JP3724676B2 - 通信方法及び送信装置並びに受信装置 - Google Patents

通信方法及び送信装置並びに受信装置 Download PDF

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Description

【0001】
【目次】
以下の順序で本発明を説明する。
【0002】
発明の属する技術分野
従来の技術
発明が解決しようとする課題(図7)
課題を解決するための手段
発明の実施の形態(図1〜図6)
発明の効果
【0003】
【発明の属する技術分野】
本発明は通信方法及び送信装置並びに受信装置に関し、例えば携帯電話システムのような無線通信システムに適用して好適なものである。
【0004】
【従来の技術】
従来、この種の無線通信システムにおいては、通信サービスを提供するエリアを所望の大きさのセルに分割して当該セル内にそれぞれ固定無線局としての基地局を設置し、移動無線局としての携帯電話機は自分が存在するセル内の基地局と無線通信するようになされている。その際、この種の無線通信システムでは、隣接するセル間で異なる周波数チヤンネル(以下、これを単にチヤンネルと呼ぶ)を使用することにより電波の干渉問題を避けるようになされている。
【0005】
ところでこのように隣接するセル間で異なるチヤンネルを使用するようにすると、干渉問題を避けられる反面、周波数の利用効率が低下するといつた不都合が生じる。このため最近では、各セルで使用するチヤンネルを所定タイミング毎にランダムに変化させることにより干渉問題を回避すると共に、周波数の利用効率を向上するようになされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところでかかる無線通信システムにおいては、チヤンネルをランダムに変化させているだけなので、隣接するセル間でチヤンネルが同一になることを必ずしも避け得ず、タイミングによつては同一になつてしまうおそれがある。そのように同一チヤンネルが使用された場合には、従来と同様、やはり干渉問題が発生してしまう。
【0007】
例えば図7に示すように、セル1Aにおいて携帯電話機2Aが所定のチヤンネルを使用して基地局3Aと無線通信しているとき、隣接するセル1Bにおいてそれと同一のチヤンネルを使用して携帯電話機2Bが基地局3Bと無線通信していると、当該携帯電話機2Bが送信した送信信号CBが基地局3Aに届くことがある。この場合、基地局3Aに届いた送信信号CBは、携帯電話機2Aが基地局3Aに向けて送信した送信信号CAに対して干渉波(いわゆる妨害波)となる。このように送信信号CAに対する干渉波Iが生じたとしても、通常であれば、送信信号CAの信号レベルの方が干渉波Iに比べて大きいのであまり問題にならない。しかしながら携帯電話機2Aが基地局3Aから離れている等の理由により、送信信号CAの信号レベルが干渉波Iに比べて小さくなつた場合には、基地局3Aが携帯電話機2Aからの送信信号CAではなく間違つて干渉波Iを受信してしまい、その結果、携帯電話機2Bが送信した信号系列が復元されて他人の通話内容が漏洩するといつた事象が起こり、無線通信システムとして好ましくない状況に陥るおそれがある。因みに、このような状況のときには、無線通信システムとしては、受信データが得られなくなるとしても干渉波Iを復調しないことが望ましい。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、他の通信によつて同一チヤンネルが使用された場合でも、当該他の通信によつて送信された信号系列を誤つて復元することを未然に回避し得る通信方法及びそれを用いた送信装置並びに受信装置を提案しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明においては、送信側では、所定のディジタル変調方式によつて変調された信号系列をN(1次以上の整数)ケづつグループ化し、グループ毎にN次の直交行列を乗算することにより直交変換を施し、当該直交変換が施された信号系列を複数のマルチキヤリアに分散して重畳することにより得られる送信信号を、周波数ホツピングさせた所定チヤンネルを使用して送信し、受信側では、チヤンネルを介して受信した送信信号の中からマルチキヤリアに分散して重畳されている信号系列を抽出し、当該信号系列をNケづつグループ化し、グループ毎にN次の直交行列の逆行列を乗算することにより直交変換前の上記信号系列を復元するようにした。
【0010】
これにより、マルチキヤリア通信によりチヤンネル干渉に強く、同一チヤンネルを使用して他の通信が行われた場合でも、他の通信とでは直交変換に使用した直交行列が異なつているので、逆行列を乗算しても直交逆変換は実現されず、他の通信で送信された信号系列が復元されることはないうえ、周波数ホツピングによりチヤンネルを所定タイミング毎にランダムに変化させているため、そもそも同一チヤンネルが使用されることを予め回避してチヤンネル干渉の影響を極力低減することができる。また、信号系列をNケづつグループ化して、グループ毎にN次の直交行列をそれぞれ同時並列的に乗算しているため、信号処理時間を短縮化して信号系列を短時間で復元することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。
