JP3718199B2 - レンズ鏡筒 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度補正機構を有するレンズ鏡筒に関し、特に空間変調素子の画像情報をスクリーン上に拡大投射するプロジェクター、画像情報をフィルム、CCD等の撮像手段面上に形成するビデオカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラ等の光学機器に用いられるレンズ鏡筒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より光学機器においては、温度変化に対して、フォーカス位置が変動せず安定したものとするために、温度依存性の少ない材料でレンズ、及び鏡筒が構成されている。コストの削減及び非球面を形成するためにレンズの材料としてプラスチックを使用する場合は、フォーカス位置の安定を図るためには、プラスチックレンズのパワーを小さくしたり、温度変化の影響の少ない位置にプラスチックレンズを配置したり、複数のプラスチックレンズで温度変化の影響を相殺するようにする必要がある。
【0003】
また、動作開始時にフォーカス調整し、これ以降フォーカス調整しないような製品は、特に温度変化に対してフォーカスが移動しない温度特性が必要である。例えば、プロジェクター用のレンズは、セットの電源を入れた直後にフォーカス調整され、これ以降はフォーカス調整されない。その一方で、セット内部の照明系からの熱でレンズの温度は上昇する。
【0004】
温度変化に対して、焦点位置の変動を補正した温度補正型光学装置として、例えば下記特許文献1に提案されている温度補正型光学装置がある。この温度補正型光学装置では、鏡筒材料の線膨張係数による長さの変化と、レンズのフォーカス位置の変化とを相殺するように光学設計で工夫している。
【0005】
また、温度補償機能を有した撮影装置として、下記特許文献2に提案されている温度補償機能を有した撮影装置がある。この撮影装置は、線膨張係数の異なった本体鏡筒で光学系を2分割し、2分割した光学系間の間隔を温度に依存して変化させることで、レンズ系で発生するフォーカス位置の変動を、レンズ間隔の変化により小さくしている。
【0006】
また、温度補正された投影テレビ用集成レンズが、下記特許文献3に提案されている。この投影テレビ用集成レンズは、温度変化に対して補正するようにバー部材を用いて光学系の一部の間隔を温度変化に対応して変化させることにより、フォーカス位置が変動しないようにしている。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−130267号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平6−186466号公報
【0009】
【特許文献3】
特表2002−544537号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1に記載の温度補正型光学装置は、コリメータ等の簡素な光学系に有効で、長いバックフォーカスを必要とし、色収差を高いレベルで補正しようとするようなレンズに対しては、レンズ設計上の自由度が不足し、設計が困難となる。
【0011】
また、前記特許文献2に記載の撮影装置は、2分割された光学系の間隔が変動するため、収差が変動しないように光学設計を実施する必要があり、長いバックフォーカスを必要とし、色収差を高いレベルで補正しようとするようなレンズに対しては、レンズ設計上の自由度が不足し、設計が困難となる。このため、特許文献2に記載の技術は、複数のレンズ群が光軸上を移動するようなズームレンズに対しては有効な手段が提供されていなかった
また、特許文献3に記載の投影テレビ用集成レンズは、バー部材が光学系の位置を決めるため、この光学系の傾きを許容易以下に抑えるのは困難である。光学系の間隔が変動するため、収差が変動しないように光学設計を実施する必要があり、長いバックフォーカスを必要とし、色収差を高いレベルで補正しようとするようなレンズに対しては、レンズ設計上の自由度が不足し、設計が困難となる。
【0012】
このため、前記各特許文献には、複数のレンズ群が光軸上を移動するようなズームレンズに対して有効な温度補正の手段は提供されていなかった。
【0013】
ここで、正のパワーを持ったガラスレンズは、温度の上昇に対してそのガラスが持っている固有の線膨張係数(α)の影響でパワーが小さくなり焦点距離が大きくなる。また、温度の上昇に対してそのガラスが持っている固有の屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)、すなわち単位温度当たりの屈折率の変化による影響でパワーが変化し、焦点距離が変化する。一般的な光学ガラスでは屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)は正の符号を持ち、温度の上昇に対して、パワーが大きくなり焦点距離が小さくなる。この場合、線膨張係数(α)と屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)との影響が相殺し、温度によるパワーの変化は少なくなる。さらに組みレンズでは、正パワーを持ったレンズと負パワーを持ったレンズを組み合わせて使用するため、さらに温度変化に対するパワーの変化は少なくなる。このため、レンズ自身の温度によるフォーカス位置の変動よりも、鏡筒を構成する材料の線膨張係数による間隔変化が引き起こすフォーカス変動が問題となった。
【0014】
その一方で、レンズの材料としてプラスチックを使用する光学系では、プラスチックの線膨張係数(α)がガラスに比べて大きいこと、屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)の符号が負で値がガラスに比べて大きいことにより、温度によるフォーカス位置変動はいつも大きな問題となっている。
