JP3631767B6 - てんぷ回転角度制御機構付き機械式時計 - Google Patents
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Description
〔技術分野〕
本発明は、てんぷの回転を抑制するような力をてんぷに加えるように構成したてんぷ回転角度制御機構付き機械式時計に関する。また、本発明は、ひげぜんまいの外端部に近い部分に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置と、第1接点部材と第2接点部材との間の間隔とを調整するために使用されるスイッチ調整装置を備えた機械式時計に関する。更に、本発明は、ひげぜんまいの外端部に近い部分に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置を調整するための機械式時計用の調整装置に関する。
〔背景技術〕
従来の機械式時計において、図13及び図14に示すように、機械式時計のムーブメント(機械体)1100は、ムーブメントの基板を構成する地板1102を有する。巻真1110が、地板1102の巻真案内穴1102aに回転可能に組み込まれる。文字板1104(図14に仮想線で示す)がムーブメント1100に取付けられる。
一般に、地板の両側のうちで、文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称し、文字板のある方の側と反対側をムーブメントの「表側」と称する。ムーブメントの「表側」に組み込まれる輪列を「表輪列」と称し、ムーブメントの「裏側」に組み込まれる輪列を「裏輪列」と称する。
おしどり1190、かんぬき1192、かんぬきばね1194、裏押さえ1196を含む切換装置により、巻真1110の軸線方向の位置を決める。きち車1112が巻真1110の案内軸部に回転可能に設けられる。巻真1110が、回転軸線方向に沿ってムーブメントの内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真1110を回転させると、つづみ車の回転を介してきち車1112が回転する。丸穴車1114が、きち車1112の回転により回転する。角穴車1116が、丸穴車1114の回転により回転する。角穴車1116が回転することにより、香箱車1120に収容されたぜんまい1122を巻き上げる。二番車1124が、香箱車1120の回転により回転する。がんぎ車1130が、四番車1128、三番車1126、二番車1124の回転を介して回転する。香箱車1120、二番車1124、三番車1126、四番車1128は表輪列を構成する。
表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置は、てんぷ1140と、がんぎ車1130と、アンクル1142とを含む。てんぷ1140は、てん真1140aと、てん輪1140bと、ひげぜんまい1140cとを含む。二番車1124の回転に基づいて、筒かな1150が同時に回転する。筒かな1150に取付けられた分針1152が「分」を表示する。筒かな1150には、二番車1124に対するスリップ機構が設けられる。筒かな1150の回転に基づいて、日の裏車の回転を介して、筒車1154が回転する。筒車1154に取付けられた時針1156が「時」を表示する。
香箱車1120は、地板1102及び香箱受1160に対して回転可能なように支持される。二番車1124、三番車1126、四番車1128、がんぎ車1130は、地板1102及び輪列受1162に対して回転可能なように支持される。アンクル1142は、地板1102及びアンクル受1164に対して回転可能なように支持される。てんぷ1140は、地板1102及びてんぷ受1166に対して回転可能なように支持される。
ひげぜんまい1140cは、複数の巻き数をもったうずまき状(螺旋状)の形態の薄板ばねである。ひげぜんまい1140cの内端部は、てん真1140aに固定されたひげ玉1140dに固定され、ひげぜんまい1140cの外端部は、てんぷ受1166に固定されたひげ持受1170に取り付けたひげ持1170aを介してねじ締めにより固定される。
緩急針1168が、てんぷ受1166に回転可能に取付けられている。ひげ受1168aとひげ棒1168bが、緩急針1168に取付けられている。ひげぜんまい1140cの外端部に近い部分は、ひげ受1168aとひげ棒1168bとの間に位置する。
一般に、従来の代表的な機械式時計では、図8に示すように、ぜんまいを完全に巻き上げた状態(全巻き状態)からぜんまいが巻き戻されて持続時間が経過するにつれて、ぜんまいトルクは減少する。例えば、図8の場合では、ぜんまいトルクは、全巻き状態で約27g・cmであり、全巻き状態から20時間経過すると約23g・cmになり、全巻き状態から40時間経過する約18g・cmになる。
一般的に、従来の代表的な機械式時計では、図9に示すように、ぜんまいトルクが減少すると、てんぷの振り角も減少する。例えば、図9の場合では、ぜんまいトルクが25〜28g・cmのとき、てんぷの振り角は約240〜270度であり、ぜんまいトルクが20〜25g・cmのとき、てんぷの振り角は約180〜240度である。
図10を参照すると、従来の代表的な機械式時計におけるてんぷの振り角に対する瞬間歩度(時計の精度を示す数値)の推移が示されている。ここで、「瞬間歩度」とは、「歩度を測定したときのてんぷの振り角等の状態や環境を維持したまま。機械式時計を1日放置したと仮定したとき、1日たったときの機械式時計の進み、又は、遅れを示す値」をいう。図10の場合では、てんぷの振り角が240度以上のとき、或いは、200度以下のとき、瞬間歩度は遅れる。
例えば、従来の代表的な機械式時計では、図10に示すように、てんぷの振り角が約200〜240度のとき、瞬間歩度は約0〜5秒/日であるが(1日につき約0〜5秒進み)、てんぷの振り角が約170度のとき、瞬間歩度は約−20秒/日になる(1日につき約20秒遅れる)。
図12を参照すると、従来の代表的な機械式時計における全巻き状態からぜんまいを巻き戻したときの経過時間と瞬間歩度の推移が示されている。ここで、従来の機械式時計において、1日あたりの時計の進み、或いは、時計の遅れを示す「歩度」は、図12に極細線で示す、ぜんまいを全巻きからほどいた経過時間に対する瞬間歩度を24時間分にわたって積分することにより得られる。
一般的に、従来の機械式時計では、全巻き状態からぜんまいが巻き戻されて持続時間が経過するにつれて、ぜんまいトルクは減少し、てんぷの振り角も減少するので、瞬間歩度は遅れる。このために、従来の機械式時計では、持続時間が24時間経過した後の時計の遅れを見込んで、ぜんまいを全巻き状態にしたときの瞬間歩度あらかじめ進めておき、1日あたりの時計の進み、或いは、時計の遅れを示す「歩度」がプラスになるように、あらかじめ調整していた。
例えば、従来の代表的な機械式時計では、図12に極細線で示すように、全巻き状態では、瞬間歩度は約3秒/日であるが(1日につき約3秒進む)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約−3秒/日になり(1日につき約3秒遅れる)、全巻き状態から24時間経過すると瞬間歩度は約−8秒/日になり(1日につき約8秒遅れる)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−16秒/日になる(1日につき約16秒遅れる)。
なお、従来のてんぷの振り角調整装置として、てんぷの磁石が揺動近接するたびに過電流が発生し、てんぷに制動力を与える振り角調整板を備えたものが、例えば、実開昭54−41675号公報に開示されている。
本発明の目的は、てんぷの振り角が一定の範囲に入るように制御することができるてんぷ回転角度制御機構を備えた機械式時計を提供することにある。
更に、本発明の目的は、全巻き状態から経過時間が過ぎても歩度の変化が少なく、精度がよい機械式時計を提供することにある。
更に、本発明の目的は、ひげぜんまいの外端部に近い部分に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置と、第1接点部材と第2接点部材との間の間隔とを調整するために使用されるスイッチ調整装置を備えた機械式時計を提供することにある。
更に、本発明の目的は、ひげぜんまいの外端部に近い部分に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置を調整するための機械式時計用の調整装置を提供することにある。
〔発明の開示〕
本発明は、機械式時計の動力源を構成するぜんまいと、ぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列と、表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置とを備え、この脱進・調速装置は右回転と左回転を繰り返すてんぷと、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車と、てんぷの作動に基づいてがんぎ車の回転を制御するアンクルとを含むように構成されている機械式時計において、てんぷの回転角度が所定のしきい値以上になったときにオンの信号を出力し、てんぷの回転角度が所定のしきい値を超えていないときにオフの信号を出力するように構成されたスイッチ機構と、スイッチ機構がオンの信号を出力したときに、てんぷの回転を抑制するような力をてんぷに加えるように構成されたてんぷ回転角度制御機構とを有することを特徴とする。
本発明の機械式時計では、スイッチ機構は、てんぷに設けられたひげぜんまいが接点部材に接触したとき、すなわち、第1接点部材又は第2接点部材に接触したときにオンの信号を出力するように構成するのが好ましい。
また、本発明の機械式時計では、てんぷ回転角度制御機構は、てんぷに設けられたてんぷ磁石と、このてんぷ磁石に対して向かい合うように、かつ、てんぷ磁石との間に隙間を設けて配置されたコイルとを含むのが好ましい。そして、このコイルは、スイッチ機構がオンの信号を出力したときに、てんぷ磁石の磁束の変化により発生する誘導電流により、てんぷの回転運動を抑制するような力をてんぷに及ぼすことによりてんぷの回転を抑制し、一方、スイッチ機構がオフの信号を出力したとき、てんぷ磁石に何の影響も与えないように構成するのが好ましい。
このように構成したてんぷ回転角度制御機構を用いることにより、機械式時計のてんぷの回転角度を効果的に制御することができ、それによって、機械式時計の精度を向上させることができる。
また、本発明の機械式時計では、スイッチ機構は、第1接点部材と、第2接点部材とを含み、第1接点部材と第2接点部材との間の間隔を変えるための調整装置を更に備えるのが好ましい。
また、本発明の機械式時計では、スイッチ機構は、第1接点部材と、第2接点部材とを含み、第1接点部材及び第2接点部材をてんぷの回転中心に対して半径方向へ同時に移動させるための調整装置を更に備えるのが好ましい。
また、本発明の機械式時計では、調整装置は、てんぷの回転中心を中心として回転可能なように設けられたスイッチ体と、スイッチ体に対して摺動可能に配置されたスイッチ絶縁部材と、第1接点部と第2接点部とを有するスイッチ間隔調整レバーとを含むのが好ましい。
