JP3726519B2 - 車輌の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌の制御装置に係り、更に詳細には運転者による操作量を互いに異なるパラメータに基づき検出する複数個のセンサの検出結果に応じて車輌を制御する車輌の制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車等の車輌のブレーキ制御装置であって、マスタシリンダ圧力を検出する液圧センサの如く運転者によるブレーキ操作量を検出するセンサが組み込まれたブレーキ制御装置に於いては、センサの組付け誤差、周囲環境の温度変化、センサの経時変化などに起因してセンサの所謂零点オフセットが生じるため、例えば特開平8−268243号公報に記載されている如く、運転者によるブレーキ操作が行われていないときのセンサの出力を零点補正量としてセンサの出力を補正する零点補正装置が既に知られている。
【0003】
かかる零点補正装置によれば、センサの零点オフセットが生じても、そのオフセットが零点補正により相殺されるので、運転者によるブレーキ操作量を正確に検出することができ、これにより運転者によるブレーキ操作量に応じて正確にブレーキ制御を行うことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上述の従来の零点補正装置に於いては、センサの零点オフセットが零点補正を要するほど大きい値であるか否かに拘わらず運転者によるブレーキ操作が行われていないときには毎回零点補正量が演算されるので、零点補正装置の演算負荷が大きく、また実際には零点補正が必要ではない状況に於いても零点補正量を演算しなければならないという問題がある。
【0005】
本発明は、運転者によるブレーキ操作が行われていないときには毎回センサの零点補正量を演算するよう構成された従来の零点補正装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、運転者による操作量を互いに異なるパラメータに基づき検出する複数個のセンサの検出結果に応じて車輌を制御する車輌の制御装置に於いて、各センサの温度特性の大きさが異なることを利用してセンサの温度特性に起因する検出誤差が大きい状況か否かを判定し、検出誤差が大きい状況に於いてのみ温度特性が大きいセンサの出力補正を行うことにより、運転者による操作量を正確に検出すると共にセンサの出力補正を行うために必要な制御装置の演算負荷を低減することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち運転者による操作量を互いに異なるパラメータに基づき検出する複数個のセンサを有し、前記複数個のセンサにより検出された操作量に応じて車輌を制御する車輌の制御装置にして、前記複数個のセンサは温度特性に起因する出力変化の小さい第一のセンサと温度特性に起因する出力変化の大きい第二のセンサとを含み、前記第一のセンサの出力と前記第二のセンサの出力との間の偏差の大きさが基準値よりも大きいときには前記偏差の大きさが所定値以下になるよう前記第二のセンサの出力を補正する第二のセンサ用補正手段を有することを特徴とする車輌の制御装置によって達成される。
【0007】
上記請求項1の構成によれば、複数個のセンサは温度特性に起因する出力変化の小さい第一のセンサと温度特性に起因する出力変化の大きい第二のセンサとを含み、第一のセンサの出力と第二のセンサの出力との間の偏差の大きさが基準値よりも大きいときには該偏差の大きさが所定値以下になるよう第二のセンサの出力が補正されるので、第二のセンサの温度特性に起因する検出誤差が低減され、従って温度状況に拘わらず運転者による操作量が正確に検出され、これにより車輌が運転者の実際の操作量に応じて正確に制御される。
【0008】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記操作量はブレーキ操作量であり、前記制御装置は制動力を制御する装置であるよう構成される(請求項2の構成)。
【0009】
請求項2の構成によれば、温度状況に拘わらず運転者によるブレーキ操作量が正確に検出され、これにより制動力が運転者の実際のブレーキ操作量に応じて正確に制御される。
【0010】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記第一のセンサは運転者により操作されるブレーキ操作手段のストロークを検出するストロークセンサであるよう構成される(請求項3の構成)。
【0011】
請求項3の構成によれば、第一のセンサは運転者により操作されるブレーキ操作手段のストロークを検出するストロークセンサであるので、第一のセンサの温度特性に起因する出力変化を確実に小さくすることができる。
