断熱用キャスタブル11の溶損速度が極めて小さくなり、断熱用キャスタブル11の寿命が延長される。
【0025】
上記実施の形態では、表1のB欄に示した組成の耐火用キャスタブル12を用いているが、B欄の代りにC欄に示した組成の耐火用キャスタブル12を用いてもよい。すなわち、C欄に示した耐火用キャスタブル12は、酸化アルミニウム(Al23)と酸化ケイ素(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)の化合物から成り、その重量比率はAl23が86%に対してSiO2が3%でさらにMgOが6.5%であり、熱伝導率は4.8(kcal/m・hr・℃)である。
【0026】
上記実施の形態では、冷却用流体の一例として冷却水を用いているが、冷却空気を用いてもよい。また、突起部材の一例としてスタッド17を用いているが、丸棒や角棒等を用いてもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、耐火材の熱は、突起部材を介して冷却用流路側へ伝えられ、冷却用流路内を流れる冷却用流体によって奪われる。これにより、耐火材からの抜熱効果が向上する。
【0028】
また、耐火用キャスタブルよりも熱伝導率の低い断熱用キャスタブルが上記耐火用キャスタブルの内側に設けられて炉内面を形成しているため、炉内を高温に維持することができ、これにより、溶融熱効率の低下を防止することができ、さらに、一旦休止した溶融炉の立ち上げに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における溶融炉の炉床部の耐火構造を示す側面から見た断面図である。
【図2】同、溶融炉の炉床部の耐火構造を側面から見た拡大断面図である。
【図3】図2におけるX−X矢視図である。
【図4】同、溶融炉の構成を示す側面図である。
【図5】従来の溶融炉の炉床部の耐火構造を示す側面から見た断面図である。
【符号の説明】
1 溶融炉
10 炉床部
11 断熱用キャスタブル
12 耐火用キャスタブル
13 耐火材
14 冷却用配管
15 冷却水(冷却用流体)
16 冷却用流路
17 スタッド(突起部材)

Claims (3)

  1. 断熱用キャスタブルと耐火用キャスタブルとの二層で構成された耐火材が炉床部の表面に設けられ、
    上記断熱用キャスタブルは、耐火用キャスタブルよりも熱伝導率の低いものが用いられ、耐火用キャスタブルの内側に設けられて炉内面を形成し、
    上記耐火用キャスタブルの外側に、上記耐火材を冷却する冷却用流体が流れる冷却用流路が設けられ、
    上記冷却用流路側から耐火用キャスタブル内へ突入して上記耐火材の熱を冷却用流路側へ伝える突起部材が複数設けられていることを特徴とする溶融炉の炉床部の耐火構造。
  2. 断熱用キャスタブルは酸化アルミニウムと酸化ケイ素の化合物から成り、耐火用キャスタブルは酸化アルミニウムと炭化ケイ素の化合物から成ることを特徴とする請求項1記載の溶融炉の炉床部の耐火構造。
  3. 冷却用流路は耐火用キャスタブルに沿って配設された冷却用配管内に形成され、
    棒状の突起部材が上記冷却用配管に取付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の溶融炉の炉床部の耐火構造。
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