JP3715378B2 - 屋根の自動上昇装置と屋根を上昇して建築物を施工する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は屋根の自動上昇装置と屋根を上昇して建築物を施工する方法、詳細には建築中のビル上方の屋根を上昇しながら躯体を構築していく屋根の上昇装置と屋根を上昇して建築物を施工する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在知られている建物の建築中に屋根を上昇する全天候型建設工法として、竣工直前に撤去する仮設屋根形式のものと、本設屋根としてそのまま利用するものが知られている。そして、仮設屋根としては本設の建物の施工の進み具合に沿って仮設屋根とその屋根下の天井クレーン、および仮設屋根を本設の周囲から持ち上げていくクライミング装置を用いたものがある。
【0003】
なお、この本設周囲のクライミング装置間に外部足場を設置したものも知られているが、いずれもクライミング装置は地上から上方に構築されている。
【0004】
また、本設装置を上昇するものとしては、躯体の複数の柱上に屋根を支持したクライミング装置を取り付け、その中の柱を伸長するクライミング装置のみを収縮して柱頂上から上昇させてその空間の柱頂部に新たな柱を継ぎ足していき、この継ぎ足しを別の柱に順次施工することで本設屋根を持ち上げるものも知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の仮設屋根の上昇装置は地上からのクライミング装置によって支持されているので、高層の建物になるほど、クライミング装置や外部足場を継ぎ足す必要があり、資材とスペースおよび施工上の作業手間において大掛かりとなり、コストや省資源といった観点から望ましいものではなく、なによりも地上からのクライミング装置が建築途中での外部からのPC壁板などの取り付けに支障があった。
【0006】
また、上記従来での本設屋根の上昇装置は直接柱上に屋根を支持して継ぎ合している点でスペースや資材が少なくてすみ、なによりも予め本設屋根を設置している点で施工に無駄がないというメリットがある。しかしながら、この工法は基本的に柱の頂部に新たな柱を継ぎ足していく構造のために、位置合わせ溶接、そして柱に屋根を支持しているものといないものとがあり、荷重バランスが不安定になるという欠点もあった。
【0007】
そこで、この発明では柱頂部に柱の継ぎ足しを行ない、梁,床の施工を行なうものであるが、屋根は柱頂部で支持せず柱側部に支持しながら上昇し、柱は従来と同様に柱頂部に継ぎ足していくことにより、より迅速で安定で、しかも省資材とスペースをとらない屋根の自動上昇装置と、屋根を上昇して建築物を施工する方法を提供せんとする。
【0008】
また、この発明は屋根だけでなく、柱には仮足場をも保持することで、従来地上から構築したものに較べてコンパクトで簡易な構成を採用する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明方法は、上記目的のもとになされたもので、その要旨は、躯体構造の柱に上昇手段を添設し、該上昇手段により前記柱の上方に設置した屋根を上昇し、前記柱上部に新たな柱を繋ぎ足していく施工法において、該施工法が、上部の屋根とともに上昇する屋根上昇仮足場と、該屋根上昇仮足場間に配置した支持仮足場とを、前記上昇手段により前記柱を反力として交互に上昇させることで、前記柱と屋根間に作業空間を形成し、該空間内に新たな柱や梁の躯体を構築することを特徴とする屋根を上昇して建築物を施工する方法にある。
【0010】
この発明装置の要旨は、躯体構造の任意の柱間に上方に屋根を設置して両サイドにフレームを設けた複数の屋根上昇仮足場と、前記屋根を常に載置することなく、前記屋根上昇仮足場間に配置して、両サイドにフレームを設けた複数の支持仮足場と、これら仮足場の隣接するフレームに前記屋根上昇仮足場と前記支持仮足場とを、前記柱を反力として交互に上昇する上昇手段とからなる屋根の自動上昇装置にある。
【0011】
【発明の実施の態様】
上記躯体構造は柱や梁からなるもので、SRCやRC構造のものも含まれる。屋根上昇仮足場と支持仮足場とは、上昇手段で交互に相手を柱に固定した反力として屋根と仮足場とを上昇するために互い違いに配置することが望ましいが、設計によって屋根の上昇仮足場を支持仮足場の2つ置きや3つ置き以上に、あるいはバランスさえとれば各仮足場をランダムに配置することもできる。柱の継ぎ足しは溶接、ボルト、鋲、コンクリート打設あるいはこれらの兼用などがある。