【0012】
まず始めに図1を用いて本発明の原理を説明する。図1において、5A、5Bはそれぞれ本発明を適用した携帯電話機を示し、6A、6Bは本発明を適用した基地局を示す。まずこの図1に示すように、セル1Aにおいて携帯電話機5Aが所定のチヤンネルを使用して基地局6Aと無線通信していると共に、隣接するセル1Bにおいてそれと同一のチヤンネルを使用して携帯電話機5Bが基地局6Bと無線通信している状況にあるとする。その際、携帯電話機5A、5Bは共に送信データの変調方式として例えばQPSK変調(Quadrature Phase Shift Keying :4相位相偏移変調)を使用しているものとし、その変調された送信信号の信号系列をそれぞれx(A) 1 、x(A) 2 、x(A) 3 、……x(A) k-1 、x(A) k 、x(A) k+1 、……とx(B) 1 、x(B) 2 、x(B) 3 、……x(B) k-1 、x(B) k 、x(B) k+1 、……とする。
【0013】
ここで本発明を適用した携帯電話機2Aは、送信時、その送信信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)をNケづつグループ化し(Nは1以上の整数)、そのグループ化された送信信号系列x(A) k 、……x(A) k+N と所定のN次の正規直交行列MA とを、次式、
【0014】
【数1】
Figure 0003724676
【0015】
に示すようにグループ毎に順に乗算することにより送信信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)に直交変換を施し、その結果得られる送信信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)を順に送信する。
【0016】
一方、受信側である基地局6Aでは、通信相手の携帯電話機5Aからの送信信号CAを受信したとき、受信した受信信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)をNケづつグループ化し、そのグループ化された受信信号系列y(A) k 、……y(A) k+N と送信側で使用したN次の正規直交行列MA の逆行列MA -1とを、次式、
【0017】
【数2】
Figure 0003724676
【0018】
に示すようにグループ毎に順に乗算することにより直交変換前の信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)に等しい信号系列X(A) n (n=1、2、3、……)を復元する。
【0019】
同様に、携帯電話機5Bは、送信時、送信信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)をNケづつグループ化し、そのグループ化された送信信号系列x(B) k 、……x(B) k+N と所定のN次の正規直交行列MB とを、次式、
【0020】
【数3】
Figure 0003724676
【0021】
に示すようにグループ毎に順に乗算することにより送信信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)に直交変換を施し、その結果得られる送信信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)を順に送信する。因みに、携帯電話機5Bで使用するN次の正規直交行列MB と携帯電話機5Aで使用するN次の正規直交行列MA はそれぞれ全く異なる行列である。
【0022】
受信側である基地局6Bでは、通信相手の携帯電話機5Bからの送信信号CBを受信したとき、受信した受信信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)をNケづつグループ化し、そのグループ化された受信信号系列y(B) k 、……y(B) k+N と送信側で使用したN次の正規直交行列MB の逆行列MB -1とを、次式、
【0023】
【数4】
Figure 0003724676
【0024】
に示すようにグループ毎に順に乗算することにより直交変換前の信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)に等しい信号系列X(B) n (n=1、2、3、……)を復元する。
【0025】
ところで基地局6Aにおいては、携帯電話機5Aが送信した送信信号CAだけが届くのではなく、状況によつて携帯電話機5Bが送信した送信信号CBも届く。その場合、携帯電話機5Bからの送信信号CBは干渉波Iとして作用し、その信号レベルが携帯電話機5Aからの送信信号CAに比して大きければ当該携帯電話機5Aとの通信に妨害を与えることになる。すなわち基地局6Aとしてはいずれの携帯電話機5A又は5Bからの送信信号であるかといつた認識がないので、誤つて携帯電話機5Bからの送信信号CBを受信するおそれがある。