【0015】
また、反射型の空間変調素子を使用するプロジェクタは、照明光を導入するためとRGB3色の空間変調素子を使用するためにレンズには長いバックフォーカスが必要である。長いバックフォーカスを得るためにレンズは逆望遠型の構成となる。すなわちレンズの共役距離の長い側、すなわちスクリーン側は凹レンズが支配的に使われ、レンズの共役距離の短い側、すなわち空間変調素子側は大きなパワーを持った正レンズが支配的に使われる。バックフォーカスが短いレンズに比べて軸上光線の高いところで正レンズが使われるので正パワーの影響が強いことが特徴である。さらに凹パワーの影響で像面湾曲は過剰となるので正レンズには屈折率の低いレンズを用いることが多い。
【0016】
プロジェクタのレンズとして使われる場合はテレセントリック性と色収差の小ささが必要で、逆望遠型の構成ではレンズの共役距離の短い側の正レンズ群に屈折率が低く、アッベ数が大きく、異常分散特性を持ったガラスで、構成することが好ましい。ただし、異常分散特性を持ったガラスは比較的線膨張係数(α)が大きく、屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)の符号が一般の光学ガラスと反対で負となり、パワーの温度依存性が大きい。
【0017】
したがって、▲1▼軸上光線の高いところで、▲2▼大きな正パワーを持った、▲3▼パワーの温度依存性の高いガラスを使っているため、セットとして許容できない温度によるフォーカス位置の変動を起こすこととなる。
【0018】
プラスチックレンズを使ったシステムでは鏡筒に線膨張係数(α)の大きな材料(プラスチック材料)を使って、プラスチックレンズのフォーカス位置の温度依存性を鏡筒の長さの温度依存性で相殺することが行われている。
ただし上記構成は固定焦点の簡単な構成に限定されている。複雑な構成を持ったズームレンズでは構成できなかった。
【0019】
レンズの位置決めを線膨張係数(α)の大きい樹脂の部品で行うため、ズームレンズが必要とする光軸に対する傾き精度が維持できない。温度変化に対する樹脂によるフォーカス機構とズーム機構が両立しないことがあった。
【0020】
フォーカスを使用直前に調整するシステムやオートフォーカス機構のついたシステムでは温度に対してフォーカス位置が変動しても問題は無かった。
プロジェクタでは電源投入直後にフォーカスが調整され、以降調整されないことと、強力なランプと照明系によりセット内部の温度は電源投入後急速に上昇するため、レンズの温度変化に対するフォーカス変動は大きな問題となる。
【0021】
以上のように、バックフォーカスが長く、色収差の小さいレンズで形成された光学系おいては、温度変化に対しするフォーカス位置の変動を抑えるということが新たな大きな課題となっている。
【0022】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、温度変化に対するフォーカス位置の変動を抑えながら、レンズ設計に制約をつけず、ズームレンズにも対応できるレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明のレンズ鏡筒は、レンズと、レンズを保持するレンズ枠と、前記レンズ枠と係合し、前記レンズ枠の光軸方向の位置を決めるカム環と、セット本体に固定する固定筒と、前記固定筒と光軸回りに回転可能に係合し、かつ前記カム環に固定され、前記カム環の光軸方向の位置を決める補正筒とを備え、
前記カム環と前記補正筒との線膨張係数が異なっており、前記補正筒の温度変化による光軸方向の寸法変動に対応して、前記カム環は光軸方向にかつ前記レンズの温度変化によるフォーカス位置の移動を打ち消す方向に移動可能であることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のレンズ鏡筒によれば、温度変化に対するレンズ自身のフォーカス位置変動をレンズ鏡筒の補正機構で相殺し、レンズの温度が変化しても光学性能の変化を抑えることができる。すなわち、レンズの温度変化に対して、レンズの光軸上の位置を変化させることができ、温度に対して、フォーカスの位置変化が小さいレンズができる。
【0025】
前記本発明のレンズ鏡筒においては、複数の前記レンズ枠に、それぞれ保持されたレンズ群でズームレンズを構成しており、
前記カム環にはカム溝が形成され、前記固定筒には直線溝が形成され、前記複数の前記各レンズ枠は、前記カム溝及び前記直線溝に係合しており、
前記補正筒及び前記補正筒に固定された前記カム環の光軸回りの回転により、前記各レンズ枠に保持された前記各レンズ群はそれぞれ別個に光軸方向に移動し、
前記光軸回りの回転時には、前記カム環及び前記固定筒は光軸方向に固定されていることが好ましい。この構成によれば、ズームレンズの温度補正機構を実現できる。
【0026】
また、前記複数のレンズ枠は、いずれもカム環で光軸上の位置が決定されており、前記補正筒の温度変化による光軸方向の寸法変動に対応して、前記複数のレンズ枠が一体となって光軸方向に変位することが好ましい。この構成によれば、温度変化に対して、レンズ全群が一体となって位置が変化し各レンズ群の間隔が変化しないので、良好なフォーカス特性を実現でき、固定焦点レンズ、ズームレンズの区別なく、温度補正機能を実現できる。
【0027】
また、前記補正筒の外周に嵌合した矯正筒をさらに備えており、前記矯正筒の線膨張係数は、前記補正筒の線膨張係数より小さいことが好ましい。この構成によれば、矯正筒は補正筒の径方向の伸びを抑制し、補正筒を長さ方向に伸ばす作用をするので、補正筒の長さを小さくして長さ方向の伸びを確保でき、レンズ鏡筒の小型化が図れる
また、前記補正筒及び前記カム環に形成されたねじの螺合により、前記補正筒と前記カム環とが固定されていることが好ましい。この構成によれば、レンズの温度変化による補正筒の伸びを確実にレンズの移動に連動できる。
【0028】
また、前記補正筒の光軸方向の前後に、さらに締付け筒を備えており、
