JP3719144B2 - 電子楽器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍵盤に配設された例えば鍵スイッチにより押鍵操作時の鍵ストローク中に鍵タッチ信号を生成し、該タッチ信号に基づいて楽音を制御する電子楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子鍵盤楽器において、例えば特公平8−10399号公報に開示されているように、鍵ストロークの全行程で鍵の位置をセンシングして楽音を制御する技術がある。このような技術によれば、例えば1つの鍵スイッチの2つの接点スイッチの時間差だけからイニシャルタッチを求めて楽音を制御するものよりも、多彩な表現が可能となる。
【0003】
また、例えば特開平7−199932号公報には、鍵ストロークの全行程でのセンシングにより、鍵ストロークの時間変化の非線形性に基づいて奏法を判別する技術が開示されている。
【0004】
また、3つの接点スイッチによる2つの時間差のデータを用い、鍵ストロークの浅い方の(前の)時間差データで楽音の音量を制御し、深い方の(後の)時間差データで音色を制御するものもある。
【0005】
ところで、ピアノは、鍵、アクション、ハンマー、弦という伝達機構によって発音するようになっている。このため、弱打の場合は押し終わりころに小さな音が鳴るような感じがする。また、強打の場合は、鍵への初速が大で強音になる場合と、押し弾きで強音になる場合とがある。また、ピアノを弱打する場合は、押し終わりで打弦されることが演奏者には解っているので、タイミングに関してあまり違和感がないが、強打した場合は、伝達機構特有の伝達遅れによる発音の遅れがあるので、強打をしてジャストタイミングで演奏したと思っても、打鍵動作よりは発音が少し遅れる感じがする。
【0006】
このように、伝達機構や鍵への強弱が微妙な発音遅れを生み、特に初心者では表現力やアーティキュレーションが低下することがある。
【0007】
また、パイプオルガンでは、押鍵のストロークの初期に若干遊びがあり、それから少し押し下げたところで弁の感触が伝わってくる。そして弁を開放する瞬間に最も抵抗が大きくなり、この時点から発音が開始する。すなわち、実質的な発音が押鍵のタイミングから遅れ気味になる。このような傾向は楽器の発音機構によるものであり、ホルン、バスーン、トロンボーンなどのような管楽器やヴィオラダガンバのうち、中型以上の弦楽器でも、同様に演奏操作に対して発音が遅れ気味になる。
【0008】
したがって、このような楽器を演奏するプロの演奏者は、その楽器の特性を自然に会得し、合奏、合唱、アンサンブル演奏を行う場合など、発音すべきタイミングよりも突っ込み気味(あるいは前のめり)にして演奏動作を連続させるようにしている。例えば、オーケストラ演奏のように、複数楽器が同時に休符した後、複数楽器が同時発音するとき(テュッティー部分)などは演奏中の見せ場であり、発音タイミングを合わせるのが重要となる。
【0009】
一方、このようにプロの演奏者は専門の楽器の特性を会得しているため、べつの楽器を演奏するときに支障となる場合もある。例えば、パイプオルガン奏者は突っ込み気味に演奏するため、同じ鍵盤楽器でもピアノを演奏すると発音タイミングが速くなりがちとなる。また、逆にピアノ奏者がパイプオルガンを演奏すると発音タイミングが遅れ気味となる。テュッティーの部分毎に突っ込み演奏または遅れ気味演奏が繰り返されると、演奏始めと終り近傍で、かなりのテンポの差を生じ、作曲者が意図した曲になり得ないことがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来は、鍵タッチの強さに応じて発音タイミングを切換え制御することは行われていない。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、押鍵の鍵タッチに応じて発音タイミングを制御することで、早めの発音(以後、「突っ込み発音」という。)と通常の発音(以後、「非突っ込み発音」という。)との切換発音を可能にして、表現力やアーティキュレーションを増大し、発音タイミングを合わせ易くし、演奏し易い電子楽器を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の電子楽器は、押離鍵操作される鍵と、該鍵を押鍵操作した時の鍵ストローク中浅い位置における押鍵操作速度に応じた第1の鍵タッチ信号を生成する第1のタッチセンサと鍵ストローク中深い位置における押鍵操作速度に応じた第2の鍵タッチ信号を生成する第2のタッチセンサとでなる鍵タッチセンサ手段と、該鍵タッチセンサ手段で生成される鍵タッチ信号に基づいて楽音を制御する楽音制御手段と、前記鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号の強さが閾値以下のとき、前記鍵ストロークの深い方で発生される第2の鍵タッチ信号に応じて楽音の発音開始/非発音を制御する発音制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
上記のように構成された請求項1の電子楽器によれば、鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号(第1実施例の浅スイッチから得られるキーオンタッチデータに対応)が閾値(第1実施例の所定値A1に対応)を越えるような押鍵操作により直ぐに発音するような突っ込み発音が可能であり、かつ、この第1の鍵タッチ信号が閾値以下となるような押鍵操作により非突っ込み発音が可能となる。したがって、例えば初心者でも表現力やアーティキュレーションが増大し、演奏し易い電子楽器となる。
【0015】
本発明の請求項2の電子楽器は、押離鍵操作される鍵と、該鍵を押鍵操作した時の鍵ストローク中浅い位置における押鍵操作速度に応じた第1の鍵タッチ信号を生成する第1のタッチセンサと鍵ストローク中深い位置における押鍵操作速度に応じた第2の鍵タッチ信号を生成する第2のタッチセンサとでなる鍵タッチセンサ手段と、該鍵タッチセンサ手段で生成される鍵タッチ信号に基づいて楽音を制御する楽音制御手段と、前記鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号の強さが第1閾値以下のとき、前記鍵ストロークの深い方で発生される第2の鍵タッチ信号の強さが第2閾値を越えているとき発音を開始し、該第2の鍵タッチ信号の強さが第2閾値以下のとき非発音に制御する発音制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
上記のように構成された請求項2の電子楽器によれば、鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号が第1閾値(第1実施例の所定値A1に対応)を越えるような押鍵操作により直ぐに発音するような突っ込み発音が可能である。また、この鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号が第1閾値以下で、かつ、鍵ストロークの深い方で発生される第2の鍵タッチ信号(実施例の深スイッチから得られるキーオンタッチデータに対応)が第2閾値(実施例の所定値A2に対応)を越えるような押鍵操作により、非突っ込み発音が可能となる。したがって、例えば初心者でも表現力やアーティキュレーションが増大し、演奏し易い電子楽器となる。さらに、鍵ストロークの深い方で発生される鍵タッチ信号が第2閾値以下となるような押鍵操作のときは非発音となるので、探り弾き等による誤発音を防止できる。
【0017】
本発明の請求項3の電子楽器は、押離鍵操作される鍵と、該鍵を押鍵操作した時の鍵ストローク中浅い位置における押鍵操作速度に応じた第1の鍵タッチ信号を生成する第1のタッチセンサと鍵ストローク中深い位置における押鍵操作速度に応じた第2の鍵タッチ信号を生成する第2のタッチセンサとでなる鍵タッチセンサ手段と、該鍵タッチセンサ手段で生成される鍵タッチ信号に基づいて楽音を制御する楽音制御手段と、前記鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号の強さが第1閾値を越えているとき、該第1の鍵タッチ信号の検出直後に楽音の発音を開始するよう制御する一方、前記鍵ストロークの深い方で発生される第2の鍵タッチ信号の強さが第2閾値を越えているとき発音を開始し、該第2の鍵タッチ信号の強さが第2閾値以下のとき非発音に制御する発音制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
