JP3719443B2 - 流路切換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の分岐部を備える医療用の流路切換装置において、一の分岐部内部に存在する流体の置換を促進する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、医療器具の分野においては、例えば、患者に薬液を輸液するため、輸液源と患者との間に配されその流路を切り換える流路切換装置が用いられている。
流路切換装置としては、流体の流路となる複数の分岐部と、当該各分岐部を結ぶ流路を切り換える切換部を備える活栓が知られており、その中でも三つの分岐部を有する三方活栓が広く用いられている。
【0003】
図5は、第1の従来技術に係る三方活栓の断面図である。
同図に示すように、三方活栓は、本体部800と切換部820とを備え、切換部820が本体部800に回動自在に挿入されている。
本体部800は、180°対向する二つの第1分岐部801、第2分岐部802と、これら第1分岐部801、第2分岐部802とそれぞれ90°の角度となるように配された第3分岐部803とを備え、三つの分岐部801〜803がT字状となるように配されている。
【0004】
第1分岐部801には、輸液源につながるチューブ(不図示)が接続され、第2分岐部802には患者につながるチューブ(不図示)が接続される。
第3分岐部803は、ルアー等によって外部から三方活栓内部に薬液を混注するためのものであり、分岐管804、隔膜805、キャップ806を備え、分岐管804の開口部が隔膜805を介してキャップ806によって封止されている。ここで、隔膜805においては、スリット805aが入れられており、キャップ806におけるスリット805aと対向する部分には、孔806aがあけられている。薬液は、これを充填したルアーの先端が孔806aおよびスリット805aを通して分岐管804内部に挿入されて注入されることにより、領域Aに充填される。
【0005】
切換部820には、各分岐部801〜803を結ぶためのT字状に交差する流路820aが穿設されており、切換部820を回動させることによって各分岐部801〜803を結ぶ流路を変更することができる。
ここで、切換部820が図5に示すように三つの分岐部801,802,803を結ぶ位置に配されているとき、輸液源から供給される輸液は、第1分岐部801から第2分岐部802に向けて略直線的に流れるため、第3分岐部803における領域Aに注入された薬液は、流れてくる輸液に混ざりにくく、残留しやすい。このような場合、患者に正確な量の薬液を投与できない上、この薬液が細菌の培地に適した高カロリーのものであった場合、領域Aにおいては薬液が淀み細菌が増殖する温床となる可能性がある。
【0006】
このような問題を解決するため、特開平11−342209号公報に記載された技術(以下、第2の従来技術という。)がある。
図6は、第2の従来技術に係る三方活栓の断面図である。
同図に示すように、第2の従来技術に係る三方活栓においては、切換部920の円周面に沿って円弧溝状の流路920aが形成され、さらに第3分岐部903が短く形成されているため、第1の従来技術のような第3分岐部903内に形成される領域Aは極端に小さくなっている。
【0007】
このため、隔膜905のスリット905aを介してルアーSの先端を挿入し、そこから薬液を供給すれば、薬液は流路920aに直接供給されるようになる。したがって、領域Aには薬液がほとんど滞留せず、わずかに滞留したとしても第1分岐部901から流れてくる輸液が第3分岐部903における領域Aに混注された薬液と接触した後、第2分岐部902へ流れるようになるため、上記第1の従来技術と比べて第3分岐部903の領域Aに充填された薬液は置換されやすくなり、細菌の増殖を抑制することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、医療現場においては、三方活栓に装着したルアーSからの薬液注入を一時的に中断し、切換部920を回転させて流路を切り換えることもある。その場合、ルアーSをいちいち取り外す手間を省略するため、ルアーSを差し込んだまま切換部920を回転させることも生じる。この場合、第2の従来技術においては、第3分岐部903の領域Aが極端に小さく形成されているため、ルアーSを差し込んだまま切換部920を回転させるとルアーSの先端が切換部920の流路920aと引っかかり切換部920を回転することができない。