【0012】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記第二のセンサはブレーキ操作手段が運転者によって操作されることにより増減されるマスタシリンダ液圧を検出する圧力センサであるよう構成される(請求項4の構成)。
【0013】
請求項4の構成によれば、第二のセンサはブレーキ操作手段が運転者によって操作されることにより増減されるマスタシリンダ液圧を検出する圧力センサであるので、第二のセンサとしての圧力センサの温度特性に起因する検出誤差を確実に低減することができる。
【0014】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記第一のセンサの出力が特定の値であるべき状況に於いて前記第一のセンサの出力が前記特定の値でないときには前記第一のセンサの出力を前記特定の値に補正する第一のセンサ用補正手段を有するよう構成される(請求項5の構成)。
【0015】
請求項5の構成によれば、第一のセンサの出力が特定の値であるべき状況に於いて第一のセンサの出力が特定の値でないときには第一のセンサの出力が特定の値に補正されるので、第一のセンサの出力と第二のセンサの出力との間の偏差が正確に第二のセンサの温度特性に起因する検出誤差を反映するようになり、これにより第二のセンサの温度特性に起因する検出誤差が大きいか否かを正確に判定することが可能になる。
【0016】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、前記所定値は0であるよう構成される(好ましい態様1)。
【0017】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、第二のセンサ用補正手段は第一のセンサの出力と第二のセンサの出力との間の偏差の大きさが基準値よりも大きいときには該偏差の大きさを実質的に0にするための第二のセンサの出力に対する補正量を演算し、第二のセンサの出力を該補正量にて補正するよう構成される(好ましい態様2)。
【0018】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様2の構成に於いて、偏差の大きさを実質的に0にするための第二のセンサに対する補正量は運転者による実際の操作量が実質的に0であるときに於ける第二のセンサの出力であるよう構成される(好ましい態様3)。
【0019】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2の構成に於いて、第一のセンサは運転者により操作されるブレーキ操作手段のストロークを検出するストロークセンサであり、第二のセンサはブレーキ操作手段が運転者によって操作されることにより増減されるマスタシリンダ液圧を検出する圧力センサであり、制御装置はストロークセンサにより検出されたストロークに基づくブレーキ操作量と圧力センサにより検出されたマスタシリンダ液圧に基づくブレーキ操作量とを演算し、これらのブレーキ操作量に基づき最終ブレーキ装置操作量を演算し、最終ブレーキ操作量に基づき制動力を制御するよう構成される(好ましい態様4)。
【0020】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4の構成に於いて、第二のセンサ用補正手段はストロークに基づくブレーキ操作量とマスタシリンダ液圧に基づくブレーキ操作量との間の偏差の大きさが基準値よりも大きいときには、運転者によるブレーキ操作手段の操作が行われていないときに圧力センサにより検出されたマスタシリンダ液圧に基づくブレーキ操作量を補正量として設定し、圧力センサにより検出されるマスタシリンダ液圧に基づくブレーキ操作量を補正量にて補正するよう構成される(好ましい態様5)。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5の構成に於いて、前記特定の値は実質的に0であるよう構成される(好ましい態様6)。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様6の構成に於いて、操作量はブレーキ操作量であり、制御装置は制動力を制御する装置であり、第一のセンサは運転者により操作されるブレーキ操作手段のストロークを検出するストロークセンサであり、第二のセンサはブレーキ操作手段が運転者によって操作されることにより増減されるマスタシリンダ液圧を検出する圧力センサであり、制御装置はストロークセンサにより検出されたストロークに基づくブレーキ操作量と圧力センサにより検出されたマスタシリンダ液圧に基づくブレーキ操作量とを演算し、これらのブレーキ操作量に基づき最終ブレーキ装置操作量を演算し、最終ブレーキ操作量に基づき制動力を制御するよう構成される(好ましい態様7)。
