JP3724656B2 - バイスター装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願は自動2輪車等の気化器に取付けられる始動用燃料供給装置としてのバイスター装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このようなバイスター装置は、公知であり、例えば実公昭63−41549号がある。この装置は、気化器のバイスター通路を開閉するためのバイスターバルブと、このバイスターバルブを移動させるプランジャを温度変化に応じて伸縮させるためのワックスエレメントとを備える。
【0003】
ワックスエレメントに封入されるワックスは、エンジンの始動と同時に加温され、その熱膨張によりプランジャを伸ばしてバイスターバルブを移動させることによりバイスター通路を徐々に閉じ、暖機運転時の空燃比を最適状態に変化させるようになっている。
【0004】
また、特開昭61−185660号には、エンジン停止後におけるワックスがエンジンよりも早く冷却するため、ホットスタートの際にバイスターバルブの開きが大きくなり過ぎて空燃比が過濃にならないよう、ワックスユニットのピストンを、摺動抵抗の大きなものと小さいもので二段に構成し、プランジャの移動速度を変化させ、バイスターバルブの開きを調節するものが示されている。
【0005】
なお、これと同様な目的でワックスエレメントに保温キャップやヒートマスを設け、ワックスの冷却を遅くすることも公知である。
【0006】
さらに、実公昭63−23560号には、プランジャとバイスターバルブの間にカムを設けることにより、プランジャの進退方向とバイスターバルブのストローク方向とを直交させて装置全体をコンパクトにし、同時にバイスターバルブのストロークを非線形的に変化させるものが示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図5はエンジンが冷えている状態で始動する場合(以下、コールドスタートという)における、エンジン始動後の時間経過に対応する空燃比、空気量、ワックス温度の各昇温特性を示すためのグラフであり、横軸に経過時間、縦軸に空燃比(5A)、吸気用に気化器へ供給される空気量(5B)、ワックス温度(5C)の諸特性をとったものである。
【0008】
図6はエンジンを停止した後における上記諸特性の降温特性を示すグラフであり、エンジン停止後の時間経過を横軸、縦軸に空燃比(6A)、空気量(6B)、ワックス温度(6C)をとってある。エンジンの温度がまだ比較的高い状態で再始動する場合(以下、ホットリスタートという)におけるバイスターバルブの作動を考察するために使用する。
【0009】
図7は図5及び図6におけるワックス温度変化に対応するバイスターバルブのストローク変化を示すグラフであり、ストローク量は全閉時を基準とし、これから全開方向へ移動したバイスターバルブの移動量を正として表してある。
【0010】
図7中の符号は、図5C及び図6C上の符号と対応させてある。なお、これら図5乃至図7中に破線で示す特性は、コールドスタート及びホットリスタート双方に適合するように構成された従来のバイスター装置の特性であり、ホットリスタートのために後述する保温キャップを設けたものである。また、これら図中の太い実線は後述する本願発明に係る特性を示す。
【0011】
図7に示すように、バイスターバルブの全閉直前に不安定ゾーンが存在する。この不安定ゾーンは、バイスターバルブがその閉じ際である微小開度においてエンジンの振動や吸気脈動等によって振動すると、開度が微小であるためその開口面積変動比率が大きく、エンジンの回転数が不安定になり、エンストや急な出力低下等を招き易くなることによる。
【0012】
したがって、この不安定ゾーンの影響を避けるためには、全閉時の温度(以下、全閉温度という)が十分に高くなるよう暖機に十分な時間をかけるとともに、不安定ゾーンを可能な限り迅速に通過して全閉しなければならない。
【0013】
このため、従来のセットストロークST1は、十分な長さが必要になり、それだけ暖機時間が長くなってしまう。すなわち、点Xで示す従来必要な全閉温度dに対応する暖機時間は、図5Cにおいて実線で示したワックス温度上昇曲線よりT4となり、これは比較的長い時間であるため、これよりも短縮することが望まれる。なお、cは不安定ゾーンへの突入温度、T3はそのときの暖機時間である。
【0014】