また、本発明の機械式時計では、調整装置は、てんぷの回転中心を中心として回転可能なように設けられたスイッチ体と、スイッチ体に対して摺動可能に配置されたスイッチ絶縁部材と、スイッチ体に対して回転可能に設けられ、かつ、スイッチ絶縁部材の長穴にはまる偏心部を有するスイッチ位置調整レバーを含むのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の機械式時計のムーブメントの表側の概略形状を示す平面図である(図1では、一部の部品を省略し、受部材は仮想線で示している)。
図2は、本発明の機械式時計のムーブメントの概略部分断面図である(図2では、一部の部品を省略している)。
図3は、スイッチ機構がオフの状態における、本発明の機械式時計のてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分平面図である。
図4は、スイッチ機構がオフの状態における、本発明の機械式時計のてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分断面図である。
図5は、スイッチ機構がオンの状態における、本発明の機械式時計のてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分平面図である。
図6は、スイッチ機構がオンの状態における、本発明の機械式時計のてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分断面図である。
図7は、本発明の機械式時計に使用されるてんぷ磁石の概略形状を示す斜視図である。
図8は、機械式時計において、全巻から巻ほどいた経過時間とぜんまいトルクの関係を概略的に示すグラフである。
図9は、機械式時計において、てんぷの振り角とぜんまいトルクの関係を概略的に示すグラフである。
図10は、機械式時計において、てんぷの振り角と瞬間歩度の関係を概略的に示すグラフである。
図11は、本発明の機械式時計において、回路が開いている時の作動、及び、回路が閉じている時の作動を示すブロック図である。
図12は、本発明の機械式時計及び従来の機械式時計において、全巻から巻ほどいた経過時間と瞬間歩度の関係を概略的に示すグラフである。
図13は、従来の機械式時計のムーブメントの表側の概略形状を示す平面図である(図13では、一部の部品を省略し、受部材は仮想線で示している)。
図14は、従来の機械式時計のムーブメントの概略部分断面図である(図14では、一部の部品を省略している)。
図15は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置を示す平面図である。
図16は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置を示す断面図である。
図17は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置において、スイッチ位置調整レバーを回転させた状態を示す平面図である。
図18は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置において、スイッチ位置調整レバーを回転させた状態を示す断面図である。
図19は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置において、スイッチ間隔調整レバーを回転させた状態を示す平面図である。
図20は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置において、スイッチ間隔調整レバーを回転させた状態を示す断面図である。
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下に、本発明の機械式時計の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2を参照すると、本発明の機械式時計の実施の形態において、機械式時計のムーブメント(機械体)100は、ムーブメントの基板を構成する地板102を有する。巻真110が、地板102の巻真案内穴102aに回転可能に組み込まれる。文字板104(図2に仮想線で示す)がムーブメント100に取付けられる。
巻真110は角部と案内軸部とを有する。つづみ車(図示せず)が巻真110の角部に組み込まれる。つづみ車は巻真110の回転軸線と同一の回転軸線を有する。すなわち、つづみ車は角穴を有し、この角穴が巻真110の角部に嵌め合うことにより、巻真110の回転に基づいて回転するように設けられている。つづみ車は甲歯と乙歯とを有する。甲歯はムーブメントの中心に近い方のつづみ車の端部に設けられる。乙歯はムーブメントの外側に近い方のつづみ車の端部に設けられる。
ムーブメント100は、巻真110の軸線方向の位置を決めるための切換装置を備える。切換装置は、おしどり190と、かんぬき192と、かんぬきばね194と、裏押さえ196とを含む。おしどりの回転に基づいて巻真110の回転軸線方向の位置を決める。かんぬきの回転に基づいてつづみ車の回転軸線方向の位置を決める。おしどりの回転に基づいて、かんぬきは2つの回転方向の位置に位置決めされる。
きち車112が巻真110の案内軸線に回転可能に設けられる。巻真110が、回転軸線方向に沿ってムーブメントの内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真110を回転させると、つづみ車の回転を介してきち車112が回転するように構成される。丸穴車114が、きち車112の回転により回転するように構成される。角穴車116が、丸穴車114の回転により回転するように構成される。
ムーブメント100は、香箱車120に収容されたぜんまい122を動力源とする。ぜんまい122は鉄等のばね性を有する弾性材料で作られる。角穴車116が回転することにより、ぜんまい122を巻き上げることができるように構成される。
二番車124が、香箱車120の回転により回転するように構成される。三番車126が、二番車124の回転に基づいて回転するように構成される。四番車128が、三番車126の回転に基づいて回転するように構成される。がんぎ車130が、四番車128の回転に基づいて回転するように構成される。香箱車120、二番車124、三番車126、四番車128は表輪列を構成する。
ムーブメント100は、表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置を備える。脱進・調速装置は、一定の周期で右回転と左回転を繰り返すてんぷ140と、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車130と、てんぷ140の作動に基づいてがんぎ車130の回転を制御するアンクル142とを含む。
てんぷ140は、てん真140aと、てん輪140bと、ひげぜんまい140cとを含む。ひげぜんまい140cは、「エリンバー」等のばね性を有する弾性材料で作られる。すなわち、ひげぜんまい140cは、金属の導電材料で作られる。
二番車124の回転に基づいて、筒かな150が同時に回転する。筒かな150に取付けられた分針152が「分」を表示するように構成される。筒かな150には、二番車124に対して所定のスリップトルクを有するスリップ機構が設けられる。
筒かな150の回転に基づいて、日の裏車(図示せず)が回転する。日の裏車の回転に基づいて、筒車154が回転する。筒車154に取付けられた時針156が「時」を表示するように構成される。
香箱車120は、地板102及び香箱受160に対して回転可能なように支持される。二番車124、三番車126、四番車128、がんぎ車130は、地板102及び輪列受162に対して回転可能なように支持される。アンクル142は、地板102及びアンクル受164に対して回転可能なように支持される。
てんぷ140は、地板102及びてんぷ受166に対して回転可能なように支持される。すなわち、てん真140aの上ほぞ140a1は、てんぷ受166に固定されたてんぷ上軸受166aに対して回転可能なように支持される。てんぷ上軸受166aは、てんぷ上穴石及びてんぷ上受石を含む。てんぷ上穴石及びてんぷ上受石は、ルビーなどの絶縁材料で作られる。
てん真140aの下ほぞ140a2は、地板102に固定されたてんぷ下軸受102bに対して回転可能なように支持される。てんぷ下軸受102bは、てんぷ下穴石及びてんぷ下受石を含む。てんぷ下穴石及びてんぷ下受石は、ルビーなどの絶縁材料で作られる。
ひげぜんまい140cは、複数の巻き数をもったうずまき状(螺旋状)の形態の薄板ばねである。ひげぜんまい140cの内端部は、てん真140aに固定されたひげ玉140dに固定され、ひげぜんまい140cの外端部は、てんぷ受166に回転可能に固定されたひげ持受170に取り付けられたひげ持170aを介してねじで固定される。てんぷ受166は黄銅等の金属の導電材料で作られる。ひげ持受170は、鉄等の金属の導電材料で作られる。
次に、本発明の機械式時計のスイッチ機構について説明する。
図1及び図2を参照すると、スイッチレバー168は、てんぷ受166に回転可能に取付けられる。第1接点部材168a及び第2接点部材168bがスイッチレバー168に取付けられる。スイッチレバー168は、てんぷ受166に取付けられ、てんぷ140の回転中心を中心として回転可能に取付けられる。スイッチレバー168は、ポリカーボネート等のプラスチックの絶縁材料で形成される。第1接点部材168a及び第2接点部材168bは、黄銅等の金属の導電材料で作られる。ひげぜんまい140cの外端部に近い部分は、第1接点部材168aと第2接点部材168bとの間に位置する。
コイル180、180a、180b、180cが、てん輪140bの地板側面と向かい合うように地板102の表側の面に取付けられる。コイルの数は、図1及び図2に示すように、例えば4個であるが、1個であってもよいし、2個であってもよいし、3個であってもよいし、4個以上であってもよい。
てんぷ磁石140eが、地板102の表側の面と向かい合うようにてん輪140bの地板側面に取付けられる。
図1、図3、図5に示すように、コイルを複数個配置する場合のコイルの円周方向の間隔は、コイルに対向して配置されるてんぷ磁石140eのS極、N極の円周方向の間隔の整数倍であるのが好ましいが、すべてのコイルが円周方向について同一の間隔でなくてもよい。さらに、このような複数個のコイルを備えた構成においては、それぞれのコイルの間の配線は、電磁誘導により各コイルに発生する電流を互いに打ち消さないように、直列に配線するのがよい。或いは、それぞれのコイルの間の配線は、電磁誘導により各コイルに発生する電流を互いに打ち消さないように、並列に配線してもよい。
図7を参照すると、てんぷ磁石140eは円環状(リング状)の形態を有し、その円周方向にそって、例えば上下に分極された12個のS極140s1〜140s12と12個のN極140n1〜140n12からなる磁石部分が交互に設けられている。てんぷ磁石140eにおける円環状(リング状)に配列された磁石部分の数は、図7に示す例では12個であるが、2以上の複数であればよい。ここで、磁石部分の1つの弦の長さが、その磁石部分に対向して設けられるコイル1つの外径とほぼ等しくなるようにするのが好ましい。
隙間がてんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間に設けられる。てんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間の隙間は、コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、てんぷ磁石140eの磁力はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことができるように決定されている。
