JP3728977B2 - 電波反射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電波反射装置、特に3面の反射面を有する電波反射装置に関する。
【従来の技術】
従来より、入射電波を入射方向に反射する電波反射装置が知られており、レーンマーカ等に用いられている。
【0002】
例えば、特開平10−103963号公報には、レーン上に角すい型の電波反射装置を設け、車両から送信した電波を入射方向に反射することで、レーンに対する車両位置を検出する構成が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電波反射装置を路面の所定位置、例えば路面中央に配置する場合、車両走行に支障をきたさないように、高さ方向に制約を設ける必要がある。もちろん、高さはできるたけ低くするのが理想であるが、単に高さを低くすると入射電波を入射方向に反射させる反射効率の低下を招く問題が生じる。
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、反射効率を維持しつつ、高さ方向、すなわち路面に対して直角方向のサイズを縮小できる電波反射装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、入射電波を入射方向に反射する電波反射装置であって、前記入射電波を反射する3面の反射面を有し、前記3面は互いに略直角をなし、前記3面の内の1面は路面に面して配置され、他の2面は路面に対して略直角に配置されることを特徴とする。3つの反射面を有し、かつ3面の内の1面を路面に面して配置することで、路面に対して入射する方向、すなわち高さ方向の反射効率を上げ、高さ方向のサイズ縮小化が可能となる。また、3面のなす角を略直角とすることで、入射電波を入射方向に反射することが可能となる。
【0008】
また、本発明では、さらに、前記入射電波の偏波方向を変えるポラライザと、前記ポラライザからの電波が所定の偏波面を有する場合のみ透過する偏波フィルタとを有する。ポラライザと偏波フィルタを組み合わせることで、入射円偏波と同一旋回方向を有する同旋円偏波を反射し、電波反射装置以外の物体からの反射電波(逆旋円偏波)と区別することが可能となる。また、ポラライザと偏波フィルタの偏波方向を調整することで、入射電波の旋回方向に応じて反射の有無を調整することも可能となる。
【0009】
前記ポラライザを、路面に応じて異なる偏波方向を有するように配置し、配置される路面に応じて前記偏波フィルタの透過の可否を決定することで反射の有無を調整できる。すなわち、偏波フィルタを透過することで反射を許可し、偏波フィルタを透過しないことで反射を禁止できる。ポラライザの偏波方向を右分岐路と左分岐路で異ならせることで、反射の有無により分岐路と左分岐路を識別することができる。
【0010】
本発明において、前記ポラライザは、前記路面に面して配置される1面を2分割するように配置され、前記2分割された1面の一方は、その反射面が絶縁体で形成され、前記偏波フィルタは、水平偏波のみを透過するフィルタとすることができる。サイズの制約条件などから、路面に面して配置される1面を2分割するように(例えば、矩形状をなす面の対角線上に配置する場合など)ポラライザを配置した場合、入射電波の経路として、まず反射面で反射した後にポラライザ及び偏波フィルタを透過する第1経路と、ポラライザ及び偏波フィルタを透過した後に反射面で反射する第2経路が存在することになる。ポラライザ及び偏波フィルタで所定の偏波方向を有する円偏波のみを3つの反射面で反射させようとした場合、第1の経路ではポラライザに入射する前に反射して逆旋円偏波となるので、ポラライザで偏波された後、偏波フィルタで透過できないことになる。例えば、左円偏波をポラライザで直線偏波に変換して偏波フィルタを透過させ3つの反射面で反射させる場合、ポラライザに入射する前に右円偏波となるとポラライザでは水平偏波に変換されてしまい、偏波フィルタを透過できず3つの反射面で反射できなくなる。そこで、2分割された1面の一方、具体的には第1経路においてポラライザの前に存在する反射面を絶縁体で形成することで、その反射電波が逆旋円偏波となることを防止し、所定の偏波方向を有する円偏波のみを3つの反射面で反射させることができる。また、絶縁体で形成した場合、同旋円偏波で反射することが可能となるが、その位相は180度ずれるので、第2経路で透過した電波との位相差も180度となり、両経路の電波同士が干渉して相殺する(位相相殺)おそれがある。