また、この従来の暖機時間における空燃比(A/F)及び空気量(Gair)は、それぞれ図5A及び図5Bに示してあるが、特に、図5Bに示すように、暖機時間を長くすることにより不安定ゾーンの近傍で空気量が多くなりすぎ、その結果、エンジンの回転が必要以上に過大になりやすい供給過剰ゾーンが生じる。なお、図5B及び6Bの縦軸は、単位時間(秒,S)あたりの空気流量(グラム、g)である。
【0015】
但し、全体の暖機時間を短くする目的で、仮に、図7の実線で示すような短いセットストロークST2とすれば、J点に相当する全閉温度bはかなり低くなるため、このときの空燃比及び空気量は、比較例として二点鎖線でそれぞれ図5A及び図5Bに示すように、暖機が不十分な状態で不安定ゾーンを通過することになる。
【0016】
したがって、コールドスタートにおいては、セットストロークを短くして全体の暖機時間を短くするとともに、全閉温度をできるだけ高くしてかつ可能な限り迅速に不安定ゾーンを通過し、同時に空気量の過剰を招かないように動作することが望まれる。
【0017】
一方、ホットリスタートの際には、エンジンより早くワックスが冷えるため、エンジンの温度に適合するバイスターバルブの適正開度以上に開きすぎ(すなわち開きが早くなりすぎ)、その結果、燃料が過濃になることがあり、これを比較例として図6A・6Bに二点鎖線で示してある。
【0018】
そこで、ワックスの冷却を遅くするため、ワックスエレメントに保温キャップやヒートマスを設け、図6A・6Bに破線で示す従来例のように、エンジンの温度に適合するバルブ開度を得るようにしたものがある。
【0019】
しかし、このような保温キャップやヒートマスを設けると、バイスター装置が大型化並びに重量化するので、これらを省略してコンパクトにすることも望まれる。
【0020】
なお、前記実公昭63−41549号にはこのような課題について何も記載されていない。また、実公昭63−23560号は、プランジャのストロークをバイスターバルブに対してカム部材を介して1:1もしくは所定の比で伝達するのものであり、後者の場合はバイスターバルブの開度を非線形的に変化させるが、単に非線形的に変化させただけでは上記要請を実現できない。
【0021】
さらに、前記特開昭61−185660号は、プランジャの伸縮速度を変化させてエンジン停止後にバイスターバルブをゆっくり開かせることを目的とするので、保温キャップやヒートマスを省略してもホットリスタートに適合できると思われるが、コールドスタート時におけるエンジンの不安定領域を解消できるものではない。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、気化器へ通じるバイスター通路を開閉並びに開度調節するためのバイスターバルブと、このバイスターバルブを移動させるためのワックスエレメントとを備えるとともに気化器へ取付けられるバイスター装置において、バイスター通路を全閉する直前の微小開度で前記バイスターバルブに設けられた環状溝へ係合することによりバイスターバルブを一時的に移動停止又は移動速度を係合前よりも遅くした後、ある特定の温度にて前記ワックスエレメントにより前記環状溝から係合離脱して前記バイスターバルブを全閉位置を越える位置と底部が当接して移動を停止する位置との間の所定の位置までバネ付勢による急速移動させることにより、バイスターバルブのストロークを段階的に変化させるスキップ機構を設けたことを特徴とする。
【0023】
なお、バイスターバルブがスキップ機構と摺接することにより、摺動抵抗が一時的に大きくなってバイスターバルブの移動速度が遅くなる状態を移動緩慢というものとする。
【0024】
また、バイスターバルブのストロークが段階的に変化するとは、図7に示すワックス温度とバイスターバルブのストロークに関する特性が略階段状をなすことを意味し、特に、このような変化をしない場合の全閉温度(同図中のb)よりも高い温度(同図中のc)へジャンプし、その温度で全閉位置まで迅速にストロークすることにより、屈曲点が3点以上となるような変化をいう。
【0025】
請求項2の発明は、前記請求項1のバイスター装置において、前記スキップ機構が、不動部へ支持される支点部と、一端側に設けられた尾部に形成された爪と、他端側に設けられた先端部とを有するスキップリンクを備え、バイスター通路を全閉する直前の微小開度で前記爪が前記環状溝へ係合することにより前記バイスターバルブを一時的に移動停止又は移動緩慢にした後、前記先端部が前記ワックスエレメントを覆うホルダーカラーへ当接することにより前記爪を前記環状溝から係合離脱させ、前記バイスターバルブを移動させることを特徴とする。
【0026】