【0026】
その場合、基地局6Aは、通常の受信動作と同様に、携帯電話機5Bから受信した受信信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)をNケづつグループ化し、次式、
【0027】
【数5】
Figure 0003724676
【0028】
に示すように、そのグループ化した信号系列y(B) k 、……y(B) k+N に順に逆行列MA -1を乗算して復調処理を行う。ところがこの(5)式から分かるように、携帯電話機5Bからの受信信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)は直交行列MA と異なる直交行列MB が乗算されたものであるので、逆行列MA -1を乗算しても直交逆変換は実現されず、元の信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)は復元されない。この場合、受信した信号系列は、元の信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)をMA -1B でなる別の直交行列によつて直交変換した信号系列となるので、見かけ上、雑音信号のようになり、その信号系列をQPSK復調しても携帯電話機5Bの送信データは復元されない。
【0029】
このようにして本発明を適用した無線通信システムの場合には、送信側において通信毎に異なる直交行列を信号系列に乗算して送信し、受信側においては受信した信号系列に送信側(この場合、自局の通信相手を指す)で使用した直交行列の逆行列を乗算して直交変換前の元の信号系列を復元するようにしたことにより、他の通信によつて同一チヤンネルが使用された場合でも、当該他の通信によつて送信された信号系列を誤つて復元することを未然に回避し得、これにより他の通信によつて送信されたデータが漏洩することを未然に回避し得る。
【0030】
因みに、ここでは基地局6Aが携帯電話機5Bの送信信号CBを受信したとき、漏洩問題が回避されることを述べたが、同様の理由により、基地局6Bが携帯電話機5Aの送信信号CAを受信したときにも、漏洩問題は回避される。
【0031】
ここで直交行列を用いた直交変換とその逆変換について、実際の信号遷移図を用いて説明する。まず携帯電話機5Aの送信信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)は、QPSK変調されているのでπ/4、3π/4、5π/4又は7π/4の位相状態を取り得、これにより図2(A)に示すように複素平面上(IQ平面上)においては位相状態がπ/4、3π/4、5π/4又は7π/4なる位置に存在する。このような送信信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)にN次の正規直交行列MA を乗算すると、その結果得られる信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)は、図2(B)に示すように、位相状態がランダムな状態になる。
【0032】
一方、受信側である基地局6Aにおいて、この信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)を受信し、上述したように送信側で使用した直交行列MA の逆行列MA -1をこの信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)に乗算すると、その結果得られる信号系列X(A) n (n=1、2、3、……)は、図2(C)に示すように、元の信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)と同じになり、複素平面上のπ/4、3π/4、5π/4又は7π/4なる位相状態の位置に戻る。従つてこの信号系列X(A) n (n=1、2、3、……)にQPSK復調を施せば、携帯電話機5Aからの送信データを正確に復元することができる。
【0033】
また携帯電話機5Bの送信信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)も、同じようにQPSK変調されているのでπ/4、3π/4、5π/4又は7π/4の位相状態を取り得、これにより図3(A)に示すように複素平面上においては位相状態がπ/4、3π/4、5π/4又は7π/4なる位置に存在する。このような送信信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)にN次の正規直交行列MB を乗算すると、その結果得られる信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)は、図3(B)に示すように、位相状態がランダムな状態になる。
【0034】
