JP3659905B2 - ハイブリッド車両の走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行駆動用のエンジン、走行装置に連係された走行駆動用の電動モータ、及び、発電機の夫々が遊星歯車機構を介して互いに接続され、運転を制御する制御手段が、アクセル操作量を含む動力調整用情報に基づいて求めた目標走行駆動力の情報に基づいて、エンジン目標回転速度、及び、前記電動モータの目標出力を求めて、前記エンジンの回転速度が前記エンジン目標回転速度になるように前記エンジンの運転を制御し、前記電動モータの出力が前記目標出力になるように前記電動モータの運転を制御する走行駆動力制御を実行するように構成され、且つ、前記エンジン目標回転速度、走行車速、並びに、前記遊星歯車機構の伝動特性に基づいて、前記発電機に対する発電機目標回転速度を求めて、前記発電機の回転速度が前記発電機目標回転速度になるように前記発電機の運転を制御する発電機制御を実行するように構成されているハイブリッド車両の走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記構成のハイブリッド車両の走行制御装置は、エンジン及び電動モータを走行駆動源として備えて、例えば、エンジンにて走行用の駆動力を出力させるとともに、エンジンでは不足する動力を電動モータにて出力することで走行に必要な走行駆動力を出力させるようにして、所望の走行駆動力が得られるものでありながらエンジンによる燃料消費量を極力少なくすることが可能になるとともに、エンジンの動力に余剰があるときは電動モータにて回生電力を得ることができるようにしたものである。
【0003】
ところで、上記構成においては、電動モータに電力を供給するためのバッテリーを充電するために発電機が設けられており、エンジン、電動モータ、及び、発電機の夫々が遊星歯車機構を介して互いに接続される構成であるから、エンジンの回転軸、発電機の回転軸、及び、電動モータの回転軸のうち、2つの軸の回転状態、つまり、回転速度及び回転方向が定まると、残りの1つの軸の回転速度は一義的に定まる特性を有している。これらの間での回転速度の関係は、図12に示すような共線図で表すことができ、上記3つの回転軸の回転速度は上下方向に延びる3軸上の3点を結んだ一直線上に位置する関係を有する。
このような構成においては、上記したように走行駆動力制御を実行することで、走行に必要な走行駆動力を、エンジン及び電動モータにて出力させることになるが、エンジンの回転速度及び電動モータの回転速度すなわち走行車速に対応する回転速度が定まると、発電機は、上記したような遊星歯車機構の伝動特性により、そのときの速度条件を満たすような回転速度で回転する必要があるが、発電機を自由回転状態にさせておくと回転速度が走行駆動負荷に応じて成り行きによって頻繁に変動してしまうことになる。
そこで、エンジン目標回転速度、走行車速、並びに、上記したような遊星歯車機構の伝動特性に基づいて、発電機に対する発電機目標回転速度を求めて、発電機の回転速度が発電機目標回転速度になるように発電機の運転を制御するようになっている。そして、通常の走行状態、つまり、エンジン及び電動モータ夫々が共に走行駆動力を出力して、アクセル操作量を含む動力調整用情報に基づいて求めた目標走行駆動力になるように駆動力制御を実行しながら走行しているような状態においては、そのような走行状態における発電機の回転速度よりも低目に発電機の目標回転速度が設定され、エンジンの駆動力によって発電方向に向けて目標回転速度よりも高速で回転駆動されるように駆動トルクを受けて、バッテリーの充電に必要な程度に電力を発電するように予め設定される構成となっている。このときは、図12の特性線L11で示すような状態となっている。
【0004】
しかし、例えば、車両がほぼ一定車速を維持しながら安定走行しているような場合に、目標走行駆動力が低い値に変化することがあるが、このとき、車速を一定に維持するためにアクセル操作量が低下してエンジンの回転速度が低めに変化することがある。そうすると、発電機を発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が発電用回転方向とは反対方向になってしまうことがある。
図12を用いて説明すると、発電機の回転速度が図12の回転速度ゼロの線よりも上方側に位置する状態が発電用回転方向に対応しており上方側ほど回転速度が大であることを示し、図12の回転速度ゼロの線よりも下方側に位置する状態が前記反対方向に対応し、下方側ほど回転速度が大であることを示している。図12の特性線L12にて、発電機を発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が発電用回転方向とは反対方向になっていることを示している。