ここで、ワックスエレメントの伸縮部材とは、ワックスエレメントのプランジャ自体若しくはプランジャと別体であるがプランジャに押されて一体に移動する部材を含む。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて自動2輪車の気化器に設けられたバイスター装置を説明する。
【0030】
図1は、バイスター装置全体の断面構造を示す図、図2はバイスターバルブ近傍部分を拡大して示す図、図3は図2のZ矢示方向から示す図、図4は図2の4−4線に沿って示す断面図である。
【0031】
これらの図において、バイスター装置は、図示省略の気化器へ取り付けられる基部1と、この基部1へ着脱自在に取り付けられるバイスター本体部10とを備える。
【0032】
基部1は、バイスター本体部10を嵌合するための凹部2、気化器に形成されたメインボアのスロットルバルブ(図示せず)下流側へ通じるバイスター通路3を備える。
【0033】
バイスター通路3は、気化器のスロットルバルブ上流側へ通じるバイスタエア通路4とバルブ室5を介して連通し、バルブ室5に臨む開口部6がバイスターバルブ11の移動で開閉される。
【0034】
バルブ室5には、フロート室(図示せず)に通じる燃料通路7の出口に設けられたバイスターニードルジェット8が臨んでいる。
【0035】
バイスター本体部10は、バイスターバルブ11、スキップ機構12及び弁駆動部13を備える。
【0036】
バイスターバルブ11は略円筒状をなし、バイスター通路3と直交方向へ進退することによりバイスター通路3の開閉及び開度調節を行うようになっている。
【0037】
バイスターバルブ11の下部中央部には、ニードル14が軸心方向へ突出してバイスターニードルジェット8内を進退し、燃料を調節するようになっている。
【0038】
バイスターバルブ11の外周面には環状溝15が全周に及んで形成され、その断面形状は上部16が直角状、下部17は斜面状になっており(図2参照)、この環状溝15にスキップ機構12の後述する爪24が係脱可能になっている。
【0039】
なお、バイスターバルブ11の上端部には直角に内側へ突出するフランジ部18が形成されている(図2)。
【0040】
スキップ機構12は、スキップリンク20とリンクスプリング21を備え、スキップリンク20は、アーム部22、支点部23、爪24、尾部25を備える。
【0041】
リンクスプリング21は、一端を尾部25に形成された溝26(図3)に嵌合し、他端が基部1側の不動部へ当接し、スキップリンク20を図1及び図2の時計回り方向へ回動付勢するようになっている。
【0042】
スキップリンク20の詳細は図2乃至図4に示される。このうち図4は、スキップリンク20が、リンクスプリング21に抗してアーム部22が略水平方向へ回動した状態を図の上半部に、リンクスプリング21によりアーム部22を略上下方向へ回動した状態を図の下半部に併せて示してある。
【0043】
これらの図において明らかなように、アーム部22は、バイスターバルブ11を挟んでその左右外周に沿って延びる一対のアーム状部分である。
【0044】
支点部23は、各アーム部22の中間部から外側方へ突出して基部1に形成された支持凹部2a内へ嵌合支持され、スキップリンク20の回動中心となる。
【0045】
尾部25は、左右のアーム部22の下部を連結して下方へ突出し、凹部2と連続する尾部収容凹部9内へ回動自在に収容される。
【0046】
爪24は、尾部25の内側に突出形成され、環状溝15が係合可能な位置にあるとき、尾部25が下方へ回動するにしたがって環状溝15へ係脱可能である。
【0047】
図1に明らかなように、弁駆動部13は、一端が凹部2内へ嵌合する筒状のケース30、この内部を本体リターンスプリング31に抗して上下移動可能に収容された有底円筒状のホルダーカラー32、その底部33に一端が当接するプランジャ34を有するワックスエレメント35を備える。ホルダーカラー32とプランジャ34は伸縮部材を構成する。
【0048】
従来の保温キャップを省略したワックスエレメント35内には、弾性膜36を介して感温ワックス37と半流動体38が封入され、ワックスエレメント35のサーミスタ35aへリード線39を介して通電し、エンジンの温度上昇に対応させて加熱することにより感温ワックス37を熱膨張させるようになっている。
【0049】
感温ワックス37は熱膨張すると、弾性膜36、半流動体38、ピストン35bを介してプランジャ34を押し出し、ホルダーカラー32を本体リターンスプリング31に抗して押し下げるようになっている。
【0050】
ホルダーカラー32の底部33には、中央部から下方へ突出する中空の突出部40が形成され、その下端部には外向きにフランジ部41が形成されている。
【0051】
