JP3723249B2 - 半導体レーザ装置およびその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はステム上に半導体レーザ素子がマウントされ、その周囲を透過窓を有するキャップで覆われた半導体レーザ装置およびその製法に関する。さらに詳しくは、半導体レーザ素子の発光面から凸レンズなどの光学素子までの光学的距離を一定にすることができる半導体レーザ装置およびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ピックアップや光通信などに用いられる半導体レーザ(以下、LDという)装置は、たとえば図4(a)、(b)にキャップを除去した状態の平面説明図およびそのA−A線断面説明図がそれぞれ示されるように、ステム21のマウント部21aに、サブマウント22bにチップ22aが固着され、LDチップ22aとサブマウント22b間でワイヤボンディングされたLD素子22をメタル半田23などにより固着し、各リード25、26とLD素子22間をワイヤボンディングし、その表面全体をレーザ光28の透過窓27aを有するキャップ27で被覆し、外気による信頼性の低下を防止するように構成されている。なお、リード24にはLDチップ22aの一方の電極がサブマウント22bを介してボンディングされている。
【0003】
この種のLD装置はステム面Sを基準として光ピックアップやレーザ通信システムなどに取りつけられる。このLD装置の前面には凸レンズなどの図示しない光学素子が設けられ、その焦点位置に光ディスクの表面や、光ファイバの中心が位置するように、図示しない光学素子やLD装置の取付面が設定されている。そこで、LDチップ22aの発光面Lと図示しない光学素子とのあいだの距離が異なると焦点位置が変わり、光ディスクの表面や光ファイバの中心部に集光しなくなる。そのため、LD装置としての基準面SとLDチップの発光面Lとの距離Zが非常に重要な寸法となり、一般的にセットメーカ側の調整代である±80μm以下の公差内に納めなければならない。しかもこの公差内に入っていてもさらにそのバラツキが小さい程好ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、この種のLD装置を製造するばあい、ステムの表面である基準面SとLDチップ22aの発光面Lとの距離Zが非常に正確な寸法になるように組立てられることが要求されている。しかし、ステム21のマウント部21aとLD素子22との固着はインジウムなどのメタル半田23により固着されるため、約200℃程度の高温状態でマウントされる。そのため、熱膨張差などの影響により正確な寸法を出しにくい。しかもLD素子22をダイボンディングする際LD素子22をコレットで保持して所定の位置にセッティングするため、カメラなどによりLDチップ22aの発光面Lを観察することもできず、寸法を測定しながら位置合わせをすることもできない。さらにメタル半田23の硬化時にLD素子22が動き易く、正確なZ寸法の位置出しをすることができず、±60μm程度以下のばらつきに抑えることができないという問題がある。
【0005】
一方、たとえば特開平6−302912号公報には図5に示されるように、ステム21に設けられた貫通孔21bにLD素子22がマウントされた金属製ヒートシンク28を挿入して固着する構造が開示されている。この構成によれば、あらかじめLD素子22が固着された金属製ヒートシンク28をステム21と固定すればよいため、LD素子22の周囲にコレットなどはなく発光面とステムの基準面Sを測定しながら両者を固着することが可能である。しかし縦方向の寸法調整は困難であるとともに、この固着を溶接などで行うと貫通孔21bと金属製ヒートシンク28との隙間を完全に埋めることができず気密シールをすることができない。また、ロウ材などの接着剤で固定しようとすると加熱しなければならず、寸法を測定しながら固定することができない。その結果気密シールがえられて基準面から発光面までの光学的距離を一定にすることができるLD装置がえられないという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題を解決し、半導体レーザ素子の発光面から凸レンズなどの光学素子までの光学的距離を一定にすることができ、かつ、LDチップをステムとキャップにより気密にシールすることができるLD装置およびその製法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のLD装置は、ステム上に半導体レーザ素子がマウントされ、円筒状のキャップが該ステムに溶接されることにより前記半導体レーザ素子が気密シールされながら、前記ステムの面と直角方向に前記半導体レーザ素子からの光を放射する半導体レーザ装置であって、
