JP3728811B2 - 生化学分析装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、血清や尿等の生体に由来する液体試料中の特定成分を、化学的、酵素学的又は免疫化学的に分析する生化学分析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的な生化学分析では、試料と試薬を混合した後一定時間決められた温度で反応させ、反応の結果として生じる変化を例えば光学的方法により、例えば反応開始後、反応の前後或いは反応の過程で複数回測定する。また試料と試薬を混合した後、反応の途中で更に第二、第三の試薬を分注することもある。
【0003】
例えば免疫化学的分析方法においては、均一測定系と不均一測定系が知られている。前者は一般的な生化学分析と同様に実施され、後者はいわゆるB/F分離(BoundとFreeの分離)の工程が追加される。当該工程は、水不溶性の担体に結合した結合成分と溶液中に存在する担体に結合していない成分を、反応容器内を洗浄液で洗浄して分離する工程である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の生化学分析は、一部の操作を手で行う半自動分析装置や、全ての操作を自動的に行う全自動分析装置により実施されているが、反応の進行は時間に依存するため、それぞれの分析操作を一定の時間内に行う必要がある。全自動分析装置では、全ての操作を制御装置等が指令するため、複数の試料について常に同一の条件で分析を行うことが可能である。これに対して半自動分析装置では、操作者は時計を見ながら反応時間等が一定となるように操作する必要がある。
【0005】
全自動分析装置は、全ての操作を自動的に行うために多くの複雑な機構が必要となり、装置の大型化・コスト高であるという課題がある。一方、半自動分析装置では、全自動分析装置に比較して装置機構を簡易化することが可能ではあるが、操作の一部に手動操作が入るため反応時間等が不正確になるだけでなく、一度分析を開始すると分析の途中で手を離すことができないという課題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題に鑑み、正確な時間管理を可能とする、簡易な半自動分析装置を提供することを目的として成されたものであり、少なくとも半手動で試料液体の吸引・吐出を行うための手持ちノズル装置、手持ちノズル装置に直接又は配管を介して接続されたポンプ装置、試料液体が吐出される反応容器、複数の反応容器を保持し移送経路に沿って移送するための反応容器移送装置、計時装置及び計時装置に連動して装置を制御する制御装置からなる、生化学分析装置である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
手持ちノズル装置は、通常の生化学の分野で使用されるものを使用することができる。例えば、ポンプ装置に直接又は配管を介して接続された細管や使い捨てチップを使用するピペット装置等である。そしてこのような細管やチップに必要な量の試料、試料と試料の溶解液、試料と試料の希釈液等を吸引した後、これを反応容器に吐出可能であればよい。ノズル装置は1個である必要はなく、例えば同一又は異なるポンプ装置と直接又は配管を介して接続した複数のノズル装置でも良い。細管等は試料液体が代わる度に洗浄し、使い捨てチップの場合は試料液体が代わる度に新たなものに交換することが試料液体間の汚染等を防止するために好ましい。ノズル装置と接続されるポンプ装置としては、例えば通常のシリンジポンプやプランジャポンプ等を使用することができる。このポンプ装置はノズル装置に組み込まれ一体に構成されていても良いし、またノズル装置とは別個に構成され、配管で接続されていても良い。
【0008】
手持ちノズル装置は完全に手動で操作されるものであっても良いが、後述の時間管理の観点等から、計時装置を介して制御装置に接続されていることが好ましい。即ち、例えば液体試料の吸引・吐出のためのスイッチを手持ちノズル装置に設け、そしてこのスイッチが押されると計時装置の計時動作が開始されると共に制御装置が当該入力を受けて手持ちノズル装置に試料液体を吸引又は吐出するためポンプ装置を駆動したり、或いは駆動装置と手持ちノズル装置の間に電磁弁を設置しておき、入力を受けて制御装置が電磁弁を開閉するように構成することが例示できる。もっとも後述するように、別個に設けたスイッチや移送装置に設けたセンサを利用して計時装置の計時動作を開始させる場合には、このスイッチが押されると試料液体等の吸引及び/又は吐出が行われるのみの構成とすることもできる。