そして、上記したような反対方向に発電機が駆動されると、発電機が発電機として機能するのではなく、反対方向に向けて発電機目標回転速度にて回転させるように制御されることから、結果的に電動モータとして機能することになり、バッテリーの電力が無駄に消費されてしまい、エネルギーロスを招く不利がある。
【0005】
そこで、このような不利を未然に回避することが可能となる構成として、特開平8−322108号公報に示されるように、発電機の回転を固定する固定手段を備えて、アクセル開度が所定値以下であれば、固定手段により発電機の回転を固定するように構成したものがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来構成のように、アクセル開度が所定値以下であるときに常に発電機の回転を固定するようにした場合には、上述したような不利、すなわち、反対方向に向けて発電機が回転するように制御されて、バッテリーの電力が消費されエネルギーロスを招くといった不利を回避させることは可能となるが、このような構成においては、次のような不利な面があり、未だ改善の余地がある。
【0007】
すなわち、上記従来構成においては、アクセル開度が所定値以下であるときに単に発電機の回転を固定する構成となっているが、アクセル開度のみでは、前述したようなエネルギーロスを招く状況を検知できず、又、発電機を前記発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が発電用回転方向と同じ方向となっている状態、つまり、発電機が発電機として機能している場合であって発電機を停止させる必要がない状態であっても、アクセル開度が設定値以下であれば不必要に発電機の回転が停止してしまい、発電機により必要な発電量が得られないものになるといった不利もある。
【0008】
本発明はかかる点に着目してなされたものであり、その目的は、発電機により必要な発電量が得られないような状況に陥ることを未然に防止しながら、発電機にて電力が無駄に消費されてエネルギーロスを招くといった不利を回避することが可能となるハイブリッド車両の走行制御装置を提供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1によれば、走行駆動用のエンジン、走行装置に連係された走行駆動用の電動モータ、及び、発電機の夫々が遊星歯車機構を介して互いに接続され、運転を制御する制御手段が、アクセル操作量を含む動力調整用情報に基づいて求めた目標走行駆動力の情報に基づいて、エンジン目標回転速度、及び、前記電動モータの目標出力を求めて、前記エンジンの回転速度が前記エンジン目標回転速度になるように前記エンジンの運転を制御し、前記電動モータの出力が前記目標出力になるように前記電動モータの運転を制御する走行駆動力制御を実行するように構成され、且つ、前記エンジン目標回転速度、走行車速、並びに、前記遊星歯車機構の伝動特性に基づいて、前記発電機に対する発電機目標回転速度を求めて、前記発電機の回転速度が前記発電機目標回転速度になるように前記発電機の運転を制御する発電機制御を実行するように構成されているハイブリッド車両の走行制御装置において、前記発電機の回転を阻止する作用状態と回転を許容する非作用状態とに切り換え自在な制動手段が備えられ、前記制御手段が、前記発電機制御において、前記発電機を前記発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、発電する発電用回転方向であれば、前記発電機の回転速度が前記発電機目標速度になるように前記発電機の運転を制御し、且つ、前記発電機を前記発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、前記発電用回転方向と反対方向であれば、前記制動手段を前記作用状態に切り換えるとともに、前記発電機の運転制御を停止するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
すなわち、発電機制御を実行するときに、エンジン目標回転速度、走行車速、並びに、遊星歯車機構の伝動特性に基づいて、発電機目標回転速度を求めるのであるが、その発電機目標回転速度にて発電機を回転させる回転方向が、発電する発電用回転方向であれば、発電機の回転速度が発電機目標速度になるように発電機の運転を制御する。このとき制動手段は非作用状態に維持されることになる。そして、前記発電機目標回転速度にて発電機を回転させる回転方向が、前記発電用回転方向と反対方向であれば、制動手段を作用状態に切り換えるとともに、発電機の運転制御を停止するのである。
【0011】
つまり、前記走行駆動力制御を実行することによって、エンジン及び電動モータにて目標走行駆動力に相当する駆動力を出力させて車両が走行している状態において、発電機を回転させる回転方向が発電用回転方向であれば、発電機の回転速度が発電機目標速度になるように発電機の運転を制御するので、例えば、アクセル開度が低い値であり目標走行駆動力が低い値になっているような場合であっても、発電機にて発電が行われ必要とされる発電量を得ることができる。