前記ステムが第1のステムと第2のステムとからなり、第1のステムに前記半導体レーザ素子がマウントされ、第2のステムに前記半導体レーザ素子からの光を前記ステムの面と直角方向に反射させる反射面が設けられ、前記第1のステムおよび第2のステムの一方のステムに貫通孔が設けられ、他方のステムが該貫通孔に挿入され、該他方のステムの底面に設けられた鍔部により前記第1のステムおよび第2のステムが気密に固着されている。
【0009】
前記第1のステムと第2のステムとのあいだに、該第1のステムに設けられた前記半導体レーザ素子の発光面と該第2のステムに設けられた前記反射面との距離を調整することができる間隙が設けられていることが、LD素子が設けられた第1のステムを横方向に移動することにより、ステムの基準面とLDチップの発光面との間の光学的距離を寸法出しすることができるため好ましい。
【0010】
本発明のLD装置の製法は、(a)第1のステムに半導体レーザ素子のダイボンディングおよびワイヤボンディングをし、
(b)前記半導体レーザ素子から放射されるレーザ光をステムの面と直角方向に反射させる反射面と、前記第1のステムを余裕をもって挿入し得る貫通孔とを有する第2のステムを該反射面と前記半導体レーザ素子の発光面とが対向するように前記第1のステムを前記貫通孔に挿入して並置し、
(c)前記発光面と前記反射面との距離が一定になるように第1のステムと第2のステムとの間隔を調整してから該第1のステムの底面に設けられた鍔部を前記第2のステムに気密に溶接することにより両ステムを相互に固着し、
(d)前記半導体レーザ素子を被覆するように円筒状のキャップを前記第2のステムに溶接することにより、前記半導体レーザ素子を気密にシールする
ことを特徴とする。
【0011】
前記発光面の位置をカメラで認識し、前記発光面と前記反射面とのあいだの距離を一定に調整することにより、または前記半導体レーザ素子を発光させ、前記反射面で反射するレーザ光のビーム径および/またはビーム形状をカメラで認識しながら前記発光面と前記反射面とのあいだの距離を一定に調整することにより、ステムの基準面とLDチップの発光面とのあいだの光学的距離を一定にすることができ、セットに組み込んだとき対象物に精度よく焦点を合わせることができる。
【0012】
【作用】
本発明のLD装置は、LDチップを固着する第1のステムとLDチップから放射されるレーザ光をステム面と直角方向に反射する反射面が設けられた第2のステムとに分割された2つのステムが固着されることにより形成されている。そのため、LDチップをマウントするばあい、ステム面と平行方向にレーザ光を放射する向きにマウントすることができるとともに、ステムの基準面とLDチップの発光面との距離である縦方向のZ寸法をLDチップがマウントされた第1のステムを横方向に調整することにより前述の縦方向のZ寸法と等価な光学的距離として正確に調整することができる。
【0013】
本発明のLD装置の製法によれば、LDチップの発光面とステムの基準面とのあいだの距離を第2のステムの前記反射面と第1のステムのLDチップの発光面とのあいだの距離を調整することにより、光学的距離として規定される距離と等しくなるように正確に位置合わせをすることができる。そのため、横方向の寸法調整をすることにより、縦方向の必要とされるZ寸法を容易に正確にうることができる。
【0014】
【実施例】
つぎに、図面を参照しながら本発明のLD装置およびその製法について説明する。
【0015】
図1は本発明のLD装置の一実施例を示す説明図で、(a)はキャップを取り除いた状態の平面説明図、(b)および(c)はそれぞれ図1(a)のB−B線およびC−C線の断面説明図、(d)は底面説明図、図2は第1のステムと第2のステムとの溶接をする際の説明図、図3は第1のステムと第2のステムの溶接の他の実施例の説明図である。
【0016】
