JP3727235B2 - 自走車両の走行駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータのみを動力源とする電動車両やエンジン及び電動モータを動力源とするハイブリッド車両等の自走車両の走行駆動制御装置に関し、詳しくは、少なくとも電動モータを動力源として備え、走行装置を駆動する走行駆動力及びその駆動方向を変更調整自在な駆動手段と、その駆動手段の駆動方向及び走行駆動力を自動調整するように制御する制御手段とが設けられ、その制御手段は、アクセル開度及び進行方向指示情報を含む走行駆動力調整情報に基づいて、減速走行状態においては指示されている進行方向とは逆方向の目標走行駆動力を求める形態で、目標駆動方向及び目標走行駆動力を求め、且つ、その求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、前記駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、前記駆動手段にて前記実目標走行駆動力を前記実目標駆動方向で出力させるように制御する走行駆動力調整処理を実行するように構成された自走車両の走行駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記構成の自走車両の走行駆動制御装置においては、アクセル開度の情報、シフトポジションレバーの切換による前進走行であるか後進走行であるかの進行方向指示情報等を含む走行駆動力調整情報に基づいて、減速走行状態においては指示されている進行方向とは逆方向の目標走行駆動力を求める形態で、目標駆動方向及び目標走行駆動力を求め、且つ、その求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、前記駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、前記駆動手段にて前記実目標走行駆動力を前記実目標駆動方向で出力させるように制御する構成となっている。
【0003】
すなわち、減速走行状態においては指示されている進行方向とは逆方向の目標走行駆動力を求める形態で、目標駆動方向及び目標走行駆動力を求める構成となっており、機械的な摩擦式の走行ブレーキによる操作力とは別に駆動手段による逆向きの駆動力を利用して制動を補助する構成となっている。
【0004】
しかも、上記したような走行駆動力調整情報に基づいて求められる目標駆動方向及び目標走行駆動力に対して敏感に応答しながら制御を実行する構成とすると、例えば、アクセル操作やブレーキ操作が頻繁に繰り返されたり、これらの操作量が急激に変化するような場合等において、駆動手段の駆動状態の変化が急激となり、車両の走行状態が急に変化して運転者等の搭乗者に違和感を与えたり、駆動騒音が発生したりするおそれがあることから、駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めるようにして、このような不利を回避しながら走行駆動力を自動調整するようにしている。
【0005】
又、この種の自走車両においては、一般には、走行停止中や設定車速以下の低速状態においては、駆動手段によりクリープ走行用の走行駆動力を出力させるようにして、一般の車両と同様に、例えば機械式摩擦ブレーキの制動力にて走行停止している状態からブレーキを解除させると、直ちに走行力が与えられて発進等を円滑に行えるように構成するものが多いが、このようなクリープ走行用の走行駆動力を出力させないようにしたもの、つまり、例えば走行停止中や設定車速以下の低速状態では、走行駆動力を零にさせるようにしたものもある。
【0006】
尚、駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求める形態としては、例えば、特開2000−78705号公報に開示されるように、上記したような走行駆動力調整情報に基づいて求められる目標走行駆動力に対して、変化率を小さめの値に抑制した状態で実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を求めるようにしたものがあるが、この方法以外に各種の方法が考えられる。
【0007】
そして、上記したような自走車両の走行駆動制御装置において、従来では、常に、駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求める構成となっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来構成においては、次のような不利な点があり、改善の余地があった。
例えば、アクセルが操作されて指示されている進行方向に向けて車両が走行している状態から、ブレーキ操作されて走行速度が徐々に減速して走行を停止させる場合における制御手段の制御動作について検討を加えると、制御手段による駆動手段に対する制御内容は以下のようになる。
【0009】
つまり、アクセルが操作されて前進走行している状態では、制御手段は、アクセル開度及び進行方向指示情報等を含む走行駆動力調整情報に基づいて、指示されている進行方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求め、且つ、その求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求め、前記駆動手段にて前記実目標走行駆動力を前記実目標駆動方向で出力させるように制御する。
そして、アクセル操作が解除されてブレーキが操作されると、前進方向の走行速度を減速させるように、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求め、且つ、その求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、前記駆動手段にて前記実目標走行駆動力を前記実目標駆動方向で出力させるように制御することにより、機械的な摩擦式のブレーキによる操作力とは別に駆動手段による逆向きの駆動力にて制動を加えることになる。
【0010】
次に、ブレーキ操作によって車速が設定速度以下にまで減速したとき、例えば、クリープ走行用の走行駆動力が設定されているような場合においては、前記指示されている進行方向を目標駆動方向として、クリープ走行用の走行駆動力を目標走行駆動力として求めることになる。尚、このようなクリープ走行用の走行駆動力が設定されていない場合には、目標走行駆動力を零として求めることになる。