そこで、反射により位相が180度ずれる水平偏波のみを偏波フィルタで透過することで、第2経路で透過した水平偏波の位相を反射時に180度ずらして第1経路で透過した水平偏波と合わせ、相殺を防止して反射強度を確保することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1には、本実施形態に係る電波反射装置10の斜視図が示されている。電波反射装置10は、水平面に対して微小角傾いた第1の反射面10aと、この第1の反射面10aに対して略直角に立設された第2の反射面10b及び第3の反射面10cから構成される。第2の反射面10bと第3の反射面10cとのなす角も略直角である。第1の反射面10aは路面に面して配置される。また、第2面の反射面10bと第3の反射面10cは、路面に対して略直角に配置される。
【0013】
図2には、図1に示された電波反射装置の縦断面図が示されている。図から分かるように、第1の反射面10aは水平面、すなわち路面に対して所定角αだけ傾いて形成されている。傾き角αは、入射電波が水平面内に平行な方向から到来するのではなく、所定の接地角(下向き角)をもって入射することを考慮して設定される。これにより、入射電波に対する高さ方向(鉛直方向)の指向性が拡大する。
【0014】
本実施形態の電波反射装置10は3つの反射面10a、10b、10cを有しているため、高さ方向のサイズ、すなわち反射面10b、10cの高さを低くしても、反射面10aで補うことで十分な反射効率を得ることができる。
【0015】
図3には、本実施形態の電波反射装置10の一適用例が示されている。電波反射装置10は路面に沿って所定間隔毎に設けられ、車両12に搭載されたレーダ装置14から円偏波を送信する。円偏波は水平面に対し所定の接地角θ(θはたとえば3°)で送信される。電波反射装置10に対して送信された円偏波は電波反射装置10で入射方向に反射され、車両12に搭載されたレーダ装置14で受信される。車両12では、反射電波に基づいて電波反射装置10の距離及び方位を検出する。この場合、電波反射装置10はレーンマーカとして機能することになる。図において、例えばレーダ装置の設置高さH=0.6m、距離L=10mとすることができる。図において、例えばレーダ装置は、設置高さH=0.6m、電波が路面に到達するまでの距離L=10mとなるよう車両に取付けられ、この場合、接地角θはtanθ=0.6/10になる。即ち、接地角θを規格化し、電波反射装置の形状及び設置をこの規格に合致させ、また、レーダ装置の車両への取付けもこの規格に従って行うことにより、本実施の形態を好適に実現できる。
【0016】
図4には、レーダ装置14から送信された円偏波の電波反射装置10内における反射の様子が示されている。入射した円偏波はまず電波反射装置10の第1の反射面10aに入射し、反射点R1で反射する。反射点R1で反射した後、第2の反射面10bに向かう。第2の反射面10bでは、入射した円偏波を反射点R2で反射する。第2の反射面10bで反射した円偏波は第3の反射面10cに向かい、第3の反射面10cの反射点R3で反射した後、入射方向に戻される。
【0017】
図5には、図3の場合におけるレーダ装置14と電波反射装置10との位置関係が模式的に示されている。レーダ装置14の高さをH、レーダ装置14から電波反射装置10までの距離L、電波反射装置10の長さd、第1の反射面10aの傾き角α、入射電波の入射角θ、電波反射装置の高さをhとすると、角度αは、
【数1】
α={arctan(h/d)−θ}/2
とすることで、入射角θに対して効率的に反射することができる。入射角θは、
【数2】
θ=arctan(H/L)
で算出することができる。
【0018】
このように、本実施形態の電波反射装置は、3つの反射面を有し、3面の一つは路面に面して配置されているため、垂直方向の指向性が広く路面勾配変化に強い利点がある。
【0019】
また、路面に面した反射面は路面に対して所定の傾き角を有しているため、所定距離Lから所定の接地角を有して送信された電波を効率的に反射することができ、車両12ではこの電波反射装置10からの反射電波を受信することで、所定距離L先の路面情報を得ることができる(プレビュー検出)。なお、車両12に搭載されるレーダ装置14としては、クルーズコントロール用の前方車認識レーダ装置や障害物レーダを援用することもできる。
【0020】