前記補正筒及び前記各締付け筒に形成されたねじの螺合により、前記補正筒と前記各締付け筒とが固定されており、
前記各締付け筒の線膨張係数は、前記カム環の線膨張係数と略同一であり、
前側の前記締付け筒と前記カム環とが固定されており、
後側の前記締付け筒と前記固定筒とが係合しており、前記後側の締付け筒は、光軸方向に固定された状態で、光軸回りに回転可能であることが好ましい。この構成によれば、補正筒と締付け筒との線膨張係数を同じにできるので、温度変化による固定筒と締付け筒との嵌合状態の変化を防止できる。このため、温度変化による補正筒の伸びをより確実にレンズに連動させることができる。
【0029】
また、前側の前記締付け筒と前記カム環とを固定する締付け部材をさらに備えており、前記前側の締付け筒及び前記締付け部材は、それぞれテーパ面が形成されており、前記テーパ面同士を当接させた状態で、前記締付け部材を前記カム環にねじの締め付けで固定していることが好ましい。この構成によれば、カム環と締付け筒は引き合う力を常時受けることなり、温度変化に対しても結合状態を保つことができる。
【0030】
また、外部より光軸回りに回転可能なズーム環が、前記補正筒の外周面に装着されており、前記ズーム環の回転方向の力が前記カム環に伝わるように、前記ズーム環と前記カム環との係合部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、外部からの力が直接カム環に加わるので、補正筒に加わる力を抑えることができ、線膨張係数の相違により、補正筒とカム環との結合が不確実になった場合でも、カム環を確実に回転させることができる。また、直接カム環に力が加わるので、ズーム動作は確実になる。
【0031】
前記ズーム環を備えた構成においては、前記係合部は、前記ズーム環に形成された穴と、前記カム環に形成された突起とが係合したものであることが好ましい。この構成によれば、簡単な構造で係合部を形成できる。
【0032】
また、前記レンズには、アッベ数70以上のガラスで構成されたレンズを含んでいることが好ましい。この構成によれば、バックフォーカスが長く、色収差が小さいレンズができる。この場合、アッベ数70以上のガラスは線膨張係数(α)が大きく屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)が負であり、温度に対してレンズ自体はフォーカス位置の変動大きくなるが、前記本発明のレンズ鏡筒の構成を備えているので、レンズ鏡筒全体としては温度変化に対するフォーカス位置の変動を抑えることができる。
【0033】
また、前記レンズには、屈折率1.5以下のガラスで構成されたレンズを含んでいることが好ましい。この構成によれば、バックフォーカスが長く、像面湾曲の小さいレンズができる。この場合、屈折率1.5以下のガラスは線膨張係数(α)が大きく屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)が負であり、温度に対してレンズ自体のフォーカス位置の変動大きくなるが、前記本発明のレンズ鏡筒の構成を備えているので、レンズ鏡筒全体としては温度変化に対するフォーカス位置の変動を抑えることができる。
【0034】
また、前記レンズには、屈折率の温度依存係数が負のガラスで構成されたレンズを含んでいることが好ましい。この構成によれば、バックフォーカスが長いレンズができる。この場合、屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)が負であり、レンズ自体は温度に対してフォーカス位置の変動が大きくなるが、前記本発明のレンズ鏡筒の構成を備えているので、レンズ鏡筒全体としては温度変化に対するフォーカス位置の変動を抑えることができる。
【0035】
また、固定筒及びカム環の線膨張係数をα0、補正筒の線膨張係数をα1とすると、
1.5<|(α1―α0)/α0|
の関係を満足することが好ましい。この構成によれば、補正筒の長さを抑えながら、温度変化によるフォーカス位置の変化が抑えられる。
【0036】
また、レンズ全系の常温における焦点距離をf(mm)、前記補正筒の長さをL(mm)、前記補正筒の線膨張係数をαとすると、
1×10-3<L×α−6.8×10-5×f<5×10-3
の関係を満足することが好ましい。この構成によれば、バックフォーカスが長く、色収差が良く補正され、温度変化によるフォーカス位置の変化が抑えられる。
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒の構成を示す断面図である。図2は、図1に示したレンズ鏡筒を光軸方向に分解したときの斜視図を示している。以下、図1、2を参照しながら具体的に説明する。
【0039】
図1は、遠方の物体を撮像面に結像する結像光学系をモデルとして図示しているが、以下の説明は、プロジェクタの光学系おいても適用できる。また、レンズ群が2群であるズーム光学系で説明しているが、例えば3群、4群の3群以上のズーム光学系であってもよい。
【0040】
図1に示したように、固定筒4の外周面を囲むようにカム環5が配置され、カム環5の外周面を囲むように補正筒6が配置されている。固定筒4の内周面側には、レンズ群1とレンズ群2とで構成されたズームレンズ20が配置されている。レンズ枠7はレンズ群1を固定し、レンズ枠8はレンズ群2を固定している。ズームレンズ20の結像面は、撮像面3である。固定筒4は、セット本体9に固定されている。
【0041】
図1、2に示したように、レンズ枠7、8には円周方向を3等分するように、それぞれ3個(図示は2個)の突起7a、8aが設けられている。固定筒4には円周方向を3等分するように3本の貫通孔である直線溝4a(図示は2本)が形成されている。また、カム環5には、3個の貫通孔であるカム溝5a(図示は2個)と、3個の貫通孔であるカム溝5b(図示は2個)とが形成されている。
【0042】