【0011】
つまり、クリープ走行用の走行駆動力が設定されている場合においては、減速走行状態においては、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態から、指示されている進行方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態に切り換わることになる。
又、クリープ走行用の走行駆動力が設定されていない場合には、減速走行状態においては、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態から、目標走行駆動力を零とする状態に切り換わることになる。このとき、ブレーキ操作が緩やかに行われる場合には問題は生じ難いのであるが、特に、ブレーキ操作が急激に操作されるような場合において上記したような切り換わり時において、次に述べるような不都合が生じるおそれがあった。
【0012】
以下、クリープ走行用の走行駆動力が設定されている場合を例にとって、図面に基づいて説明を加えると、図15に、例えば、ブレーキ操作により急に変化するような場合の目標走行駆動力を図示しており、図中実線は、目標走行駆動力の時間的な変化を示し、破線は、走行駆動力の変化を低く規制しながら制御手段により自動調整される実目標走行駆動力の時間的な変化を示している。尚、図において、目標駆動方向が、指示されている進行方向とは逆方向の状態(図ではマイナス(−)で示す領域)から指示されている進行方向(プラス(+)で示す領域)に変化して、進行方向側の目標走行駆動力が発生しているのは、クリープ走行用の走行駆動力が発生することを示している。そして、制御手段は目標走行駆動力が急に変化しても、実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めるので、実目標走行駆動力は、図15の破線で示すように小さめの変化率で変化することになる。
【0013】
その結果、同図に示すように、目標駆動方向が切り換わり目標走行駆動力が零になるような時点においても、指示されている進行方向とは逆方向の実目標駆動方向にて実目標走行駆動力Txが残存することになる。このような目標駆動方向が切り換わり目標走行駆動力が零になる時点、あるいは、その近傍においては、車両が停止しているか又は極低速で走行しており、指示されている進行方向とは逆方向の駆動力を発生する必要がない状態であるにもかかわらず、駆動手段によって指示されている進行方向とは逆方向を実目標駆動方向として実目標走行駆動力を出力させるように制御されることになる。
このとき、車両が停止したのちもブレーキ操作を継続すると、ブレーキの摩擦制動力によって車両の移動が阻止されるのであるが、例えば、途中でブレーキ操作を解除したような場合、駆動手段の走行駆動力により、指示されている方向とは逆方向への力が作用して運転者が違和感を感じたりする不都合が発生するおそれがある。このような不利を回避するためには、走行駆動力の変化の規制を弱めに行わなければならないものとなり、走行駆動力の変化の規制を適切に行わせるようにしながらも、指示されている方向と逆方向への走行駆動力を不要に出力させることがないようにすることが望まれる。
【0014】
尚、クリープ走行用の走行駆動力が設定されている場合を例にとって説明したが、このような場合に限らず、クリープ走行用の走行駆動力が設定されていない場合においても、目標走行駆動力が零に切り換わる時点において、同様な不都合が生じるものであった。
【0015】
本発明はかかる点に着目してなされたものであり、その目的は、上記したような構成の自走車両において、駆動手段の走行駆動力が急激に変化することを抑制して、車両の走行状態が急に変化して運転者等の搭乗者に違和感を与えたり、駆動騒音が発生したりすることを未然に防止できるようにしながら、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態から、指示されている進行方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態に切り換わるとき、あるいは、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態から目標走行駆動力を零とする状態に切り換わるとき等において発生する上記したような不都合を回避して操縦安定性を更に向上することが可能となる自走車両の走行駆動制御装置を提供する点にある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の特徴構成によれば、少なくとも電動モータを動力源として備え、走行装置を駆動する走行駆動力及びその駆動方向を変更調整自在な駆動手段と、その駆動手段の駆動方向及び走行駆動力を自動調整するように制御する制御手段とが設けられ、その制御手段は、アクセル開度及び進行方向指示情報を含む走行駆動力調整情報に基づいて、減速走行状態においては指示されている進行方向とは逆方向の目標走行駆動力を求める形態で、目標駆動方向及び目標走行駆動力を求め、且つ、その求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、前記駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、前記駆動手段にて前記実目標走行駆動力を前記実目標駆動方向で出力させるように制御する走行駆動力調整処理を実行するように構成された自走車両の走行駆動制御装置において、前記制御手段は、前記走行駆動力調整処理において、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力を前記駆動手段にて出力させているときに、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力を前記駆動手段にて出力させる出力状態を停止させる停止設定条件が満たされると、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が前記駆動手段にて出力されるのが早急に解消される又は停止される状態に強制的に移行させる強制移行処理を実行するように構成されている。
【0017】