このような信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)を通信相手ではない基地局6Aが受信した場合、その信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)は基地局6Aにとつて干渉波となる。しかしながら基地局6Aは通信相手からの送信信号か、或いは干渉波であるかの認識はないので、通常の受信処理と同様に復調処理を行う。ところがこの信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)に直交行列MA の逆行列MA -1を乗算しても、当該逆行列MA -1は送信時に使用した直交行列MB の逆行列ではないので、図3(C)に示すように、位相状態は元の状態に戻らず、逆にさらにランダムな状態になる。従つてこの図3(C)に示される信号系列をQPSK復調しても携帯電話機5Bからの送信データは復元されない。依つて、他の通信によつて送信されたデータが漏洩することを回避し得、無線通信システムとして好ましくない状況に陥ることを回避し得る。
【0035】
ここでこのような原理を適用した携帯電話機5A(又は5B)と基地局6A(又は6B)の具体的構成を以下に説明する。まず携帯電話機5A(又は5B)は、図4に示すような送信装置10を有している。この送信装置10は大きく分けてQPSK変調回路11、直交変換部12及び送信部13によつて構成され、所定の音声処理回路等を介して供給された送信データS1をまずQPSK変調回路11に入力するようになされている。QPSK変調回路11はその送信データS1にQPSK変調処理を施すことにより当該送信データS1を位相データの送信信号系列S2に変換し、当該送信信号系列S2を直交変換部12のシリアル/パラレル変換回路(S/P)14に出力する。因みに、この送信信号系列S2は上述した信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)(又はx(B) n (n=1、2、3、……))に相当するものである。
【0036】
シリアル/パラレル変換回路14は、送信信号系列S2をNケづつのグループに分ける回路であり、入力された送信信号系列S2をNケづつ分けることによりNケのパラレル信号に変換し、その結果得られるパラレルの信号系列ST1 〜STN を直交変換回路15に出力する。
【0037】
直交変換回路15は、所定のN次の正規直交行列を用いて送信信号系列に直交変換を施す回路であり、入力されるパラレルの信号系列ST1 〜STN を1グループとして順にN次の正規直交行列を乗算し、信号系列ST1 〜STN に対してグループ毎に直交変換を施す。その際、直交変換回路15は、他の通信で使用されているN次の正規直交行列と全く異なる行列を探してそれを直交変換に使用するのではなく、複数存在するN次の正規直交行列の中からランダムに選んだ行列を使用する。これは、他の通信で使用されているN次の正規直交行列と全く異なる行列を探そうとすると、他の通信で使用されている行列を調べる処理が必要になり、その処理のために直交行列の選定処理が煩雑になるからである。このためこの直交変換回路15では、複数存在するN次の正規直交行列の中からランダムに行列を選ぶことにより、見かけ上、他の通信で使用される行列と異なる行列を得るようにし、行列選定処理を簡易化している。
【0038】
ここでこのN次の正規直交行列の選定方法を具体的に説明する。直交変換回路15には、ベクトル成分が2値からなるN次の直交ベクトルとして、例えばN次のウオルシユベクトルがNケ予め用意されている。直交変換回路15はこのN次のウオルシユベクトルにそれぞれランダムな位相回転を与え、これを組み合わせることによりランダムなN次の正規直交行列を生成する。すなわち次式、
【0039】
【数6】
Figure 0003724676
【0040】
に示すように、N次のウオルシユベクトルW1 、W2 、……WN にそれぞれランダムな位相回転成分ejZ1 、ejZ2 、……ejZN (ここでZ1〜ZNは位相回転角を示す)を乗算することにより当該ウオルシユベクトルW1 、W2 、……WN にランダムな位相回転を与え、これに1/√Nを乗算してランダムなN次の正規直交行列Mを生成する。但し、(6)式においてW1 T 、W2 T 、……WN T は、それぞれ列方向にベクトル成分を持つウオルシユベクトルW1 、W2 、……WN を行方向にベクトル成分を持つようにベクトル転置したものである。
【0041】
このような選定方法を使用して直交変換回路15はN次の正規直交行列を選定し、これをパラレルの信号系列ST1 〜STN に乗算することにより当該信号系列ST1 〜STN に直交変換を施し、その結果得られるパラレルの信号系列ST1 ′〜STN ′をパラレル/シリアル変換回路(P/S)16に出力する。
【0042】
パラレル/シリアル変換回路16は、パラレル信号をシリアル信号に変換することによりグループ化された送信信号系列を1つにまとめる回路であり、入力されるパラレルの信号系列ST1 ′〜STN ′をシリアルの信号系列S3に変換し、これを送信部13の逆フーリエ変換回路(IFFT)17に出力する。因みに、この信号系列S3は、上述した信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)(又はy(B) n (n=1、2、3、……))に相当するものである。