【0023】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様7の構成に於いて、第一のセンサ用補正手段は運転者によるブレーキ操作手段の操作が行われていない状況に於いてストロークセンサにより検出されたストロークに基づくブレーキ操作量が0でないときには、当該ストロークに基づくブレーキ操作量を補正量として設定し、ストロークセンサにより検出されるストロークに基づくブレーキ操作量を補正量にて補正するよう構成される(好ましい態様8)。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明が適用された車輌のブレーキ制御装置の一つの実施形態の油圧回路及び電子制御装置を示す概略構成図である。
【0026】
図1に於て、10は油圧式のブレーキ装置を示しており、ブレーキ装置10は運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応答してブレーキオイルを圧送するマスタシリンダ14を有している。ブレーキペダル12とマスタシリンダ14との間にはドライストロークシミュレータ12aが設けられている。マスタシリンダ14には左前輪用のブレーキ油圧制御導管16及び右前輪用のブレーキ油圧制御導管18の一端が接続され、これらのブレーキ油圧制御導管の他端にはそれぞれ左前輪及び右前輪の制動力を制御するホイールシリンダ20FL及び20FRが接続されている。またブレーキ油圧制御導管16及び18の途中にはそれぞれ常開型の電磁開閉弁22FL及び22FRが設けられている。
【0027】
マスタシリンダ14にはウェットストロークシミュレータ24及びリザーバ26が接続されており、リザーバ26には油圧供給導管28及び油圧排出導管30の一端が接続されている。油圧供給導管28の途中には電動機32により駆動されるオイルポンプ34が設けられている。尚図1には示されていないが、オイルポンプ34の吸入側及び吐出側の油圧供給導管28の間には、吐出側の導管内の圧力が所定値以上になると吐出側より吸入側へ高圧のオイルの一部を解放するリリーフ弁を含むリリーフ導管が接続されている。
【0028】
油圧供給導管28の他端は左前輪用の油圧供給導管36FL及びブレーキ油圧制御導管16の一部を介して左前輪のホイールシリンダ20FLに接続され、右前輪用の油圧供給導管36FR及びブレーキ油圧制御導管18の一部を介して右前輪のホイールシリンダ20FRに接続され、左後輪用の油圧供給導管36RLを介して左後輪のホイールシリンダ20RLに接続され、左後輪用の油圧供給導管36RLの一部及び右後輪用の油圧供給導管36RRを介して右後輪のホイールシリンダ20RRに接続されている。
【0029】
同様に油圧排出導管30の他端は左前輪用の油圧排出導管38FL、左前輪用の油圧供給導管36FLの一部及びブレーキ油圧制御導管16の一部を介して左前輪のホイールシリンダ20FLに接続され、右前輪用の油圧排出導管38FR、右前輪用の油圧供給導管36FR及びブレーキ油圧制御導管18の一部を介して右前輪のホイールシリンダ20FRに接続され、左前輪用の油圧排出導管38FLの一部、左後輪用の油圧排出導管38RL及び左後輪用の油圧供給導管36RLの一部を介して左後輪のホイールシリンダ20RLに接続され、左後輪用の油圧排出導管38RLの一部及び右後輪用の油圧排出導管38RR及び右後輪用の油圧供給導管36RRの一部を介して右後輪のホイールシリンダ20RRに接続されている。
【0030】
油圧供給導管36FL、36RL、36RL、36RRの途中にはそれぞれ常閉型の電磁流量制御弁40FL、40FR、40RL、40RRが設けられており、油圧排出導管38FL、38RL、38RL、38RRの途中にはそれぞれ常閉型の電磁流量制御弁42FL、42FR、42RL、42RRが設けられている。ブレーキ油圧制御導管16及び18にはそれぞれ対応する制御導管内の圧力をホイールシリンダ20FL及び20FR内の圧力Pfl、Pfrとして検出する圧力センサ44FL及び44FRが設けられており、油圧供給導管36RL及び36RRにはそれぞれ対応する導管内の圧力をホイールシリンダ20RL及び20RR内の圧力Prl、Prrとして検出する圧力センサ44RL及び44RRが設けられている。
【0031】
更にブレーキペダル12にはその踏み込みストロークSp を検出するストロークセンサ46が設けられ、マスタシリンダ14と右前輪用の電磁開閉弁22FRとの間のブレーキ油圧制御導管18には該制御導管内の圧力をマスタシリンダ圧力Pm として検出する圧力センサ48が設けられている。またオイルポンプ34の吐出側の油圧供給導管28には該制御導管内の圧力をポンプ供給圧力Pp として検出する圧力センサ50が設けられている。
【0032】
