JP3722419B2 - Au導体ペースト及びガラスセラミック回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆる拘束焼成法で焼成したガラスセラミック基板の表面にパッド等のAu表層導体を印刷焼成する際に用いるAu導体ペースト及びガラスセラミック回路基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガラスセラミック基板(低温焼成セラミック基板)を焼成する際に、基板の面方向の焼成収縮を小さくして基板寸法精度を向上させる焼成法として、拘束焼成法が開発されている。この拘束焼成法では、焼成前のガラスセラミック基板の両面に、800〜1000℃では焼結しない拘束焼成用アルミナグリーンシートを圧着し、この状態で、該ガラスセラミック基板を加圧しながら(又は加圧しないで)、800〜1000℃で焼成した後、該ガラスセラミック基板の両面から拘束焼成用アルミナグリーンシートの残存物を研磨して取り除いてガラスセラミック基板を製造するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この拘束焼成法では、焼成後にガラスセラミック基板の表面から拘束焼成用アルミナグリーンシートの残存物を研磨して取り除く工程で、基板表面のガラス成分までも取り除かれてしまうため、基板表面のガラス成分が通常焼成基板よりも少なくなる。このため、拘束焼成法で焼成したガラスセラミック基板の表面にパッド等のAu表層導体を印刷焼成する際に用いるAu導体ペーストは、ガラスフリットをある程度添加しないと、十分なメタライズ強度(Au表層導体接合強度)が得られない。
【0004】
このため、従来のAu導体ペーストは、ガラスフリットをある程度添加するようにしているが、ガラスフリットを添加すると、焼成時にAu表層導体の表面にガラス成分が多く析出して、ワイヤボンディング性が悪くなるという欠点がある。従って、従来のAu導体ペーストでは、メタライズ強度とワイヤボンディング性を両立させることは困難であった。このため、同一のガラスセラミック基板に、ワイヤボンディング性が重視される線径の細いAuワイヤ(線径=20〜35μm)と、メタライズ強度が重視される線径の太いAuワイヤ(線径=50〜100μm)とを混在して使用する場合は、ガラスフリットの添加量の異なる2種類のAu導体ペーストを用いて、Au表層導体の印刷を2回行う必要があり、生産工数が増えて、生産コストが高くなるという欠点があった。
【0005】
また、従来のAu導体ペーストは、Auの焼結が早く進みすぎる傾向がある。その結果、焼結中に、Au表層導体の表面のAu粒界の微小空隙が比較的早期に塞がれてしまい、Au表層導体の下層部から発生するガスを放出できなくなり、そのガスの圧力によってAu表層導体の表面に膨れや発泡、ピンホール等の外観上の欠陥が生じやすく、上述したガラス成分の析出と相俟ってワイヤボンディング性を悪化させる原因となっていた。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、拘束焼成したガラスセラミック基板の表面に、メタライズ強度、ワイヤボンディング性及び外観の良好なAu表層導体を形成することができるAu導体ペースト及びガラスセラミック回路基板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のAu導体ペーストは、拘束焼成法で焼成したガラスセラミック基板の表面にAu表層導体を印刷焼成する際に用いるAu導体ペーストであり、該Au導体ペーストは、Au粉末:100重量部に対してRh:0.01〜0.2重量部とBi2 O3 :0.3〜8重量部を添加したものであり、ガラスフリットが全く添加されていないところに特徴がある。
【0008】