【0012】
そして、前記発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、発電用回転方向と反対方向であれば、制動手段を作用状態に切り換えるとともに、発電機の運転制御を停止する。図12を参照して説明すると、図中の特性線L13で示すように発電機の回転速度がゼロとなる。従って、発電機が、発電用回転方向と反対方向に向けて回転するように発電機制御が実行されて電動モータとして機能し、バッテリーの電力が無駄に消費されてエネルギーロスを招くといった不利を的確に回避させることが可能となる。
【0013】
従って、発電機により必要な発電量が得られないような状況に陥ることを未然に回避しながら、発電機にて電力が無駄に消費されてエネルギーロスを招くといった不利を回避することが可能となるハイブリッド車両の走行制御装置を提供できるに至った。
【0014】
請求項2によれば、請求項1において、前記制御手段が、前記走行駆動力制御において、前記エンジンを高効率運転状態で運転し且つエンジンが出力する走行駆動力では前記目標走行駆動力に対して不足する走行駆動力を前記電動モータにて出力させる形態で、前記エンジンの運転及び前記電動モータの運転を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
すなわち、走行に必要とされる目標走行駆動力に相当する駆動力を出力することができるものでありながら、エンジンを高効率運転状態で運転するので、燃料消費量を極力少ない状態に維持しながら運転を行うことが可能となり、請求項1を実施するのに好適な手段が得られる。
【0016】
請求項3によれば、請求項1又は2において、前記発電機により充電され前記電動モータへ駆動用電力を供給するバッテリーと、このバッテリーの充電状態を検出する充電状態検出手段とが備えられ、前記制御手段が、前記発電機制御において、前記充電状態検出手段にて検出される前記バッテリーの充電状態が設定充電状態より大であれば、前記発電機を前記発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、前記発電用回転方向と反対方向であっても、前記制動手段を前記非作用状態にして、前記発電機の回転速度が前記発電機目標回転速度になるように前記発電機の運転を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
バッテリーの充電状態が設定充電状態より大であるときは、バッテリーが過充電になるのを防止するために電力消費量を増加させるようにしたほうがよい。そこで、例えば、電動モータによる電力の消費量を増加させるために、エンジンの運転を停止させる状態にして走行駆動力を電動モータだけで出力する状態を増やすことが考えられるが、このようにすると、エンジンの起動並びに停止の機会が多くなり、それに伴う振動の発生等により乗り心地が低下する不利がある。
【0018】
そこで、バッテリーの充電状態が設定充電状態より大であれば、発電機の回転方向が前記反対方向であっても、発電機を電動モータとして機能させる状態で運転制御を実行することにより、発電機における上記したような電力消費状態を利用して積極的にバッテリーの電力を消費させるのである。
このようにして、発電機の電力消費状態を利用して、エンジンの起動並びに停止の機会が多くさせることなく、バッテリーの電力を消費させることができ、請求項1又は2を実施するのに好適な手段が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るハイブリッド車両について図面に基づいて説明する。
図1に、ハイブリッド車両のシステム構成を示している。このハイブリッド車両は、後述するような遊星歯車機構1、エンジン2、発電機3、及び、電動モータ4等が一体的に組み付けられた駆動ユニットKが設けられ、この駆動ユニットKが、走行装置としての左右の前輪5を駆動する走行用駆動力を発生するように構成されている。
【0020】
次に駆動ユニットKの構成について説明する。
図2に示すように、エンジン2、電動モータ4、及び、発電機3は夫々、遊星歯車機構1を介して機械的に結合されており、遊星歯車機構1は、中央軸芯周りで回転するサンギア18、サンギア18の外周を係合して自転しながら中央軸芯周りで公転する3個の遊星ピニオンギア19、さらにその外周で各遊星ピニオンギア19に係合しながら回転するリングギア20が備えられ、前記3個の遊星ピニオンギア19はキャリア21にて軸支され一体的に中央軸芯周りで公転するように構成されている。