また、本実施形態の電波反射装置10は、路面に埋設された磁気ネイルの上部に配置することも可能である。これにより、路面に配置する際の施行コスト低減を図ることができる。
【0021】
また、本実施形態の電波反射装置10の反射に影響を与えない部分に傾斜面(スローブ)を付加することで、車両12が電波反射装置10を乗り越えるときのショックを低減することも可能である。
【0022】
図6には、図1に示された電波反射装置10に傾斜面(スローブ)を設けた場合の平面図が示されている。第2の反射面10bと路面との間には傾斜面16cが付加され、第3の反射面10cと路面との間には傾斜面16dが付加される。
【0023】
また、この図では3つの反射面10a、10b、10cで形成される空間、すなわち第1の反射面10a上で第2の反射面10bと第3の反射面10cで囲まれた部分には樹脂が充填され、この樹脂面と路面との間には傾斜面16a、16b、16eが付加されている。樹脂を充填するのは、反射空間内に水膜が形成されることや埃が堆積することを防止するため、及び電波反射装置10の強度をより高めるためである。特に、水膜が存在すると反射強度が著しく低下するため、水が入り込まないように充填は隙間なく行うことが望ましい。なお、充填材料としては、強度に優れ、かつ電波吸収量が少ない材料が好ましい。具体的には、ポリカーボネートやポリプロピレンである。
【0024】
これにより、電波装置10の段差部分が解消され、車両にとって乗り越えることが容易となるので、路面に配置し易くなる。傾斜面(スロープ)は反射面10a、10b、10cの全てに対して付加する必要はなく、いずれか一つ、例えば傾斜面16aのみでもよい。
【0025】
図7には、電波反射装置の他の構成が示されている。図1に示された電波反射装置10と同様に、第1の反射面10a、第2の反射面10b、第3の反射面10cを有している。第1の反射面10aは路面に面し、かつ所定の傾き角を有して配置され、第2の反射面10b及び第3の反射面10cは路面に対して略直角に配置される。第1の反射面10a、第2の反射面10b、第3の反射面10cはそれぞれ互いに略直角をなす。
【0026】
さらに、本実施形態の電波反射装置は、第1の反射面10a上にポラライザ18及び偏波フィルタ20を有している。第1の反射面10aは矩形であり、ポラライザ18は矩形上の第1の反射面10aの対角線上に位置することで第1の反射面10aを10a1と10a2の2つに分割している。偏波フィルタ20は電波の入射方向から見てポラライザ18の背面に配置されており、ポラライザ18で偏波された電波が偏波フィルタ20に入射する。ポラライザ18は第1の反射面10aに対して略直角に配置されるが、偏波フィルタ20は第1の反射面10aに対して傾いて配置される。これは、偏波フィルタ20で透過せず反射した電波が入射方向に戻されることを防止するためである(傾いて配置することで、入射方向とは異なる方向に電波を反射する)。ポラライザ18は、入射電波の偏波方向を変換するもので、円偏波が入射した場合にはこれを直線偏波に変換し、直線偏波が入射した場合にはこれを円偏波に変換する。偏波フィルタ20は、所定の偏波方向を有する直線偏波を透過し、これと垂直な偏波方向を有する直線偏波を透過せず反射する。
【0027】
図8には、ポラライザ18及び偏波フィルタ20の配置例が示されている。ポラライザ18及び偏波フィルタ20は図7に示されるように別体で構成することもできるが、図に示すように、角柱状の樹脂材の2側面にポラライザ18及び偏波フィルタ20を設けることも可能である。これにより、ポラライザ18と偏波フィルタ20の強度を確保することができる。ポラライザ18は、樹脂材の側面に複数の金属板を互いに平行に埋め込むことで形成され、偏波フィルタ20は樹脂材の他の側面に複数の金属ワイヤを一方向に平行に埋め込むことで形成される。上述したように、ポラライザ18が形成される面と偏波フィルタ20が形成される面は平行ではない。偏波フィルタ20の傾き角(鉛直方向に対する傾き角)は例えば30度とすることができる。
【0028】
