JP3718634B2 - 姿勢検出装置 - Google Patents

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Description

〔技術分野〕
本発明は、機械、機器などに用いて、その姿勢を高精度で検出することができる姿勢検出装置に関する。
〔背景技術〕
(従来の姿勢検出装置)
例えば、特開平6−307805号公報に開示されている従来の姿勢検出装置は、中空状の外球面体と、外球面体の中空部に所定の層空間を設けて固定された内球面体とを有し、外球面体の内側全域に設けられた電極を含む第一導電領域と、内球面体の外側に斑点状に設けられた複数の電極を含む第二導電領域との間に流体導電体を配置する。この従来の姿勢検出装置では、流体導電体が第一導電領域と第二導電領域との間の層空間内を移動することができ、流体導電体が第二導電領域にある電極のうちの1つと第一導電領域の電極を導通させることにより、装置の姿勢を検出することができるように構成されている。
(従来の機械式時計のぜんまいトルク、てんぷの振り角)
一般的に、従来の機械式時計は姿勢検出装置を備えていない。このような従来の代表的な機械式時計では、図30に示すように、ぜんまいを完全に巻き上げた状態(全巻き状態)からぜんまいが解かれて持続時間が経過するにつれて、ぜんまいトルクは減少する。例えば、図30に示す場合では、ぜんまいトルクは、全巻き状態で約27g・cmであり、全巻き状態から20時間経過すると約23g・cmになり、全巻き状態から40時間経過する約18g・cmになる。
一般的に、従来の代表的な機械式時計では、図31に示すように、ぜんまいトルクが減少すると、てんぷの振り角も減少する。例えば、図31に示す場合では、ぜんまいトルクが25〜28g・cmのとき、てんぷの振り角は約240〜270度であり、ぜんまいトルクが20〜25g・cmのとき、てんぷの振り角は約180〜240度である。
(従来の機械式時計の瞬間歩度)
図32を参照すると、従来の代表的な機械式時計におけるてんぷの振り角に対する瞬間歩度(時計の精度を示す数値)の推移が示されている。ここで、「瞬間歩度」とは、「歩度を測定したときのてんぷの振り角等の状態や環境を維持したまま、機械式時計を1日放置したと仮定したとき、1日たったときの機械式時計の進み、又は、遅れを示す値」という。図32に示す場合では、てんぷの振り角が240度以上のとき、或いは、200度以下のとき、瞬間歩度は遅れる。
例えば、従来の代表的な機械式時計では、図32に示すように、てんぷの振り角が約200〜240度のとき、瞬間歩度は約0〜5秒/日であるが(1日につき約0〜5秒進み)、てんぷの振り角が約170度のとき、瞬間歩度は約−20秒/日になる(1日につき約20秒遅れる)。
図27を参照すると、従来の代表的な機械式時計における全巻き状態からぜんまいを解いたときの経過時間と瞬間歩度の推移が示されている。ここで、従来の機械式時計において、1日あたりの時間の進み、或いは、時間の遅れを示す「歩度」は、図27に太線で示す、ぜんまいを全巻きから解いた経過時間に対する瞬間歩度を24時間分にわたって積分することにより得られる。
一般的に、従来の機械式時計では、全巻き状態からぜんまいが解かれて持続時間が経過するにつれて、ぜんまいトルクは減少し、てんぷの振り角も減少するので、瞬間歩度は遅れる。このために、従来の機械式時計では、持続時間が24時間経過した後の時計の遅れを見込んで、ぜんまいを全巻き状態にしたときの瞬間歩度をあらかじめ進めておき、1日あたりの時計の進み、或いは、時計の遅れを示す「歩度」がプラスになるように、あらかじめ調整していた。
例えば、従来の代表的な機械式時計では、図27に太線で示すように、全巻き状態では、瞬間歩度は約5秒/日であるが(1日につき約5秒進む)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約−1秒/日になり(1日につき約1秒遅れる)、全巻き状態から24時間経過すると瞬間歩度は約−5秒/日になり(1日につき約5秒遅れる)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−15秒/日になる(1日につき約15秒遅れる)。
(従来の機械式時計の姿勢と瞬間歩度)
また、従来の代表的な機械式時計において、「平姿勢」および「裏平姿勢」のときの瞬間歩度は、「立姿勢」のときの瞬間歩度より進み側になっている。
例えば、従来の代表的な機械式時計では、「平姿勢」および「裏平姿勢」のときに、図33に太線で示すように、全巻き状態では、瞬間歩度は約8秒/日であるが(1日につき約8秒進む)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約3秒/日になり(1日につき約3秒進む)、全巻き状態から24時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になり(1日につき約2秒遅れる)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−12秒/日になる(1日につき約12秒遅れる)。
これに対して、従来の代表的な機械式時計において、「立姿勢」のときに、図33に細線で示すように、全巻き状態では、瞬間歩度は約3秒/日であるが(1日につき約3秒進む)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になり(1日につき約2秒遅れる)、全巻き状態から24時間経過すると瞬間歩度は約−7秒/日になり(1日につき約7秒遅れる)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−17秒/日になる(1日につき約17秒遅れる)。
(発明の目的)
本発明の目的は、機械、機器などに用いて、その姿勢を高精度で検出することができる姿勢検出装置を提供することにある。
本発明の目的は、機械式時計などの小型精密機器に使用することができる、小形で高精度な姿勢検出装置を提供することにある。
〔発明の開示〕
本発明は、姿勢検出装置において、六面体の形状を有するケースと、ケースの内面に対してそれぞれ1つずつ配置された電極と、ケースの中に収容された導電性流体とを含み、電極は互いに絶縁されていることを特徴とする。
本発明の姿勢検出装置においては、導電性流体は、電極のうちの5つに接触する状態と、電極のうちの4つに接触する状態と、電極のうちの3つに接触する状態とをとるように構成されるのが好ましい。
本発明の姿勢検出装置においては、電極はほぼ正方形の形状を有し、それぞれの電極の形状はほぼ同一であるように構成されるのが好ましい。
また、本発明は、姿勢検出装置において、六面体の形状を有するケースと、ケースの内面に対してそれぞれ複数配置された電極と、ケースの中に収容された導電性流体とを含み、電極は互いに絶縁されていることを特徴とする。
このように構成したことにより、小形で、検出精度がよい姿勢検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計のムーブメントの表側の概略形状を示す平面図である(図1では、一部の部品を省略し、受部材は仮想線で示している)。
図2は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計のムーブメントの概略部分断面図である(図2では、一部の部品を省略している)。
図3は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、スイッチ機構がオフの状態におけるてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分平面図である。
図4は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、スイッチ機構がオフの状態におけるてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分断面図である。
図5は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計に用いられるてんぷ磁石の概略形状を示す斜視図である。
図6は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態の概略形状を示す拡大斜視図である。
図7は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態の概略形状を示す拡大断面図である。
図8は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態において、電極パターンの概略形状を示す拡大斜視図である(図8では、ケース510aを2点鎖線で示し、それぞれの電極の厚さを示す線は省略している)。
図9は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態において、5つの電極パターンが導通した状態を示す拡大斜視図である(図9では、それぞれの電極の厚さを示す線は省略している)。