【0009】
これを防止するため、図7に示すように、第3分岐部903を長くして領域Aを広く取るようにし、ルアーSの先端が切換部920と接触しないようにすることも考えられる。
しかしながら、そのような構成にすれば、図7に示す三方活栓においては領域Aの先端角にある領域A´は淀みとなりやすく、第1分岐部901から流入してくる輸液によって置換されにくいと考えられ、薬液の置換が部分的に遅れる可能性がある。特に、異なる比重の輸液と薬液とを用いる場合には薬液の置換が遅れやすい傾向がある。このように混注された薬液の置換が遅れる場合には、細菌が増殖する可能性が高まるとともに、第3分岐部903から混注された薬液が領域Aに残ってしまう可能性があるため必要量の薬液が患者に投与されない可能性も高まる。
【0010】
また、現状の医療現場においては、チューブを交換する際などに三つの分岐部を同時に閉鎖する必要があり、その際に切換部を45°回転する作業が一般的に行われている。例えば、図5に示す三方活栓の場合、切換部820を45°(−45°)回転させることによって、三つの分岐部801〜803を同時に閉鎖することができる。
【0011】
しかし、第2の従来技術に係る三方活栓においては、流路920aが切換部920の円周面に沿って形成されており、切換部920を回動させて三つの分岐部901〜903を同時に閉鎖する場合、図6,7に示す位置から135°もしくは225°も回転させなければ閉鎖することができないと考えられる。
そのため、第2の従来技術を用いる場合、医療現場においては作業方法を変更する必要があり、作業者を混乱させる可能性が高い。したがって、切換部を45°傾けることによってすべての分岐部を閉鎖することができるとともに、混注された薬液の置換を早める技術も求められている。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑み、医療現場における実使用に適した流路切換装置を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、円筒状の軸部保持部の外周から第1分岐部、第2分岐部及び第3分岐部が立設されて、軸部保持部内の中空室から3本の分岐路が分岐連出された構成の装置本体と、中空室に回転可能に挿入された円柱状の軸部を有する滑動体とからなり、軸部を装置本体内で回転することにより3本の分岐路のうち、いずれか一の分岐路から流入した流体を残りの二分岐路に同時または択一的に切り換えて流出する流路切換装置において、滑動体の軸部に、第1の流路および第2の流路を実質的に別々の経路で穿設し、軸部が装置本体内の所定滑動位置にあるとき、第1の流路が第1の分岐路と第3の分岐路とを連通すると同時に、第2の流路が第2の分岐路と第3の分岐路とを連通することによって、第1の流路から第3の分岐路内を経由して第2の流路に流体が流れるよう構成し、滑動体を保持する保持部には、第3の分岐路が設けられている領域に、第1、第2の流路に対応させて2つの独立した透孔を穿設した。
【0014】
このような構成により、輸液を第1の分岐路から供給し、薬液を第3の分岐路から供給する場合、輸液は滑動体における第1の流路を経て第3の分岐路の中空室側開口へ向けて排出される。この輸液は、第1の流路と対応する関係位置に設けられた一の透孔を介して第3の分岐路内に進入し、そこに充填された薬液と混合される。この混合された液体は、第2の流路と対応する関係位置に設けられた他の透孔を介して第2の流路を通り、第2の分岐路から患者に投与される。
【0015】
ここで、第2の従来技術のように、第3の分岐路の中空室側開口が一つだけ大きく開けられていた場合には、第1、第2の流路と第3の分岐路との間を一つの透孔を介して輸液等の流体が出入りするためにそこを通る流体の流れが乱れ、第1の流路から第3の分岐路内に進入する輸液の流速が高まらず、第3の分岐路内においては淀みが生じる可能性がある。
【0016】
