JP3728785B2 - 炭酸エステルの製法 - Google Patents

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一酸化炭素と亜硝酸エステルから炭酸エステルを製造する方法において、特に液相法によって、高反応速度及び高選択率で炭酸エステルを製造する方法に関する。炭酸エステルはポリカーボネートの製造原料や種々の化学薬品の原料として、また溶剤として非常に有用な化合物である。中でも沸点の高い炭酸エステルは潤滑剤として有用で、気相法では製造が困難なものである。
【0002】
【従来の技術】
白金族金属触媒の存在下、一酸化炭素と亜硝酸エステルから液相法により炭酸エステルを製造する方法としては、白金族金属又はその塩類の存在下、一酸化炭素分圧が3kg/cm2 以下で一酸化炭素と亜硝酸エステルを液相接触反応させる方法(特公昭62−8113号公報)、パラジウム金属もしくはその化合物の存在下、酸素を存在させて、一酸化炭素分圧が0.01〜0.1kg/cm2 で一酸化炭素と亜硝酸エステルを液相接触反応させる方法(特開昭60−11443号公報)、アルコール溶液中、白金属元素の塩類もしくはその錯体の存在下、酸素を存在させて、一酸化炭素分圧が0.01〜4.5kg/cm2 で一酸化炭素と亜硝酸エステルを液相接触反応させる方法(特開昭60−94943号公報)が知られている。
【0003】
しかし、これらの液相法による炭酸エステルの製法は、炭酸エステルの收率や選択率(一酸化炭素基準)が低いなどの問題があり、必ずしも工業的に有利な方法ではない。
【0004】
一方、気相法で同様に炭酸エステルを製造する方法としては、白金族金属ハロゲン化物又は白金族金属ハロゲン化物含有錯体がアルミナに担持された触媒の存在下、ハロゲン化水素を存在させて、一酸化炭素と亜硝酸エステルを気相接触反応させる方法(特開平5−201932号公報)、一酸化炭素と亜硝酸エステルを含有する原料ガス中に塩素を含有させて、一酸化炭素と亜硝酸エステルを気相接触反応させる方法(特開平6−306018号公報)などが知られている。
【0005】
しかしながら、これら気相法における炭酸エステルの選択率は充分であるとは言えず、更に製造できる炭酸エステルの種類は、原料の亜硝酸エステルや生成物の炭酸エステルの沸点により、低沸点の炭酸エステルに限られてくる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、一酸化炭素と亜硝酸エステルから炭酸エステルを製造する方法において、各種の炭酸エステルの製造を可能にする液相法によって、高反応速度及び高選択率で炭酸エステルを製造できる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、白金族金属又はその塩類の存在下、塩化水素、塩化ニトロシル及び塩素から選ばれる少なくとも一種の塩素化合物を添加して、一酸化炭素と亜硝酸エステルを液相接触反応させることを特徴とする炭酸エステルの製法によって達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、白金族金属又はその塩類は触媒として作用し、触媒上での主反応は次式に示される反応である。
【0009】
【化1】
Figure 0003728785
(式中、Rで示される亜硝酸エステル及び炭酸エステルのアルコール部分は後述する亜硝酸エステルのアルコール部分に対応する)
【0010】
白金族金属又はその塩類としては、パラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム等の金属、あるいはこれら金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩や、酢酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩が用いられる。また、白金族金属の塩類は白金族金属の錯体であってもよく、例えばアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィン等のアリールホスフィン類、ジエチルフェニルホスフィン等のアルキルアリールホスフィン類、トリフェニルホスファイト等のアリールホスファイト類などの配位子を有する錯体が白金族金属の錯体として挙げられる。更に、この白金族金属の錯体は=CO、−NO、−CN、ハロゲン等が配位した錯体であってもよい。これらの白金族金属又はその塩類の中では、パラジウム又はその塩類が特に好ましい。
【0011】
白金族金属又はその塩類の使用量は、金属換算で、反応液に対し通常0.1重量ppm〜2重量%、好ましくは1〜100重量ppmの範囲である。なお、白金族金属又はその塩類の回収を容易にして損失を防止するために、白金族金属又はその塩類を、例えば活性炭、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、軽石、ゼオライト等の担体に担持させて使用するのが工業的には有利である。
