JP3726289B2 - 鉄損の低い方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は変圧器その他の電気機器の鉄心に用いて好適な、鉄損の低い方向性電磁鋼板に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主として変圧器の鉄心材料として用いられ、その磁気特性が良好であることが要求される。特に鉄心として使用した場合のエネルギー損失すなわち鉄損が低いことが重要である。
【0002】
【従来の技術】
そこで、従来から鉄損を低減させるために、結晶方位を(110)〔001〕方位により高度に揃えること、Si含有量を高めそれによって鋼板の電気抵抗を増加させること、不純物を低減させること、そして板厚を薄くすることなどが種々試みられてきた。その結果、板厚が0.23mm以下の鋼板では、鉄損W17/50(磁束密度1.7 T,50Hz)が0.9 W/kg以下のものが製造されるようになった。
しかしながら、これらの冶金学的な方法ではこれ以上の大幅な鉄損の改善は期待できない。
【0003】
そのため、近年、鉄損の大幅な低減を達成すべく人為的に磁区を細分化する方法が種々試みられるようになった。その中で現在工業化されている方法としては、特公昭57−2252号公報の方向性電磁鋼板の鉄損特性改善方法に提案開示されているような仕上げ焼鈍済みの鋼板表面にレーザーを照射する方法がある。
しかしながらこの方法は、鉄損低減に効果があるとはいうものの、歪取り焼鈍によって鉄損の劣化を来すという欠点があり、歪取り焼鈍を必須とする巻鉄心用としては用いることができない。
【0004】
一方、歪取り焼鈍が可能な技術として特公昭62−54873 号公報に記載された低鉄損一方向性電磁鋼板の製造方法には、仕上げ焼鈍済の鋼板にレーザーや機械的手段によって局所的に絶縁膜を除去したのち、被膜除去部を酸洗する方法やナイフなどにより機械的に直接地鉄までけがくなどの方法により、線状の溝を局所的に形成したのち、溝を充填するようにりん酸系の張力付与被膜処理を施す方法が、また特公昭62−53579 号公報に記載の低鉄損一方向性電磁鋼板の製造方法には、仕上げ焼鈍済の鋼板に90〜220 kg/mm2の荷重で地鉄部分に深さ5μm 超の溝を形成したのち、750 ℃以上の温度で加熱処理する方法が、それぞれ提案されている。さらに、特公平3−69968 号公報には、最終冷間圧延後、鋼板の圧延方向とほぼ直角な方向に線状刻み目を導入する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法はいずれも、鋼板に線状の溝を導入する点において共通していて、溝周辺に生ずる磁極により磁区が細分化されることにより主として鉄損が減少している。かくして、これらの方法の一つを適用することにより歪取り焼鈍が可能な低鉄損電磁鋼板の工業的生産が可能となった。
しかしながら、上記各方法はいずれも、磁極の生成が溝近傍に限られるために磁区細分化効果が十分とはいえなった。前掲特公昭62−53579 号公報に開示の方法では、歪取り焼鈍により溝下部に微細粒が生成するとされているが、局所的に強い荷重を加えているために残留歪が避けられないという問題があった。
【0006】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、従来にも増して低鉄損を示す方向性電磁鋼板を提案することを目的とする。
【0007】
この発明は、鋼板の地鉄表面に、幅:30〜300μm、深さ:10〜70μm、圧延方向の間隔:1〜30mmであり、圧延方向と直角な方向からの角度:30°以内である線状溝をそなえ、この線状溝の底面から板厚方向にもう一方の地鉄表面まで、連続する結晶粒界又は粒径1mm以下の微細結晶粒領域を有し、かつ前記鋼板に残留歪みが存在しないことを特徴とする方向性電磁鋼板である。
【0009】
以下、この発明の基礎となった研究結果について説明する。
インヒビターとしてAlN , MnSeを含む3.3 %けい素含有鋼の熱間圧延板を中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により0.23mm厚まで圧延した後、次に示す(A) 〜(E) の5種類の製造工程をそれぞれ施して各種の方向性電磁鋼板を得た。
