JP3722082B2 - 駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動装置に関し、特にはXY移動ステージ、カメラの撮影レンズ、オーバヘッドプロジェクタの投影レンズ、双眼鏡のレンズ等の駆動に適した駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、撮影レンズ等が取り付けられた移動部材を棒状の駆動部材に所定の摩擦力を有するように結合させると共に、その駆動部材の一方端に圧電素子を固着して構成されたインパクト型圧電アクチュエータからなる駆動装置が知られている。例えば、図11は、カメラの撮影レンズ位置を調節するための駆動装置の概略構成を示す図である。
【0003】
この図11における駆動装置100は、電気機械変換素子である圧電素子101と、圧電素子101により駆動される棒状の駆動部材102と、駆動部材102に所定の摩擦力で結合された移動部材103と、圧電素子101に駆動電圧を印加する駆動回路104とを備えている。
【0004】
圧電素子101は、駆動回路104から印加される駆動電圧に応じて伸縮するものであり、その伸縮方向における一方端が支持部材105に固着されると共に、その他方端が駆動部材102の軸方向における一方端に固着されたものである。移動部材103は、所定箇所に駆動対象物である撮影レンズLが固着され、駆動部材102上を軸方向に沿って移動可能とされている。
【0005】
駆動回路104は、図12に示すように、波形発生器107とパワーアンプ108とで構成される。波形発生器107は、例えば0〜5Vの矩形波からなる駆動電圧を生成してパワーアンプ108に入力し、パワーアンプ108は、波形発生器107から供給される駆動電圧を例えば0〜10Vの矩形波からなる駆動電圧に増幅して圧電素子101に印加する。
【0006】
このように構成された駆動装置100では、駆動回路104から、例えばデューティ比D(D=B/A)が0.25である図13(a)に示すような矩形波形の駆動電圧が圧電素子101に印加される。この駆動電圧を用いた駆動方法は、インパクト型圧電アクチュエータを構成する圧電素子101に結合された駆動部材102の機械共振特性による振幅伝達特性と位相伝達特性とを利用している。
【0007】
図14(a)は振幅伝達特性を示す図であり、縦軸は駆動部材102の振幅を表し、横軸は駆動部材102の機械共振周波数frに対する駆動周波数fdの比(fd/fr)を表す。図14(b)は位相伝達特性を示す図であり、縦軸は位相を表し、横軸は駆動部材102の機械共振周波数frに対する駆動周波数fdの比(fd/fr)を表す。複数の共振のなかで最も低い機械共振周波数fr1の前後に駆動電圧に含まれる基本波信号の周波数fda(図13(b)参照)と第2高調波の周波数fdb(図13(c)参照)とをfda<fr1<fdbとなるように設定することによって第3高調波の周波数fdc以上の高調波信号成分に対する駆動部材102の機械応答を低下させる。そして、機械共振の単峰特性を利用して基本波信号と第2高調波信号とに対する適当な機械変位の応答を得て、さらに基本波と第2高調波との位相関係を変化させることで最終的に駆動部材102の機械変位が図13(d)に示すような鋸波形状となるように駆動電圧の振幅、デューティ比D、駆動周波数fd、振幅伝達特性及び位相伝達特性を設定することによって所望のインパクト型圧電アクチュエータの機械負荷速度を得ている。
【0008】
また、駆動装置100の動作としては、駆動電圧が圧電素子101に繰り返し印加されると、圧電素子101の伸縮により移動部材103は繰出方向(圧電素子101から離反する方向)である矢印a方向に駆動部材102とともに移動する(図11参照)。すなわち、図13(d)に示す機械変位の緩慢な立ち上がり部Cでは駆動部材102が緩やかに伸長することになるため、移動部材103と駆動部材102との摩擦係数が大きくなり、移動部材103は駆動部材102と共に繰出方向に移動する一方、急峻な立ち下がり部Dでは駆動部材102が急激に縮小することになるため、移動部材103と駆動部材102との摩擦係数が小さくなり、駆動部材102が戻り方向(矢印aとは逆方向)に移動しても移動部材103は駆動部材102上をスリップして略同位置に留まることになる。このため、図13(a)に示すような波形の駆動電圧が圧電素子101に繰り返し印加されると、移動部材103は矢印a方向に間欠的に移動する。
【0009】
また、移動部材103を戻り方向に移動させる場合は、駆動電圧のデューティ比Dを変化させることで図13(d)に示す立ち上がり部Cを急峻な立ち上がりとなるようにし、立ち下り部Dを緩慢な立ち下りとなるようにする。これにより、機械変位の急峻な立ち上がり部Cでは駆動部材102が繰出方向に急激に伸長することになるため、移動部材103と駆動部材102との摩擦係数が小さくなり、移動部材103は駆動部材102上をスリップして略同位置に留まる一方、緩慢な立ち下がり部Dでは駆動部材102が緩やかに縮小することになるため、移動部材103と駆動部材102との摩擦係数が大きくなり、移動部材103は駆動部材102と共に戻り方向(矢印aとは逆方向)に移動することになる。このため、移動部材103は矢印aの逆方向に間欠的に移動することになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の駆動装置において、振幅伝達特性や位相伝達特性はインパクト型圧電アクチュエータの機械設計によって達成される特性であるため、低コスト化及び小型化等の制約で自由に設計できるものではない。また、駆動信号としては、その振幅とデューティ比Dは操作可能であり、基本波と第2高調波との振幅の合成比は変えることができるが、デューティ比Dを変えても位相は同相のままで変わらないため位相関係を操作することは困難である。そのため、インパクト型圧電アクチュエータの機械設計で位相関係を設定する必要があるが、この場合も低コスト化及び小型化等の制約で自由に設計できるものではない。