コイル180、180a、180b、180cが導通していないとき、てんぷ磁石140eの磁力はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことはない。てんぷ磁石140eは、一方の面がてん輪140bのリング状リム部に接触し、他方の面が地板102の表側の面と向かい合うような状態で、てん輪140bの地板側の面に接着などにより固定される。
第1リード線182がコイル180の一方の端末と、第1接点部材168a及び第2接点部材168bとを接続するように設けられる。第2リード線184がコイル180cの一方の端末とひげ持受170とを接続するように設けられる。
なお図4では、ひげぜんまい140cの厚さ(てんぷの半径方向の厚さ)は誇張して図示してあるが、例えば、0.021ミリメートルである。てんぷ磁石140eは、例えば、外径が約9ミリメートルであり、内径が約7ミリメートルであり、厚さが約1ミリメートルであり、磁束密度は、約0.02テスラである。コイル180、180a、180b、180cは、それぞれ巻き数が、例えば、8巻きであり、コイル線径は、約25マイクロメートルである。てんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間の隙間STCは、例えば、約0.4ミリメートルである。
図3、図4、図11を参照して、コイル180、180a、180b、180cが導通していないとき、すなわち、回路が開いているときのてんぷ140の作動を説明する。
ひげぜんまい140cは、てんぷ140の回転する回転角度の応じて、ひげぜんまい140cの半径方向に伸縮する。例えば、図3に示す状態では、てんぷ140が時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cはてんぷ140の中心に向かう方向に収縮し、これに対して、てんぷ140が反時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cはてんぷ140の中心から遠ざかる方向に拡張する。
このため、図4において、てんぷ140が時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cは第2接点部材168bに接近するように作動する。これに対して、てんぷ140が反時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aに接近するように作動する。
てんぷ140の回転角度(振り角)が、ある一定のしきい値、例えば、180度未満である場合には、ひげぜんまい140cの半径方向の伸縮量が少ないために、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aに接触せず、第2接点部材168bにも接触しない。
てんぷ140の回転角度(振り角)が、ある一定のしきい値、例えば、180度以上である場合には、ひげぜんまい140cの半径方向の伸縮量が十分大きくなるために、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aと第2接点部材168bの両方に接触する。
例えば、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aと第2接点部材168bとの間の約0.04ミリメートルの隙間の中に位置する。したがって、てんぷ140の振り角が0度を超えて180度未満の範囲内である状態では、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aにも接触せず、第2接点部材168bにも接触しない。すなわち、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しないので、コイル180、180a、180b、180cは導通せず、てんぷ磁石140eの磁束はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことはない。その結果、てんぷ140の振り角が、てんぷ磁石140e及びコイル180、180a、180b、180cの作用により減衰することはない。
次に、図5、図6及び図11を参照して、コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、すなわち、回路が閉じているときのてんぷ140の作動を説明する。すなわち、図5及び図6は、てんぷ140の振り角が180度以上であるときを示す。
なお図6では、ひげぜんまい140cの厚さ(てんぷの半径方向の厚さ)は誇張して図示してある。
てんぷ140の振り角が180度以上になると、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168a又は第2接点部材168bに接触する。このような状態では、コイル180、180a、180b、180cは導通し、てんぷ磁石140eの磁束の変化により発生する誘電電流により、てんぷ140の回転運動を抑制するような力をてんぷ140に及ぼす。そして、この作用により,てんぷ140の回転を抑制するてんぷ140ブレーキ力を加えて、てんぷ140の振り角を減少させる。
そして、てんぷ140の振り角が0度をこえて180度未満の範囲まで減少すると、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しない状態になる。したがって、図3及び図4に示すように、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しないので、コイル180、180a、180b、180cは導通せず、てんぷ磁石140eの磁束はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼさなくなる。
このように構成した本発明の機械式時計では、てんぷ140の回転角度を効率的に制御することができる。
本発明は、以上説明したように、脱進・調速装置が右回転と左回転を繰り返すてんぷと、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車と、てんぷの作動に基づいてがんぎ車の回転を制御するアンクルとを含むように構成された機械式時計において、てんぷ回転角度制御機構を有する構成としたので、機械式時計の持続時間を減らすことなく、機械式時計の精度を向上させることができる。
すなわち、本発明においては、瞬間歩度と振り角との間の相関関係に着目し、振り角を一定に保つことにより、瞬間歩度の変化を抑制し、1日当たりの時計の進み、遅れを少なくするように調節するようにした。
これに対して、従来の機械式時計では、持続時間と振り角との間の関係により、振り角が時間の経過とともに変化する。さらに、振り角と瞬間歩度の関係により、瞬間歩度が時間の経過とともに変化する。このため、一定の精度を維持することができる、時計の持続時間を長くするのが困難であった。
次に、このような従来の機械式時計の課題を解決するために開発した本発明の機械式時計について行った瞬間歩度に関するシミュレーションの結果を説明する。
図12を参照すると、本発明の機械式時計では、最初に、図12にx印のプロットと細線で示すように、時計の瞬間歩度を進めた状態に調節する。本発明の機械式時計では、でんぷ140が、ある角度以上回転した場合、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168a又は第2接点部材168bと接触すると、ひげぜんまい140cの有効長さが短くなるので、瞬間歩度はなお一層進む。
すなわち、本発明の機械式時計において、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しない状態では、図12にx印のプロットと細線で示すように、ぜんまいを完全に巻き上げた状態で歩度は約18秒/日であり(1日につき約18秒進み)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約13秒/日になり(1日につき約13秒進み)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になる(1日につき約2秒遅れる)。
そして、この本発明の機械式時計において、てんぷ回転角度制御機構を作動させないと仮定すると、図12に三角形のプロットと太線で示すように、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168a又は第2接点部材168bと接触した状態では、ぜんまいを完全に巻き上げた状態で歩度は約25秒/日であり(1日につき約25秒進み)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約20秒/日になり(1日につき約20秒進み)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約5秒/日になる(1日につき約5秒進む)。
これに対して、本発明の機械式時計において、てんぷ回転角度制御機構を作動させたときには、図12に黒丸のプロットと極太線で示すように、てんぷ回転角度制御機構が作動する状態、すなわち、ぜんまいを完全に巻き上げた状態から、27時間経過するまでは、瞬間歩度は約5秒/日を維持することができ(1日につき約5秒進んだ状態を維持し)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になる(1日につき約2秒遅れる)。
本発明のてんぷ回転角度制御機構を有する機械式時計は、てんぷの振り角を制御することにより、時計の瞬間歩度の変化を抑制するので、図12に四角のプロットと仮想線で示す従来の機械式時計と比較すると、瞬間歩度が約0〜5秒/日である全巻からの経過時間を長くすることができる。
すなわち、本発明の機械式時計は、瞬間歩度が約プラス・マイナス5秒/日以内である持続時間が約32時間である。この持続時間の値は、従来の機械式時計における瞬間歩度が約プラス・マイナス5秒/日以内である持続時間、約22時間の約1.45倍である。
したがって、本発明の機械式時計は、従来の機械式時計と比較して、非常に精度がよいというシミュレーションの結果が得られた。
次に、本発明の機械式時計において、ひげぜんまいの外端部に近い部分140に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置と、第1接点部材と第2接点部材との間の間隔とを調整するために使用されるスイッチ調整装置について説明する。
図15及び図16を参照すると、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置200は、スイッチ体202と、このスイッチ体202に設けられた第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206とを含む。スイッチ体202は鉄、黄銅などの金属又はプラスチックで形成される。第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206は鉄、黄銅などの金属又はプラスチックで形成される。第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206は、スイッチ体202と別個の部材として形成して、スイッチ体202に固定してもよいし、第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206をスイッチ体202と一体に形成してもよい。スイッチ体202は、てんぷ140の回転中心を中心として回転可能なようにてんぷ受(図示せず)に取り付けられる。