図10は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態において、5つの電極パターンが導通した状態の回路結線図である。
図11は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態において、4つの電極パターンが導通した状態を示す拡大斜視図である。
図12は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態において、4つの電極パターンが導通した状態の回路結線図である。
図13は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態において、3つの電極パターンが導通した状態を示す拡大斜視図である。
図14は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態において、3つの電極パターンが導通した状態の回路結線図である。
図15は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態を備えた機械式時計において、この機械式時計が配置された姿勢と、本発明の姿勢検出装置の電極パターンの導通状態と、この機械式時計の回路ブロックに設けられた抵抗の値の関係を示す一覧表である。
図16は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、スイッチ機構がオンの状態におけるてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分平面図である。
図17は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、スイッチ機構がオンの状態におけるてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分断面図である。
図18は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、姿勢検出装置の作動を示すブロック図である。
図19は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態の概略形状を示す拡大斜視図である(図19では、リード線の参照符号を一部省略している)。
図20は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態において、電極パターンの概略形状を示す拡大斜視図である。
図21は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態において、12個の電極パターンが導通した状態を示す拡大斜視図である。
図22は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態において、12個の電極パターンが導通した状態の回路結線図である。
図23は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態において、6つの電極パターンが導通した状態を示す拡大斜視図である。
図24は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態において、6つの電極パターンが導通した状態の回路結線図である。
図25は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態において、3つの電極パターンが導通した状態を示す拡大斜視図である。
図26は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態において、3つの電極パターンが導通した状態の回路結線図である。
図27は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計と、従来の機械式時計において、ぜんまいを全巻から解いた経過時間と瞬間歩度の関係を概略的に示すグラフである。
図28は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態を備えた機械式時計において、この機械式時計が配置された姿勢と、本発明の姿勢検出装置の電極パターンの導通状態と、この機械式時計の回路ブロックに設けられた抵抗の値の関係を示す一覧表である。
図29は、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態を備えた機器の姿勢を検出するための回路の構成を示す代表的なブロック図である。
図30は、機械式時計において、ぜんまいを全巻から解いた経過時間とぜんまいトルクの関係を概略的に示すグラフである。
図31は、機械式時計において、てんぷの振り角とぜんまいトルクの関係を概略的に示すグラフである。
図32は、機械式時計において、てんぷの振り角と瞬間歩度の関係を概略的に示すグラフである。
図33は、機械式時計において、ぜんまいを全巻から解いた経過時間と瞬間歩度(平姿勢および立姿勢)の関係を概略的に示すグラフである。
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下に、本発明の姿勢検出装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(1)本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態
次に、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態の構造について説明する。
図6〜図8を参照すると、姿勢検出装置510は、ほぼ立方体の形状を有するケース510aを有する。ケース510aは、頂壁511と、4つの側壁512、513、514、515と、底壁516とを含む。
本発明の姿勢検出装置のケースは、ほぼ立方体の形状を有するのが好ましいが、ケースの形状は、直方体などの他の形状の六面体であってもよい。
ケース510aは、ポリイミドなどのプラスチック、ガラスエポキシ基板、水晶などの絶縁材料で形成される。
ケース510aにおいて、頂壁511は、各側壁512、513、514、515のそれぞれと直交する。
底壁516は、各側壁512、513、514、515のそれぞれと直交する。
側壁512は、側壁513、側壁515のそれぞれと直交する。
側壁514は、側壁513、側壁515のそれぞれと直交する。
図8を参照すると、電極A1が頂壁511の内面のほぼ全体にわたって設けられる。電極A2が側壁512の内面のほぼ全体にわたって設けられる。電極A3が側壁513の内面のほぼ全体にわたって設けられる。電極A4が側壁514の内面のほぼ全体にわたって設けられる。電極A5の側壁515の内面のほぼ全体にわたって設けられる。電極A6が底壁516の内面のほぼ全体にわたって設けられる。
説明をわかりやすくするために、図8において、電極A2、電極A5、電極A6をケース510aから離して図示するが、それぞれの電極A1、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6は、ほぼ立方体を構成するように配置されている。また、それぞれの電極A1、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6は、間隔を隔てて配置される。すなわち、それぞれの電極A1、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6は、互いに絶縁されている。
また、それぞれの電極A1〜電極A6は、ほぼ正方形の形状を有するのが好ましい。また、それぞれの電極A1〜電極A6の形状は、ほぼ同一であるように構成されるのが好ましい。
図8において、ケース510aの立方体の重心Gを座標系の原点として定義する。X軸は、電極A4に垂直な方向として定義する。X線の正方向は、原点Gから電極A4に垂直にケース510aの外側に向かう方向として定義する。
Y軸は、電極A3に垂直な方向として定義する。Y軸の正方向は、原点Gから電極A3に垂直にケース510aの外側に向かう方向として定義する。
Z軸は、電極A1に垂直な方向として定義する。Z軸の正方向は、原点Gから電極A1に垂直にケース510aの外側に向かう方向として定義する。
図6を参照すると、電極リード線521が電極A1に接続される。電極リード線522が電極A2に接続される。電極リード線523が電極A3に接続される。電極リード線524が電極A4に接続される。電極リード線525が電極A5に接続される。電極リード線526が電極A6に接続される。
図7を参照すると、導電性流体530がケース510aの中に収容される。導電性流体530は、例えば、水銀である。導電性流体530の体積は、図7に示す例では、ケース510aの体積の1/48であるが、ケース510aの体積の1/6〜1/48であるのが好ましい。
図7に示す状態では、導電性流体530は電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6に接触しているが、電極A1には接触していない。したがって、図7に示す状態では、導電性流体530により、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6は短絡される(すなわち、互いに導通する)。