【0011】
このような問題を解決するために、出願人は、インパクト型圧電アクチュエータを構成する圧電素子101の有する複数の電極に異なる駆動信号を各々加算して印加し、インパクト型圧電アクチュエータを駆動させる出願時点で未公開である駆動方法を提案している(特願2001−357660)。この場合の移動部材103の駆動する速度を制御する駆動方法としては、デューティ比Dが0.5でない駆動信号を用いた第1の駆動方法と周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法とがある。これらの駆動方法において、圧電素子101に印加される複数の駆動電圧を同時に可変させる電圧速度制御を行った場合、第1の駆動方法では振幅が同じ駆動電圧を印加した第2の駆動方法よりも駆動電圧の基本波成分の振幅が大きいので、高い速度が発生するが、不感帯が大きくなり低速時の速度が不安定となるという問題が生じる場合がある。
【0012】
また、第2の駆動方法では、複数の駆動電圧間の位相の調整により最適な駆動部材102の機械変位の波形形状(鋸波形状)が得られるため、第1の駆動方法に比べて不感帯が小さくなり安定した低速度駆動が可能となる。
【0013】
そのため、上記の第1の駆動方法及び第2の駆動方法で移動部材103の位置や速度の制御を行う場合、移動距離が短い微調整時には、通常、低速度駆動を行うが、第1の駆動方法でこの低速度駆動を行った場合、低電圧で駆動するため、動作範囲が不感帯に近づいて速度が不安定になるという問題が生じる場合がある。
【0014】
ここで、不感帯について説明する。図15は、不感帯について説明するための図である。不感帯とは、入力が少ない間は出力が0のままであるという入出力特性における入力の強度のことである。例えば、電圧速度制御方法においては、駆動電圧(入力)が小さい間は機械負荷の速度(出力)が0のままであるという入出力特性における駆動電圧の大きさのこととなる。図15に示すように、出力が立ち上がる部分では、入力値に対する出力値にばらつきが生じて不安定な速度特性となる。この不感帯は、装置や環境等によっても左右され、実験等によって得られる特性である。
【0015】
また、高電圧で駆動する場合、比較的速度の安定性が良好な間引き速度制御方法による低速度駆動が考えられる。しかし、駆動信号を間引くことによって速度を制御する間引き速度制御方法では、速度にばらつきが生じたり、見かけ上の駆動周期が大きくなり、当該駆動周期が可聴帯域に入ると音響雑音が発生するため、静粛さが求められる例えばカメラ等の機器では好ましくないという問題が生じる場合がある。
【0016】
また、移動距離が長い粗調整時には、通常、高速度駆動を行うが、第2の駆動方法では、第1の駆動方法に比べて、最大速度が低いため、目標値に到達するまでに時間がかかり、製品としての仕様を満足することができないという問題が生じる場合がある。
【0017】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、電気機械変換素子に印加される駆動電圧を生成する駆動回路の駆動方法を所望する移動部材の制御速度及び調整状態に応じて切り換えることができる駆動装置を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る駆動装置は、駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、電気機械変換素子の伸縮方向における一方端に固着される支持部材と、電気機械変換素子の伸縮方向における他方端に固着される駆動部材と、駆動部材に所定の摩擦力で係合され、電気機械変換素子を異なる速度で伸縮させることで支持部材と相対移動する移動部材と、駆動電圧を生成する駆動回路と、第1及び第2の駆動方法を含む複数の駆動方法を切り換えることによって駆動回路を制御し、複数の駆動電圧を生成する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1及び第2の駆動方法を含む複数の駆動方法を切り換えることによって、電気機械変換素子に印加される駆動電圧を生成する駆動回路の動作が制御され、複数の駆動電圧が生成されるため、駆動回路の駆動方法を所望する移動部材の制御速度及び調整状態に応じて切り換えることができる。
【0021】
また、制御手段によって、複数の駆動方法のうちのデューティ比Dが0.5でない駆動信号を用いた第1の駆動方法で駆動回路の動作が制御されるため、移動部材を現在位置から目標位置まで高速度で移動させる粗調整時に、デューティ比Dが0.5でない駆動信号を用いた第1の駆動方法を適用することができる。
【0023】
また、制御手段によって、複数の駆動方法のうちの周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法で駆動回路の動作が制御されるため、移動部材を目標位置に低速度で移動させる微調整時に、周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法を適用することができる。
【0024】