スイッチ絶縁部材210が、スイッチ体202に対して、てんぷ140に面する側と反対側に配置される。スイッチ絶縁部材210はプラスチックなどの絶縁材料で形成され、かつ、弾性変形可能な材料で形成される。第1長穴210aがスイッチ絶縁部材210に設けられ、この第1長穴210aに中に第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206がはまり、スイッチ絶縁部材210はスイッチ体202に対して摺動可能に配置される。スイッチ絶縁部材210の摺動方向は、第1ガイドピン204、或いは、第2ガイドピン206の中心とてんぷ140の中心を通る直線と一致する。
スイッチ間隔調整レバー212がスイッチ絶縁部材210に対してスリップ機構により回転可能に設けられる。スイッチ絶縁部材210の第1長穴210aの一部分に設けられた円形部分に、スイッチ間隔調整レバー212の円筒部分に外周部が組み込まれる。スイッチ絶縁部材210の第1長穴210aの一部分に設けられた円形部分は、弾性力を介してスイッチ間隔調整レバー212の円筒部分に嵌め合うように構成されるため、スイッチ間隔調整レバー212は、任意の位置で回転を固定することができる。
第1接点部212aと第2接点部212bとがスイッチ間隔調整レバー212のてんぷ140に面する側に設けられる。第1接点部212aと第2接点部材212bは、スイッチ間隔調整レバー212の回転中心に対して偏心した位置に設けられる。第1接点部212aと第2接点部212bとは、スイッチ間隔調整レバー212の回転中心を含む直線に対して線対称になるように形成される。
ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部212aと第2接点部212bとの間の隙間SSWの中に位置する。例えば、隙間SSWは、約0.06ミリメートルである。
スイッチ間隔調整レバー212を矢印220の方向(図15において時計回り方向)、又は、矢印222の方向(図15において反時計回り方向)に回転させることにより、第1接点部212aと第2接点部212bとを回転させることができる。これにより、てんぷ140の中心を通る直線の方向における第1接点部212aと第2接点部212bとの間の距離SSWを変えることができる。
さらに、スイッチ位置調整レバー232がスイッチ体202に対してスリップ機構により回転可能に設けられ、任意の位置での固定が可能になっている。スイッチ位置調整レバー232の偏心部232aがスイッチ絶縁部材210の第2長穴210bにはまる。第2長穴210bの長手方向中心軸線の向きは、第1ガイドピン204、或いは、第2ガイドピン206の中心とてんぷ140の中心を通る直線の方向に対して直角方向である。すなわち、第2長穴210bの長手方向中心軸線の向きは、第1長穴210aの長手方向中心軸線の向きに対して直角方向である。弾性変形可能なように幅を形成したスイッチ絶縁部材210の弾性変形部210c及び210dが第2長穴210bの長手方向の両端部に設けられる。弾性変形しないように幅を形成したスイッチ絶縁部材210の剛体部210eが、第2長穴210bの外側(ひげぜんまい140cの外端部から遠い方の側)設けられる。したがって、剛体部材210eの幅は、弾性変形部210c及び210dの幅より大きく形成される。剛体部210eの内側は、スイッチ位置調整レバー232の偏心部232aに接触するように配置される。
スイッチ位置調整レバー232を矢印240の方向(図15において時計回り方向)に回転させることにより、偏心部232aを回転させることができる。これにより、スイッチ絶縁部材210は、てんぷ140の中心を通る直線の方向において、てんぷ140の中心に向かう方向(図15及び図16において矢印242の方向)に移動することができる。その結果、第1接点部212aは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctに近づき、第2接点部212bは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctから遠ざかるように移動する。
スイッチ位置調整レバー232を矢印244の方向(図15において反時計回り方向)に回転させることにより、偏心部232aを回転させることができる。これにより、スイッチ絶縁部材210は、てんぷ140の中心を通る直線の方向において、てんぷ140の中心から遠ざかる方向(図15及び図16において矢印246の方向)に移動することができる。その結果、第1接点部212aは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctから遠ざかり、第2接点部212bは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctに近づくように移動する。
図17及び図18は、図15及び図16においてスイッチ位置調整レバー232を矢印240の方向(図15において時計回り方向)に回転させたときの状態が図示されている。スイッチ位置調整レバー232の回転により、偏心部232aが回転し、スイッチ絶縁部材210は、てんぷ140の中心に向かう方向に移動し、第1接点部212aは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctに近づき、第2接点部212bは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctから遠ざかる。このようなスイッチ位置調整レバー232を回転させる作動において、第1接点部212aと第2接点部212bとの間の隙間SSWは変化しない。
図19及び図20は、図15及び図16においてスイッチ間隔調整レバー212を矢印222の方向(図15において反時計回り方向)に回転させたときの状態が図示されている。スイッチ間隔調整レバー212の回転により、第1接点部212a及び第2接点部212bは回転し、てんぷ140の中心を通る直線の方向における第1接点部212aと第2接点部212bとの間の距離が減少する。したがって、てんぷ140の中心を通る直線の方向における第1接点部212aと第2接点部212bとの間の距離はSSWより小さいSSW2に変わる。
以上説明したように、本発明の機械式時計において、スイッチ調整装置200を使用することにより、ひげぜんまいの外端部に近い部分140ctに対する第1接点部212a及び第2接点部212bの位置を調整することができ、第1接点部212aと第2接点部212bとの間の間隔を調整して、ひげぜんまいの外端部に近い部分140ctと第1接点部212aとの間の距離と、ひげぜんまいの外端部に近い部分140ctと第2接点部212bとの間の距離を調整することができる。
以上述べてきたような2つの調整機構をスイッチ調整装置に適用することにより、スイッチがON/OFFする振り角を、容易に調整することができる。
したがって、図1及び図2に示す本発明の機械式時計において、スイッチ調整装置200を使用するときには、第1接点部材168aのかわりに第1接点部212aを配置し、第2接点部材168bのかわりに第2接点部212bを配置すればよい。
本発明の機械式時計用のスイッチ調整装置は、在来の機械式時計用の緩急装置にも適用することができる。このような場合には、第1接点部212aが緩急針に対応し、第2接点部212bがひげ棒に対応する。
このような構成により、機械式時計の緩急針及びひげ棒を精度よく、効率的に調整することができる。
〔産業上の利用可能性〕
本発明の機械式時計は、簡単な構造を有し、精度が非常によい機械式時計を実現するのに適している。
更に、本発明の機械式時計は、スイッチ調整装置を備えることにより、従来よりも一層効率的に高精度機械式時計を製造することができる。
本発明は、てんぷの回転を抑制するような力をてんぷに加えるように構成したてんぷ回転角度制御機構付き機械式時計に関する。また、本発明は、ひげぜんまいの外端部に近い部分に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置と、第1接点部材と第2接点部材との間の間隔とを調整するために使用されるスイッチ調整装置を備えた機械式時計に関する。更に、本発明は、ひげぜんまいの外端部に近い部分に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置を調整するための機械式時計用の調整装置に関する。
〔背景技術〕
従来の機械式時計において、図13及び図14に示すように、機械式時計のムーブメント(機械体)1100は、ムーブメントの基板を構成する地板1102を有する。巻真1110が、地板1102の巻真案内穴1102aに回転可能に組み込まれる。文字板1104(図14に仮想線で示す)がムーブメント1100に取付けられる。
一般に、地板の両側のうちで、文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称し、文字板のある方の側と反対側をムーブメントの「表側」と称する。ムーブメントの「表側」に組み込まれる輪列を「表輪列」と称し、ムーブメントの「裏側」に組み込まれる輪列を「裏輪列」と称する。
おしどり1190、かんぬき1192、かんぬきばね1194、裏押さえ1196を含む切換装置により、巻真1110の軸線方向の位置を決める。きち車1112が巻真1110の案内軸部に回転可能に設けられる。巻真1110が、回転軸線方向に沿ってムーブメントの内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真1110を回転させると、つづみ車の回転を介してきち車1112が回転する。丸穴車1114が、きち車1112の回転により回転する。角穴車1116が、丸穴車1114の回転により回転する。角穴車1116が回転することにより、香箱車1120に収容されたぜんまい1122を巻き上げる。二番車1124が、香箱車1120の回転により回転する。がんぎ車1130が、四番車1128、三番車1126、二番車1124の回転を介して回転する。香箱車1120、二番車1124、三番車1126、四番車1128は表輪列を構成する。
表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置は、てんぷ1140と、がんぎ車1130と、アンクル1142とを含む。てんぷ1140は、てん真1140aと、てん輪1140bと、ひげぜんまい1140cとを含む。二番車1124の回転に基づいて、筒かな1150が同時に回転する。筒かな1150に取付けられた分針1152が「分」を表示する。筒かな1150には、二番車1124に対するスリップ機構が設けられる。筒かな1150の回転に基づいて、日の裏車の回転を介して、筒車1154が回転する。筒車1154に取付けられた時針1156が「時」を表示する。