上記のように構成された請求項3の電子楽器によれば、請求項2と同様な作用効果が奏する。
【0019】
上記演奏者情報としては、例えば、演奏者の癖、初心者(アマチュア)か上級者(プロ)か、ピアノ奏者かパイプオルガン奏者か、せっかちかのんびりかなど、演奏者の特に押鍵操作のタイミングの違いを考慮した情報とする。そして、そのタイミングの違いに応じて突っ込み発音を行うか行わないかを設定することができる。例えば、初心者は押鍵操作のタイミングが上級者よりも遅れがちになるので突っ込み発音を行うように設定する。したがって、例えば初心者でも表現力やアーティキュレーションが増大し、演奏し易い電子楽器となる。また、ピアノ奏者は押鍵操作のタイミングがパイプオルガン奏者よりも遅めになるので、パイプオルガンの音色のとき、浅スイッチの鍵タッチ信号に応じて突っ込み発音を行うようにすると、実際の発音タイミングがパイプオルガン奏者のようになる。また、パイプオルガン奏者は押鍵操作のタイミングがピアノ奏者よりも早めになるので、深スイッチの鍵タッチ信号に応じて非突っ込み発音を行うようにすると、実際の発音タイミングがピアノ奏者のようになる。したがって、演奏し易い電子楽器となり、特に他楽器とのアンサンブル演奏や合唱を含むオーケストラ演奏がしやすくなる。
【0020】
本発明の請求項4の電子楽器は、請求項2または3いずれかに記載の電子楽器であって、前記第1閾値と前記第2閾値とを異ならせて設定するようにしたことを特徴とする。
【0021】
上記のように構成された請求項4の電子楽器によれば、請求項2または3と同様の作用効果が得られる。また、押鍵操作に応じて突っ込み発音と非突っ込み発音が可能となる。第1閾値(浅い方)>第2閾値(深い方)とすると、強タッチの押鍵操作に限り突っ込み発音が可能となり、弱タッチであるピアニシモ(PP)がよりピアノらしくなる。また、第1閾値(浅い方)<第2閾値(深い方)とすると、弱タッチでも突っ込み発音が可能となり、指の練習になったり、力の弱い小指による表現力も強化される。また、スタッカート奏法が上手くなる。したがって、例えば初心者でも表現力やアーティキュレーションが増大し、演奏し易い電子楽器となる。
【0022】
なお、請求項1、2、4において、第1閾値を音色に対応して設定するようにしてもよい。例えば、パイプオルガン、ヴィオラダガンバ、バスーン、ホルン、オーボエなどの音色では、第1閾値を小さくあるいは0とし、ピアノ、ギター、鉄琴、木琴などの音色では、第1閾値を大きくする。これにより、パイプオルガン、ヴィオラダガンバ、バスーン、ホルン、オーボエなど発音が遅れがちになる音色(エンベロープの特性)に対して、ピアノ〜木琴の演奏者が演奏するとき突っ込み発音され、パイプオルガン〜オーボエの演奏者並に発音タイミングの遅れを防止できる。
【0023】
なお、本願明細書および図面において、「閾値以下」および「閾値を越える」の組からなる表現は、「閾値未満」および「閾値以上」の組からなる表現と同等な表現とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態の電子楽器のブロック図である。この例の電子楽器は、CPU1、ROM2、RAM3、押離鍵検出手段4、スイッチ検出手段5、表示制御手段6、音源手段7等を備え、これらの要素1〜7は、バス8を介して互いに接続されている。
【0025】
システム全体を制御するCPU1は、これを駆動するクロックおよびタッチデータ(鍵タッチ信号)を取得するための割込み処理のクロックを発生するクロック発生器9を備えている。そして、CPU1は、所定のプログラムに従って種々の制御を行い、主に、後述する発音タイミングの制御を中枢的に遂行する。ROM2には制御プログラムが記憶されており、後述する押鍵検出手段4の鍵スイッチ(浅スイッチおよび深スイッチ)に応じた発音制御に関する各種処理プログラムや、後述する落とし込みテーブル1、落とし込みテーブル2、鍵スイッチの接点時間差をタッチデータ(ベロシティ値)に換するための変換テーブルTBL1、変換テーブルTBL2等の所要の各種テーブル、各種制御データが記憶されている。
【0026】
RAM3は、CPU1の処理に際して必要なデータやパラメータを記憶し、また、各種レジスタやフラグ、処理中の各種データ等を一時記憶するためのワーク領域として用いられる。例えば、RAM3内には、キーバッファKEYBUF、フラグバッファTCBUF等のバッファや、カウンタ領域、レジスタ、一時メモリ領域などが確保されている。キーバッファKEYBUFには、各発音チャンネルnに対応してキーコードKC(n)、キーイベント種類KV(n)、タッチデータVon(n)、Voff(n+16)等が一時記憶され、フラグバッファTCBUFには、各チャンネルnに対応して接点時間差計測モードフラグTC(n)が一時記憶される。
【0027】
また、RAM3内には、押離鍵タッチ情報を得るための鍵スイッチ(浅スイッチおよび深スイッチ)による接点時間差Ton(n)およびToff(n+16)をカウントするためのソフトウエアカウンタ領域が設定されている。さらに、一時メモリ領域は、各種レジスタや、減衰レートを記憶するレートレジスタ等が設けられる。なお、チャンネル番号「n」は、例えば、“0”〜“15”の整数である。これに対応して、音源手段7側には、番号“0”〜“31”の32チャンネルがあり、例えばピアノの音色の場合、キーオン用およびキーオフ用にそれぞれnチャンネルおよびn+16チャンネルが割り当てられる。
【0028】
押離鍵検出手段4は、鍵盤装置10等を備えた演奏操作装置に内蔵され、バス8を介してCPU1等に接続されている。スイッチ検出手段5に接続されるパネルスイッチ11は、演奏者情報としてのパーソナルデータを入力するための文字キー、パーソナルデータに対応するPデータキー、数値を入力するテンキー、音色選択キー、各種効果などの演奏条件等の設定を行うための種々の操作キーを操作パネル上に備えている。液晶パネルや各種インジケータから成るディスプレイ12は、表示制御手段6を介してバス8に接続され、パネルスイッチ11の操作パネル上の各種操作子に並置されている。また、ディスプレイ12には、各種設定画面や各種操作ボタンを表示し、ディスプレイ画面上で各種設定・表示を行うこともできる。
【0029】
音源手段7には、楽音波形の波高値(瞬時値)データからなる波形データを記憶している波形ROM70、および、CPU1との送受信を行う送受信レジスタ71を含んでおり、この波形ROM70は、キーオン時に発生する楽音の生成に用いられるキーオン波形を含む第1音源ソースと、例えばピアノの音色に対応してキーオフ時に発生する楽音の生成に用いられるキーオフ波形を含む第2音源ソースとから成る。
【0030】
鍵盤10が操作されると、CPU1は、キーコード、タッチデータ(ベロシティ値)、キーオン/キーオフ等の各種データを音源手段7の対応するチャンネルに設定することで発音/消音処理を行う。なお、音源手段7は時分割多重処理により各チャンネルの処理を行い、CPU1から設定された各種データに基づいて波形ROM70から波形を読み出し、タッチデータ等に基づいて所定の演算を行なってデジタル楽音信号を発生する。そして、サウンドシステム13はデジタル楽音信号のD/A変換や増幅等を行って、鍵操作に対応した楽音を発生する。なお、DSP等で構成される効果回路もこのサウンドシステム13に含まれる。
【0031】
[鍵盤装置]
次に、実施形態における鍵盤装置と鍵タッチセンサ手段のセンサ部を構成する鍵スイッチについて、説明する。図2は、実施形態に係る鍵盤装置10を示し、鍵操作情報を電子楽器システムに取り込むための一手段を表わす。この図では、鍵盤装置10は、非押鍵状態を側面から見て、ごく概略的に表わされている。
【0032】
鍵盤装置10は、白鍵21Wと黒鍵21Bとから成る鍵21と、鍵21に連動して駆動される質量体(ハンマー)43とを多数備えている。楽器の棚板部22上には、主鍵支持部23Aおよび副鍵支持部23Bが固着され、両支持部23A,23Bは鍵支持部23を構成する。主鍵支持部23Aには支点ピンWf,Bfが固設され、白鍵21Wは支点ピンWfに回動自在に支持され、黒鍵21Bは支点ピンBfに回動自在に支持されている。鍵21の前方部(図示左側部)には、副鍵支持部23Bから突設させた鍵ガイド部WG、BGが設けられ、白黒鍵21W,21Bを別々に押して離鍵する時の鍵動を鍵ガイド部WG、BGによってガイドする構成になっている。また、副鍵支持部23Bには白鍵用下限ストッパ部WSおよび黒鍵用下限ストッパ部BSが設けられる。
【0033】