制御手段は、移動部材の微調整時に他の駆動方法と比較して不感帯の小さい駆動方法を用い、移動部材の粗調整時に他の駆動方法と比較して高速度を発生させる駆動方法を用いることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、制御手段は、移動部材の微調整時に複数の駆動方法のうちの他の駆動方法と比較して不感帯の小さい駆動方法を用い、移動部材の粗調整時に複数の駆動方法のうちの他の駆動方法と比較して高速度を発生させる駆動方法を用いることで駆動回路を動作させることができる。
【0026】
なお、ここでの粗調整とは移動部材を現在位置から目標位置の一定距離範囲以内まで高速度で移動させる調整状態であり、微調整とはさらに移動部材を低速度で一定距離移動させることによって目標位置に停止させるよう調整する調整状態である。
【0027】
制御手段は、移動部材の粗調整時に第1の駆動方法を用い、移動部材の微調整時に第2の駆動方法を用いることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、制御手段は、移動部材の粗調整時に複数の駆動方法のうちのデューティ比Dが0.5でない駆動信号を用いた第1の駆動方法で駆動回路を動作させることができ、移動部材の微調整時に複数の駆動方法のうちの周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法で駆動回路を動作させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態に係るインパクト型圧電アクチュエータからなる駆動装置の基本構成を概略的に示すブロック図である。この図1において、駆動装置10は、駆動部12と、駆動部12を駆動する駆動回路14と、駆動部12に取り付けられている移動部材30の位置を検出する部材センサ16と、駆動部12に取り付けられている移動部材30の移動可能範囲内の基端に配設された基端センサ18と、駆動部12に取り付けられている移動部材30の移動可能範囲内の先端に配設された先端センサ20と、全体の動作を制御する制御部22とを備えている。
【0030】
図2は、駆動部12の構成例を示す斜視図である。この図2において、駆動部12は、素子固定式構造のものであり、支持部材24と、電気機械変換素子である圧電素子26と、駆動部材28と、移動部材30とから構成されている。
【0031】
支持部材24は、圧電素子26及び駆動部材28を保持するものであり、円柱体の軸方向両端部241,242と略中央に位置する仕切壁243とを残して内部を刳り貫くことにより形成された第1の収容空間244及び第2の収容空間245を有している。この第1の収容空間244には、圧電素子26がその分極方向である伸縮方向を支持部材24の軸方向と一致させた状態で収容されている。また、第2の収容空間245には、駆動部材28と移動部材30の一部とが収容されている。
【0032】
圧電素子26は、例えば、所定の厚みを有する複数枚の圧電基板を各圧電基板間に電極を介して積層することにより構成したものであって、その伸縮方向(積層方向)である長手方向の一方端面が第1の収容空間244の一方端部241側端面に固着されている。支持部材24の他方端部242及び仕切壁243には中心位置に丸孔が穿設されると共に、この両丸孔を貫通して断面円形状の棒状の駆動部材28が第2収容空間245に軸方向に沿って移動可能に収容されている。
【0033】
駆動部材28の第1の収容空間244内に突出した端部は圧電素子26の他方端面に固着され、駆動部材28の第2の収容空間245の外部に突出した端部は板ばね32により所定のばね圧で圧電素子26側に付勢されている。この板ばね32による駆動部材28への付勢は、圧電素子26の伸縮動作に基づく駆動部材28の軸方向変位を安定化させるためである。
【0034】
移動部材30は、駆動部材28の軸方向の両側に取付部301を有する基部302と、両取付部301の間に装着される挟込み部材303とを備えており、基部302が駆動部材28に遊嵌されると共に、挟込み部材303が両取付部301に取り付けられた板ばね304により下方に押圧されて駆動部材28に接触することで移動部材30が所定の摩擦力で駆動部材28に結合され、移動部材30に対してその摩擦力よりも大きな駆動力が作用したときに駆動部材28の軸方向に沿って移動可能とされている。なお、移動部材30には駆動対象物である撮影レンズL(図1)が取り付けられる。
【0035】
図3は、駆動回路14の構成例を示す図である。図3に示す駆動回路14は、ブリッジ回路で構成され、第1の駆動手段である第1の駆動回路141と第2の駆動手段である第2の駆動回路142とから構成される。第1の駆動回路141は、エンハンスメント型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)型FET(Field Effect Transistor)であるスイッチ素子Tr1からなる第1スイッチ回路143、同じくエンハンスメント型のMOS型FETであるスイッチ素子Tr2からなる第2スイッチ回路144、図略の駆動電源からの直流電源電圧V1及び波形発生器145で構成される。第2の駆動回路142は、エンハンスメント型のMOS型FETであるスイッチ素子Tr3からなる第3スイッチ回路146、同じくエンハンスメント型のMOS型FETであるスイッチ素子Tr4からなる第4スイッチ回路147、図略の駆動電源からの直流電源電圧V2及び波形発生器148で構成される。
【0036】
