JP3718096B2 - 電気再生式脱塩装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン交換膜間にイオン交換体を充填した構成の電気再生式脱塩装置に関し、特にイオン交換体が充填される室枠に特徴を有する電気再生式脱塩装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の電気再生式脱塩装置は、極室間に陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を室枠を介して、交互に配列して、脱塩室及び濃縮室を交互に設け、各室にはイオン交換体を充填して構成されている。この電気再生式脱塩装置は、電解質を含むRO処理水(逆浸透膜を通して1マイクロメータ(μm)以上の微粒子を除去した処理水)等を原水として超純水を得る装置として、イオン樹脂交換方式に替わって広範に使用されている。
【0003】
電気再生式脱塩装置は、図1に示すように、陽極5と陰極6の間に、陽イオン交換膜1、陰イオン交換膜2、濃縮室3、脱塩室4等が交互に配列されている。濃縮室3及び脱塩室4は中央部にセル室となる中央切欠部7が形成された室枠8を有し、該中央切欠部7内には図示は省略するがイオン交換体が充填されている。室枠8の4隅に設けた孔9は、装置内に濃縮水或いは脱塩水を導入するダクトを構成している(濃縮水は濃縮室3に出入し、脱塩水は脱塩室4に出入する)。
【0004】
この際、濃縮水と脱塩水とがそれぞれ混じらないようにすること(内部漏洩防止)が重要である。内部漏洩防止の具体的な例は、図2に示すように室枠8の側面に対するスロット10の向きを反転させている。なお、図2において、図2(a)は室枠の平面図、図2(b)は(a)のA−A矢視断面図、図2(c)は(a)のB−B矢視断面図、図2(d)は(a)のC−C矢視断面図である。
【0005】
上記構成の電気再生式脱塩装置において、陽極5と陰極6の両極間にかける直流電圧の電圧値を低く抑えるため、セルの厚さは0.3〜3mm程度としていることが多く、脱塩装置が大型化されても、セルサイズ(室枠8のサイズ)が大きくなるだけで厚さは略同等である。従って、大型の再生脱塩装置では、4隅に設けた孔9のダクトのみでは、セル内(イオン交換体を充填した中央切欠部7内)に液を均等に流すのが難しくなる。この対策として、図3に示すように、室枠8にダクトとなる孔11を多く設け、セル内に液を均等に流すようにしている。
【0006】
脱塩水が超純水になってくると、内部漏洩の影響が大きく、大型機の多数のダクトを持った脱塩装置では、シールすべき部分が多くなり、内部漏洩の機会が多くなり、超純水を得るのが難しくなってくる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、大型の装置であっても、ダクト数を増やすことなく内部漏洩防止をダクト周囲で完了させ、セル室内の均等な液流れを得ることができる電気再生式脱塩装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、極室間に脱塩室及び濃縮室を配列し、脱塩室或いは濃縮室は室を形成する中央切欠部と通路を形成する孔とを備えた室枠で各室のスペースを保持し、中央切欠部にはイオン交換体を充填し、少なくとも一部の各室間に陽イオン交換膜或いは陰イオン交換膜を交互に配置されている電気再生式脱塩装置において、中央切欠部の対向する辺の両外側に液分配機構を設けると共に、該液分配機構と孔との間に給排水機構を設け、液分配機構は中央切欠部の一辺に略平行に設けた複数の平行溝どうし及び該平行溝と中央切欠部を連通させる複数本の連通溝とで構成し、給排水機構は孔と液分配機構を連通させる複数本の連通溝を有し、該連通溝の液流れ方向の一部は室枠の1側面に開口し、他の一部は該室枠の他側面に開口していることを特徴とする。
【0009】