鍵支持部23では、主鍵支持部23Aおよび副鍵支持部23Bを固定的に一体成形した接続部LDによって、押鍵方向から見てラダー状に両支持部23A,23Bを結合させている。そして、この接続部LDの上方において鍵21の下方に位置するところには、支持部B1,B2を介して棚板部22に設けられた基板SB1上に鍵にて駆動される浅スイッチ47が配設されている。鍵21の後方では、支点部Mfを有する質量体支持部41が棚板部22に固設され、錘りW1,W2を内包した樹脂製の質量体43の支点部mfが支点部Mfに回動自在に支持され、これにより、質量体43は支持部41に保持されている。支持部41の上部には、前方側に上限ストッパUSが設けられ、後方側にストッパ部41Sが設けられる。
【0034】
この質量体43は、前部に錘W1、後部に錘W2を分散して有し、鍵21の後方上面の質量体駆動部WAにより力伝達部44を介して駆動されるように配設される。力伝達部44は、押鍵時に力を質量体43に伝達すると共に、発音位置の微調節用ねじでもある。鍵21の質量体駆動部WAは、滑加工面を有する。さらに、質量体43の下方で質量体支持部41の上方に位置するところには、支持部41の上面に基板SB2が載置され、この基板SB2上には質量体43により駆動される深スイッチ48が配設されている。鍵21W(21B)は、非押鍵時には、後部が上限ストッパ部USに当接されて静止しているが、押鍵時には、前方においてストッパ部WS、BSと当接し、このとき、質量体43は、後部下端がストッパ部41Sに当接する。この際、ストッパ部41Sにて質量体43は衝突が緩和されるので機械的雑音が軽減される。
【0035】
このような構成により、図示左側の矢印で示すように下方向に押鍵すると、鍵21の後方および質量体43の前方は、図示中央の矢印a1で示すように上方向に回動し、質量体43の後方は、図示右側の矢印a2で示すように下方向に回動する。離鍵時には、鍵21および質量体43は、それぞれ、矢印とは逆方向に回動して図示の位置に復帰する。
【0036】
[鍵スイッチ]
この実施形態においては、浅スイッチ47および深スイッチ48によって押離鍵ストロークを検出している。図2の例では、第1および第2アクチュエータ部45,46が鍵21および質量体43の下面に設けられ、第1アクチュエータ45により浅スイッチ47が駆動し、第2アクチュエータ部46により深スイッチ48が駆動する。
【0037】
ここで、各アクチュエータ部45,46と各スイッチ47,48との間の配置は、押鍵ストロークにおいて、先ず、第1アクチュエータ部45が浅スイッチ47に当接し、これに遅れて、第2アクチュエータ部46が深スイッチ48に当接するような関係になっている。浅スイッチ47および深スイッチ48は、何れも、ラバーで構成された2つの接点a,b;c,dを備える接点時間差タイプの2メイク式タッチレスポンススイッチであり、各接点a,b;c,dは基板SB1,SB2上における図示しない固定接点に対して閉成(オン)動作および開放(オフ)動作を行い、各閉成動作および開放動作の間にはストローク差が設定されている。
【0038】
すなわち、浅スイッチ47においては、例えば、押鍵ストロークで第1アクチュエータ部45が当接する場合、先ず、浅スイッチ47の第1接点aが閉成(オン)し、次に、浅スイッチ47の第2接点bが閉成する。深スイッチ48においても、例えば、押鍵ストロークで第2アクチュエータ部46が当接する場合、先ず、深スイッチ48の第1接点cが閉成し、次に、深スイッチ48の第2接点dが閉成する。また、離鍵ストロークでは、これとは逆に、深スイッチ48の接点d→c、浅スイッチ47の接点b→aの順に開放(オフ)していく。
【0039】
図3は実施形態における鍵スイッチの機能を説明するための図である。鍵盤装置10の各鍵21は、それぞれ、図2の状態に対応する離鍵(非押鍵)位置Sから最も深い最大押鍵位置Eまで、例えば、押指位置(例えば鍵先端)にて最大10mmだけ、上下方向に変位することができるように構成される。これに対して、鍵スイッチ即ち浅スイッチ47および深スイッチ48の第1および第2接点a〜dは、図3に示すように、鍵21の押鍵方向動作に応じて鍵位置A〜Dで閉成(オン)し、鍵21の離鍵方向動作に応じて鍵位置D〜Aで開放(オフ)する。
【0040】
例えば、離鍵(非押鍵)位置Sから最大押鍵位置Eに達するまで鍵21を押鍵すると、下方向に向かう押鍵ストロークでは、先ず、鍵位置Aで、浅スイッチ(SW)47の第1接点aを閉成(オン)して浅スイッチ(SW)47のオン区間が開始し、次に、鍵位置Bに達すると、浅スイッチ(SW)47の第2接点bを閉成して浅スイッチ(SW)47のオン区間が終了する。さらに、鍵位置Cにおいては、深スイッチ(SW)48の第1接点cを閉成して深スイッチ(SW)48のオン区間が開始し、鍵位置Dで、深スイッチ(SW)48の第2接点dを閉成して深スイッチ(SW)48のオン区間が終了する。その後、鍵21は最大押鍵位置Eに到達する。なお、以下の説明において「スイッチ」を適宜「SW」と表記する。
【0041】
逆に、鍵21が最大押鍵位置Eから上方向に向かう離鍵ストロークでは、先ず、鍵位置Dで、深SW48の第2接点dを開放(オフ)して深SW48のオン区間が開始し、次に、鍵位置Cに達すると、深SW48の第1接点cを開放して深SW48のオン区間が終了する。さらに、鍵位置Bにおいては、浅SW47の第2接点bを開放して浅SW47のオン区間が開始し、鍵位置Aで、浅SW47の第1接点aを開放して浅SW47はオフとなり、浅SW47のオン区間が終了する。そして、鍵21は離鍵(非押鍵)位置Sに復帰し、全押離鍵ストロークが完了する。
【0042】
この例では、4つの接点a〜dの閉成(オン)/開放(オフ)を常時チェックし、オン/オフ状態変化の時点および方向を計測することによって、全部で8種類のオン(閉成)およびオフ(開放)イベントから成るキーイベントが生成される。すなわち、浅SW47の第1および第2接点a,bおよび深SW48の第1および第2接点c,dは、押鍵に伴う位置A〜Dでの閉成(オン)によって4種類のオン(閉成)イベントを生成し、離鍵に伴う位置D〜Aでの開放(オフ)によって4種類のオフ(開放)イベントを生成する。そして、タッチデータを生成するために、各接点a〜dのうち所定の接点間のイベントの時間差(時間間隔)を計測する。
【0043】
なお、押鍵時に質量体43がその後端下部をストッパ41Sで受けることによって質量体43がリバウンドする場合のリバウンドリミット位置RLを、位置Cと位置Dとの間に設定することにより、質量体43のリバウンドによるチャタリングの発生を抑制することができる。
【0044】
〔制御データの構成〕
図18および図19は、RAM3上に確保されたフラグバッファおよびカウンタ領域のフォーマットを示しており、図18(A) は、各チャンネル(CH)n毎の発音情報および消音情報を記憶するためのキーバッファKEYBUFのフォーマットを表わし、図18(B) は、キーイベント種類データKV(n)の詳細を表わす。図19(A) は、各チャンネル(CH)n毎の時間差計測モードフラグTC(n)を記憶するためのフラグバッファTCBUFのフォーマットを表わし、図19(B) は、各チャンネルn毎のオン時間差Ton(n)およびオフ時間差Toff(n+16)を計測するためのカウンタ領域のフォーマットを表わす。
【0045】
キーバッファKEYBUFは、図18(A) に示すように、左端のチャンネルナンバ域NRの発音チャンネル番号n(この例では、“0”〜“15”の計16個)それぞれに対して、キーコードデータKC(n)を格納するためのキーコード格納領域CR、キーイベント種類データKV(n)を格納するためのキーイベント種類格納領域VR、キーオンタッチデータVon(n)を格納するためのキーオンタッチ格納領域VnR、および、キーオフタッチデータVoff(n+16)を格納するためのキーオフタッチ格納領域VfRにより構成される。
【0046】
キーイベント種類データKV(n)は、キーイベントを区別するためのデータであり、例えば、3ビットで表される。すなわち、3ビットの各データは、図18(B) に示すように、第3ビットがスイッチ種類を表わしており“0”=深スイッチ48、“1”=浅スイッチ47を示している。また、第2ビットが接点種類を表わしており“0”=第2接点(b又はd)(2M)、“1”=第1接点(a又はc)(1M)を示している。さらに、第1ビットがイベント種類を表わしており“0”=オフ(開放)、“1”=オン(閉成)を示している。
【0047】
例えば、図18(A) の例では、第0チャンネル(チャンネル番号=0)におけるキーイベント種類データKV(0)=“101”B(なお、記号「B」は、その直前の数値が2進数であることを示す。)は、浅スイッチ47の第2接点b(2M)のオン(閉成)イベントを示し、第1チャンネル(チャンネル番号=1)のキーイベント種類データKV(1)=“010”Bは、深スイッチ48の第1接点c(1M)のオフ(開放)イベントを示している。