この遊星歯車機構1に対して、エンジン2の出力軸2aがキャリア21に結合され、発電機3の駆動軸3aがサンギア18に結合され、電動モータ4の駆動軸4aがカウンタギア22を介してリングギア20に結合されている。又、前記電動モータ4の駆動軸4aはカウンターギア22及びディファレンシャルギア23を介して左右の前輪5に結合されている。つまり、電動モータ4と各前輪5とは連動連係される状態であり常に同期して回転する状態となっている。
【0021】
上記構成の遊星歯車機構1では、前記各ギアに夫々結合されている3つの軸、つまり、エンジン2の出力軸2a、発電機3の駆動軸3a、及び、電動モータ4の駆動軸4aのうち、2つの軸の回転速度が定まると、残りの1つの軸の回転速度は一義的に定まる特性を有している。
これらの間での回転速度の関係は、図4に示すような共線図で表すことができる。前記各ギアが停止している状態(速度ゼロ)であれば、図の特性線L1で示す状態となる。そして、エンジン2が停止している状態で電動モータ4のみにより走行駆動させるモータ走行状態では、図の特性線L2で示すように電動モータ4を前進方向側に回転駆動する。このとき、エンジン2は停止しており、発電機3は発電方向とは逆向きの自由回転状態となる。
前記モータ走行状態においてエンジン2を始動させるときには、図の特性線L3で示すように、発電機3を電動モータとして機能させて設定回転速度で駆動させてエンジン2を始動させる。エンジン2が始動すると、図の特性線L4で示すように、発電機3の設定回転速度での回転制御が停止され、その後はエンジン2の動力と電動モータ4の動力により走行駆動される。バッテリー17の充電が必要なときは、図の特性線L5で示すようにエンジン2の回転速度を上げて発電機3を駆動して発電させることができる。
【0022】
このように、エンジン2の出力軸、発電機3の駆動軸、及び、電動モータ4の駆動軸の夫々の回転速度の関係は共線図上で常に一直線として規定されることになる。発電機3及び電動モータ4は、夫々、交流同期式の電動機で構成され、これらに対する駆動電流の供給方向と電流値を調節して回転方向や回転速度を制御することが可能であり、駆動ユニットKは無段階に走行速度を変更させることができる構成となっている。
【0023】
そして、このハイブリッド車両では、前記発電機3の回転を阻止する作用状態と回転を許容する非作用状態とに切り換え自在な制動手段としての油圧式制動装置31が備えられている。
【0024】
次に前記駆動ユニットKに対する制御構成について説明する。
図3にも示すように、車両全体の動作を統括して管理する車両制御部6、この車両制御部6からの制御情報に基づいて前記電動モータ4の動作を制御するモータ制御部7、車両制御部6からの制御情報に基づいて前記発電機3の動作を制御する発電機制御部8、車両制御部6からの制御情報に基づいて前記エンジン2の出力、具体的には、電子スロットル弁9のスロットル開度及びインジェクタ(図示せず)の燃料噴射量を自動調節するエンジン制御部10夫々が備えられ、アクセル操作具11の操作量を検出するアクセル操作量検出センサS1、ブレーキ操作具13の操作量(操作圧)を検出するブレーキ操作量検出センサS2、シフトポジションレバー15の位置を検出するシフトポジションセンサS3、前輪5の車軸の回転速度に基づいて車速を検出する車速センサS4、及び、バッテリーの充電状態を検出するための充電状態検出部S5等による各種の検出情報が車両制御部6に入力される構成となっている。
【0025】
前記シフトポジションレバー15の位置としては、「P」(駐車位置)、「R」(後進走行位置)、「N」(中立位置)、「D」(前進走行位置)、「B」(制動力が大きめに作用する前進走行位置)があり、運転者により運転状況に応じて適宜、切り換え操作されることになる。
【0026】
前記電動モータ4、発電機3並びに前記各制御部に対する駆動電力は、バッテリー17から供給され、このバッテリー17は後述するように発電機3や電動モータ4からの発電電力によって充電される構成となっている。
【0027】
そして、前記車両制御部6が、アクセル操作具11の操作量の情報、ブレーキ操作具13の操作量の情報、シフトポジションレバー15の位置の情報、車速センサS4による検出情報等の走行用の駆動力調整情報、及び、充電状態検出部S5にて検出されるバッテリー17の充電状態から求められる電池要求電力情報に基づいて、エンジン2を始動させるか否かの判断処理や駆動ユニットKに対する要求駆動力(目標走行駆動力に対応する)を求める処理、駆動ユニットKにて要求駆動力を出力させる出力処理等を実行するように構成されている。出力処理においては、車両制御部6が、駆動ユニットKにて要求駆動力を出力させるように、モータ制御部7、発電機制御部8、及び、エンジン制御部10に制御情報を出力して、エンジン2、発電機3及び電動モータ4の出力を制御するようになっている。
【0028】
以下、車両が停車している状態から発進して走行し、その後、減速して停止するまでの各操作段階での夫々の運転モードにおける制御内容について簡単に説明する。