【0010】
(A) グラビアオフセット印刷により鋼板表面にエッチングレジストを塗布後、電解エッチングを施すことにより鋼板圧延方向と直交方向に延びる線状の溝を形成したのち、840 ℃、3分間の脱炭焼鈍、次いで75%H2+25%N2雰囲気中で1200℃、20時間の最終仕上焼鈍を施した。
(B) (A)と同一工程により溝形成後、Snめっきをこの溝部に施し、以下は(A) と同一の処理を行った。
(C) (A)と同一工程により溝形成後、SnSO4 をこの溝部に塗布し、以下は(A) と同一の処理を行った。
(D) 溝形成処理を行うことなしに(A) と同一条件の脱炭焼鈍、次いで最終仕上焼鈍を施したのち、特公昭62−53579 号公報に記載された歯車型ロールで加圧することにより溝を形成し、800 ℃、3時間の歪取焼鈍を施した。
(E) 溝形成処理を行うことなしに(A) と同一条件の脱炭焼鈍、次いで最終仕上焼鈍を施して比較材とした。
【0011】
なお、(A) 〜(D) において導入した溝は、いずれも幅150 μm 、深さ20μm 、圧延方向の間隙4mmであり、圧延方向と直角な方向に線状に導入したものである。
このようにして得た鋼板の断面構造を光学顕微鏡により詳細に観察したところ、試料(A) では溝が形成されていたのみであるのに対し、試料(B) では溝底部から板厚方向へもう一方の表面まで続く結晶粒界が観察され、試料(C) では溝底部から板厚方向へもう一方の表面まで続く平均結晶粒径0.5mm の微細結晶粒領域が観察された。また、試料(D) では溝底部近傍に粒径30〜50μm の極微細結晶粒と共に、歯車型ロール加圧による残留歪とみられる歪パターンが観察された。
【0012】
次に、これらの試料からエプスタイン試験片を採取し、歪取焼鈍後の磁気特性を測定した。測定結果を表1に示す。ここでW17/50は磁束密度1.7 T、周波数50Hzにおける鉄損測定値であり、B8 は磁化力800A/mにおける磁束密度を示す。
【0013】
【表1】
【0014】
表1から分るとおり、地鉄表面に溝のみを形成した試料(A) 、あるいは溝と微細粒(30 〜50μm)と残留歪とが形成している試料(D) でも十分に低鉄損が得られているが、溝下部に板厚方向にわたる結晶粒界が形成された試料(B) 及び溝下部に板厚方向にわたる微細粒(〜0.5mm )領域が形成された試料(C) では、より低鉄損となった。
以上のように、地鉄表面に圧延方向と直角な方向に延びる線状の溝を有し、かつこの線状溝の底面から板厚方向にもう一方の地鉄表面まで、連続する結晶粒界又は粒径1mm以下の微細結晶粒領域を有し、しかも残留歪が存在しない方向性電磁鋼板では、従来にも増して低鉄損となることが明らかとなった。
【0015】
【作用】
まずこの発明において、地鉄表面に形成された溝の下部にて板厚方向にわたって形成されるべき結晶粒界又は微細結晶粒領域の形態について述べる。図1(a) 〜(d) に示したような種々の断面構造を有する板厚0.23mmの方向性電磁鋼板を調製した。図1(a) は、地鉄表面に溝のみを形成した例であり、同図(b) は、地鉄表面に形成した溝の底部から板厚方向にもう一方の地鉄表面まで連続する結晶粒界を有する例である。また、同図(c) は、地鉄表面に形成した溝の下部近傍に微細結晶粒領域を有する例であるが、この微細結晶粒領域は、板厚方向にわたってはいない。さらに同図(d) は、線状溝の底面から板厚方向にもう一方の地鉄表面まで、連続する微細結晶粒領域を有する例である。
これらの方向性電磁鋼板の磁気特性について調べた結果を図2に示す。
【0016】
図2より、溝底部に、板厚にわたって続く結晶粒界(図1(b))又は微細結晶粒領域(図1(d))が生成している鋼板では、溝のみの鋼板(図1(a))より低鉄損を示すことがわかる。また、溝下部近傍にて、板厚にわたることのない微細結晶粒領域が生成している場合(図1(c))では、鉄損値は溝のみの鋼板(図1(a))と大差ない。このように、線状溝の底面から板厚方向にもう一方の地鉄表面まで、連続する結晶粒界又は微細結晶粒領域を有する鋼板の鉄損は、溝のみの鋼板に比べて顕著に低鉄損となるのである。