【0012】
上記屋根上昇仮足場と支持仮足場を交互に上昇するには、いずれか一方の仮足場に伸縮するジャッキの一方を固定するが、この場合の反力は固定した側のジャッキの一方がその仮足場の両側にあるフレームと固定しており、フレームは反力板などで柱に固定することで柱に反力をとる。この場合、他方の仮足場の側のジャッキは開放しておくが、上記屋根上昇仮足場側と支持仮足場側のジャッキの固定と開放に対してそれぞれジャッキの伸長と収縮を繰り返えすことにより、高い油圧での少量づつ尺取虫状に上昇することができる。
【0013】
この場合、必要な高さを一度のジャッキの伸長で行なうことも考えられるが、そのためにはジャッキ装置が大型となって不経済となる。
【0014】
上記複数の屋根上昇仮足場の各頂部間の水平方向に頭継ぎ板をかけわたし、その上に仮設あるいは本設の屋根を設置することで、屋根上昇仮足場間の支持仮足場頂部が上昇時に頭継ぎ板と離れた場合でも、安定して屋根を引き上げることができる。
【0015】
上記複数の屋根上昇仮足場と支持仮足場とを尺取虫状に上昇するにはいずれか一方を柱に固定して他方を開放して上昇し、ついで開放して上昇した方を固定して他方の柱に固定していたものを開放して上昇されることでも達成できるが、ジャッキを大型化しないためには上記各上昇の1度のストロークは小さくする必要がある。このために、屋根上昇仮足場と支持仮足場を交互に上昇させる他に、まず、屋根上昇仮足場を柱に着脱自在にした反力板で固定するとともに支持仮足場の方の反力板を柱の固定から外しておき、ついで、屋根上昇仮足場か支持仮足場のいずれかに垂直方向に配設したステップロッドに小さいストロークで尺取虫状に上昇する。ステップロッドに貫入したジャッキの上部と下部を交互に開放と固定とを繰り返えす、すなわち上部を開放して下部を固定するときにはジャッキを伸長し、逆に上部を固定して下部を開放するときにはジャッキを収縮し、この動作を何回も短かいストロークずつ繰り返えすことにより、はじめに屋根上昇仮足場を上昇しておいて、続いて同じ繰り返し動作を行なって支持仮足場を上昇させる。
【0016】
【実施例1】
図1乃至図7は、この発明である屋根の自動上昇装置と屋根を上昇して建築物を施工する方法の概略図である。図8乃至図16は、この発明が屋根と仮足場とを交換上昇する状態の詳細図である。
【0017】
この発明の基本構成は、通常の建築において施工される柱1や梁2などからなる躯体構造と、各柱間あるいは2以上の柱間にわたって着脱及び上昇自在に設けた複数の屋根上昇仮足場3と、これら屋根上昇仮足場3間に配置した支持仮足場4と、これら各仮足場上において保持した仮設屋根5と、上記各仮足場の上昇手段6とからなる。
【0018】
図1乃至図7に示すように、躯体構造としては鉄骨造でも鉄筋コンクリート造でもよいが、後述するように屋根上昇仮足場3と支持仮足場4とに蝶着した反力板14を着脱自在にするボルトとアンカーなどの固定部7を設けている。
【0019】
屋根上昇仮足場3と支持仮足場4は、鳶職人がわたる足場8をクランプ(図示せず)などで縦横に組み立てた枠材9,10、斜めにクロスしたブレース13で構成され、それぞれの両側にはH型鋼からなるフレーム11,12を取り付けている。
【0020】
上昇手段は、図8乃至図11に示すように、屋根上昇仮足場3のH型鋼のフレーム11の下部にH型鋼の一方の左右のフランジ15に沿ってガイド板16を溶接などで接合しており、該ガイド板の内側には上記した支持仮足場4のH型鋼のフレーム12のフランジ24の外側中央縦方向に固着したガイドレール18の両側に挾み込むように一体化し、ガイドレール18に沿って昇降可能に左右3個づつ6個のローラ17を回転自在に取り付け、また、上記ガイド板16の下部でH型鋼11の中央には底プレート19を溶接で接合しており、その上部に公知のセンターホールジャッキ20(以下単にジャッキという)を設置し、後述する支持仮足場4のフレーム12に設けたステップロッド21を反力として屋根上昇仮足場3を上昇し、かつジャッキ側に反力をとってステップロッド21を上昇させることで支持仮足場を上昇するようにしている。
【0021】
一方、支持仮足場4のフレーム12の下半分に、下端の底板22と中央部の支持板23を溶接で接合し、それぞれの間に前記ジャッキ20を昇降するようにステップロッド21を配設しており、上部には上記屋根上昇仮足場3のガイド板16と上下に位置をずらして対称にH型鋼のフランジ24にガイド板25を設け、その内側に上記の屋根上昇仮足場のH型鋼のフレーム11のフランジ15の外側のガイド板26に沿って6個のローラ27を回転自在に取り付けている。