レンズ枠7と一体の3個の突起7aは、それぞれ固定筒4の直線溝4a、及びカム環5のカム溝5aと係合している。また、レンズ枠8と一体の3個の突起8aは、それぞれ固定筒4の直線溝4a、及びカム環5のカム溝5bと係合している。すなわち、各突起7a、7bは、それぞれ別個のカム溝5a、5bと係合していることになる。
【0043】
レンズ枠7、8は固定筒4とカム環5とで固定されるので、レンズ枠7、8の傾き精度は許容限度内に抑えることができる。また固定筒4の外周面は、カム環5の内周面側に装入されているので、カム環5の傾き精度も許容限度内に抑えることができる。すなわち、固定筒4及びカム環5を金属材料で形成し、加工精度を確保しておけば、補正筒6の加工精度が低い場合や、補正筒6内の温度不均一による補正筒6の全長伸びが不均一の場合でもレンズの傾き精度が保持できる。
【0044】
レンズ群1とレンズ群2との光軸上の間隔を決定するのはカム環5である。すなわち、前記のように、突起7aとカム溝5aとが係合し、突起8aとカム溝5bとが係合して、レンズ群1とレンズ群2との光軸上の間隔が決定される。
【0045】
カム環5の光軸上の位置を決定するのは補正筒6である。補正筒6、カム環5の一端にはねじ10が形成されており、ねじ10の螺合により、カム環5は補正筒6に固定されている。補正筒6の他端は、固定筒4の溝部4aに係合しており、光軸方向に固定されている。
【0046】
セット本体9側のフォーカス機構(図示せず)によって、固定筒4を光軸方向に前後させることにより、初期のフォーカス調整が行われ、撮像面3にフォーカス位置が一致する。
【0047】
また、補正筒6を外部より回転させることにより、ズーム動作を行うことができる。補正筒6を回転させることにより、これに固定されたカム環5も回転する。このことにより、カム環5のカム溝の端部と固定筒4の直線溝とが一致する位置まで、レンズ枠7、8は移動し、レンズ1、2は光軸上を移動し、ズームレンズの焦点距離が変化することになる。
【0048】
ここで、図3に比較例に係るレンズ鏡筒の構成図を示している。図1に示した本実施の形態に係るレンズ鏡筒は、カム環5が固定筒4に対して光軸方向に固定されていないのに対して、図3に示した比較例の構成では、カム環105が固定筒104に対して光軸方向に固定されている。
【0049】
より具体的には、図3の比較例に係る構成では、カム環105は、固定筒104の外周面に対して環状に突出した突出部104aと突出部104bとで挟まれるように配置されている。このため、カム環105は、光軸方向の前後共に、固定筒104に対して光軸方向の位置が規制されており、光軸方向に移動することはできない。カム環105は、光軸回りの回転方向には回転可能であり、カム環105を外部より回転させて、ズーム動作を行う。ズーム動作の際には、カム環105のカム溝の端部と固定筒104の直線溝とが一致する位置まで、レンズ枠107、108は移動し、これに伴いレンズ101、102は光軸上を移動し、ズームレンズの焦点距離を変化させることができる。
【0050】
次に、図1の説明に戻る。温度が上昇した場合、ズームレンズ20のフォーカス位置は初期の撮像面に対して、ズームレンズ20から遠ざかる方向へ移動する。この移動はレンズ群1とレンズ群2とを構成するレンズの線膨張係数(α)と、屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)の影響でレンズのパワーが小さくなるためである。
【0051】
温度上昇による熱膨張により、補正筒6は光軸方向の全長が伸びることになる。補正筒6の一端は、固定筒4の溝部4aに係合しているため、この場合、補正筒6の光軸方向の両端部のうち、反撮像面側(撮像面3側の反対側)の端部は、反撮像面方向に移動する。補正筒6の反撮像面側の端部は、ねじ10によりカム環5と固定されているので、カム環5も補正筒6と一体になって、反撮像面方向に移動する。カム環5に突起7a、7bを介して連結されたレンズ枠7、8は両者の間隔を保持しながら反撮像面方向に移動する。レンズ群1、2は、それぞれレンズ枠7、8に固定されているので、レンズ群1、2は両者の間隔を保持しながら反撮像面方向に移動する。この作用はフォーカスを調整したのと同じ作用となり、ズームレンズのフォーカス位置は、レンズ群1、2が移動した分だけ反撮像面方向に移動する。
【0052】
すなわち、レンズの線膨張係数(α)と屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)の影響でフォーカス位置が初期の撮像面よりズームレンズ20から遠ざかる方向へ移動する作用と、レンズ群1、2が両者の間隔を保持しながら反撮像面方向に移動する作用とが打ち消し合ってフォーカス位置は撮像面3で固定されることになる。
【0053】
本実施の形態では、前記のように、ズームレンズ20の各レンズ群1、2の間隔はカム環5で決定されるので、レンズ群間隔の精度は維持できる。また、温度上昇によって、補正筒6と一体になってカム環5が光軸方向に移動するが、各レンズ群間隔は一定間隔に保たれているので、レンズの光学設計上で制約条件とはならない。
【0054】
前記のように、フォーカス調整は、レンズ系全体を光軸上において前後させるので、フォーカスによる性能劣化が少ない。自動温度補正機構も、フォーカスと同じ作用、すなわちレンズ系全体は、カム環5と一体になって光軸方向に移動するので、性能劣化が少ない。使用者は使用初期にフォーカスを調整し、これ以降は自動温度補正機構により、初期のフォーカス精度を自動的に維持することになる。
【0055】
ここで、補正筒6が温度補正作用を発揮するためには、補正筒6は温度上昇による所定の補正量(膨張量)が必要となる。補正量は、補正筒6の長さと、補正筒6を形成する材料の線膨張係数との積で決定される。補正筒6の長さを大きくすれば、補正量は確保できるが、補正筒6の長さは、レンズの全長及び鏡筒構成で制限されてしまう。このため、補正量の確保には線膨張係数を大きくする必要がある。本実施の形態では、以下のように補正筒6の材料の線膨張係数を大きくすることが可能である。