(2)機械式時計における用語
次に、機械式時計における用語について説明する。
一般に、地板の両側のうちで、文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称し、文字板のある方の側と反対側をムーブメントの「表側」と称する。ムーブメントの「表側」に組み込まれる輪列を「表輪列」と称し、ムーブメントの「裏側」に組み込まれる輪列を「裏輪列」と称する。
また、文字板のある方の側を上に向けた状態を「裏平姿勢」と称し、文字板のある方の側を下に向けた状態を「平姿勢」と称する。
更に、文字板を垂直に配置した状態を「立姿勢」と称し、文字板の12時目盛を垂直上方に向けて配置した状態を「12時上(12U)姿勢」と称し、文字板の3時目盛を垂直上方に向けて配置した状態を「3時上(3U)姿勢」と称し、文字板の6時目盛を垂直上方に向けて配置した状態を「6時上(6U)姿勢」と称し、文字板の9時目盛を垂直上方に向けて配置した状態を「9時上(9U)姿勢」と称する。
(3)本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計における輪列、脱進・調速装置、切換装置
図1及び図2を参照すると、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、機械式時計のムーブメント(機械体)500は、ムーブメントの基板を構成する地板102を有する。巻真110が、地板102の巻真案内穴102aに回転可能に組み込まれる。文字板104(図2に仮想線で示す)がムーブメント500に取付けられる。
巻真110は角部と案内軸部とを有する。つづみ車(図示せず)が巻真110の角部に組み込まれる。つづみ車は巻真110の回転軸線と同一の回転軸線を有する。すなわち、つづみ車は角穴を有し、この角穴が巻真110の角部の嵌め合うことにより、巻真110の回転に基づいて回転するように設けられている。つづみ車は甲歯と乙歯とを有する。甲歯はムーブメントの中心に近い方のつづみ車の端部に設けられる。乙歯はムーブメントの外側に近い方のつづみ車の端部に設けられる。
ムーブメント500は、巻真110の軸線方向の位置を決めるための切換装置を備える。切換装置は、おしどり190と、かんぬき192と、かんぬきばね194と、裏押さえ196とを含む。おしどりの回転に基づいて巻真110の回転軸線方向の位置を決める。かんぬきの回転に基づいてつづみ車の回転軸線方向の位置を決める。おしどりの回転に基づいて、かんぬきは2つの回転方向の位置に位置決めされる。
きち車112が巻真110の案内軸部に回転可能に設けられる。巻真110が、回転軸線方向に沿ってムーブメントの内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真110を回転させると、つづみ車の回転を介してきち車112が回転するように構成される。丸穴車114が、きち車112の回転により回転するように構成される。角穴車116が、丸穴車114の回転により回転するように構成される。
ムーブメント500は、香箱車120に収容されたぜんまい122を動力源とする。ぜんまい122は鉄等のばね性を有する弾性材料で作られる。角穴車116が回転することにより、ぜんまい122を巻き上げることができるように構成される。
二番車124が、香箱車120の回転により回転するように構成される。三番車126が、二番車124の回転に基づいて回転するように構成される。四番車128が、三番車126の回転に基づいて回転するように構成される。がんぎ車130が、四番車128の回転に基づいて回転するように構成される。香箱車120、二番車124、三番車126、四番車128は表輪列を構成する。
ムーブメント500は、表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置を備える。脱進・調速装置は、一定の周期で右回転と左回転を繰り返すてんぷ140と、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車130と、てんぷ140の作動に基づいてがんぎ車130の回転を制御するアンクル142とを含む。
てんぷ140は、てん真140aと、てん輪140bと、ひげぜんまい140cとを含む。ひげぜんまい140cは「エリンバー」等のばね性を有する弾性材料で作られる。すなわち、ひげぜんまい140cは、金属の導電材料で作られる。
二番車124の回転に基づいて、筒かな150が同時に回転する。筒かな150に取付けられた分針152が「分」を表示するように構成される。筒かな150には、二番車124に対して所定のスリップトルクを有するスリップ機構が設けられる。
筒かな150の回転に基づいて、日の裏車(図示せず)が回転する。日の裏車の回転に基づいて、筒車154が回転する。筒車154に取付けられた時針156が「時」を表示するように構成される。
香箱車120は、地板102及び香箱受160に対して回転可能なように支持される。二番車124、三番車126、四番車128、がんぎ車130は、地板102及び輪列受162に対して回転可能なように支持される。アンクル142は、地板102及びアンクル受164に対して回転可能なように支持される。
てんぷ140は、地板102及びてんぷ受166に対して回転可能なように支持される。すなわち、てん真140aの上ほぞ140a1は、てんぷ受166に固定されたてんぷ上軸受166aに対して回転可能なように支持される。てんぷ上軸受166aは、てんぷ上穴石及びてんぷ上受石を含む。てんぷ上穴石及びてんぷ上受石は、ルビーなどの絶縁材料で作られる。
てん真140aの下ほぞ140a2は、地板102に固定されたてんぷ下軸受102bに対して回転可能なように支持される。てんぷ下軸受102bは、てんぷ下穴石及びてんぷ下受石を含む。てんぷ下穴石及びてんぷ下受石は、ルビーなどの絶縁材料で作られる。
ひげぜんまい140cは、複数の巻き数をもったうずまき状(螺旋状)の形態の薄板ばねである。ひげぜんまい140cの内端部は、てん真140aに固定されたひげ玉140dに固定され、ひげぜんまい140cの外端部は、てんぷ受166に回転可能に固定されたひげ持受170に取り付けられたひげ持170aを介してねじで固定される。てんぷ受166は黄銅等の金属の導電材料で作られる。ひげ持受170は、鉄等の金属の導電材料で作られる。
(4)本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計のスイッチ機構
次に、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計のスイッチ機構について説明する。
図1〜図4を参照すると、スイッチレバー168は、てんぷ受166に回転可能に取付けられる。第1接点部材168a及び第2接点部材168bがスイッチレバー168に取付けられる。スイッチレバー168は、てんぷ受166に取付けられ、てんぷ140の回転中心を中心として回転可能に取付けられる。スイッチレバー168は、ポリカーボネート等のプラスチックの絶縁材料で形成される。第1接点部材168a及び第2接点部材168bは、黄銅等の金属の導電材料で作られる。ひげぜんまい140cの外端部に近い部分は、第1接点部材168aと第2接点部材168bとの間に位置する。
コイル180、180a、180b、180cが、てん輪140bの地板側面と向かい合うように地板102の表側の面に取付けられる。コイルの数は、図1〜図4に示すように、例えば4個であるが、1個であってもよいし、2個であってもよいし、3個であってもよいし、4個以上であってもよい。
てんぷ磁石140eが、地板102の表側の面と向かい合うようにてん輪140bの地板側面に取付けられる。
図1、図3に示すように、コイルを複数個配置する場合のコイルの円周方向の間隔は、コイルに対向して配置されるてんぷ磁石140eのS極、N極の円周方向の間隔の整数倍であるのが好ましいが、すべてのコイルが円周方向について同一の間隔でなくてもよい。さらに、このような複数個のコイルを備えた構成においては、それぞれのコイルの間の配線は、電磁誘導により各コイルに発生する電流を互いに打ち消さないように、直列に配線するのがよい、或いは、それぞれのコイルの間の配線は、電磁誘導により各コイルに発生する電流を互いに打ち消さないように、並列に配線してもよい。
図5を参照すると、てんぷ磁石140eは円環状(リング状)の形態を有し、その円周方向にそって、例えば上下に分極された12個のS極140s1〜140s12と12個のN極140n1〜140n12からなる磁石部分が交互に設けられている。てんぷ磁石140eにおける円環状(リング状)に配列された磁石部分の数は、図5に示す例では12個であるが、2以上の複数であればよい。ここで、磁石部分の1つの弦の長さが、その磁石部分に対向して設けられるコイル1つの外径とほぼ等しくなるようにするのが好ましい。