拘束焼成法では、焼成後にガラスセラミック基板の表面から拘束焼成用アルミナグリーンシートの残存物を研磨して取り除く工程で、基板表面のガラス成分までも取り除かれてしまうため、基板表面のガラス成分が通常焼成基板よりも少なくなる。このため、拘束焼成法で焼成したガラスセラミック基板に用いるAu導体ペーストは、ガラスフリットをある程度添加しないと、必要なメタライズ強度が得られないと考えられていた。
【0009】
しかし、本発明者らの試験結果によれば、Au粉末:100重量部に対して、Rh:0.01〜0.2重量部とBi2 O3 :0.3〜8重量部を添加すれば、ガラスフリットを添加しなくても、必要なメタライズ強度を確保できることが判明した。
【0010】
拘束焼成したガラスセラミック基板は、基板表面のガラス成分が研磨されて取り除かれるが、研磨後も、基板表面に多少のガラス成分が残るため、アルミナ基板と比較すれば、基板表面のガラス成分が多い。従って、Au導体ペーストにメタライズ強度を向上させる効果のあるRhとBi2 O3 を適量添加すれば、ガラスフリットを添加しなくても、基板表面のガラス成分とRh、Bi2 O3 の添加とによって必要なメタライズ強度を確保できる。
【0011】
しかも、本発明のAu導体ペーストは、ガラスフリットが全く添加されていないため、後述するRhによるガラス析出抑制効果と相俟って、Au表層導体の表面へのガラス成分の析出が効果的に抑えられ、良好なワイヤボンディング性も確保できる。
【0012】
更に、Au導体ペーストに添加したRhがAuの焼結を抑制する焼結抑制剤として働き、焼結中に、Au表層導体の表面にAu粒界の微小空隙を適度に残して下層部から発生するガスを放出する。これにより、Au表層導体の表面に膨れや発泡、ピンホール等の外観上の欠陥が生じることが防止され、均質なAu膜が得られる。また、Rhは、Au粒子成長に伴ってAu粒界に沿って生じるガラス成分の析出を抑える役割も果たし、上述した均質なAu膜が得られることと相俟って、ワイヤボンディング性が向上する。更に、Rhは、Au表層導体の焼結収縮力を緩和する働きをし、それによって、Au表層導体とガラスセラミック基板との接合に関与するガラス成分に対するストレスを軽減してメタライズ強度を向上させる役割も果たす。尚、Au導体ペーストに添加するRhの形態は、レジネート、金属粉末のいずれであっても良い。
【0013】
また、本発明のAu導体ペーストはAu粉末:100重量部に対してCu2 Oを0〜0.5重量部添加するようにしても良い。Cu2 Oもメタライズ強度を向上させる効果があるため、適量のCu2 Oの添加によってメタライズ強度を更に向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。本実施形態では、拘束焼成法で焼成したガラスセラミック基板11の表面にAu導体ペーストでパッド等のAu表層導体12を形成する。
【0015】
ガラスセラミック基板11は単層基板でも良いが、グリーンシート積層法により複数枚のグリーンシートを積層した多層基板でも良い。ガラスセラミック基板11の材料としては、CaO−SiO2 −Al2 O3 −B2 O3 系ガラス:50〜65重量%(好ましくは60重量%)とアルミナ:50〜35重量%(好ましくは40重量%)との混合物を用いる。この他、MgO−SiO2 −Al2 O3 −B2 O3 系ガラスとアルミナ粉末との混合物、SiO2 −B2 O3 系ガラスとアルミナとの混合物、PbO−SiO2 −B2 O3 系ガラスとアルミナとの混合物、コージェライト系結晶化ガラス等の800〜1000℃で焼成できるガラスセラミック材料を用いても良い。
【0016】
ガラスセラミック基板11が多層基板の場合には、各層のグリーンシートを積層する前に、各層のグリーンシートのビアホールに、Ag、Ag/Pd、Au、Ag/Pt、Cu等の低融点金属の導体ペーストを充填し、最上層を除く各層のグリーンシートに同じ低融点金属の導体ペーストを使用して内層導体パターンをスクリーン印刷する。この印刷工程後に、各層のグリーンシートを積層して加熱圧着して一体化し、生基板11(焼成前のガラスセラミック基板)を作製する。