【0017】
次に、線状溝の底面から板厚方向にもう一方の地鉄表面まで、連続する微細結晶粒領域を有する鋼板について、この微細結晶粒の粒径と磁気特性との関係を調べた結果を図3に示す。図3から、粒径が1mm以下であれば、溝のみを形成した場合に比べて低鉄損となることがわかる。粒径が1mmを超えると、むしろ鉄損が悪くなる場合がある。したがって、溝下部に生成する微細結晶粒の粒径は、1mm以下とすることが必要である。
【0018】
なお図1〜3で示した実験に際して、地鉄表面に導入した溝の形状は、幅200 μm 、深さ18μm 、圧延方向の間隔4mmで、圧延方向と直角な方向に線状に導入したものである。
また、先に述べたとおり、溝近傍に残留歪が存在する場合は、ヒステリシス損が増加するために、たとえ溝下部に結晶粒界又は微細結晶粒が生成していても良好な鉄損が得られない。したがって、溝近傍には残留歪が存在しないことが必要である。
【0019】
次に、地鉄表面に形成された線状溝の好適条件について説明する。図4、5に板厚0.23mmの鋼板に形成された線状溝の幅、深さと鉄損W17/50との関係についてそれぞれ示す。図4から、溝幅30μm 以上、溝深さ10μm 以上、70μm 以下の場合において、0.80W/kg以下の低鉄損が安定して得られることがわかる。なお、溝幅に関しては、300 μm を超える場合にも低鉄損は得られるが、磁束密度が大きく低下する。そのため、溝幅の適正範囲は30〜300 μm とする。
【0020】
図6に、溝幅200 μm 、溝深さ20μm と一定にし、溝がのびる方向を鋼板の圧延方向と直交する方向から傾斜させた場合の、この偏倚角度と鉄損特性との関係を、また、図7には、溝幅200 μm 、溝深さ20μm と一定にし、圧延方向における溝間隔を種々に変化させた場合の、この溝間隔と鉄損特性との関係をそれぞれ示す。これらの図より、0.80W/kg以下の低鉄損を得るためには、圧延方向の溝間隔は1mm以上30mm以下、溝がのびる角度は、圧延方向と直角な方向から30°以内の角度にすることが必要であることがわかる。
以上のことから、この発明の方向性電磁鋼板は、上記に示した条件を全て満たさなければならない。
【0021】
さらに、この発明の方向性電磁鋼板の成分組成範囲は、従来公知の成分組成のものいずれもが適合するが、代表組成を掲げると次のとおりである。
C:0.01〜0.10wt%(以下単に%と示す)
Cは、熱間圧延、冷間圧延中の組織の均一微細化のみらなず、ゴス方位の発達に有用な元素であり、少なくとも0.01%以上の添加が好ましい。しかしながら0.10%を超えて含有されるとかえってゴス方位に乱れが生じるので上限は0.10%程度が好ましい。
【0022】
Si:2.0 〜4.5 %
Siは、鋼板の比抵抗を高め鉄損の低減に有効に寄与するが、4.5 %を上回ると冷延性が損なわれ、一方2.0 %に満たないと比抵抗が低下するだけでなく、2次再結晶・純化のために行われる最終高温焼鈍中にα−γ変態によって結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損改善効果が得られないので、Si量は2.0 〜4.5 %程度とするのが好ましい。
【0023】
Mn:0.02〜0.12%
Mnは、熱間脆化を防止するため少なくとも0.02%程度を必要とするが、あまりに多すぎると磁気特性を劣化させるので上限は0.12%程度に定めるのが好ましい。
【0024】
インヒビターとしては、いわゆるMnS,MnSe系とAlN 系とがある。 MnS, MnSe系の場合は、
Se, Sのうちから選ばれる少なくとも1種:0.005 〜0.06%
Se, Sはいずれも、方向性けい素鋼板の2次再結晶を制御するインヒビターとして有力な元素である。抑制力確保の観点からは、少なくとも0.005 %程度を必要とするが、0.06%を超えるとその効果が損なわれるので、その下限、上限はそれぞれ0.01%, 0.06%程度とするのが好ましい。
【0025】
AlN 系の場合は、