第1の駆動回路141は、図略の駆動電源からの直流電源電圧V1がスイッチ素子Tr1のソース電極に供給され、接地される接続点aとの間に第1スイッチ回路143及び第2スイッチ回路144の直列回路が接続される。第2の駆動回路142は、図略の駆動電源からの直流電源電圧V2がスイッチ素子Tr3のソース電極に供給され、接地される接続点aとの間に第3スイッチ回路146及び第4スイッチ回路147の直列回路が接続される。
【0037】
第1スイッチ回路143を構成するスイッチ素子Tr1及び第3スイッチ回路146を構成するスイッチ素子Tr3はPチャンネルFETであり、第2スイッチ回路144を構成するスイッチ素子Tr2及び第4スイッチ回路147を構成するスイッチ素子Tr4はNチャンネルFETである。PチャンネルFETであるスイッチ素子Tr1,Tr3は駆動制御信号がローレベルのときにオンになり、NチャンネルFETであるスイッチ素子Tr2,Tr4は駆動制御信号がハイレベルのときにオンになる。なお、第1スイッチ回路143及び第2スイッチ回路144の接続点cと、第3スイッチ回路146及び第4スイッチ回路147の接続点dとの間に圧電素子26が接続されてブリッジ回路が構成される。
【0038】
波形発生器145からの第1の駆動信号S aはスイッチ素子Tr1及びスイッチ素子Tr2のゲート電極に接続され、波形発生器148からの第2の駆動信号Sbはスイッチ素子Tr3及びスイッチ素子Tr4のゲート電極に接続される。第1の駆動信号Sa及び第2の駆動信号Sbは、複数の駆動方法に応じて切り換えられる駆動信号である。
【0039】
本実施の形態では、デューティ比Dが0.5以外の駆動信号を用いた第1の駆動方法、周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法を切り換えて駆動回路の動作を制御する。なお、第2の駆動方法における第1の駆動信号Sa及び第2の駆動信号SbはそれぞれSaA,SbAとし、第1の駆動方法における第1の駆動信号Sa及び第2の駆動信号SbはそれぞれSaB,SbBとする。
【0040】
第2の駆動方法の場合、第1の駆動信号SaA及び第2の駆動信号SbAは、周波数比が整数比の駆動信号であり、本実施の形態においてこの整数比は1:2である。第1の駆動信号SaAは、周波数がfd1であり、振幅がV1でデューティ比D1(D1=B1/A1)が0.5の矩形波形である。第2の駆動信号SbAは、周波数がfd2であり、振幅がV2でデューティ比D2(D2=B2/A2)が0.5の矩形波形である。なお、第1の駆動信号SaAのデューティ比D1と第2の駆動信号SbAのデューティ比D2とは、D1+D2=1の関係にある。
【0041】
第1の駆動方法の場合、第1の駆動信号SaB及び第2の駆動信号SbBは、各々同じ周波数fd3であり、第1の駆動信号SaBは振幅がV3でデューティ比D3(D3=B3/A3)が0.75の矩形波形であり、第2の駆動信号SbBは、第1の駆動信号SaBとは逆相の振幅がV4でデューティ比D4(D4=B4/A4)が0.25の矩形波形である。
【0042】
直流電源電圧V1及びV2は、圧電素子26に印加される矩形波駆動電圧の大きさを決める値であり、直流電源電圧V1は第1の駆動信号Saに対応する第1の駆動電圧Vaの振幅、直流電源電圧V2は第2の駆動信号Sbに対応する第2の駆動電圧Vbの振幅を決める速度制御電圧となる。第1の駆動電圧Va及び第2の駆動電圧Vbは第1の駆動信号Sa及び第2の駆動信号Sbとは逆位相の電圧で、第1の駆動電圧Vaは圧電素子26の電極A側から、第2の駆動電圧Vbは圧電素子26の電極B側からそれぞれ印加される。
【0043】
なお、直流電源電圧V1及びV2をV1=V2として電源系統を統一してもよい。この場合、回路構成が簡素化されることとなり、駆動回路の低コスト化及び小型化をさらに実現することができる。
【0044】
図1に戻り、部材センサ16は、移動部材30の移動可能範囲内に配設されたものであり、MRE(Magneto Resistive Effect)素子やPSD(Position Sensitive Device)素子等の適宜のセンサにより構成されている。また、基端センサ18及び先端センサ20は、フォトインタラプタ等の適宜のセンサにより構成されている。これにより、移動部材30の位置が部材センサ16により検出されることで移動部材30の所定位置への移動制御が可能となる一方、移動部材30の位置が基端センサ18及び先端センサ20により検出されることで移動部材30のそれ以上の移動が禁止される。
【0045】
また、制御部22は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、処理プログラム及びデータが記憶されたROM(Read Only Memory)及びデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等から構成されており、部材センサ16、基端センサ18及び先端センサ20から入力される信号に基づいて駆動回路14の動作を制御する。すなわち、制御部22は、第1の駆動回路141において生成される第1の駆動信号Sa及び駆動電源からの直流電源電圧V1と、第2の駆動回路142において生成される第2の駆動信号Sb及び駆動電源からの直流電源電圧V2とを制御し、第2の駆動方法と第1の駆動方法とを切り換えることによって、駆動回路14の動作を制御する。
【0046】