【0009】
手持ちノズル装置における試料液体の吐出は、通常、分析の開始を意味する。例えば免疫化学的分析において複数の試料について分析を行う場合には、B/F分離や検出操作等、各反応容器について反応開始してから一定時間後に行うことが必要な操作があるため、手持ちノズルによる試料液体の吐出を無秩序に行うと分析装置の処理に影響が生じることがある。例えばB/F分離操作等を行うためには一定の時間を要するが、当該一定の時間内に2以上の反応容器に試料液体を吐出して分析を開始すると後から分析を開始した反応容器については適切な時間にB/F分離を行えないと言う事態が生じる。これを回避するうえでも手持ちノズル装置を制御装置と接続し、後の操作において前記したような障害が生じる恐れがある場合には吐出用のスイッチを押しても制御装置がこれを拒否して試料液体が吐出されないような構成としたり、或いはスイッチを押すこと自体を禁止することが好ましい。この他にも、後述の表示装置を用いて吐出用のスイッチを押すことができること(或いは逆にスイッチを押すことができないこと)を視覚的又は聴覚的に操作者に知らせるという構成も例示できる。むろん、後の操作で障害が生じるか否かは装置全体の処理能力や分析内容に依存するため、その詳細については適宜決定する必要がある。例えば前記例で言えば、B/F分離装置が同時に2以上の反応容器を処理できる場合と1の反応容器しか処理できない場合では状況が異なるし、分析内容によっては各操作の遅延が分析結果に影響を与えない等の理由で許容される場合もあるからである。
【0010】
このように、操作者が試料液体の吐出スイッチを押しても制御装置がこれを拒否したりスイッチを押すこと自体を禁止することが起こり得る場合には、操作者の状況認識を容易にするため、制御装置と接続した表示装置を設置してその旨を表示するような構成とすることが好ましい。この表示装置は、試料液体を反応容器に吐出することの可否を表示すること以外にも、後述するような機能を兼用させることができる。
【0011】
手持ちノズル装置にスイッチを設ける場合、その数等に何ら制限はない。例えば単一押し下げのボタンを2個設け、一方を試料液体の吸引用、他方を吐出用としたり、一方を試料液体の吸引・吐出用とし、他方を他の液体の吸引・吐出用とすることが例示できる。スイッチを1個とする場合には、一度押し下げと連続二度押し下げ等により、吸引・吐出を行い得るように構成しても良い。このようなスイッチは、必ずしも手持ちノズル本体に設ける必要はなく、本体とは別個に設けることもできる。例えばスイッチを足踏み式のペダルのようにすることも例示できる。
【0012】
本発明における液体試料としては、例えばヒト血清、尿等の生体に由来する血液から調製される試料が例示できるが特にこれらに限定されない。生体試料は、手持ちノズル装置によりその一定量が吸引され、反応容器に吐出される。反応容器は、試料液体の分析に必要な試薬が予め投入されていても良い。例えば免疫化学的分析を行う場合、水不溶性の担体と結合した試料液体中の特定物質に対する抗体及び酵素等の標識物質と結合した特定物質に対する抗体を含んでいても良い。これはいわゆる1ステップサンドイッチ法(同時サンドイッチ法又はSimultaneousサンドイッチ法)を用いて分析を行う場合の試薬構成であるが、2ステップサンドイッチ法(いわゆるForwardサンドイッチ法)を行う場合には水不溶性の担体と結合した試料液体中の特定物質に対する抗体のみが投入された容器を用い、後に酵素等の標識物質と結合した特定物質に対する抗体を投入する構成としても良い。またいわゆる競合法を用いて分析を行う場合、例えば水不溶性の担体と結合した試料液体中の特定物質に対する抗体と特定物質と酵素等の標識物質を結合した特定物質類似体が予め投入された反応容器を使用すれば良い。
【0013】
試料液体が投入された反応容器は、移送装置に載置される。移送装置は、複数の反応容器を保持し得、かつこれらを移送経路に沿って移送可能であれば特に制限はない。また例えば反応容器以外にも、以後の分析操作で使用される試薬等を保持させても良い。このような試薬としては、例えば前記した2ステップサンドイッチ法を用いる場合における酵素等の標識物質と結合した特定物質に対する抗体や、酵素を標識物質として使用する場合における酵素基質等が例示できる。