【0017】
生基板11の作製後、生基板11の両面に、800〜1000℃では焼結しないアルミナグリーンシート等の拘束焼成用グリーンシート13を圧着する。尚、生基板11が多層基板の場合は、複数枚のグリーンシートを積層圧着して生基板11を作製する工程で、同時に拘束焼成用グリーンシート13を生基板11の上下両面に積層圧着するようにしても良い。
【0018】
基板焼成工程では、拘束焼成用グリーンシート13が圧着された生基板11を平行平板14間に挟み込んで20〜200N/cm2 の圧力で加圧しながら、ガラスセラミック基板11の焼結温度である800〜1000℃(好ましくは900℃)で焼成する。尚、生基板11を加圧せずに焼成しても良く、この場合でも、ガラスセラミック基板11の両面に圧着された拘束焼成用グリーンシート13によって該基板11の焼成収縮が抑制される。
【0019】
基板焼成中に、生基板11両面に圧着された拘束焼成用グリーンシート13のセラミック(アルミナ等)は、1600℃前後に加熱しないと焼結しないので、800〜1000℃で焼成すれば、拘束焼成用グリーンシート13は未焼結のまま残される。但し、焼成の過程で、拘束焼成用グリーンシート13中の溶剤や樹脂が飛散してセラミック粉体として残る。
【0020】
基板焼成後、ガラスセラミック基板11両面に付着した拘束焼成用グリーンシート11の残存物(セラミック粉体)を適宜の研磨法、例えば湿式ブラスト(ウォータジェット)、バフ研磨等により除去する。この研磨工程で、ガラスセラミック基板11の表面のガラス成分までも取り除かれてしまうため、基板表面のガラス成分が通常焼成法で焼成したガラスセラミック基板(通常焼成基板)よりも少なくなる。
【0021】
研磨工程後、下記の表1、表2の組成のAu導体ペーストを用いて、ガラスセラミック基板11の表面にAu表層導体12をスクリーン印刷する。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
本実施形態で使用するAu導体ペーストは、Au粉末:100重量部に対してRh:0.01〜0.2重量部(より好ましくは0.01〜0.1重量部)、 Bi2 O3 :0.3〜8重量部(より好ましくは5重量部以下)、Cu2 O:0〜0.5重量部が添加され、ガラスフリットは添加されていない。ここで、Rhは、レジネート、金属粉末等のいずれの形態で添加しても良く、要は、Rhのメタル分が0.01〜0.2重量部であれば良い。Au導体ペーストに配合する樹脂は、例えば、エチルセルロース、アクリル系、ブチラール系等のいずれかの樹脂を用いれば良く、また、溶剤は、例えば、ターペノール、BCA、エステルアルコール系等のいずれかを用いれば良い。
【0025】
このAu導体ペーストを用いて、ガラスセラミック基板11の表面にAu表層導体12をスクリーン印刷した後、このAu表層導体12を800〜1000℃(好ましくは850〜900℃)で焼成する。
【0026】
この焼成中に、Au導体ペーストに添加したRhがAuの焼結を抑制する焼結抑制剤として働き、焼結中に、Au表層導体12の表面にAu粒界の微小空隙を適度に残して、下層部から発生するガスを放出する。これにより、Au表層導体12の表面に膨れや発泡、ピンホール等の外観上の欠陥が生じることが防止され、均質なAu膜が形成される。しかも、Rhは、Au粒子成長に伴ってAu粒界に沿って生じるガラス成分の析出を抑える役割も果たす。更に、Rhは、Au表層導体12の焼結収縮力を緩和する働きをし、それによって、Au表層導体12とガラスセラミック基板11との接合に関与するガラス成分に対するストレスを軽減してAu表層導体12の接合強度(メタライズ強度)を向上させる役割も果たす。
【0027】
本実施形態のAu導体ペーストには、ガラスフリットが全く添加されていないが、従来は、ガラスフリットを添加しないと、Au表層導体12とガラスセラミック基板11との接着剤となるガラス成分が不足して必要なメタライズ強度を確保できないと考えられていた。この考え方は、アルミナ基板に対しては正しいが、拘束焼成したガラスセラミック基板11には正しくない。