つまり、制御手段は、アクセル開度及び進行方向指示情報を含む走行駆動力調整情報に基づいて目標駆動方向及び目標走行駆動力を求め、且つ、目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、前記駆動手段にて前記実目標走行駆動力を前記実目標駆動方向で出力させるように制御する走行駆動力調整処理を実行するのであるが、このような走行駆動力調整処理において、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力を前記駆動手段にて出力させているとき、例えば、逆方向の駆動力にて車両移動に制動を与えて減速させているような場合等において、その出力状態を停止させる停止設定条件が満たされると、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が前記駆動手段にて出力されることが、早急に解消される状態に強制的に移行させるか、又は、停止させる状態に強制的に移行させるのである。
【0018】
前記停止設定条件としては、例えば、前記目標走行駆動力が零側の設定範囲内の小さい値になった場合や、車速が設定速度以下の低速になった場合等、駆動手段にて逆方向の走行駆動力を出力する必要がないと考えられる条件である。
そして、このような停止設定条件が満たされたときに、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が前記駆動手段にて出力されるのが、早急に解消される状態に移行させるか、又は、停止される状態に移行させる。
早急に解消される状態に移行させる処理としては、例えば、実目標走行駆動力をそのときの目標走行駆動力と同じような小さい値に移行させるような処理がある。そして、停止される状態に移行させる処理としては、例えば、実目標走行駆動力をすぐに零にさせたり、指示されている進行方向を実目標駆動方向として実目標走行駆動力を出力させるような処理がある。
【0019】
従って、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態から、指示されている進行方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態に切り換わるとき、あるいは、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態から目標走行駆動力を零とする状態に切り換わるとき等において、指示されている方向とは逆方向への実目標走行駆動力が残存して駆動手段にてその実目標走行駆動力が出力されることに起因して、運転者が違和感を感じたりする不利を解消することが可能となる。
【0020】
その結果、駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、駆動手段にて実目標走行駆動力を実目標駆動方向で出力させるように制御することで、車両の走行状態が急に変化して運転者等の搭乗者に違和感を与えたり、駆動騒音が発生したりすることを未然に防止できるようにしながら、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態から、指示されている進行方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態に切り換わるとき、あるいは、指示されている進行方向とは逆方向を目標駆動方向として目標走行駆動力を求める状態から目標走行駆動力を零とする状態に切り換わるとき等において発生する上記したような不都合を回避して操縦安定性を更に向上することが可能となる自走車両の走行駆動制御装置を提供できるに至った。
【0021】
請求項2に記載の特徴構成によれば、前記制御手段は、指示されている進行方向とは逆方向を前記目標駆動方向として、前記目標走行駆動力を求めているときに、その目標走行駆動力が零側の設定範囲内になると、前記停止設定条件が満たされたと判別するように構成されている。
【0022】
つまり、指示されている進行方向とは逆方向を前記目標駆動方向として、前記目標走行駆動力を求めているときに、その目標走行駆動力が零側の設定範囲内の小さい値になっていれば、駆動手段にて逆方向の走行駆動力を出力する必要がないと考えられるので、このような場合には前記停止設定条件が満たされたと判別して強制移行処理を実行するようにしている。このように、駆動手段に対して要求される目標走行駆動力の情報に基づいて停止設定条件の判別を行うようにしたので、別の情報に基づいて判別する場合に比べてより適切なタイミングで強制移行処理を実行することができ、請求項1を実施するのに好適な手段が得られる。
【0023】
請求項3に記載の特徴構成によれば、前記制御手段は、指示されている進行方向とは逆方向を前記目標駆動方向として求めているときに、車速が設定速度以下になると、前記停止設定条件が満たされたと判別するように構成されている。
【0024】
指示されている進行方向とは逆方向を前記目標駆動方向として求めているときに、車速が設定速度以下にまで減速すると、駆動手段にて逆方向の走行駆動力を出力する必要がないと考えられるので、このような場合には前記停止設定条件が満たされたと判別して強制移行処理を実行するようにしている。このように、車両の走行状態を的確に示す情報である車速に基づいて条件判別を行うようにしたので、車両の実際の走行状態に対応したタイミングで強制移行処理を実行することができ、請求項1を実施するのに好適な手段が得られる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る自走車両の走行駆動制御装置について図面に基づいて説明する。
図1に、自走車両の一例としてのハイブリッド車両のシステム構成を示している。このハイブリッド車両は、後述するような遊星ギア機構1、エンジン2、発電機3、及び、電動モータ4等が一体的に組み付けられた駆動ユニットKが設けられ、この駆動ユニットKが、走行装置としての左右の前輪5を駆動する走行用駆動力を発生するように構成されている。
【0026】
次に駆動ユニットKの構成について説明する。
図2に示すように、エンジン2、電動モータ4、及び、発電機3は夫々、遊星ギア機構1を介して機械的に結合されており、遊星ギア機構1は、中央軸芯周りで回転するサンギア18、サンギア18の外周を係合して自転しながら中央軸芯周りで公転する3個の遊星ピニオンギア19、さらにその外周で各遊星ピニオンギア19に係合しながら回転するリングギア20が備えられ、前記3個の遊星ピニオンギア19はキャリア21にて軸支され一体的に中央軸芯周りで公転するように構成されている。