しかし、本願発明のように、第3の分岐路の中空室側開口に第1、第2の流路に対応して2つ独立した透孔が設けられていれば、一つの透孔の場合と比べて透孔の面積が小さくなるので輸液にかかる圧力が高まり、透孔を通過する輸液等の流体の流速が高まる。したがって、輸液が勢いよく第3分岐部内部に流入するので、従来よりも第3の分岐路内部の攪拌が促進され、そこに滞留する薬液の置換速度を向上することができる。また、透孔を二つのみとすれば液体が第1の流路から第3の分岐路内部へ入る入口と第3の分岐路内部から第2の流路へ出る出口とに役割を分担させることができるので、第3の分岐路内部における流体の流れを一定方向として流速を早くすることができ、より置換速度を向上することができると考えられる。一方、滑動体においても第1の流路および第2の流路に流体が常に流れる状態となるので、滑動体内部における流体の滞留も抑制される。このように、滑動体内外において流体の滞留が抑制されるので、細菌の繁殖を抑制できるとともに、患者に正確な量の薬液を投与することができ、医療現場における実使用に適した流路切換装置を提供することができる。さらに、滑動体内外において流体の滞留を抑制することができるので、第2の従来技術のように滑動体内にルアーなどの先端を差し込んで薬液を注入する必要がなくなる。したがって、ルアーを差し込んだままでも流路を切り換えることができ、本願に係る流路切換装置は、従来よりも医療現場における実使用に適している。
【0017】
特に、上記3本の分岐路が滑動体側の2つの流路で同時に連通されている状態において、2つの独立した透孔は、第1の透孔が、第1の流路の開口と向きあい、第2の透孔が、第2の流路の開口と向き合う関係位置に形成されていれば、さらに第1の透孔および第2の透孔における流体の流速を向上することができるので、第3の分岐路内部の置換速度をより向上することができると考えられる。
【0018】
に、流路切換装置が、第1分岐部と第2分岐部のそれぞれが軸部保持部外周において対向して配され、第3分岐部が軸部保持部外周における第1分岐部および第2分岐部と90°をなす位置に配された三方活栓とすれば、滑動体を45°回転するのみですべての分岐部を同時に閉鎖することができる。
また、第3分岐部が、軸部保持部外周に立設された分岐管と、その先端に押圧された状態で固定され、外部から分岐管内部と連通可能なスリットが形成された弾性体からなる隔壁とを備えるようにすれば、ルアーを用いて薬液を混注することができるので、鋭利な針が不要となり、作業者の誤穿刺を防ぐことができる。
【0019】
なお、具体的な軸部の構成としては、軸部が前記軸部保持部内の前記所定滑動位置にあるとき、前記第3分岐部側の第1の流路の開口と第2の流路の開口とを結ぶ溝が形成されているような構成が好ましい。
また、実際の軸部においては、上記第1、第2の流路を平面視したときにL字状に形成されている構成とすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る流路切換装置を三方活栓に適用した場合の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。本願発明の以下に示す実施の形態および図面は本発明の実施の形態の一例であって、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0021】
(1)三方活栓の構成
図1は、本実施の形態に係る三方活栓を展開した斜視図である。
同図に示すように、三方活栓は、切換部1と本体部2とを備え、切換部1の軸部10が、本体部2の軸部保持部20に挿入されて回転自在に保持されている。
ここで、まず切換部1が挿入される本体部2の構成について説明する。
【0022】
本体部2は、切換部1の軸部10を保持する中空円筒状の軸部保持部20と、これに連通し、三方に流路を形成する分岐路となる第1分岐部21、第2分岐部22、第3分岐部23とを備える。
軸部保持部20は、円柱状の軸部10を挿入するための挿入孔20aが形成された中空室となっており、当該挿入孔20aの内周には軸部10の係合溝12と係合する図示しない係合突起が周状に形成されている。
【0023】
第1分岐部21,第2分岐部22は、流路の形成された円筒管からなり、軸部保持部20の外周面において互いに対向して配され、軸部保持部20の挿入孔20aと連通するように立設される。ここで、第1分岐部21には、図示しない輸液源につながる輸液チューブが接続され、第2分岐部22には、図示しない患者につながる輸液チューブが接続される。
【0024】