図1(a)〜(d)において、1は冷間圧延鋼板(SPCC)などからなる第1のステムで、一体に形成されたリード6およびガラスなどの絶縁材料9で気密シールされたリード7、8を有するとともに、その底部には鍔部1aを有している。第1のステム1の上面にはLD素子3がボンディングされ、リード7、8とワイヤ10により接続されている。LD素子3はシリコン基板などからなるサブマウント3b上にLDチップ3aがボンディングされ、LDチップ3aとサブマウントとのあいだはワイヤ3cにより接続されている。
【0017】
2は第1のステム1と同じ材料で形成された第2のステムで、LDチップ3aの発光面Lから照射されるレーザビームをステムの基準面Sと直角方向に反射させる傾斜面2aが形成されるとともに、その傾斜面2aに反射板4が設けられ、反射面Rが形成されている。第1のステム1は第2のステム2に設けられた貫通孔2bに挿入され、第1のステム1の底面に設けられた鍔部1aが第2のステム2の底面に突き当てられることにより、第1のステム1と第2のステム2の上面は一定の関係に保たれている。第1のステム1を挿入するため設けられられた第2のステムの貫通孔2bは第1のステム1の外周より大きく形成され、水平方向(ステムの基準面と平行方向)の位置調整をすることができるようにされ、位置調整後第1のステム1の鍔部1aの外周Wを、たとえばYAG溶接により溶接することにより固着されている。この鍔部1aと第2のステム2との溶接部は密着した状態のところで溶接されているため、周囲全周を溶接することにより気密シールをすることができる。このステムの上面側には反射面Rで反射されたレーザ光を透過させる透過窓5aを有するキャップ5が抵抗溶接で気密シールされ、LDチップ3aが完全に外気から遮断され保護されている。
【0018】
本発明のLD装置は、ステムが第1のステム1と第2のステム2とに分割され、第1のステム1にLD素子3がほぼステムの基準面Sと平行方向に光を照射するように設けられ、第2のステム2に設けられた反射面Rにより基準面Sと直角方向に反射される構造とし、第1のステム1と第2のステム2とのあいだにLD素子3の発光面Lと反射面Rとの距離を調整することができる調整代が設けられ、調整後に第1のステム1と第2のステム2とが固着されていることに特徴がある。すなわち、第1のステム1の横方向の位置調整をすることにより、LD素子3の発光面LとLD装置の前方に配設される図示されていない凸レンズなどとの距離を一定とするため要求される基準面Sと発光面Lとの光学的距離を一定にしている。そのため、カメラなどでLD素子3の発光面Lの位置を観察しながら位置調整をし、位置調整がされた状態で第1のステム1と第2のステム2とを固着することができる。なお、LD素子3から放射するレーザ光の方向は基準面Sと平行方向でなくても、要は反射面Rによる反射後に基準面Sと直角方向に放射されればよい。
【0019】
つぎに、本発明のLD装置の製法について説明する。
【0020】
まず、サブマウント3bにLDチップ3aを固着しワイヤボンディングしたLD素子3を第1のステム1上にインジウムなどのメタル半田によりマウントし、各リード7、8とワイヤボンディングをする。
【0021】
つぎに、図2(a)に示されるように、反射板4が傾斜面2aに設けられた第2のステム2の貫通孔2bにLD素子3がマウントされた第1のステム1を挿入し、調整コレット11により第1のステム1をくわえた状態で第1のステム1の底面の鍔部1aを第2のステム2の底面に突きあてる。
【0022】
つぎに、あらかじめ第2のステム2の反射面Rの特定場所を基準位置とした座標系を有するカメラ12によりLD素子3の発光面Lを観測しながら調整コレット11を図2のZ調整の方向に移動させ反射面Rの特定場所と発光面Lとの距離が一定になるように位置調整をする。正確な位置調整がえられた状態で調整コレット11を固定し、鍔部1aの外周を、たとえばYAGレーザ光Yにより溶接固着する。そののち調整コレット11を除去し、全周にYAG溶接を施すことにより、第1のステム1と第2のステム2とが気密シールされる。YAG溶接された溶接部の状態は、図2(c)の斜線部に示されるように、第1のステム1および第2のステム2の両方に喰い込む形で溶接されるため、全周にこの溶接を行うことにより気密シールがえられる。すなわち、鍔部1aを第2のステム2に突き当てて溶接するため、寸法調整のための空隙部とは関係ない密着部で溶接をすることができるため気密シールをうることができる。
【0023】