突出部40は、フランジ部41の中空部内へ挿入され、バイスターバルブ11と相対移動可能になるとともに、フランジ部18、41が両者の抜け止めとなっている。
【0052】
なお、バイスターバルブ11と突出部40との間にはバルブスプリング42(図1)が介装され、バイスターバルブ11をフランジ部18が同41へ係合するように突出部40から伸び出させる方向へ付勢している。
【0053】
次に、図5乃至図10に基づいてスキップ機構の動作を説明する。まず、図5Cにおける実線のワックス温度上昇曲線に示すように、冷機状態からコールドスタート後(A)、暖機運転(D〜F)を経て通常運転になり、この間におけるエンジンの雰囲気温度は始動後の時間経過とともに上昇する。
【0054】
この暖機運転における時間経過に伴って、空燃比は図5Aに示すように始動後徐々に大きくなり、次第に混合気濃度が薄くなる。
【0055】
また、図5Bに示す空気量変化も空燃比と同様に変化し、徐々に空気量が減少する。この空気量は、供給過剰ゾーンにおいて供給過剰傾向にある破線の特性よりも供給量を少なくしている。
【0056】
図7において、バイスターバルブが不安定ゾーンに近づき、スキップ開始点Dになると、その温度aからcまでストローク一定となる。
【0057】
温度cは従来例(破線)が不安定ゾーンへ入るときの温度であり、これと同じ温度のスキップ終了点Fから一気に全閉位置を越えてG点まで大きくオーバーストロークする。
【0058】
このG点はD点からスキップせずにそのまま延長した場合における温度cの点と一致し、このD点からの延長線上で全閉位置になるときの全閉温度bに対応する点DF間の点が図中に示すEである。
【0059】
なお、エンジン停止後のワックス温度低下に伴うバルブストロークの戻りは、点GからDへスキップせず直線的になる。
【0060】
バイスターバルブは、その全閉時に全閉位置を越えてオーバーストローク位置OSまで所定のストローク量ST0だけオーバーストロークする。点H・Iはオーバーストローク位置OS上における異なる温度の点である。
【0061】
このように、不安定ゾーンになると、バルブストロークは、点D・E・F・Gと階段状にスキップし、点FG間で不安定ゾーンを最短時間で通過し、バイスターバルブは迅速に全閉する。
【0062】
このとき、図5Aにおいて空燃比は、点P・Q・Rと階段状に変化する。点Rはバイスターバルブが全閉したアイドリング時の空燃比であり、全閉後はこのアイドル状態の空燃比になる。
【0063】
従来例(破線)と比較しても、点PQ間では混合気濃度は同等で、暖機時間T3も従来例のT4とほぼ同等である。
【0064】
つまり、暖機に必要な空燃比、時間は従来例と同等の特性を確保できる。
【0065】
また、図5Bに示す空気量変化も空燃比と同様にp・q・rと階段状に変化し、この変化により、従来例(破線)に対しては、供給過剰ゾーンを回避でき、空気量を適正にして不必要なエンジンの回転上昇を抑制できる。
【0066】
さらに、比較例(二点鎖線)に対してはより多くの空気量を維持してエンジンの回転が不安定にならないようにする。全閉後はアイドル状態の空気量になる。
【0067】
図5B中に丸囲みで示すように、環状溝15の形状により、スキップ時の特性に変化を出すことができる。
【0068】
すなわち環状溝15の断面形状において、上部16が直角になっているMで示すこれまで述べたものと同じ場合は、特性が点p・q・rと直角に変化する階段状になる。
【0069】
一方、Nで示す上部の断面形状を斜面19にしたものでは、太い破線p・q1・rで示すような点pとq1間が若干傾斜にした略階段状になり、この傾斜程度は斜面19の傾斜によって任意に設定できる。
【0070】
このNの場合は、環状溝15に爪24が入り込んだ状態で、爪24が図の反時計回り方向に回動すると、爪24と斜面19の接点がずれて行き、バイスターバルブ11を徐々に下方へストロークさせながら係合解除する。したがってこのケースは、バイスターバルブ11自体の移動によって係合解除する形式に相当する。
【0071】
なお、本願発明では、Nのように爪24が環状溝15へ入って斜面19に当接し、バイスターバルブ11の移動を許容するが、その移動を緩慢にする状態も係合に含めるものとする。
【0072】
ホットリスタートにおいては、図6に降温特性を示す。図中の破線は従来の保温キャップを付けたもの、二点鎖線はこの従来例から保温キャップを除いた比較例である。なお、太い実線は本願発明に係る特性であり、この比較例よりもセットストロークを短くしたものに相当する。
【0073】