香箱車1120は、地板1102及び香箱受1160に対して回転可能なように支持される。二番車1124、三番車1126、四番車1128、がんぎ車1130は、地板1102及び輪列受1162に対して回転可能なように支持される。アンクル1142は、地板1102及びアンクル受1164に対して回転可能なように支持される。てんぷ1140は、地板1102及びてんぷ受1166に対して回転可能なように支持される。
ひげぜんまい1140cは、複数の巻き数をもったうずまき状(螺旋状)の形態の薄板ばねである。ひげぜんまい1140cの内端部は、てん真1140aに固定されたひげ玉1140dに固定され、ひげぜんまい1140cの外端部は、てんぷ受1166に固定されたひげ持受1170に取り付けたひげ持1170aを介してねじ締めにより固定される。
緩急針1168が、てんぷ受1166に回転可能に取付けられている。ひげ受1168aとひげ棒1168bが、緩急針1168に取付けられている。ひげぜんまい1140cの外端部に近い部分は、ひげ受1168aとひげ棒1168bとの間に位置する。
一般に、従来の代表的な機械式時計では、図8に示すように、ぜんまいを完全に巻き上げた状態(全巻き状態)からぜんまいが巻き戻されて持続時間が経過するにつれて、ぜんまいトルクは減少する。例えば、図8の場合では、ぜんまいトルクは、全巻き状態で約27g・cmであり、全巻き状態から20時間経過すると約23g・cmになり、全巻き状態から40時間経過する約18g・cmになる。
一般的に、従来の代表的な機械式時計では、図9に示すように、ぜんまいトルクが減少すると、てんぷの振り角も減少する。例えば、図9の場合では、ぜんまいトルクが25〜28g・cmのとき、てんぷの振り角は約240〜270度であり、ぜんまいトルクが20〜25g・cmのとき、てんぷの振り角は約180〜240度である。
図10を参照すると、従来の代表的な機械式時計におけるてんぷの振り角に対する瞬間歩度(時計の精度を示す数値)の推移が示されている。ここで、「瞬間歩度」とは、「歩度を測定したときのてんぷの振り角等の状態や環境を維持したまま。機械式時計を1日放置したと仮定したとき、1日たったときの機械式時計の進み、又は、遅れを示す値」をいう。図10の場合では、てんぷの振り角が240度以上のとき、或いは、200度以下のとき、瞬間歩度は遅れる。
例えば、従来の代表的な機械式時計では、図10に示すように、てんぷの振り角が約200〜240度のとき、瞬間歩度は約0〜5秒/日であるが(1日につき約0〜5秒進み)、てんぷの振り角が約170度のとき、瞬間歩度は約−20秒/日になる(1日につき約20秒遅れる)。
図12を参照すると、従来の代表的な機械式時計における全巻き状態からぜんまいを巻き戻したときの経過時間と瞬間歩度の推移が示されている。ここで、従来の機械式時計において、1日あたりの時計の進み、或いは、時計の遅れを示す「歩度」は、図12に極細線で示す、ぜんまいを全巻きからほどいた経過時間に対する瞬間歩度を24時間分にわたって積分することにより得られる。
一般的に、従来の機械式時計では、全巻き状態からぜんまいが巻き戻されて持続時間が経過するにつれて、ぜんまいトルクは減少し、てんぷの振り角も減少するので、瞬間歩度は遅れる。このために、従来の機械式時計では、持続時間が24時間経過した後の時計の遅れを見込んで、ぜんまいを全巻き状態にしたときの瞬間歩度あらかじめ進めておき、1日あたりの時計の進み、或いは、時計の遅れを示す「歩度」がプラスになるように、あらかじめ調整していた。
例えば、従来の代表的な機械式時計では、図12に極細線で示すように、全巻き状態では、瞬間歩度は約3秒/日であるが(1日につき約3秒進む)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約−3秒/日になり(1日につき約3秒遅れる)、全巻き状態から24時間経過すると瞬間歩度は約−8秒/日になり(1日につき約8秒遅れる)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−16秒/日になる(1日につき約16秒遅れる)。
なお、従来のてんぷの振り角調整装置として、てんぷの磁石が揺動近接するたびに過電流が発生し、てんぷに制動力を与える振り角調整板を備えたものが、例えば、実開昭54−41675号公報に開示されている。
本発明の目的は、てんぷの振り角が一定の範囲に入るように制御することができるてんぷ回転角度制御機構を備えた機械式時計を提供することにある。
更に、本発明の目的は、全巻き状態から経過時間が過ぎても歩度の変化が少なく、精度がよい機械式時計を提供することにある。
更に、本発明の目的は、ひげぜんまいの外端部に近い部分に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置と、第1接点部材と第2接点部材との間の間隔とを調整するために使用されるスイッチ調整装置を備えた機械式時計を提供することにある。
更に、本発明の目的は、ひげぜんまいの外端部に近い部分に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置を調整するための機械式時計用の調整装置を提供することにある。
〔発明の開示〕
本発明は、機械式時計の動力源を構成するぜんまいと、ぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列と、表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置とを備え、この脱進・調速装置は右回転と左回転を繰り返すてんぷと、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車と、てんぷの作動に基づいてがんぎ車の回転を制御するアンクルとを含むように構成されている機械式時計において、てんぷの回転角度が所定のしきい値以上になったときにオンの信号を出力し、てんぷの回転角度が所定のしきい値を超えていないときにオフの信号を出力するように構成されたスイッチ機構と、スイッチ機構がオンの信号を出力したときに、てんぷの回転を抑制するような力をてんぷに加えるように構成されたてんぷ回転角度制御機構とを有することを特徴とする。
本発明の機械式時計では、スイッチ機構は、てんぷに設けられたひげぜんまいが接点部材に接触したとき、すなわち、第1接点部材又は第2接点部材に接触したときにオンの信号を出力するように構成するのが好ましい。
また、本発明の機械式時計では、てんぷ回転角度制御機構は、てんぷに設けられたてんぷ磁石と、このてんぷ磁石に対して向かい合うように、かつ、てんぷ磁石との間に隙間を設けて配置されたコイルとを含むのが好ましい。そして、このコイルは、スイッチ機構がオンの信号を出力したときに、てんぷ磁石の磁束の変化により発生する誘導電流により、てんぷの回転運動を抑制するような力をてんぷに及ぼすことによりてんぷの回転を抑制し、一方、スイッチ機構がオフの信号を出力したとき、てんぷ磁石に何の影響も与えないように構成するのが好ましい。
このように構成したてんぷ回転角度制御機構を用いることにより、機械式時計のてんぷの回転角度を効果的に制御することができ、それによって、機械式時計の精度を向上させることができる。
また、本発明の機械式時計では、スイッチ機構は、第1接点部材と、第2接点部材とを含み、第1接点部材と第2接点部材との間の間隔を変えるための調整装置を更に備えるのが好ましい。
また、本発明の機械式時計では、スイッチ機構は、第1接点部材と、第2接点部材とを含み、第1接点部材及び第2接点部材をてんぷの回転中心に対して半径方向へ同時に移動させるための調整装置を更に備えるのが好ましい。
また、本発明の機械式時計では、調整装置は、てんぷの回転中心を中心として回転可能なように設けられたスイッチ体と、スイッチ体に対して摺動可能に配置されたスイッチ絶縁部材と、第1接点部と第2接点部とを有するスイッチ間隔調整レバーとを含むのが好ましい。
また、本発明の機械式時計では、調整装置は、てんぷの回転中心を中心として回転可能なように設けられたスイッチ体と、スイッチ体に対して摺動可能に配置されたスイッチ絶縁部材と、スイッチ体に対して回転可能に設けられ、かつ、スイッチ絶縁部材の長穴にはまる偏心部を有するスイッチ位置調整レバーを含むのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の機械式時計のムーブメントの表側の概略形状を示す平面図である(図1では、一部の部品を省略し、受部材は仮想線で示している)。
図2は、本発明の機械式時計のムーブメントの概略部分断面図である(図2では、一部の部品を省略している)。
図3は、スイッチ機構がオフの状態における、本発明の機械式時計のてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分平面図である。
図4は、スイッチ機構がオフの状態における、本発明の機械式時計のてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分断面図である。
図5は、スイッチ機構がオンの状態における、本発明の機械式時計のてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分平面図である。
図6は、スイッチ機構がオンの状態における、本発明の機械式時計のてんぷの部分の概略形状を示す拡大部分断面図である。
図7は、本発明の機械式時計に使用されるてんぷ磁石の概略形状を示す斜視図である。
図8は、機械式時計において、全巻から巻ほどいた経過時間とぜんまいトルクの関係を概略的に示すグラフである。
図9は、機械式時計において、てんぷの振り角とぜんまいトルクの関係を概略的に示すグラフである。
図10は、機械式時計において、てんぷの振り角と瞬間歩度の関係を概略的に示すグラフである。
図11は、本発明の機械式時計において、回路が開いている時の作動、及び、回路が閉じている時の作動を示すブロック図である。
図12は、本発明の機械式時計及び従来の機械式時計において、全巻から巻ほどいた経過時間と瞬間歩度の関係を概略的に示すグラフである。
図13は、従来の機械式時計のムーブメントの表側の概略形状を示す平面図である(図13では、一部の部品を省略し、受部材は仮想線で示している)。
図14は、従来の機械式時計のムーブメントの概略部分断面図である(図14では、一部の部品を省略している)。
図15は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置を示す平面図である。
図16は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置を示す断面図である。
図17は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置において、スイッチ位置調整レバーを回転させた状態を示す平面図である。
図18は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置において、スイッチ位置調整レバーを回転させた状態を示す断面図である。
図19は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置において、スイッチ間隔調整レバーを回転させた状態を示す平面図である。
図20は、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置において、スイッチ間隔調整レバーを回転させた状態を示す断面図である。