【0043】
逆フーリエ変換回路17は、信号系列S3に逆フーリエ変換を施すことにより当該信号系列S3を周波数の異なる複数のマルチキヤリアに分散して重畳し、その結果得られる送信信号S4を高周波回路18に出力する。高周波回路18はこの送信信号S4を所定チヤンネルの送信信号S5に周波数変換すると共に、当該送信信号S5を所定電力に増幅した後、アンテナ19を介して送信する。因みに、高周波回路18は、送信信号S5のチヤンネルを所定タイミング毎にランダムに変化させ(いわゆる周波数ホツピングさせる)、これによつて他の通信とチヤンネルが同一になることを避けつつ、周波数の利用効率を向上するようになされている。
【0044】
これに対して基地局6A(又は6B)は、図5に示すような受信装置20を有している。この受信装置20は大きく分けて受信部21、直交逆変換部22及びQPSK復調回路29とによつて構成されており、アンテナ23を介して受信した受信信号S10を受信部21の高周波回路24に入力するようになされている。高周波回路24は受信信号S10を所定電力に増幅すると共に、当該受信信号S10をベースバンドの受信信号S11に周波数変換し、これをフーリエ変換回路(FFT)25に出力する。フーリエ変換回路25は受信信号S11にフーリエ変換を施すことにより複数のマルチキヤリアに分散して重畳されている信号系列S12を抽出し、これを直交逆変換部22のシリアル/パラレル変換回路(S/P)26に出力する。因みに、この信号系列S12は、上述した信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)(又はy(B) n (n=1、2、3、……))に相当するものである。
【0045】
シリアル/パラレル変換回路26は、信号系列S12をNケづつのグループに分ける回路であり、入力された信号系列S12をNケづつ分けることによりNケのパラレルデータに変換し、その結果得られるパラレルの信号系列SR1 〜SRN を直交逆変換回路27に出力する。
【0046】
直交逆変換回路27は、通信相手の直交変換回路15が使用したN次の正規直交行列の逆行列を用いて直交逆変換を行う回路であり、入力されるパラレルの信号系列SR1 〜SRN を1グループとして順に逆行列を乗算することにより信号系列SR1 〜SRN に対してグループ毎に直交逆変換を施し、その結果得られる信号系列SR1 ′〜SRN ′をパラレル/シリアル変換回路(P/S)28に出力する。因みに、直交逆変換回路27は、例えば通信開始の際の制御信号の受渡処理等により送信側で使用したN次の正規直交行列を認識するようになされている。
【0047】
パラレル/シリアル変換回路28は、パラレル信号をシリアル信号に変換することによりグループ化された受信信号系列を1つにまとめる回路であり、入力されるパラレルの信号系列SR1 ′〜SRN ′をシリアルの信号系列S13に変換し、これをQPSK復調回路29に出力する。因みに、この信号系列S13は、上述した信号系列X(A) n (n=1、2、3、……)(又はX(B) n (n=1、2、3、……))に相当するものである。QPSK復調回路29は、QPSK変調されている信号系列S13に例えば直交遅延検波等の所定の復調処理を施すことにより位相データである信号系列S13から受信データS14を復元する。かくして、送信側の送信データS1と同じ受信データS14が受信側において復元される。
【0048】
因みに、携帯電話機5A(又は5B)と基地局6A(又は6B)との間では、双方向の通信が行われるので、携帯電話機5A(又は5B)には上述した受信装置20とほぼ同様の受信装置が設けられており、同様に、基地局6A(又は6B)には上述した送信装置10とほぼ同様の送信装置が設けられている。
【0049】
以上の構成において、この無線通信システムの場合には、送信時、QPSK変調された信号系列に通信毎に異なるN次の正規直交行列を乗算することにより当該信号系列に直交変換を施し、その直交変換された信号系列を送信する。一方、受信側では、通信相手の送信側で使用されたN次の正規直交行列の逆行列を受信した信号系列に乗算することにより当該信号系列に直交逆変換を施し、その逆変換が施された信号系列をQPSK復調する。例えば図1に示した携帯電話機5Aでは、送信する信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)にN次の正規直交行列MA を乗算することにより当該信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)に直交変換を施し、その直交変換が施された信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)を送信する。また携帯電話機5Bでは、送信する信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)に直交行列MA とは異なるN次の正規直交行列MB を乗算することにより当該信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)に直交変換を施し、その直交変換が施された信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)を送信する。