図9には、本実施形態の電波反射装置の配置例が示されている。電波反射装置は路面の中央に配置され、左右の分岐路が存在する場合にはそれぞれの分岐路に配置される。左分岐路上の電波反射装置22と右分岐路上の電波反射装置24は、有するポラライザ18あるいは偏波フィルタ20が互いに異なっている。これにより、レーダ装置14を搭載した車両12が、左右の分岐路を認識することが可能となる。例えば、偏波フィルタ20の向きを調整することで、左分岐路上に配置された電波反射装置22はレーダ装置14からの左円偏波を入射方向に反射するが右円偏波は反射せず、逆に右分岐路上に配置された電波反射装置24はレーダ装置14からの左円偏波は反射しないが右円偏波は入射方向に反射するように構成すると、車両12が左分岐路を認識する必要がある場合にはレーダ装置14から左円偏波を送信することで電波反射装置22のみを検出し、車両12が右分岐路を認識する必要がある場合にはレーダ装置14から右円偏波を送信することで電波反射装置24のみを検出することができるようになる。
【0029】
以下、左右分岐路の識別原理について説明する。図10には、レーダ装置14から右円偏波と左円偏波が送信された場合の電波反射装置22の反射特性が示されている。図において、(A)はレーダ装置14から左円偏波(電波源から見て左回り)が送信された場合である。左円偏波はポラライザ18で水平方向に偏波面を有する水平偏波に変換され、偏波フィルタ20に入射する。偏波フィルタ20は、水平偏波を透過するような偏波面を有しており、従って入射した水平偏波はそのまま透過して反射面10a、10b、10cに到達する。反射面10a、10b、10cで入射方向に反射した水平偏波は再び偏波フィルタ20に入射し、偏波フィルタ20を透過してポラライザ18に入射する。ポラライザ18では、入射した直線偏波を左円偏波に変換してレーダ装置14に戻す。レーダ装置14では、反射電波を受信し、電波反射装置22までの距離や方位を検出できる。
【0030】
一方、(B)はレーダ装置14から右円偏波(電波源から見て右回り)が送信された場合である。右円偏波はポラライザ18で水平方向に偏波面を有する直線偏波に変換され、偏波フィルタ20に入射する。偏波フィルタ20は、水平偏波は透過するが垂直偏波は透過せず反射する偏波面を有しているので、入射した垂直偏波は偏波フィルタ20を透過できず、反射面10a、10b、10cにも到達しない。なお、偏波フィルタ20は既述したように所定の傾き角を有して配置されているので、偏波フィルタ20を透過せず反射した垂直偏波はレーダ装置14の方向に反射せず、他の方向に反射されるのでレーダ装置14で受信されることはない。従って、レーダ装置14から右円偏波を送信した場合には、電波反射装置22は検出されないことになる(このことは、右円偏波にとって電波反射装置22は存在しないことと等価である)。
【0031】
このように、電波反射装置22は、左円偏波のみを反射し、右円偏波は反射しない特性に設定できる。
【0032】
同様にして、電波反射装置24を、左円偏波を反射せず、右円偏波を反射する特性に設定できる。すなわち、電波反射装置24のポラライザ18の向きを、電波反射装置22のポラライザ18の向きと異ならせ(90度回転させる)、左円偏波を垂直偏波に変換し、右円偏波を水平偏波に変換すればよい。これにより、左円偏波が入射した場合には偏波フィルタ20を透過しないので反射面10a、10b、10cで反射せず、右円偏波が入射した場合には偏波フィルタ20を透過して反射面10a、10b、10cで入射方向に反射してレーダ装置14で受信できる。
【0033】
もちろん、ポラライザ18の向きではなく、偏波フィルタ20の向きを変えることによっても同様の効果を得ることができる。すなわち、電波反射装置24の偏波フィルタ20を垂直偏波面を透過するような向きに設定することで、左円偏波を透過せず、右円偏波のみを透過して反射面10a、10b、10cで反射することになる。
【0034】
以上より、レーダ装置14から右円偏波あるいは左円偏波を切り替えて送信することで、左分岐路あるいは右分岐路を確実に検出することが可能となる。
【0035】
なお、路面には電波反射装置のみならず、他の電波を反射する物体も存在し得るが、電波反射装置22、24(あるいは10)からの反射電波は同旋円偏波、すなわち入射電波と同一旋回方向の偏波面を有する円偏波であり、他の反射物体からの反射電波は逆旋円偏波となるので、電波反射装置からの反射電波と区別することができる。
【0036】
一方、本実施形態では、ポラライザ18は、図7に示されたように矩形状をなす第1の反射面10aの対角線上に配置され、第1の反射面10aを2つの領域10a1、10a2に分割している。従って、電波反射装置に電波が入射する場合、領域10a1で反射してポラライザ18に入射する場合と、ポラライザ18(及び偏波フィルタ20)を透過した後に領域10a2で反射する場合が生じる。
【0037】