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下に、本発明の機械式時計の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2を参照すると、本発明の機械式時計の実施の形態において、機械式時計のムーブメント(機械体)100は、ムーブメントの基板を構成する地板102を有する。巻真110が、地板102の巻真案内穴102aに回転可能に組み込まれる。文字板104(図2に仮想線で示す)がムーブメント100に取付けられる。
巻真110は角部と案内軸部とを有する。つづみ車(図示せず)が巻真110の角部に組み込まれる。つづみ車は巻真110の回転軸線と同一の回転軸線を有する。すなわち、つづみ車は角穴を有し、この角穴が巻真110の角部に嵌め合うことにより、巻真110の回転に基づいて回転するように設けられている。つづみ車は甲歯と乙歯とを有する。甲歯はムーブメントの中心に近い方のつづみ車の端部に設けられる。乙歯はムーブメントの外側に近い方のつづみ車の端部に設けられる。
ムーブメント100は、巻真110の軸線方向の位置を決めるための切換装置を備える。切換装置は、おしどり190と、かんぬき192と、かんぬきばね194と、裏押さえ196とを含む。おしどりの回転に基づいて巻真110の回転軸線方向の位置を決める。かんぬきの回転に基づいてつづみ車の回転軸線方向の位置を決める。おしどりの回転に基づいて、かんぬきは2つの回転方向の位置に位置決めされる。
きち車112が巻真110の案内軸線に回転可能に設けられる。巻真110が、回転軸線方向に沿ってムーブメントの内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真110を回転させると、つづみ車の回転を介してきち車112が回転するように構成される。丸穴車114が、きち車112の回転により回転するように構成される。角穴車116が、丸穴車114の回転により回転するように構成される。
ムーブメント100は、香箱車120に収容されたぜんまい122を動力源とする。ぜんまい122は鉄等のばね性を有する弾性材料で作られる。角穴車116が回転することにより、ぜんまい122を巻き上げることができるように構成される。
二番車124が、香箱車120の回転により回転するように構成される。三番車126が、二番車124の回転に基づいて回転するように構成される。四番車128が、三番車126の回転に基づいて回転するように構成される。がんぎ車130が、四番車128の回転に基づいて回転するように構成される。香箱車120、二番車124、三番車126、四番車128は表輪列を構成する。
ムーブメント100は、表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置を備える。脱進・調速装置は、一定の周期で右回転と左回転を繰り返すてんぷ140と、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車130と、てんぷ140の作動に基づいてがんぎ車130の回転を制御するアンクル142とを含む。
てんぷ140は、てん真140aと、てん輪140bと、ひげぜんまい140cとを含む。ひげぜんまい140cは、「エリンバー」等のばね性を有する弾性材料で作られる。すなわち、ひげぜんまい140cは、金属の導電材料で作られる。
二番車124の回転に基づいて、筒かな150が同時に回転する。筒かな150に取付けられた分針152が「分」を表示するように構成される。筒かな150には、二番車124に対して所定のスリップトルクを有するスリップ機構が設けられる。
筒かな150の回転に基づいて、日の裏車(図示せず)が回転する。日の裏車の回転に基づいて、筒車154が回転する。筒車154に取付けられた時針156が「時」を表示するように構成される。
香箱車120は、地板102及び香箱受160に対して回転可能なように支持される。二番車124、三番車126、四番車128、がんぎ車130は、地板102及び輪列受162に対して回転可能なように支持される。アンクル142は、地板102及びアンクル受164に対して回転可能なように支持される。
てんぷ140は、地板102及びてんぷ受166に対して回転可能なように支持される。すなわち、てん真140aの上ほぞ140a1は、てんぷ受166に固定されたてんぷ上軸受166aに対して回転可能なように支持される。てんぷ上軸受166aは、てんぷ上穴石及びてんぷ上受石を含む。てんぷ上穴石及びてんぷ上受石は、ルビーなどの絶縁材料で作られる。
てん真140aの下ほぞ140a2は、地板102に固定されたてんぷ下軸受102bに対して回転可能なように支持される。てんぷ下軸受102bは、てんぷ下穴石及びてんぷ下受石を含む。てんぷ下穴石及びてんぷ下受石は、ルビーなどの絶縁材料で作られる。
ひげぜんまい140cは、複数の巻き数をもったうずまき状(螺旋状)の形態の薄板ばねである。ひげぜんまい140cの内端部は、てん真140aに固定されたひげ玉140dに固定され、ひげぜんまい140cの外端部は、てんぷ受166に回転可能に固定されたひげ持受170に取り付けられたひげ持170aを介してねじで固定される。てんぷ受166は黄銅等の金属の導電材料で作られる。ひげ持受170は、鉄等の金属の導電材料で作られる。
次に、本発明の機械式時計のスイッチ機構について説明する。
図1及び図2を参照すると、スイッチレバー168は、てんぷ受166に回転可能に取付けられる。第1接点部材168a及び第2接点部材168bがスイッチレバー168に取付けられる。スイッチレバー168は、てんぷ受166に取付けられ、てんぷ140の回転中心を中心として回転可能に取付けられる。スイッチレバー168は、ポリカーボネート等のプラスチックの絶縁材料で形成される。第1接点部材168a及び第2接点部材168bは、黄銅等の金属の導電材料で作られる。ひげぜんまい140cの外端部に近い部分は、第1接点部材168aと第2接点部材168bとの間に位置する。
コイル180、180a、180b、180cが、てん輪140bの地板側面と向かい合うように地板102の表側の面に取付けられる。コイルの数は、図1及び図2に示すように、例えば4個であるが、1個であってもよいし、2個であってもよいし、3個であってもよいし、4個以上であってもよい。
てんぷ磁石140eが、地板102の表側の面と向かい合うようにてん輪140bの地板側面に取付けられる。
図1、図3、図5に示すように、コイルを複数個配置する場合のコイルの円周方向の間隔は、コイルに対向して配置されるてんぷ磁石140eのS極、N極の円周方向の間隔の整数倍であるのが好ましいが、すべてのコイルが円周方向について同一の間隔でなくてもよい。さらに、このような複数個のコイルを備えた構成においては、それぞれのコイルの間の配線は、電磁誘導により各コイルに発生する電流を互いに打ち消さないように、直列に配線するのがよい。或いは、それぞれのコイルの間の配線は、電磁誘導により各コイルに発生する電流を互いに打ち消さないように、並列に配線してもよい。
図7を参照すると、てんぷ磁石140eは円環状(リング状)の形態を有し、その円周方向にそって、例えば上下に分極された12個のS極140s1〜140s12と12個のN極140n1〜140n12からなる磁石部分が交互に設けられている。てんぷ磁石140eにおける円環状(リング状)に配列された磁石部分の数は、図7に示す例では12個であるが、2以上の複数であればよい。ここで、磁石部分の1つの弦の長さが、その磁石部分に対向して設けられるコイル1つの外径とほぼ等しくなるようにするのが好ましい。
隙間がてんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間に設けられる。てんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間の隙間は、コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、てんぷ磁石140eの磁力はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことができるように決定されている。
コイル180、180a、180b、180cが導通していないとき、てんぷ磁石140eの磁力はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことはない。てんぷ磁石140eは、一方の面がてん輪140bのリング状リム部に接触し、他方の面が地板102の表側の面と向かい合うような状態で、てん輪140bの地板側の面に接着などにより固定される。
第1リード線182がコイル180の一方の端末と、第1接点部材168a及び第2接点部材168bとを接続するように設けられる。第2リード線184がコイル180cの一方の端末とひげ持受170とを接続するように設けられる。
なお図4では、ひげぜんまい140cの厚さ(てんぷの半径方向の厚さ)は誇張して図示してあるが、例えば、0.021ミリメートルである。てんぷ磁石140eは、例えば、外径が約9ミリメートルであり、内径が約7ミリメートルであり、厚さが約1ミリメートルであり、磁束密度は、約0.02テスラである。コイル180、180a、180b、180cは、それぞれ巻き数が、例えば、8巻きであり、コイル線径は、約25マイクロメートルである。てんぷ磁石140eとコイル180、180a、180b、180cとの間の隙間STCは、例えば、約0.4ミリメートルである。
図3、図4、図11を参照して、コイル180、180a、180b、180cが導通していないとき、すなわち、回路が開いているときのてんぷ140の作動を説明する。
ひげぜんまい140cは、てんぷ140の回転する回転角度の応じて、ひげぜんまい140cの半径方向に伸縮する。例えば、図3に示す状態では、てんぷ140が時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cはてんぷ140の中心に向かう方向に収縮し、これに対して、てんぷ140が反時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cはてんぷ140の中心から遠ざかる方向に拡張する。
このため、図4において、てんぷ140が時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cは第2接点部材168bに接近するように作動する。これに対して、てんぷ140が反時計回り方向に回転すると、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aに接近するように作動する。
てんぷ140の回転角度(振り角)が、ある一定のしきい値、例えば、180度未満である場合には、ひげぜんまい140cの半径方向の伸縮量が少ないために、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aに接触せず、第2接点部材168bにも接触しない。
てんぷ140の回転角度(振り角)が、ある一定のしきい値、例えば、180度以上である場合には、ひげぜんまい140cの半径方向の伸縮量が十分大きくなるために、ひげぜんまい140cは第1接点部材168aと第2接点部材168bの両方に接触する。
