JP3727534B2 - 2枚重ね製品の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製の製品本体に金属製の板状部品を重ね合わせた2枚重ね製品を成形する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の2枚重ね製品は、製品本体と板状部品とを別々にプレス成形した後、製品本体に板状部品を溶接等で結合して製造しているが、これでは製品本体用と板状部品用の各別のプレス型が必要になり、製品の製造コストが高くなる。
【0003】
そこで、製品本体となる第1の板材に板状部品となる第2の板材を接合して成るブランク材を用い、第1の板材の外縁部を拘束した状態で第1の板材を張出し成形しつつ、第2の板材を非拘束で成形することが考えられている。これによれば、単一のプレス型で製品を成形でき、コストダウンを図れる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の成形方法では、第1の板材、即ち、製品本体に傷や亀裂が発生し易くなることが判明した。これは、第1の板材の張出し成形の初期段階において、第2の板材により第1の板材の第2の板材にオーバーラップする部分での変形が規制され、第1の板材の第2の板材の外縁に合致する部分での応力集中を生ずるためと考えられる。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、製品本体に傷や亀裂を生ずることなく、2枚重ね製品を単一のプレス型で良好に成形し得るようにした方法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明は、金属製の製品本体に金属製の板状部品を重ね合わせた2枚重ね製品を張出成形する方法であって、製品本体となる第1の板材の張出方向裏面に、板状部品となる、第1の板状よりも面積の小さい第2の板材を接合して成るブランク材を用い、第1の板材の外縁部を拘束した状態で第1の板材を張出し成形しつつ、第2の板材を非拘束で成形するものにおいて、第2の板材のせん断工程で第2の板材に生ずるバリの発生面とは反対側の面で第2の板材を第1の板材に接合している。
【0007】
第2の板材のバリ発生面とは反対側の面の外縁部はダレを生じている。従って、本発明によれば、第1の板材の張出し成形の初期段階における第1の板材の第2の板材の外縁に合致する部分での応力集中がダレによって緩和され、製品本体に傷や亀裂を生ずることが防止される。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1(A)は、自動車のフードのアウタパネルの裏面に取付けるフードインナ1を示している。フードインナ1は、金属製の製品本体2の左右両側部に、フードヒンジの取付部を補強する板状部品3を重ね合わせた2枚重ね製品であり、図1(B)に示す如く、製品本体2となる比較的薄い第1の板状部材2’に板状部品3となる比較的厚い第2の板材3’を接合して成るブランク材1’を用いて成形される。
【0009】
その詳細は図2に示す通りであり、先ず、図2(A)に示す如く、下側のパンチ10と上側のダイ11とピン12aを介して上方に付勢されるブランクホルダ12とを有するプレス型に、第2の板材3’を下にした状態で第1の板材2’の成形領域の外縁部(スクラップ部)がブランクホルダ12に着座するようにブランク材1’をセットし、次に、ダイ11をパンチ10に向けて下降させる。これによれば、第1の板材2’の外縁部がダイ11とブランクホルダ12との間に挟まれて拘束され、この状態でブランク材1’がダイ11によりブランクホルダ12と共に押し下げられる。そして、第2の板材3’がパンチ10に当接したところで第1の板材3’の張出し成形が開始される。
【0010】
張出し成形の初期段階では、第1の板材2’の第2の板材3’にオーバーラップする部分における変形が規制され、図2(B)に示す如く、主として第1の板材2’の第2の板材3’にオーバーラップしない部分が変形する。その後、図2(C)に示す如く、第2の板材3’も変形し、最終的に、図2(D)に示す如く、ブランク材1’がパンチ10とダイ11との間に挟まれて、第1と第2の両板材2’,3’が夫々パンチ10とダイ11に合致する所要の形状に成形される。そして、成形後、第1の板材2’の外縁部(スクラップ部)をトリミング加工で除去し、フードインナ1を得る。
【0011】