発光面Lと反射面Rの特定位置との寸法調整を前述の例では発光面Lの位置をカメラで認識しながら行ったが、LD素子3側から反射面Rに照射されて反射することにより形成されるビームのスポット径を観測することによっても位置調整をすることができる。すなわち、LDチップ3aから照射されるレーザビームは遠くなるにつれて広がって大きくなったり、変形するため、ビーム径が一定の大きさや形状になるように調整することにより、発光面Lと反射面Rとのあいだの一定の距離がえられる。
【0024】
図3は第1のステム1と第2のステム2との固着方法の他の実施例を示す説明図である。この例ではYAGレーザ溶接ではなく、抵抗溶接を用いた例である。そのため、電流を一部に集中させるため、第1のステムの鍔部1aの第2のステム2の底面との接触側に溶接用リブ1bが設けられ、前述と同様に位置調整がされたのち、図3(a)に示されるように、上部電極13aと下部電極13bとで挟みつけて電流を流すことにより加熱されて周囲全周が同時に一度で溶着される。なお、図3(b)は第1のステム1の鍔部に設けられた溶接用リブ1bの拡大説明図である。他の製造工程は、図1の説明と同様であり、位置調整の方法なども同様に行える。
【0025】
【発明の効果】
本発明の装置およびその製法によればステム準面とのあいだで位置調整をしにくいLD素子の位置を該LD素子が設けられた第1のステムを横方向に移動させて調整しているため、非常に位置合わせ作業が容易であるとともに正確に位置合わせをすることができる。そのため、セットメーカ側での位置調整がほとんど不要となり、さらに正確な組立が短時間で行える。その結果、高性能の電子機器が安価にえられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のLD装置の一実施例の説明図である。
【図2】図1のLD装置の溶接工程の説明図である。
【図3】第1のステムと第2のステムを固着する他の例の説明図である。
【図4】従来のLD装置の一例の説明図である。
【図5】従来のLD装置の他の例の説明図である。
【符号の説明】
1 第1のステム
1a 鍔部
2 第2のステム
3 LD素子
3a LDチップ
4 反射板

Claims (5)

  1. ステム上に半導体レーザ素子がマウントされ、円筒状のキャップが該ステムに溶接されることにより前記半導体レーザ素子が気密シールされながら、前記ステムの面と直角方向に前記半導体レーザ素子からの光を放射する半導体レーザ装置であって、
    前記ステムが第1のステムと第2のステムとからなり、第1のステムに前記半導体レーザ素子がマウントされ、第2のステムに前記半導体レーザ素子からの光を前記ステムの面と直角方向に反射させる反射面が設けられ、前記第1のステムおよび第2のステムの一方のステムに貫通孔が設けられ、他方のステムが該貫通孔に挿入され、該他方のステムの底面に設けられた鍔部により前記第1のステムおよび第2のステムが気密に固着されてなる半導体レーザ装置。
  2. 前記第1のステムと第2のステムとのあいだに、該第1のステムに設けられた前記半導体レーザ素子の発光面と該第2のステムに設けられた前記反射面との距離を調整することができる間隙が設けられてなる請求項記載の半導体レーザ装置。
  3. (a)第1のステムに半導体レーザ素子のダイボンディングおよびワイヤボンディングをし、
    (b)前記半導体レーザ素子から放射されるレーザ光をステムの面と直角方向に反射させる反射面と、前記第1のステムを余裕をもって挿入し得る貫通孔とを有する第2のステムを該反射面と前記半導体レーザ素子の発光面とが対向するように前記第1のステムを前記貫通孔に挿入して並置し、
    (c)前記発光面と前記反射面との距離が一定になるように第1のステムと第2のステムとの間隔を調整してから該第1のステムの底面に設けられた鍔部を前記第2のステムに気密に溶接することにより両ステムを相互に固着し、
    (d)前記半導体レーザ素子を被覆するように円筒状のキャップを前記第2のステムに溶接することにより、前記半導体レーザ素子を気密にシールする
    半導体レーザ装置の製法。
  4. 前記発光面の位置をカメラで認識し、前記発光面と前記反射面とのあいだの距離を一定に調整する請求項記載の半導体レーザ装置の製法。
  5. 前記半導体レーザ素子を発光させ、前記反射面で反射するレーザ光のビーム径および/またはビーム形状をカメラで認識しながら前記発光面と前記反射面とのあいだの距離を一定に調整する請求項記載の半導体レーザ装置の製法。
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