この遊星ギア機構1に対して、エンジン2の出力軸2aがキャリア21に結合され、発電機3の駆動軸3aがサンギア18に結合され、電動モータ4の駆動軸4aがカウンタギア22を介してリングギア20に結合されている。又、前記電動モータ4の駆動軸4aはカウンターギア22及びディファレンシャルギア23を介して左右の前輪5に結合されている。つまり、電動モータ4と各前輪5とは連動連結される状態であり常に同期して回転する状態となっている。
【0027】
上記構成の遊星ギア機構1では、前記各ギアに夫々結合されている3つの軸、つまり、エンジン2の出力軸2a、発電機3の駆動軸3a、及び、電動モータ4の駆動軸4aのうち、2つの軸の回転状態(回転速度や回転トルク等)が定まると、残りの1つの軸の回転状態は一義的に定まる特性を有している。
これらの間での回転速度の関係は、図4に示すような共線図で表すことができる。前記各ギアが停止している状態(速度ゼロ)であれば、図の特性線L1で示す状態となる。そして、エンジン2が停止している状態で電動モータ4のみにより走行駆動させるモータ走行状態では、図の特性線L2で示すように電動モータ4を前進方向側に回転駆動する。このとき、エンジン2は停止しており、発電機3は発電方向とは逆向きの自由回転状態となる。
前記モータ走行状態においてエンジン2を始動させるときには、図の特性線L3で示すように、発電機3を電動モータとして機能させて設定回転速度で駆動させてエンジン2を始動させる。エンジン2が始動すると、図の特性線L4で示すように、発電機3は回転速度をゼロに調整して図示しないクラッチ機構により機械的に回転停止状態に維持され、その後はエンジン2の動力と電動モータ4の動力により走行駆動される。バッテリー17の充電が必要なときは、図の特性線L5で示すようにエンジン2の回転速度を上げて発電機3を駆動して発電させることができる。
【0028】
このように、エンジン2の出力軸、発電機3の駆動軸、及び、電動モータ4の駆動軸の夫々の回転速度の関係は共線図上で常に一直線として規定されることになる。発電機3及び電動モータ4は、夫々、交流同期式の電動機で構成され、これらに対する駆動電流の供給方向と電流値を調節して回転方向や回転速度を制御することが可能であり、駆動ユニットKは無段階に走行速度を変更させることができる構成となっている。
【0029】
次に、このハイブリッド車両における駆動ユニットKに対する制御構成について説明する。
図3にも示すように、車両全体の動作を統括して管理する車両制御部6、この車両制御部6からの制御情報に基づいて前記電動モータ4の動作を制御するモータ制御部7、車両制御部6からの制御情報に基づいて前記発電機3の動作を制御する発電機制御部8、車両制御部6からの制御情報に基づいて前記エンジン2の出力、具体的には、電子スロットル弁9のスロットル開度及びインジェクタ(図示せず)の燃料噴射量を自動調節するエンジン制御部10夫々が備えられ、アクセル操作具11の操作量を検出するアクセル操作量検出センサS1、ブレーキ操作具13の操作量(操作圧)を検出するブレーキ操作量検出センサS2、シフトポジションレバー15の位置を検出するシフトポジションセンサS3、及び、前輪5の車軸の回転速度に基づいて車速を検出する車速センサS4等による各種の検出情報が車両制御部6に入力される構成となっている。
前記シフトポジションレバー15の位置としては、「P」(駐車位置)、「R」(後進走行位置)、「N」(中立位置)、「D」(前進走行位置)、「B」(制動力が大きめに作用する前進走行位置)があり、運転者により運転状況に応じて適宜、切り換え操作されることになる。
前記電動モータ4、発電機3並びに前記各制御部に対する駆動電力は、バッテリー17から供給され、このバッテリー17は後述するように発電機3や電動モータ4からの発電電力によって充電される構成となっている。
【0030】
そして、前記車両制御部6が、アクセル操作具11の操作量の情報、ブレーキ操作具13の操作量の情報、シフトポジションレバー15の位置の情報、車速検出情報等の走行駆動力調整情報に基づいて、駆動ユニットKに対する目標駆動方向及び目標走行駆動力を求め、且つ、その求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、駆動ユニットKにて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、駆動ユニットKにて実目標走行駆動力を実目標駆動方向で出力させるように制御する走行駆動力調整処理を実行するように構成されている。すなわち、車両制御部6が、駆動ユニットKにて実目標走行駆動力を実目標駆動方向で出力させるように、モータ制御部7、発電機制御部8、及び、エンジン制御部10に制御情報を出力して、エンジン2、発電機3及び電動モータ4の出力を制御するようになっている。
【0031】
詳述すると、例えば、シフトポジションレバー15が「D」位置にあるときの車速の変化に対する駆動ユニットKに対する目標走行駆動力としての要求駆動力の変化特性が、図6に示すような特性として予め設定されており、前記車両制御部6がこの特性に基づいて目標走行駆動力、すなわち、要求駆動力を求める構成となっている。図6(イ)に示されるラインq1は、アクセル操作量が最大(全開)になったときの値に対応する車速の変化に対する要求駆動力の変化を示しており、アクセル操作量が変化した場合の要求駆動力の変化割合が図6(ロ)に示すような特性として予め設定されている。そして、これらの特性から、そのときの車速に対応する要求駆動力は、図6(イ)に示されるラインq1から求められる車速に対する値と、アクセル操作量の検出値に基づく変化割合(%)との積により求められることになる。
【0032】
図6に示す特性において、正(+)側は、目標走行方向が前進方向であること、すなわち、前進走行用の要求駆動力であることを示し、図において上側ほど前進走行用の要求駆動力が大となることを示している。又、負(−)側は、目標走行方向が前進方向とは逆方向の要求駆動力であることを示し、図において下側ほど逆向きの要求駆動力が大となることを示している。そして、図6のラインq2は、アクセル操作量が最小(全閉)で且つブレーキ操作量が最小になったときの要求駆動力の変化特性を示しており、又、図6のラインq3はブレーキ操作量が最大になったときの要求駆動力の変化特性を示している。