【0048】
図19に示す時間差計測モードフラグTC(n)は、キーイベントの経緯に応じて4つの状態値“00”B,“01”B,“10”B,“11”Bをとり、これらの状態値は、図19(A) の欄外に示すように、次のような状態を表わす。
〔1〕TC(n)=“00”B→割込みによりオン時間差Ton(n)又はオフ時間差Toff(n+16)の何れをも計測しない状態、
〔2〕TC(n)=“01”B→割込みによりオン時間差Ton(n)を計測する状態、
〔3〕TC(n)=“10”B→割込みによりオフ時間差Toff(n+16)を計測する状態
〔4〕TC(n)=“11”B→オン時間差Ton(n)、オフ時間差Toff(n+16)の計測終了状態
また、図19(B) に示すように、カウンタ領域は各チャンネル番号に対応してオン時間差Ton(n)とオフ時間差Toff(n+16)のカウンタレジスタを構成している。
【0049】
図4は、実施形態における楽音発生の一例を説明する図であり、(a)は突っ込み発音の場合、(b)は非突っ込み発音の場合を示している。押鍵操作の鍵ストロークの過程で、浅スイッチ47の第1接点aが閉成(オン)した時点t1から第2接点bが閉成した時点t2までのオン時間差Ton(n)により、図20(A) に示す「Ton→Von変換」テーブルTBL1からキーオンタッチデータV1on(n)を取得する。
【0050】
第1実施例の場合は、キーオンタッチデータV1on(n)が所定値A1を越えているときは(a)の突っ込み発音となり、第2〜第4実施例では設定値であるDP値=“0”のとき突っ込み発音となる。そして、この突っ込み発音では、第2接点bが閉成した時点t2の直後から、音源手段7においてキーオン波形が読み出され、キーオンタッチデータVon(n)=V1on(n)に応じた楽音が発生される。
【0051】
一方、第1実施例でキーオンタッチデータV1onが所定値A1以下の場合および第2〜第4実施例でDP値=“0”でない場合は、時点t2ではキーオン波形は読み出されず、発音の制御がその後の深スイッチ48の状態に委ねられる。すなわち、深スイッチ48の第1接点cが閉成(オン)した時点t3から第2接点dが閉成した時点t4までのオン時間差Ton(n)により、図20(B) に示す「Ton→Von変換」テーブルTBL2からキーオンタッチデータV2on(n)が取得される。このキーオンタッチデータV2on(n)が所定値A2を越えている場合は(b)の非突っ込み発音となり、第2接点dが閉成した時点t4の直後から、音源手段7においてキーオン波形が読み出され、キーオンタッチデータVon(n)=V2on(n)に応じた楽音が発生される。
【0052】
また、キーオンタッチデータV2on(n)が所定値A2以下の場合はキーオン波形は読み出されず、発音されない。なお、第4実施例においては、DP値=“1”の場合は深スイッチ48の第1接点cが閉成した時点t3の直後から中位の(medium)非突っ込み発音(破線で図示)となる。
【0053】
そして、突っ込み発音、非突っ込み発音のいずれの場合も、浅スイッチ47の第2接点bが開成(オフ)した時点t5からキーオン波形はレートRonで減衰を開始する。ここで、この図4の例はピアノの音色のようにキーオフ音を付加する例であり、キーオン波形の減衰を開始するとともに、キーオフ波形が読み出されてレートR0で増加させる。これにより、キーオン波形とキーオフ波形のクロスフェード処理が行われる。そして、浅スイッチ47の第2接点bが開成した時点t5から第1接点aが開成した時点t6までのオフ時間差Toff(n+16)によりキーオフタッチデータVoff(n+16)が取得され、第1接点aが開成した時点t6からキーオフ波形がレートR1で減衰を開始して消音される。このレートR1はキーオフタッチデータVoff(n+16)に応じて制御される。
【0054】
上記のようにキーオフ波形を用いるのは、例えばピアノでは、ペダルを踏まない状態で離鍵すると、ダンパーが弦に徐々に当てられて弦の振動が強制的に減衰されることによる高調波を含んだ楽音をリアルに再現するためである。また、キーオン波形からキーオフ波形への移行を違和感なくスムーズに再生するため、波形のクロスフェード処理を行いつつ、キーオフ波形に移行し、キーオフ波形では、音量の減衰と音色変化とをともないながら再生される。また、ピアノでなく弦楽器の非突っ込み系楽器であるヴィオラダガンバやダブルベース等の音色に対する波形記憶/読出しについては、ピチカート奏法のみオフ波形をオフ時(t5)から読み出すシステムにしてもよい。
【0055】
なお、キーオフ波形を用いない音色の場合には、浅スイッチ47の第1接点aが開成した時点t6からキーオン波形を減衰してもよいし、第2接点bが開成した時点t5からキーオン波形を減衰してもよい。以下の実施例では、図4に示すように、キーオン波形の後、キーオフ波形を読み出すようにしているが、キーオフ波形を用いない音色の場合には、第1接点aが開成した時点t6からキーオン波形を減衰するものとする。
【0056】
さらに、t2〜t3またはt2〜t4もしくはt3〜t4の時間差(タイムインターバル)、すなわち、突っ込み発音/非突っ込み発音に起因するタイムラグは、演奏者の鍵タッチの態様(例えば「押し初めゆっくりでその後速く押鍵」、「初めから速くその後も速く押鍵」、「初めから最押下までゆっくりと押鍵」等)によって、コントロール可能だというこうとである。したがって、楽曲終了直前のピアニッシモで表現される楽音など、押鍵動作の深い部分で注意深く表現することが可能となっている。この表現はアコースティックピアノに近似している。
【0057】
次に、フローチャートに基づいて実施形態の動作について説明する。
〔メイン処理〕
図8は、実施形態の電子楽器におけるメイン処理のフローチャートであり、各実施例に共通である。この処理を開始すると、先ず、初期化ルーチンRT1において、RAM3内のキーバッファKEYBUF,フラグバッファTCBUF、カウンタ領域等が初期化され、デフォルト音色等の設定等、各種初期化処理を実行する。次の楽音制御パラメータ入力処理ルーチンRT2では、後述の各実施例に対応して、それぞれ、「突っ込み発音/非突っ込み発音」を制御するための所定値A1(第1実施例)、所定値A2(第1〜4実施例)、パーソナルデータ(第2実施例、第3実施例)あるいはDP値(第4実施例)の入力、音色(楽器種類等)の選択など、演奏者による各種の入力処理により指定されたパラメータをRAM3の対応レジスタ等に設定する処理を実行する。
【0058】
続いて、押離鍵処理ルーチンRT3において、演奏者による鍵盤装置10の押離鍵操作に応じて発音/消音制御情報を生成し、発音/消音制御情報を音源手段7に送出して発音/消音処理の実行を指示する。そして、楽音パラメータ設定処理ルーチンRT2に戻り、以後、ルーチンRT2、RT3の処理を繰り返す。
【0059】
この実施形態では、このメイン処理に並行して、所定時間(例えば、1μsec)毎に発生されるクロック発生器9からのタイマ割込みクロックに応じてタイマ割込み処理が起動される。この割込み処理は、押離鍵処理と連繋をとりながら処理が実行されるもので、鍵ストローク中のオン時間差およびオフ時間差の計測処理を行うが、その詳細については後述する。
【0060】
〔楽音制御パラメータ入力処理〕
図9は、楽音制御パラメータ入力処理(図8のRT2)の詳細を表すフローチャートである。まず、ステップP1において、パーソナルデータ入力またはパーソナルデータキーの何れかのオンイベントの有無を判定し、何れもオンイベントが無ければステップP7に進み、何れかのオンイベントが有ればステップP2で、キーバッファKEYBUFUの全チャンネル中にキーコード有りのチャンネルが有るか否かを判定する。一つのチャンネルでもキーコードが有れば、現在発音中であるので入力を禁止としてステップP7に進み、全チャンネルにキーコードが無ければ、現在発音中でないのでステップP3以降で入力処理を行う。
【0061】
ステップP3では、ディスプレイ12に「Pデータキー入力可能」を表示するか、または、ディスプレイ12中の入力部分においてその入力可能部分先端でカーソルをブリンクしてこのブリンクにより入力可能状態を表示する。次に、ステップP4で入力処理を行う。この入力処理は、テンキーあるいは文字キーまたはプッシュキーにて数字または文字を入力する処理、入力文字をディスプレイ12に表示する処理、カーソル位置をシフトする処理などを行う。そして、ステップP5で、リターンキー(入力確定を指定するキー)のオンイベントの有無を判定し、リターンキーのオンイベントがあるまで、P3,P4により入力処理を行う。リターンキーのオンイベントがあればステップP6に進む。ステップP6では、P3のブリンクを停止し、入力可能表示を消す。