電磁開閉弁22FL、22FR、電動機32及び電磁流量制御弁42FL、42FR、42RL、42RRは後に詳細に説明する如く電子制御装置52により制御される。電子制御装置52はマイクロコンピュータ54と駆動回路56とよりなっており、マイクロコンピュータ54は図1には詳細に示されていないが例えば中央処理ユニット(CPU)と、リードオンリメモリ(ROM)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)と、入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のものであってよい。
【0033】
マイクロコンピュータ54の入出力ポート装置には、圧力センサ44FL〜44RRよりそれぞれホイールシリンダ20FL〜20RR内の圧力Pi (i=fl、fr、rl、rr)を示す信号、ストロークセンサ46よりブレーキペダル12の踏み込みストロークSp を示す信号、圧力センサ48よりマスタシリンダ圧力Pm を示す信号、圧力センサ50よりポンプ供給圧力Pp を示す信号が入力されるようになっている。
【0034】
またマイクロコンピュータ54のROMは後述のブレーキ制御フローを記憶しており、CPUは後述の如く上述の各センサにより検出されたブレーキペダル12の踏み込みストロークSp 及びマスタシリンダ圧力Pm に基づきそれぞれブレーキ操作量Bs 及びBp を演算し、ブレーキ操作量Bs 及びBp をそれぞれ零点補正量Bso及びBpoにて補正し、補正後のブレーキ操作量Bsa及びBpaに基づき運転者の最終ブレーキ操作量を演算し、最終ブレーキ操作量に基づき各輪の目標ホイールシリンダ圧力を演算し、各輪のホイールシリンダ圧力が目標ホイールシリンダ圧力になるよう制御する。
【0035】
またマイクロコンピュータ54のROMは後述の零点補正量演算フローを記憶しており、CPUは後述の如く上述の各センサにより検出されたブレーキペダル12の踏み込みストロークSp 及びマスタシリンダ圧力Pm に基づきそれぞれブレーキ操作量Bs 及びBp を演算し、ブレーキ操作量Bs 及びBp に基づき必要に応じてそれぞれブレーキ操作量Bs 及びBp に対する零点補正量Bso及びBpoを演算する。
【0036】
次に図2及び図3に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於けるブレーキ制御及び零点補正量の演算について説明する。尚図2及び図3に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチがオンに切り換えられることにより開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。またイグニッションスイッチがオンに切り換えられると、ステップ10に先立ち電磁開閉弁22FL、22FRが閉弁されることによりマスタシリンダ14とホイールシリンダ20FL、20FRとの連通が遮断される。
【0037】
まずステップ10に於いてはストロークセンサ46により検出されたブレーキペダル12の踏み込みストロークSp を示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては図4に示されたグラフに対応するマップより踏み込みストロークSp に基づくブレーキ操作量Bs が演算され、ステップ30に於いては下記の数1に従ってブレーキ操作量Bs が零点補正量Bsoにて補正され、これにより補正後の踏み込みストロークに基づくブレーキ操作量Bsaが演算される。尚零点補正量Bsoは後述の如く図3に示された補正量演算ルーチンに従って演算される。
【0038】
Bsa=Bs −Bso ……(1)
【0039】
ステップ40に於いては図5に示されたグラフに対応するマップよりマスタシリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bp が演算され、ステップ50に於いては下記の数2に従ってブレーキ操作量Bp が零点補正量Bpoにて補正され、これにより補正後のマスタシリンダ圧力に基づくブレーキ操作量Bpaが演算される。尚零点補正量Bpoも後述の如く図3に示された補正量演算ルーチンに従って演算される。
【0040】
Bpa=Bs −Bpo ……(2)
【0041】
尚図4及び図5に示されたグラフに対応するマップは、運転者の制動要求の程度を示すブレーキペダル12に対する踏力の変化に対し踏み込みストローク及びマスタシリンダ圧力がそれぞれ図7及び図8に示されている如く変化することに対応している。
【0042】
ステップ60に於いては前回演算された最終ブレーキ操作量Bに基づき図6に示されたグラフに対応するマップより補正後のマスタシリンダ圧力に基づくブレーキ操作量Bpaに対する重みα(0≦α≦1)が演算され、ステップ70に於いては下記の式3に従って補正後のブレーキ操作量Bsa及び補正後のブレーキ操作量Bpaの重み付け和として最終ブレーキ操作量Bが演算される。
【0043】
B=αBpa+(1−α)Bsa ……(3)
【0044】