次に、図4〜9を参照して駆動回路14を用いた位相差速度制御方法の説明を行う。図4は、第2の駆動方法における駆動回路14の原理的な動作を説明するためのパルス波形等を示す図である。図4(a)は、波形発生器145から出力される第1の駆動信号SaAを表す矩形波であり、矩形波の振幅はV1であり、デューティ比D1は0.5である。図4(b)は、圧電素子26に印加される第1の駆動電圧VaAを表す矩形波である。図4(c)は圧電素子26に印加される第1の駆動周波数fd1の正弦波電圧VA1を表す波形である。図4(d)は、波形発生器148から出力される第2の駆動信号SbAを表す矩形波であり、矩形波の振幅はV2であり、デューティ比D2は0.5である。また、第1の駆動信号SaAと第2の駆動信号SbAとの周波数の比は1:2であり、デューティ比D1とデューティ比D2との関係はD1+D2=1である。図4(e)は、圧電素子26に印加される第2の駆動電圧VbAを表す矩形波である。図4(f)は圧電素子26に印加される第2の駆動周波数fd2の正弦波電圧VA2を表す波形である。図4(g)は第1の駆動電圧VaAと第2の駆動電圧VbAとの差に相当する駆動電圧VdAを表す図である。第1の駆動電圧VaAが圧電素子26の一方側の電極である電極Aから印加され、第2の駆動電圧VbAが他方側の電極である電極Bから印加される(図3参照)。
【0047】
図5は、第1の駆動方法における駆動回路14の原理的な動作を説明するためのパルス波形等を示す図である。図5(a)は、波形発生器145から出力される第1の駆動信号SaBを表す矩形波であり、矩形波の振幅はV3であり、デューティ比D1は0.25である。図5(b)は、圧電素子26に印加される第1の駆動電圧VaBを表す矩形波である。図5(c)は圧電素子26に印加される第1の駆動周波数fd3の正弦波電圧VB1を表す波形である。図5(d)は、波形発生器148から出力される第2の駆動信号SbBを表す矩形波であり、矩形波の振幅はV4であり、デューティ比D2は0.75である。また、第1の駆動信号SaBのデューティ比D1と第2の駆動信号SbBのデューティ比D2との関係はD1+D2=1である。図5(e)は、圧電素子26に印加される第2の駆動電圧VbBを表す矩形波である。図5(f)は圧電素子26に印加される第2の駆動周波数fd3の正弦波電圧VB2を表す波形である。図5(g)は第1の駆動電圧VaBと第2の駆動電圧VbBとの差に相当する駆動電圧VdBを表す図である。第1の駆動電圧VaBが圧電素子26の一方側の電極である電極Aから印加され、第2の駆動電圧VbBが他方側の電極である電極Bから印加される(図3参照)。
【0048】
図6は、駆動装置10を構成する駆動部材28の機械共振特性を示す特性図である。図6(a)は振幅伝達特性を示す図であり、縦軸は駆動部材28の振幅を表し、横軸は駆動部材28の機械共振周波数frに対する駆動周波数fdの比(fd/fr)を表す。図6(b)は位相伝達特性を示す図であり、縦軸は位相を表し、横軸は駆動部材28の機械共振周波数frに対する駆動周波数fdの比(fd/fr)を表す。なお、共振特性の鋭さを表す量Qの値は、駆動部材28に移動部材30(機械負荷)が実装されている状態での実効Q値で10としている。
【0049】
駆動部材28の機械共振周波数frの最も低い機械共振周波数fr1付近に、駆動周波数fd1及び駆動周波数fd2を各々設定することによって共振特性の有する振幅伝達特性を利用し、第1の駆動電圧Va及び第2の駆動電圧Vbの基本波成分及び高調波成分に対する駆動部材28の機械変位応答を操作することができる。この操作により、第2の駆動方法の場合、圧電素子26に第1の駆動電圧VaA及び第2の駆動電圧VbAの各々の基本波成分電圧である正弦波電圧VA1,VA2を主に印加できる。また、第1の駆動方法の場合、駆動電圧VdBの基本波成分VB1と第2高調波成分VB2とを主に印加することができる。
【0050】
ここで、駆動部材28の機械変位応答を操作する一例を示す。第2の駆動方法の場合、駆動周波数fd1、fd2の設定はfr1を基準にして以下の3種類がある。
fd1<fd2<fr1・・・・▲1▼
fd1<fr1<fd2・・・・▲2▼
fr1<fd1<fd2・・・・▲3▼
【0051】
上記のように、第1の駆動信号Sd1及び第2の駆動信号Sd2の周波数が、電気機械変換素子である圧電素子26の最も低い機械共振周波数fr1に基づいて設定されるため、例えば、第1の駆動信号Sd1の駆動周波数fd1と第2の駆動信号Sd2の駆動周波数fd2とをfd1<fr1<fd2(▲2▼)となるように設定することや、fr1<fd1<fd2(▲3▼)となるように設定することや、fd1<fd2<fr1(▲1▼)となるように設定することができ、設定の自由度が増すこととなる。
【0052】
また、第1の駆動方法の場合、駆動電圧VaB,VbBに含まれる基本成分周波数fd3と第2高調波成分周波数fd4(=2×fd3)との位相関係は圧電素子26の振幅伝達特性と位相伝達特性との両立のため固定であるので、駆動部材28の変位波形を鋸波形状にできるだけ近似させるためには、上記▲2▼に相当するfd3<fr1<fd4の設定が最良となる。
【0053】
なお、支持部材24及び駆動部材28が固着された状態での圧電素子26の機械共振周波数frは、次の式(1)により求めたものである。
【0054】
【数1】
Figure 0003722082
【0055】
上記式(1)におけるfroは圧電素子26の両電極間におけるフリー共振周波数(圧電素子26自体の電極間方向における機械共振周波数)、mpは圧電素子26の質量、mfは駆動部材28の質量をそれぞれ表わしている。なお、支持部材24の質量は、共振系における圧電素子26の機械共振周波数frに関係するが、支持部材24の質量は圧電素子26及び駆動部材28の各質量mp,mfを加算したものに比べて十分大きな値を有しており、機械共振周波数frに与える影響は小さいので演算パラメータとして考慮する必要はない。また、移動部材30は、圧電素子26の共振時には駆動部材28に対して滑りを生じて実質的に共振系の要素として考慮する必要はないので、上記式(1)の演算パラメータとしては含まれていない。