【0062】
ステップP7の処理は各実施例に応じて異なる。第1実施例では、テンキーから入力された数値を所定値A1あるいは所定値A2として設定する。第2実施例、第3実施例では、入力された文字列を識別し、識別した文字列MOJIにより、各実施例に対応する図6の落とし込みテーブルTBL1(x)または図7の落とし込みテーブルTBL2(x)を参照し、この文字列で各実施例に対応するDP値を所定値(“0”/“1”)に設定する。また、所定値A2を設定する。さらに、第4実施例では、テンキーから入力された数値(“0”/“1”/“2”)をDP値に設定し、また、所定値A2を設定する。すなわち、このステップP7で各実施例に対応する所定値A1、A2またはDP値が決まり、ステップP8の処理に進む。ステップP8では、ディスプレイ12をパーソナリティデータ表示モードから音色表示モードに変更して音色の入力処理を行ったり、その他入力処理を行い、メインルーチンに復帰する。
【0063】
図10〜図12は、実施形態における押離鍵処理(図8のRT3)の詳細を表わすフローチャートである。なお、最初に第1実施例について主に説明するが、図10は第1〜第4実施例に共通、図11は第1〜第4実施例に殆ど共通、また、図12は第1〜第3実施例に殆ど共通であり、異なる部分はその都度断ってその詳細については後述する。
【0064】
(第1実施例)
第1実施例は、突っ込み発音するか非突っ込み発音するかを決定する鍵タッチ信号の閾値である第1の所定値A1と、第2の所定値A2を演奏者が入力設定するものであるが、後述のように音色に対応して設定するようにしてもよい。まず、図10のステップK1において、何れかの鍵のキーイベントの有無を判別し、キーイベントが有ればステップK2に進み、キーイベントがなければ直ちにメインルーチンに復帰する。
【0065】
ステップK2では、キーバッファKEYBUFにおいて、発生したキーイベントのキーコードKC(n)を格納しているチャンネル(CH)があるか否かを判別し、当該キーコードを格納したチャンネル(CH)があればステップK4に進む。一方、このようなチャンネル(CH)がなければステップK3に進んで、RAM3上のキーバッファKEYBUFにおいてキーコード領域CRにキーコードデータKC(n)が格納されていない「空きチャンネル(CH)」があるか否かを調べる。その結果、空きチャンネル(CH)があればステップK4に進み、そうでなければ直ちにメインルーチンに復帰する。ここで、メインルーチンに復帰するということは、過去の短時間に多くのイベントが発生し、多くの発音/消音処理の実行中であるから、これ以上新押鍵処理は不可能であることによる処理であり、今発生したイベントを無視する。
【0066】
ステップK4では発音を割り当てるチャンネル(CH)を決定し、続いて、ステップK5にて、キーバッファKEYBUFにおいて、チャンネル番号領域NR内の決定したチャンネル番号nに対応するキーコード領域CRおよびキーイベント種類領域VRに、発生したキーイベントのキーコードKC(n)およびキーイベント種類KV(n)をそれぞれ書き込んだ後、ステップK6に進む。
【0067】
ステップK6では、キーイベントが浅スイッチ47から発生したか否かを判別し、浅スイッチ47のキーイベントのときはステップK7に進み、そうでないときは、深スイッチ48のキーイベントであるのでステップK8に進む。ステップK7,K8では、それぞれイベントがオン/オフの何れのイベントであるかを判定し、これにより、イベントのあったスイッチの種類とイベントの種類に応じて制御のフローが変化する。
【0068】
ここで、楽音の発生から消滅に至るプロセスでは、通常、図3に示した押鍵ストローク→離鍵ストロークとなり、これに応じた順序でイベントが発生する。そこで、この押鍵ストローク→離鍵ストロークのプロセスで発生するイベントの順序(接点aオン→接点bオン→接点cオン→接点dオン→接点dオフ→接点cオフ→接点bオフ→接点aオフ)に従って、動作を説明する。
【0069】
≪接点aオン≫
まず、浅スイッチ47の第1接点aのオンイベントが発生するので、図10のステップK7から図11のステップA1に進む。なお、図11のステップA6は第1実施例の処理であり、図11のステップA6以外の処理は第1〜第4実施例に共通である。ステップA1では、オンイベントが第1接点aであるか第2接点bであるかを判定し、第1接点aのオンイベントであるのでステップA2に進み、時間差計測モードフラグTC(n)に“01”Bをセットし、元のルーチンに復帰する。これにより、同時に進行しているタイマ割込み処理により、カウンタ領域の対応するチャンネルnでオン時間差Ton(n)のカウント(計測)が開始される。
【0070】
≪接点bオン≫
次に、浅スイッチ47の第2接点bのオンイベントが発生するので、図10のステップK7から図11のステップA1を経てステップA3に進む。ステップA3では、浅スイッチ47のオン時間差Ton(n)から変換テーブルTBL1に基づいて第1タッチデータTBL1(Ton(n))を取得し、KEYBUF(キーオンタッチデータ領域VnR)のV1on(n)に取り込み、ステップA4に進む。なお、オン時間差Ton(n)は第1接点aのオンイベントから第2接点bのオンイベントまでの時間である。
【0071】
ステップA4では、オン時間差のレジスタTon(n)をリセットし、ステップA5で、時間差計測モードフラグTC(n)に“11”Bを格納して非計測モードに設定し、ステップA6に進む。ステップA6では、タッチデータV1on(n)が所定値A1を越えているか否かを判定し、所定値A1以下であればステップA7で発音延期フラグWAIT(n)に“1”を立てて元のルーチンに復帰する(第1実施例)。なお、このステップSA6に対応する第2〜第4実施例の処理については後述する。一方、タッチデータV1on(n)が所定値A1を越えていれば、ステップA8でタッチデータV1on(n)を音源送出用のレジスタVon(n)に格納し、ステップA9で発音処理を行って元のルーチンに復帰する。なお、この発音処理では、チャンネルデータ(n)とキーコードKC(n)とキーオン(n)およびVon(n)を音源手段7に送出し、これにより楽音が発生する。
【0072】
このように、浅スイッチ47の第2接点bのオンイベント時にオン時間差Ton(n)が検出され、この時間差に応じたタッチデータV1on(n)が所定値A1を越えているとき、すなわち強く弾かれたときは、ステップA9で直ぐに発音が開始され、「突っ込み発音」となる。また、タッチデータV1on(n)が所定値A1以下のとき、すなわち弱く弾かれたときは、発音が延期され、後述のように、後に続く深スイッチ48のタッチデータに基づく発音/非発音の判断に委ねられる。
【0073】
≪接点cオン≫
次に、押鍵が進んで深スイッチ48の第1接点cのオンイベントが発生するので、図10のステップK8から図12のステップB1に進む。なお、図12は第1〜第3実施例に共通の処理であり、第4実施例の場合は、図10のステップK8から後述する図17のステップB101に進む。図12のステップB1では、オンイベントが第1接点cであるか第2接点dであるかを判定し、第1接点cのオンイベントであるのでステップB2に進み、このステップB2で時間差計測モードフラグTC(n)に“01”Bをセットして、元のルーチンに復帰する。これにより、深スイッチ48による接点の時間差の計測が開始される。
【0074】
≪接点dオン≫
次に、深スイッチ48の第2接点dのオンイベントが発生するので、図10のステップK8から図12のステップB1を経てステップB3に進む。なお、第4実施例の場合は、図10のステップK8から図17のステップB101に進む。図12のステップB3では、深スイッチ48のオン時間差Ton(n)から変換テーブルTBL2に基づいて第2タッチデータTBL2(Ton(n))を取得し、KEYBUFのV2on(n)に取り込み、ステップB4に進む。なお、オン時間差Ton(n)は第1接点cのオンイベントから第2接点dのオンイベントまでの時間である。
【0075】