ステップ80に於いては最終ブレーキ操作量Bに対する各輪の目標ホイールシリンダ圧力の係数(正の定数)をKi (i=fl、fr、rl、rr)として、下記の式4に従って各輪の目標ホイールシリンダ圧力Pwti (i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
【0045】
Pwti =Ki B ……(4)
【0046】
ステップ90に於いては各輪のホイールシリンダ圧力Pi が目標ホイールシリンダ圧力Pwti になるようフィードバック制御される。この場合、運転者によりブレーキペダル12が踏み込まれておらず、最終ブレーキ操作量Bが0であるときには、オイルポンプ34は駆動されず、電磁開閉弁22FL、22FRは閉弁状態に維持され、電磁流量制御弁42FL、42FR、42RL、42RRも図1の位置に維持され、従って各輪に制動力は与えられない。
【0047】
これに対し運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれることにより踏み込みストロークSp が基準値Spo以上であるときには、各輪のホイールシリンダ20FL〜20RR内の圧力Pfl〜Prrが目標ホイールシリンダ圧力Ptfl 〜Ptrr になるよう、必要に応じて電動機32によりオイルポンプ34が駆動されると共に、電磁流量制御弁42FL、42FR、42RL、42RRがフィードバック制御され、これにより各輪の制動力が運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応じて制御される。
【0048】
また図3に示された補正量演算ルーチンのステップ110に於いては、ストロークセンサ46により検出されたブレーキペダル12の踏み込みストロークSp を示す信号等の読み込みが行われ、ステップ120に於いては制動中であるか否かの判別、即ち運転者により制動操作が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ130に於いて踏み込みストロークSp に基づくブレーキ操作量Bs に対する零点補正量Bsoが0に設定され、否定判別が行われたときにはステップ140へ進む。
【0049】
尚制動中であるか否かの判別は、踏み込みストロークSp がその制動判定基準値Spc以上であり且つマスタシリンダ圧力Pm がその制動判定基準値Pmo以上であるときに制動中であると判定し、若しくは踏み込みストロークSp がその制動判定基準値Spc以上であり且つ図には示されていないストップランプスイッチがオン状態にあるときに制動中であると判定することにより行なわれてよい。
【0050】
ステップ140に於いては図4に示されたグラフに対応するマップより踏み込みストロークSp に基づくブレーキ操作量Bs が演算され、ステップ150に於いてはステップ140に於いて演算されたブレーキ操作量Bs が零点補正量Bsoに設定され、ステップ160に於いてはフラグFp が0にリセットされる。
【0051】
ステップ170に於いてはストロークセンサ46により検出されたブレーキペダル12の踏み込みストロークSp を示す信号等の読み込みが行われ、ステップ180に於いてはフラグFp が0であるか否かの判別、即ちマスタシリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bpに対する零点補正量Bpoの演算がまだ行われていないか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ230へ進み、否定判別が行われたときにはステップ190へ進む。
【0052】
ステップ190に於いてはステップ120の場合と同様制動中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ170へ戻り、否定判別が行われたときにはステップ200へ進む。
【0053】
ステップ200に於いては図5に示されたグラフに対応するマップよりマスタシリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bp が演算され、ステップ210に於いては下記の数5に従ってブレーキ操作量Bp とブレーキ操作量Bs との間の偏差Epsが演算される。
【0054】
Eps=Bp −Bs ……(5)
【0055】
ステップ220に於いてはブレーキ操作量の偏差Epsの絶対値が基準値Eo (正の定数)を越えているか否かの判別、即ちブレーキ操作量Bp に対する零点補正量の演算が必要であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ170へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ230に於いてブレーキ操作量Bp に対する零点補正量Bpoがステップ200に於いて演算されたブレーキ操作量Bp に設定され、ステップ240に於いてフラグFp が1にセットされる。