上記のように中央切欠部の一辺に略平行に設けた複数の平行溝どうし及び該平行溝と中央切欠部を連通させる複数本の連通溝とで構成した液分配機構と、孔と液分配機構を連通させる複数本の連通溝を有し、該連通溝の液流れ方向の一部は室枠の1側面に開口し、他の一部は該室枠の他側面に開口している構成の給排水機構を設けたので、室枠に設けたダクトとなる隅孔の数が少なくともダクトを通った液は液分配機構で均一な液流れとなってイオン交換体が充填された中央切欠部(セル室)内に流れるから、セル室内に均一な液流れが得られると共に、簡単なシール構成での濃縮液と脱塩水の混入を防止できる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気再生式脱塩装置において、中央切欠部に充填されるイオン交換体は、織布、或いは不織布、或いはメッシュ状であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電気再生式脱塩装置において、給排水機構の連通溝の室枠側面開口幅は該開口に接する陽イオン交換膜或いは陰イオン交換膜が落ち込み溝を塞がない幅以下であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図4は本発明に係る電気再生式脱塩装置に用いる室枠の構成例を示す図で、図4(a)は脱塩室の室枠の平面図、図4(b)は濃縮室の室枠の平面図である。
【0013】
なお、本発明に係る電気再生式脱塩装置は、図1に示すように、陽極5と陰極6の間に、陽イオン交換膜1、陰イオン交換膜2、濃縮室3、脱塩室4等が交互に配列され、濃縮室3及び脱塩室4は中央部にセル室となる中央切欠部7が形成された室枠8を有し、該中央切欠部7内にはイオン交換体が充填され、室枠8の4隅には装置内に濃縮水或いは脱塩水を導入するダクトとなる孔が形成されている点は図1の電気再生式脱塩装置と同じである。
【0014】
本発明に係る電気再生式脱塩装置は、室枠8の中央切欠部7の対向する辺の両外側に液分配機構12を設けると共に、該液分配機構12と室枠8の4隅に設けた孔9との間に給排水機構13を設けている。
【0015】
脱塩室の液分配機構12は図5(a)に示すように、中央切欠部7の一辺に略平行に設けた複数本(図では3本)の平行溝12−1と平行溝12−1及び平行溝12−1と中央切欠部7を連通させる複数本の連通溝12−2とで構成されている。なお、図5(a)は液分配機構と給排水機構を示す図、図5(b)は(a)のD−D矢視断面図、図5(c)はE−E矢視断面図である。
【0016】
給排水機構13は室枠8の4隅に設けた孔9と液分配機構12を連通させる複数本(図では4本)の連通溝13−1を有している。該連通溝13−1は図5(b)、(c)に示すように、液流れ方向の一部は室枠8の1側面に開口し、他の一部は該室枠8の他側面に開口している。
【0017】
上記のように室枠8に液分配機構12と給排水機構13を設けることにより、孔9より給排水機構13に流入する液(濃縮水又は脱塩水)は連通溝13−1を通って液分配機構12の外側の平行溝12−1に流入し、続いて平行溝12−1どうしを連通する連通溝12−2、平行溝12−1、連通溝12−2と順次流入し、中央切欠部7の幅方向に均等な液流となってイオン交換体が充填された中央切欠部7に流れ込む。中央切欠部7を出た液は液分配機構12、給排水機構13を通って、孔9に流れ込む。
【0018】
室枠8の4隅のダクトとなる孔9に対応して、両側に配設された陽イオン交換膜1及び陰イオン交換膜2(図1参照)にも孔が設けられており、各ダクトを構成している。この陽イオン交換膜1及び陰イオン交換膜2を経由して濃縮水と脱塩水とが混じりあう危険がある。この混合を避けるため、上記のようにダクトとなる孔9に連通する連通溝13−1の開口方向を上記のように反転することにより、濃縮室3の室枠8と脱塩室4の室枠8の連通溝が開口していない平面部分どうしで、陽イオン交換膜1又は陰イオン交換膜2を密着させて抑え込んでシールを確実にしている。