【0033】
アクセル並びにブレーキが操作されていないときには、このラインq2を用いて要求駆動力が求められることになる。上記ラインq2より明らかなように、車速が設定車速より大でありアクセルが全閉であるとき負(−)側の要求駆動力、すなわち、指示されている進行方向とは逆向きの要求駆動力となることを示しており、ラインq2及びラインq3より明らかなように、ブレーキ操作量が大であるほど負(−)側の要求駆動力が大になるように設定されている。
【0034】
前記車両制御部6は、上記したように、アクセル開度やブレーキ操作量等の走行駆動力調整情報に基づいて求められる要求駆動力から、駆動ユニットKが出力すべき目標駆動方向及び目標走行駆動力を演算にて求める目標値演算処理を実行し、更には、その求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、駆動ユニットKにて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求める実制御値演算処理を実行する。
これは、上記したような走行駆動力調整情報に基づいて求められる目標駆動方向及び目標走行駆動力に対して敏感に応答しながら制御を実行する構成とすると、例えば、アクセル操作やブレーキ操作が頻繁に繰り返されたり、これらの操作量が急激に変化するような場合等において、駆動ユニットKの駆動状態の変化が急激となり、車両の走行状態が急に変化して運転者等の搭乗者に違和感を与えたり、駆動騒音が発生したりするおそれがあることから、駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めるようにして、このような不利を回避しながら走行駆動力を自動調整するようにしているのである。
【0035】
そして、駆動ユニットKの駆動方向が実目標駆動方向にて走行駆動力が実目標走行駆動力になるように自動調節すべく、モータ制御部7、発電機制御部8、及び、エンジン制御部10に制御情報を出力して、エンジン2、発電機3及び電動モータ4の出力を制御するのである。
【0036】
上記したような逆向き駆動力の変更調節は、モータ制御部7が電動モータ4に通流する電流値を変更調節することにより、電動モータ4の走行駆動力を変更調節することによって行う。例えば、車両が高速で走行している場合には、エンジンにて駆動力が出力されて走行駆動されている状態で電動モータ4が回生制動力により前記逆向き駆動力を発生する状態になり、回生制動によって発生した電力がバッテリー17に充電されるようになっており、その電流を変更調節することで回生制動力の大きさを調節する構成となっている。このようにして、回生制動力や逆向きの走行駆動力により油圧式の摩擦ブレーキを補助する構成となっている。
【0037】
又、上記ラインq2より明らかなように、車速が設定速度よりも低い低速状態において、アクセル開度が全閉であってもクリープ走行用の走行駆動力TCRを出力させる形態で要求駆動力が設定される構成となっている。これは、例えば、停止している状態から車両を微速で発進させたい場合等に対応できるようにして操作性を向上させたものである。車速が低速で要求される駆動力が小さい場合には、エンジン2を停止させた状態で電動モータ4の駆動力のみにより車輪を駆動するように構成してあり、上記したようなクリープ走行用の走行駆動力TCRも電動モータ4にて出力する構成となっている。尚、車速が走行停止していたり設定車速以下の低速状態であっても、バッテリーの充電状態が低下して充電が必要であると判断されると、エンジン2を始動させて発電機3を駆動してバッテリー17を充電させる動作を実行することもある。このときは、クリープ走行用の走行駆動力TCRは、電動モータの出力だけでなくエンジンの動力により出力されることになる。
【0038】
以下、車両が停車している状態から発進して走行し、その後、減速して停止するまでの各操作段階での夫々の運転モードにおける制御内容について簡単に説明する。
エンジン2、電動モータ4、及び、発電機3が回転を停止している停止状態(図4の特性線L1に対応)から、アクセルが踏み込み操作されると、先ず、エンジン2を停止した状態で電動モータ4に前進走行用の駆動トルクを発生させて車両を発進させる(図4の特性線L2に対応)。
エンジン2の駆動力を必要とするような場合には、走行速度が設定速度まで上昇すると発電機3を回転駆動させてエンジン2を始動させる(図4の特性線L3に対応)。つまり、車両制御部6がエンジン2の始動に必要な目標回転速度を求め、その目標回転速度の指令情報を発電機制御部8に指令し、発電機制御部8が、対応する目標回転速度になるように発電機3に対する駆動用の供給電流値を制御する。
発電機制御部8により発電機3が駆動トルクを生じている状態から回生制動トルクを発生している状態になったことが判断されることにより、エンジン2の始動が確認されると、その後は発電機3の回転を停止させて機械的に制動をかけて停止状態を維持するようになっている(図4の特性線L4に対応)。
【0039】
尚、車両走行中においてバッテリー17の充電状態が低下して充電が必要であると判断されると、エンジン2の動力により発電機3を駆動して発電してバッテリー17を充電する(図4の特性線L5に対応)。又、図示はしないが、車両走行停止中、すなわち、電動モータ4が駆動停止しているときに、バッテリー17の充電が必要であると判断されると、エンジン2を始動してエンジン2の動力により発電機3を駆動して発電することもある。
【0040】
エンジン2が始動した後において、エンジン2に対するスロットル開度及び燃料噴射量は、エンジンの回転速度の変化に対して運転効率が最も大きくなるような最適燃費ラインに沿って変化するように電子スロットル弁9やインジェクタを自動調節する構成となっている。
説明を加えると、図5に、エンジン2の運転効率の高い点に沿うように予め設定されたエンジン2の回転速度に対する目標スロットル開度の変化特性、すなわち、最適燃費ラインが示されており、前記要求駆動力や車速の情報からエンジンの目標回転速度を求めて、その目標回転速度とこの最適燃費ラインとからそのときの目標スロットル開度を求め、実際のスロットル開度が目標スロットル開度になるように電子スロットル弁9を自動調節するようになっている。尚、図示はしないが、吸入空気量とエンジン回転速度に対応する燃料噴射量も合わせて求められ、対応する燃料噴射量になるように自動調節されることになる。