図2及び図4を参照すると、隙間がてんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間に設けられる。てんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間の隙間は、コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、てんぷ磁石140eの磁力はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことができるように決定されている。
コイル180、180a、180b、180cが導通していないとき、てんぷ磁石140eの磁力はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことはない。てんぷ磁石140eは、一方の面がてん輪140bのリング状リム部に接触し、他方の面が地板102の表側の面と向かい合うような状態で、てん輪140bの地板側の面に接着などにより固定される。
なお図4では、ひげぜんまい140cの厚さ(てんぷの半径方向の厚さ)は誇張して図示してあるが、例えば、0.021ミリメートルである。てんぷ磁石140eは、例えば、外径が約9ミリメートルであり、内径が約7ミリメートルであり、厚さが約1ミリメートルであり、残留磁束密度は、約1テスラである。コイル180、180a、180b、180cは、それぞれ巻き数が、例えば、1000巻きであり、コイル線径は、約25マイクロメートルである。てんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間の隙間STCは、例えば、約0.4ミリメートルである。
(5)姿勢検出装置と回路ブロック
次に、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計の実施の形態において、姿勢検出装置510と回路ブロック520について説明する。
図1〜図4を参照すると、姿勢検出装置510と、回路ブロック520が、地板102の表側に配置される。姿勢検出装置510は回路ブロック520に取り付けられる。回路ブロック520は複数のリード端子を備える。
本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計の実施の形態においては、X軸およびY軸が地板102の表面と平行であり、かつ、文字板104の表面と平行であるように、姿勢検出装置510は地板102に対して配置される。したがって、Z軸は、地板102の表面と垂直であり、かつ、文字板104の表面と垂直であるように、姿勢検出装置510は地板102に対して構成される。
第1リード線182がコイル180の一方の端末と、回路ブロック520の第1リード端子(図示せず)とを接続するように設けられる。コイル180の他方の端末は、コイル180aの一方の端末と接続される。コイル180aの他方の端末は、コイル180bの一方の端末と接続される。コイル180bの他方の端末は、コイル180cの一方の端末と接続される。すなわち、4つのコイル180、180a、180b、180cは直列に接続される。
第2リード線184がコイル180cの他方の端末と、回路ブロック520の第2リード端子(図示せず)とを接続するように設けられる。第3リード線186がひげ持受170と、回路ブロック520の第3リード端子(図示せず)とを接続するように設けられる。第4リード線188が、第1接点部材168a及び第2接点部材168bと、回路ブロック520の第4リード端子(図示せず)とを接続するように設けられる。
図9を参照すると、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計を「平姿勢」に配置したときの姿勢検出装置510の状態を示している。図9に示す状態では、導電性流体530により、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6は短絡される(すなわち、互いに導通する)。
図10を参照すると、図9に示す状態では、回路ブロック520において、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6が互いに導通したときは、抵抗R1が電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6と直列に接続されるように第1パターン531が形成される。そして、図9に示すこの状態では、第1パターン531により、抵抗R1は、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
図11を参照すると、文字板を水平面に対して45度傾けて、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計を配置したときの姿勢検出装置510の状態を示している。図9に示すこの状態では、導電性流体530により、電極A2、電極A3、電極A4、電極A6は短絡される(すなわち、互いに導通する)。
図12を参照すると、図11に示す状態では、回路ブロック520において、電極A2、電極A3、電極A4、電極A6が互いに導通したときは、抵抗R2が電極A2、電極A3、電極A4、電極A6と直列に接続されるように第2パターン532が形成される。そして、図11に示す状態では、第2パターン532により、抵抗R2は、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
図13を参照すると、文字板を水平面に対して45度傾けた状態で、図11に示す状態と異なる状態に本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計を配置したときの姿勢検出装置510の他の状態を示している。図13に示すこの状態では、導電性流体530により、電極A2、電極A3、電極A6は短絡される(すなわち、互いに導通する)。
図14を参照すると、図13に示す状態では、回路ブロック520において、電極A2、電極A3、電極A6が互いに導通したときは、抵抗R3が電極A2、電極A3、電極A6と直列に接続されるように第3パターン533が形成される。そして、図13に示す状態では、第3パターン533により、抵抗R3は、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
図15を参照すると、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態において、種々の電極パターンの導通した状態と回路に設けられた抵抗の値の関係が示されている。
図15において、X軸周りの回転角をαとし、Y軸周りの回転角をβとする。このとき、Z軸周りの回転角は任意である。
図15に示す姿勢の数値は、導電性流体の量に応じて、検出する姿勢の状態が異なることに注意が必要である。
図15において、A1、A2、A3、A4、A5、A6は、それぞれ電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6を示す。「ON」は、その電極が他の「ON」と記載した電極と導通した状態にあることを示す。「OFF」は、その電極が他のいずれの電極とも導通していない状態にあることを示す。
(姿勢状態1)
図15に示す姿勢状態1は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「平姿勢」にあるときに対応する。この姿勢状態1は、αがマイナス7度〜プラス7度の範囲にあり、かつ、βがマイナス7度〜プラス7度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態1では、回路ブロック520において、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6が互いに導通し、抵抗R1が電極A2、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態1では、第1パターン531により、抵抗R1が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R1の値を基準値Rref(オーム)とする。
例えば、4つのコイル180、180a、180b、180cの合成抵抗値を、1.7キロオームとしたとき、基準値Rrefは1.2キロオームである。
(姿勢状態2)
図15に示す姿勢状態2は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「9時上(9U)姿勢」にあるときに対応する。この姿勢状態2は、αがマイナス7度〜プラス7度の範囲にあり、かつ、βがプラス83度〜プラス97度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態2では、回路ブロック520において、電極A1、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6が互いに導通し、抵抗R2(図示せず)が電極A1、電極A3、電極A4、電極A5、電極A6と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態2では、抵抗R2が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R2の値は、基準値Rref(オーム)の3.48倍(すなわち3.48×Rref)となるように構成される。