【0050】
ところで基地局6Aにおいて通信相手である携帯電話機5Aからの送信信号CAが受信された場合には、受信した信号系列y(A) n (n=1、2、3、……)に直交行列MA の逆行列MA -1を乗算するので、元の信号系列x(A) n (n=1、2、3、……)を正確に復元し得、これによつてQPSK復調により携帯電話機5Aが送信した送信データを正確に復元し得る。
【0051】
これに対して基地局6Aにおいて携帯電話機5Bからの送信信号CBが受信された場合には、受信した信号系列y(B) n (n=1、2、3、……)に逆行列MA -1を乗算しても、当該逆行列MA -1は送信側で使用した直交行列MB の逆行列ではないので、元の信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)は復元されない。この場合、逆行列MA -1を乗算すると、信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)にMA -1B でなる行列を乗算した状態になり、その信号系列はさらにランダムになつて見かけ上、雑音信号のようになり、このため仮にQPSK復調しても元々の送信データは復元されない。
【0052】
このようにしてこの無線通信システムでは、送信側で通信毎に異なる直交行列を信号系列に乗算して送信し、受信側では受信した信号系列に通信相手の送信側で使用された直交行列の逆行列を乗算して元の信号系列を復元するようにしたことにより、他の通信によつて同一チヤンネルが使用され、これを受信したとしても、他の通信とでは送信時に使用された直交行列が異なつているので、逆行列を乗算しても直交逆変換は実現されず、当該他の通信によつて送信された信号系列は復元されない。これにより他の通信によつて送信された送信データが漏洩することを未然に回避し得る。
【0053】
またこの無線通信システムの場合には、直交変換回路15においてN次の正規直交行列を選定する際、他の通信によつて使用されているN次の正規直交行列を調べて完全に異なるN次の正規直交行列を選定するのではなく、実際には、複数存在するN次の正規直交行列の中からランダムに選び出すことにより他の通信で使用されている行列と異なる行列を選定している。従つて、他の通信によつて使用している行列を調べる処理が不要になるので、直交行列の選定処理を簡易にすることができる。
【0054】
またこの無線通信システムの場合には、直交行列の選定する際、予め複数の直交行列を用意しておくのではなく、実際には、N次のウオルシユベクトルを予めNケ用意しておき、そのウオルシユベクトルW1 、W2 、……WN にそれぞれランダムな位相回転を与え、それらを組み合わせることにより、N次の正規直交行列を得ている。従つて正規直交行列を算出するための演算部分を加減算処理だけで構成し得ると共に、複数の直交行列を記憶するようなメモリが不要となり、簡易な構成で正規直交行列を算出し得る。
【0055】
因みに、参考としてウオルシユベクトルを用いて算出したN次の正規直交行列をここに示す。例えばN=1とし、携帯電話機5A、5Bで選定したランダムな位相回転角をそれぞれZA、ZBとすると、N=1のときにはウオルシユベクトルは「1」になるので、携帯電話機5A、5Bで生成される正規直交行列MA 、MB は、それぞれ次式、
【0056】
【数7】
Figure 0003724676
【0057】
に示すようになる。因みに、この(7)式に示されるような正規直交行列MA 、MB を使用すると、図6に示すように、複素平面上において位相状態がπ/4、3π/4、5π/4又は7π/4にある信号系列を所定方向に位相回転角ZA又はZBだけ回転させることを意味している。なお、この場合には、基地局6Aにおいて他の通信である携帯電話機5Bからの送信信号を受信したとすると、信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)に、次式、
【0058】
【数8】
Figure 0003724676
【0059】
で示される行列を乗算した状態になり、位相回転角ZA、ZBが異なつていれば、他の通信によつて送信された信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)が復元されないことが分かる。
【0060】
またN=2とし、携帯電話機5A、5Bで選定したランダムな位相回転角をそれぞれZA1、ZA2、ZB1、ZB2とし、2次のウオルシユベクトルW1 、W2 の行方向転置ベクトルW1 T 、W2 T として、次式、
【0061】
【数9】
Figure 0003724676
【0062】
に示されるベクトルを使用すると、携帯電話機5A、5Bで生成される正規直交行列MA 、MB は、それぞれ次式、
【0063】
【数10】
Figure 0003724676
【0064】