第3分岐部23は、流路となる分岐管230と、キャップ保持部231と、隔膜232と、キャップ233とを備え、外部から薬液を混注するための分岐路となる。
分岐管230は、軸部保持部20の外周面において第1分岐部21、第2分岐部22と互いに90°をなす角度で軸部保持部20に立設されている。ここで、図1の拡大図に示すように、軸部保持部20における分岐管230が設けられている領域内、すなわち分岐管230の軸部保持部20側開口となる領域には、軸部10が各分岐部21,22,23を連通する位置に挿入されたときに、第1流路131の流路端131bおよび第2流路132の流路端132aと対応するように、それらと対向する位置に透孔200a,200bが穿設されている。これによって、分岐管230内部は、軸部保持部20の内部と連通するようになり、三方活栓においては、各分岐部21,22,23が互いに連通することができる。
【0025】
キャップ保持部231は、分岐管230を囲むように軸部保持部20の外周面に立設され、キャップ233を保持するための一対の係合突起2310(同図においては一つのみ図示している。)を備える。
隔膜232は、例えば耐薬品性に優れた弾性体である円板状のシリコンゴムからなり、その中心部には、その厚み方向に切断されたスリット232aが形成されている。
【0026】
キャップ233は、係合孔2330aが形成された一対の係合部2330(図1においては一つのみ図示している。)を備え、隔膜232を介して係合部2330がキャップ保持部231における係合突起2310と係合することによってキャップ保持部231に固定される。ここで、隔膜232がシーリング材の役目を果たし、分岐管230の内部においては本体部2における外部との気密性が保たれる。また、キャップ233が隔膜232を押圧するため、スリット232aにおいてもその対向する面同士に圧力が加わり、スリットがふさがれた状態となる。
【0027】
キャップ233には、隔膜232のスリット232aを臨み、ルアーの先端を案内する案内孔233aが穿設されており、案内孔233aを介してルアーを挿入することにより、それが隔膜232におけるスリット232aを通して分岐管230内部に案内され、そこに薬液を混注することができる。
他方、切換部1は、円柱状の軸部10と、軸部10の端部に一体形成され、軸部10をその中心軸を中心に回転させるための十字形状をしたハンドル部11とを備える。
【0028】
軸部10は、その外周面におけるハンドル部11と離れた位置に係合溝12が周状に形成されており、本体部2の軸部保持部20内に形成された図示しない係合突起と係合することによって本体部2に回転可能に固定される。
また、軸部10には、本体部2における第1分岐部21、第2分岐部22、および第3分岐部23を連通し、輸液、薬液などの流体を通すための流路13が形成されている。
【0029】
流路13は、直角に折れ曲がった第1流路130および第2流路132と、直線状の第3流路131とからなり、第3流路131が第1流路130と第2流路132を連結して一つの流路を形成している。
第1流路130は、流路13がすべての分岐部21,22,23を連通する位置となるように軸部10が回転されたときに、第3分岐部23を第1分岐部21と連通するための平面視L字状の形状を有する流路であり、その折れ曲がり部分が軸部10の中心軸近傍に配され、一方の流路端130aが軸部10の外周面に露出するとともに、他方の流路端130bが軸部10の外周面よりも凹んだ位置に配されている。
【0030】
第2流路132は、流路13がすべての分岐部21,22,23を連通する位置となるように軸部10が回転されたときに第3分岐部23を第2分岐部22と連通するための流路であり、第1流路130と同じく平面視L字状の形状をしており、その折れ曲がり部分が軸部10の中心軸近傍に配され、一方の流路端132aが第3流路131と連通するように軸部10の外周面よりも凹んだ位置に配されるとともに、他方の流路端132bが軸部10の外周面に露出するように配されている。
【0031】
第3流路131は、軸部10の外周面上において、第1流路130の流路端130bから第2流路132の流路端132aまでを結ぶ直線状に伸びた溝となっており、第1流路130と第2流路132をつなげる役割を果たす。この第3流路131によって、切換部1が図1に示す位置から180°反転した位置に回転されたとしても第1分岐部21と第2分岐部22とを連通することができる。