図11には、電波反射装置22(あるいは24)に入射する円偏波の様子が示されている。ポラライザ18は、図7に示されたように矩形状をなす第1の反射面10aの対角線上に配置され、第1の反射面10aを2つの領域10a1、10a2に分割している。図において、(A)はポラライザ18に対してレーダ装置14側に位置する反射面10a1でまず反射し(反射点R)、その後ポラライザ18、偏波フィルタ20に入射する場合、(B)はポラライザ18に対してレーダ装置14と反対側に位置する反射面10a2で反射する場合で、レーダ装置14からの電波はまずポラライザ18及び偏波フィルタ20に入射し、その後反射面10a2で反射する場合である。
【0038】
(A)の場合には、ポラライザ18に入射する前に反射面10a1で反射するため、その反射電波は逆旋円偏波となってポラライザ18に入射する。従って、本来であれば図10に示されたようにポラライザ18で垂直偏波に変換されて偏波フィルタ20を透過しなければならないところ、(A)の場合ではポラライザ18で水平偏波に変換されてしまい(ポラライザ18への入射前に逆旋円偏波となっているため)、偏波フィルタ20で反射して透過できす、トータルの反射強度が低下してしまう。
【0039】
したがって、(A)の場合において反射面10a1で反射して逆旋円偏波とならないように、反射面10a1を樹脂等の絶縁体で構成し、かつ、入射電波が絶縁体のブリュースター角より大きい入射角で入射するように配置することが望ましい。絶縁体におけるブリュースター角とは、反射電波に含まれる垂直偏波成分が0となる角度(すなわち、反射電波はすべて水平偏波となる)をいい、入射角がブリュースター角より大きい場合には、垂直偏波成分は位相が180度反転する。一方、水平偏波成分は絶縁体で反射した場合、入射角によらず位相が180度反転する。したがって、入射円偏波が絶縁体にブリュースター角より大きい角度で入射した場合には、水平偏波及び垂直偏波がともに180度位相反転するので、反射電波の旋回方向は変化しない。これにより、(A)の場合であってもポラライザ18で垂直偏波に変換できるようになる。
【0040】
但し、このように2分割された反射面10aの一方を絶縁体で構成した場合には、反射電波を同旋円偏波とすることが可能となるものの、絶縁体で反射した電波は入射電波に対して180度位相がずれることになるので、本実施形態のようにポラライザ18が存在する場合には他の問題が生じ得る。
【0041】
いま、仮にポラライザ18が円偏波を垂直偏波に変換し、偏波フィルタ20が垂直偏波を透過するように配置した場合を想定する。このとき、(A)の場合ではポラライザ18に入射する前に絶縁体で構成された反射面10a1に入射して反射するため、その反射電波は同旋の円偏波ではあるがその位相は180度ずれている。従って、ポラライザ18及び偏波フィルタ20を通過した垂直偏波の偏波方向は、(B)の場合のように反射面10a1で反射せず直接ポラライザ18、偏波フィルタ20を通過した電波の偏波方向に対して180度位相がずれることになり、(A)の場合の反射電波と(B)の場合の反射電波とで位相相殺が生じ、その結果トータルの反射電波強度が低下してしまうことになる。
【0042】
そこで、反射面10aの一部を絶縁体で構成した場合には、さらにポラライザ18が円偏波を水平偏波に変換し、偏波フィルタ20が水平偏波を透過するように配置するのが望ましい。このとき、(A)の場合においてポラライザ18と偏波フィルタ20を通過した水平偏波の偏波方向と、(B)の場合においてポラライザ18と偏波フィルタ20を通過した水平偏波の偏波方向は、同様に180度位相がずれているが、(B)の場合においては偏波フィルタ20を通過した後に反射面10a2で反射する。この反射により、(B)の場合の水平偏波の位相は180度ずれることになるので、結局、(A)の場合の水平偏波の位相と(B)の場合の水平偏波の位相は同相となり、反射電波の位相相殺は生じない。
【0043】
従って、第1の反射面10aの一部を絶縁体で構成した場合には、反射面10a1で反射する電波と反射面10a2で反射する電波の位相相殺を防ぐために、電波反射装置22、24の偏波フィルタ20は水平偏波のみ透過し、垂直偏波を透過せず反射するような配置とすれば良いことになる。すなわち、電波反射装置22、24を配置する場合には、偏波フィルタ20の向きは水平偏波を透過する向きに固定し、ポラライザ18の向きを互いに異ならせることが望ましい。偏波フィルタ20の向きを、水平偏波が透過する向きに配置するためには、複数の金属ワイヤを垂直方向に張ればよい。