【0056】
かくして図示の実施形態によれば、ステップ20に於いてブレーキペダル12の踏み込みストロークSp に基づくブレーキ操作量Bs が演算され、ステップ30に於いてブレーキ操作量Bs が零点補正量Bsoにて補正され、これにより補正後の踏み込みストロークに基づくブレーキ操作量Bsaが演算され、ステップ40に於いてマスタシリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bp が演算され、ステップ50に於いてブレーキ操作量Bp が零点補正量Bpoにて補正され、これにより補正後のマスタシリンダ圧力に基づくブレーキ操作量Bpaが演算される。
【0057】
そしてステップ60に於いて前回演算された最終ブレーキ操作量Bに基づき補正後のマスタシリンダ圧力に基づくブレーキ操作量Bpaに対する重みαが演算され、ステップ70に於いて補正後のブレーキ操作量Bsa及び補正後のブレーキ操作量Bpaの重み付け和として最終ブレーキ操作量Bが演算され、ステップ80に於いて各輪の目標ホイールシリンダ圧力Ptiが最終ブレーキ操作量Bに比例する値として演算され、ステップ90に於いて各輪のホイールシリンダ圧力Pi が目標ホイールシリンダ圧力Ptiになるようフィードバック制御される。
【0058】
また図示の実施形態によれば、ステップ120及び140に於いて非制動中の踏み込みストロークSp に基づくブレーキ操作量Bs が演算され、ステップ150に於いてブレーキ操作量Bs が零点補正量Bsoに設定され、ステップ180に於いてマスリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bpに対する零点補正量Bpoの演算がまだ行われていない旨の判別が行われたときにはステップ230に於いてブレーキ操作量Bp に対する零点補正量Bpoがステップ200に於いて演算されたブレーキ操作量Bp に設定される。
【0059】
またマスリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bpに対する零点補正量Bpoの演算が既に行われた場合であって、ステップ190に於いて制動中ではない旨の判別が行われたときにはステップ200に於いてマスタシリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bp が演算され、ステップ210に於いてブレーキ操作量Bp とブレーキ操作量Bs との間の偏差Epsが演算される。更にステップ220に於いて偏差Epsの大きさが大きくブレーキ操作量Bp に対する零点補正量の演算が必要である旨の判別が行われたときには、ステップ230に於いてブレーキ操作量Bp に対する零点補正量Bpoがステップ200に於いて演算されたブレーキ操作量Bp に設定される。
【0060】
従って図示の実施形態によれば、まず図には示されていないイグッションスイッチが閉成され運転者によりブレーキペダル12が踏み込まれていない状態での車輌の走行開始前にステップ140及び150に於いてブレーキ操作量Bs に対する零点補正量Bsoが設定され、これにより踏み込みストロークSp に基づくブレーキ操作量Bs の検出誤差が消去される。
【0061】
また車輌の走行開始前にステップ180に於いて肯定判別が行われることにより、ステップ230に於いてブレーキ操作量Bp に対する零点補正量Bpoが設定され、これによりマスリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bpの検出誤差が消去される。
【0062】
更に車輌の走行の継続中に圧力センサ48の周囲温度の変化が生じ、これにより圧力センサ48の温度特性に起因する検出誤差が大きくなると、車輌の非制動中にステップ190に於いて否定判別が行われ、ステップ200及び210が実行され、ステップ220に於いて肯定判別が行われ、ステップ230に於いてブレーキ操作量Bp に対する零点補正量Bpoが設定され、これによりマスリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bpの検出誤差が消去される。
【0063】
従って図示の実施形態によれば、圧力センサ48の周囲温度の変化が生じ圧力センサ48の温度特性に起因する検出誤差が大きくなると、確実にブレーキ操作量Bp がその零点補正量Bpoにて補正されるので、運転者の制動要求に応じて正確に最終ブレーキ操作量Bを演算し、これにより各輪の制動力を運転者の制動要求に応じて正確に制御することができる。
【0064】