に示すようになる。なお、この場合には、基地局6Aにおいて他の通信である携帯電話機5Bからの送信信号を受信したとすると、信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)に、次式、
【0065】
【数11】
Figure 0003724676
【0066】
で示される行列を乗算した状態になり、位相回転角ZA1とZB1及び位相回転角ZA2とZB2がそれぞれ異なつていれば、他の通信によつて送信された信号系列x(B) n (n=1、2、3、……)が復元されないことが分かる。
【0067】
かくして以上の構成によれば、送信側で信号系列に通信毎に異なる直交行列を乗算して送信し、受信側では受信した信号系列に通信相手の送信側で使用された直交行列の逆行列を乗算して直交変換前の元の信号系列を復元するようにしたことにより、他の通信によつて同一チヤンネルが使用され、これを受信したとしても、当該他の通信によつて送信された信号系列を誤つて復元することを未然に回避し得、これにより他の通信によつて送信された送信データが漏洩することを未然に回避し得る。
【0068】
なお上述の実施例においては、直交行列を選定する際、N次のウオルシユベクトルをNケ用意しておき、そのウオルシユベクトルにそれぞれランダムな位相回転を与え、その位相回転が与えられたウオルシユベクトルを組み合わせることによりランダムな直交行列を生成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、所定の直交行列の各ベクトル成分をランダムに並べ換えることによりランダムな直交行列を生成するようにしても上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また上述の実施例においては、直交行列として、正規化された直交行列を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、正規化されていない任意の直交行列を用いても良い。要は、送信時、直交行列を用いて信号系列に直交変換を施すようにすればどのような直交行列を用いても上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0070】
また上述の実施例においては、送信データに施す変調方式としてQPSK変調を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、BPSK変調(Binary Phase Shift Keying :2相位相偏移変調)や16QAM変調(16 Quadrature Amplitude Modulation:16値直交振幅変調)等、その他の変調方式を用いるようにしても良い。
【0071】
また上述の実施例においては、信号系列を複数のマルチキヤリアに分散して重畳し、その結果得られる送信信号を所定チヤンネルに周波数変換して送信すると共に、当該送信信号のチヤンネルを所定タイミング毎にランダムに変化させるような通信方式の無線通信システムに本発明を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他の通信方式の無線通信システムに本発明を適用しても良い。要は、同一チヤンネルを使用して少なくとも2つ以上の通信が行われることによりその2つ以上の通信の電波が互いに干渉し合う、いわゆる同一チヤンネル干渉が起き得る可能性があれば、本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0072】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、マルチキヤリア通信によりチヤンネル干渉に強く、同一チヤンネルを使用して他の通信が行われた場合でも、他の通信とでは直交変換に使用した直交行列が異なつているので、逆行列を乗算しても直交逆変換は実現されず、他の通信で送信された信号系列が復元されることはないうえ、周波数ホツピングによりチヤンネルを所定タイミング毎にランダムに変化させているため、そもそも同一チヤンネルが使用されることを予め回避してチヤンネル干渉の影響を極力低減し得る通信方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理の説明に供するシステム構成図である。
【図2】本発明を適用した無線通信システムにおいて通信相手からの送信信号を受信したときの動作の説明に供する信号遷移図である。
【図3】本発明を適用した無線通信システムにおいて干渉波を受信したときの動作の説明に供する信号遷移図である。
【図4】携帯電話機に設けられた送信装置の構成を示すブロツク図である。
【図5】基地局に設けられた受信装置の構成を示すブロツク図である。
【図6】1次の直交行列を用いたときの直交変換の説明に供する信号遷移図である。
【図7】他の通信によつて送信された送信信号が干渉波となることの説明に供するシステム構成図である。
【符号の説明】