【0032】
ここで、第1流路130における流路端130aと第2流路132における流路端132bとは、軸部10の外周面において平面視対向する方向に配される一方、第1流路130における流路端130bと第2流路132における流路端132aとは上下に並んで配され、平面視したときに重なる位置となっている。すなわち、切換部1を平面視したときには、第1の従来技術において説明した切換部と同じく流路13がT字形状に配されることになる(図2参照)。
【0033】
上記構成により、例えば流路130の流路端130aから輸液を流入させた場合には、図1の流路13を抽出した拡大図に示すように、輸液は、流路130を通過してその流路端130bから流路131に入り、次に流路132の流路端132aから流路132に入り、その流路端132bから流れ出るようになる。したがって、輸液源から輸液が供給される限り流路13内部においては輸液等の滞留を抑制することができる。
【0034】
(2)本実施の形態に係る三方活栓を用いることの効果
図2(a)は、本実施の形態に係る三方活栓の断面図であり、図2(b)は、比較例に係る三方活栓の断面図である。
図2(a)における拡大図に示すように、本実施の形態に係る三方活栓は、軸部保持部20における透孔200b,200aが、第1流路130における流路端130bと第2流路132における流路端132aそれぞれと対向する位置に独立して設けられている。
【0035】
これによって、流路端130bから流出してきた輸液が透孔200bを通して分岐管230内部に勢いよく流入することになる。
これについて説明すると、例えば、図2(b)に示すように、第1流路130と第2流路132と分岐管230とを連通させる透孔200cが一つしか設けられていない場合、その面積は、第1流路130の断面積と第2流路132の断面積の合計よりも大きくなる。したがってこの場合、透孔200c内に流路端130bから流出してきた輸液は拡散しながら分岐管230に流れ込む。また、分岐管230から透孔200cを経由して流路端132aにも輸液が流れるので、透孔200cにおいては輸液が流入しながら流出し、同時に互いに逆向きの流れが形成される。したがって、図2(a)よりも透孔において輸液に加わる圧力が低くなる。そのため、流路端130bから流出してくる輸液は本実施の形態に係る三方活栓に比べてゆっくり分岐管230内部に流入すると考えられる。したがって、分岐管230内部においては置換が部分的に進まない可能性が生じる。
【0036】
一方、本実施の形態に係る三方活栓においては、二つの透孔200a,200bを設けて、各透孔に流体の流入・流出それぞれ固有の役割を分担させるので、各透孔においては流体の流れが乱れにくい。その結果、透孔が一つの場合と比べて各透孔を通過する流体の速度を向上させることができる。したがって、分岐管230内部には輸液が勢いよく流入してくるため、混注された薬液の置換が促進される。
【0037】
さらに、各透孔200a,200bが第1流路130における流路端130bと第2流路132における流路端132aと対向する位置に設けられているため、両者が位置ずれした場合と比べて流体の流れが乱れにくく、圧力の損失が少なくなるので、各透孔200a,200bを通過する流体の速度はさらに加速される。ここで、透孔200a,200bの面積は、各流路131,133の流路端131b,132aの開口面積と同じ程度とすることが好ましい。このように、各透孔200a,200bの断面積が流路端132a,130bと略同じに形成すれば、輸液に加わる圧力が一層高まり、輸液は透孔200bを勢いよく通り抜けて分岐管230内部に流入することになる。
【0038】
これらの効果によって、ルアーSによって分岐管230の内部に注入された薬液は、透孔200bを介して勢いよく流入してくる輸液に混合、置換され、その後透孔200aを通して流路端132aに流出することになる。
本発明に係る三方活栓によれば、二つの透孔200a,200bを独立して設けているので、分岐管230の内部に勢いよく輸液を流入させることができ、図2(a)のような三方活栓や第1、第2の従来技術で述べた三方活栓に比べて第3分岐部23に混注された薬液を早く置換することができる。さらに、二つの透孔200a,200bに輸液の入口、出口の役割を割り当てることができるので、分岐管230内部に一定方向の流れに整流することができ、分岐管230内における流速を早め、置換を促進することができると考えられる。