例えば、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aと第2接点部材168bとの間の約0.04ミリメートルの隙間の中に位置する。したがって、てんぷ140の振り角が0度を超えて180度未満の範囲内である状態では、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aにも接触せず、第2接点部材168bにも接触しない。すなわち、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しないので、コイル180、180a、180b、180cは導通せず、てんぷ磁石140eの磁束はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼすことはない。その結果、てんぷ140の振り角が、てんぷ磁石140e及びコイル180、180a、180b、180cの作用により減衰することはない。
次に、図5、図6及び図11を参照して、コイル180、180a、180b、180cが導通しているとき、すなわち、回路が閉じているときのてんぷ140の作動を説明する。すなわち、図5及び図6は、てんぷ140の振り角が180度以上であるときを示す。
なお図6では、ひげぜんまい140cの厚さ(てんぷの半径方向の厚さ)は誇張して図示してある。
てんぷ140の振り角が180度以上になると、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168a又は第2接点部材168bに接触する。このような状態では、コイル180、180a、180b、180cは導通し、てんぷ磁石140eの磁束の変化により発生する誘電電流により、てんぷ140の回転運動を抑制するような力をてんぷ140に及ぼす。そして、この作用により,てんぷ140の回転を抑制するてんぷ140ブレーキ力を加えて、てんぷ140の振り角を減少させる。
そして、てんぷ140の振り角が0度をこえて180度未満の範囲まで減少すると、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しない状態になる。したがって、図3及び図4に示すように、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しないので、コイル180、180a、180b、180cは導通せず、てんぷ磁石140eの磁束はコイル180、180a、180b、180cに影響を及ぼさなくなる。
このように構成した本発明の機械式時計では、てんぷ140の回転角度を効率的に制御することができる。
本発明は、以上説明したように、脱進・調速装置が右回転と左回転を繰り返すてんぷと、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車と、てんぷの作動に基づいてがんぎ車の回転を制御するアンクルとを含むように構成された機械式時計において、てんぷ回転角度制御機構を有する構成としたので、機械式時計の持続時間を減らすことなく、機械式時計の精度を向上させることができる。
すなわち、本発明においては、瞬間歩度と振り角との間の相関関係に着目し、振り角を一定に保つことにより、瞬間歩度の変化を抑制し、1日当たりの時計の進み、遅れを少なくするように調節するようにした。
これに対して、従来の機械式時計では、持続時間と振り角との間の関係により、振り角が時間の経過とともに変化する。さらに、振り角と瞬間歩度の関係により、瞬間歩度が時間の経過とともに変化する。このため、一定の精度を維持することができる、時計の持続時間を長くするのが困難であった。
次に、このような従来の機械式時計の課題を解決するために開発した本発明の機械式時計について行った瞬間歩度に関するシミュレーションの結果を説明する。
図12を参照すると、本発明の機械式時計では、最初に、図12にx印のプロットと細線で示すように、時計の瞬間歩度を進めた状態に調節する。本発明の機械式時計では、でんぷ140が、ある角度以上回転した場合、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168a又は第2接点部材168bと接触すると、ひげぜんまい140cの有効長さが短くなるので、瞬間歩度はなお一層進む。
すなわち、本発明の機械式時計において、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168aと接触せず、第2接点部材168bと接触しない状態では、図12にx印のプロットと細線で示すように、ぜんまいを完全に巻き上げた状態で歩度は約18秒/日であり(1日につき約18秒進み)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約13秒/日になり(1日につき約13秒進み)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になる(1日につき約2秒遅れる)。
そして、この本発明の機械式時計において、てんぷ回転角度制御機構を作動させないと仮定すると、図12に三角形のプロットと太線で示すように、ひげぜんまい140cの外端部が第1接点部材168a又は第2接点部材168bと接触した状態では、ぜんまいを完全に巻き上げた状態で歩度は約25秒/日であり(1日につき約25秒進み)、全巻き状態から20時間経過すると瞬間歩度は約20秒/日になり(1日につき約20秒進み)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約5秒/日になる(1日につき約5秒進む)。
これに対して、本発明の機械式時計において、てんぷ回転角度制御機構を作動させたときには、図12に黒丸のプロットと極太線で示すように、てんぷ回転角度制御機構が作動する状態、すなわち、ぜんまいを完全に巻き上げた状態から、27時間経過するまでは、瞬間歩度は約5秒/日を維持することができ(1日につき約5秒進んだ状態を維持し)、全巻き状態から30時間経過すると瞬間歩度は約−2秒/日になる(1日につき約2秒遅れる)。
本発明のてんぷ回転角度制御機構を有する機械式時計は、てんぷの振り角を制御することにより、時計の瞬間歩度の変化を抑制するので、図12に四角のプロットと仮想線で示す従来の機械式時計と比較すると、瞬間歩度が約0〜5秒/日である全巻からの経過時間を長くすることができる。
すなわち、本発明の機械式時計は、瞬間歩度が約プラス・マイナス5秒/日以内である持続時間が約32時間である。この持続時間の値は、従来の機械式時計における瞬間歩度が約プラス・マイナス5秒/日以内である持続時間、約22時間の約1.45倍である。
したがって、本発明の機械式時計は、従来の機械式時計と比較して、非常に精度がよいというシミュレーションの結果が得られた。
次に、本発明の機械式時計において、ひげぜんまいの外端部に近い部分140に対する第1接点部材及び第2接点部材の位置と、第1接点部材と第2接点部材との間の間隔とを調整するために使用されるスイッチ調整装置について説明する。
図15及び図16を参照すると、本発明の機械式時計に使用されるスイッチ調整装置200は、スイッチ体202と、このスイッチ体202に設けられた第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206とを含む。スイッチ体202は鉄、黄銅などの金属又はプラスチックで形成される。第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206は鉄、黄銅などの金属又はプラスチックで形成される。第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206は、スイッチ体202と別個の部材として形成して、スイッチ体202に固定してもよいし、第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206をスイッチ体202と一体に形成してもよい。スイッチ体202は、てんぷ140の回転中心を中心として回転可能なようにてんぷ受(図示せず)に取り付けられる。
スイッチ絶縁部材210が、スイッチ体202に対して、てんぷ140に面する側と反対側に配置される。スイッチ絶縁部材210はプラスチックなどの絶縁材料で形成され、かつ、弾性変形可能な材料で形成される。第1長穴210aがスイッチ絶縁部材210に設けられ、この第1長穴210aに中に第1ガイドピン204及び第2ガイドピン206がはまり、スイッチ絶縁部材210はスイッチ体202に対して摺動可能に配置される。スイッチ絶縁部材210の摺動方向は、第1ガイドピン204、或いは、第2ガイドピン206の中心とてんぷ140の中心を通る直線と一致する。
スイッチ間隔調整レバー212がスイッチ絶縁部材210に対してスリップ機構により回転可能に設けられる。スイッチ絶縁部材210の第1長穴210aの一部分に設けられた円形部分に、スイッチ間隔調整レバー212の円筒部分に外周部が組み込まれる。スイッチ絶縁部材210の第1長穴210aの一部分に設けられた円形部分は、弾性力を介してスイッチ間隔調整レバー212の円筒部分に嵌め合うように構成されるため、スイッチ間隔調整レバー212は、任意の位置で回転を固定することができる。
第1接点部212aと第2接点部212bとがスイッチ間隔調整レバー212のてんぷ140に面する側に設けられる。第1接点部212aと第2接点部材212bは、スイッチ間隔調整レバー212の回転中心に対して偏心した位置に設けられる。第1接点部212aと第2接点部212bとは、スイッチ間隔調整レバー212の回転中心を含む直線に対して線対称になるように形成される。
ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctは、第1接点部212aと第2接点部212bとの間の隙間SSWの中に位置する。例えば、隙間SSWは、約0.06ミリメートルである。
スイッチ間隔調整レバー212を矢印220の方向(図15において時計回り方向)、又は、矢印222の方向(図15において反時計回り方向)に回転させることにより、第1接点部212aと第2接点部212bとを回転させることができる。これにより、てんぷ140の中心を通る直線の方向における第1接点部212aと第2接点部212bとの間の距離SSWを変えることができる。
さらに、スイッチ位置調整レバー232がスイッチ体202に対してスリップ機構により回転可能に設けられ、任意の位置での固定が可能になっている。スイッチ位置調整レバー232の偏心部232aがスイッチ絶縁部材210の第2長穴210bにはまる。第2長穴210bの長手方向中心軸線の向きは、第1ガイドピン204、或いは、第2ガイドピン206の中心とてんぷ140の中心を通る直線の方向に対して直角方向である。すなわち、第2長穴210bの長手方向中心軸線の向きは、第1長穴210aの長手方向中心軸線の向きに対して直角方向である。弾性変形可能なように幅を形成したスイッチ絶縁部材210の弾性変形部210c及び210dが第2長穴210bの長手方向の両端部に設けられる。弾性変形しないように幅を形成したスイッチ絶縁部材210の剛体部210eが、第2長穴210bの外側(ひげぜんまい140cの外端部から遠い方の側)設けられる。したがって、剛体部材210eの幅は、弾性変形部210c及び210dの幅より大きく形成される。剛体部210eの内側は、スイッチ位置調整レバー232の偏心部232aに接触するように配置される。