1A、1B……セル、2A、2B、5A、5B……携帯電話機、3A、3B、6A、6B……基地局、10……送信装置、11……QPSK変調回路、12……直交変換部、13……送信部、14、26……シリアル/パラレル変換回路、15……直交変換回路、16、28……パラレル/シリアル変換回路、17……逆フーリエ変換回路、18、24……高周波回路、19、23……アンテナ、20……受信装置、21……受信部、22……直交逆変換部、25……フーリエ変換回路、27……直交逆変換回路、29……QPSK復調回路。

Claims (15)

  1. 送信側では、所定のディジタル変調方式によつて変調された信号系列をN(1次以上の整数)ケづつグループ化し、グループ毎にN次の直交行列を乗算することにより直交変換を施し、当該直交変換が施された信号系列を複数のマルチキヤリアに分散して重畳することにより得られる送信信号を、周波数ホツピングさせた所定チヤンネルを使用して送信し、
    受信側では、上記チヤンネルを介して受信した上記送信信号の中から上記マルチキヤリアに分散して重畳されている信号系列を抽出し、当該信号系列を上記Nケづつグループ化し、グループ毎に上記N次の直交行列の逆行列を乗算することにより直交変換前の上記信号系列を復元する
    ことを特徴とする通信方法。
  2. 複数存在する上記直交行列の中からランダムに選ぶことにより通信毎に異なる上記直交行列を選定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信方法。
  3. ベクトル成分が2値からなる複数の直交ベクトルにそれぞれランダムな位相回転を与え、当該位相回転が与えられた上記直交ベクトルを組み合わせることにより、通信毎に異なる上記直交行列を生成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信方法。
  4. 上記直交ベクトルとしてウォルシュベクトルを使用する
    ことを特徴とする請求項3に記載の通信方法。
  5. 所定の直交行列の各ベクトル成分をランダムに並び換えることにより通信毎に異なる上記直交行列を生成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の通信方法。
  6. 所定のディジタル変調方式によつて変調された信号系列をN(1次以上の整数)ケづつグループ化し、グループ毎にN次の直交行列を乗算することにより直交変換を施す直交変換手段と、
    上記直交変換手段から出力される上記直交変換が施された信号系列を複数のマルチキヤリアに分散して重畳することにより得られる送信信号を、周波数ホツピングさせた所定チヤンネルを使用して送信する送信手段と
    を具えることを特徴とする送信装置。
  7. 複数存在する上記直交行列の中からランダムに選ぶことにより通信毎に異なる上記直交行列を選定する
    ことを特徴とする請求項6に記載の送信装置。
  8. ベクトル成分が2値からなる複数の直交ベクトルにそれぞれランダムな位相回転を与え、当該位相回転が与えられた上記直交ベクトルを組み合わせることにより、通信毎に異なる上記直交行列を生成する
    ことを特徴とする請求項6に記載の送信装置。
  9. 上記直交ベクトルとしてウオルシユベクトルを使用する
    ことを特徴とする請求項8に記載の送信装置。
  10. 所定の直交行列の各ベクトル成分をランダムに並び換えることにより通信毎に異なる上記直交行列を生成する
    ことを特徴とする請求項6に記載の送信装置。
  11. 所定のディジタル変調方式によつて変調された信号系列をN(1次以上の整数)ケづつグループ化し、グループ毎にN次の直交行列を乗算することにより直交変換を施し、当該直交変換が施された信号系列を複数のマルチキヤリアに分散して重畳することにより得られる送信信号を、周波数ホツピングさせた所定チヤンネルを介して通信相手の送信装置から受信する受信手段と、
    上記受信手段により上記チヤンネルを介して受信した上記送信信号の中から上記マルチキヤリアに分散して重畳されている信号系列を抽出し、当該信号系列を上記Nケづつグループ化し、グループ毎に上記N次の直交行列の逆行列を乗算することにより直交変換前の上記信号系列を復元する直交逆変換手段と
    を具えることを特徴とする受信装置。
  12. 複数存在する上記直交行列の中からランダムに選ぶことにより通信毎に異なる上記直交行列を選定する
    ことを特徴とする請求項11に記載の受信装置。
  13. ベクトル成分が2値からなる複数の直交ベクトルにそれぞれランダムな位相回転を与え、当該位相回転が与えられた上記直交ベクトルを組み合わせることにより、通信毎に異なる上記直交行列を生成する
    ことを特徴とする請求項11に記載の受信装置。
  14. 上記直交ベクトルとしてウオルシユベクトルを使用する
    ことを特徴とする請求項13に記載の受信装置。
  15. 所定の直交行列の各ベクトル成分をランダムに並び換えることにより通信毎に異なる上記直交行列を生成する
    ことを特徴とする請求項11に記載の受信装置。
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