【0014】
移送装置は、例えば反応容器を保持するための反応容器保持部と反応容器保持部を移動するための駆動手段及び移送路等から構成しても良いし、反応容器保持部を円盤状としてこれを回転させる構成としても良い。前者の場合には移送路を直線、曲線のいずれにもできる点で有効である。また後者は、移送路自体は円盤の円周方向に限定されるものの、装置自体を小型化できる点で有効である。またこのような構成以外にも、例えば反応容器保持部からアーム等の反応容器を捕獲可能な手段を使用して別途構成した移送路に反応容器を移動する構成とすることもできる。
【0015】
移送装置の反応容器保持部には、後述の制御装置が反応容器を管理するための番号等が付与される。この番号等に基づき制御装置は、各反応容器について反応時間等の時間管理を行ない、所定の時間に所定の操作が行われるように管理する。操作者は、反応容器に試料液体を分注した後、これを移送装置の反応容器保持部の任意の場所に載置し、制御装置に対して前記番号等を入力することにより後は自動的に分析が実施される。これとは逆に、例えば制御装置に時間管理を行なうために好適な載置場所を前記番号等の形で出力させたり、又は反応容器保持部ごとに表示ランプを設けておき、前記好適な載置場所の表示ランプを点灯させる等することにより指定された部位に反応容器を載置するような構成とすることもできる。この場合制御装置は、複数の反応容器について時間を管理しつつ並列処理をし易いようにするため、反応容器を載置すべき反応容器移送装置の容器保持部として既に時間管理を始めた反応容器の載置場所から離間した載置場所を指定するように構成することも例示できる。また、移送装置の反応容器保持部分に反応容器が載置されたか否かを検知するセンサを設置し、操作者は試料液体を吐出した反応容器を移送装置に載置するのみで制御装置が自動的に載置された場所等を把握し、時間管理を行う構成とすることもできる。
【0016】
制御装置から時間管理に好適な反応容器の載置場所を出力させる場合、前記手持ちノズル装置による試料液体の吐出可否を表示するための表示装置をその出力先として兼用することができる。またこの表示装置により、例えば円盤状の反応容器移送装置が制御装置の指示を受けて回転を開始しようとしている場合等には、回転開始までの時間や操作者に反応容器の載置を禁止する旨の表示を行うこともできる。この表示装置は、例えば視覚的にこれらの事項を表示するものであっても良いし、警告音等によりこれらの事項を表示するものであっても良い。表示装置には更に、分析が終了した容器の載置場所等を前記の番号等で表示させることも可能である。これにより操作者は、不要となった反応容器を容易に見分け、廃棄することが可能となる。
【0017】
移送路には、例えば免疫化学的分析装置においてはB/F分離装置、試薬分注装置、検出装置等が設置される。B/F分離装置は反応容器への洗浄液の吐出と反応容器からの液体の排出を行うための装置であり、水不溶性の担体を用いる不均一免疫分析において担体に結合した標識成分と担体に結合していない標識成分の分離を行うものである。当該装置は、例えば洗浄液の吐出のための管と反応容器中の液体の排出のための管、及びこれら管を上下動させる駆動手段とから構成されるものを例示できる。試薬分注装置は、ポンプ装置と直接又は配管を介して接続された細管や使い捨てチップ等から構成される通常の分注装置を使用することができる。この装置により、例えば前記した通り、2ステップサンドイッチ法を用いる場合における酵素等の標識物質と結合した特定物質に対する抗体や、酵素を標識物質として使用する場合における酵素基質等の一定量を吸引し、反応容器に吐出する。なおこの場合、同一の試薬を分注する限りは細管を洗浄することなく、また使い捨てチップを交換することなく使用することができる。移送路に設置される検出装置は、分析の内容等により適宜選択される。例えば反応により発色が生じる場合には比色計等が、反応により反応液が蛍光を発する場合には蛍光計が、反応により反応液が発光する場合には発光検出器を選択すれば良い。このような光学的検出装置以外にも、反応の内容によっては例えば電流計等を用いることも可能である。検出装置による検出は、例えば反応液を反応容器に維持したままで行うようにしても良いし、反応液の一定量を採取して検出を行っても良い。このように、移送路には分析を実施するために要求される各種操作を実施するための装置が配置される。
【0018】