例えば周囲温度が10℃の状況に於いて車輌が走行を開始し、これにより図9に示されている如く10℃の温度に於いて走行開始時のブレーキ操作量Bs 及びBp の零点補正が行われ、その後周囲温度の上昇により圧力センサ48の温度が30℃に上昇したとすると、ブレーキ操作量Bp とBs との偏差Epsの大きさは非常に大きくなる。
【0065】
かかる状況が発生すると、ステップ230に於いてブレーキ操作量Bp に対する零点補正量Bpoが更新され、ステップ50に於いてブレーキ操作量Bp が零点補正量Bpoにて補正されるので、図10に示されている如くブレーキ操作量Bp の零点オフセットが0になり、これによりブレーキ操作量Bp が運転者の実際の制動要求に応じて正確に演算される。
【0066】
また図示の実施形態によれば、圧力センサ48の周囲温度の変化が生じても圧力センサ48の温度特性に起因する検出誤差が小さい状況に於いては、ステップ220に於いて否定判別が行なわれ、ステップ230に於けるブレーキ操作量Bp に対する零点補正量Bpoの演算及び更新は行われないので、電子制御装置52の演算負荷を低減することができる。
【0067】
特に図示の実施形態によれば、補正後のマスタシリンダ圧力に基づくブレーキ操作量Bpaに対する重みαは運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作量が小さい領域に於いては小さく、踏み込み操作量の増大につれて漸次大きくなるよう可変設定されるので、最終ブレーキ操作量Bがマスタシリンダ圧力Pm 又はブレーキペダル12の踏み込みストロークSp のみに基づき演算される場合や、重みαが一定である場合に比して、各輪のホイールシリンダ圧力Pi を運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応じて精度よく制御することができ、これにより各輪の制動力を運転者の制動要求に応じて高精度に制御することができる。
【0068】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0069】
例えば上述の実施形態に於いては、制御装置はブレーキ制御装置であり、第一のセンサはストロークセンサ46であり、第二のセンサは圧力センサ48であるが、本発明の制御装置は運転者による操作量を互いに異なるパラメータに基づき検出する複数個のセンサを有し、複数個のセンサにより検出された操作量に応じて車輌を制御する車輌の制御装置であって、複数個のセンサが温度特性に起因する出力変化の小さい第一のセンサと温度特性に起因する出力変化の大きい第二のセンサとを含むものである限り任意の制御装置であってよい。
【0070】
また上述の実施形態に於いては、ブレーキ操作量Bs 及びBp に対する補正量は零点補正量、即ち対応するブレーキ操作量が0であるときの補正量として演算されるようになっているが、ブレーキ操作量Bs 及びBp に対する補正量は対応するブレーキ操作量が予め設定された所定の値であるときの補正量として演算されてもよい。
【0071】
また上述の実施形態に於いては、前回演算された最終ブレーキ操作量Bに基づき補正後のマスタシリンダ圧力に基づくブレーキ操作量Bpaに対する重みαが演算され、補正後のブレーキ操作量Bsa及び補正後のブレーキ操作量Bpaの重み付け和として最終ブレーキ操作量Bが演算され、各輪の目標ホイールシリンダ圧力Ptiが最終ブレーキ操作量Bに比例する値として演算されるようになっているが、本発明の制御装置がブレーキ制御装置に適用される場合には、各輪の目標ホイールシリンダ圧力Ptiが補正後のブレーキ操作量Bsa及び補正後のブレーキ操作量Bpaに基づき演算される限り任意の態様にて演算されてよい。
【0072】
また上述の実施形態に於いては、踏み込みストロークSp に基づくブレーキ操作量Bs が演算され、マスタシリンダ圧力Pm に基づくブレーキ操作量Bp が演算され、これらの偏差Epsの絶対値が基準値Eo を越えているか否かにより圧力センサ48の温度特性に起因するブレーキ操作量Bp の検出誤差が大きいか否かの判別が行なわれるようになっているが、必要ならば偏差は検出された踏み込みストロークSp とマスタシリンダ圧力Pm との偏差に設定されてもよく、その場合には零点補正量Bmo、Bpoに代えてそれぞれマスタシリンダ圧力Pm に対する零点補正量Pmo及び踏み込みストロークSpに対する零点補正量Spoが演算され、またこれらにて補正されたマスタシリンダ圧力及び踏み込みストロークに基づき各輪の目標ホイールシリンダ圧力Ptiが演算される。
【0073】
更に上述の実施形態に於いては、マスタシリンダ14にブースタが設けられていないが、ブレーキ装置10はマスタシリンダにブースタが設けられたものであってもよく、またブレーキ油圧はオイルポンプ34が必要に応じて電動機32によって駆動されることにより供給されるようになっているが、図1に於いて仮想線により示されている如く、ブレーキ装置10にアキュムレータが設けられてもよい。