【0012】
本発明では、塩素化合物として、塩化水素、塩化ニトロシル及び塩素が用いられる。これら塩素化合物は一種類でもまた二種類以上で使用されてもよい。また、塩化水素は塩酸の形態で使用されても差し支えない。
塩素化合物は、その使用量が多くなるほど、炭酸エステルの収量を増加させる以外に炭酸エステルの選択率も上昇させるが、亜硝酸エステルの分解や反応容器材質の腐食を促進させることも考えられる。このため、塩素化合物の使用量は、白金族金属に対し、通常1〜1000倍モル、好ましくは10〜300倍モル、更に好ましくは30〜150倍モルであり、反応混合物に対しては、通常1重量ppm〜5重量%、好ましくは10重量ppm〜1重量%である。
【0013】
亜硝酸エステルとしては、そのアルコール部分が炭素数1〜20の脂肪族非環式アルコール、炭素数5〜20の脂環式アルコール又は炭素数7〜20のアラルキルアルコールに由来する亜硝酸エステルが挙げられる。
前記脂肪族非環式アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ドデシルアルコール等の1価アルコールや、エチレングリコール等の2価アルコールが挙げられる。
また、前記脂環式アルコールとしては、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等が挙げられ、前記アラルキルアルコールとしては、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等が挙げられる。
これらアルコールは、アルコキシ基やハロゲン原子のような反応を阻害しない置換基を有していてもよい。
【0014】
亜硝酸エステルの使用量は広範囲に変えることができるが、満足できる反応速度を得るためには、反応液に対して、通常2重量%以上、好ましくは5重量%以上の亜硝酸エステルが使用される。使用量の上限は特に制限されるものではなく、所望の反応速度が得られるように反応液に対して100重量%未満の範囲で任意に選ぶことができる。
【0015】
一酸化炭素は純ガスでもよく、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈されたものでも差し支えない。反応における一酸化炭素分圧の影響は余り大きくないため、一酸化炭素分圧は1〜100kg/cm2 Gの範囲でよいが、5〜50kg/cm2 G、更に10〜50kg/cm2 Gがより好ましい。
【0016】
反応は、例えば、耐圧式反応器に亜硝酸エステル、触媒及び前記塩素化合物、更に必要に応じて溶媒を入れた後、一酸化炭素を圧入して行われる。反応温度が高くなるにつれて反応速度が速くなるが、亜硝酸エステルの分解も促進されるため、反応温度は通常20〜150℃、好ましくは80〜120℃である。
なお、反応はバッチ式あるいは連続式いずれの方式でも可能であるが、工業的には反応熱の除去が容易な連続式が有利である。
反応後、生成した炭酸エステルは蒸留等により容易に分離精製される。
【0017】
溶媒としては、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール等の脂肪族アルコール類、(2)酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸ブチル等の脂肪族モノカルボン酸エステル類、(3)シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル類、(3)安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタール酸ジメチル等の芳香族カルボン酸エステル類、(4)メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類、(5)アセトアルデヒドジブチルアセタール等のアセタール類、(6)1.1−ジエトキシシクロヘキサン等のケタール類、(7)アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、(8)ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、(9)ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の炭化水素類や、その他、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキサイド、塩化メチレン等が挙げられる。また、目的物の炭酸エステルも溶媒として用いることができる。
【0018】
これらの溶媒のうち、亜硝酸エステルや炭酸エステルとアルコキシ基を交換する可能性のある脂肪族アルコール類、脂肪族モノカルボン酸エステル類、脂肪族ジカルボン酸ジエステル類、アセタール類、ケタール類については、亜硝酸エステルと同一のアルコキシ基を有するものを溶媒として用いることが好ましい。なお、溶媒の中では、脂肪族アルコール類が特に好ましい。