多くの場合、移送路には反応容器中の反応液の温度を制御するための温度制御装置を設置することが好ましい。例えば移送経路の下部にウォーターバスを配置したり、経路自体を発熱体で構成することが例示できる。これにより、分析を常に一定の温度下で実施可能となり、より再現性の高い分析を実現することができる。また移送経路には、反応容器中の反応液を撹拌するための撹拌装置を設置することが好ましい。例えば上下動可能に設置した撹拌子を用いることも例示できるが、例えば反応容器中に磁石装置で運動する撹拌子を予め投入しておく等する事もできる。特に水不溶性の担体を用いる免疫化学的分析においては、当該担体としてフェライト等を埋め込んだ樹脂等を用いれば好都合である。そして移送装置の下部に磁石装置を設置し、これを往復動等させれば撹拌操作を実現することができる。これにより反応を促進等することが可能となる。
【0019】
以上に述べた各種の装置は、必ずしも反応容器の移送路上に設置される必要はなく、例えば移送装置上の反応容器をアーム等の反応容器捕獲手段を用いて各装置に移動する構成としても良い。
【0020】
本発明における制御装置は、マイクロプロセッサと周辺部品から構成され、各種装置と接続される。マイクロプロセッサには、例えば移送装置のモータ等の駆動手段やB/F分離のための管を上下動を駆動するドライバー回路、手持ちノズル装置・試薬分注装置・B/F分離装置等に液体を吸引(排出)又は吐出するためポンプ手段とこれら装置との間に設置された電磁弁を駆動するための駆動回路等が接続される。また制御装置は、検出装置とも接続され、検出結果に基づき最終分析結果を出力する構成とすることが好ましい。この効果を実現するためには、制御装置には表示手段や入力のためのキーを有する操作パネル、分析結果を出力するプリンター等を接続することが好ましい。このような周辺機器を接続することにより、分析結果を即座に表示しかつプリンターで紙に出力することも可能となる。ここで、これまで説明した表示装置を分析結果の出力先として兼用することもできる。また外部のコンピュータとの通信ポートを設けておけば、最終分析結果を外部コンピュータに出力することも可能となる。なお、分析結果を出力するために、分析物の濃度等を計算するために使用される検量線情報等を記憶し又は入力できるように構成しておくことが好ましい。
【0021】
前述したように、手持ちノズル装置と制御装置を接続しておき、かつ、制御装置に分析内容に応じて要求される試料液体量等の諸情報を入力しておけば、操作者はノズル装置に設けられたスイッチを押すこと等の操作のみで必要な操作を完了することが可能となる。このためにも制御装置には、予め分析項目ごとに要求される試料液体量、試薬量、液体試料の希釈液量等を記憶しておくか、或いは必要に応じて入力し得る構成とすることが好ましい。
【0022】
計時装置は、前記マイクロプロセッサがその機能を兼ねていても良いが、別途設置する場合にはマイクロプロセッサと接続する。計時装置は反応容器ごとに経過時間を計時する。各反応容器ごとに経過時間を計時するため、移送装置には、反応容器の載置場所に番号等を付与するのである。制御装置は各反応容器に対し、計時装置で計時された反応容器ごとの経過時間をもとに時間管理を行う。従って、制御装置は分析内容に応じた各種のパラメータ、例えば反応時間や試薬分注容量等を記憶し又はキー等から入力可能としておくことが好ましい。例えば免疫化学的反応においては、同一試料に関する分析であっても分析対象が異なると担体と結合した抗体や標識と結合した抗体等と試料液体との反応時間や後から分注する試薬の量が異なったり、反応時間そのものが異なる場合がある。従って、例えば分析に先立ってその分析内容を制御装置に入力し、当該入力情報に従って反応時間を含む反応条件を管理するような構成とすることが好ましい。
【0023】