【0056】
図7(a)は、図6(a),(b)のfd1<fr1<fd2(▲2▼)の場合における振幅伝達特性を示す特性図であり、縦軸は駆動部材28の振幅を表し、横軸は駆動部材28の機械共振周波数frに対する駆動周波数fdの比(fd/fr)を表す。図7(b)は、図6(a),(b)のfd1<fr1<fd2(▲2▼)の場合における位相伝達特性を示す特性図であり、縦軸は位相を表し、横軸は駆動部材28の機械共振周波数frに対する駆動周波数fdの比(fd/fr)を表す。
【0057】
ここで、第2の駆動方法の基本となる駆動周波数fd1及び第1の駆動方法の基本となる駆動周波数fd3の設定は、上述に従い任意でよいが、本実施の形態では、一例として両駆動方法の基本駆動周波数を等しく設定し(fd1=fd3)、上記▲2▼の設定を選択した場合について説明する。
【0058】
例えば、基本駆動周波数fd1、fd3をfd1=fd3=0.75×fr1(fd1<fr1<fd2、fd3<fr1<fd4)となるように設定する。なお、説明の便宜上、直流電源電圧V1,V2をV1=V2とし、その結果、第1の駆動電圧Vaの振幅は第2の駆動電圧Vbの振幅と等しくなる。このとき、第1の駆動方法では、VaB=VbBのため、駆動電圧VdB=VaB−VbBとなる。
【0059】
第2の駆動方法の場合、圧電素子26の両電極A,Bには、第1の駆動電圧VaAと第2の駆動電圧VbAとの差に相当する駆動電圧VdAが印加される。したがって、駆動電圧VdAに含まれる基本波成分と第2高調波成分の含有率は各々同値で0.637である。これは、第1の駆動電圧VaA又は第2の駆動電圧VbAのP−P値に対する各正弦波成分の振幅比のことで、フーリエ級数解析から得られる値である。振幅伝達特性によって、第1の駆動電圧VaA及び第2の駆動電圧VbAに対する変位の高調波成分は各々除去され、残った変位の基本波成分は各々振幅と位相シフトの変化を受ける。振幅伝達特性による振幅変化は、図7(a)に示すようにr1:r2=2.25:0.794となる。また、位相伝達特性による位相シフト量は、図7(b)に示すようにθ1:θ2=−9.7°:−173.2°となる。
【0060】
図8は、本発明に係る駆動装置10に適用される駆動回路14の第2の駆動方法における具体的な位相差制御を説明するための図である。図8(a)は、圧電素子26に印加される第1の駆動電圧VaAを表す矩形波である。図8(b)は、圧電素子26に印加される第2の駆動電圧VbAを表す矩形波である。図8(c)は、圧電素子26に印加される第1の駆動周波数fd1の正弦波電圧VA1及び第2の駆動周波数fd2の正弦波電圧VA2を表す波形である。図8(d)は、第1の正弦波電圧VA1による機械変位x1、第2の正弦波電圧VA2による機械変位x2及び駆動部材28の機械変位xを表す波形である。図8(d)に示すように、駆動部材28の機械変位xは、第1の正弦波電圧VA1による機械変位x1と第2の正弦波電圧VA2による機械変位x2とを合成(x=x1+x2)したものとなる。図8(e)は、機械変位x1を微分した速度v1、機械変位x2を微分した速度v2及び駆動部材28の駆動速度vを表す波形である。図8(e)に示すように、駆動部材28の駆動速度vは、上記機械変位x1を微分した速度v1と機械変位x2を微分した速度v2とを合成(v=v1+v2)したものとなる。
【0061】
ここで、図8(d)に示す合成変位xの波形を見てみると、立ち上がり部Eで大きなふくらみが発生しており、鋸波形状とはなっておらず、所望する駆動部材28の機械変位xを得ることができない。また、駆動部材28の速度v1,v2が略同相の場合に、駆動速度vの波形は略台形形状になるが、図8(e)に示す駆動速度vの波形は略台形形状になっておらず、所望する駆動部材28の速度を得ることはできない。そのため、所望する駆動部材28の鋸波形状の機械変位を得るためには第1の正弦波電圧VA1、第2の正弦波電圧VA2の振幅と位相関係を操作する必要がある。なお、この操作は機械共振周波数fr1の特性の変更は困難であるため、振幅の操作に関しては直流電源電圧V1又はV2の可変によって行い、位相の操作に関しては第1の駆動信号SaA、第2の駆動信号SbAの位相関係の可変によって行う。なお、本実施の形態では、V1=V2と設定しているため、駆動周波数のシフト及び駆動信号Sa,Sbの位相関係の操作により最適な機械変位を得る。
【0062】
そこで、第2の駆動信号SbAの位相を第1の駆動信号SaAの位相に対して例えば65°進ませる。図8(f)は、第2の駆動信号SbAの位相を第1の駆動信号SaAの位相に対して65°進ませた第2の駆動電圧VbA’を表す矩形波である。このように、第2の駆動信号SbAの位相を第1の駆動信号SaAの位相に対して例えば65°進ませることによって図8(f)に示すような第2の駆動電圧VbA’が得られる。このときの第2の正弦波電圧VA2’による機械変位x2’は図8(g)に示す波形となる。機械変位x1と機械変位x2’とを合成した機械変位x’は図8(g)に示すような鋸波形状となり、所望する駆動部材28の機械変位を得ることができるようになる。また、このときの機械速度v2’は図8(h)に示す波形となる。機械速度v1と機械速度v2’とを合成した駆動速度v’は図8(h)に示すような略台形波形となり、所望の駆動速度を得ることができるようになる。