【0019】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、炭酸エステル選択率は次式により求めた。
【0020】
【数1】
Figure 0003728785
【0021】
実施例1
内容積300mlのオートクレーブに、亜硝酸ブチル20g、n−ブタノール80ml、塩化パラジウム18mg(パラジウム金属として11mg)及び濃塩酸(36重量%塩酸)1mlを仕込んだ。反応器内を窒素ガスで充分にパージした後、一酸化炭素を10kg/cm2 G圧入し、攪拌しながら、昇温して100℃で1時間反応を行った。反応終了後、反応器を室温まで急冷し、反応液を取り出してガスクロマトグラフィーにより分析した。
その結果、炭酸ジブチルが63mmol生成しており、シュウ酸ジブチルは全く生成していなかった。炭酸ジブチル選択率は100%であった。
【0022】
実施例2
実施例1において濃塩酸(36重量%塩酸)の使用量を0.5mlに変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。
その結果、炭酸ジブチルが57mmol生成しており、シュウ酸ジブチルは全く生成していなかった。炭酸ジブチル選択率は100%であった。
【0023】
実施例3
実施例1において塩化パラジウムの使用量を1.8mg(パラジウム金属として1mg)に変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。
その結果、炭酸ジブチルが52mmol生成しており、シュウ酸ジブチルは全く生成していなかった。炭酸ジブチル選択率は100%であった。
【0024】
実施例4
実施例1において濃塩酸(36重量%塩酸)の代わりに塩化ニトロシル0.07gを用いたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。
その結果、炭酸ジブチルが55mmol生成しており、シュウ酸ジブチルは全く生成していなかった。炭酸ジブチル選択率は100%であった。
【0025】
実施例5
実施例1において濃塩酸(36重量%塩酸)の代わりに塩素を用いたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。なお、塩素は一酸化炭素を圧入する前に1kg/cm2 G圧入した。
その結果、炭酸ジブチルが45mmol生成しており、シュウ酸ジブチルは全く生成していなかった。炭酸ジブチル選択率は100%であった。
【0026】
実施例6
実施例1において濃塩酸(36重量%塩酸)の代わりに塩素を用いたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。なお、塩素は一酸化炭素を圧入する前に3kg/cm2 G圧入した。
その結果、炭酸ジブチルが50mmol生成しており、シュウ酸ジブチルは全く生成していなかった。炭酸ジブチル選択率は100%であった。
【0027】
比較例1
実施例1において濃塩酸(36重量%塩酸)を加えなかったほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。
その結果、炭酸ジブチルが25mmol生成しているほかに、シュウ酸ジブチルが15mmol生成していた。炭酸ジブチル選択率は45.5%であった。
【0028】
実施例7
実施例2において、塩化パラジウムをパラジウム金属が担持された活性炭(5%Pd/C)20mg(パラジウム金属として1mg)に変えたほかは、実施例1と同様に反応と分析を行った。
その結果、炭酸ジブチルが42mmol生成しており、シュウ酸ジブチルは全く生成していなかった。炭酸ジブチル選択率は100%であった。
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0003728785
【0030】
【発明の効果】
本発明により、高反応速度及び高選択率で炭酸エステルを製造することができるようになる。即ち、本発明の方法によれば、高い空時収量でしかもほぼ100%という非常に高い選択率で炭酸エステルを製造することができる。更に、本発明の方法は液相法であることから、気相法では製造が困難であった高沸点の炭酸エステルを含め、各種の炭酸エステルを高反応速度及び高選択率で製造することが可能になる。

Claims (1)

  1. 白金族金属又はその塩類の存在下、塩化水素、塩化ニトロシル及び塩素から選ばれる少なくとも一種の塩素化合物を添加して、一酸化炭素分圧5〜50kg/cm Gの範囲で、一酸化炭素と亜硝酸エステルを液相接触反応させることを特徴とする炭酸エステルの製法。
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