【0056】
前記のように、レンズ枠7、8は、固定筒4とカム環5とで、傾き精度が決定される。したがって、補正筒6の加工精度が低い場合や、補正筒6内の温度不均一による補正筒6の全長伸びが不均一である場合であっても、レンズの傾き精度は確保されることになる。
【0057】
このため、固定筒4及びカム環5を金属材料で形成し精度を確保しておけば、補正筒6は金属材料に比べ加工精度の劣る樹脂材料で形成することができる。すなわち、補正筒6の材料選定の自由度が高まり、補正筒6は線膨張係数の大きい樹脂材料で形成することができ、所定量の膨張量が得られることになる。
【0058】
一方、前記の図3の比較例に係るレンズ鏡筒の構成では、熱膨張係数の大きい補正筒6に相当する構成がなく、仮にカム環105に補正筒6を追加したとしても、カム環105は、光軸方向の前後共に、固定筒104に対して光軸方向の位置が規制されており、光軸方向に移動することはできない。
【0059】
以上のように、本実施の形態は、カム環5を固定筒4に対して光軸方向に固定せず、カム環5を固定筒4に対して光軸方向に一端を固定した補正筒6に接合させることにより、ズーム機構と温度補正機構との両立を図っている。
【0060】
また、本実施の形態では、前記のように、補正筒6とカム環5とは、ねじ10の螺合により固定されている。このことにより、補正筒6とカム環5とが一体となって光軸上を移動し、温度変化による補正筒6の伸びを確実にレンズ1、2の移動に連動させることができる。すなわち、補正筒6とカム環5とでは線膨張係数が異なるため、温度によって嵌合状態が変化することになるが、補正筒6とカム環5とをねじで嵌合することで接触面積を増大でき、温度変化による補正筒6とカム環5との結合状態の変化を防止できる。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1で説明した構成において、固定筒4、カム環5、及び補正筒6の線膨張係数の関係に関するものと、レンズ全系の焦点距離、補正筒6の長さ、及び補正筒6の線膨張係数の関係に関するものである。
【0062】
固定筒4とカム環5との線膨張係数をα0とし、補正筒6の線膨張係数をα1とすると、以下の式(1)を満足することが好ましい。
【0063】
式(1) 1.5<|(α1―α0)/α0|
式(1)は、レンズ鏡筒本体を構成する固定筒4及びカム環5の材料の線膨張係数α0と、補正筒6を構成する材料の線膨張正数α1の関係を規定したものである。式(1)を満足することにより、補正筒6の全長を抑えることができ、レンズ鏡筒の小型化を図ることができる。下限を越えると、必要な補正量を得るためには補正筒6の全長を大きくする必要があり、レンズ鏡筒の小型化には不利となる。
【0064】
下限値の基準が大きいと、レンズ鏡筒の小型化には有利であり、以下の式(2)の関係を満足することが好ましい。
【0065】
式(2) 3.0<|(α1―α0)/α0|
より小型のレンズ鏡筒を実現するには、前記式(1)、(2)において、補正筒6の線膨張係数であるα1を大きな値とすれば、より小型のレンズ鏡筒の実現に有利となる。α1を大きな値とするために、補正筒6を樹脂材料で構成してもよい。樹脂材料は、加工精度の点では金属材料に比べて不利になるが、前記のように、レンズ枠7、8は固定筒4とカム環5とに固定されて傾き精度が確保されているので、この点は特に不利にはならない。
【0066】
また、補正筒6の長さをL(mm)、補正筒6を構成する材料の線膨張係数をα、常温すなわち温度上昇前の温度(例えば20度)のレンズ全系の焦点距離をf(mm)とすると、以下の式(3)の関係を満足することが好ましい。
【0067】
式(3) 1×10-3<L×α−6.8×10-5×f<5×10-3
式(2)は、補正筒6による補正量をレンズ全系の焦点距離で規定したものである。式(2)は、バックフォーカスが長く、色収差を高いレベルで満たすレンズに必要な条件である。
【0068】
式(2)の下限を越えると、温度変化に対してフォーカスの補正が不足し、プロジェクタの場合はスクリーン面上のフォーカス位置が温度上昇とともにレンズから離れる方向に変化する。上限を越えると、温度変化に対してフォーカスの補正が過剰となり、プロジェクタの場合はスクリーン面上のフォーカス位置が温度上昇とともにレンズに近づく方向に変化する。
【0069】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3に係るレンズ鏡筒の構成図を示している。図1と同一構成のものは、同一番号を付して説明は省略する。図4の構成は、補正筒12の外周に嵌合するように円筒状の矯正筒12が配置されている。矯正筒12の線膨張係数は、補正筒11の線膨張係数より小さくなるように、矯正筒12、補正筒11の各材料を選定している。
【0070】
ここで、温度変化に対する補正筒11の補正量は、補正筒11の線膨張係数と、補正筒の長さに影響を受ける。このため、補正効果を大きくする場合は、線膨張係数の大きな材料を選択することとなる。ただし、線膨張係数は材料固有の特性であり、広範囲に選択できない。補正筒11の長さも、レンズ本体の物理的な大きさに制約があり制限される。本実施の形態は、補正筒11の外周に矯正筒12を嵌合させることにより、補正筒11の長さを短くしても補正効果を確保できるようにして、レンズ鏡筒の小型化を図るというものである。
【0071】
図4の構成において、周囲温度の上昇とともに補正筒11及び矯正筒12の温度が上昇する。この温度上昇に伴って補正筒11及び矯正筒12も膨張する。膨張は、径方向の膨張と光軸方向の膨張とがある。図4の構成では、矯正筒12の線膨張係数は、補正筒11の線膨張係数より小さいので、内側の補正筒11には圧縮力が加わり、径方向の膨張が規制される。径方向の膨張が規制された分、補正筒11は光軸方向に膨張する。すなわち、補正筒11の温度上昇に対する光軸方向の伸びは、矯正筒12を備えたことによって大きくなる。このため、補正筒11をより短い距離のものにしても、矯正筒12により光軸方向の伸びを補うことができ、レンズ鏡筒の小型化が図れる。