スイッチ位置調整レバー232を矢印240の方向(図15において時計回り方向)に回転させることにより、偏心部232aを回転させることができる。これにより、スイッチ絶縁部材210は、てんぷ140の中心を通る直線の方向において、てんぷ140の中心に向かう方向(図15及び図16において矢印242の方向)に移動することができる。その結果、第1接点部212aは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctに近づき、第2接点部212bは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctから遠ざかるように移動する。
スイッチ位置調整レバー232を矢印244の方向(図15において反時計回り方向)に回転させることにより、偏心部232aを回転させることができる。これにより、スイッチ絶縁部材210は、てんぷ140の中心を通る直線の方向において、てんぷ140の中心から遠ざかる方向(図15及び図16において矢印246の方向)に移動することができる。その結果、第1接点部212aは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctから遠ざかり、第2接点部212bは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctに近づくように移動する。
図17及び図18は、図15及び図16においてスイッチ位置調整レバー232を矢印240の方向(図15において時計回り方向)に回転させたときの状態が図示されている。スイッチ位置調整レバー232の回転により、偏心部232aが回転し、スイッチ絶縁部材210は、てんぷ140の中心に向かう方向に移動し、第1接点部212aは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctに近づき、第2接点部212bは、ひげぜんまい140cの外端部に近い部分140ctから遠ざかる。このようなスイッチ位置調整レバー232を回転させる作動において、第1接点部212aと第2接点部212bとの間の隙間SSWは変化しない。
図19及び図20は、図15及び図16においてスイッチ間隔調整レバー212を矢印222の方向(図15において反時計回り方向)に回転させたときの状態が図示されている。スイッチ間隔調整レバー212の回転により、第1接点部212a及び第2接点部212bは回転し、てんぷ140の中心を通る直線の方向における第1接点部212aと第2接点部212bとの間の距離が減少する。したがって、てんぷ140の中心を通る直線の方向における第1接点部212aと第2接点部212bとの間の距離はSSWより小さいSSW2に変わる。
以上説明したように、本発明の機械式時計において、スイッチ調整装置200を使用することにより、ひげぜんまいの外端部に近い部分140ctに対する第1接点部212a及び第2接点部212bの位置を調整することができ、第1接点部212aと第2接点部212bとの間の間隔を調整して、ひげぜんまいの外端部に近い部分140ctと第1接点部212aとの間の距離と、ひげぜんまいの外端部に近い部分140ctと第2接点部212bとの間の距離を調整することができる。
以上述べてきたような2つの調整機構をスイッチ調整装置に適用することにより、スイッチがON/OFFする振り角を、容易に調整することができる。
したがって、図1及び図2に示す本発明の機械式時計において、スイッチ調整装置200を使用するときには、第1接点部材168aのかわりに第1接点部212aを配置し、第2接点部材168bのかわりに第2接点部212bを配置すればよい。
本発明の機械式時計用のスイッチ調整装置は、在来の機械式時計用の緩急装置にも適用することができる。このような場合には、第1接点部212aが緩急針に対応し、第2接点部212bがひげ棒に対応する。
このような構成により、機械式時計の緩急針及びひげ棒を精度よく、効率的に調整することができる。
〔産業上の利用可能性〕
本発明の機械式時計は、簡単な構造を有し、精度が非常によい機械式時計を実現するのに適している。
更に、本発明の機械式時計は、スイッチ調整装置を備えることにより、従来よりも一層効率的に高精度機械式時計を製造することができる。
Claims (9)
- 機械式時計の動力源を構成するぜんまいと、ぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列と、表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置とを備え、この脱進・調速装置は右回転と左回転を交互に繰り返すてんぷと、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車と、てんぷの作動に基づいてがんぎ車の回転を制御するアンクルとを含むように構成された機械式時計において、
てんぷ(140)の回転角度が所定のしきい値以上になったときにオンの信号を出力し、てんぷ(140)の回転角度が所定のしきい値を超えていないときにオフの信号を出力するように構成されたスイッチ機構(168、168a、168b)と、
前記スイッチ機構(168、168a、168b)がオンの信号を出力したときに、てんぷ(140)の回転を抑制するような力をてんぷ(140)に加えるように構成されたてんぷ回転角度制御機構(140e、180)とを有し、
前記スイッチ機構(168、168a、168b)は、てんぷ(140)に設けられたひげぜんまい(140c)が、スイッチレバーを構成する接点部材(168a、168b)に接触したときにオンの信号を出力するように構成されている、
ことを特徴とする機械式時計。 - 機械式時計の動力源を構成するぜんまいと、ぜんまいが巻き戻されるときの回転力により回転する表輪列と、表輪列の回転を制御するための脱進・調速装置とを備え、この脱進・調速装置は右回転と左回転を交互に繰り返すてんぷと、表輪列の回転に基づいて回転するがんぎ車と、てんぷの作動に基づいてがんぎ車の回転を制御するアンクルとを含むように構成された機械式時計において、
てんぷ(140)の回転角度が所定のしきい値以上になったときにオンの信号を出力し、てんぷ(140)の回転角度が所定のしきい値を超えていないときにオフの信号を出力するように構成されたスイッチ機構(168、168a、168b)と、
前記スイッチ機構(168、168a、168b)がオンの信号を出力したときに、てんぷ(140)の回転を抑制するような力をてんぷ(140)に加えるように構成されたてんぷ回転角度制御機構(140e、180)とを有し、
前記てんぷ回転角度制御機構(140e、180)は、てんぷ(140)に設けられたてんぷ磁石(140e)と、このてんぷ磁石(140e)に対して磁力を及ぼすことができるように配置されたコイル(180、180a、180b、180c)とを含み、
前記コイル(180、180a、180b、180c)は、前記スイッチ機構(168、168a、168b)がオンの信号を出力したときに磁力をてんぷ磁石(140e)に加えててんぷ(140)の回転を抑制し、前記スイッチ機構(168、168a、168b)がオフの信号を出力したときに磁力をてんぷ磁石(140e)に加えないように構成されている、
ことを特徴とする機械式時計。 - 前記てんぷ回転角度制御機構(140e、180)は、てんぷ(140)に設けられたてんぷ磁石(140e)と、このてんぷ磁石(140e)に対して磁力を及ぼすことができるように配置されたコイル(180、180a、180b、180c)とを含み、
前記コイル(180、180a、180b、180c)は、前記スイッチ機構(168、168a、168b)がオンの信号を出力したときに磁力をてんぷ磁石(140e)に加えててんぷ(140)の回転を抑制し、前記スイッチ機構(168、168a、168b)がオフの信号を出力したときに磁力をてんぷ磁石(140e)に加えないように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式時計。 - 前記スイッチ機構(168、168a、168b)は、第1接点部材(168a)と、第2接点部材(168b)とを含み、第1接点部材(168a)と第2接点部材(168b)との間の間隔を変えるための調整装置(200)を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の機械式時計。
- 前記スイッチ機構(168、168a、168b)は、第1接点部材(168a)と、第2接点部材(168b)とを含み、第1接点部材(168a)及び第2接点部材(168b)をてんぷ(140)の回転中心に対して同時に移動させるための調整装置(200)を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の機械式時計。
- 前記調整装置(200)は、てんぷ(140)の回転中心を中心として回転可能なように設けられたスイッチ体(202)と、スイッチ体(202)に対して摺動可能に配置されたスイッチ絶縁部材(210)と、第1接点部(212a)と第2接点部(212b)とを有するスイッチ間隔調整レバー(212)とを含むことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の機械式時計。
- 前記調整装置(200)は、てんぷ(140)の回転中心を中心として回転可能なように設けられたスイッチ体(202)と、スイッチ体(202)に対して摺動可能に配置されたスイッチ絶縁部材(210)と、スイッチ体(202)に対して回転可能に設けられ、かつ、スイッチ絶縁部材(210)の長穴(210b)にはまる偏心部(232a)を有するスイッチ位置調整レバー(232)を含むことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の機械式時計。
- てんぷ(140)の回転中心を中心として回転可能なように設けられたスイッチ体(202)と、
スイッチ体(202)に対して摺動可能に配置されたスイッチ絶縁部材(210)と、
第1接点部(212a)と第2接点部(212b)とを有するスイッチ間隔調整レバー(212)と、
を含むことを特徴とする機械式時計用の調整装置。 - てんぷ(140)の回転中心を中心として回転可能なように設けられたスイッチ体(202)と、
スイッチ体(202)に対して摺動可能に配置されたスイッチ絶縁部材(210)と、
スイッチ体(202)に対して回転可能に設けられ、かつ、スイッチ絶縁部材(210)の長穴(210b)にはまる偏心部(232a)を有するスイッチ位置調整レバー(232)と、
を含むことを特徴とする機械式時計用の調整装置。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9902282 | 1999-04-28 | ||
JPPCT/JP99/02282 | 1999-04-28 | ||
PCT/JP1999/003487 WO2000067077A1 (fr) | 1999-04-28 | 1999-06-29 | Compteur de temps avec mecanisme de commande d'angle de rotation a balancier annulaire synchronise |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP3631767B2 JP3631767B2 (ja) | 2005-03-23 |
JP3631767B6 true JP3631767B6 (ja) | 2005-06-15 |
Family
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