【0022】
仮設あるいは本設屋根は、図4や図5のように屋根全体を一体一つのものとすることもできるし、図1や図2のように、柱上の屋根上を分割し、これを各仮足場上の水平方向に配置した頭継ぎ板28に載置し、必要により屋根の下部所要個所に車輪29を設けて、上記頭継ぎ板28上のレールに走行可能に設置することもできる。図では屋根5は分割され、また蛇腹状のホロで伸縮して上記レール上を車輪で走行できるようになっている。この他に、屋根の内部にレールを設けてクレーン(図示せず)を移動可能に設けることにより建築物の自動構築化を図ることもできる。
【0023】
【実施例2】
つぎに、この発明の屋根を上昇して建築物を施工する方法について説明する。
既設の躯体構造の柱1に設けた固定部7に、屋根上昇仮足場3と支持仮足場4の両側の上下にある反力板14を取り付け固定しておく。この場合、屋根上昇仮足場3の頂部水平方向に頭継ぎ板28を固定するとともに、支持仮足場4を頭継ぎ板28の下端に当接し、頭継ぎ板28には屋根5を載置しておく(図1,図2と図4)。
【0024】
この状態での屋根上昇仮足場3と支持仮足場4の関係は図6、図10と図11のようになっており、つぎに屋根上昇仮足場3の両側フレーム11にある反力板14を柱1から外して(フレーム12は固定したまま)蝶番部33で折り曲げて開放する(図16)。
【0025】
続いて、ジャッキ20の下部把持部30をステップロッド21に把持・固定しておいてステップロッド21に把持している上部把持部31を開放してジャッキ20のロッド32を伸長すると、伸長したストローク分複数の屋根上昇仮足場3は支持仮足場を反力としてイコライザ等で同調して上昇する。こんどは上昇した上部把持部31をステップロッド21に把持・固定してから下部把持部30を開放してジャッキ20を収縮することにより、さらに屋根上昇仮足場3は上昇し、これらの操作を繰り返えすことで屋根上昇仮足場3をステップロッド21の上部まで(躯体の1階分の高さに相当)引き上げる(図5,図7と図13,図14)。
【0026】
さらに、図13の状態で屋根上昇仮足場3の反力板14を蝶番部33から廻して柱1の固定部7に固定してから、今まで柱に固定していた支持仮足場4の反力板14を蝶番部33で開いて柱1より外す。こうしておいて、収縮状態のジャッキ20の上部把持部31をステップロッド21に把持・固定して下部把持部30をステップロッド21より開放してからジャッキ20を伸長し、ついで下部把持部30を固定してから上部把持部31を開放してジャッキ20を収縮することにより支持仮足場4を屋根上昇仮足場3を反力として上昇することを繰り返して支持仮足場4を頭継ぎ板28の下端に当接させることで上昇した状態の図4,図6と図12になる。
【0027】
上記この発明の実施例では、屋根上昇仮足場3の方にジャッキ20を設け、ステップロッド21を支持仮足場4に設けたもので説明したが、ジャッキとステップロッドを逆に取り付けても本発明は達成できる。
【0028】
また、この発明ではジャッキとステップロッドの上昇と収縮を小さいストロークで繰り返す手段を選んだが、これに限らず、例えばジャッキの一方の上部把持部を屋根上昇仮足場のフレーム11に、他方の下部把持部を支持仮足場にそれぞれ把持・固定及び開放できるようにし、ジャッキ20のロッド32の伸長と収縮の度に屋根上昇仮足場3と支持仮足場4を交互に上昇させることもできる。
【0029】
なお、この発明装置と施工法での屋根は本設と仮設を問わないが、屋根構造自体が仮足場と連絡して躯体と連設していないために仮設において用いる場合が多い。
【0030】
【発明の効果】
この発明装置によれば、屋根と仮足場の上昇を躯体構造の周囲エリアの地上からのクライミング装置によらず、直接躯体の柱に保持しているので、クライミング資材が必要なく、また作業スペースも最少限ですんでコンパクトな設備と、簡易な構造で全天候型の屋根上昇装置が得られる。
【0031】
また、この発明によれば仮足場が屋根とともに上昇するので、建築途中でもPC壁板の取り付けなど外部からの資材の搬入や施工作業も支障なくできる。
【0032】