【0041】
そして、上記したような最適燃費ラインに基づくエンジンの駆動力では不足する走行駆動力を電動モータ4により出力するようになっている。車速が高速であれば、回生制動力を発生するための目標電流値を求めて、電動モータ4からバッテリー17に供給される電流が目標電流値になるように電流量を調整制御する。このとき、電動モータ4は発電機として機能し発電した電力はバッテリ17に蓄電される構成となっている。
【0042】
車両を停止させるためにブレーキ操作が行われると、上記したように指示されている進行方向とは逆向きの走行駆動力が発生するように、電動モータ4の電流値を調節するとともに、ブレーキ操作が大であるほど逆向き駆動力が大になるように電流値を変更調節するようになっている。又、車両が設定車速としてのクリープ車速以下にまで減速するか又は移動停止した後は、アクセル開度が全閉であっても上記したような前進走行用のクリープ走行用の走行駆動力を出力すべく、少なくとも電動モータ4により出力する走行駆動力を変更調節するようになっている。尚、バッテリー17の充電を行うときには、エンジン2及び電動モータ4の両方の出力による走行駆動力を変更調節することになる。
【0043】
シフトポジションレバー15が「D」位置にある場合について説明したが、それ以外の指令位置、例えば、「B」位置にある場合や「R」位置にある場合であっても、同じような処理を実行することになる。但し、このように走行用の指令位置が異なると、車速の変化に対する要求駆動力の変化特性等として異なる特性が用いられることになる。例えば、「B」位置では、「D」位置に比べて、アクセルが全閉であるときの逆向き走行駆動力が大きめの値が設定されることになるが、それらの詳細については説明は省略する。
【0044】
上述したような駆動ユニットKに対する走行駆動力の調整処理が走行駆動力調整処理に対応しており、車両制御部6、モータ制御部7、発電機制御部8、エンジン制御部10の夫々により、走行駆動力調整処理を実行する制御手段Hが構成される。
この制御手段Hの制御内容について図面を参照しながら説明を加えると、図7に示すように、先ず、アクセル操作量検出センサS1にて検出されるアクセル操作具11の操作量の情報、ブレーキ操作量検出センサS2にて検出されるブレーキ操作具13の操作量の情報、シフトポジションセンサS3にて検出されるシフトポジションレバー15の位置の情報、車速センサS4にて検出される車速検出情報の夫々を取り込み、それらの各種の情報に基づいて、現在の車両の走行状態が上述したような各種の運転モードのうちのいずれの運転モードにあるかを判断する処理や、上記各種の検出情報に基づいて、前記要求駆動力から前記目標駆動方向及び目標走行駆動力を演算にて求める目標値演算処理、及び、前記目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、駆動ユニットKにて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を求める実制御値演算処理、及び、エンジンを始動させたり、停止させたりする必要があるか否かの判断処理等を含む演算処理を実行する。
【0045】
そして、前記演算処理にて演算された結果に基づいて、エンジン2を始動させるエンジン始動処理、上記したような各運転モードに応じて必要とされる駆動力になるように上記したような最適燃費ラインに従ってスロットル開度が調整される状態で、エンジン2の出力を調整するエンジン出力処理、上記したような各運転モードに応じて必要とされる運転状態になるように電動モータ4の出力を調整するモータ出力処理、及び、運転モードに応じて必要とされる運転状態になるように発電機3の出力を調整する発電機出力処理の夫々を実行するように構成されている。これらの一連の処理が走行駆動力調整処理に対応する。
【0046】
次に、目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、駆動ユニットKにて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求める処理について説明する。
具体的には、先ず、制御偏差が設定量より大であるか否かが判断される。すなわち、目標駆動方向及び目標走行駆動力は制御ルーチンが実行される所定時間経過毎に求められることになるが、今回の処理で求められた目標駆動方向及び目標走行駆動力に対して、そのときに出力調整されている実際の走行駆動力との偏差、つまり、制御偏差が設定量より大であるか否かが判断される。そして、前記制御偏差が設定量より大でなければ、今回の制御ルーチンで求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力を、そのまま実目標駆動方向及び実目標走行駆動力として求め、前記制御偏差が設定量より大であれば、前回の処理において求めた実目標駆動方向及び実目標走行駆動力から前記設定量だけ変化した値を今回の新たな実目標駆動方向及び実目標走行駆動力として求めるのである。つまり、制御偏差を一定値に制限する構成である。
【0047】
その結果、例えば図8において実線で示すように、目標走行駆動力の変化が急であっても、図8において破線で示すように変化を低く規制する形態で、実目標走行駆動力を求めることになる。この図8では、ブレーキ操作が行われて、負(−)側の目標走行駆動力、即ち、指示されている進行方向とは逆方向に向かう駆動力が大きい状態から、車両が減速して車速が小さくなるにつれて、目標走行駆動力が負(−)側の小さい値に変化し、車速が設定車速以下にまで減速されて、零点を通過して、正(+)側の目標走行駆動力、すなわち、クリープ走行用の走行駆動力に切り換わる状態を例示している。
【0048】
そして、制御手段Hは、前記走行駆動力調整処理において、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力を前記駆動手段にて出力させているときに、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力を前記駆動手段にて出力させる出力状態を停止させる停止設定条件が満たされると、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が前記駆動手段にて出力されるのが停止される状態に強制的に移行させる強制移行処理を実行するように構成されている。前記停止設定条件として、具体的には、前記目標走行駆動力が零になったことをその条件として設定している。