【0019】
図示は省略するが、陽イオン交換膜1又は陰イオン交換膜2と室枠8との間にガスケットを挿んでシールを確実にすることもある。ガスケットの有無は、室枠8の材質との兼ね合いで決まり、室枠8が軟質でガスケット機能を持つ場合は、ガスケットはなくともよい。
【0020】
給排水機構13の連通溝13−1の室枠8側面開口幅は陽イオン交換膜1或いは陰イオン交換膜2が液圧等で落ち込み溝を塞がない幅以下であることが望ましく、そのためここでは連通溝13−1の本数を多くして(ここでは4本)、溝幅を小さくしている。この溝幅は液分配機構12の平行溝12−1及び連通溝12−2でも同じであるが、3mm以下、好ましくは2.5mm以下とするのがよい。
【0021】
液分配機構12で室枠8の幅方向に液を分配/収集する。陽イオン交換膜1或いは陰イオン交換膜2が脱塩室4の室枠8と濃縮室3の室枠8の間にあるので、濃縮水と脱塩水とが混じりあうことはない。液を幅方向に分配/収集する平行溝12−1の本数も給排水機構13の連通溝13−1と同様、多数として陽イオン交換膜1或いは陰イオン交換膜2が溝に落ち込むのを防止している。
【0022】
また、平行溝12−1どうしを連通させる連通溝12−2及び平行溝12−1と中央切欠部7を連通させる連通溝12−2は、平行溝12−1より流動抵抗を大きくし、液が均等に分配されるようにしている。このため平行溝12−1全体の流路合計を連通溝12−2全体の流路合計よりも小さくしている。好ましくは、(平行溝12−1全体の流路合計)≧1.2(連通溝12−2全体の流路合計)とするのがよい。
【0023】
室枠8の中央切欠部7に充填するイオン交換体が、不織布、或いは織布などの布形態をしているとき、イオン交換体部分での流動抵抗が大きくなり、液の出入りが出入り口の一部に偏っていると、全面に流体が行き渡り難くなるので、上記のように液分配機構12及び給排水機構13を設けることは均等な液流を得るために効果的となる。
【0024】
脱塩室4の室枠8と濃縮室3の室枠8とは、通常厚さが異なり別物となっている。液分配機構12及び給排水機構13の溝形状、溝数等も液流量を考慮して、図4(a)及び(b)に示すように、脱塩室4の室枠8と濃縮室3の室枠8とで違った構成としてもよい。図4(a)の脱塩室の室枠8の液分配機構12の平行溝12−1は3本であるのに対して図4(b)の濃縮室3の室枠8の液分配機構12の平行溝12−1は2本である。また、脱塩室4の室枠8の給排水機構13の連通溝13−1は4本であるのに対して濃縮室3の室枠8の給排水機構13の連通溝13−1は3本である。
【0025】
図6は本発明に係る電気再生式脱塩装置に用いる室枠の構成例を示す図である。図示するように、液分配機構12の複数本(図では3本)の平行溝12−1の長さは、外側が短く中央切欠部7側に行くに従って長く、中央切欠部7の近傍では中央切欠部7の一辺の長さと略等しくなっている。そして、液分配機構12の平行溝12−1と孔9を連通させる給排水機構13の連通溝13−1は最短の距離を通って外側の平行溝12−1と連通している。このように構成しても図4の場合と同様な効果が得られる。
【0026】
室枠8の中央切欠部7に充填されるイオン交換体は、織布、或いは不織布、或いはメッシュ状のものを用いる。
【0027】
なお、本発明に係る電気再生式脱塩装置は、脱塩室4と濃縮室3の間に配置されるイオン交換膜が全体に渡って陽イオン交換膜1と陰イオン交換膜2が交互に配置された構成に限定されるものではなく、極室側を除いた部分の脱塩室4と濃縮室3の間に陽イオン交換膜1と陰イオン交換膜2が交互に配置されたものであってもよい。即ち、少なくとも一部の各室間に陽イオン交換膜1或いは陰イオン交換膜2が交互に配置されている構成であればよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、各請求項に記載の発明によれば下記のような優れた効果が得られる。