【0044】
なお、偏波フィルタ20を水平偏波が透過する向きに配置するのではなく、他の方法によって位相相殺を防止することも可能である。例えば、反射時に180度の位相ずれが生じるような光路長分だけ反射面10b、あるいは10cに段差を設ける。これにより、偏波フィルタ20が垂直偏波を透過する向きに配置されていても、(A)の場合と(B)の場合における180度の位相ずれを解消することができる。段差を反射面10bあるいは10cに形成する場合、(A)の場合と(B)の場合とで反射面10bあるいは10cに入射する位置(高さ方向位置)の相違を考慮して形成する必要がある。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外に種々の変形使用が可能である。
【0046】
例えば、本実施形態では図1あるいは図7に示されたように3つの反射面を有する電波反射装置を示したが、サイズの制約等から3つの反射面を形成することができない場合には、反射面10aと反射面10bの2つの反射面のみとすることも可能である。この場合も、反射面10aと10bは略直角をなし、反射面10aの傾き角αは入射角θに一致させることが効果的である。
【0047】
また、電波反射装置以外の他の反射体が存在しないことが明らかである場合、あるいは何らかの方法で別途両者を識別することができる場合には、図9のシステムにおいてレーダ装置14から円偏波ではなく直線偏波を送信することも可能である。この場合、入射電波は直線偏波であるので、円偏波を直線偏波に変換するためのポラライザ18は不要となる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、3つの反射面を有することで、反射効率を維持しつつサイズを縮小することができる。
【0049】
また、ポラライザと偏波フィルタを組み合わせることで、入射電波の反射/非反射を制御することができ、複数の経路の識別、例えば左右分岐路の識別に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態の電波反射装置の斜視図である。
【図2】 図1の縦断面図である。
【図3】 実施形態の電波反射装置のシステム概念図である。
【図4】 実施形態の電波反射装置の反射説明図である。
【図5】 実施形態の電波反射装置の配置説明図である。
【図6】 実施形態の電波反射装置に傾斜面を取り付けた場合の平面図である。
【図7】 他の実施形態の斜視図である。
【図8】 図7におけるポラライザと偏波フィルタの構成図である。
【図9】 左右分岐路上に設けられた電波反射装置のシステム概念図である。
【図10】 図9における左右分岐路識別の原理説明図である。
【図11】 図7の電波反射装置における反射説明図である。
【符号の説明】
10 電波反射装置、10a 第1の反射面、10b 第2の反射面、10c第3の反射面、12 車両、14 レーダ装置、16a〜16e 傾斜面、18 ポラライザ、20 偏波フィルタ、22 電波反射装置(左分岐路上)、24 電波反射装置(右分岐路上)。
Claims (4)
- 入射電波を入射方向に反射する電波反射装置であって、
前記入射電波を反射する3面の反射面を有し、
前記3面は互いに略直角をなし、
前記3面の内の1面は路面に面して配置され、他の2面は路面に対して略直角に配置され、さらに、
前記入射電波の偏波方向を変えるポラライザと、
前記ポラライザからの電波が所定の偏波面を有する場合のみ透過する偏波フィルタと、 を有することを特徴とする電波反射装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記ポラライザは、配置される路面に応じて異なる偏波方向を有し、配置される路面に応じて前記偏波フィルタの透過の可否が決定されることを特徴とする電波反射装置。 - 請求項2記載の装置において、
前記ポラライザは、右分岐路と左分岐路で異なる偏波方向を有することを特徴とする電波反射装置。 - 請求項2、3のいずれかに記載の装置において、
前記ポラライザは、前記路面に面して配置される1面を2分割するように配置され、
前記2分割された1面の一方は、その反射面が絶縁体で形成され、
前記偏波フィルタは、水平偏波のみを透過するフィルタであることを特徴とする電波反射装置。
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