【0028】
つまり、アルミナ基板は、基板表面にガラス成分が存在しないため、Au導体ペーストのガラスフリットの添加量をある程度多くしないと、Au表層導体の接合界面のガラス成分が不足し、必要なメタライズ強度を得ることができない。
【0029】
これに対し、研磨工程後の拘束焼成基板11の表面のガラス成分は、研磨される分だけ通常焼成基板よりも少なくなるが、アルミナ基板よりも多い。従って、Au導体ペーストにメタライズ強度を向上させる効果のあるRhとBi2 O3 を適量添加すれば、ガラスフリットを添加しなくても、基板表面に存在するガラス成分とRh、Bi2 O3 の添加とによって必要なメタライズ強度を確保することができる。更に、Cu2 Oの添加もメタライズ強度を向上させる役割を果たす。
【0030】
更に、本実施形態のAu導体ペーストは、ガラスフリットが全く添加されていないため、前述したRhによるガラス析出抑制効果と相俟って、Au表層導体12の表面へのガラス成分の析出が効果的に抑えられ、しかも、Rhによる焼結抑制効果によって均質なAu膜が形成されるため、良好なワイヤボンディング性を確保できる。
【0031】
本発明者らは、拘束焼成基板11のAu表層導体12に用いるAu導体ペーストの適正な組成を考察する試験を行ったので、その試験結果について表3〜表8を用いて説明する。
【0032】
【表3】
【0033】
表3に示す実施例1〜4のAu導体ペーストは、固形分の組成を前記表2の範囲(適正とされる範囲)内で変えたものであり、比較例1,2のAu導体ペーストは、Rhの添加量が0で、ガラスフリットを添加した例であり、比較例3,4のAu導体ペーストは、ガラスフリットとBi2 O3 の両方の添加量が0で、Rhを添加した例であり、比較例5のAu導体ペーストは、ガラスフリット、Rh、Bi2 O3 を全て添加した例である。
【0034】
この試験では、次のような判定条件で、Au表層導体の特性(30μmW/B性、60μmW/B性)を評価した。
【0035】
【表4】
【0036】
表4は、30μmW/B性の判定基準を示している。この30μmW/B性の判定では、拘束焼成基板表面に形成したAu表層導体に、線径30μmのAuワイヤをボンディングして、そのワイヤボンディング(W/B)の不良率を測定する。W/B不良率が0.03%以下であれば、優(◎)の評価となり、0.03〜0.1%のW/B不良率であれば、良(○)の評価となり、0.1%以上のW/B不良率であれば、不可(×)の評価となる。W/B不良率を低くするためのAu表層導体の特性は、Au表層導体の表面が清浄であること(ガラス成分や無機添加物のAu表面への析出が無いか少ないこと)、Au膜が均質であること(ピンホール、膨れ、クラック等がないこと)である。この30μmW/B性の評価が優(◎)又は良(○)であれば、要求されるワイヤボンディング性を確保できることを意味する。
【0037】
【表5】
【0038】
表5は、60μmW/B性の判定基準を示している。この60μmW/B性の判定では、拘束焼成基板表面に形成したAu表層導体に、線径60μmのAuワイヤをボンディングして、このAuワイヤを所定の引張荷重で引っ張った時に、Au膜剥がれが発生するか否かで、異常無し(○)か、Au膜剥がれ発生(×)かを評価する。この60μmW/B性の評価が○であれば、要求されるAu膜密着強度(メタライズ強度)を確保できることを意味する。
【0039】
前記表3に示す実施例1〜4のAu導体ペーストは、ガラスフリットの添加量がいずれも0であり、Rhの添加量が0.02〜0.1重量部、Bi2 O3 の添加量が0.3〜6重量部、Cu2 Oの添加量が0又は0.3重量部である。
【0040】