Al:0.005 〜0.10%,N:0.004 〜0.015 %
AlおよびNの範囲についても、上述したMnS, MnSe系の場合と同様な理由により、上記の範囲に定めた。ここに上記した MnS, MnSe系および AlN系はそれぞれ併用が可能である。
【0026】
インヒビター成分としては上記したS, Se, Alの他、Cu, Sn, Cr、Ge, Sb, Mo, Te, BiおよびPなども有利に適合するので、それぞれ少量併せて含有させることもできる。ここに上記成分の好適添加範囲はそれぞれ、Cu, Sn, Cr:0.01〜0.15%、Ge, Sb, Mo, Te, Bi:0.005 〜0.1 %、P:0.01〜0.2 %であり、これらの各インヒビター成分についても、単独使用および複合使用いずれもが可能である。
【0027】
また、この発明の方向性電磁鋼板は次に述べるような工程で製造される。すなわち、方向性電磁鋼板用スラブを熱間圧延し、その後必要に応じて熱延板焼鈍を行ったのち、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終製品板厚とし、その後脱炭焼鈍、次いで最終仕上げ焼鈍を施したのち、通常上塗りコーティングを施して製品とする。
【0028】
かような製造工程において、この発明の電磁鋼板の地鉄表面に形成すべき溝導入の時期に関しては、最終仕上焼鈍の前、後のいずれでも構わない。また、溝を形成する方法については、局所的にエッチング処理する方法、刃物でけがく方法、突起付きロールで圧延する方法等が挙げられる。但し、特公昭62−53579 号公報に開示されたように仕上焼鈍後、鋼板に歯車型ロールで圧延し、その後、高温で焼鈍する方法は、溝形成と微細結晶粒の生成共にもたらされるが、ロールにより強い歪が導入されるため、高温焼鈍後も残留歪が存在する。したがって、かかる歯車型ロールによる溝形成によっては、この発明で所期した特性を満足する鋼板は得られない。溝を導入するための最も望ましい方法は、最終冷間圧延後、印刷等により鋼板表面にエッチングレジストを付着させたのち、電解エッチング等の処理を行って溝を形成する方法である。
【0029】
また、この発明に従う溝底部の粒界又は微細粒を得る方法としては、形成した溝部にSn, Sb, B, Bi, S, Pb, As, Se, Te等の金属又は、その酸化物、硫化物等を付着させたのち、通常の脱炭焼鈍、仕上焼鈍を行う方法や、仕上焼鈍前に溝部に機械的に歪を加える方法、溝部にレーザー光やプラズマ炎を放射して局所的に高温熱処理する方法などがある。要するにこの発明は、上掲した各種の製造方法にとらわれず、圧延方向と直角な方向からの角度: 30 °以内で延びる線状溝を地鉄表面にそなえ、この線状溝の底面から板厚方向にもう一方の地鉄表面まで、連続する結晶粒界又は粒径1mm以下の微細結晶粒領域を有する方向性電磁鋼板でありさえすれば全てこの発明の範囲内である。
【0030】
【実施例】
実施例1
C:0.075 %、Si:3.2 %、Mn:0.072 %、Al:0.024 %、N:0.008 %、Se:0.019 %、Sb:0.023 %を含有するけい素鋼の熱間圧延板を、1100℃、2分の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により0.23mm厚まで圧延した後、次に示す(F) 〜(H) の3種類の製造工程をそれぞれ施して各種の方向性電磁鋼板を得た。
(F) グラビアオフセット印刷によるエッチングレジスト塗布後、電解エッチングにより線状の溝を形成し、その後はアルカリ液中に浸漬してエッチングレジストを除去。
(G) (F)と同一処理により溝形成したのち、溝部にSnO2粉末を充填
(H) そのまま
なお、(F), (G)で導入した溝は、幅170 μm 、深さ22μm であり、圧延方向と直角な方向に3mm間隔で導入したものである。
これらの鋼板に、840 ℃、3分の脱炭焼鈍、次いで1200℃、20h の最終仕上焼鈍を施し、さらに張力コーティングを施した。
【0031】
このようにして得られた製品の溝部断面を顕微鏡により観察すると(F) を行った鋼板では溝が見られたのみであるのに対し、(G) では溝底部から板厚にわたって続く粒界が見られ、歪は観察されなかった。