反応容器ごとの経過時間を計時するためには、例えば反応容器に対して液体試料が吐出開始された時点を起点として計時するように計時装置を構成することが例示できる。例えば前記したように、手持ちノズル装置に液体試料の吸引・吐出のためのスイッチを設け、制御装置を通じて液体試料の吸引・吐出を行う構成を採用した場合には、吐出用のスイッチを押した時点を計時装置の起点とすることが可能になる。試料液体が反応容器に吐出されると同時に分析内容に応じた反応が開始される場合には特にこの様な構成が好ましい。もっとも、例えば免疫化学的分析等のように、吐出される試料液体の量が数十μl程度である場合等、試料液体の吐出に要する時間が極めて僅かな分析においては、反応容器に対する試料液体の吐出が完了した時点を起点として計時しても良い。このように計時装置を動作させるためには、例えば計時装置の動作(計時動作)を開始させるためのスイッチを設け、操作者が試料液体を反応液に吐出した段階でこのスイッチを押すような構成としても良いが、操作者の負担を軽減しかつスイッチの押し忘れ等のミスを防止するため、好ましくは容器保持台に容器の有無を検出するセンサを設け、操作者が試料液体の吐出後反応容器を保持台に載置したのを自動的に感知して計時装置の計時動作を開始させる構成とすることが好ましい。このセンサは、前記した反応容器の載置場所を自動的に検出するためのセンサと兼用とすることもできる。
【0024】
以上のような手持ちノズルに設けられたスイッチや、手持ちノズルとは別個に設けられたスイッチ或いは容器保持部に設けられたセンサは計時装置と接続され、操作者がスイッチを押した時点等を起点として計時動作を開始する。計時装置は前記の通り制御装置と接続されており、また移送装置の容器保持部には番号等が付与されているから、制御装置は反応容器ごとに反応時間を管理し、分析内容に応じて予め記憶され又は入力された時間反応を行った後、例えば免疫化学的分析であればB/F分離操作、試薬分注操作、検出操作等を自動的に実施することが可能となる。またこのような制御とは異なり、計時装置は常時作動させておき、制御装置は反応を制御するのに都合の良い場合だけ試料液体の吐出を許可するように構成することもできる。例えば、30秒毎に5秒間だけ吐出を許可する等の構成を例示できる。許可する時間幅(前記例では5秒間)が続いて実施される実際の反応時間(例えば10分)に対して十分短ければ、当該時間幅の初期段階で吐出が行われた場合と当該時間幅の後期段階で吐出が行われた場合の時間差は無視することが可能である。
【0025】
以下、本発明の装置を図面に基づき説明する。図1は本発明の装置を適用した免疫化学的分析装置の一例を示すブロック図である。1はスイッチを設けた手持ちノズル装置、2はポンプ装置、3は移送装置の反応容器保持部、4はB/F分離装置、5試薬分注装置、6は検出装置、7は計時装置を兼ねる制御装置、8は表示装置、9は操作パネル(入力装置)、10は出力装置(プリンタ)である。である。本例では、移送装置の容器保持部は不図示の駆動手段の働きにより横方向に移動し、容器保持部に載置された反応容器をB/F分離装置、試薬分注装置及び検出装置の直下に移送可能である。なお、本例では図示していないが、移送装置による容器保持部の移送経路の直下には反応容器中の溶液を温調するための温調装置及び容器を撹拌するための磁石装置が取り付けられている。反応容器中には常磁性物質であるフェライトが埋設された直径約1.5mmの担体であって、分析されるべき抗原に対する抗体が固定化された担体が予め入れられており、この磁石装置の働きにより担体を運動させることで溶液を撹拌するように構成してある。
【0026】
本例の分析装置では、反応容器には測定されるべき抗原に対する第1の抗体が固定化された前記担体、及び、第1の抗体とは異なる部位を認識する抗体であって、酵素と結合された第2の抗体が予め投入され、凍結乾燥されている。従って、手持ちノズル1に設けられたスイッチを操作して凍結乾燥された試薬を溶解するための試薬溶解液と試料液体を吸引し、反応容器に吐出すると同時に免疫反応が開始される。従って、手持ちノズル1の吐出スイッチが押された時、或いはその前後の時点を起点として制御装置7は当該反応容器に関する計時操作を開始する。またこれと同時に制御装置7は、当該反応容器に関する時間管理を実現するため、操作者に対して当該反応容器を載置すべき移送装置上の保持部を指定し、表示装置8に出力する。従って操作者は試料液体を吐出後、反応容器を指定された保持部に載置するのみで免疫化学的分析を実施することができる。
【0027】
本例の装置では、免疫反応開始から10分経過後にB/F分離操作、抗体と結合された酵素の活性を測定するための試薬(酵素基質)の分注操作、酵素活性の検出操作という一連の操作が開始されるように制御装置7にパラメータを入力してある。このため制御装置7は、前記のようにして免疫反応が開始された後9分30秒が経過すると移送装置を駆動して該当する反応容器を順次B/F分離装置、試薬分注装置、検出装置に移送するように構成されているが、これに先立ち、操作者に対し新たに反応容器に試料液体を吐出しないように表示装置8に警告を表示し、かつ、手持ちノズルの試料液体吐出のためのスイッチングを無効にして操作者のミスを防止する。