実施例1〜4のAu導体ペーストは、ガラスフリットの添加量がいずれも0であるが、ガラスセラミック基板表面に存在するガラス成分とRh、Bi2 O3 の添加とによって必要なAu膜密着強度(メタライズ強度)を確保できる。従って、60μmW/B性の評価試験でも、全ての実施例1〜4でAu膜剥がれが発生せず、異常無し(○)の評価が得られ、要求されるAu膜密着強度を確保できることが確認された。
【0041】
しかも、実施例1〜4のAu導体ペーストは、ガラスフリットの添加量がいずれも0であるため、Rhによるガラス析出抑制効果と相俟って、Au表層導体の表面へのガラス成分の析出が効果的に抑えられる。更に、実施例1〜4のAu導体ペーストに添加したRhがAuの焼結を抑制する焼結抑制剤として働き、焼結中に、Au表層導体の表面にAu粒界の微小空隙を適度に残して、下層部から発生するガスを放出する。これにより、Au表層導体に膨れや発泡、ピンホール等の外観上の欠陥が生じることが防止され、Au表層導体の表面が均質となる。これにより、実施例1〜4では、Au表層導体の外観検査の結果が優(◎)又は良(○)となると共に、Au表層導体にAuワイヤをボンディングしやすくなり、30μmW/B性の評価試験で、W/B不良率が0.03%以下の優(◎)の評価、又は0.03〜0.1%の良(○)の評価が得られ、要求されるワイヤボンディング性を確保できることが確認された。
【0042】
一方、比較例1,2のAu導体ペーストは、Au焼結抑制効果やガラス析出抑制効果のあるRhの添加量が0で、ガラスフリットが添加されているため、Au表層導体の表面に発泡、ピンホール、クラック等の外観上の欠陥が生じたり、Au表層導体の表面に多くのガラス成分が析出した。このため、30μmW/B性の評価試験で、W/B不良率が0.1%以上の不可(×)の評価となった。
【0043】
また、比較例3,4のAu導体ペーストは、ガラスフリットとBi2 O3 の両方の添加量が0であるため、Au膜密着強度が不足したり、Au表層導体の表面にガラス成分等が析出し、30μmW/B性と60μmW/B性の両方の評価が不可(×)の評価となった。
【0044】
また、比較例5のAu導体ペーストは、RhとBi2 O3 を添加しているが、更にガラスフリットも添加しているため、Au表層導体の表面に多くのガラス成分が析出し、30μmW/B性と60μmW/B性の両方の評価が不可(×)の評価となった。
【0045】
【表6】
【0046】
この表6は、Rhの添加量の適正範囲を評価するため、Bi2 O3 :1重量部(ガラスフリットとCu2 Oは共に0)の条件で、Rhの添加量のみを変えて、30μmW/B性と60μmW/B性を評価したものである。Rhの添加量が0の場合は、Au表層導体の表面に膨れや発泡、ピンホール、クラック等が発生して、30μmW/B性と60μmW/B性の両方の評価が不可(×)の評価となった。また、Rhの添加量が0.3重量部の場合は、Rhの添加によるAu焼結抑制効果が過剰に現れて、Au膜密着力が不足し、30μmW/B性と60μmW/B性の両方の評価が不可(×)となった。
【0047】
これに対し、Rhの添加量が0.01〜0.2重量部では、Rhの添加によるAu焼結抑制効果が適度に現れて、30μmW/B性と60μmW/B性の両方の評価が優(◎)又は良(○)であった。この試験結果から、Rhの添加量の適正範囲は0.01〜0.2重量部であることが確認された。
【0048】
【表7】
【0049】
この表7(a),(b)は、Bi2 O3 の添加量の適正範囲を評価するため、Rh:0.05重量部(ガラスフリットとCu2 Oは共に0)の条件で、Bi2 O3 の添加量を変えて、30μmW/B性と60μmW/B性を評価したものであり、表7(a)は900℃で焼成し、表7(b)は850℃で焼成したものである。焼成温度が900℃の場合は、表7(a)に示すように30μmW/B性と60μmW/B性の両方の評価が優(◎)又は良(○)となるBi2 O3 の添加量の範囲は0.3〜2重量部である。また、焼成温度が850℃の場合は、表7(b)に示すように、30μmW/B性と60μmW/B性の両方の評価が優(◎)又は良(○)となるBi2 O3 の添加量の範囲は2〜8重量部である。この試験結果から、焼成温度を850〜900℃の範囲で選択すれば、Bi2 O3 の添加量の適正範囲は、0.3〜8重量部であることが確認された。