エンジン2、電動モータ4、及び、発電機3の夫々が回転を停止している停止状態(図4の特性線L1に対応)から、アクセルが踏み込み操作されると、先ず、エンジン2を停止した状態で電動モータ4に前進走行用の駆動トルクを発生させて車両を発進させる(図4の特性線L2に対応)。
走行速度が設定速度(約10km/h)を越えてエンジン2の駆動力が必要である場合には、発電機3を回転駆動させてエンジン2を始動させる(図4の特性線L3に対応)。つまり、車両制御部6がエンジン2の始動に必要な目標回転速度を求め、その目標回転速度の指令情報を発電機制御部8に指令し、発電機制御部8が、対応する目標回転速度になるように発電機3に対する駆動用の供給電流値を制御する。発電機制御部8により発電機3が駆動トルクを生じている状態からエンジン2の動力によって回生制動トルクを発生している状態になったことが判断されることにより、エンジン2の始動が確認されると、その後は、エンジン2の始動に必要な目標回転速度での回転速度制御を停止して、走行状態に対応した回転速度に調節される。尚、図4中の特性線L4は、後述するような発電機3の回転を停止して車両走行している状態を示している。
【0029】
車両走行中においてバッテリー17の充電状態が低下して充電が必要であると判断されると、エンジン2の動力により発電機3を駆動して発電してバッテリー17を充電する(図4の特性線L5に対応)。又、図示はしないが、車両走行停止中、すなわち、電動モータ4が駆動停止しているときに、バッテリー17の充電が必要であると判断されると、エンジン2を始動してエンジン2の動力により発電機3を駆動して発電する。
【0030】
エンジン2が始動した後において、後で詳述するように、エンジン2に対するスロットル開度及び燃料噴射量は、エンジン2の回転速度の変化に対して運転効率が最も大きくなるような最適燃費ラインに沿って変化するように電子スロットル弁9やインジェクタを自動調節する構成となっている。
そして、車両走行中において、上記したような最適燃費ラインに基づくエンジン2の駆動力では不足する走行駆動力を電動モータ4により出力するようになっている。
又、車両が走行しているとき、例えば、下り坂になったり、一定速度での安定走行となりアクセル操作量が小さくなったような場合、あるいは、ブレーキ操作により減速するような場合には、要求駆動力が小さくなるので、電動モータが回生制動状態となり、電動モータ4を発電機として機能させて発生させた回生電力はバッテリ17に蓄電させる構成となっている。
【0031】
上述したような駆動ユニットKに対する走行駆動力の調整処理によって車両の運転が管理されることになり、車両制御部6、モータ制御部7、発電機制御部8、エンジン制御部10の夫々により、車両の運転を管理する制御手段Hが構成される。
この制御手段Hの具体的な制御内容について図面(図5)を参照しながら説明を加える。
先ず、アクセル操作量検出センサS1にて検出されるアクセル操作具11の操作量の情報、ブレーキ操作量検出センサS2にて検出されるブレーキ操作具13の操作量の情報、シフトポジションセンサS3にて検出されるシフトポジションレバー15の位置の情報、車速センサS4にて検出される車速検出情報、充電状態検出部S5の検出情報の夫々を取り込み、それらの各種の情報に基づいて、現在の車両の走行状態が上述したような各種の運転モードのうちのいずれの運転モードにあるかを判断する処理や、上記各種の検出情報に基づいて、前記スロットル目標開度、及び、モータトルク、発電機目標回転速度を求める処理や、エンジン2を始動させたり停止させたりする必要があるか否かの判断処理等を含む演算処理を実行する。
【0032】
そして、前記演算処理にて演算された結果に基づいて、運転モードに応じて必要とされる運転状態になるように発電機3の回転速度を調整する発電機出力処理、エンジン2を始動させるエンジン始動処理、上記したような各運転モードに応じて必要とされる駆動力になるように上記したような最適燃費ラインに従ってスロットル開度が調整される状態でエンジン2の出力を調整するエンジン出力処理、及び、上記したような各運転モードに応じて必要とされる運転状態になるように電動モータ4の出力を調整するモータ出力処理の夫々を実行するように構成されている。
【0033】
次に、アクセル操作量を含む動力調整用情報に基づいて要求駆動力を求める処理について説明する。
図10に示すように、例えばシフトポジションレバー15が「D」位置にあるときの車速の変化に対する駆動ユニットKに対する要求駆動力の変化特性が予め設定されており、前記車両制御部6がこの特性に基づいて走行用の要求駆動力を求める構成となっている。図10(イ)に示されるラインq1は、アクセル操作量が最大(全開)になったときの値に対応する車速の変化に対する要求駆動力の変化を示しており、アクセル操作量が変化した場合の要求駆動力の変化割合が図10(ロ)に示すような特性として予め設定されている。そして、これらの特性から、そのときの車速に対応する要求駆動力は、図10(イ)に示されるラインq1から求められる車速に対する値と、アクセル操作量の検出値に基づく変化割合(%)との積により求められることになる。