(姿勢状態3)
図15に示す姿勢状態3は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「12時上(12U)姿勢」にあるときに対応する。この姿勢状態3は、αがプラス83度〜プラス97度の範囲にあり、かつ、βがマイナス7度〜プラス7度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態3では、回路ブロック520において、電極A1、電極A2、電極A4、電極A5、電極A6が互いに導通し、抵抗R2(図示せず)が電極A1、電極A2、電極A4、電極A5、電極A6と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態3では、抵抗R2が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R2の値は、基準値Rref(オーム)の3.48倍(すなわち3.48×Rref)となるように構成される。
(姿勢状態4)
図15に示す姿勢状態4は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「3時上(3U)姿勢」にあるときに対応する。この姿勢状態4は、αがマイナス7度〜プラス7度の範囲にあり、かつ、βがマイナス83度〜マイナス97度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態4では、回路ブロック520において、電極A1、電極A2、電極A3、電極A5、電極A6が互いに導通し、抵抗R2(図示せず)が電極A1、電極A2、電極A3、電極A5、電極A6と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態4では、抵抗R2が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R2の値は、基準値Rref(オーム)の3.48倍(すなわち3.48×Rref)となるように構成される。
(姿勢状態5)
図15に示す姿勢状態5は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「6時上(6U)姿勢」にあるときに対応する。この姿勢状態5は、αがマイナス83度〜マイナス97度の範囲にあり、かつ、βがマイナス7度〜プラス7度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態5では、回路ブロック520において、電極A1、電極A2、電極A3、電極A4、電極A6が互いに導通し、抵抗R2(図示せず)が電極A1、電極A2、電極A3、電極A4、電極A6と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態5では、抵抗R2が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R2の値は、基準値Rref(オーム)の3.48倍(すなわち3.48×Rref)となるように構成される。
(姿勢状態6)
図15に示す姿勢状態6は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「裏平姿勢」にあるときに対応する。この姿勢状態6は、αがプラス173度〜プラス187度の範囲にあり、かつ、βがマイナス7度〜プラス7度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態6では、回路ブロック520において、電極A1、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5が互いに導通し、抵抗R2(図示せず)が電極A1、電極A2、電極A3、電極A4、電極A5と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態6では、抵抗R2が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R2の値は、基準値Rref(オーム)の3.48倍(すなわち3.48×Rref)となるように構成される。
(姿勢状態7〜18)
図15に示す姿勢状態7〜18は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「平姿勢」でなく、「裏平姿勢」でなく、「立姿勢」でもない状態に対応する。
姿勢状態7は、αがマイナス7度〜マイナス83度の範囲にあり、かつ、βがマイナス7度〜プラス7度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態7では、回路ブロック520において、電極A2、電極A3、電極A4、電極A6が互いに導通し、抵抗R3(図示せず)が電極A2、電極A3、電極A4、電極A6と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態7では、抵抗R3が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R3の値は、基準値Rref(オーム)の1.83倍(すなわち1.83×Rref)となるように構成される。
同様に、図15に示す姿勢状態8〜18において、抵抗R3が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
(姿勢状態19〜26)
図15に示す姿勢状態19〜26は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、文字板が垂直になっている状態に対応する。
姿勢状態19は、αがマイナス7度〜マイナス83度の範囲にあり、かつ、βがマイナス7度〜マイナス83度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態19では、回路ブロック520において、電極A2、電極A3、電極A6が互いに導通し、抵抗R2(図示せず)が電極A2、電極A3、電極A6と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態19では、抵抗R2が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R2の値は、基準値Rref(オーム)の3.48倍(すなわち3.48×Rref)となるように構成される。
同様に、図15に示す姿勢状態20〜26において、抵抗R2が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
抵抗の基準値Rrefは、後述するてんぷ140の回転を抑制するてんぷ140ブレーキ力を考慮して決定する。抵抗の基準値Rrefは、計算により求めてもよいし、実験により求めてもよい。
(6)本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態
次に、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態の構造について説明する。
図19を参照すると、姿勢検出装置550は、ほぼ立方体の形状を有するケース550aを有する。ケース550aは、頂壁551と、4つの側壁552、553、554、555と、底壁556とを含む。
ケース550aは、ポリイミドなどのプラスチック、ガラスエポキシ基板、水晶などの絶縁材料で形成される。
ケース550aにおいて、頂壁551は、各側壁552、553、554、555のそれぞれと直交する。
底壁556は、各側壁552、553、554、555のそれぞれと直交する。
側壁552は、側壁553、側壁555のそれぞれと直交する。
側壁554は、側壁553、側壁555のそれぞれと直交する。
図20を参照すると、4つの電極A11、A12、A13、A14が頂壁551の内面に設けられる。4つの電極A11、A12、A13、A14は、ほぼ同じ大きさの正方形の形状を有し、互いに絶縁されている。
4つの電極A21、A22、A23、A24が側壁552の内面に設けられる。4つの電極A21、A22、A23、A24は、ほぼ同じ大きさの正方形の形状を有し、互いに絶縁されている。
4つの電極A31、A32、A33、A34が側壁553の内面に設けられる。4つの電極A31、A32、A33、A34は、ほぼ同じ大きさの正方形の形状を有し、互いに絶縁されている。
4つの電極A41、A42、A43、A44が側壁554の内面に設けられる。4つの電極A41、A42、A43、A44は、ほぼ同じ大きさの正方形の形状を有し、互いに絶縁されている。
4つの電極A51、A52、A53、A54が側壁554の内面に設けられる。4つの電極A51、A52、A53、A54は、ほぼ正方形の形状を有し、互いに絶縁されている。
4つの電極A61、A62、A63、A64が底壁556の内面に設けられる。4つの電極A61、A62、A63、A64は、ほぼ同じ大きさの正方形の形状を有し、互いに絶縁されている。