【0063】
図9は、本発明に係る駆動装置10に適用される駆動回路14の第1の駆動方法における具体的な位相差制御を説明するための図である。図9(a)は、圧電素子26に印加される駆動電圧VdBを表す矩形波である。図9(a)に示すように、第1の駆動方法の場合、圧電素子26の両電極A,Bには、第2の駆動方法と同様に第1の駆動電圧VaBと第2の駆動電圧VbBとの差に相当する駆動電圧VdB(=2VaB)が印加される。したがって、駆動電圧VdBに含まれる基本波成分と第2高調波成分の含有率は各々0.900,0.637である。これは、第1の駆動電圧VaB又は第2の駆動電圧VbBのP−P値に対する各正弦波成分の振幅比を2倍した値で、第2の駆動方法の場合と比べて基本波成分の比率が大きいため、最大速度も高くなる。振幅伝達特性によって、第1の駆動電圧VaB及び第2の駆動電圧VbBに対する変位の3次以上の高調波成分は各々除去され、残った変位の基本波成分は各々振幅と位相シフトの変化を受ける。振幅伝達特性による振幅変化は、第2の駆動方法と同様に図7(a)に示すようにr1:r2=2.25:0.794となる。また、位相伝達特性による位相シフト量は、第2の駆動方法と同様に図7(b)に示すようにθ1:θ2=−9.7°:−173.2°となる。図9(b)は、圧電素子26に印加される第1の駆動周波数fd3の正弦波電圧VB1及び第2の駆動周波数fd1(=fd3)の正弦波電圧VB2を表す波形であり、図9(c)は、第1の正弦波電圧VB1による機械変位x3、第2の正弦波電圧VB2による機械変位x4及び駆動部材28の機械変位xを表す波形である。図9(c)に示すように、駆動部材28の機械変位xは、第1の正弦波電圧VB1による機械変位x3と第2の正弦波電圧VB2による機械変位x4とを合成(x=x3+x4)したものとなる。図9(d)は、機械変位x3を微分した速度v3、機械変位x4を微分した速度v4及び駆動部材28の駆動速度vを表す波形である。図9(d)に示すように、駆動部材28の駆動速度vは、上記機械変位x3を微分した速度v3と機械変位x4を微分した速度v4とを合成(v=v3+v4)したものとなる。
【0064】
ここで、図9(c)に示す合成変位xの波形を見てみると、略鋸波形状ではあるが、基本波成分と第2高調波成分間の振幅、位相関係の調整ができないため、第2の駆動方法のように理想的な鋸波形状を得ることができない。
【0065】
以上のように移動部材30の機械変位が理想的な鋸波形状が得られるように調整された駆動回路14において、第1の駆動信号Sa及び第2の駆動信号Sbを第2の駆動方法及び第1の駆動方法に切り換えた場合の速度制御電圧と移動部材30の速度特性を図10に示す。図10において、縦軸を機械負荷(移動部材30)の速度vとし、横軸を速度制御電圧V1(=V2)とし、第2の駆動方法に切り換えた場合の速度制御電圧と移動部材30の速度特性をPとし、第1の駆動方法に切り換えた場合の速度制御電圧と移動部材30の速度特性をQとする。図10に示す低速度領域R1は、移動部材30の速度が0から第1の駆動方法の立ち上がり部分の不感帯F2が安定状態に移行する速度vxまでの領域を表す。この低速度領域R1において、第2の駆動方法の立ち上がり部分の不感帯F1が第1の駆動方法の立ち上がり部分の不感帯F2と比べて小さくなっているため、第2の駆動方法を用いた方が比較的安定した速度の立ち上がり特性が得られ、安定した低速度が得られる。また、高速度領域R2では、第1の駆動方法の方が第2の駆動方法と比べて低電圧で高速度が得られることがわかる。このような特性を考慮して、所望する移動部材30の速度に応じて両駆動方法を切り換えればよい。すなわち、制御部22は、少なくとも低速度領域R1では第2の駆動方法を用い、高速度領域R2では第1の駆動方法を用いて駆動回路を動作させる。
【0066】
なお、第2の駆動方法と第1の駆動方法とを切り換えるタイミングについて制御部22は、速度制御電圧V1の値がVtとなる第2の駆動方法における特性Pと第1の駆動方法における特性Qとの交点Sで両駆動方法を切り換えることにより、両駆動方法の利点を生かすことができ、且つ低速度及び高速度間の滑らかな速度制御が可能となる。
【0067】
このように、第1の駆動方法及び第2の駆動方法を切り換えることによって駆動回路14の動作が制御されるため、電気機械変換素子である圧電素子26に印加される駆動電圧を生成する駆動回路14の駆動方法を、所望する移動部材30の制御速度に応じて切り換えることができる。さらに、低速度で細かい調整が要求される微調整時には、第1の駆動方法と比較して、不感帯の小さい低速度が得られる第2の駆動方法を用い、高速度で大まかな調整が要求される粗調整時には、第2の駆動方法と比較して、不感帯は大きいものの高速度が得られる第1の駆動方法を用いることによって移動部材30の調整状態に応じて切り換えることができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、第2の駆動方法において第1の駆動信号Sa及び第2の駆動信号Sbに矩形波を用いたが、本発明は特にこれに限定されず、第1の駆動信号Sa及び第2の駆動信号Sbに正弦波を用いてもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、第2の駆動方法において第1の駆動信号SaAのデューティ比D1及び第2の駆動信号SbAのデューティ比D2がともに0.5である矩形波としたが、本発明は特にこれに限定されず、第1の駆動信号SaAのデューティ比D1及び第2の駆動信号SbAのデューティ比D2がともに0.5でない矩形波であってもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法及びデューティ比Dが0.5でない駆動信号を用いた第1の駆動方法を複数の駆動方法として用いたが、本発明は特にこれに限定されず、他の駆動方法を用いてもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法及びデューティ比Dが0.5でない駆動信号を用いた第1の駆動方法を同一の駆動回路を動作させることによって切り換えるが、本発明は特にこれに限定されず、両駆動方法を別の駆動回路で動作させてもよい。