【0034】
図10に示す特性において、正(+)側は、目標走行方向が前進方向であること、すなわち、前進走行用の要求駆動力であることを示し、図において上側ほど前進走行用の要求駆動力が大となることを示している。又、負(−)側は、目標走行方向が前進方向とは逆方向の要求駆動力であることを示し、図において下側ほど逆向きの要求駆動力が大となることを示している。そして、図6のラインq2は、アクセル操作量が最小(全閉)で且つブレーキ操作量が最小になったときの要求駆動力の変化特性を示しており、又、図9のラインq3はブレーキ操作量が最大になったときの要求駆動力の変化特性を示している。
【0035】
アクセル並びにブレーキが操作されていないときには、このラインq2を用いて要求駆動力が求められることになる。上記ラインq2より明らかなように、車速が設定車速より大でありアクセルが全閉であるとき負(−)側の要求駆動力、すなわち、指示されている進行方向とは逆向きの要求駆動力となることを示しており、ラインq2及びラインq3より明らかなように、ブレーキ操作量が大であるほど負(−)側の要求駆動力が大になるように設定されている。
【0036】
そして、図11に示すように、充電状態検出部S5にて検出されるバッテリーの充電状態SOCに対するバッテリー17における充電すべき電力や放電すべき電力を規定する電池要求電力の変化特性が予め設定されており、充電状態検出部S5にて検出される現在のバッテリー17の充電状態SOCからそのときの電池要求電力を求め、その電池要求電力を駆動ユニットKに対する要求動力に換算した値と、前記アクセル操作量やブレーキ操作量等に基づいて求められる走行用の要求駆動力とからエンジン要求出力を求める。
【0037】
図11において、電池要求電力が正(+)側は上方側ほどバッテリーが大きな電力を放電させる必要があることを示し、負(−)側は下方側ほどバッテリーの充電量を大きくさせる必要があることを示しており、電池要求電力が正(+)側であれば充電の必要はないのでエンジン2に対する要求動力は小さくなり、電池要求電力が負(−)側であれば充電が必要でありエンジン2に対する要求動力は大きくなる。
【0038】
前記車両制御部6は、上記したようにして求められる要求駆動力から、先ず、エンジン2を起動する必要があるか否かを判断し、必要があれば要求されるエンジン要求出力を求める。尚、バッテリー17の充電状態SOCが目標充電状態X(電池要求電力が「0」となる充電状態)よりも大であり、車速が設定車速(10km/h)以下であれば、エンジン2を起動させずに電動モータ4による駆動を行うようになっている。
【0039】
又、制御手段Hは、前記油圧式制動装置31を作用状態と非作用状態とに切り換え制御自在な構成となっており、前記演算処理において、発電機3を発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、発電する発電用回転方向であれば、発電機3の回転速度が発電機目標速度になるように発電機3の運転を制御し、且つ、発電機3を発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、発電用回転方向と反対方向であれば、油圧式制動装置31を前記作用状態に切り換えるとともに、発電機3の運転制御を停止するように構成されている。
更には、充電状態検出部S5にて検出されるバッテリー17の充電状態が設定充電状態より大であれば、発電機3を発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、発電用回転方向と反対方向であっても、油圧式制動装置31を前記非作用状態にして、発電機3の回転速度が発電機目標回転速度になるように発電機3の運転を制御するように構成されている。
【0040】
以下、各種目標値の演算処理並びに各出力処理の具体的な手順について説明する。
バッテリー17の充電状態SOCが設定充電状態Yと同じか又はそれよりも低い状態である場合には、図6に示すような処理手順に基づいて各種目標値の演算処理が実行される。
すなわち、バッテリー17の充電状態SOCが目標充電状態Xより小さくなるか、又は、車速が設定車速(10km/h)を越えて、エンジン2を起動する場合には、図8に示すように予め設定されている変化特性から、前記エンジン要求出力に対して運転効率が最も大きくなるようなエンジン目標回転速度を求める。そして、図9に示すように、エンジン2の運転効率の高い点に沿うように予め設定されたエンジン2のエンジン目標回転速度に対する目標スロットル開度の変化特性、すなわち、最適燃費ラインが設定されており、前記エンジン目標回転速度とこの最適燃費ラインとからそのときの目標スロットル開度を求める。この求めた目標スロットル開度の情報はエンジン制御部10に指令される。