【0028】
これ以外にも制御装置7は、移送装置上の容器保持部に空きがなくなった場合や後の操作に支障を与えかねない場合等に同様の警告を表示し、手持ちノズルの吐出スイッチングを無効にする。
【0029】
B/F分離装置、試薬分注装置、検出装置による操作が完了すると、制御装置7は、検出装置からの検出結果を予め入力された検量線データと比較し、測定されるべき抗原の濃度を計算して出力装置(プリンタ、10)に出力する。各装置による操作が完了した反応容器については、制御装置7が表示装置8に廃棄を許可する表示を行なう。操作者が不要の反応容器を廃棄して移送装置の保持部に空きができたりB/F分離に続く一連の操作に支障がないと制御装置7が判断した場合、試料液体の吐出を禁止する旨の警告を解除し、手持ちノズル装置1のスイッチングを有効にする。
【0030】
【発明の効果】
本発明の装置によれば、試料液体の吸引・吐出は操作者が手動で行うため、試料容器を保持・移送する機構及びノズル装置を保持・移動する機構に加え、この操作を自動的に行なう際に必要な、試料液体の液面レベルの検出機構をも省略することができる。この結果本発明の装置は、全自動分析装置に比較して簡便な構成とすることができるから、小型で安価に提供することが可能となる。
【0031】
本発明の装置によれば、操作者が試料液体を反応容器に吐出した時点等を起点として反応容器ごとに反応時間等を管理することができる。この結果本発明の装置は、分析における正確な時間管理を通じて分析結果の再現性等を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の分析装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 手持ちノズル装置
2 ポンプ装置
3 移送装置(移送装置の容器保持部)
4 B/F分離装置
5 試薬分注装置
6 検出装置
7 制御装置
8 表示装置
9 操作パネル
10 出力装置(プリンタ)
Claims (12)
- 操作の一部を制御装置により制御されているか又は完全に手動で試料液体の吸引・吐出を行うための手持ちノズル装置、手持ちノズル装置に直接又は配管を介して接続されたポンプ装置、試料液体が吐出される反応容器、複数の反応容器を保持し移送経路に沿って移送するための反応容器移送装置、B/F分離装置、試薬分注装置、検出装置、試料液体の吐出を起点として反応時間を計時する計時装置及び計時装置に連動して反応容器ごとに反応時間を管理し、分析内容に応じて予め記憶され又は入力された時間反応を行なった後、反応容器移送装置、B/F分離装置、試薬分注装置及び検出装置を自動的に稼動するように制御する制御装置からなる、生化学分析装置。
- 手持ちノズル装置に、液体試料の吸引・吐出のためのスイッチが設けられていることを特徴とする請求項1の装置。
- 反応容器の移送経路に反応容器中の反応液の温度を制御するための温度制御装置を有する請求項1の装置。
- 反応容器の移送経路に反応容器中の反応液を撹拌するための撹拌装置を有する請求項1の装置。
- 反応容器の移送経路にB/F分離装置を有する請求項1の装置。
- 反応容器の移送経路に試薬分注装置を有する請求項1の装置。
- 反応容器移送装置が、反応容器が載置されたか否かを検知する検出手段を備えることを特徴とする請求項1の装置。
- 計時装置が、反応容器に対して液体試料が吐出開始された時点を起点として反応時間を計時するものであることを特徴とする請求項1の装置。
- 計時装置が、反応容器に対する液体試料の吐出が完了した時点を起点として反応時間を計時するものであることを特徴とする請求項1の装置。
- 制御装置が一定範囲内の時間に反応容器に対する液体試料の吐出を禁止するように手持ちノズル装置を制御し、計時装置が液体試料が吐出された時点又は前記一定範囲内又は当該範囲前後の任意の時間を起点として反応時間を計時するものであることを特徴とする請求項1の装置。
- 液体試料吐出の可否を表示するための表示装置を備えたことを特徴とする請求項1の装置。
- 試料液体を吐出した反応容器を反応容器移送装置のいずれの場所に載置・保持させるべきかを表示するための表示装置を備えたことを特徴とする請求項1の装置。
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