ステップB4では、オン時間差のレジスタTon(n)をリセットし、ステップB5で、時間差計測モードフラグTC(n)に“11”Bを格納して非計測モード(計時終了状態)に設定し、ステップB6に進む。ステップB6では、タッチデータV2on(n)が所定値A2を越えているか否かを判定し、所定値A2以下であれば元のルーチンに復帰する。一方、タッチデータV2on(n)が所定値A2を越えていれば、ステップB7で、発音延期フラグWAIT(n)に“1”が立っているか否かを判定し、“1”が立っていなければ元のルーチンに復帰する。そして、“1”が立っていれば、ステップB8でタッチデータV2on(n)を音源送出用のタッチデータVon(n)とし、ステップB9で発音処理を行い、ステップB10で発音延期フラグWAIT(n)をリセットして元のルーチンに復帰する。なお、発音処理では、チャンネルデータ(n)とキーコードKC(n)とキーオン(n)およびVon(n)とを音源手段7に送出し、これにより発音が行われる。
【0076】
このように、突っ込み発音しないで浅スイッチ47のオンイベント時から発音が延期された場合、深スイッチ48による時間差に応じた第2のタッチデータV2on(n)と第2の所定値A2とにより発音するか発音しないかが判断される。そして、第2のタッチデータV2on(n)が所定値A2を越えているときは発音が開始され、「非突っ込み発音」となる。
【0077】
また、第2タッチデータV2on(n)が第2の所定値A2以下のときは発音されない。この第2の所定値A2は、例えば通常のタッチデータに対して小さな値に設定し、この所定値A2で発音を抑制することにより、探り弾き等による誤発音を防止することができる。なお、この実施形態では第2の所定値A2を入力設定するようにしているが、第2の所定値A2は予め設定された値でもよいし、音色毎に設定された値でもよい。
【0078】
≪接点dオフ,接点cオフ≫
次に、離鍵が開始されると、深スイッチ48の第2接点dのオフイベントおよび第1接点cのオフイベントが順次発生するが、いずれの場合も、図10のステップK8から元のルーチンに復帰し、何も処理をしない。
【0079】
≪接点bオフ≫
次に、浅スイッチ47の第2接点bのオフイベントが発生すると、図10のステップK7から図13のステップC1に進む。なお、図13はキーオフ処理に対応するフローであり、第1〜第4実施例に共通である。ステップC1では、オフイベントが第1接点aであるか第2接点bであるかを判定し、第2接点bのオフイベントであるのでステップC2に進み、ステップC2で現在設定されている音色がキーオフ波形を付加する音色(例えばピアノ)であるか否かを判定する。キーオフ波形を付加する音色でなければそのままステップC4に進み、キーオフ波形を付加する音色であれば、ステップC3で、レート値Rn(n)にRonをレートR(n+16)にR0にセットして音源手段7に出力し、キーオン波形とキーオフ波形のクロスフェード処理を指示してステップC4に進む。
【0080】
そして、ステップC4で、時間差計測モードフラグTC(n+16)を“10”B(Toff計測)にセットしてオフ時間差Toff(n+16)の計測を開始させ、元のルーチンに復帰する。
【0081】
≪接点aオフ≫
次に、浅スイッチ47の第1接点aのオフイベントが発生すると、図10のステップK7から図13のステップC1を経てステップC5に進む。ステップC5では、浅スイッチ47のオフ時間差Toff(n+16)から変換テーブルTBL2に基づいて第3タッチデータTBL2(Toff(n+16))を取得し、KEYBUF(キーオフタッチデータ格納領域VfR)のVoff(n+16)に取り込み、ステップC6に進む。なお、オフ時間差Toff(n+16)は第2接点bのオフイベントから第1接点aのオフイベントまでの時間である。
【0082】
次に、ステップC6で、オフ時間差のレジスタToff(n+16)をリセットし、ステップC7で、消音処理を行う。このステップC7の消音処理では、キーオフタッチデータVoff(n+16)からレートR1を求め、チャンネルデータ(n)、キーコードKC(n)、キーオフ(n)、およびレートR1を音源手段7に送出し、キーバッファKEYBUFおよびカウンタ領域の当該チャンネルのデータをクリアし、元のルーチンに復帰する。これにより、音源手段7において消音される。
【0083】
〔タイマ割込み処理〕
図14は、タイマ割込み処理のフローチャートである。このタイマ割込み処理では、時間差計測モードフラグTC(n)の状態値に応じてオン時間差Ton(n)又はオフ時間差Toff(n+16)の計測を行う。まず、ステップT1で、フラグバッファTCBUFの全てのチャンネル(CH)の時間差計測モードフラグTC(0)〜TC(31)が“00”Bまたは“11”B(不計時状態/計時終了状態)であるか否かを判別し、全チャンネルのフラグTC(0)〜TC(31)が“00”Bまたは“11”Bのときは元のルーチンに復帰し、そうでないときはステップT2に進む。
【0084】
ステップT2では、フラグバッファTCBUF内において“00”Bまたは“11”Bでない時間差計測モードフラグを識別し、チャンネル(CH)番号nを決定する。この場合、最初の番号値nは、“1”とする(或いは、“00”Bまたは“11”Bでない時間差計測モードフラグのある該当チャンネル(CH)のうち最も小さいチャンネル(CH)番号とする)。すなわち、チャンネル番号の最小値から最大値までをスキャンし、すべての“00”Bまたは“11”Bでないチャンネルを抽出する。その手法は様々であるが、チャンネル番号を更新する処理を含む。
【0085】
次に、ステップT3で、決定されたチャンネルnの時間差計測モードフラグTC(n)が“01”Bであるか否かを判別する。TC(n)が“01”B(Ton計測)のときは、ステップT4でカウンタ領域のオン時間差Ton(n)(現在までのカウント値)を“1”だけインクリメントし、ステップT6に進む。一方、TC(n)が“01”Bでないときは、ステップT5でカウンタ領域のオフ時間差Toff(n)(現在までのカウント値)を“1”だけインクリメントし、ステップT6に進む。そして、ステップT6では、現チャンネル番号nが最大チャンネル番号値MAX(ステップT2でサーチ対象とするチャンネル番号の最大値)であるか否かを判別し、チャンネル番号nが最大チャンネル番号値MAXであるときは元のルーチンに復帰し、そうでないときは、ステップT2に進んで前回のチャンネル番号値nを含まない他のチャンネル番号を抽出した上、ステップT3以降の処理をする。
【0086】
以上の処理により、浅スイッチ47および深スイッチ48の各オン時間差Ton(n)、浅スイッチ47および深スイッチ48の各オフ時間差Toff(n)が得られる。なお、この実施形態では浅スイッチ47の時間差データを利用するのみで、深スイッチ48のオフ時間差のデータは処理に利用しないが、何らかの制御(例えば音色制御:オフベロシティが大ほど発音中の楽音の高調波含有率を上げる)に利用するようにしてもよい。
【0087】
上記のように、浅スイッチ47から得られるキーオンタッチデータが所定値A1を越えるような押鍵操作により突っ込み発音を行うことができ、所定値A1以下となるような押鍵操作により非突っ込み発音が可能となる。そして、深スイッチ48から得られるキーオンタッチデータが所定値A2を越えるような押鍵操作により、非突っ込み発音となる。したがって、例えば初心者でも表現力やアーティキュレーションが増大し、演奏し易い電子楽器となる。さらに、深スイッチ48から得られるキーオンタッチデータが所定値A2以下となるような押鍵操作のときは非発音となるので、探り弾き等による誤発音を防止できる。すなわち、探り弾きしたとしても、そのタッチが弱いはずなので、発音しないことが多いということである。
【0088】
また、所定値A1>所定値A2とすると、スタッカート奏法の条件を満たすことになるので、スタッカート奏法が上手くなる。なぜなら、押し弾き奏法では発音されにくいからである。また、強タッチの押鍵操作に限り突っ込み発音が可能となり、弱タッチでは、発音がわずかに遅れる(より正確には発音位置が押鍵方向に沈む)ので、ピアノの鍵をゆっくりと押した場合と同じような感覚として作用し、ピアニシモ(PP)がよりアコースティックピアノらしくなる。また、所定値A1<所定値A2とすると、A2を比較的小にした場合には弱タッチでも突っ込み発音が可能となり、力の弱い小指による表現力も強化され、A1を比較的大とすれば、比較的タッチを大にしないと発音されないので、指の練習になる。
【0089】