エンジン制御部10は、実際のスロットル開度が求めた目標スロットル開度になるように電子スロットル弁9の開度を調整する。尚、図示はしないが、吸入空気量とエンジン回転速度に対応する燃料噴射量も合わせて求められ、対応する燃料噴射量になるように自動調節されることになる。
【0041】
一方、上記したようにして求めた前記エンジン目標回転速度とそのときの車速の情報とから発電機3の目標回転速度を求め、その目標回転速度になるように発電機制御部8に制御情報を指令する。但し、ここで求められる発電機目標回転速度が負の値、すなわち、発電機目標回転速度が図4において「0」よりも下側の値として求められた場合には電動モータとして機能するため、発電機制御部8に情報を指令することなく、発電機3の回転を機械的に阻止する油圧式制動装置31を作動させて回転停止させるようになっている。このときの回転速度の状態は図5の特性線L4で示す状態となる。そして、回転を停止させる場合には、車速の情報から、運転効率が高くなるよう、再度、エンジン目標回転速度を演算にて求めて、その求めた値と前記最適燃費ラインとから、エンジン2の運転効率の高い目標スロットル開度を求めるようにしている。
ここで、前記発電機目標回転速度が負の値であるというのは、前記エンジン2にて駆動されて発電するための発電用回転方向とは反対方向に回転させることに対応する。
【0042】
そして、車速の変化に対する電動モータ4とエンジン2とのトルク分配比率等を設定した車両の走行性能特性が予め設定されており、前記要求駆動力の情報や車速の情報と、走行性能特性から電動モータ4が出力すべきモータトルクを算出する。例えば、設定車速以下であればすべての駆動力を電動モータ4にて出力するように、又、設定車速を越えて走行しているときエンジン2の出力では要求駆動力に対して不足する動力を電動モータ4にて出力するように、必要なモータトルクが求められ、電動モータ4の駆動制御が行われることになる。
【0043】
前記電池要求出力が負(充電)側に大であれば、走行用要求駆動力に充電に必要な駆動力が加算されるので、発電機目標回転数が正の値になり、発電機から駆動されてバッテリー17に充電が行われ、前記電池要求出力が正(放電)側に大であれば、発電機3が停止して、バッテリー17の電力により電動モータ4が駆動され、バッテリー17から電力が放電されることになる。
従って、バッテリー17の充電状態SOCが目標充電状態Xになるように、電動モータ4やエンジン2の作動が制御されることになる。
【0044】
そして、バッテリー17の充電状態SOCが設定充電状態Yよりも大である場合には、図7に示すような処理手順に基づいて各種目標値の演算処理が実行される。
この処理は、発電機目標回転速度を求めるときに、正又は負のいずれの値であっても、すなわち、回転方向がいずれの方向であっても、発電機目標回転速度を求める構成となっている点と、エンジン目標回転速度の再演算を行わない点でのみ図6に示す手順と異なり、その他の手順は同様である。
以下、異なる点についてのみ説明し、同様な構成については説明は省略する。つまり、バッテリー17の充電状態SOCが設定充電状態Yよりも大であれば、発電機目標回転数が正の値である場合は勿論、負の値であっても、油圧式制動装置31を非作用状態にしたまま、エンジン目標回転速度と車速との情報から発電機目標回転速度を求めて、その値になるように発電機3の回転速度を制御するのである。つまり、負の値であれば図12における特性線L12に示す状態となる。このようにして、バッテリー17の充電状態が設定充電状態Yよりも大であれば、発電機を電動モータとして機能する状態を利用してバッテリー17の電力を消費させるのである。
【0045】
以上の制御動作については、シフトポジションレバー15が「D」位置にある場合について説明したが、それ以外の指令位置、例えば、「B」位置にある場合であっても同じような処理を実行することになる。但し、このように走行用の指令位置が異なると、車速の変化に対する要求駆動力の変化特性等として異なる特性が用いられることになる。例えば、「B」位置では、「D」位置に比べて、アクセルが全閉であるときの逆向き走行駆動力が大きめの値が設定されることになるが、それらの詳細については説明は省略する。
【0046】
前記制御手段Hの制御動作において、前記演算処理におけるエンジン目標回転速度と電動モータの目標出力を求める処理、前記エンジン出力処理、及び、前記モータ出力処理が、前記走行駆動力制御に対応し、前記演算処理における発電機目標回転速度の演算処理及び発電機出力処理が前記発電機制御に対応する。
【0047】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0048】