説明をわかりやすくするために、図20において、電極A21〜A24、電極A51〜A54、電極A61〜A64をケース550aから離して図示するが、それぞれの電極は、ほぼ立方体を構成するように配置されている。また、それぞれの電極は、間隔を隔てて配置される。すなわち、それぞれの電極は、互いに絶縁されている。
そして、それぞれの電極A11〜電極A64は、ほぼ同一であるように構成されるのが好ましい。
図20において、前述した図8と同様に、ケース550aの立方体の重心Gを座標系の原点として定義する。X軸、Y軸の正方向、Y軸は、Y軸の正方向、Z軸、Z軸の正方向も、前述した図8と同様に定義する。
本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計の実施の形態においては、X軸およびY軸が地板102の表面と平行であり、かつ、文字板104の表面と平行であるように、姿勢検出装置550は地板102に対して配置される。したがって、Z軸は、地板102の表面と垂直であり、かつ、文字板104の表面と垂直であるように、姿勢検出装置510は地板102に対して構成される。
図19を参照すると、電極リード線560がそれぞれの電極に接続される。
図21を参照すると、導電性流体570がケース550aの中に収容される。導電性流体570は、例えば、水銀である。導電性流体570の体積は、図21に示す例では、ケース550aの体積の1/48であるが、ケース550aの体積の1/48〜1/348であるのが好ましい。
図21に示す状態は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計を「平姿勢」に配置したときの姿勢検出装置510の状態を示している。図21に示す状態では、導電性流体570は電極A23、電極A24、電極A33、電極A34、電極A43、電極A44、電極A53、電極A54、電極A61、電極A62、電極A63、電極A64に接触しているが、他の電極には接触していない。したがって、図21に示す状態では、導電性流体570により、電極A23、電極A24、電極A33、電極A34、電極A43、電極A44、電極A53、電極A54、電極A61、電極A62、電極A63、電極A64は短絡される(すなわち、互いに導通する)。
図22を参照すると、図9に示す状態では、回路ブロック580において、電極A23、電極A24、電極A33、電極A34、電極A43、電極A44、電極A53、電極A54、電極A61、電極A62、電極A63、電極A64が互いに導通したときは、抵抗R1がこれらの電極と直列に接続されるように第1パターン581が形成される。そして、図22に示すこの状態では、第1パターン581により、抵抗R1は、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
図23を参照すると、文字板を水平面に対して45度傾けて、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計を配置したときの姿勢検出装置550の状態を示している。図23に示すこの状態では、導電性流体570により、電極A23、電極A33、電極A34、電極A43、電極A61、電極A62は短絡される(すなわち、互いに導通する)。
図24を参照すると、図23に示す状態では、回路ブロック580において、電極A23、電極A33、電極A34、電極A43、電極A61、電極A62が互いに導通したときは、抵抗R2がこれらの電極と直列に接続されるように第2パターン582が形成される。そして、図23に示す状態では、第2パターン582により、抵抗R2は、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
図25を参照すると、文字板を水平面に対して45度傾けた状態で、図23に示す状態と異なる状態に本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計を配置したときの姿勢検出装置550の他の状態を示している。図25に示すこの状態では、導電性流体570により、電極A23、電極A33、電極A61は短絡される(すなわち、互いに導通する)。
図26を参照すると、図25に示す状態では、回路ブロック580において、電極A23、電極A33、電極A61が互いに導通したときは、抵抗R3がこれらの電極と直列に接続されるように第3パターン583が形成される。そして、図25に示す状態では、第3パターン583により、抵抗R3は、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
このような姿勢検出装置550について、図15と同様に、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態において、種々の電極パターンの導通した状態と回路ブロックに設けられた抵抗の値の関係の一覧表を作成することができる。
すなわち、種々の姿勢における本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態について、回路ブロックの配線と抵抗の値は、図15に示す一覧表と同様に計算することもできるし、或いは、実験により定めることができる。
図28を参照すると、姿勢状態1は、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「平姿勢」にあるときに対応する。この姿勢状態1は、αがマイナス2.5度〜プラス2.5度の範囲にあり、かつ、βがマイナス2.5度〜プラス2.5度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態1では、電極A23、電極A24、電極A33、電極A34、電極A43、電極A44、電極A53、電極A54、電極A61、電極A62、電極A63、電極A64が互いに導通し、抵抗R1がこれらの電極と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態1では、第1パターン581により、抵抗R1が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。このときの抵抗R1の値を基準値Rref(オーム)とする。
例えば、4つのコイル180、180a、180b、180cの合成抵抗値を、1.7キロオームとしたとき、基準値Rrefは1.2キロオームである。
図28の姿勢状態2は、αがマイナス4.5度〜プラス85.5度の範囲にあり、かつ、βがマイナス14度〜プラス14度の範囲にあるときに対応する。
この姿勢状態2では、電極A23、電極A33、電極A34、電極A43、電極A61、電極A62が互いに導通し、抵抗R2がこれらの電極と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態2では、第2パターン582により、抵抗R2は、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
図28の姿勢状態3は、αがほぼプラス45度であり、かつ、βがほぼプラス45度であるときに対応する。
この姿勢状態3では、電極A23、電極A33、電極A61が互いに導通し、抵抗R3がこれらの電極と直列に接続されるように構成される。そして、この姿勢状態3では、第3パターン583により、抵抗R3は、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続されるように構成される。
図15に示す内容と同様に、種々の姿勢状態について、電極の導通状態と、抵抗の関係を決定することができる(図28には、すべてを図示していない)。なお、図28に示す姿勢の数値は、導電性流体の量に応じて、検出する姿勢の状態が異なる。
また、本発明の姿勢検出装置の第2の実施の形態を備えた機器の姿勢を検出するための回路の構成を示す代表的なブロック図を図29に示す。
図29を参照すると、電極A11〜電極A64は、それぞれ別個のリード線(図示せず)により、信号入力部591に接続される。
信号入力部591は、全ての電極A11〜電極A64のうちで、互いに導通している電極が、どれとどれであるかを判定する。
姿勢状態記憶部592は、電極A11〜電極A61の導通状態と、姿勢検出装置の置かれた姿勢との間の姿勢に関する情報を記憶している。
姿勢判定部592は、信号入力部591が出力する信号を入力し、姿勢状態記憶部592が記憶している姿勢に関する情報を用いて、姿勢検出装置の置かれた姿勢を判定する。
姿勢の判定結果は、例えば、X軸となす角度、Yとなす角度、Zとなす角度である。
姿勢の判定結果は、例えば、X軸となす角度が基準値と比較して大きいか、小さいか、Yとなす角度が基準値と比較して大きいか、小さいか、Zとなす角度が基準値と比較して大きいか、小さいかなどである。
姿勢判定結果出力部594は、姿勢判定部592が出力する信号を入力し、姿勢検出装置の置かれた姿勢に関する信号を出力する。
出力部595は、姿勢検出装置の置かれた姿勢を表示し、或いは、姿勢検出装置の置かれた姿勢に基づいて機器を制御するための信号を出力する。
例えば、出力部595は、表示装置、印刷装置、発光装置などで構成されるのが好ましい。