【0072】
(実施の形態4)
図5は、実施の形態4に係るレンズ鏡筒の構成図を示している。図1と同一構成のものは、同一番号を付して説明は省略する。補正筒13の光軸方向の前後に締付け筒14、15が配置されている。補正筒13の両端と締付け筒14、15には、ねじ加工部分16、17が形成されている。このねじ加工部分16、17の螺合により、補正筒13の両端に締付け筒14、15が結合されている。
【0073】
締付け筒14、15の線膨張係数は、カム環18及び固定筒4の線膨張係数と略同一である。例えば、カム環18及び固定筒4をアルミニウムとすれば、締付け筒14、15もアルミニウムである。この場合、補正筒13は線膨張係数の大きい例えば樹脂部材であるので、補正筒13は締付け筒14、15に比べ、線膨張係数が大きいことになる。
【0074】
前側の締付け筒14はさらにカム環18と結合している。補正筒13の光軸回りの回転と一体になって、後側の締付け環15は光軸方向に固定された状態で、固定筒4に対して光軸回りに回転する。それぞれ線膨張係数の異なる補正筒13と締付け筒14、15はねじで螺合しているので、接触面積が大きく、膨張収縮に対して確実に結合された状態が維持される。また、補正筒13と締付け筒14、15との結合は、回転による締め付けにより可能であるので、組み立ても容易である。
【0075】
締付け筒15と固定筒4との線膨張係数は、略同一であるので、温度上昇しても、締付け筒15と固定筒4の溝部4aの嵌合状態の変化を防止でき、補正筒13は、光軸方向に固定した状態で固定筒4に対して回転させることができる。
【0076】
また、締付け筒14とカム環18との線膨張係数は、略同一であるので、温度上昇しても、締付け筒14とカム環18の嵌合状態の変化を防止できる。このため、補正筒13とカム環18とが一体となって光軸上を移動でき、温度変化による補正筒13の伸びを確実にレンズに連動させることができ、温度補正機構を有効に働かせることができる。
【0077】
(実施の形態5)
実施の形態5は、前記実施の形態4において、締付け筒14とカム環18との結合に関する実施の形態である。図6は、締付け筒14とカム環18との結合部分の拡大図を示している。締付け筒14には、テーパ部14aが形成されている。締付け部材19は、円筒状部材から切り出して形成した部材である。締付け部材19は、光軸方向から見れば、扇状に形成されている。締付け部材19の内周側にはテーパ部19aが形成されている。
【0078】
図6の状態では、締付け部材19の一端側は、テーパ部19aが締付け筒14のテーパ部14aと当接し、他端側はカム環18の溝18aに係合している。ねじ21をカム環18に締め付けることにより、締付け筒14をカム環18の先端18b側に引き込むことができ、締付け筒14をカム環18の壁面18cに押し当てることができ、締付け筒14とカム環18とを確実に結合させることができる。
【0079】
また締付け部材19の数を増やせば、締付け筒14とカム環18との結合はより確実になり、例えば、締付け筒14の円周方向を3等分する場所に締付け部材19を配置すれば、傾き無く確実に締付け筒14とカム環18とを結合させることができる。
【0080】
通常、ねじで締付け部材とカム環を固定した場合は、締付け部材にはねじ穴が配置されるが、ねじのゆるみでねじ穴とねじ外径との差により、がたつきが生じ、がたつき量分だけ補正筒の伸びがカム環に連動できなくなる。本実施の形態では、締付け部材19のテーパ部19aと締付け筒14のテーパ部14aとが互いに圧接することで、カム環18と締付け筒14とは引き合う力を常時受けるようになり、温度変化に対しても結合状態を保つことができる。
【0081】
(実施の形態6)
図7に実施の形態6に係るレンズ鏡筒の構成図を示している。本図の構成は、図5の構成において、補正筒13の外周にズーム環22を追加した構成である。図7(a)は本実施の形態に係るレンズ鏡筒の長手方向の断面図であり、図7(b)はズーム環22の主要部の平面図である。
【0082】
カム環18には径方向に突出した突起18aが形成されている。補正筒13には長穴13aが、ズーム環22には長穴22aが形成されている。突起18aは、長穴13a及び長穴22aと対応する位置にある。長穴13a及び長穴22aの径は、突起18aの径より大きくなっている。また、ズーム環22は、補正筒13に装着しているに止まり、ズーム環22と補正筒13とは、密着や接合はしていない。
【0083】
ズーム環22を光軸回りに外部から回転させると、カム環18の突起18aがズーム環22の長穴22aの内周面に当接し、ズーム環22が突起18aを押しながら、カム環18を光軸回りに回転させることになる(図2(b)参照)。この場合、カム環18の回転と一体になって、補正筒13も光軸回りに回転する。
【0084】
本実施の形態によれば、外部からの力が直接カム環18に加わるので、補正筒13に加わる力を抑えることができ、ねじ加工部分16、17のねじの緩みを抑えることができる。また、線膨張係数の相違により、補正筒13とカム環18との結合が不確実になった場合でも、カム環18を確実に回転させることができる。また、直接カム環18に力が加わるので、ズーム動作は確実になる。
【0085】
なお、ズーム環は、手動に限らず電動モータによる駆動により回転させてもよい。また、図5に示した構成に、ズーム環22を装着した例で説明したが、これに限るものではなく、図1に示した構成にズーム環を装着してもよい。
【0086】
以下、実施例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。
【0087】
(実施例1)
図8は、実施例1に係るレンズ鏡筒の構成図を示している。本図に示したレンズ鏡筒は、3群構成のズームレンズを備えており、本図の状態は広角端を示している。本図のレンズ鏡筒は、3群構成のズームレンズを備えているが、基本的な構成、作用は、図1、2に示した2群構成のズームレンズを備えたレンズ鏡筒と同様である、