(1)上記実施形態では、前記バッテリーの充電状態が設定充電状態より大であれば、前記発電機を回転させる回転方向が、前記発電用回転方向と反対方向であっても、前記制動装置を非作用状態にして、発電機の運転制御を実行するようにしたが、このような構成に代えて、バッテリーの充電状態にかかわらず、前記発電機を回転させる回転方向が、前記発電用回転方向と反対方向であれば、常に、前記制動装置を作用状態にして発電機の運転制御を停止させるようにしてもよい。但し、この構成においては、前記バッテリーの充電状態が設定充電状態より大であれば、エンジンの運転を停止させる回数を増やす等、電動モータによるバッテリーの電力の消費量を増加させるようにする必要がある。
【0049】
(2)上記実施形態では、前記エンジンを常に最適燃費ラインに沿うように、スロットル開度を調節することで高効率運転状態で運転する構成を例示したが、このような構成に限らず、エンジン回転速度を検出してその検出値がエンジン目標回転速度になるようにフィードバック制御する構成としてもよく、最適燃費ラインから外れた特性にて運転させる構成としてもよい。
【0050】
(3)上記実施形態では、走行装置として前輪を駆動する構成としたが、これに限らず、後輪を駆動する構成や、4 輪すべてを駆動する構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】概略構成図
【図2】駆動ユニットを示す図
【図3】制御ブロック図
【図4】駆動ユニットの動作状態を示す共線図
【図5】制御動作のフローチャート
【図6】目標値の演算処理手順を示す図
【図7】目標値の演算処理手順を示す図
【図8】エンジンの速度特性図
【図9】最適燃費ラインを示す図
【図10】要求駆動力を示す図
【図11】電池要求電力の特性を示す図
【図12】運転状態を示す共線図
【符号の説明】
1 遊星歯車機構
2 エンジン
3 発電機
4 電動モータ
5 走行装置
17 バッテリー
31 制動手段
H 制御手段
S5 充電状態検出手段
Claims (3)
- 走行駆動用のエンジン、走行装置に連係された走行駆動用の電動モータ、及び、発電機の夫々が遊星歯車機構を介して互いに接続され、
運転を制御する制御手段が、
アクセル操作量を含む動力調整用情報に基づいて求めた目標走行駆動力の情報に基づいて、エンジン目標回転速度、及び、前記電動モータの目標出力を求めて、前記エンジンの回転速度が前記エンジン目標回転速度になるように前記エンジンの運転を制御し、前記電動モータの出力が前記目標出力になるように前記電動モータの運転を制御する走行駆動力制御を実行するように構成され、且つ、
前記エンジン目標回転速度、走行車速、並びに、前記遊星歯車機構の伝動特性に基づいて、前記発電機に対する発電機目標回転速度を求めて、前記発電機の回転速度が前記発電機目標回転速度になるように前記発電機の運転を制御する発電機制御を実行するように構成されているハイブリッド車両の走行制御装置であって、
前記発電機の回転を阻止する作用状態と回転を許容する非作用状態とに切り換え自在な制動手段が備えられ、
前記制御手段が、
前記発電機制御において、前記発電機を前記発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、発電する発電用回転方向であれば、前記発電機の回転速度が前記発電機目標速度になるように前記発電機の運転を制御し、且つ、
前記発電機を前記発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、前記発電用回転方向と反対方向であれば、前記制動手段を前記作用状態に切り換えるとともに、前記発電機の運転制御を停止するように構成されているハイブリッド車両の走行制御装置。 - 前記制御手段が、
前記走行駆動力制御において、前記エンジンを高効率運転状態で運転し且つエンジンが出力する走行駆動力では前記目標走行駆動力に対して不足する走行駆動力を前記電動モータにて出力させる形態で、前記エンジンの運転及び前記電動モータの運転を制御するように構成されている請求項1記載のハイブリッド車両の走行制御装置。 - 前記発電機により充電され前記電動モータへ駆動用電力を供給するバッテリーと、このバッテリーの充電状態を検出する充電状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記発電機制御において、前記充電状態検出手段にて検出される前記バッテリーの充電状態が設定充電状態より大であれば、前記発電機を前記発電機目標回転速度にて回転させる回転方向が、前記発電用回転方向と反対方向であっても、前記制動手段を前記非作用状態にして、前記発電機の回転速度が前記発電機目標回転速度になるように前記発電機の運転を制御するように構成されている請求項1又は2記載のハイブリッド車両の走行制御装置。
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