ここで、第2の板材3’の外縁部はブランクホルダ12とダイ11との間に挟まれておらず、第2の板材3’は非拘束で材料の伸びを生ずることなく成形される。そのため、製品の成形アール部laにおける板状部品3の成形時の曲げモーメントが大きくなり、その分スプリングバック量も大きくなる。ところで、第2の板材3’を第1の板材2’の外縁部に達する幅広のものとし、第2の板材3’もその外縁部を拘束した状態で張出し成形した場合、図3(B)に示す如く、板厚が薄く、且つ、成形アール部laにおける曲率半径が大きくなる製品本体2のスプリングバック量αの方が板状部品3のスプリングバック量βより大きくなり、製品本体2と板状部品3との間に隙間を生ずる。これに対し、本実施形態では、板状部品3単独でのスプリングバック量が製品本体2のスプリングバック量αと同等以上になり、図3(A)に示す如く板状部品3が製品本体2と同等にスプリングバックし、製品本体2と板状部品3との間の隙間の発生が防止される。
【0012】
また、ブランク材1’の製造に際し、第2の板材3’の一部分を第1の板材2’にスポット溶接で接合することも考えられるが、本実施形態では、図4に示す如く、第2の板材3’の一部分を接着テープ4で第1の板材2’に接着し、第2の板材3’の残りの部分と第1の板材2’との間に0.05〜0.1mm程度の隙間が形成されるようにしている。また、図5に示すように、第2の板材3’をコイル材から打抜くせん断工程で第2の板材3’に生ずるバリ3’aの発生面とは反対側の面を第1の板材2’に対する接着面としている。ここで、第2の板材3’のバリ3’aの発生面とは反対側の面の外縁部はダレ3’bを生じている。そのため、第1の板材2’の張出し成形の初期段階で第1の板材2’の第2の板材3’にオーバーラップしない部分が変形する際に、第1の板材2’が図5に示す如くダレ3’bの部分で緩やかに湾曲し、第1の板材2’の第2の板材3’の外縁に合致する部分における応力集中が緩和される。従って、この応力集中に起因する第1の板材2’の傷や亀裂の発生が効果的に防止される。
【0013】
また、第1の板材2’は最終的に第2の板材3’に密着するが、成形途中までは接着テープ4と第2の板材3’の外縁との間の範囲で第1と第2の両板材2’,3’間に隙間が残っている。そのため、第1の板材2’の第2の板材3’にオーバーラップする部分に第2の板材3’との接触で作用する張出し成形時の摩擦力が減少し、オーバーラップ部分での伸びを生じ易くなる。かくて、第1の板材2’が第2の板材3’にオーバーラップしない部分からオーバーラップする部分に亘って均等に伸びるようになる。従って、第1の板材2’が第2の板材3’にオーバーラップしない部分で過度に伸びることはなく、製品本体2の強度低下が防止される。
【0014】
以上、フードインナ1の成形に本発明を適用した実施形態について説明したが、フードインナ以外の2枚重ね製品の成形にも同様に本発明を適用できる。尚、フードインナ1では、製品本体2と板状部品3との重ね合わせ部に後加工でヒンジ取付ボルトを挿通する穴を明け、板状部品3側からヒンジ取付ボルトにナットを締め込むため、製品本体2に板状部品3を強固に結合しておく必要はないが、製品本体に対する板状部品の結合強度を必要とする製品については、第2の板材を第1の板材に部分接着したブランク材を用いて製品を成形した後、板状部品を製品本体にスポット溶接すれば良い。また、上記実施形態では、第2の板材3’として厚板を用いたが、第2の板材を第1の板材と同じ薄板とする場合にも同様に本発明を適用できる。
【0015】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、2枚重ね製品を単一のプレス型で製品本体に傷や亀裂を生ずることなく良好に成形でき、コストダウンを図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)本発明方法で成形する2枚重ね製品の一例を示す斜視図、(B)この製品の成形に用いるブランク材を示す斜視図。
【図2】(A)プレス型へのブランク材のセット状態を示す要部の断面図、(B)成形初期段階の要部の断面図、(C)成形中間段階の要部の断面図、(D)成形最終段階の要部の断面図。
【図3】(A)本発明方法による成形後の製品の要部の断面図、(B)第2の板材も張出し成形したときの製品の要部の断面図。
【図4】成形前のブランク材の要部の断面図。
【図5】成形中のブランク材の要部の拡大断面図。
【符号の説明】
1…フードインナ(2枚重ね製品)
1’…ブランク材
2…製品本体
2’…第1の板材
3…板状部品
3’…第2の板材
3’a…バリ
3’b…ダレ
Claims (1)
- 金属製の製品本体に金属製の板状部品を重ね合わせた2枚重ね製品を張出成形する方法であって、
製品本体となる第1の板材の張出方向裏面に、板状部品となる、第1の板状よりも面積の小さい第2の板材を接合して成るブランク材を用い、第1の板材の外縁部を拘束した状態で第1の板材を張出し成形しつつ、第2の板材を非拘束で成形するものにおいて、
第2の板材のせん断工程で第2の板材に生ずるバリの発生面とは反対側の面で第2の板材を第1の板材に接合することを特徴とする2枚重ね製品の成形方法。
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