レンズ枠35に保持されたレンズ31a、31bで第1レンズ群を形成し、レンズ枠36に保持されたレンズ32a、32b、32c、32d、32eで第2レンズ群を形成し、レンズ枠37に保持されたレンズ33a、33b、33c、33d、33e、33f、33g、33h、33iで第3レンズ群を形成している。38は、プリズム等のガラスブロックである。
【0088】
レンズ枠35、36、37は固定筒30の内周に装入されており、光軸上を移動できる。固定筒30には直線溝が形成され、レンズ枠35、36、37に取り付けられた突起35a、36a、37aが直線溝と勘合し、固定筒30に対してレンズ枠35、36、37が光軸回りに回転するのを規制している。
【0089】
カム環34にはカム溝が形成され、レンズ枠35、36、37に取り付けられた突起35a、36a、37aがカム溝と係合している。このことにより、レンズ枠35、36、37の各ズーム位置でのそれぞれの間隔が保持されることになる。
【0090】
補正筒38は固定筒30の溝30aと係合しているので、補正筒38は光軸方向に固定されている。一方、カム環34は先端部で補正筒38に結合されているので、カム環34も光軸方向に固定されている。
【0091】
ズーム動作は補正筒38を光軸回りに回転させることでカム環34を回転させ、レンズ枠35、36、37を光軸方向に移動させる。このことにより、レンズ枠35、36、37に保持されている第1レンズ群、第2レンズ群、及び第3レンズ群がそれぞれ移動して焦点距離が変化し、ズーム機構が動作する。
【0092】
実施例1に係るズームレンズは、広角端のFNO=2.5、焦点距離f=37.08(mm)、半画角=24.2°のズームレンズであり、具体的な数値を表1に示し、ズームデータを表2に示す。表1中、ri(mm)はレンズ各面の曲率半径、di(mm)はレンズ厚又はレンズ間間隔である。図8には、可変間隔d4、d14、d33を代表して図示している。
【0093】
また、niは各レンズのd線での屈折率、νiは各レンズのd線でのアッベ数である。図8の例では、r1〜r4が第1レンズ群、r5〜r14が第2レンズ群、r15〜r33が第3レンズ群であり、r19は絞りである。
【0094】
【表1】
Figure 0003718199
【0095】
【表2】
Figure 0003718199
【0096】
前記式(1)、(2)の各変数の値、及び式(1)、(2)の値は、下記の通りである。
【0097】
α0=2.3×10-5
α1=1.0×10-4
L=50mm
f=37.08mm
|(α1―α0)/α0|=3.35
L×α−6.8×10-5×f=1.81×10-3
レンズ32b、32c、33c、33d、33g、33iは、異常分散ガラスであり、屈折率の温度依存係数(Δn/ΔT)が負で、温度に対するパワーの変化が大きい。図8において、ズームレンズを構成する各レンズの温度上昇によって、フォーカス位置が図面に向かって右方向に移動する。本実施例の広角端の状態では、温度変化1度に対してフォーカス位置は、0.0068mm移動する。
【0098】
ここで、レンズ枠35、36、37、固定筒30、及びカム環34は、アルミニウムで形成されている。補正筒38は樹脂で形成されており、例えばナイロン66、ポリアセタールである。ナイロン66の線膨張係数は1.0×10-4であり、ポリアセタールの線膨張係数は8.5×10-5である。これらの値は、アルミニウムの線膨張係数の2.3×10-5に対して4倍程度であり、温度上昇による単位長さ当たりの伸びも4倍程度となる。
【0099】
本実施例では、補正筒38はナイロン66で形成しており、線膨張係数α1は1.0×10-4であり、長さLは50mmである。このため、温度上昇1度に対して、補正筒51はα1×L=0.005mm伸びることになる。したがって、前記のフォーカス位置の変動量0.0068mmは、0.005mm分だけ補正され、残存するフォーカス位置の温度1度当たりの変動量は、0.0018mm/度となる。
【0100】
本実施例のセットでは、電源投入後においてレンズの温度は常温から15度上昇する。例えば、周囲温度20度で電源を投入すると、レンズ温度は20度から35度まで15度上昇する。このため、使用時においては、温度上昇によるフォーカス位置の変動量は、0.0018mm/度×15度=0.027mmとなり、この値はセットの許容範囲内となる。すなわち、本実施例では、温度変化によるフォーカス位置の変動を小さく抑えることができ、良好な画質を維持できる。
【0101】
(実施の形態7)
図9は、本発明の実施の形態7に係るプロジェクタの構成図である。図9において、40は前記実施の形態で示したレンズ鏡筒、41は光学像を形成する空間光変調素子、42は凹面鏡付き光源である。43は投写された映像のフォーカス面である。本実施の形態によれば光源42により照明される空間光変調素子41に形成された光学像は、レンズ鏡筒40の投写レンズによってフォーカス面43に拡大投写される。
【0102】
レンズ鏡筒40の投写レンズに前記実施の形態で示したレンズを用いることによって、温度変化によってフォーカス面43の光軸方向の移動が少なく、温度が変化しても良好な画面が得られるプロジェクタが得られる。
【0103】
なお、本発明に係るレンズ鏡筒は、温度変化に対するフォーカス位置の変動を抑えることができ、ズームレンズにも対応できるので、プロジェクタに限らず、画像情報をフィルム、CCD等の撮像手段面上に形成するビデオカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラ等の光学機器にも有用である。
【0104】
【発明の効果】