例えば、エンジン2の駆動が停止して電動モータ4のみによる駆動状態となっているような場合について説明を加えると、電動モータ4による走行駆動力が前記演算処理にて変化を低く規制する形態で求められた実目標走行駆動力になるように、電動モータ4の電流値が調節される。
【0049】
そして、車両がブレーキ操作により減速走行している場合に、図8に示すように、目標走行駆動力が零になったことを判別すると、直ちに、実目標走行駆動力を零にリセットして、その後においては、図8において破線で示すように、目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、その実目標駆動方向に実目標走行駆動力を出力するように自動調整されることになる。実目標走行駆動力が零にリセットされた後は、演算にて求められる目標走行駆動力が、負(−)の値、すなわち、目標駆動方向が指示されている進行方向とは逆向きの状態から、正(+)の値、すなわち、目標駆動方向が指示されている進行方向である状態に切り換わっているから、そのときの目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、実目標駆動方向及び実目標走行駆動力がその変化を低く規制する形態で求められ、駆動ユニットKは、その実目標駆動方向にて実目標走行駆動力を出力することになる。
このように実目標走行駆動力が零にリセットされる処理が強制移行処理に対応する。
【0050】
上記したような強制移行処理を実行することにより、減速して車両が停止するか又は極低速状態にまで減速している状態で、ブレーキ操作を解除することがあっても、指示されている進行方向とは逆向きの走行駆動力が駆動ユニットKにより出力されて運転者が違和感を感じる等の不利を未然に回避できるものとなる。
【0051】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0052】
(1)上記実施形態では、前記目標走行駆動力が零になったときに前記停止設定条件が満たされたものと判別する構成としたが、このような構成に限らず、下記の(イ)〜(ニ)に示すような各種の形態で実施するものでもよい。
(イ)図9、図12、図13に示すように、前記目標走行駆動力が、零側の設定範囲内になり設定閾値TSLよりも小さい値になったときに前記停止設定条件が満たされたものと判別する構成でもよい。
(ロ)図10に示すように、車速センサにて検出される車速が零になったときに、その車速の検出情報に基づいて前記停止設定条件が満たされたものと判別する構成でもよい。
(ハ)図11に示すように、車速が設定車速、例えば前記クリープ車速以下になったときに、その車速の検出情報に基づいて前記停止設定条件が満たされたものと判別する構成でもよい。
(ニ)前記目標走行駆動力が設定値(零を含む)になったか否か、及び、車速センサにて検出される車速が設定値(零を含む)になったか否かの2つの条件を共に判別するようにして、それらのうちのいずれか早く到達した条件が満たされたときに、前記停止設定条件が満たされたものと判別する構成でもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、前記強制移行処理として、前記停止設定条件が満たされると、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が駆動手段にて出力されるのが停止される状態に強制的に移行させる構成として、実目標走行駆動力だけを零にリセットする構成を例示したが、このような構成に代えて、次の(ホ)〜(ヘ)に示すような構成としてもよい。
(ホ)図12に示すように、前記目標走行駆動力が設定閾値TSLよりも小さい値になったときに前記停止設定条件が満たされたものと判別したときに、実目標走行駆動力が零にリセットされるとともに、前記目標走行駆動力も合わせて零にリセットされ、指示されている進行方向に向かうクリープ走行用の走行駆動力を求める状態に強制的に切り換えた後に、走行駆動力の変化を低く規制する形態で自動調整する構成としてもよい。
(ヘ)図13に示すように、前記目標走行駆動力が設定閾値TSLよりも小さい値になったときに前記停止設定条件が満たされたものと判別したときに、実目標走行駆動力が零にリセットされるとともに、前記目標走行駆動力も一旦零にリセットするが、その後、演算にて求められた目標駆動方向が指示されている進行方向である状態に切り換わった後は、その演算された目標駆動方向及び目標走行駆動力の情報に基づいて、走行駆動力の変化を低く規制する形態で実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を求める構成としてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、前記強制移行処理として、前記停止設定条件が満たされると、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が駆動手段にて出力されるのが停止される状態に強制的に移行させる構成としたが、このような構成に限らず、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が駆動手段にて出力されるのが早急に解消される状態に強制的に移行させる構成としてもよい。
例えば、図9に示すように、前記目標走行駆動力が設定閾値TSLよりも小さい値になったときに前記停止設定条件が満たされたものと判別したときに、駆動手段の走行駆動力をその条件が満たされたときの目標走行駆動力に一致する状態に移行して、その後は、走行駆動力の変化を低く規制する形態で自動調整する構成としてもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、車速が設定速度よりも低い低速状態において、アクセル開度が全閉であってもクリープ走行用の走行駆動力TCRを出力させる形態で目標走行駆動力が設定される構成を例示したが、このような構成に限らず、例えば図14に示すように、車速が設定速度よりも低い低速状態において、アクセル開度が全閉であれば、クリープ走行用の走行駆動力を出力させることなく、目標走行駆動力を零にさせるように構成するものでもよい。すなわち、目標走行駆動力が零に近づくように変化して、目標走行駆動力が零になると、その後は零を維持するような構成である。