以上の実施例では、図12のステップB7において発音延期フラグWAIT(n)に“1”が立っていない場合、すなわち、突っ込み発音を行なっている場合、そのまま元のルーチンに復帰するようにしているが、ステップB7の判定がNOの後の処理として、図15(A) に示した処理を行うようにしてもよい。すなわち、ステップB7において発音延期フラグWAIT(n)に“1”が立っていない場合、ステップB7−1で、深スイッチ48に基づいて検出されたキーオンタッチデータV2on(n)が浅スイッチ47に基づいて検出されたキーオンタッチデータV1on(n)を越えているか否かを判定し、越えていなければ元のルーチンに復帰する。一方、V2on(n)がV1on(n)を越えていれば、ステップB7−2で、キーオンタッチデータV2on(n)をレジスタVon(n)に格納して音源手段7に送出し、発音中のキーオンタッチデータVon(n)を書き換える。
【0090】
これにより、図15(B) に示したように、V2on(n)>V1on(n)でない場合は、破線のように音量がスタッカート的奏法に対応する楽音となるが、V2on(n)>V1on(n)の場合は、音量が実線のように変化して押し弾きの場合に対応する楽音となる。なお、図15(B) 中の時間t2、t4は図4のt2、t4に対応している。
【0091】
なお、以上の第1実施例では、所定値A1あるいはA2をパネルスイッチ11のテンキー等の操作子で入力するようにしているが、例えばスライド操作子やホイール操作子など、既存の操作子、あるいは別途設けた操作子により入力設定できるようにしてもよい。
【0092】
また、以上の第1実施例では、突っ込み発音するか否かを決定する第1の所定値A1を演奏者が入力設定するようにしているが、例えば、図5に示したテーブル等を用い、音色に対応して所定値A1を設定するようにしてもよい。例えば、パイプオルガン、ヴィオラダガンバ、バスーン、ホルン、オーボエなどをシミュレートする音色では、そのエンベロープにより実質的な発音が遅れ気味になる(すなわち、アコースティックな上記楽器の発音は、所定発音タイミングから楽音が立ち上がるが、人の耳に聞こえる程度に成長するのにタイムラグが生じるという意味であり、音のかたまり(音価)の大きさ(音のエネルギーととらえるとわかりやすい)が実質的に知覚されるタイミングは、実発音開始タイミングからわずかに遅れる)ので、所定値A1を“0”に設定しておくことで常に「突っ込み発音」となり、初心者が演奏しても発音タイミングの遅れを防止することができる。また、鉄琴や木琴の音色は発音が立ち上がりが速いので、所定値A1を最大値(MIDI規格のベロシティ“127”)に設定して、常に「非突っ込み発音」とする。
【0093】
(第2実施例)
第2実施例は、突っ込み発音するか非突っ込み発音するかを決定するDP値を、演奏者が「何プレーヤーであるか」に応じて入力設定するものである。すなわちり、図9の楽音制御パラメータ入力処理のステップP4〜P7において、入力された文字列MOJIにより、例えば図6の落とし込みテーブルTBL1(x)を参照し、この文字列(プレーヤー名等)でDP値を所定値(“0”/“1”)に設定する。なお、第2の所定値A2は演奏者が入力設定するものである。そして、図10の押鍵処理を経て図11のステップA6以外は前記第1実施例と同様の処理を行う。
【0094】
この第2実施例では図11のステップA6の代わりに図16の処理を行う。すなわち、浅スイッチ47の第2接点bの閉成により浅スイッチ47のオン時間差からタッチデータV1on(n)を取得し、ステップA5で、時間差計測モードフラグTC(n)に“11”Bを格納した後、ステップA6′に進む。ステップA6′では、DP値が“0”であるか否かを判定し、DP値が“0”でなければステップA7で発音延期フラグWAIT(n)に“1”を立てて元のルーチンに復帰する。そして、DP値が“0”であれば、ステップA8でタッチデータV1on(n)を音源送出用のレジスタVon(n)に格納し、前記ステップA9(図11)で発音処理を行う。なお、深スイッチ48のオンイベントのときは図12の処理を行い、浅スイッチ47のオフイベントのときは図13の処理を行うことは、第1実施例と同様である。
【0095】
以上の第2実施例では、DP値が“0”のとき「突っ込み発音」となり、DP値が“1”のとき「非突っ込み発音」となる。図6に示したように、パーソナルデータが「何プレーヤー」であるかに対して、ピアノ、ギター、鉄琴、木琴等のプレーヤーとして入力した場合はDP値=0となり、ヴィオラダガンバ、バスーン、オーボエ、ホルン、パイプオルガン等のプレーヤーとして入力したときはDP値=1となる。したがって、例えばパイプオルガンのように発音が遅れがちになる音色が現在選択されれいる場合、ピアノ〜木琴の「プレーヤー」は突っ込み発音により発音タイミングの遅れを防止できる。ヴィオラダガンバ〜パイプオルガンの「プレーヤー」は通常の演奏でよい。
【0096】
また、例えばピアノの音色が現在選択されている場合、ピアノ〜木琴の「プレーヤー」は突っ込み発音により、従来のピアノの伝達機構特有の伝達遅れによる発音の遅れを感じさせないアーティキュレーションの優れたジャストタイミングの発音となり、ヴィオラダガンバ〜パイプオルガンの「プレーヤー」は非突っ込み発音により、同様にアーティキュレーションの優れたピアノの発音が得られる。
【0097】
(第3実施例)
第3実施例は、突っ込み発音するか非突っ込み発音するかを決定するDP値を、演奏者が「何プレーヤーであるか」および「プロであるかアマチュア」であるかに応じて入力設定するものである。すなわち、図9の楽音制御パラメータ入力処理のステップP4〜P7において、入力された文字列MOJIにより、例えば図7の落とし込みテーブルTBL2(x)を参照し、この文字列(プレーヤー名、「プロ」/「アマ」等)でDP値を所定値(“0”/“1”)に設定する。また、第2の所定値A2は演奏者が入力設定するものである。なお、DP値および所定値A2に応じた制御は第2実施例と同様である。
【0098】
これにより、例えばピアノプレーヤーの場合、アマチュアを選択すると突っ込み発音となり、演奏動作が遅れ気味になる初心者でも、表現力やアーティキュレーションが増大してプロ並みに演奏でき、演奏し易い電子楽器となる。
【0099】
(第4実施例)
第4実施例は、突っ込み発音するか非突っ込み発音するかを決定するDP値を3段階の中から演奏者が入力設定するものである。また、第2の所定値A2は演奏者が入力設定するものである。すなわち、図9の楽音制御パラメータ入力処理において、DP値を例えばテンキーで“0”または“1”または“2”を選択して入力する。この第4実施例では、図10、図11、図16および図13の前記第2実施例と同様な処理を行い、DP値が“0”の場合は、図11および図16の処理で突っ込み発音され、DP値が“0”以外のときは、図16のステップA6′およびステップA7を経て、発音が延期される。そして、深スイッチ48のオンイベントの時に、図10のステップK8から図17のステップB101に進む。
【0100】
ステップB101では、発音延期フラグWAIT(n)に“1”が立っているか否かを判定し、“1”が立っていなければ元のルーチンに復帰する。そして、“1”が立っていれば、ステップB102で、DP値が“1”であるか否かを判定し、DP値が“1”でなければステップB105に進み、DP値が“1”であれば、ステップB103に進む。ステップB103では、タッチデータV1on(n)を音源送出用のレジスタVon(n)に格納し、ステップB104で、前記同様な発音処理を行い、ステップB115で発音延期フラグWAIT(n)をリセットして元のルーチンに復帰する。これにより、図4に示したように深スイッチ48の第1接点cが閉成した時点t3の直後から中位の(medium)非突っ込み発音が行われる。
【0101】
ステップB105では、DP値が“2”であるか否かを判定し、DP値が“2”でなければ元のルーチンに復帰し、DP値が“2”であれば、ステップB106以降の処理を行う。なお、ステップB106〜B110の処理は、図12のステップB1〜B10の処理と同じであり、DP値が“2”のときは、浅スイッチ47のオンイベント時および深スイッチ48の第1接点cの閉成時に発音が延期され、深スイッチ48の第2接点dが閉成した直後に、第2のタッチデータV2on(n)が所定値A2を越えているときは発音が開始され、「非突っ込み発音」となる。また、第2タッチデータV2on(n)が第2の所定値A2以下のときは発音されない。なお、深スイッチ48のオフイベントのときは、図10のステップK8から元のルーチンに復帰し、浅スイッチ47のオフイベントのときは図13の処理を行うことは、他の実施例と同様である。
【0102】
以上のように、第4実施例では、浅スイッチ47および深スイッチ48の4つの接点のうち最初の2つはタッチデータV1on(n)を取得するために利用し、タッチデータV1on(n)が取得された2接点めで発音開始するモード(DP値=0)と、深スイッチ48の第1接点cのオンイベントで発音開始するモード(DP値=1)と、深スイッチ48の第2接点dのオンイベントで発音開始するモード(DP値=2)とがある。