以上のように、本発明のレンズ鏡筒によれば、温度変化に対するレンズ自身のフォーカス位置変動をレンズ鏡筒の補正機構で相殺し、レンズの温度が変化しても光学性能の変化を抑えることができる。すなわち、レンズの温度変化に対して、レンズの光軸上の位置を変化させることができ、温度に対して、フォーカスの位置変化が小さいレンズができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレンズ鏡筒の断面図
【図2】図1に示したレンズ鏡筒を光軸方向に分解したときの斜視図
【図3】比較例に係るるレンズ鏡筒の断面図
【図4】本発明の実施の形態3に係るレンズ鏡筒の断面図
【図5】本発明の実施の形態4に係るレンズ鏡筒の構成図
【図6】本発明の実施の形態5に係るレンズ鏡筒の構成図
【図7】本発明の実施の形態6に係るレンズ鏡筒の構成図
【図8】本発明の実施例1に係るレンズ鏡筒の構成図
【図9】本発明の実施の形態7に係るプロジェクタの構成図
【符号の説明】
1,2 レンズ、
4 固定筒
4a 直線溝
5,18 カム環
5a,5b カム溝
6,11,13 補正筒
7,8 レンズ枠
9 セット本体
10 ねじ加工部
7a,8a 突起
12 矯正筒
14,15 締付け筒
19 締付け部材
21 ねじ
22 ズーム環

Claims (14)

  1. レンズと、レンズを保持するレンズ枠と、前記レンズ枠と係合し、前記レンズ枠の光軸方向の位置を決めるカム環と、セット本体に固定する固定筒と、前記固定筒と光軸回りに回転可能に係合し、かつ前記カム環に固定され、前記カム環の光軸方向の位置を決める補正筒とを備え、
    前記カム環と前記補正筒との線膨張係数が異なっており、前記補正筒の温度変化による光軸方向の寸法変動に対応して、前記カム環は光軸方向にかつ前記レンズの温度変化によるフォーカス位置の移動を打ち消す方向に移動可能であることを特徴とするレンズ鏡筒。
  2. 複数の前記レンズ枠に、それぞれ保持されたレンズ群でズームレンズを構成しており、
    前記カム環にはカム溝が形成され、前記固定筒には直線溝が形成され、前記複数の前記各レンズ枠は、前記カム溝及び前記直線溝に係合しており、
    前記補正筒及び前記補正筒に固定された前記カム環の光軸回りの回転により、前記各レンズ枠に保持された前記各レンズ群はそれぞれ別個に光軸方向に移動し、
    前記光軸回りの回転時には、前記カム環及び前記固定筒は光軸方向に固定されている請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  3. 前記複数のレンズ枠は、いずれもカム環で光軸上の位置が決定されており、前記補正筒の温度変化による光軸方向の寸法変動に対応して、前記複数のレンズ枠が一体となって光軸方向に変位する請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  4. 前記補正筒の外周に嵌合した矯正筒をさらに備えており、前記矯正筒の線膨張係数は、前記補正筒の線膨張係数より小さい請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  5. 前記補正筒及び前記カム環に形成されたねじの螺合により、前記補正筒と前記カム環とが固定されている請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  6. 前記補正筒の光軸方向の前後に、さらに締付け筒を備えており、
    前記補正筒及び前記各締付け筒に形成されたねじの螺合により、前記補正筒と前記各締付け筒とが固定されており、
    前記各締付け筒の線膨張係数は、前記カム環の線膨張係数と略同一であり、
    前側の前記締付け筒と前記カム環とが固定されており、
    後側の前記締付け筒と前記固定筒とが係合しており、前記後側の締付け筒は、
    光軸方向に固定された状態で、光軸回りに回転可能である請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  7. 前側の前記締付け筒と前記カム環とを固定する締付け部材をさらに備えており、前記前側の締付け筒及び前記締付け部材は、それぞれテーパ面が形成されており、前記テーパ面同士を当接させた状態で、前記締付け部材を前記カム環にねじの締め付けで固定している請求項6に記載のレンズ鏡筒。
  8. 外部より光軸回りに回転可能なズーム環が、前記補正筒の外周面に装着されており、前記ズーム環の回転方向の力が前記カム環に伝わるように、前記ズーム環と前記カム環との係合部が形成されている請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  9. 前記係合部は、前記ズーム環に形成された穴と、前記カム環に形成された突起とが係合したものである請求項8に記載のレンズ鏡筒。
  10. 前記レンズには、アッベ数70以上のガラスで構成されたレンズを含んでいる請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  11. 前記レンズには、屈折率1.5以下のガラスで構成されたレンズを含んでいる請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  12. 前記レンズには、屈折率の温度依存係数が負のガラスで構成されたレンズを含んでいる請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  13. 固定筒及びカム環の線膨張係数をα0し、補正筒の線膨張係数をα1とすると、
    1.5<|(α1―α0)/α0|
    の関係を満足する請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  14. レンズ全系の常温における焦点距離をf(mm)、前記補正筒の長さをL(mm)、前記補正筒の線膨張係数をαとすると、
    1×10-3<L×α−6.8×10-5×f<5×10-3
    の関係を満足する請求項1に記載のレンズ鏡筒。
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