そして、この構成においては、前記強制移行処理として、前記停止設定条件が満たされると、実目標走行駆動力として零を設定して出力する形態としてもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、シフトポジションレバーが「D」位置にある場合において、前記強制移行処理を実行する構成について説明したが、このような構成に限らず、シフトポジションレバーが「R」位置にある場合、すなわち、後進走行させる場合にも、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力を前記駆動ユニットにて出力させているときに、その出力状態を停止させる停止設定条件が満たされると、前記強制移行処理を実行する構成であってもよい。
【0057】
(6)上記実施形態では、目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求める処理として、制御偏差が一定値に制限される構成としたが、このような構成に限らず、次に例示する方法の他、各種の形態で実施してもよい。
例えば、前記制御偏差が大であれば、その制御偏差に対して、一定の低減率をかけて新たな制御偏差を設定して、走行駆動力の現在の調整値に新たな制御偏差を足した値を新たな制御目標値(実目標走行駆動力)として設定し、走行駆動力がその新たな制御目標値になるように自動調整する構成としてもよい。言い換えると、制御偏差を一定値に制限するのではなく、一定の割合で制限する構成である。又、制御偏差を一定値や一定の割合で制限する構成に代えて、例えば、運転モードの違いやその他の運転状況に応じて大きさや割合を適宜変更させるような構成としてもよい。
【0058】
(7)上記実施形態では、エンジンの作動が停止して、電動モータのみにて駆動している場合について、前記強制移行処理を実行する構成を例示したが、このような構成に限らず、エンジンが作動している状態で前記強制移行処理を実行する構成としてもよく、要するに、指示されている進行方向とは逆方向の走行駆動力を前記駆動手段にて出力させているときに、上記したような停止設定条件が満たされると、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が前記駆動手段にて出力されるのが早急に解消される又は停止される状態に強制的に移行させる処理を行うものであればよい。
【0059】
(8)上記実施形態では、自走車両として、エンジン及び電動モータ双方の動力を車軸に伝達可能な所謂、パラレルハイブリッド方式のハイブリッド車両を例示したが、本発明は、この構成に限らず、エンジンは発電のみ行い電動モータにて車軸を駆動するシリーズハイブリッド方式のハイブリッド車両にも適用でき、又、ハイブリッド車両に限らず、電動モータのみにより走行装置を駆動する電気自動車にも適用できる。
【0060】
(9)上記実施形態では、駆動手段が前輪を駆動する構成としたが、これに限らず、後輪を駆動する構成や、4 輪すべてを駆動する構成でもよく、又、駆動手段として遊星ギア機構を備える構成を例示したが、このような構成に限定されるものではなく、各種の伝動機構を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】概略構成図
【図2】駆動ユニットを示す図
【図3】制御ブロック図
【図4】駆動ユニットの動作状態を示す共線図
【図5】最適燃費ラインを示す図
【図6】要求駆動力を示す図
【図7】制御動作のフローチャート
【図8】走行駆動力の変化状態を示す図
【図9】別実施形態の走行駆動力の変化状態を示す図
【図10】別実施形態の走行駆動力の変化状態を示す図
【図11】別実施形態の走行駆動力の変化状態を示す図
【図12】別実施形態の走行駆動力の変化状態を示す図
【図13】別実施形態の走行駆動力の変化状態を示す図
【図14】別実施形態の走行駆動力の変化状態を示す図
【図15】従来の走行駆動力の変化状態を示す図
【符号の説明】
2 エンジン
4 電動モータ
K 駆動手段
H 制御手段
Claims (3)
- 少なくとも電動モータを動力源として備え、走行装置を駆動する走行駆動力及びその駆動方向を変更調整自在な駆動手段と、
その駆動手段の駆動方向及び走行駆動力を自動調整するように制御する制御手段とが設けられ、
その制御手段は、
アクセル開度及び進行方向指示情報を含む走行駆動力調整情報に基づいて、減速走行状態においては指示されている進行方向とは逆方向の目標走行駆動力を求める形態で、目標駆動方向及び目標走行駆動力を求め、且つ、その求めた目標駆動方向及び目標走行駆動力に応じて、前記駆動手段にて実際に出力させるための実目標駆動方向及び実目標走行駆動力を、その変化を低く規制する形態で求めて、前記駆動手段にて前記実目標走行駆動力を前記実目標駆動方向で出力させるように制御する走行駆動力調整処理を実行するように構成された自走車両の走行駆動制御装置であって、
前記制御手段は、前記走行駆動力調整処理において、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力を前記駆動手段にて出力させているときに、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力を前記駆動手段にて出力させる出力状態を停止させる停止設定条件が満たされると、指示されている進行方向とは逆方向の実目標走行駆動力が前記駆動手段にて出力されるのが早急に解消される又は停止される状態に強制的に移行させる強制移行処理を実行するように構成されている自走車両の走行駆動制御装置。 - 前記制御手段は、指示されている進行方向とは逆方向を前記目標駆動方向として、前記目標走行駆動力を求めているときに、その目標走行駆動力が零側の設定範囲内になると、前記停止設定条件が満たされたと判別するように構成されている請求項1記載の自走車両の走行駆動制御装置。
- 前記制御手段は、指示されている進行方向とは逆方向を前記目標駆動方向として求めているときに、車速が設定速度以下になると、前記停止設定条件が満たされたと判別するように構成されている請求項1記載の自走車両の走行駆動制御装置。
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