【0039】
加えて、軸部10における流路13においては、その全体に絶えず輸液が流れるように構成されているため、第1の従来技術のように、切換部内の流路に輸液や薬液が滞留する心配もない。
このような構成により、薬液が高カロリーで細菌の培地に適するようなものであったとしても薬液がすばやく置換され、第3分岐部23に滞留する可能性が従来よりも低下するため細菌の増殖を抑制することができる。さらに、第3分岐部23内における薬液の滞留が少なくなることから各従来技術に比べてより正確な量の薬液を患者に投与することができるようになる。
【0040】
また、軸部10外周における流路13の開口部は、流路端130a,130b(132a),132bの三箇所だけとなるため、軸部10を図2(a)において45°回転させれば第1分岐部21、第2分岐部22,第3分岐部23のすべてを閉鎖することが可能となる。したがって、医療現場において一般的に用いられている三方活栓と同様の使用方法を用いてすべての分岐部を同時に閉鎖することができ、第2の従来技術のような独自の操作方法も不要となる。
【0041】
(変形例)
上記実施の形態においては、第1流路130における流路端130bおよび第2流路132における流路端132aを軸部10の外周よりも凹んだ位置に形成し、流路端130bと流路端132aとを第3流路131によって結ぶようにしていたが、図3に示すように流路端130b,132aを軸部10の外周に沿う位置に形成して軸部10における第3流路131を無くし、その代わりに第3流路131を軸部保持部20内周における第3分岐部23と反対側に設けるようにしてもよい。これによれば、上記実施の形態と同様、軸部10を180°回転させたときにも輸液は軸部10の流路端130bから流路131を通って流路端132aに流れるので、従来と同様の操作方法を用いて作業することができる。また、流路端130b,132aと透孔200b,200aとが流路131を介さずに直接連通することができるので、上記実施の形態のように流路131において輸液が拡散することがなくなり、分岐管230内部に輸液を勢いよく流入させることができ、上記実施の形態よりもさらに薬液の置換速度を向上することができる。
【0042】
また、第3分岐部23は、単に分岐管230を延長したものであってもよいし、流路切換装置に用いられる公知の混注口であってもかまわない。
また、本実施の形態に係る流路切換装置においては、三方活栓を例に説明したが、図4に示すように、軸部保持部20における第3分岐部23と対向する位置に第4分岐部24を設けた四方活栓とすることもできる。同様に、本発明は分岐部を五つ以上備える流路切換装置においても適用することができる。
【0043】
また、本実施の形態においては、流路を通過させる流体として液体を例に説明したが、液体以外にも気体、およびこれらの混合物を通過させる際にも本発明と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態においては、軸部10において第1流路130の上に第2の流路132が配されるようにしたが、第1流路130と第2流路132との上下関係は逆転してもかまわない。さらに、上記実施の形態においてはこれらの第1流路130および第2流路132における流路端130b,132aと対向する位置に透孔200a、200bを設けていたが、透孔200a,200bは各流路端130b,132aの数に対応して設けられていれば、第3分岐部23内における薬液の置換効率は低下するかもしれないが必ずしも対向させる必要はない。
【0044】
また、上記実施の形態においては、第1流路130および第2流路132は、平面視L字状の形状としたが、これに限定されるものではなく、流路端の位置が同じであれば直線状や立体的に屈曲した形状であってもよい。
また、上記実施の形態においては、軸部10における第1流路130および第2流路132をそれぞれ1本ずつ形成していたが、これに限定されず、各流路を複数本から形成するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態においては、第1流路130と第2流路132とが完全に独立して別々の経路として形成されていたが、本発明は、第1流路130と第2流路132とが実質的に別々の経路を形成していれば、各流路の一部が僅かに合流する場合であってもかまわない。