【0029】
請求項1及び2に記載の発明によれば、中央切欠部の一辺に略平行に設けた複数の平行溝どうしと該平行溝と中央切欠部を連通させる複数本の連通溝とで構成の液分配機構を設けたので、室枠に設けたダクトとなる隅孔の数が少なくともダクトを通った液は液分配機構で均一な液流れとなって中央切欠部(セル室)内に流れるから、セル室内に均一な液流れが得られる電気再生式脱塩装置を提供できる。
【0030】
また、隅孔と液分配機構を連通させる複数本の第2連通溝を有し、該第2連通溝の液流れ方向の一部は室枠の1側面に開口し、他の一部は該室枠の他側面に開口している構成の給排水機構を設けたので、簡単なシール構成での濃縮液と脱塩水の混入を防止できる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、給排水機構の第2連通溝の室枠側面開口幅は該開口に接する陽イオン交換膜或いは陰イオン交換膜が落ち込み溝を塞がない幅以下とするので、溝が塞がれて液の流れが阻害されることがなく、装置の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気再生式脱塩装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】従来の電気再生式脱塩装置の室枠の構成例を示す図で、図2(a)は室枠の平面図、図2(b)は(a)のA−A矢視断面図、図2(c)は(a)のB−B矢視断面図、図2(d)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図3】従来の電気再生式脱塩装置の室枠の構成例を示す一部平面図である。
【図4】本発明に係る電気再生式脱塩装置の室枠の構成例を示す図で、図4(a)は脱塩室の室枠の平面図、図4(b)は濃縮室の室枠の平面図である。
【図5】本発明に係る電気再生式脱塩装置の室枠の液分配機構と給排水機構の構成例を示す図で、 図5(a)は一部平面図、図5(b)は(a)のD−D矢視断面図、図5(c)はE−E矢視断面図である。
【図6】本発明に係る電気再生式脱塩装置の室枠の構成例を示す平面図である。
【符号の説明】
1 陽極イオン交換膜
2 陰極イオン交換膜
3 濃縮室
4 脱塩室
5 陽極
6 陰極
7 中央切欠部
8 室枠
9 孔
10 スロット
11 孔
12 液分配機構
13 給排水機構

Claims (3)

  1. 極室間に脱塩室及び濃縮室を配列し、前記脱塩室或いは濃縮室は室を形成する中央切欠部と通路を形成する孔とを備えた室枠で各室のスペースを保持し、中央切欠部にはイオン交換体を充填し、少なくとも一部の各室間に陽イオン交換膜或いは陰イオン交換膜を交互に配置されている電気再生式脱塩装置において、
    前記中央切欠部の対向する辺の両外側に液分配機構を設けると共に、該液分配機構と前記孔との間に給排水機構を設け、
    前記液分配機構は前記中央切欠部の一辺に略平行に設けた複数の該平行溝どうし及び該平行溝と前記中央切欠部を連通させる複数本の連通溝とで構成し、
    前記給排水機構は前記孔と前記液分配機構を連通させる複数本の連通溝を有し、該連通溝の液流れ方向の一部は前記室枠の1側面に開口し、他の一部は該室枠の他側面に開口していることを特徴とする電気再生式脱塩装置。
  2. 請求項1に記載の電気再生式脱塩装置において、
    前記中央切欠部に充填されるイオン交換体は、織布、或いは不織布、或いはメッシュ状であることを特徴とする電気再生式脱塩装置。
  3. 請求項1又は2に記載の電気再生式脱塩装置において、
    前記給排水機構の連通溝の前記室枠側面開口幅は該開口に接する前記陽イオン交換膜或いは陰イオン交換膜が落ち込み溝を塞がない幅以下であることを特徴とする電気再生式脱塩装置。
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