【0050】
【表8】
【0051】
この表8は、Cu2 Oの添加量の適正範囲を評価するため、Bi2 O3 :1重量部、Rh:0.05重量部(900℃焼成)の条件で、Cu2 Oの添加量を変えて、30μmW/B性と60μmW/B性を評価したものである。Cu2 Oの添加量が1重量部であると、Cu2 Oの添加量が過剰となって、Au表層導体の表面にCu2 Oが析出して、W/B不良が発生し、30μmW/B性の評価が不可(×)となった。一方、Cu2 Oの添加量が0〜0.5重量部では、Cu2 Oの添加効果が適度に現れて、30μmW/B性と60μmW/B性の両方の評価が優(◎)又は良(○)となった。この試験結果から、Cu2 Oの添加量の適正範囲は0〜0.5重量部であることが確認された。
【0052】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の請求項1,3によれば、拘束焼成法で焼成したガラスセラミック基板の表面にAu表層導体を印刷焼成する際に用いるAu導体ペーストにガラスフリットを添加せず、その代わりに、Rh:0.01〜0.2重量部とBi2 O3 :0.3〜8重量部を添加したので、拘束焼成したガラスセラミック基板の表面に、メタライズ強度(Au膜密着強度)、ワイヤボンディング性及び外観の良好なAu表層導体を形成することができる。このため、同一の拘束焼成基板に、ワイヤボンディング性が重視される線径の細いAuワイヤと、メタライズ強度が重視される線径の太いAuワイヤとを混在して使用する場合でも、同一のAu導体ペーストを用いてパッド等のAu表層導体を形成することができ、生産プロセスを簡略化できて、生産コストを低減することができる。
【0053】
また、請求項2では、Au導体ペーストにCu2 Oを0〜0.5重量部添加するようにしたので、ワイヤボンディング性を低下させることなく、メタライズ強度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の製造工程を説明する図
【符号の説明】
11…ガラスセラミック基板、12…Au表層導体、13…拘束焼成用グリーンシート、14…平行平板。
Claims (3)
- 焼成前のガラスセラミック基板の両面に800〜1000℃では焼結しない拘束焼成用グリーンシートを圧着した状態で、該ガラスセラミック基板を800〜1000℃で焼成した後、該ガラスセラミック基板の両面から前記拘束焼成用グリーンシートの残存物を研磨して取り除き、該ガラスセラミック基板の表面にAu表層導体を印刷焼成する際に用いるAu導体ペーストにおいて、
Au粉末:100重量部に対してRh:0.01〜0.2重量部とBi2 O3 :0.3〜8重量部が添加されていることを特徴とするAu導体ペースト。 - Au粉末:100重量部に対してCu2 O:0〜0.5重量部が添加されていることを特徴とする請求項1に記載のAu導体ペースト。
- 焼成前のガラスセラミック基板の両面に、800〜1000℃では焼結しない拘束焼成用グリーンシートを圧着した状態で、該ガラスセラミック基板を800〜1000℃で焼成した後、該ガラスセラミック基板の両面から前記拘束焼成用グリーンシートの残存物を研磨して取り除き、その後、該ガラスセラミック基板の表面にAu導体ペーストでAu表層導体を印刷して焼成するガラスセラミック回路基板の製造方法において、
前記Au導体ペーストは、Au粉末:100重量部に対してRh:0.01〜0.2重量部とBi2 O3 :0.3〜8重量部が添加されていることを特徴とするガラスセラミック回路基板の製造方法。
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