さらに、この発明は従来のように既設柱に新たな柱を継ぎ足していくという工法を用いず、柱のサイドから屋根を持ち上げているので、継ぎ足しの柱の位置合わせや、作業手順も継ぎ足した柱で屋根を上昇するといった手間を必要とせず、しかも常に決められた屋根上昇仮足場によって屋根や仮足場を上昇させるので、従来のように継ぎ足した柱とこれから継ぎ足す柱とに分けて、これらの柱で交互に屋根を保持するといった荷重バランスが不安定になるといった欠点もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明装置の概略正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1より屋根上昇仮足場を屋根や仮足場とともに上昇させた状態を示す正面図である。
【図4】図1の分割した屋根を一つに一体化した変形実施例での概略斜面図である。
【図5】図4から屋根上昇仮足場を上昇した状態を示す斜視図である。
【図6】図1や図4の状態での屋根上昇仮足場と支持仮足場の片側フレームの連結状態を示す正面図である。
【図7】図6から屋根上昇仮足場を上昇した状態を示す正面図である。
【図8】図8(a)は支持仮足場の片側フレームにステップロッドなどを取り付けた正面図である。図8(b)は屋根上昇仮足場の片側フレームにジャッキなどを取り付けた正面図である。
【図9】図9(a)は図8(a)の平面図である。図9(b)は図8(b)の平面図である。
【図10】図8(a)と図8(b)とを結合した状態を示す正面図である。
【図11】図10の平面図である。
【図12】図10のフレームに上部に頭継ぎ板を固定した屋根上昇仮足場と上端を頭継ぎ板に当接した支持仮足場との一部を記載した状態の正面図である。
【図13】図10の状態から屋根上昇仮足場側のフレームを上昇させた状態の正面図である。
【図14】図13の側面図である。
【図15】図12の側面図である。
【図16】図12の平面図である。
【符号の説明】
1 柱
3 屋根上昇仮足場
4 支持仮足場
5,(5’) 屋根
20 ジャッキ
30 下部把持部(上昇手段6)
31 上部把持部(上昇手段6)
32 ロッド
11 屋根上昇仮足場の両側のフレーム
12 支持仮足場の両側のフレーム
14 反力板
21 ステップロッド
28 頭継ぎ板
Claims (5)
- 躯体構造の柱に設けた反力板を介して屋根上昇仮足場と支持仮足場をそれぞれ配置し、これらいずれかの足場に上昇手段を添設し、該上昇手段により前記柱の上方に設置した屋根を上昇して確保した空間に上位階を造っていく施工法であって、
該施工法が、上部の屋根とともに上昇する屋根上昇仮足場と、該屋根上昇仮足場間に配置した支持仮足場との、いずれか一方の反力板を固定するとともに他方の反力板を開放し、前記上昇手段により前記柱の反力板を反力として交互に上昇させることで、前記柱と屋根間に作業空間を形成し、該空間内に新たな柱や梁、床の躯体を構築することを特徴とする屋根を上昇して建築物を施工する方法。 - 前記屋根上昇仮足場と支持仮足場の交互の上昇が、前記いずれかの仮足場の一方に前記柱に設けた反力板を反力として伸縮するジャッキの下部把持部を固定するとともに上部把持部を開放してジャッキを伸長して前記他方の仮足場を上昇する工程と、前記ジャッキの上部把持部を固定するとともに下部把持部を開放してジャッキを収縮することにより、屋根上昇足場と支持仮足場を交互に上昇する工程とを含む請求項1に記載の屋根を上昇して建築物を施工する方法。
- 躯体構造の任意の柱間に上方に屋根を設置して両サイドにフレームを設けた複数の屋根上昇仮足場と、前記屋根を常に載置することなく、前記屋根上昇仮足場間に配置して、両サイドにフレームを設けた複数の支持仮足場と、これら仮足場の隣接するフレームに前記屋根上昇仮足場と前記支持仮足場とを、前記柱を反力として交互に上昇する上昇手段とからなる屋根の自動上昇装置。
- 前記屋根と屋根上昇仮足場間に頭継ぎ板を設けることにより、屋根上昇仮足場の上昇を同調させることで安定した屋根の上昇を可能にした請求項3に記載の屋根の自動上昇装置。
- 前記上昇手段が、前記柱にそれぞれ着脱可能にした、前記屋根上昇仮足場に設けた反力板と屋根上昇仮足場に隣接する前記支持仮足場に設けた反力板と、前記支持仮足場のフレームに配設したステップロッドと、前記屋根上昇仮足場のフレームに設置したジャッキとよりなり、該ジャッキを伸縮して前記支持仮足場を介して柱に反力をとって、前記ステップロッドに対してジャッキを上昇することにより前記屋根上昇仮足場を上昇し、かつ前記ジャッキを伸縮して前記屋根上昇仮足場を介して柱に反力をとって、前記ジャッキに対してステップロッドを上昇することにより前記支持仮足場を上昇するようにした請求項3又は4に記載の屋根の自動上昇装置。
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