この場合、駆動回路が複数必要となり、コスト削減及び装置の簡素化を考慮すると好ましいものではなく、本実施の形態のように、両駆動方法を同一の駆動回路で実現した方がコスト削減及び装置の簡素化を図ることができる。
【0072】
また、本実施の形態では、カメラの撮影レンズに関する駆動装置で説明したが、本発明は特にこれに限定されず、XY移動ステージ、オーバーヘッドプロジェクタの投影レンズ及び双眼鏡のレンズ等の駆動に適した駆動装置にも適用可能である。
【0073】
【発明の効果】
複数の駆動方法を切り換えることによって、電気機械変換素子に印加される駆動電圧を生成する駆動回路の動作が制御され、複数の駆動電圧が生成されるため、駆動回路の駆動方法を所望する移動部材の制御速度及び調整状態に応じて切り換えることができる。
また、移動部材を現在位置から目標位置まで高速度で移動させる粗調整時に、デューティ比Dが0.5でない駆動信号を用いた第1の駆動方法を適用することができる。
さらに、移動部材を目標位置に低速度で移動させる微調整時に、周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るインパクト型圧電アクチュエータからなる駆動装置の基本構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】 駆動部12の構成例を示す斜視図である。
【図3】 駆動回路14の構成例を示す図である。
【図4】 第2の駆動方法における駆動回路14の原理的な動作を説明するためのパルス波形等を示す図である。
【図5】 第1の駆動方法における駆動回路14の原理的な動作を説明するためのパルス波形等を示す図である。
【図6】 駆動装置10を構成する駆動部材28の機械共振特性を示す特性図である。
【図7】 本発明に係る駆動装置10の振幅伝達特性及び位相伝達特性を示す特性図である。
【図8】 本発明に係る駆動装置10に適用される駆動回路14の具体的な位相差制御を説明するための図である。
【図9】 本発明に係る駆動装置10に適用される駆動回路14の第2の駆動方法における具体的な動作を説明するための図である。
【図10】 第1の駆動信号Sa及び第2の駆動信号Sbを第2の駆動方法及び第1の駆動方法に切り換えた場合の速度制御電圧と移動部材30の速度特性を示す図である。
【図11】 従来例の駆動装置の概略構成を示す図である。
【図12】 図11に示す従来例の駆動装置の駆動回路の構成例を示すブロック図である。
【図13】 図12に示す駆動回路の出力波形を示す図である。
【図14】 従来例の駆動装置の振幅伝達特性及び位相伝達特性を示す特性図である。
【図15】 不感帯について説明するための図である。
【符号の説明】
10 駆動装置
14 駆動回路
22 制御部(制御手段)
24 支持部材
26 圧電素子(電気機械変換素子)
28 駆動部材
30 移動部材
141 第1の駆動回路
142 第2の駆動回路
143 第1のスイッチング回路
144 第2のスイッチング回路
145 第1の波形発振器
146 第3のスイッチング回路
147 第4のスイッチング回路
148 第2の波形発振器
Tr1 第1のスイッチ素子
Tr2 第2のスイッチ素子
Tr3 第3のスイッチ素子
Tr4 第4のスイッチ素子

Claims (3)

  1. 駆動電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、
    前記電気機械変換素子の伸縮方向における一方端に固着される支持部材と、
    前記電気機械変換素子の伸縮方向における他方端に固着される駆動部材と、
    前記駆動部材に所定の摩擦力で係合され、前記電気機械変換素子を異なる速度で伸縮させることで前記支持部材と相対移動する移動部材と、
    前記駆動電圧を生成する駆動回路と、
    デューティ比Dが0.5でない駆動信号を用いた第1の駆動方法及び周波数の異なる複数の駆動信号を用いた第2の駆動方法を含む複数の駆動方法を切り換えることによって前記駆動回路の動作を制御し、複数の駆動電圧を生成する制御手段とを備えることを特徴とする駆動装置。
  2. 前記制御手段は、前記移動部材の微調整時に他の駆動方法と比較して不感帯の小さい駆動方法を用い、前記移動部材の粗調整時に他の駆動方法と比較して高速度を発生させる駆動方法を用いることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
  3. 前記制御手段は、前記移動部材の粗調整時に前記第1の駆動方法を用い、前記移動部材の微調整時に前記第2の駆動方法を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
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