また、出力部595が出力する、姿勢検出装置の置かれた姿勢に基づいて機器を制御するための信号により、姿勢検出装置を備えた機器の姿勢を補正するように構成することができる。
なお、図29に示す回路は、本発明の姿勢検出装置の第1の実施の形態についても適用することができる。
(7)本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、コイルが導通していないときのてんぷの作動
図3、図4、図18を参照して、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、コイル180、180a、180b、180cが導通していないとき、すなわち、回路が開いているときのてんぷ140の作動を説明する。
ひげぜんまい140cは、てんぷ140が回転する回転角度の応じて、ひげぜんまい140cの半径方向に伸縮する。例えば、図3に示す状態では、てんぷ140が時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cはてんぷ140の中心に向かう方向に収縮し、これに対して、えんぷ140が反時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cはてんぷ140の中心から遠ざかる方向に拡張する。
このため、図4において、てんぷ140の時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cは第2接点部材168bに接近するように作動する。これに対して、てんぷ140が反時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aに接近するように作動する。
てんぷ140の回転角度(振り角)が、ある一定のしきい値、例えば、180度未満である場合には、ひげぜんまい140cの半径方向の伸縮量が少ないために、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aに接触せず、第2接点部材168bにも接触しない。
てんぷ140の回転角度(振り角)が、ある一定のしきい値、例えば、180度以上である場合には、ひげぜんまい140cの半径方向の伸縮量が十分大きくなるために、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aと第2接点部材168bの両方に接触する。
例えば、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aと第2接点部材168bとの間の約0.04ミリメートルの隙間の中に位置する。したがって、てんぷ140の振り角が0度を超えて180度未満の範囲内である状態では、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aにも接触せず、第2接点部材168bにも接触しない。すなわち、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しないので、コイル180、180a、180b、180cは導通せず、てんぷ磁石140eの磁束はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことはない。その結果、てんぷ140の振り角が、てんぷ磁石140e及びコイル180、180a、180b、180cの作用により減衰することはない。
(8)本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、コイルが導通しているときのてんぷの作動
次に、図16、図17及び図18を参照して、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、すなわち、回路が閉じているときのてんぷ140の作動を説明する。すなわち、図16及び図17は、てんぷ140の振り角が180度以上であるときを示す。
なお図17では、ひげぜんまい140cの厚さ(てんぷの半径方向の厚さ)は誇張して図示してある。
てんぷ140の振り角が180度以上になると、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168a又は第2接点部材168bに接触する。このような状態では、コイル180、180a、180b、180cは導通し、てんぷ磁石140eの磁束の変化により発生する誘導電流により、てんぷ140の回転運動を抑制するような力をてんぷ140に及ぼす。そして、この作用により,てんぷ140の回転を抑制するてんぷ140ブレーキ力を加えて、てんぷ140の振り角を減少させる。
そして、てんぷ140の振り角が0度をこえて180度未満の範囲まで減少すると、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しない状態になる。したがって、図3及び図4に示すように、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しないので、コイル180、180a、180b、180cは導通せず、てんぷ磁石140eの磁束はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼさなくなる。
コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、すなわち、回路が閉じているときに、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「平姿勢」にある状態では、抵抗R1が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続される。したがって、このような状態では、コイル180、180a、180b、180cと抵抗R1が導通する。そして、てんぷ磁石140eの磁束の変化により発生する誘導電流により、てんぷ140の回転運動を抑制するような力をてんぷ140に及ぼす。すなわち、てんぷ140の回転を抑制するために、抵抗の値Rref(オーム)に対応した大きさのブレーキ力をてんぷ140に加え、てんぷ140の振り角を減少させる。
コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、すなわち、回路が閉じているときに、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「平姿勢」でなく、「裏平姿勢」でなく、「立姿勢」でもない状態では、抵抗R3が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続される。このときの抵抗R3の値は、基準値Rref(オーム)の1.83倍(すなわち1.83×Rref)である。
このような状態では、コイル180、180a、180b、180cと抵抗R3が導通する。そして、てんぷ磁石140eの磁束の変化により発生する誘導電流により、てんぷ140の回転運動を抑制するような力をてんぷ140に及ぼす。すなわち、てんぷ140の回転を抑制するために、抵抗の値1.83×Rref(オーム)に対応した大きさのブレーキ力をてんぷ140に加え、てんぷ140の振り角を減少させる。
このように抵抗の値を設定することにより、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「立姿勢」でなく、「平姿勢」でなく、「裏平姿勢」でない状態におけるブレーキ力は、この機械式時計が「平姿勢」および「裏平姿勢」にある状態におけるブレーキ力より小さくなるように構成されている。また、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「立姿勢」でなく、「平姿勢」でなく、「裏平姿勢」でない状態におけるブレーキ力は、この機械式時計が「立姿勢」にある状態におけるブレーキ力より大きくなるように構成されている。
コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、すなわち、回路が閉じているときに、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「立姿勢」にある状態では、抵抗R2が、4つのコイル180、180a、180b、180cと直列に接続される。このときの抵抗R2の値は、基準値Rref(オーム)の3.48倍(すなわち3.48×Rref)である。
このような状態では、コイル180、180a、180b、180cと抵抗R2が導通する。そして、てんぷ磁石140eの磁束の変化により発生する誘導電流により、てんぷ140の回転運動を抑制するような力をてんぷ140に及ぼす。すなわち、てんぷ140の回転を抑制するために、抵抗に値3.48×Rref(オーム)に対応した大きさのブレーキ力をてんぷ140に加え、てんぷ140の振り角を減少させる。
このように抵抗の値を設定することにより、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計が「立姿勢」にある状態におけるブレーキ力は、この機械式時計が「平姿勢」および「裏平姿勢」にある状態におけるブレーキ力より小さくなるように構成されている。