すなわち、セットストロークの長い比較例では、図7の温度dにまで冷却した点Xの時間はT5で、図6A・6Bに示すように、ホットリスタートに適合した従来例(破線)よりもかなり早くバイスターバルブが開き、その結果、混合気は過濃になる。
【0074】
一方、本願発明によれば、セットストロークが短く設定されているため、T5より長い時間T6に相当する点Jで、ようやく全閉位置の温度bとなり、バイスターバルブが開き始める。
【0075】
このJ点の位置(時間)は、図6A・6Bにも明らかなように、従来例(破線)におけるバイスターバルブの開き始めの時間と近似し、むしろこの従来例よりも遅れた位置になっている。したがって、従来のような保温キャップやヒートマスを用いなくても、バイスターバルブを従来と同程度かむしろそれよりもさらにゆっくりと開くことができ、空燃比の過濃状態を回避できる。
【0076】
図8〜10は、上記諸特性を発揮するためのバイスターバルブの動作状態を示した図であり、動作に付したA〜Kの符号は、図5乃至同7中に示したA〜Kの各段階に対応している。
【0077】
まず、全開時(A)では、スキップリンク20の爪24は環状溝15と非係合であり、バイスターバルブ11はスキップリンク20に対して自由に下方移動可能である。
【0078】
感温ワックスの加熱によりプランジャ34が下方へ伸び始めると、プランジャ34に押されてホルダーカラー32の底部33が下方へ移動を始める(B)。
【0079】
この段階では、バルブスプリング42によって突出部40のフランジ部41とバイスターバルブ11のフランジ部18とが係合し、バイスターバルブ11は突出部40と一体に下方へ移動し、バイスター通路3の開口部6をW1まで減少させる(C)。このW1は不安定領域になる微小開口度Wより若干大きくなっている。
【0080】
やがてバイスター通路3の開口部6における開口度が不安定領域(図7のD点)になる微小開口度Wに達すると、バイスターバルブ11の環状溝15がスキップリンク20の爪24と同じ高さになり、爪24が環状溝15へ係合し、バイスターバルブ11の下方移動を阻止する(D)。
【0081】
この段階では、アーム部22の先端27とホルダーカラー32の底部33下面の間に微小クリアランスSがあるため、バイスターバルブ11は停止するが、ホルダーカラー32は引き続き下降可能である。
【0082】
なお、この微小クリアランスSにより、スキップ幅(図7の点DF間)が決定されるので、この微小クリアランスSを適宜変化させることによりスキップ幅を任意に調節可能である。
【0083】
このD段階から図9のE段階にかけて、突出部40はバルブスプリング42に抗しつつフランジ部41がフランジ部18から離れてバイスターバルブ11内を下降し、バイスターバルブ11と相対移動する。
【0084】
やがて、底部33の下面がアーム部22の先端27に接近し(E)、当接することによりリンクスプリング21に抗してアーム部22を図の反時計回り方向へ回動させ、爪24を環状溝15から離脱させる(F)。
【0085】
これにより、バイスターバルブ11はバルブスプリング42に押され、フランジ部18がフランジ部41へ係合して停止するまで急激に下方移動し、バイスター通路3は全閉状態になる(G)。
【0086】
引き続きプランジャ34が伸びると、バイスターバルブ11はオーバーストロークして突出部40と一体に下降し、底部がバイスターニードルジェット8の上端へ当接して移動を停止する(H)。全閉位置からこの状態までのバイスターバルブ11の移動量がオーバーストローク量ST0となる。
【0087】
その後は、バイスターバルブ11の下方移動が停止され、プランジャ34はワックス温度の上昇に比例して伸び続けるため、突出部40のみがバイスターバルブ11内を下降する(図10のI参照)。
【0088】
図10は、図6の6C中におけるI・J・Kに対応するバイスターバルブ11の状態を示した図であり、エンジン停止直後のI段階では、前記のようにオーバーストローク状態にある。
【0089】
その後、ワックスの冷却に応じてプランジャ34とバイスターバルブ11が一体になって上昇し、全閉位置で環状溝15が爪24へ近づき(J)、やがてバイスター通路3を解放するとともに、環状溝15へ爪24が係合する(D)。
【0090】
しかし、環状溝15の下部は斜面部17になっているので、引き続いて突出部40とバイスターバルブ11が一体に上昇すると、爪24は斜面部17を滑って環状溝15から脱出し、バイスターバルブ11の上方移動を許容し、全開位置からさらにセットストロークまで戻る。Kは全閉位置を示す。
【0091】