これらの製品からエプスタイン試験片を採取し、800 ℃3hの歪取焼鈍を行った後、磁気特性を測定した。その結果を表2に示す。表2より、溝底部に板厚にわたって続く結晶粒界が存在する実施例は、溝なし、又は溝のみが形成されている比較例に比べ、さらなる低鉄損を示している。
【0032】
【表2】
【0033】
実施例2
C:0.070 %、Si:3.2 %、Mn:0.069 %、Al:0.023 %、N:0.009 %、Se:0.020 %、Sb:0.024 %を含有するけい素鋼の熱間圧延板を、1100℃、2分の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により0.23mm厚まで圧延した後、次に示す(I) 〜(K) の3種類の製造工程をそれぞれ施して各種の方向性電磁鋼板を得た。
(I) 実施例1(F) と同様の方法により溝を形成した後、溝部にSnSO4 を充填し、しかる後に840 ℃、3分の脱炭焼鈍、次いで1200℃、20h の最終仕上焼鈍を施した。
(J) そのまま、(I) と同一条件の脱炭焼鈍、次いで最終仕上焼鈍を施こした。(K) (I) と同一条件の脱炭焼鈍、次いで最終仕上焼鈍後、歯車型ロールにより鋼板に120kg/mm2 の荷重をかけることで溝を形成した。
なお、(I), (K)で導入した溝は、幅250 μm 、深さ18μm であり圧延方向と直角な方向に4mm間隔で導入したものである。
これらの鋼板には更に上塗りコーティングを施した。
【0034】
このようにして得られた製品の溝部断面を顕微鏡により観察すると(I) は溝底部から板厚方向にわたる粒径0.5 〜0.8mm の微細結晶粒領域が見られた。(K) においても溝下部領域に粒径0.05〜0.1mm の結晶粒群が観察されたが、溝部近傍には残留歪パターンが見られた。
これらの製品からエプスタイン試験片を採取し、800 ℃、3hの歪取焼鈍をした後、磁気特性を測定した。その結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
表3より、溝下部に板厚にわたる微細結晶粒領域を有し、かつ溝近傍に残留歪が存在しない実施例は、溝のない例、また、溝下部に微細結晶粒が存在するものの残留歪がある比較例に比べ、さらに低鉄損を示している。
【0037】
【発明の効果】
この発明は、表面に圧延方向と直角な方向からの角度: 30 °以内で延びる線状の溝を有するとともに、この溝の底部から板厚にわたる結晶粒界又は粒径1mm以下の微細結晶粒領域を有し、かつ線状溝近傍に残留歪が存在しない鉄損の低い方向性電磁鋼板であって、従来に優る低鉄損を示すだけでなく、歪取り焼鈍による鉄損の劣化がないので積鉄心、巻鉄心共に使用でき、変圧器の効率向上に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】方向性電磁鋼板における断面構造を説明する図である。
【図2】方向性電磁鋼板の断面構造と鉄損特性との関係を示すグラフである。
【図3】溝底部から板厚方向にわたって生成した微細結晶粒領域の結晶粒径と鉄損特性との関係を示すグラフである。
【図4】地鉄表面に形成した溝の幅と鉄損特性との関係を示すグラフである。
【図5】地鉄表面に形成した溝の深さと鉄損特性との関係を示すグラフである。
【図6】地鉄表面に形成した溝が延びる方向が鋼板圧延方向からずれる角度と鉄損特性との関係を示すグラフである。
【図7】地鉄表面に形成した溝の間隔と鉄損特性との関係を示すグラフである。
Claims (1)
- 鋼板の地鉄表面に、幅:30〜300μm、深さ:10〜70μm、圧延方向の間隔:1〜30mmであり、圧延方向と直角な方向からの角度:30°以内である線状溝をそなえ、この線状溝の底面から板厚方向にもう一方の地鉄表面まで、連続する結晶粒界又は粒径1mm以下の微細結晶粒領域を有し、かつ前記鋼板に残留歪みが存在しないことを特徴とする方向性電磁鋼板。
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