このように構成した本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計では、機械式時計のさまざまな姿勢に対応して、極めて正確にてんぷ140の回転角度を制御することができる。
本発明は、以上説明したように、脱進・調速装置が右回転と左回転を繰り返すてんぷと、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車と、てんぷの作動に基づいてがんぎ車の回転を制御するアンクルとを含むように構成された機械式時計において、本発明の姿勢検出装置を使用することにより、機械式時計のさまざまな姿勢に対応して、てんぷ回転角度を制御することができる。したがって、機械式時計の持続時間を減らすことなく、機械式時計の精度を向上させることができる。
すなわち、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計においては、瞬間歩度と振り角との間の相関関係に着目し、機械式時計のさまざまな姿勢に対応して、てんぷ回転角度を制御して、振り角を一定に保つことにより、瞬間歩度の変化を抑制し、1日当たりの時計の進み、遅れを少なくするように調節するようにした。
これに対して、従来の姿勢検出装置をもたない機械式時計では、持続時間と振り角との間の関係により、振り角が時間の経過とともに変化する。さらに、振り角と瞬間歩度の関係により、瞬間歩度が時間の経過とともに変化する。そのうえ、機械式時計の姿勢と瞬間歩度の関係により、瞬間歩度が時間の経過とともに変化する。
このため、従来の姿勢検出装置をもたない機械式時計では、一定の精度を維持することができる、機械式時計の持続時間を長くするのが困難であった。
(9)本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計についての瞬間歩度に関するシミュレーション
次に、このような従来の姿勢検出装置をもたない機械式時計の課題を解決するために開発した、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計について行った瞬間歩度に関するシミュレーションの結果を説明する。
図27を参照すると、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計では、最初に、図27にx印のプロットと細線で示すように、機械式時計の瞬間歩度を進めた状態に調節する。本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計では、てんぷ140が、ある角度以上回転した場合、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168a又は第2接点部材168bと接触すると、ひげぜんまい140cの有効長さが短くなるので、瞬間歩度はなお一層進む。
すなわち、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しない状態では、図27にx印のプロットと細線で示すように、ぜんまいを完全に巻き上げた状態で歩度は約18秒/日であり(1日につき約18秒進み)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約13秒/日になり(1日につき約13秒進み)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になる(1日につき約2秒遅れる)。
そして、この本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、てんぷ回転角度制御機構を作動させないと仮定すると、図27にx印のプロットと細線で示すように、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168a又は第2接点部材168bと接触した状態では、ぜんまいを完全に巻き上げた状態で歩度は約18秒/日であり(1日につき約18秒進み)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約13秒/日になり(1日につき約13秒進み)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になる(1日につき約2秒遅れる)。
これに対して、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計において、てんぷ回転角度制御機構を作動させたときには、図27に黒丸のプロットと極太線で示すように、てんぷ回転角度制御機構が作動する状態、すなわち、ぜんまいを完全に巻き上げた状態から、27時間経過するまでは、瞬間歩度は約5秒/日を維持することができ(1日につき約5秒進んだ状態を維持し)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になる(1日につき約2秒遅れる)。
そして、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計においては、機械式時計のさまざまな姿勢に対応して、てんぷ回転角度を制御するように構成されている。したがって、機械式時計がどのような姿勢にあるときでも、振り角をほぼ一定に保つことができる。
その結果、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計においては、機械式時計がどのような姿勢にあるときでも、図27に黒丸のプロットと極太線で示す特性を維持することが出来る。
本発明により、小形で高精度な姿勢検出装置を実現することができる。
したがって、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計は、機械式時計がどのような姿勢にあるときでも、極めて効果的に、てんぷの振り角を制御することができる。したがって、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計は、時計の瞬間歩度の変化を抑制することができ、図27に四角のプロットと太線で示す従来の本発明の姿勢検出装置をもたない機械式時計と比較すると、瞬間歩度が約0〜5秒/日である全巻からの経過時間を長くすることができる。
すなわち、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計は、瞬間歩度が約プラス・マイナス5秒/日以内である持続時間が約32時間である。この持続時間の値は、従来の本発明の姿勢検出装置をもたない機械式時計における瞬間歩度が約プラス・マイナス5秒/日以内である持続時間、約22時間の約1.45倍である。
したがって、本発明の姿勢検出装置を備えた機械式時計は、従来の機械式時計と比較して、非常に精度がよいというシミュレーションの結果が得られた。
〔産業上の利用可能性〕
本発明の姿勢検出装置は、小形で高精度である。
したがって、本発明の姿勢検出装置は、簡単な構造を有し、精度が非常によい機械式時計を実現するのに適している。
更に、本発明の姿勢検出装置は、小形で高精度であるので、工作機械、測定機械、映像機器、記録機器などに使用することができる。

Claims (2)

  1. 姿勢検出装置であって、
    六面体の形状を有するケース(510a)と、
    該ケース(510a)の内面に対してそれぞれ1つずつ配置された電極(A1〜A6)と、
    前記ケース(510a)の中に収容された導電性流体(530)とを含み、
    前記電極(A1〜A6)は互いに絶縁されており、
    前記ケース(510a)の内面のうちの1つが水平に配置される第1の状態において、前記5つの電極(A2〜A6)が導通したときに、第1パターン(531)により第1のタイプの出力信号が出力されるように構成され、
    前記ケース(510a)の内面の頂点のうちの1つが最下部になるように配置される第2の状態において、前記3つの電極(A2、A3、A6)が導通したときに、第3パターン(533)により第2のタイプの出力信号が出力されるように構成され、
    前記第1の状態でなく、しかも、前記第2の状態でない第3の状態において、第2パターン(532)により第3のタイプの出力信号が出力されるように構成されている、
    ことを特徴とする姿勢検出装置。
  2. 姿勢検出装置であって、
    六面体の形状を有するケース(510a)と、
    該ケース(510a)の内面に対してそれぞれ複数配置された電極(A11〜A64)と、
    前記ケース(510a)の中に収容された導電性流体(570)とを含み、
    前記電極(A11〜A64)は互いに絶縁されており、
    全ての前記電極(A11〜A64)のうちで、互いに導通している電極が、どれとどれであるかを判定して、その判定結果に基づいて、電極の導通状態を3種類の状態に区分し、3種類の状態に対応して3つのタイプの出力信号を出力するように構成されている、
    ことを特徴とする姿勢検出装置。
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