【0074】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、本発明の請求項1の構成によれば、第二のセンサの温度特性に起因する検出誤差を低減し、これにより温度状況に拘わらず運転者による操作量を正確に検出し、従って車輌を運転者の実際の操作量に応じて正確に制御することができ、また第一のセンサの出力と第二のセンサの出力との間の偏差の大きさが基準値以下であるときには、第二のセンサの出力の補正は行われないので、第二のセンサの出力補正に必要な制御装置の演算負荷を確実に低減することができる。
【0075】
請求項2乃至4の構成によれば、温度状況に拘わらず運転者によるブレーキ操作量を正確に検出し、これにより制動力を運転者の実際のブレーキ操作量に応じて正確に制御することができる。
【0076】
請求項5の構成によれば、第一のセンサの出力と第二のセンサの出力との間の偏差が正確に第二のセンサの温度特性に起因する検出誤差を反映するようにすることができ、これにより第二のセンサの温度特性に起因する検出誤差が大きいか否かを正確に判定することができ、従って温度状況に拘らず運転者による操作量を更に一層正確に検出し、これにより車輌を運転者の実際の操作量に応じて更に一層正確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された車輌のブレーキ制御装置の一つの実施形態の油圧回路及び電気式制御装置を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に於けるブレーキ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】実施形態に於ける零点補正量演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】ブレーキペダルの踏み込みストロークSp とブレーキ操作量Bs との間の関係を示すグラフである。
【図5】マスタシリンダ圧力Pm とブレーキ操作量Bp との間の関係を示すグラフである。
【図6】前回演算された最終ブレーキ操作量とブレーキ操作量Bp に対する重みαとの間の関係を示すグラフである。
【図7】ブレーキペダルに対する踏力とマスタシリンダ圧力Pm との関係を示すグラフである。
【図8】ブレーキペダルに対する踏力と踏み込みストロークSp との関係を示すグラフである。
【図9】10℃に於いて零点補正が行われた場合の温度とブレーキ操作量Bs 及びBp の零点オフセットとの関係を示すグラフである。
【図10】30℃に於いて再度零点補正が行われた場合の温度とブレーキ操作量Bs 及びBp の零点オフセットとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10…ブレーキ装置
12…ブレーキペダル
14…マスタシリンダ
20FL〜20RR…ホイールシリンダ
44FL〜44RR…圧力センサ
46…ストロークセンサ
48、50…圧力センサ
52…電子制御装置
Claims (5)
- 運転者による操作量を互いに異なるパラメータに基づき検出する複数個のセンサを有し、前記複数個のセンサにより検出された操作量に応じて車輌を制御する車輌の制御装置にして、前記複数個のセンサは温度特性に起因する出力変化の小さい第一のセンサと温度特性に起因する出力変化の大きい第二のセンサとを含み、前記第一のセンサの出力と前記第二のセンサの出力との間の偏差の大きさが基準値よりも大きいときには前記偏差の大きさが所定値以下になるよう前記第二のセンサの出力を補正する第二のセンサ用補正手段を有することを特徴とする車輌の制御装置。
- 前記操作量はブレーキ操作量であり、前記制御装置は制動力を制御する装置であることを特徴とする請求項1に記載の車輌の制御装置。
- 前記第一のセンサは運転者により操作されるブレーキ操作手段のストロークを検出するストロークセンサであることを特徴とする請求項2に記載の車輌の制御装置。
- 前記第二のセンサはブレーキ操作手段が運転者によって操作されることにより増減されるマスタシリンダ液圧を検出する圧力センサであることを特徴とする請求項2に記載の車輌の制御装置。
- 前記第一のセンサの出力が特定の値であるべき状況に於いて前記第一のセンサの出力が前記特定の値でないときには前記第一のセンサの出力を前記特定の値に補正する第一のセンサ用補正手段を有することを特徴とする請求項1に記載の車輌の制御装置。
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1998
- 1998-12-03 JP JP34404398A patent/JP3726519B2/ja not_active Expired - Lifetime
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