【0046】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、第3の分岐路内部における流体の流れを一定方向として流速を早くすることができ、より置換速度を向上することができ、滑動体内部における流体の滞留も抑制されるので、細菌の繁殖を抑制できるとともに、患者に正確な量の薬液を投与することができ、医療現場における実使用に適した流路切換装置を提供することができる。
【0047】
また、ルアーを差し込んだままでも流路を切り換えることができるので、医療現場における実使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】三方活栓の展開斜視図である。
【図2】(a)は、本実施の形態に係る三方活栓の断面図であり、(b)は、本体部の孔を一つとした場合の三方活栓の断面図である。
【図3】本実施の形態の変形例に係る三方活栓の断面図である。
【図4】本実施の形態の変形例に係る三方活栓の断面図である。
【図5】第1の従来技術に係る三方活栓の断面図である。
【図6】第2の従来技術に係る三方活栓の断面図である。
【図7】第2の従来技術の変形例に係る三方活栓の断面図である。
【符号の説明】
1 切換部
2 本体部
10 軸部
11 ハンドル部
12 係合溝
13 流路
20 軸部保持部
20a 挿入孔
21 第1分岐部
22 第2分岐部
23 第3分岐部
130 第1流路
131 第3流路
132 第2流路
200a,200b 透孔
232 隔膜
232a スリット
233 キャップ

Claims (6)

  1. 円筒状の軸部保持部の外周から第1分岐部、第2分岐部及び第3分岐部が立設されて、前記軸部保持部内の中空室から3本の分岐路が分岐連出された構成の装置本体と、
    前記中空室に回転可能に挿入された円柱状の軸部を有する滑動体とからなり、
    前記軸部を装置本体内で回転することにより前記3本の分岐路のうち、いずれか一の分岐路から流入した流体を残りの二分岐路に同時または択一的に切り換えて流出する流路切換装置であって、
    前記軸部には、第1の流路および第2の流路が実質的に別々の経路で穿設されており、
    前記軸部が装置本体内の所定滑動位置にあるとき、第1の流路が第1の分岐路と第3の分岐路とを連通すると同時に、第2の流路が第2の分岐路と第3の分岐路とを連通することによって、前記第1の流路から前記第3の分岐路内を経由して前記第2の流路に流体が流れるよう構成され、
    前記滑動体を保持する保持部には、前記第3の分岐路が設けられている領域に、前記第1、第2の流路に対応させて2つの独立した透孔が穿設されていることを特徴とする流路切換装置。
  2. 前記3本の分岐路が滑動体側の2つの流路で同時に連通されている状態において、前記2つの独立した透孔は、第1の透孔が、第1の流路の開口と向きあい、第2の透孔が、第2の流路の開口と向き合う関係位置に形成されていることを特徴とする請求項に記載の流路切換装置。
  3. 前記流路切換装置は、前記第1分岐部と第2分岐部のそれぞれが前記軸部保持部外周において対向して配され、前記第3分岐部が前記軸部保持部外周における第1分岐部および第2分岐部と90°をなす位置に配された三方活栓であることを特徴とする請求項1に記載の流路切換装置。
  4. 前記第3分岐部は、軸部保持部外周に立設された分岐管と、その先端に押圧された状態で固定され、外部から前記分岐管内部と連通可能なスリットが形成された弾性体からなる隔壁とを備えることを特徴とする請求項に記載の流路切換装置。
  5. 前記軸部は、それが前記軸部保持部内の前記所定滑動位置にあるとき、前記第3分岐部側の第1の流路の開口と第2の流路の開口とを結ぶ溝が形成されていることを特徴とする請求項に記載の流路切換装置。
  6. 前記第1、第2の流路は、それぞれの流路が平面視したときにL字状に形成されていることを特徴とする請求項に記載の流路切換装置。
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