【0103】
この第4実施例によれば、突っ込み発音、中位の非突っ込み発音、および非突っ込み発音を選択することができ、さらに演奏し易い電子楽器となる。例えばパイプオルガンのように発音が遅れがちになる音色に対して、ピアノ〜木琴の「プレーヤー」はDP値=0にして「突っ込み発音」とし、ヴィオラダガンバ〜パイプオルガンの「プレーヤー」はDP値=1として「中位の非突っ込み発音」とし、ピアノのような音色に対して、ピアノ〜木琴の「プレーヤー」はDP値=0または1にして「突っ込み発音または中位の非突っ込み発音」とし、ヴィオラダガンバ〜パイプオルガンの「プレーヤー」はDP値=2として「非突っ込み発音」としてもよい。
【0104】
また、鍵ストロークの全行程で鍵の位置をセンシングするような技術を用いてもよいが、この第4実施例によれば浅スイッチ47および深スイッチ48の2つのメカニックなスイッチだけで制御しているので、鍵ストロークの検出精度(確度)が高い。さらに、制御フローが簡単で、全行程センシングのようなソフト処理も必要なく、押鍵操作に対応して処理速度を速くすることができる。
【0105】
以上の実施例では、4つの接点のオン/オフに応じて発音タイミングを制御するようにしているが、3つの接点の鍵スイッチを用い、押鍵ストロークの前2つの接点の時間差から取得したタッチデータに応じて、突っ込み発音をするようにしてもよい。
【0106】
また、鍵ストローク中の接点数を増やしたり、さらに、全行程センシングを利用し、設定できるDP値の数を増やし、非突っ込み発音の態様(発音タイミング)を多段に設定できるようにしてもよいし、無段階に設定できるようにしてもよい。この場合、タッチデータも、発音直前のデータや、押鍵初期、あるいは、中間、またはそれらをミックスして平均を取ったデータを利用してもよい。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の電子楽器によれば、鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号が閾値を越えるような押鍵操作により突っ込み発音が可能であり、かつ、この第1の鍵タッチ信号が閾値以下となるような押鍵操作により非突っ込み発音が可能となるので、例えば初心者でも表現力やアーティキュレーションが増大し、演奏し易い電子楽器となる。
【0109】
また、請求項2の電子楽器によれば、鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号が第1閾値を越えるような押鍵操作により突っ込み発音が可能であり、また、この鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号が第1閾値以下で、かつ、鍵ストロークの深い方で発生される第2の鍵タッチ信号が第2閾値を越えるような押鍵操作により、非突っ込み発音が可能となるので、例えば初心者でも表現力やアーティキュレーションが増大し、演奏し易い電子楽器となる。さらに、鍵ストロークの深い方で発生される鍵タッチ信号が第2閾値以下となるような押鍵操作のときは非発音となるので、探り弾き等による誤発音を防止できる。
【0110】
また、請求項3の電子楽器によれば、請求項2と同様の効果が得られる。
【0111】
また、請求項4の電子楽器によれば、請求項2または3と同様な効果が得られるとともに、押鍵操作に応じて突っ込み発音と非突っ込み発音が可能となり、第1閾値>第2閾値とすると、強タッチの押鍵操作に限り突っ込み発音が可能となり、ピアニシモ(PP)がよりピアノらしくなり、また、第1閾値<第2閾値とすると、弱タッチでも突っ込み発音が可能となり、指の練習になったり、力の弱い小指による表現力も強化され、スタッカート奏法が上手くなる。したがって、例えば初心者でも表現力やアーティキュレーションが増大し、演奏し易い電子楽器となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の電子楽器のブロック図である。
【図2】実施形態に係る鍵盤装置を示す図である。
【図3】実施形態における鍵スイッチの機能を説明するための図である。
【図4】実施形態における楽音発生の一例を説明する図である。
【図5】実施形態における所定値を音色で設定する場合のテーブルの一例を示す図である。
【図6】実施形態における落とし込みテーブルTBL1(第2実施例)を示す図である。
【図7】実施形態における落とし込みテーブルTBL2(第3実施例)を示す図である。
【図8】実施形態におけるメイン処理のフローチャートである。
【図9】実施形態における楽音制御パラメータ入力処理のフローチャートである。
【図10】実施形態における押離鍵処理のフローチャートの一部である。
【図11】実施形態における押離鍵処理のフローチャートの他の一部である。
【図12】実施形態における押離鍵処理のフローチャートの他の一部である。
【図13】実施形態における押離鍵処理のフローチャートの他の一部である。
【図14】実施形態におけるタイマ割込み処理のフローチャートである。
【図15】実施形態における突っ込み発音を行っている場合のタッチデータを変更する他の実施例のフローチャートおよび作用を説明する図である。
【図16】実施形態における第2実施例に係るフローチャートである。
【図17】実施形態における第4実施例に係るフローチャートである。
【図18】実施形態におけるキーバッファおよびキーイベント種類データのフォーマットを示す図である。
【図19】実施形態におけるフラグバッファTCBUFとカウンタ領域のフォーマットを示す図である。
【図20】実施形態における「Ton→Von変換」テーブルTBL1および「Ton→Von変換」テーブルTBL2を示す図である。
【符号の説明】
1…CPU、7…音源手段、10…鍵盤装置、21W…白鍵、21B…黒鍵、47…浅スイッチ、48…深スイッチ
Claims (4)
- 押離鍵操作される鍵と、
該鍵を押鍵操作した時の鍵ストローク中浅い位置における押鍵操作速度に応じた第1の鍵タッチ信号を生成する第1のタッチセンサと鍵ストローク中深い位置における押鍵操作速度に応じた第2の鍵タッチ信号を生成する第2のタッチセンサとでなる鍵タッチセンサ手段と、
該鍵タッチセンサ手段で生成される鍵タッチ信号に基づいて楽音を制御する楽音制御手段と、
前記鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号の強さが閾値以下のとき、前記鍵ストロークの深い方で発生される第2の鍵タッチ信号に応じて楽音の発音開始/非発音を制御する発音制御手段と
を備えたことを特徴とする電子楽器。 - 押離鍵操作される鍵と、
該鍵を押鍵操作した時の鍵ストローク中浅い位置における押鍵操作速度に応じた第1の鍵タッチ信号を生成する第1のタッチセンサと鍵ストローク中深い位置における押鍵操作速度に応じた第2の鍵タッチ信号を生成する第2のタッチセンサとでなる鍵タッチセンサ手段と、
該鍵タッチセンサ手段で生成される鍵タッチ信号に基づいて楽音を制御する楽音制御手段と、
前記鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号の強さが第1閾値以下のとき、前記鍵ストロークの深い方で発生される第2の鍵タッチ信号の強さが第2閾値を越えているとき発音を開始し、該第2の鍵タッチ信号の強さが第2閾値以下のとき非発音に制御する発音制御手段と
を備えたことを特徴とする電子楽器。 - 押離鍵操作される鍵と、
該鍵を押鍵操作した時の鍵ストローク中浅い位置における押鍵操作速度に応じた第1の鍵タッチ信号を生成する第1のタッチセンサと鍵ストローク中深い位置における押鍵操作速度に応じた第2の鍵タッチ信号を生成する第2のタッチセンサとでなる鍵タッチセンサ手段と、
該鍵タッチセンサ手段で生成される鍵タッチ信号に基づいて楽音を制御する楽音制御手段と、
前記鍵ストロークの浅い方で発生される第1の鍵タッチ信号の強さが第1閾値を越えているとき、該第1の鍵タッチ信号の検出直後に楽音の発音を開始するよう制御する一方、前記鍵ストロークの深い方で発生される第2の鍵タッチ信号の強さが第2閾値を越えているとき発音を開始し、該第2の鍵タッチ信号の強さが第2閾値以下のとき非発音に制御する発音制御手段と
を備えたことを特徴とする電子楽器。 - 前記第1閾値と前記第2閾値とを異ならせて設定するようにしたことを特徴とする請求項2または3いずれかに記載の電子楽器。
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