したがって、この間におけるバルブストロークの変化は、図7のG・J・D・Kと直線的に変化し、スキップによる階段状の変化(G・F・D)が生じない。
【0093】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、微小開度でバイスターバルブに設けられた環状溝へ係合することによりバイスターバルブを一時的に移動停止又は移動緩慢にした後、ある特定の温度にて、環状溝から係合離脱することによりバイスターバルブをワックスエレメントの伸縮部材又はバイスターバルブ自体の移動により全閉位置を越える位置と底部が当接して移動を停止する位置との間の所定の位置までバネ付勢による急速移動させることにより、バイスターバルブのストロークを段階的に変化させるスキップ機構を設けたので、バイスターバルブが全閉となるまぎわの不安定ゾーンをスキップさせることができる。
【0094】
したがって、セットストロークを短くしても、不安定ゾーンを通過する際におけるエンストや急激な出力低下等のおそれがなくなり、かつ、空気量を過剰に供給することによりエンジンの回転数を不必要に上昇させることもなくなる。ゆえに、微小開度付近におけるエンジンの回転を安定させ、かつ暖機時間を十分に与えることができる。
【0095】
そのうえ、バイスターバルブのセットストロークを短くしたので、同一温度でも従来例よりも閉じているため、エンジン停止後におけるバイスターバルブの開きを遅くでき、ワックスエレメントに保温キャップやヒートマスを設けなくても済む。
【0096】
ゆえに、コールドスタートの場合はゆっくり閉じ、逆に、ホットリスタートの場合は開きを遅くすることができ、コールドスタートとホットリスタートを両立できるとともに、保温キャップやヒートマスを省略してバイスター装置をコンパクトにできる。
【0097】
請求項2の発明によれば、スキップ機構として、不動部へ支持される支点部と、一端側に設けられた尾部に形成された爪と、他端側に設けられた先端部とを有するスキップリンクを備え、バイスター通路を全閉する直前の微小開度で前記爪がバイスターバルブに設けられた環状溝へ係合することによりバイスターバルブを一時的に移動停止又は移動緩慢にした後、前記先端部がワックスエレメントを覆うホルダーカラーへ当接することにより前記爪が前記環状溝から係合離脱してバイスターバルブを移動させ、そのストロークを段階的に変化させるようにしたので、比較的簡単な構造でかつ作動が確実なスキップ機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 バイスター装置の全断面図
【図2】 バイスター装置の要部全断面図
【図3】 同上
【図4】 図2の4−4線に沿う断面図
【図5】 昇温特性を示すグラフ
【図6】 降温特性を示すグラフ
【図7】 バイスターバルブのストローク変化を示すグラフ
【図8】 バイスターバルブの変化を示す図
【図9】 同上
【図10】 同上
【符号の説明】
1:基部、3:バイスター通路、10:バイスター本体部、11:バイスターバルブ、12:スキップ機構、13:弁駆動部、15:環状溝、20:スキップリンク、24:爪、34:プランジャ、35:ワックスエレメント
Claims (2)
- 気化器へ通じるバイスター通路を開閉並びに開度調節するためのバイスターバルブと、このバイスターバルブを移動させるためのワックスエレメントとを備えるとともに気化器へ取付けられるバイスター装置において、バイスター通路を全閉する直前の微小開度で前記バイスターバルブに設けられた環状溝へ係合することによりバイスターバルブを一時的に移動停止又は移動速度を係合前よりも遅くした後、ある特定の温度にて前記ワックスエレメントにより前記環状溝から係合離脱して前記バイスターバルブを全閉位置を越える位置と底部が当接して移動を停止する位置との間の所定の位置までバネ付勢による急速移動させることにより、バイスターバルブのストロークを段階的に変化させるスキップ機構を設けたことを特徴とするバイスター装置。
- 前記スキップ機構は、不動部へ支持される支点部と、一端側に設けられた尾部に形成された爪と、他端側に設けられた先端部とを有するスキップリンクを備え、バイスター通路を全閉する直前の微小開度で前記爪が前記環状溝へ係合することにより前記バイスターバルブを一時的に移動停止又は移動速度を係合前よりも遅くした後、前記先端部が前記ワックスエレメントを覆うホルダーカラーへ当接することにより前記爪を前記環状溝から係合離脱させ、前記バイスターバルブを移動させることを特徴とする請求項1記載のバイスター装置。
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